説明

遠心成形コンクリート製品の製造方法

【課題】外観が美麗で高強度な遠心成形体が得られ、遠心成形後に排出されるノロの量を低減できる遠心成形コンクリート製品の製造方法を提供する。
【解決手段】グリセリン等の特定の化合物(1)と、アルカリ金属硫酸塩と、ナフタレン系分散剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有し、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩のモル比が化合物(1)/アルカリ金属硫酸塩で5/95〜45/55である水硬性組成物を、0.5G以上の遠心力で締め固めして、遠心成形コンクリート製品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力で締め固めをする工程を有する遠心成形コンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリートの高耐久化指向が強まってきており、例えば、遠心成形コンクリート製品に使用される水量を低減して高強度化することが行われており、この傾向は今後も増加するものと予測される。かかるコンクリートは水量が低く、相対的にコンクリート中の水/水硬性粉体比、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が低くなるため、遠心成形時に必要な可塑性と締め固め性、及び、遠心成形体として内面平滑性を改善することが技術課題とされてきた。また、高強度化に伴いコンクリートを混練する際に添加するセメント分散剤の量が多くなる傾向があり、その結果、遠心成形後に排出されるノロの量が多くなるという課題がある。
【0003】
特許文献1には、製造時間の影響を受けにくく、品質の安定した遠心成型コンクリートを作業性良く製造できる遠心成形コンクリートの製造方法として、特定の重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、水硬性粉体、水を含有するコンクリートを、0.5G以上の遠心力で締め固めする工程を有する遠心成形コンクリート製品の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、材齢1〜7日程度での強度が100N/mm2以上の超高強度の遠心成形硬化体を製造するのに好適で、且つ作業性ワーカビリティにも優れた遠心成形硬化体用水硬性組成物として、水硬性粉体、骨材、分散剤及び水を含有する遠心成形硬化体用水硬性組成物であって、分散剤がナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩であり、水硬性組成物の初期スランプ値が0〜7cm、崩落量が200g以下、水/粉体重量比が10/100〜22/100、粉体の重量が450〜1000kg/m3である遠心成形硬化体用水硬性組成物が開示されている。そして、該水硬性組成物を用いた遠心成形時に、初期遠心力が0.1〜1.5Gの範囲にあると型枠内での遠心締固め性が良好で、内壁面が平滑に成形できることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、凝結速度に影響を与えないで、減水率を向上させると共に、スランプの経時変化量の低減や遠心力成形における脱水性を向上させることなどを課題として、高性能減水剤とアルカリ金属の硫酸塩とを配合してなる高性能減水剤組成物からなる遠心力成形助剤が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、セメント組成物のスランプと得られるコンクリートまたはモルタルの強度がいずれも低下することなく、排出されるノロ量を大幅に低減することを課題として、減水剤および/または高性能減水剤と、増粘剤と、凝結硬化促進剤を特定比率で含有し、セメント組成物の降伏値と塑性粘度が特定範囲にある遠心力成形用セメント組成物が開示されている。そして、凝結硬化促進剤として、ギ酸塩、酢酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、チオシアン酸塩、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、および硫酸カリウムからなる群より選ばれる1種以上が用いられている。
【0007】
また、特許文献5には、遠心力成形製品のノロの発生を低減することを課題として、ベントナイトと、グリセリン及び/又は蔗糖とを主成分とし、SO3含有量が1重量%以下であるノロ低減剤が開示されている。そして、ベントナイトのノロ防止力を低下させる成分がSO3であり、硫酸アルカリ金属塩や硫酸アルカリ土類塩等として含まれることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−47467号公報
【特許文献2】特開2008−7351号公報
【特許文献3】特開2004−284951号公報
【特許文献4】特開平11−60311号公報
【特許文献5】特開2001−39744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、遠心成形型枠への充填性を向上するためにスランプ値を大きくしても内壁面の平滑性に優れる、端面に未充填部分がない等、外観が美麗で且つ高強度な遠心成形体が得られ、遠心成形後に排出されるノロの量を低減できる遠心成形コンクリート製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物〔以下、化合物(1)という〕と、アルカリ金属硫酸塩と、ナフタレン系分散剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有し、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩のモル比が化合物(1)/アルカリ金属硫酸塩で5/95〜45/55である水硬性組成物を、0.5G以上の遠心力で締め固めする工程を有する、遠心成形コンクリート製品の製造方法に関する。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、Xは、ヒドロキシ基又はアミノ基である。〕
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遠心成形型枠への充填性を向上するためにスランプ値を大きくしても内壁面の平滑性に優れる、端面に未充填部分がない等、外観が美麗で且つ高強度な遠心成形体が得られ、遠心成形後に排出されるノロの量を低減できる遠心成形コンクリート製品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例、比較例で作製したパイル供試体の内壁面の状態を示す概略図
【図2】実施例、比較例で作製したパイル供試体の端面の状態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<水硬性組成物>
本発明に係る水硬性組成物は、化合物(1)と、アルカリ金属硫酸塩と、ナフタレン系分散剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有する。ノロ低減の観点から、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩のモル比は化合物(1)/アルカリ金属硫酸塩で5/95〜45/55であり、好ましくは10/90〜40/60、より好ましくは15/85〜40/60、更に好ましくは15/85〜30/70である。化合物(1)の割合が大きくなるとコンクリートが締まりすぎて、遠心成形体の内面平滑性及び端面の美観が悪化すると同時に、得られる遠心成形コンクリートの強度も低下する傾向がある。また、アルカリ金属硫酸塩の割合が大きくなると、遠心成形時のノロの量が増大及び遠心成形体の内面平滑性の悪化する傾向がある。
【0016】
化合物(1)としては、グリセリン及び3−アミノ−1,2−プロパンジオールが挙げられる。これらは液体状のものが使用でき、市販品を用いることができる。
【0017】
アルカリ金属硫酸塩は水和物の形態をとっていても良い。水和物の形態をとっている場合の重量等は無水物に換算した値を用いる。塩を構成するアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられ、ナトリウム及びリチウムが好ましい。アルカリ金属硫酸塩としては、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸リチウム(Li2SO4)が挙げられる。これらの中でも、水への溶解性が高くコンクリート製造の観点から、硫酸ナトリウム及び硫酸リチウムから選ばれる無機塩がより好ましい。
【0018】
本発明の効果発現の機構は不明であるが、ナフタレン系分散剤が作用してスランプ値が大きくなり内面平滑性や端面状態の向上効果が発現する。一方、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩が相乗的に作用することで、セメントに含まれる鉱物の水和反応の促進により、ノロ発生の原因となる自由水が拘束される結果、ノロ排出量が低減できるものと考えられる。
【0019】
ナフタレン系分散剤としては、ナフタレンスルホン酸骨格を有する高分子化合物が挙げられ、例えばナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。ナフタレン系分散剤の重量平均分子量は、1000〜200000が好ましく、3000〜100000がより好ましく、4000〜80000が更に好ましく、5000〜50000がより更に好ましい。ナフタレン系分散剤は液状及び粉末状のものを用いることができる。ナフタレン系分散剤として市販品を用いることができ、例えば、花王(株)製マイテイ150が挙げられる。
【0020】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行っても良い。また、中和で副生する水不溶解物を除去しても良い。例えば、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2〜1.4モルを用い、150〜165℃で2〜5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95〜0.99モルとなるようにホルマリンを85〜95℃で、3〜6時間かけて滴下し、滴下後95〜105℃で縮合反応を行う。要すれば縮合物に、水と中和剤を加え、80〜95℃で中和工程を行う。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0〜1.1モル倍添加することが好ましい。また中和による生じる水不溶解物を除去、好ましくは濾過により分離しても良い。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液をナフタレン系分散剤としてそのまま使用することができる。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩を得ることができ、これを粉末状のナフタレン系分散剤として用いてもよい。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。上記方法により、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を得る事ができるが、その他の条件や方法にて目的物を得る事ができる。
【0021】
また、本発明に係る水硬性組成物においては、遠心成形時のノロの排出量の低減及び遠心成形体の内面平滑性の向上の観点から、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩の含有量の合計とナフタレン系分散剤との重量比が、ナフタレン系分散剤/〔化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩の含有量の合計〕=5/95〜96/4であることが好ましく、より好ましくは20/80〜60/40である。この割合は水硬性組成物を調製する際の化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩とナフタレン系分散剤の量に基づいて計算できる。
【0022】
本発明に係る水硬性組成物は、遠心成形体の端面の美観の向上の観点から、水硬性粉体100重量部に対して、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩の含有量の合計が0.1〜5重量部の割合であることが好ましく、更に好ましくは0.3〜4重量部、より好ましくは0.5〜4重量部である。この割合は水硬性組成物を調製する際の化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩の量に基づいてもよい。
【0023】
本発明に係る水硬性組成物は、水硬性組成物の流動性向上の観点から、水硬性粉体100重量部に対して、ナフタレン系分散剤が0.01〜10重量部の割合であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。この割合は水硬性組成物を調製する際のナフタレン系分散剤の量に基づいてもよい。
【0024】
また、本発明に係る水硬性組成物は、水硬性組成物の遠心成形時のノロの排出量の低減、遠心成形体の内面平滑性の向上、端面の美観の向上及び水硬性組成物の流動性向上の観点から、水硬性粉体100重量部に対して、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩及びナフタレン系分散剤の合計で0.1〜10重量部の割合であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは1〜5重量部である。この割合は水硬性組成物を調製する際の化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩とナフタレン系分散剤の量に基づいてもよい。
【0025】
本発明に係る水硬性組成物は、各種セメントを始めとし、水和反応によって硬化性を示すあらゆる無機系の水硬性粉体に使用することができる。水硬性粉体とは、水と反応して硬化する性質をもつ粉体及び単一物質では硬化性を有しないが、2種以上を組合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する粉体をいう。水硬性粉体として、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)等の各種セメントが挙げられる。遠心成形コンクリートには、セメント以外の水硬性粉体として、石膏、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム等が含まれてよい。
【0026】
本発明に係る水硬性組成物は、骨材を含有する。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
【0027】
本発明に係る水硬性組成物は、その他の添加剤を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0028】
また、本発明に係る水硬性組成物は、消泡剤を併用することができる。消泡剤としては、(1)メタノール、エタノール等の低級アルコール系、(2)ジメチルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン系、(3)鉱物油と界面活性剤の配合品等の鉱物油系、(4)リン酸トリブチル等のトリアルキルリン酸エステル系、(5)オレイン酸、ソルビタンオレイン酸モノエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等の脂肪酸又は脂肪酸エステル系、(6)ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系が挙げられる。
【0029】
本発明に係る水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕は、10〜50重量%、更に10〜40重量%、より更に10〜35重量%であってもよい。W/Pの値が小さいほど、遠心成形体における内面平滑性、端面の外観の改善効果の差が顕著となる。
【0030】
本発明に係る水硬性組成物は、細骨材率(s/a)が30〜45体積%、更に35〜40体積%であることが好ましい。s/aは、細骨材(S)と粗骨材(G)の体積に基づき、s/a=〔S/(S+G)〕×100(体積%)で算出されるものである。
【0031】
本発明に係る水硬性組成物は、細骨材と粗骨材とを含有することが好ましい。細骨材は、未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、450〜950kg、更に550〜750kg含有することが好ましい。また、粗骨材は、未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、1000〜1200kg、更に1050〜1150kg含有することが好ましい。
【0032】
本発明に係る水硬性組成物のスランプ値は、ノロの低減の観点から、0〜8cmが好ましく、水硬性組成物の型枠への充填性の向上とノロの低減の観点から、1〜6cmがより好ましく、2〜5cmが更に好ましく、3〜5cmがより更に好ましい。水硬性組成物のスランプ値は、JIS A 1101に従い測定する。
【0033】
本発明に係る水硬性組成物は、水硬性粉体に、化合物(1)と、アルカリ金属硫酸塩と、ナフタレン系分散剤と、骨材を添加する工程であって、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩とを、化合物(1)/アルカリ金属硫酸塩のモル比が5/95〜45/55となるように添加する工程を経て製造することができる。この工程では、前記した割合を達成できるように各成分の使用量を調整することが好ましい。本発明では、水硬性組成物における化合物(1)/アルカリ金属硫酸塩の前記モル比は、アルカリ金属硫酸塩の添加により達成されることが好ましい。
【0034】
化合物(1)と、アルカリ金属硫酸塩と、ナフタレン系分散剤は、それぞれ別々に添加してもよいし、予めこれらの2種以上を混合してから添加してもよい。また、水硬性組成物を調製する際に、化合物(1)と、アルカリ金属硫酸塩と、水硬性粉体と、骨材とを混合した後、水と分散剤を添加して混合する方法が、水硬性組成物を製造する際でも、化合物(1)及びアルカリ金属硫酸塩を容易に均一に混合できる点で好ましい。
【0035】
具体的な製造方法としては、水硬性粉体に、骨材と、水と、化合物(1)と、アルカリ金属硫酸塩と、ナフタレン系分散剤とを、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩とを化合物(1)/アルカリ金属硫酸塩のモル比が5/95〜45/55となるように添加し水硬性組成物を調製する工程が挙げられる。
【0036】
さらに、本発明の遠心成形コンクリート製品の製造方法では、得られた水硬性組成物を遠心成形型枠に充填し遠心成形する工程と、好ましくは遠心成形後の水硬性組成物を遠心成形型枠に充填したまま養生する工程と、硬化した水硬性組成物を型枠から脱型して遠心成形コンクリート製品を得る工程を含むことができる。更に、水硬性組成物の調製を開始してから脱型するまでの時間が8〜30時間である遠心成形コンクリート製品の製造方法が挙げられる。
【0037】
水硬性組成物を遠心成形型枠に充填し遠心成形する工程では、遠心成形コンクリートを、0.5G以上の遠心力で締め固めを行う。遠心成形の遠心力は、好ましくは0.5G〜30G、より好ましくは0.5G〜25G、更に好ましくは0.5G〜20Gである。エネルギーコスト低減面と成形性の面から、少なくとも1分以上、遠心力を15G〜30G、更に15〜25G、より更に15〜20Gの範囲(高遠心力ともいう)に保持することが好ましい。
【0038】
遠心力での締め固めは、例えば0.5〜30Gの遠心力で5〜40分、更に7〜40分、より更に9〜40分間行なうことが好ましい。成形体を平滑に締め固める観点から、高遠心力の保持による締め固めは1〜10分、更に3〜10分、より更に5〜10分間行なうことが好ましい。
【0039】
遠心力での締め固めは、段階に分けて行うことができ、成形性の観点から、段階的にGを大きくする方法が好ましい。例えば、(1)初速が0.5G以上2G未満の遠心力で1〜10分間、(2)二速が2G〜5G未満の遠心力で1〜10分間、(3)三速が5G〜10G未満の遠心力で1〜10分間、(4)四速が10G〜20G未満の遠心力で1〜10分間、(5)五速が20G〜30Gの遠心力で1〜10分間行うことが好ましい。
【0040】
また、遠心成形終了後に、遠心成形後の水硬性組成物を遠心成形型枠に充填したまま養生する工程を有することが好ましい。養生条件としては、室温(20℃)に1〜4時間放置し、蒸気養生を行なうことが好ましい。具体的な養生条件は、昇温速度は、1時間当たり、10〜30℃、60〜85℃に昇温して2〜8時間保持し、次いで、1時間当たり、5〜20℃で室温まで冷却し、成形体を脱型する。好ましい条件の一例を挙げれば、室温に3時間放置し、昇温速度20℃/時間、80℃で6時間保持し、次いで、10℃/時間で室温まで冷却して、20〜30時間後に成形体を脱型する方法が挙げられる。また、更に180℃のオートクレーブ養生を行なう事も可能である。
【0041】
<遠心成形コンクリート製品>
本発明の製造方法により得られる遠心成形コンクリート製品として、パイル、ポール、ヒューム管等が挙げられる。本発明の製造方法により得られる遠心成形コンクリート製品は、製造時のノロの発生量が少なく当該製品の製造現場での廃棄物を低減できる。また、締め固めに優れることから、当該製品の内面及び端面凹凸が少なく、表面美観に優れるとともに、更に製品内面が平滑に仕上がることから、パイル打ち込み、中堀工法時の切削機の障害が改善される。さらに、本発明の製造方法では強度が高いコンクリート得られるので、例えば、1日後の圧縮強度(後述の実施例の方法による)が、100N/mm2以上、更に110N/mm2以上、より更に120N/mm2以上の遠心成形コンクリート製品に好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
<遠心成形用コンクリートの調製及び評価>
(1)遠心成形用コンクリートの調製
表1に示す配合条件で30Lの遠心成形用コンクリートを製造した。具体的には、強制二軸ミキサー(回転数60rpm.、許容容積60L、型式:IHI-DAM60)を用いて、化合物(1)と硫酸ナトリウムからなる添加剤、セメント(NC)、細骨材(S)、粗骨材(G)を投入し空練りを30秒間行い、スランプ値が表2の目標値となるよう、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物〔マイテイ150、花王(株)製(有効分40重量%の水溶液)〕からなる分散剤を含む練り水(W)を加え、低速回転にて270秒間本混練りして遠心成形用コンクリートを調製した。なお、化合物(1)、硫酸ナトリウム、分散剤のセメント100重量部に対する有効分の添加量(重量部)は表2の通りである。
【0043】
【表1】

【0044】
・W:練り水(分散剤を含む)
・NC:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)の普通ポルトランドセメント/住友大阪セメント(株)の普通ポルトランドセメント=1/1、重量比)、密度3.16g/cm3
・SF:シリカフューム、密度2.25g/cm3
・S:細骨材、土山産、山砂、FM=2.67、密度2.56g/cm3
・G:粗骨材、兵庫県家島産砕石、密度2.63g/cm3
【0045】
(2)成形性の評価
コンクリート15kgを遠心成形型枠(φ20cm×高さ30cm)に入れて、初速1Gで3分間、二速3Gで3分間、三速7Gで2分間、四速15Gで2分間、五速25Gで2分間の遠心締め固めを行い、前置き20℃で3時間、昇温20℃/時間、保持80℃で6時間、冷却10℃/時間、20℃保持の蒸気養生を行った。型枠に入れてから24時間後に脱型し、脱型後に、ノロ排出量、内壁面平滑性及び端面状態を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0046】
(2−1)ノロ排出量
15kgのコンクリートを用いてパイル供試体を作製した際のノロ発生量を測定した。具体的には、遠心後の供試体(脱型前)を傾け、内面内に存在するノロを回収し、供試体2本分のノロ重量の平均値を求めた。
【0047】
(2−2)内壁面平滑性
作製したパイル供試体の内壁面の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、A、B、Cに相当する代表的な状態を、図1(a)〜図1(c)に示した。
A:内壁面に目立った凹凸が見られず、内壁面の断面がきれいな円形として認識できる。
B:内壁面に凹凸が見られるが、内壁面の断面は円形として認識できる。
C:内壁面の断面が歪な円形になり、内壁面の凹凸も目立つ。
【0048】
(2−3)端面状態
作製したパイル供試体の端面の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、A、B、Cに相当する代表的な状態を、図2(a)〜図2(c)に示した。
A:端面にコンクリートが未充填の部分がない。
B:端面の面積の二割以下の部分にコンクリートが未充填の部分がある。
C:端面の面積の二割を超える部分にコンクリートが未充填の部分がある。
【0049】
(3)圧縮強度
成形性の評価に用いた硬化体の厚みの平均値から圧縮面積を求め、JIS A 1108に従い圧縮応力を測定し、圧縮応力/圧縮面積により圧縮強度を求めた。
【0050】
【表2】

【0051】
1) 水硬性粉体(NC及びSF)100重量部に対する有効分の添加量(重量部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物〔以下、化合物(1)という〕と、アルカリ金属硫酸塩と、ナフタレン系分散剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有し、化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩のモル比が化合物(1)/アルカリ金属硫酸塩で5/95〜45/55である水硬性組成物を、0.5G以上の遠心力で締め固めする工程を有する、遠心成形コンクリート製品の製造方法。
【化1】

〔式中、Xは、ヒドロキシ基又はアミノ基である。〕
【請求項2】
化合物(1)が、一般式(1)中のXがヒドロキシ基の化合物である、請求項1記載の遠心成形コンクリート製品の製造方法。
【請求項3】
前記水硬性組成物中の化合物(1)とアルカリ金属硫酸塩の合計量が、水硬性粉体100重量部に対し0.1〜5重量部である請求項1又は2記載の遠心成形コンクリート製品の製造方法。
【請求項4】
前記水硬性組成物のスランプ値が2〜5cmである、請求項1〜3いずれか1項記載の遠心成形コンクリート製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−144385(P2012−144385A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2230(P2011−2230)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】