説明

遠紫外高輝度発光する高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末とその製造方法

【課題】 高純度溶媒の存在下で高温高圧処理することによって得られる高純度六方晶窒化ホウ素単結晶(hBN)は、遠紫外発光特性において優れた性質を有する反面、機械的振動、刺激に弱く、単結晶の形態保持性が悪く、発光特性も変動し、設定した波長に狂いが生じる不都合があった。
【課題を解決する手段】
本発明は、前記溶媒精製法によって得られた単結晶を、すりつぶして粉末とし、発光面に塗布することによって、振動に弱い単結晶の弱点、形態保持性の悪さをカバーし、発光特性の変動しない安定した発光特性を発現する遠紫外発光素子結晶粉末を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)波長224nmから233nm著しくは227nmに発光ピークが存する遠紫外光を高輝度発光する高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末とその合成方法に関する。さらに、本発明は、(ii)前記高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末を塗布した蛍光面を有する発光素子に関する。さらにまた、本発明は、(iii)前記高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末を発光層に用いた電子線および中性子線などの放射線検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高輝度紫外線発光材料の開発は、近年窒化ガリウムおよびその固溶体を始め、種々の材料によって、発光波長300nm台の発光材料が提案され、実用化に向けて開発が進められている。これら固体発光材料の発光波長の短波長化は、記録媒体への書き込みの高密度化や人体に有害な水銀を使用する水銀灯の置き換え等を始めとして、多くの需要がある。
【0003】
遠紫外領域(以下では波長200〜240nmと定義する)の高輝度発光素子材料を探索する上では、広いバンドギャップを有すること、化学的に安定であること、望ましくは直接遷移型の半導体であることなどが重要な要素として挙げられる。 本発明者らグループにおいても、遠紫外発光する材料の開発に取り組み、鋭意研究した結果、窒化ホウ素を高圧下で溶媒処理することによって、窒化ホウ素結晶は高純度化され、その得られた高純度六方晶窒化ホウ素単結晶(以下、この単結晶をhBNと表記する)は、5.8eV付近にバンドギャップを有し、波長200nm付近の遠紫外領域に強い発光ピークを有することを知見し、その研究成果を特許出願し、学術文献にも発表した(特許文献1ないし3、非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、この得られてなるhBNは、その窒素原子とホウ素原子結合がsp2結合に基づいてなるものであり、機械的物理的な刺激に対してその設計された形状が容易に壊れてしまうので取り扱いが難しいという欠点を持ち、しかも、後述するようにこの結晶は、壊れる前と後では発光波長領域が変動するという厄介な問題があることが分かった。安定で高い発光効率を求める発光素子の設計においては、このような事態が好ましくないことは当然であり、取り扱いが簡単で安定な形態を持つ高効率な遠紫外発光材料が好ましい。また、このような形態不安定性は、窒化ホウ素本来の特性である高温安定性を利用した材料設計においても同様であり、形態変動のない使用しやすい状態とすることが好ましい。
【0005】
そのような材料としては特許文献4に示されるようにsp3結合型窒化ホウ素を挙げることができる。しかしながら、特許文献4に記述される方法では、製造工程が再現性の点で複雑であり、かつ高価な紫外光レーザやパルスレーザを用いることが必須条件であるなどの欠点を持っている。加えて、このような気相成長法では発光特性において均一な品質の窒化ホウ素を製造することは極めて難しい。
【0006】
【非特許文献1】Nature Materials,vol.3,404‐409(2004)
【特許文献1】特願2003−388467
【特許文献2】特願2004−035501
【特許文献3】特願2004−260480
【特許文献4】特願2002−192863
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上が、遠紫外領域の発光特性を有するものとして期待される窒化ホウ素材料の現状である。特に、本発明者らグループによって開発、提案された特許文献1ないし3に記載された遠紫外領域で高効率な発光効率を有する窒化ホウ素単結晶hBNは、直接遷移型であり、高輝度で遠紫外・短波長発光しうる固体発光素子としての機能は極めて高く、機械的に不安定であるという欠点を上回る利点があり、したがってこの欠点を乗り越え、対処することによってその活用を図ることは極めて大きなメリットがあり、これを活かすことは極めて重要であり、その対策を図ることが求められ、期待されている。
【0008】
本発明は、この要請に応えようというものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、従来のhBNの合成手法によって得られた高純度単結晶を各種応用用途に供するための利便性を得るために単結晶育成方法およびその後の結晶形態加工に関する。これによって、hBNの特性を反映した遠紫外高輝度発光する素子を提供しようというものである。これをさらに使用形態に基づいて言及すると、前記発光特性を有するhBNを利用し、これまでのようにガスを用いた大型装置あるいは複雑で高価な半導体装置によらない、簡単で、小型、低コスト、高効率な遠紫外域・高輝度発光固体発光装置を提供しようというものであり、さらには該発光特性を利用した高効率な電子線および中性子線などの放射線センサを提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため本発明者らにおいては、前記非特許文献1、あるいは特許文献1ないし3において報告し、提案した、hBN原料から出発し、これを清浄な乾燥窒素雰囲気と精製溶媒とによって高純度hBN単結晶を得る合成実験につき、研究を進め、温度圧力条件を適宜調整することによって、得られた高純度hBN単結晶につき、その形態不安定性を解消すべく鋭意研究した結果、前記合成で得られた単結晶を、結晶の形態変動のない粉末化処理が有効であるとの知見に至った。すなわち、前記合成で得られた結晶を該単結晶をすりつぶして粉末とすることにより単結晶の弱点である形態保持性の悪さと、発光特性が変動する不都合が解消され、機械的振動および衝撃などに対して安定であり、波長224nmから233nm著しくは227nmに発光ピークが存し、変動することなく安定して遠紫外光を高輝度発光する高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末が得られることを見いだしたものである。また、該高純度hBN単結晶において高輝度発光を阻害する要因として酸素不純物が重要であることを見いだし、前記合成条件で得られた高輝度遠紫外発光を示す単結晶は、酸素不純物原子濃度が1立方センチメータあたり10の18乗個以下であることを知見した。前述のような、単結晶を粉末化するプロセスにおいて、結晶格子内に取り込まれ該遠紫外発光を阻害しうる酸素不純物が混入することはなく、該高純度かつ低酸素不純物濃度の結晶を出発物質に選ぶことにより、確実かつ容易に均一な高純度六方晶窒化ホウ素粉末を得ることが出来る。
【0010】
すなわち、本発明は、前述非特許文献1および特許文献1ないし3に記載された先行技術を前提技術として得られた、高純度hBN単結晶を鋭意研究した結果、これら文献に記載された合成条件方法によって得られた高純度hBN単結晶をすりつぶして、結晶の形態をして変動することない粉末レベルとし、これに電子線を照射するだけで波長224nmから233nm著しくは227nmの遠紫外領域に単独発光ピークが存する高純度hBN単結晶粉末の合成に成功したものである。さらには、特許文献4に示されるような複雑かつ高価な作製プロセスを経ることなく安定で均一な発光特性を示す紫外発光材料の作製に成功したものである。
【0011】
また、本発明者らは、上記高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末を基板に塗布し発光素子、あるいは発光層として利用し、この発光素子、発光層に電子線照射による励起手段を設定
し、組み込んだことによって、従来のように水銀などの有害物質を用いた紫外線ランプや、幾層にもわたる複雑なpn接合、pin接合を繰り返して製作されるコストのかかる半導体固体発光デバイスを用いた発光装置とは異なり、簡単で、小型、高効率な遠紫外光固体発光装置を容易に設計し、提供することに成功した。さらに電子線や中性子線等の放射線などにより励起された該発光基板からの該紫外発光を光電子増倍管などの光検出器に入射せしめる構造を構築することにより高感度で応答性能のよい放射線検出器を提供することにも成功した。
【0012】
本発明は、以上に記載した一連の研究による知見と成功に基づいてなされたものであり、その態様は、以下(1)ないし(13)に記載の通りである。
【0013】
その中、(1)〜(5)の高純度六方晶窒化ホウ素単結晶とその合成方法ならびに該単結晶を粉末化して得られた単結晶粉末に係る一群の発明を、第1群の発明という。また、(6)〜(10)の前記単結晶粉末を発光層に利用した遠紫外固体発光素子と、この素子に励起手段を組み合わせた固体発光装置にかかる発明を、第2群の発明という。さらに、(11)〜(14)の前記単結晶粉末を塗布した基板からなる発光層と光電子増倍管などの光検出器を組み合わせたことによりなる電子線および中性子線などの放射線検出器にかかる発明を第3群の発明という。
【0014】
(第1群の発明)
(1) 一般式:BNで示され窒素原子とホウ素原子のsp2結合によりなり、励起手段によって励起されて波長224nmから233nm著しくは227nmに発光ピークが存する遠紫外光を高輝度発光する特性を有してなる、遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末。
(2) 前記遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の酸素不純物原子濃度を1立方センチメータあたり10の18乗個以下に設定したことを特徴とする、(1)に記載する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末。
(3) 一般式:BNで示され窒素原子とホウ素原子のsp2結合を有する高純度窒化ホウ素単結晶をすり潰すことにより、励起手段によって励起されて波長224nmから233nm著しくは227nmに発光ピークが存する遠紫外光を高輝度発光する特性を有してなる高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末を得ることを特徴とする、遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の製造方法。
(4) 前記一般式:BNで示され窒素原子とホウ素原子のsp2結合を有する高純度窒化ホウ素単結晶が、高純度溶媒の存在下で高温高圧処理されて再結晶化することにより得られた高精度に精製されてなる高純度結晶であることを特徴とする、(3)に記載する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の製造方法。
(5) 前記溶媒として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の窒化物またはホウ窒化物から選択される1種又2種以上を用いることを特徴とする、(4)に記載する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の製造方法。
【0015】
(第2群の発明)
(6) 励起手段によって励起されて発光する発光層を有する固体発光素子において、発光層を形成する発光材料として、励起手段によって励起されて波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末を使用することを特徴とした、固体発光素子。
(7) 発光層を有する固体発光素子と発光層を励起する励起手段を備えてなる固体発光装置において、波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末を含む発光材料を使用した発光層と励起手段とを真空容器中に一体に封入し、励起手段によって発光層を効率よく励起して光を発生するようにしたことを特徴とする、固体発光装置。
(8) 前記励起手段が、電子線放出する励起手段であることを特徴とする、(7)に記載する固体発光装置。
(9) 前記電子線放出する励起手段が、発光材料を塗布した発光層に対し、その表面に取り付けられたアノード電極と、発光層に絶縁スペーサーを介して取り付けられた電子線放出基板と、電子線放出基板裏面に取り付けられたカソード電極と、両電極間に電圧を印加する手段とによって構成され、両電極間に電圧を印加することによって、前記電子放出基板から発光層に電子線を放出し、発光層を励起して発光するようにしたことを特徴とする、(8)に記載する固体発光装置。
(10) 前記絶縁スペーサーを介して取り付けられた電子線放出基板が、ダイヤモンド基板である、(9)に記載する固体発光装置。
【0016】
(第3群の発明)
(11) 放射線検出器において、波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末からなる発光層と、該発光層からの光を検出する光検出器とから構成されてなり、該発光層に放射線を入射せしめ、放射線によって励起されて発光した光を光検出器によって検出するようにしたことを特徴とする、光感応型放射線検出器。
(12) 前記発光層が、波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末からなる発光材料を基板に塗布することに形成されてなるものであることを特徴とする、(11)に記載する放射線検出器。
(13) 前記発光層に使用される波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末におけるホウ素成分を、熱中性子吸収断面積の大きな質量数10の同位体の濃度を、天然存在比の20%よりも濃い濃度となるように調製し、中性子線に対して感応しやすく設定したことを特徴とする、(11)又は(12)に記載する放射線検出器。
(14) 前記放射線検出器が、中性子線を検出するための検出器として使用されることを特徴とする、(13)に記載する放射線検出器。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、第1群の発明により、従来の技術では得られなかった波長224nmから233nm著しくは227nmに強い高輝度発光を示す特有かつ均一な発光特性を有し、機械的振動および衝撃に安定で六方晶窒化ホウ素単結晶粉末を簡便かつ安価な方法で創出可能となった。これによって、高輝度紫外線固体発光素子を設計することが可能となり、ますます高密度化する記録媒体の開発や、高出力化による強力な殺菌など、多様な要請に応えることができるものである。
【0018】
さらに、本発明は、第2群の発明により、高純度窒化ホウ素結晶粉末を発光層に使用し、この発光層と、励起手段、とりわけ、ダイヤモンドによる電子線放出部を有する基板による電子線励起手段とを真空容器内に一体に組み込んだことにより、小型で、低コスト、高効率、長寿命、室温で、波長224nmから233nm著しくは227nmをピークとする単峰性の高輝度固体発光装置を提供することを可能とするものである。
【0019】
さらに、本発明の第3群の発明により、高純度窒化ホウ素結晶粉末を発光層に利用することにより、コンパクトで低コスト、長寿命な電子線、中性子線などの放射線検出器を提供することを可能とするものである。
【0020】
以上述べるように、本発明は、これまで困難であった波長224nmから233nm著しくは227nmに発光波長をもつ小型固体発光素子および小型固体発光装置および高感度高速放射線検出器を提供するのに成功したもので、各種産業分野の発展に大いに寄与す
ることが期待される。小型で、高出力、低コスト、長寿命の遠紫外線固体発光素子および固体発光装置は多くの分野で望まれており、その利用範囲は、半導体分野(フォトリソグラフィーの高細密化)、情報分野(次世代大容量光ディスク)、医療、生体分野(眼科治療、DNA切断など)、環境分野(殺菌等)など多岐にわたり、そこから得られる利益は計り知れない。また、高感度高速放射線検出器は、原子力利用分野や医療分野において非常に重要かつ有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、第1群から第3群の発明毎に順番に説明する。これらの具体例は、本発明を容易に理解し、実施するための一助として開示するものであって、本発明をこれによって限定する趣旨ではない。
【0022】
本発明の第1群の発明は、遠紫外領域で紫外発光する高純度hBN単結晶粉末の作製プロセスならびに前記単結晶粉末からなる発光素子に関するものである。
【0023】
遠紫外領域で紫外発光する高純度hBN単結晶粉末は、原料hBNを高純度のアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属ホウ窒化物溶媒の存在下で高温高圧処理し、次いで再結晶化するプロセスと、得られた再結晶をすり潰し粉末化するプロセスにより生成される。
【0024】
以下にはまず高純度hBN単結晶を得るためのプロセスを示す。
再結晶化することによって、不純物のない、235nm以下、特に波長210nmから220nm、著しくは215nmにおいて高輝度紫外線発光を有する低欠陥なhBN単結晶を得ることが出来るものである。そのための温度、圧力条件は、高温、高圧を必要とする。一応の目安として2万気圧、1500℃以上が好ましい。
【0025】
この条件は、原料である窒化ホウ素が溶媒の共存下でhBNに再結晶する温度、圧力条件であり、その間に溶媒として用いたアルカリ金属ないしアルカリ土類金属のホウ窒化物が酸化したり、分解したりせず安定に存在することが必要となる。特に、高圧力下で反応を進めることは有効であり、これによって溶媒の分解が抑制され、大型高純度結晶合成のための長時間の結晶育成が可能となり、好ましい。
【0026】
しかしながら、過度に圧力を高くすると、原料として用いたhBNは、高圧相であるcBNへの相転換が起きるので注意を要する。すなわち、目的とする高純度hBN単結晶を得るためには、cBN単結晶が生じない領域の温度圧力条件を必要とする。図1は、hBNの再結晶条件とする温度圧力条件を示すものである。この図によるとcBNの熱力学的安定条件下であってもhBNへの再結晶は可能であるが、圧力の増加とともにcBNへの転換が容易に進行し、hBNの再結晶化を進めるにはhBNの安定条件となる高い反応温度が必要となる。
【0027】
すなわち、hBN再結晶のための上限の圧力としては6GPa程度が適当であり、これ以上の圧力ではhBNの熱力学的安定条件に合成条件を設定せねばならず、その際の温度は3000℃付近となり、充分な大きさの結晶を得るための条件として適当ではない。このため、工業生産としての経済性を考慮すれば、当該単結晶の合成条件の上限としては、6万気圧程度でよい。下限については、溶媒の分解や酸化を抑制することができれば、1気圧以下でも再結晶化による高輝度発光高純度hBN結晶の合成は可能である。本発明では、図1の網掛けで示したhBN再結晶領域において、高輝度発光高純度hBN結晶が合成された。
【0028】
一方、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属のホウ窒化物等は水分や酸素と容易に反応し、これら酸化物等を不純物として含む反応系で再結晶したhBNは酸素等の不純物の影
響を受け、300nm以下の短波長領域において発光する現象を示してなるhBN単結晶を得ることが出来なかった。これに対して、本発明は、通常市販に供されているいわゆる低圧相による窒化ホウ素を原料とし、該原料を高純度溶媒を用いて溶解し、再結晶化することにより、従来技術、先行技術では得ることのできなかった、波長235nm以下といった短波長領域での発光、特に波長210nmから220nm、著しくは波長215nmにおいて高輝度紫外線発光を示す高純度hBN単結晶を得ることができる。
また、図2に示されるように二次イオン質量分析スペクトル(SIMS)において見られるように215nm発光を示す該高純度hBN単結晶と前述の酸素不純物濃度の高い単結晶の酸素濃度の差は明らかであり、遠紫外発光215nmを示す該高純度単結晶の酸素不純物原子濃度が1立方センチメータあたり10の18乗個以下であることが示されている。
【0029】
次にこの高純度hBN単結晶を粉末化するプロセスとその効果について述べる。参考のために図3にhBNの結晶構造の概念図を示す。
図3に示されるようにhBNはホウ素原子と窒素原子がsp2結合により非常に強固かつ安定な六角形ネットワークを形成し、該六角形ネットワークが弱く結合し積み重なることによってなる。したがって、上記のプロセスにより得られた単結晶はc面平行すなわち六角形ネットワークに平行に強い劈開性を示し、機械的振動などの物理的理由により容易に崩れてしまう。
【0030】
また、現状では大きさが数ミリ角程度に限定され、この状態としたままではでは応用上用途が限定されてしまう。そこでこの単結晶をすり潰すことにより安定でより利便的な粉末を得ることが本発明の主旨である。前述した単結晶からは波長215nmの発光エネルギーが得られるがこれは、自由励起子発光によるものであり、この物質固有の性質を反映したものである。これを金属板などの間にはさみ、力を加えすり潰して得られる粉末からの発光は、一様に波長224nmから233nm著しくは227nmに発光ピークを示すようになる。
【0031】
この原因は、高純度単結晶で存在した自由励起子が、結晶をすり潰すことにより生成された六角形ネットワーク各層の積み重ね秩序の乱れによる積層欠陥にトラップされ束縛励起子発光することによる。このような物理的変形に対しsp2結合からなる六角形ネットワークは強固であり、結合形態をたとえばsp3結合などの別の結合形態に変化することはない。前述の物理的変形はこの結晶の積層方向の秩序を乱すのみである。したがって、ひとたび積層欠陥を意図的に作製するならば上記の発光波長は安定であり、さらなる物理的変形に対して、発光ピークを大きく変化させることはない。また、このような物理的変形に際して結晶格子内に取り込まれ発光を阻害するような不純物原子の混入は不可能であり、これによって、該遠紫外発光が阻害されることはあり得ない。
【0032】
すなわち、前述の粉末からの発光ピークはsp2結合をもつhBN固有の性質で積層方向の秩序が乱れたときにのみ観測される発光と同定される。以上の様相から容易に想像できるようにhBN単結晶は、物理的機械的振動や衝撃などの物理的変形に対し形状の不安定性に起因する発光スペクトルピークエネルギー位置の不安定性を有し、実際の応用用途には不具合が生じるが、ひとたび粉末化するならばさらなる物理的変形に対しても発光スペクトルピークエネルギー位置は安定であり、各種応用に用いるのに適している。
【0033】
次ぎに、第1群の発明を実施例及び図面に基づいて具体的に説明する。但し、これらの実施例等はあくまでも発明を容易に理解するための一助として開示するもので、本発明はこの実施例等によって限定されない。すなわち、本発明は、発明の要旨を変更しない限り条件等の変更は可能であり、含むものである。
【0034】
以下実施例1から実施例3までは本発明の遠紫外発光高純度hBN単結晶粉末の出発原料たる元の高純度hBN単結晶の合成方法、育成方法について述べ、実施例4では実施例で得られた単結晶を粉末化するプロセス例および粉末化することによって得られる特有な作用効果について述べる。
【0035】
実施例1;
真空中で1500℃、窒素気流中で2000℃の熱処理による脱酸素処理を施した六方晶窒化ホウ素焼結体(粒径約0.5μm)をホウ窒化バリウム溶媒とともに高圧容器内のモリブデンカプセルに充填した。これらの溶媒の調製並びに試料のカプセルへの充填は、すべて乾燥窒素雰囲気中で行った。高圧反応容器をベルト型超高圧力発生装置により2.5万気圧、1700℃、の圧力、温度条件で20時間処理した。昇温速度は50℃/分程度であった。500℃/分程度で冷却後、除圧し試料を圧力容器内のモリブデンカプセルと共に回収した。
次いで、機械的又は化学処理(塩酸−硝酸混液)によりモリブデンカプセルを除去し試料を回収した。無色、透明で六角柱状の結晶(1〜3mm程度)が得られ、その結晶において光学顕微鏡観察、SEM観察、X線回折による相の同定、ならびに光学的特性の評価(透過率、カソードルミネッセンス)を行った。結晶粒子のX線回折図形より、結晶はhBN単相であることが確かめられた。カソードルミネッセンス観察では室温において波長215nm近傍に単峰性の高輝度の紫外線発光が、観測された。
【0036】
実施例2;
真空中で1500℃、窒素気流中で2000℃の熱処理による脱酸素処理を施した六方晶窒化ホウ素焼結体(粒径約0.5μm)をホウ窒化バリウムとホウ窒化リチウムを重量比1:1で混合した溶媒とともにモリブデンカプセルに充填した。実施例1と同様の方法で高圧処理を行い、試料を回収した。
回収した試料は実施例1と同様の形態であり、hBN結晶であることが確かめられた。カソードルミネッセンスによる測定によって、波長215nmにおける高輝度発光と共に、300nm付近においてブロードな発光が観測された。
【0037】
実施例3;
真空中で1500℃、窒素気流中で2000℃の熱処理による脱酸素処理を施した六方晶窒化ホウ素焼結体(粒径約0.5μm)をホウ窒化バリウムとホウ窒化リチウムを重量比1:1で混合した溶媒とともにモリブデンカプセルに充填した。これらの溶媒の調製並びに試料のカプセルへの充填は、すべて乾燥窒素雰囲気中で行った。モリブデン反応容器を窒素気流中1気圧、1500℃、の圧力、温度条件で2時間処理した。昇温速度は10℃/分程度であった。20℃/分程度で冷却後、モリブデンカプセルを回収した。
次いで、機械的又は化学処理(塩酸−硝酸混液)によりモリブデンカプセルを除去し、中の試料を回収した。溶媒部分は一部、分解の様相を示しているが、hBN原料との界面で一部再結晶が見られた。酸処理により溶媒成分を除去し、洗浄後、得られたhBN結晶を、光学顕微鏡観察、SEM観察、X線回折による相の同定、ならびに光学的特性試験(透過率、カソードルミネッセンス)を通じてその評価を行った。その結果、カソードルミネッセンス測定により波長215nmに高輝度の発光と共に、300nm付近のブロードな発光が観測された。
【0038】
上記実施例1ないし3以外にも、合成条件を少し変えて、多数のサンプルについて実施したところ、最大発光ピークは特に波長210nmから220nm、著しくは215nmに集約していることが明らかになった。この最大発光ピーク幅は、狭小ではあるが、やや幅を以て分布している。その原因は必ずしも定かではないが、欠陥や不純物など微量な成分による結晶性の不均一性が関係していると考えられる。
【0039】
実施例4;
次に、実施例1ないし3のようにして得られた単結晶を粉末化するプロセスおよびその効果例について示す。hBN単結晶を平行に配向した2枚のアルミ板の間にはさみ、常温で押しつぶす。押しつぶす力の入れ具合および方向に特別な効果はない。また、該hBN単結晶に接するアルミ板面に、適当な凹凸形状を持たせることにより、応用上の目的に応じて単結晶粉末粒度をコントロールすることもできる。こうして得られた単結晶粉末の発光スペクトルと比較のため実施例1ないし3で得られた典型的な発光スペクトルを図4に示す。図4はカソードルミネッセンススペクトルの一例である。図4に例示されるように押しつぶされ積層方向の秩序が乱されることにより215nmのピークが227nmのピークへシフトしていることがわかる。
【0040】
次に、本発明の第2群の発明を実施例及び図面に基づいて説明する。ただし、この開示した例も、これらは、本発明を容易に理解するための一助として開示するものであって、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0041】
本発明の第2の態様発明は、本発明の第1の態様発明で得られた遠紫外発光特性を有する高純度六方晶窒化ホウ素単結晶の発明に対して、具体的の利用方法を示すものであり、波長224nmから233nm著しくは227nmに単独発光ピークを有する遠紫外光を発生する、電子線励起型固体発光装置を具体的に提案するものである。
【0042】
実施例5;
以下実施例4により得られたhBN単結晶粉末を用いた電子線励起型固体発光装置の例について述べる。図5には、本発明の遠紫外発生固体発光装置の構造の概念図を示す。以下この概念図に従い本発明の構造と機能を説明する。
【0043】
導電性の金属板たとえば白金板1などの上にカーボンナノチューブ2を固定したものを電子放出素子とする。固定はたとえば電導性の接着剤あるいはインジウムを溶融して用いても良い。この上に絶縁のためのガラス板3(約100μm程度の厚み)を用意し、たとえば500μm直径程度の円形の大きさの穴を開け、穴の縁周辺の表面に図5のように50nm程度の厚みで金(Au)4を蒸着した。
【0044】
次に実施例4により得られた波長224nmから233nm著しくは227nmに単独発光ピークを有する遠紫外光を発生するhBN単結晶粉末5を透明基板たとえば石英ガラス6などに塗布したものを用意する。塗布方法としては、hBN単結晶粉末を水または揮発性有機溶剤などに分散させた溶液を用いて塗布、乾燥してもよいし、透明基板表面を加熱し表面層を溶融させたのち、hBN単結晶粉末を散布し固定させてもよい。この粉末を塗布した面に厚さ15nm程度のTi/Au蒸着を施しアノードを形成するための電極7を施す。
【0045】
上記ガラス板3上に基板6をその電極7と金蒸着面4に接するように置くことにより、カーボンナノチューブ2をカソード、薄膜のTi/Au面7がコートされたhBN単結晶粉末5をアノードとする電子放出機構を形成する。このときガラス上の金蒸着面4はアノードに対する引き出し電極の役目を果たす。この紫外線放出素子の紫外線放出窓を石英などの窓を持つガラス管に封入し、電極を取り出し、ガラス管内を真空(例えば1×10-5Torr以上の高真空)にする。
【0046】
上述白金基板側電極を接地し、アノード引き出し電極4に1kV程度の電圧をかける事により、電子がカーボンナノチューブ放出源より放出されてhBN単結晶粉末を励起する。励起された六方晶窒化ホウ素粉末は室温で波長224nmから233nm著しくは227nmに単独発光ピークを有する遠紫外光を示した。その紫外発光を六方晶窒化ホウ素裏
面より取り出し、紫外線放出窓を通して得る。
【0047】
上記実施例に示したように、本発明によってこれまでの遠紫外光発光装置とは全く異なる、小型で、高効率な紫外線放出素子ないし装置を得ることに成功した。現状で単結晶を用いた類似の装置では、単結晶の大きさが限定され大面積のものはできない。しかしながら、前述実施例に示されるように粉末化して基板に塗布することにより大面積化が可能となる。
【0048】
これらの実施例は、あくまでも、その一つの態様を示すものにすぎず、この発明は上述の実施例に限らない。たとえば、上述の発光は遠紫外光領域に限られるが、上述hBN単結晶粉末に遠紫外励起により著しい可視発光を引き起こす蛍光体を混ぜることにより可視発光デバイスも作製可能である。上述の実施例では、電子ビーム源としてカーボンナノチューブエミッターを用いているが、例えばダイヤモンドエミッターなどを利用してもよい。さらに、カーボンナノチューブエミッターを、格子状に配列し、各格子点上のカーボンナノチューブエミッターを独立して制御することによって、パターン化された電子線放出、遠紫外発光を得られ、例えば表示装置等に利用することができる。
【0049】
次に、本発明の第3群の発明を実施例及び図面に基づいて説明する。ただし、この開示した例も、これらは、本発明を容易に理解するための一助として開示するものであって、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0050】
実施例6;
以下実施例4により得られたhBN単結晶粉末を用いた放射線検出器の例について述べる。図6には、本発明の遠紫外発生固体発光装置の構造の概念図を示す。以下この概念図に従い本発明の構造と機能を説明する。
【0051】
実施例4により得られた波長224nmから233nm著しくは227nmに単独発光ピークを有する遠紫外光を発生するhBN単結晶粉末を透明基板たとえば石英ガラスなどに塗布したもの8を用意する。塗布方法としては、hBN単結晶粉末を水または揮発性有機溶剤などに分散させた溶液を用いて塗布、乾燥してもよいし、透明基板表面を加熱し表面層を溶融させたのち、hBN単結晶粉末を散布し固定させてもよい。この粉末を塗布した面近傍に、室内光などを防ぐフィルター9を施した光電子増倍管10および信号検出および光電子増倍管駆動回路11を設置する。このとき光検出器として光電子増倍管ではなくソーラーブラインド性のあるダイヤモンド半導体を用いた光検出器を用いてもよく、その場合、フィルター9は不要となる。また光検出器を設置する場所は、効率および雑音信号を防ぐように設置すればよく、ミラーやレンズをもってhBN単結晶粉末からの遠紫外発光を光検出器に集光する構造でもよい。電子線や中性子線などの放射線がhBN単結晶粉末に入射すると、高効率な波長224nmから233nm著しくは227nmに単独発光ピークを有する遠紫外光発光が起こり、それを光検出器で検出することにより放射線検出器として機能する。この発光は数百ピコ秒程度で消失してしまうので検出器の応答速度は光検出器の応答速度でほぼ決定されるとしてよく、通常の場合百ナノ秒以下の高速応答性が期待できる。
【0052】
上記実施例に示したように、本発明によってこれまでの遠紫外光発光装置とは全く異なる、小型で、高効率かつ高速な放射線検出素子ないし装置を得ることに成功した。現状で単結晶を用いた類似の装置では、単結晶の大きさが限定され大面積のものはできない。しかしながら、前述実施例に示されるように粉末化して基板に塗布することにより大面積化が可能となる。
【0053】
これらの実施例は、あくまでも、その一つの態様を示すものにすぎず、この発明は上述
の実施例に限らない。たとえば、熱中性子線の吸収断面積は質量数10の同位体の方が質量数11の同位体に比べて大きい。そこで質量数10の同位体濃度を、天然存在比20%よりも意図して濃い濃度で作製することにより高感度な中性子線検出器を構築することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、従来の技術では得られなかった波長224nmから233nm著しくは227nmに強い高輝度発光挙動を示す六方晶窒化ホウ素単結晶粉末を簡便かつ安価に提供するものであり、これによって、高輝度紫外線固体発光素子を容易に設計することが可能となったことに加え、近年ますます高密度記録媒体の開発が求められる中、これに応えられる基本的材料を提供できたことは大きな意義があり、産業の発展に大いに寄与するものと期待される。また、紫外線による殺菌処理を求めるニーズは、今日重要な環境対策の一つとしてクローズアップされてきた。本発明はそのための有効な材料を提供するものであることから、今後、この面でも産業の発展に寄与し、生活環境の向上に大いに寄与するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】再結晶hBNを合成する領域を示す条件概要図
【図2】二次イオン質量分析法による酸素原子濃度同定の結果を示す図
【図3】hBN単結晶の結晶構造の概念図
【図4】室温での二つの結晶形態(単結晶および単結晶粉末)の電子線励起発光スペクトルの一例を示す図。
【図5】本発明の遠紫外固体発光装置の構造を示す図。
【図6】本発明の放射線検出器の構造を示す図。
【符号の説明】
【0056】
1. 導電性金属板(白金板)
2. カーボンナノチューブ
3. 絶縁ガラス板
4. 金電極(引き出し電極)
5. hBN単結晶粉末
6. 基板(石英基板)
7. Ti/Au蒸着電極(アノード電極)
8. hBN単結晶粉末を表面に塗布した基板
9. 迷光除去フィルター
10. 光電子増倍管
11. 信号検出および光電子増倍管駆動回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:BNで示され窒素原子とホウ素原子のsp2結合によりなり、励起手段によって励起されて波長224nmから233nm著しくは227nmに発光ピークが存する遠紫外光を高輝度発光する特性を有してなる、遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末。
【請求項2】
前記遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の酸素不純物原子濃度を1立方センチメータあたり10の18乗個以下に設定したことを特徴とする、請求項1に記載する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末。
【請求項3】
一般式:BNで示され窒素原子とホウ素原子のsp2結合を有する高純度窒化ホウ素単結晶をすり潰すことにより、励起手段によって励起されて波長224nmから233nm著しくは227nmに発光ピークが存する遠紫外光を高輝度発光する特性を有してなる高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末を得ることを特徴とする、遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の製造方法。
【請求項4】
前記一般式:BNで示され窒素原子とホウ素原子のsp2結合を有する高純度窒化ホウ素単結晶が、高純度溶媒の存在下で高温高圧処理されて再結晶化することにより得られた高精度に精製されてなる高純度結晶であることを特徴とする、請求項3に記載する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の窒化物またはホウ窒化物から選択される1種又2種以上を用いることを特徴とする、請求項4に記載する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末の製造方法。
【請求項6】
励起手段によって励起されて発光する発光層を有する固体発光素子において、発光層を形成する発光材料として、励起手段によって励起されて波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する遠紫外発光高純度六方晶窒化ホウ素単結晶粉末を使用することを特徴とした、固体発光素子。
【請求項7】
発光層を有する固体発光素子と発光層を励起する励起手段を備えてなる固体発光装置において、波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末を含む発光材料を使用した発光層と励起手段とを真空容器中に一体に封入し、励起手段によって発光層を効率よく励起して光を発生するようにしたことを特徴とする、固体発光装置。
【請求項8】
前記励起手段が、電子線放出する励起手段であることを特徴とする、請求項7に記載する固体発光装置。
【請求項9】
前記電子線放出する励起手段が、発光材料を塗布した発光層に対し、その表面に取り付けられたアノード電極と、発光層に絶縁スペーサーを介して取り付けられた電子線放出基板と、電子線放出基板裏面に取り付けられたカソード電極と、両電極間に電圧を印加する手段によって構成され、両電極間に電圧を印加することによって、前記電子放出基板から発光層に電子線を放出し、発光層を励起して発光するようにしたことを特徴とする、請求項8に記載する固体発光装置。
【請求項10】
前記絶縁スペーサーを介して取り付けられた電子線放出基板が、ダイヤモンド基板である、請求項9に記載する固体発光装置。
【請求項11】
放射線検出器において、波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末からなる発光層と、該発光層からの光を検出する光検出器とから構成されてなり、該発光層に放射線を入射せしめ、放射線によって励起されて発光した光を光検出器によって検出するようにしたことを特徴とする、光感応型放射線検出器。
【請求項12】
前記発光層が、波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末からなる発光材料を基板に塗布することに形成されてなるものであることを特徴とする、請求項11に記載する放射線検出器。
【請求項13】
前記発光層に使用される波長224nmから233nm著しくは227nmに遠紫外領域に発光ピークを有する遠紫外光を発光する高純度六方晶窒化ホウ素結晶粉末におけるホウ素成分を、熱中性子吸収断面積の大きな質量数10の同位体の濃度を、天然存在比の20%よりも濃い濃度となるように調製し、中性子線に対して感応しやすく設定したことを特徴とする、請求項11又は12に記載する放射線検出器。
【請求項14】
前記放射線検出器が、中性子線を検出するための検出器として使用されることを特徴とする、請求項13に記載する放射線検出器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−9095(P2007−9095A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193358(P2005−193358)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】