説明

遠赤外線と超遠赤外線を同時に放射させて木材を乾燥させる木材用乾燥機。

【課題】 低温除湿乾燥技術は十分な乾燥が困難であり、短時間乾燥技術では、真空減圧乾燥機、高周波乾燥機、あるいは高周波・蒸気複合乾燥機など設備投資が極めて高く、木材の細胞を著しく破壊、損傷され、設備投資が高く普及性が低い。また、今日、普及率が高い蒸気高温乾燥機では、処理温度が80〜130℃であるため、黒く変色し、細胞を著しく破壊し、材の長期的保存が困難で、強度や耐久性が低く、収縮が著しい。この熱源は重油や灯油を多量に使用するため、ランニングコストが極めて高く、CO2の排出量も高い。よって、角材や平角材などの乾燥が困難な木材に対して、低価格で購入でき、ランニングコストが低く、細胞を破壊させず、CO2排出量が低い乾燥機が望まれてきた。
【解決手段】 遠赤外線と超遠赤外線の輻射機能を面状で発揮する面状発熱体を使用することで、角材や平角材などに対して、ランニングコストが低く、細胞を破壊させず、CO2排出量がゼロに近い木材用乾燥を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材細胞膜の水チャンネルを、面状発熱体から放射する遠赤外線と超遠赤外線の輻射熱によって開かせることが出来ることから、細胞内の結合水を細胞外に容易に移動させることにより、針葉樹および広葉樹の角材及び平角材を、室内温度35℃前後で、3〜5日間で、低コストで、しかもCO2の排出をゼロに近づけて乾燥させることが可能となった乾燥材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の木材人工乾燥技術には、高温乾燥、中温乾燥、高温蒸気乾燥、熱風攪拌乾燥、蒸煮加熱乾燥、燻煙乾燥、除湿乾燥、バイオマス乾燥、薬品乾燥、高周波(マイクロ波)乾燥、高周波・蒸気複合乾燥、遠赤外線乾燥、真空減圧乾燥、赤外線乾燥、熱板加熱乾燥などがある。
【0003】
低温除湿乾燥技術は、低コストではあるが、初期含水率が100%以上の角材や平角材に対して、含水率を1ヵ月以内で20%以下に乾燥させることは困難である。
【0004】
短時間乾燥技術では、真空減圧乾燥機や高周波乾燥機、あるいは高周波・蒸気複合乾燥機があるが、設備投資が極めて高いことで実用性が低いことと、木材の細胞を著しく破壊、損傷されるため、木材の長期的保存が困難で、強度や耐久性が著しく低い。
【0005】
短時間乾燥技術では、蒸気高温乾燥機があり、広く普及されているが、処理温度が80〜130℃であるため、高温によってリグニンが酸化することにより黒く変色し、燃焼の匂いが著しい。さらに細胞を著しく破壊し、材の長期的保存が困難で、強度や耐久性が低く、収縮が著しい。熱源は重油や灯油を多量に使用するため、熱エネルギーコストが月額で60万円〜100万円となるためランニングコストが極めて高く、CO2の排出も著しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
木は、道管(広葉樹)や仮道管(針葉樹)、及び細胞膜をもった細胞などで構成されている。木の内部の水分には自由水(自由に地中から吸い込んで葉から蒸散する水)と結合水(細胞壁及び細胞膜内の水)がある。自由水は、天然乾燥(葉枯らし乾燥も含む)でも、道管や仮道管から容易に出るが、結合水はほとんど細胞内に残るため、6カ月後でも全体の含水率を30%以下に低下させることは困難である。そのために人工乾燥を行うが、それでも角材や平角材では、1週間〜2週間の時間を要する。これを生産性向上のために7日以内で乾燥しようとすると、高温蒸気で細胞をふやかし、次に80〜130℃の高温で熱風処理を行うため、著しく細胞を破壊し、変色、匂いが発生する。よって、角材や平角材に対して細胞を破壊させることなく、割れ、ヒビ、反り、変色、匂いが発生しにくく、さらに3〜5日間で含水率を20%以下にまで乾燥させることが出来る短時間乾燥機の開発が第1の課題である。
【0007】
石油エネルギーを主な熱エネルギーとしている今日の産業機械に対して、地球温暖化の防止、及びCO2排出の低減化に寄与できる開発技術が最も重要、かつ急務な課題となっている。CO2の排出をゼロに近いほど低減化し、更に石油エネルギーの使用量を極端に抑えたエコ乾燥技術の開発が第2の課題である。
【0008】
真空減圧乾燥機や高周波・蒸気複合乾燥機の導入には高額な投資が必要であり、よって広範囲な実用化が困難である。また、重油や灯油を使用する乾燥機には毎月のランニングコストが60万円から100万円以上を要するため、製材コストを著しく上げる。バイオマス乾燥技術を導入するにはボイラー設置に高額な投資を必要とする。乾燥機の導入に高額な設備投資を要せず、また、ランニングコストが月額で1万円(温暖地域)から5万円以内(寒冷地域)である人工乾燥技術の開発が第3の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、木材細胞の細胞皮膜の水チャネルを、面状発熱体が放射する遠赤外線と超遠赤外線を同時に放射させることによって容易に開かせ、細胞内の液胞の水を細胞外に移動させることにより、角材や平角材に対して細胞を破壊させることなく、割れ、ヒビ、反り、変色、匂いが発生しにくく、さらに3〜5日間で含水率を20%以下にまで乾燥を促進させることを実現させるという第1の課題を解決した。
【0010】
本発明は、遠赤外線と超遠赤外線を面状発熱体から同時に放射させるために、伝導性カーボンチョップドを均一に分散させシート状にした素材による、また発熱部が0.1mm〜0.3mmの厚さによるカーボン和紙を使用し、更に、10℃〜180℃の加熱により保温まで約10分という短時間昇温を可能にさせることで、CO2の排出を著しく低減化し、更に石油エネルギーの使用量を極端に抑えた短時間の人工乾燥技術を実現させるという第2の課題を解決した。
【0011】
本発明は、面状発熱体に、電波シールドの機能を持たせ、遠赤外線と超遠赤外線の輻射機能を面状で発揮させ、電源が、交流、直流1.5V〜220Vまで自由設定が可能とさせることと、発熱部が0.1mm〜0.3mmの厚さであることを実現させることで、ランニングコストが月額で1万円(温暖地域)から5万円以内(寒冷地域)が可能となった人工乾燥技術という第3の課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
物体を加熱させるためには、対流、伝導、放射のいずれかの方法がとられる。このうち放射加熱は太陽の熱と同様、熱源から光と同様の性格をもつ電磁波を放射し、空気中あるいは真空中を問わず熱媒体なしで目的物体に直接働きかけ作用を及ぼすものである。電磁波とは電界と磁界によって生じる波のことであるが、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波が含まれ、波長の違いにより作用効果が異なっている。古くから放射加熱に用いる電磁波は可視光線より波長の長い赤外線であり、太陽光、赤外線ランプ、石英管ヒータ、シーズヒータ等が加熱、乾燥、暖房に用いられてきた。
【0013】
赤外線は、赤色光よりも波長が長く、ミリ波長の電波よりも波長の短い電磁波全般を指し、波長では0.7μm〜1000μmに分布する。また、赤外線は波長によって、近赤外線(0.75〜1.5μ)、中赤外線(1.5〜5.6μ)、遠赤外線(5.6μ〜25μ)、超遠赤外線(25〜1000μ)に分けられ、使用効果の差より区別されている。
【0014】
遠赤外線は、ヒトの細胞学では50mmまで共振発熱効果があり深層温度の上昇が可能であると言われ、遠赤外線電磁波の持つ独特の生態熱反応を応用した温熱療法が一般的である。また、木材細胞はヒト細胞と異なり硬い道管や仮道管で構成されていることから、深層温度の上昇は最大で20mmの深さまでである。つまり、それ以上の深さには共振発熱の効果がなくなることを意味する。そこで、木材乾燥に対して、角材や平角材のような100mm以上の細胞内深層に温度上昇効果を得るには超遠赤外線が必要とする。この超遠赤外線の放射が木材用乾燥機に採用されたことが本発明の主なる効果である。
【発明の実施するための最良の形態】
【0015】
木材用乾燥機の熱源として、カーボン和紙の面状発熱体を採用することで、超遠赤外線を乾燥機の全体に行きわたらせる乾燥方法が、最良の形態である。
【実施例】
【0016】
(実施1)本実施例は、東京都立産業技術研究センターが平成21年に実施した赤外分光放射測定による。測定は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた。分光放射率は、試験体の中央部分における値である。測定では、表の1の如く、面状発熱体が0.8以上の放射率で、25μm以上の波長を示している。このことから、遠赤外線と超遠赤外線の双方が高い放射率で放射されていることを立証した。
【0017】
【表1】

【0018】
(実施2)本実施例は、遠赤外線と超遠赤外線の高い放射を得ることにより、木材細胞内の結合水が細胞外に移動して、木材を乾燥させた。その結果は、次の表で示す。
【0019】
【表2】

【発明の実施するための最良の形態】
【0020】
細胞皮膜の水チャネルを、面状発熱体が放射する遠赤外線と超遠赤外線を同時に放射させることによって開かせ、細胞内液胞の水を細胞外に移動させるための面状発熱体は、第1に紙幣用紙製造の技術を取り入れた耐久性を持たせることである。
【0021】
第2に伝導性塗料を電極として印刷し、紙パルプに浸透して一体化させることである。
【0022】
第3に、導電性カーボンチョップドを均一に分散させて製造することであり、設定温度までの昇温速度を短時間で、しかも数秒で安定させることである。
【0023】
第4に、電源を交流、直流のいずれかで1.5V〜220Vまで自由設定できるようにすることである。
【0024】
カーボンチョップドは、導電性の物質で、3mmメッシュ以下の網上で製造されるもので、しかも発熱部は約0.1mmで薄く、壁や天井などあらゆる場所に取り付けが可能とすることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞皮膜の水チャネルを、面状発熱体が放射する遠赤外線と超遠赤外線を同時に放射させることによって開かせ、細胞内液胞の水を細胞外に移動させることにより木材の乾燥を促進させることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載されている面状発熱体がカーボン和紙であることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項3】
請求項1に記載されている面状発熱体が、紙パルプに伝導性カーボンチョップドを均一に分散させシート状にした素材であることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項4】
請求項1に記載されている面状発熱体が、10℃〜180℃の加熱、保温まで10分の短時間昇温を可能にすることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項5】
請求項1に記載されている面状発熱体が、電波シールドの機能があることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項6】
請求項1に記載されている面状発熱体が、遠赤外線と超遠赤外線の輻射機能を面状で発揮することを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項7】
請求項1に記載されている面状発熱体の電源が、交流、直流1.5V〜220Vまで自由設定が可能とすることを特徴とする木材用乾燥機。
【請求項8】
請求項1に記載されている面状発熱体の発熱部が0.1mm〜0.4mmの厚さであることを特徴とする木材用乾燥機。

【公開番号】特開2010−271024(P2010−271024A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138661(P2009−138661)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(501410757)日本不燃木材株式会社 (10)
【出願人】(509039437)株式会社MITOMI (2)
【出願人】(506172034)空知単板工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】