説明

遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントとその運転方法

【課題】原子力発電プラントの建屋スペースおよび配管配置空間の大幅な変更をせずに、熱サイクル的にプラント熱効率を安定して向上することができる遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントとその運転方法を提供する。
【解決手段】高圧タービンと低圧タービンの間に、外部力により駆動される旋回動翼を備えた湿分分離機構を設置し、前記旋回動翼の遠心力により高圧タービン出口から流入する主蒸気中の湿り液滴を前記湿分分離機構の容器内壁へ衝突させて気液分離することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントとその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の原子力発電システムとして、例えば沸騰水型軽水炉BWRにおいては、核分裂性物質を含む炉心で水を沸騰させ、沸騰によって生じた蒸気を、主蒸気管を通して高圧タービン、低圧タービンに送り、高圧タービン、低圧タービンの主軸と連動した発電機で電気を発生させている。また、低圧タービン出口側に設置された復水器で蒸気を凝縮して水とし、その後、給水加熱器および給水ポンプ等を通って昇圧、加熱された水を原子炉圧力容器内に給水する。
【0003】
通常の沸騰水型軽水炉BWRの設計ではまず、炉心の熱出力を決定し、その熱出力で最高の熱効率が得られるように主蒸気管以降の蒸気の流れを最適化している。この主蒸気管以降の蒸気の流れの最適化には、主蒸気系での対策と給水系統での対策とがある。
【0004】
このうち、蒸気の流れの最適化の給水系統での対策は、以下のようである。まず、復水器で蒸気を水にすると、熱サイクルの原理から通常の沸騰水型軽水炉BWRの圧力(約7MPa)では、水の潜熱は発電に用いることができずに無駄になる。そこで、主蒸気のうちの一部を抽気して給水加熱器における給水を加熱するために用いる。この場合、主蒸気の熱はそのほとんどが給水に回収されるため原子炉の熱効率は向上する。
【0005】
これに対し、蒸気の流れの最適化の主蒸気系での対策には、原子力プラントの型式に応じて幾つかのものがある。原子力プラントの型式の一例は、再循環ポンプとジェットポンプの再循環系を用い、湿分分離器MSを備えている沸騰水型軽水炉BWRである。沸騰水型軽水炉BWRにおいては、主蒸気のうち最終的に低圧タービン出口から復水器に送られる蒸気の量は約2/3弱で、残りの蒸気は給水の加熱に用いている。
【0006】
また、他の原子力プラントの型式の一例は、湿分分離器MSの替わりに湿分分離再熱器または湿分分離過熱器MSHを設置した改良型沸騰水型軽水炉ABWRである。改良型沸騰水型軽水炉ABWRにおいては主蒸気のうち最終的に低圧タービン出口から復水器に送られる蒸気の量は約2/3弱と同様である。
【0007】
これら沸騰水型軽水炉BWRあるいは改良型沸騰水型軽水炉ABWRにおいて、主蒸気管以降の蒸気の流れを最適化して熱効率を向上させるための主蒸気系での対策として、湿分分離器MSあるいは湿分分離過熱器MSHの湿分分離効率を向上すれば、プラントの熱効率が向上することが知られている。
【0008】
すなわち、原子力プラントでは炉心から発生する飽和蒸気が、高圧タービンで膨張して仕事をすると湿り蒸気になる。そこで、湿分分離器MS内でこの湿り蒸気の湿分を除去し、低圧タービンへ入る前に蒸気の湿り度を低くすれば、プラントの熱効率が向上する。
【0009】
湿分を分離するための機構について、特許文献1では、大型の圧力容器内の下部へ波板状の分離機構(ドライヤの分離機構とほぼ同様)からなる湿分分離要素を、V字型に内設している。これは、大型容器内で主蒸気の流速を低下させ、湿り蒸気中の液滴の重力落下による分離方式を用いたものである。
【0010】
また、特許文献2では、主蒸気配管内に静翼として旋回羽根機構を設置し、炉内構造物であるセパレータと同様の原理を用いて主蒸気流れに旋回流れを生じさせ、遠心力で配管内壁へ湿分を気液分離する。この際、旋回羽根の中心には、旋回流れを一様流れに戻すために中心軸ベーンを設置している。
【0011】
また、特許文献3では、主蒸気配管内に静翼とその後流側に動翼を配置して、動翼を湿り蒸気の膨張により回転駆動させ、回転する動翼の旋回羽根により湿分を分離する。この場合には、主蒸気流自体が動翼を駆動し、回転する旋回羽根により湿分を分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−299644号公報
【特許文献2】特開平5−187205号公報
【特許文献3】特開平8−68501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
既設の原子力発電プラントでは、高圧タービンと低圧タービンで主蒸気を膨張させて両軸に連結された発電機から電気動力を取り出す。まず、高圧タービンで膨張した主蒸気は飽和蒸気から湿り蒸気となる。この湿り度の大きな湿り蒸気中の液滴を湿分分離器で除去してほぼ飽和蒸気とし、低圧タービン入口へ供給する。
【0014】
ここで、湿分分離機構としては、特許文献1から特許文献3に示した動作原理のものがあるが、現状の湿分分離機構では、未だ湿分分離性能を向上する余地が残されている。
【0015】
特に、現在実プラントにおいて使用されている特許文献1の方式では、湿り蒸気中の液滴分離のために重力落下方式を採用しており、主蒸気流速を低下させるために湿分分離容器の内容積が大きくなっている。そのため、現状プラントにおいては、コンパクトで湿分分離性能が高い湿分分離器の開発が望まれる。しかし、胴体内の空間を有効に活用されていないため、コンパクトにすることは困難である。それゆえ、従来の湿分分離器MSのコンパクト化に対する課題がある。
【0016】
また、現状の沸騰水型軽水炉BWRでは既設の湿分分離器MSの容器が小さいため、この容器内に過熱器として伝熱管を多数本追設して湿分分離過熱器MSH化することは難しいと考えられている。
【0017】
湿分分離として、主蒸気配管内に旋回羽根機構を設置した特許文献2または特許文献3の方式もあるが、いずれも配管内に旋回羽根を設置するために圧力損失が大きくなるという問題がある。また、配管内で生じた旋回流を一様な流れに戻すための配管が長大となる。
【0018】
さらに、特許文献2または特許文献3の方式では、主蒸気流に依存して湿分分離を行うために、安定して高い分離効率を得ることが困難である。特に、原子炉出力を変更して負荷追従運転を行う場合には、負荷に応じて主蒸気流の蒸気条件が変動することになるため、いずれの負荷帯においても安定して高い分離効率を得ることが困難である。
【0019】
以上のことから、プラント熱効率の向上のために、湿り度の低い主蒸気を低圧タービンへ供給し、従来の湿分分離器MSの湿分分離性能を向上させることが課題となる。なお、沸騰水型軽水炉BWR以外の原子力発電システムにおいても同様の課題がある。
【0020】
本発明では、原子力発電プラントの建屋スペースおよび配管配置空間の大幅な変更をせずに、熱サイクル的にプラント熱効率を安定して向上することができる遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントとその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明は原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントにおいて、高圧タービンと低圧タービンの間に、外部力により駆動される旋回動翼を備えた湿分分離機構を設置し、旋回動翼の遠心力により高圧タービン出口から流入する主蒸気中の湿り液滴を湿分分離機構の容器内壁へ衝突させて気液分離する。
【0022】
また、湿分分離機構の旋回動翼を駆動する外部力を可変に調整する。
【0023】
また、湿分分離機構の旋回動翼を可変翼とする。
【0024】
また、湿分分離機構を、高圧タービン、低圧タービンの回転力を外部力として旋回動翼を駆動する。
【0025】
また、高圧タービン、低圧タービンの回転軸と湿分分離機構の旋回動翼の軸を同一軸上に配置し、タービンの回転力を外部力として旋回動翼を駆動する。
【0026】
また、高圧タービン、低圧タービンの回転軸と湿分分離機構の旋回動翼の軸を、可変速機構を介して結合し、タービンの回転力を外部力として旋回動翼を駆動する。
【0027】
また、湿分分離機構を、回転機の回転力を外部力として旋回動翼を駆動する。
【0028】
また、遠心式湿分分離器からの蒸気を高圧タービン上流側から抽気した抽気蒸気により加熱してから低圧タービンに導く。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明は原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントおいて、主軸、主軸に設けられた高圧タービン、主軸に設けられた低圧タービン、高圧タービンと低圧タービンの間の主軸に設けられた旋回動翼を備えた湿分分離機構から構成され、高圧タービンの排気側室と湿分分離機構の入り口側室とが連結接続され、湿分分離機構の出口側室と低圧タービンの入り口側室の間が外部配管により接続されている。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明は原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントおいて、高圧タービンと低圧タービンの間に、外部力により駆動される旋回動翼を備えた湿分分離機構を設置し、旋回動翼の角度を蒸気流の様相に応じて可変に調整する。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明は原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントおいて、高圧タービンと低圧タービンの間に、外部力により駆動される旋回動翼を備えた湿分分離機構を設置し、高圧タービン、低圧タービンの回転軸と湿分分離機構の旋回動翼の軸を、可変速機構を介して結合し、タービンの回転力を外部力として旋回動翼を駆動するとともに、旋回動翼の回転数を気液分離性能に応じて調整する。
【0032】
また、湿分分離機構の下部に凝縮用ポットを設け、液位を計測して旋回動翼の回転数を調整する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、原子力発電プラントにおいて、従来の湿分分離器に比べてほぼ同等の圧損で主蒸気系の湿り度を低減し、湿分分離効率を安定的に向上させ、機器のコンパクト化を図ることが可能になる。
【0034】
また、実施例によれば湿分分離量を検出してその値により可変速機を用いて主軸の回転数を制御し、最適な圧損及び分離効率の運転も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る遠心式湿分分離器MSを有する沸騰水型軽水炉の系統を示す図。
【図2】遠心式湿分分離器MSを採用するときの湿分分離効率の概要図。
【図3】遠心式湿分分離器MSを有する系統の他の実施例を示す図。
【図4】遠心式湿分分離器MSを有する系統の他の実施例を示す図。
【図5】遠心式湿分分離器MSを有する系統の他の実施例を示す図。
【図6】遠心式湿分分離器MSを有する系統の他の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明の好適な実施例である遠心式湿分分離器MSを有する沸騰水型軽水炉のシステム系統図を示す。ここでは、沸騰水型軽水炉ABWRの湿分分離過熱器MSHを有しているシステムを例にとり説明する。
【0038】
図1において、原子炉1から発生する高圧の主蒸気は、主蒸気配管2から主蒸気調節弁3を介して高圧タービン4へ供給され、当該タービン4で回転エネルギーに変換されて仕事をする。この後、膨張した主蒸気は、湿分分離器5へ供給されて湿分を除去された後、過熱器11で抽気蒸気配管25から供給される高温・高圧蒸気により過熱される。過熱された蒸気は低圧タービン12でも同様の仕事をする。低圧タービン12は高圧タービン4と共に、発電機14を駆動し、電気出力を得る。低圧タービン12で仕事をし、膨張した低圧蒸気は復水器15で凝縮される。
【0039】
なお、同図において、16は、復水器15に海水を導くための海水循環ポンプ、17は海水と低圧タービン12排出蒸気の熱交換を行い、蒸気を復水とするための伝熱管、18は熱交換後の温海水を排出するための海水排出管である。
【0040】
その後、復水した冷却水は給水ポンプ19、22、低圧給水加熱器20及び高圧給水加熱器23で昇温・昇圧され低圧給水配管21、高圧給水配管24を介して、再び原子炉1内に供給される。なお、低圧給水加熱器20及び高圧給水加熱器23で給水を昇温・昇圧する為には、高圧タービン4からの抽気蒸気26、湿分分離器5からの抽気蒸気(ドレン)27、低圧タービン12からの抽気蒸気28などが用いられる。また、本発明の場合には、さらに過熱器11からの抽気蒸気(ドレン)を用いることができる。
【0041】
ここで、本発明の湿分分離器5は、高圧タービン4と低圧タービン12を連結する主軸13の中間に設けられ、少なくとも1つ以上の回転旋回動翼8を内包した湿分分離器5である。これにより、タービン主軸13の回転に伴い旋回動翼8が回転して、遠心力により湿り蒸気中の液滴を容器内壁へ衝突させて気液分離し、高速流れ中でも動翼回転による遠心分離法で高効率の湿分分離性能を得ることができる。
【0042】
なお、容器内壁へ衝突した液滴を分離するために、容器6の外側に設置した凝縮用ポット10との間には、液を取り出すためのすくい出し溝孔(図示せず)を設け、凝縮用ポット10に液滴を集め、抽出蒸気27を高圧給水加熱器23に導入する。
【0043】
本発明の主軸直結の回転式湿分分離器5においては、分離効率を高めるためにさらに幾つかの変形、工夫が可能である。例えば、高圧タービン4と低圧タービン12を連結する主軸13に設置された旋回動翼8を可変動翼とすることで、偏流や流量変化など主蒸気流れの様相に応じて動翼を最適な角度に制御する運転方法とすることが可能である。また、回転式湿分分離器5に導入された蒸気を、効率よく回転旋回動翼8に導くためには、流入部仕切り機構7を設けて、狭い領域空間から蒸気を回転旋回動翼8に導くのがよい。また、蒸気を排出するときに流出部仕切り機構9の狭い領域空間を通過させることで、湿分分離効率を高めることができる。
【0044】
また、図1では高圧タービン4から回転式湿分分離器5に至る過程において、蒸気を外部配管30に導出し、改めて回転式湿分分離器5に導入する構造としているが、これは外部配管30を省略して、蒸気を回転軸の軸方向に沿って直接回転式湿分分離器5に導くことも可能である。
【0045】
図6は、蒸気を回転軸の軸方向に沿って直接回転式湿分分離器5に導くときの具体的な構成を概要図で示す。
【0046】
この実施例では、主軸13と、主軸13に設けられた高圧タービン4と、主軸13に設けられた低圧タービン12と、高圧タービン4と低圧タービン12の間の主軸13に設けられた旋回動翼8を備えた湿分分離機構5から構成され、高圧タービン4の排気側室と湿分分離機構5の入り口側室とが連結接続され、湿分分離機構5の出口側室と低圧タービン12の入り口側室の間が外部配管2により接続されている。つまり、高圧タービン4からの排気を、外部配管を通さずに、直接軸上で湿分分離機構5に導入している。尚、この図で、4aは高圧タービン翼、12aは低圧タービン翼である。
【0047】
この場合、図1に示すような高圧タービン4と回転式湿分分離器5を連結する主蒸気配管30が不要となり、高圧タービン4で膨張した蒸気をそのまま遠心式湿分分離器5に供給して湿分を除去することができる。その後、主蒸気配管2を介して低圧タービン12へ供給されて、再度、蒸気は膨張する。
【0048】
このように本発明のシステムでは、回転式湿分分離器5により湿分分離効率を高め、プラント効率の向上に貢献している。また本発明のシステムでは、過熱に用いた高圧蒸気がその後給水加熱にも用いられ、そのエネルギーのほとんどを回収できるため、過熱器11を設置することによっても、プラントの熱効率は向上する。なお、熱効率向上の観点からは、過熱器11の過熱段数が多いほど良いが、現実的にこの実施例ではコスト及び設置スペースの関係から1段あるいは2段再熱式を採用している。
【0049】
従って、本発明によれば既設の原子力発電システムを大幅に変更せずに、高圧タービンと低圧タービンの間の湿り蒸気の湿分を除去し、湿分分離効率が高くてコンパクトな湿分分離要素により、プラント熱効率を向上させることができる上に、プラントの合理化を図ることができる。
【0050】
図2は、湿分分離器MSの分離効率ηと空間体積Vの関係図を示す。横軸は標準化体積V、縦軸は分離効率ηを示す。横軸の基準値1.0には、従来例である現行沸騰水型軽水炉BWRの湿分分離器MSのサイズを用いた。現行湿分分離器MSの分離効率は約95%である。
【0051】
これに対し、特許文献2に記載の湿分分離器MSでは、従来例の現行湿分分離器MSに比べて、主蒸気配管をほぼそのまま使用できるため、必要な体積はほとんど増加せずに、約1/8にコンパクトになるとの記載がある。また、この方式で分離効率は約96%とのことである。しかし、この方式では主蒸気配管内を高速で流れるため、湿り蒸気中の液滴は下流側へキャリーオーバーされて分離効率は低下する可能性がある。
【0052】
一方本発明の場合は、現行湿分分離器MSに比べて空間容積を約1/4に減少することができる。その上、主軸の回転力を利用することで大きな遠心分離効果を期待できるため、圧損は現状並みで、分離効率を従来例よりも向上させることができる。なお、所内動力の増加はほとんどない。また、従来例の沸騰水型軽水炉BWR用湿分分離器MSや、改良型沸騰水型軽水炉ABWR用の湿分分離過熱器MSHに比べても、本発明の空間容積は大幅にコンパクトになることがわかる。
【0053】
このように、第1の実施例では回転式湿分分離器5とし、これをタービン回転力を外部力として駆動することで、分離効率の向上を図った。
【実施例2】
【0054】
本発明の他の実施例の湿分分離器MSシステム系統図を図3に示す。図3は、図1の構成例を基本として他の変形例を説明したものであり、特に言及しない限りは図1の実施例と同じ符号の部材は同一の構成、効果を有するものである。なお、これら他の実施例は図1の構成について適用できることは当然である。
【0055】
要するに図3の構成は、図1の湿分分離器5を高圧タービン4と低圧タービン12との間から主軸13の外側へ移動し、高圧タービン4と湿分分離器5との間に可変速機29を設置したものである。
【0056】
これにより、高圧タービン4と低圧タービン12は主軸13で連結され、同じ回転数で回転する。一方、湿分分離器5の旋回動翼8が内包されている主軸31は可変速機29で主軸の回転数を可変にすることができるため、任意の回転数で運転することができる。これにより、電気動力を取り出す高圧タービン4と低圧タービン12の回転数と、遠心式湿分分離器5の回転数を任意に変化させることができる。
【0057】
図4は、図3のシステム構成における湿分分離器MSの運転制御方法を示している。湿分分離器5の周囲に設置した凝縮水用ポット10の下部に取り付けた液位指示計10aで、滞留したドレン水の液位を検出し、適正な液位を保つように回転数調整計29aに信号を送って回転数を調整し、最適な遠心分離性能となるように湿り蒸気中の液滴を気液分離するシステムである。
【0058】
第2の実施例においては、回転式湿分分離器5を、タービン回転力を外部力として駆動することで分離効率の向上を図るとともに、可変速機構により最適効率の追求を可能とした。
【実施例3】
【0059】
図5は、本発明の他の実施例である湿分分離器MSシステム系統図を示す。図5は、図1の構成例を基本として他の変形例を説明したものであり、特に言及しない限りは図1の実施例と同じ符号の部材は同一の構成、効果を有するものである。なお、これら他の実施例は図1の構成について適用できることは当然である。
【0060】
要するに図5の構成は、図1の湿分分離器5を、高圧タービン4と低圧タービン12との間にある主軸13から分離し、駆動用モーター52を取り付けた主軸51に別に設置したものである。
【0061】
これにより、高圧タービン4、低圧タービン12、発電機14に連結された主軸13は、従来通り変更せずに運転することができ、その結果として従来のように発電する。一方、湿分分離器5の旋回動翼8が内包されている主軸51は駆動用モーター52で回転される。これにより遠心式湿分分離を行うことができるため、それぞれの回転数に応じて2軸は独立した運転が可能となる。但し、それぞれ回転用の主軸を分けたことで運用性は向上するが、駆動用モーター52起動時の所内動力は若干増加することになる。
【0062】
これにより、低圧タービンの翼のエロージョンなどによる健全性を確保することができると同時に、沸騰水型軽水炉BWRプラントの熱効率を向上させることも可能になる。
【0063】
なお、本実施例は沸騰水型軽水炉プラントを例にしたが、本発明は加圧水型軽水炉の2次系やその他の形式の原子力発電システムにも適用可能である。
【0064】
第3の実施例においては、回転式湿分分離器5を、電動機回転力を外部力として駆動することで分離効率の向上を図るとともに、可変速機構により最適効率の追求を可能とした。
【0065】
なお、以上の実施例から明らかなように、本発明の外部力は外から積極的に与えられる力であり、特許文献3のような蒸気流による受動的な回転を含まない。蒸気流による受動的な回転では、負荷変動に伴う蒸気条件変動の影響が生じ、望まれる効率向上を達成し得ない。
【符号の説明】
【0066】
1:原子炉圧力容器
2:主蒸気配管
3:主蒸気調節弁
4:高圧タービン
4a:高圧タービン翼
5:湿分分離器
6:容器
7:流入部仕切り機構
8:旋回動翼
9:流出部仕切り機構
10:凝縮水用ポット
10a:液位指示計
11:過熱器
12:低圧タービン
12a:低圧タービン翼
13:主軸
14:発電機
15:復水器
16:海水循環ポンプ
17:伝熱管
18:海水排出管
19:復水ポンプ
20:低圧給水加熱器
21:低圧給水配管
22:給水ポンプ
23:高圧給水加熱器
24:高圧給水配管
25:抽気蒸気配管
26:抽気蒸気
27:抽気蒸気
28:抽気蒸気
29:可変速機
29a:回転数調整計
30:主蒸気外部配管
31:主軸
51:主軸
52:駆動用モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、前記高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントにおいて、
高圧タービンと低圧タービンの間に、外部力により駆動される旋回動翼を備えた湿分分離機構を設置し、前記旋回動翼の遠心力により高圧タービン出口から流入する主蒸気中の湿り蒸気中の液滴を前記湿分分離機構の容器内壁へ衝突させて気液分離することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントにおいて、
前記湿分分離機構の旋回動翼を駆動する外部力を可変に調整することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項3】
請求項1に記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントにおいて、
前記湿分分離機構の旋回動翼を可変翼とすることを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項4】
請求項1に記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントにおいて、
前記湿分分離機構を、前記高圧タービン、低圧タービンの回転力を外部力として前記旋回動翼を駆動することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項5】
請求項4に記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントにおいて、
前記高圧タービン、低圧タービンの回転軸と前記湿分分離機構の前記旋回動翼の軸を同一軸上に配置し、タービンの回転力を外部力として前記旋回動翼を駆動することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項6】
請求項4に記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントにおいて、
前記高圧タービン、低圧タービンの回転軸と前記湿分分離機構の前記旋回動翼の軸を、可変速機構を介して結合し、タービンの回転力を外部力として前記旋回動翼を駆動することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項7】
請求項1に記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントにおいて、
前記湿分分離機構を、回転機の回転力を外部力として前記旋回動翼を駆動することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントにおいて、
前記遠心式湿分分離器からの蒸気を前記高圧タービン上流側または高圧タービン段落から抽気した抽気蒸気により加熱してから前記低圧タービンに導くことを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項9】
原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、前記高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントにおいて、
主軸、該主軸に設けられた前記高圧タービン、前記主軸に設けられた前記低圧タービン、前記高圧タービンと前記低圧タービンの間の前記主軸に設けられた旋回動翼を備えた湿分分離機構から構成され、前記高圧タービンの排気側室と前記湿分分離機構の入り口側室とが連結接続され、前記湿分分離機構の出口側室と前記低圧タービンの入り口側室の間が外部配管により接続されていることを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラント。
【請求項10】
原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、前記高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントにおいて、
高圧タービンと低圧タービンの間に、外部力により駆動される旋回動翼を備えた湿分分離機構を設置し、前記旋回動翼の角度を蒸気流の様相に応じて可変に調整することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントの運転方法。
【請求項11】
原子炉で発生した蒸気を高圧タービン、低圧タービンを介して復水器に導くと共に、前記高圧タービン、低圧タービンと同軸に配置された発電機により発電を行う原子力発電プラントにおいて、
高圧タービンと低圧タービンの間に、外部力により駆動される旋回動翼を備えた湿分分離機構を設置し、前記高圧タービン、低圧タービンの回転軸と前記湿分分離機構の前記旋回動翼の軸を、可変速機構を介して結合し、タービンの回転力を外部力として前記旋回動翼を駆動するとともに、前記旋回動翼の回転数を気液分離性能に応じて調整することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントの運転方法。
【請求項12】
請求項11に記載の遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントの運転方法において、
前記湿分分離機構の下部に凝縮水用ポットを設け、ドレン液位を計測して前記旋回動翼の回転数を調整することを特徴とする遠心式湿分分離器を備えた原子力発電プラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137077(P2012−137077A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291684(P2010−291684)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】