説明

遠赤外線穀物乾燥装置

【課題】 乾燥機の大型化に伴う乾燥部の設置面積の拡大においても、新たな乾燥部の部材の厚さ及び構造を考慮した再設計を行わずに大型化に対応でき、コスト低減を可能とした遠赤外線乾燥装置を提供する。
【解決手段】 隣り合う乾燥体を二つ並列に設置し、一方を180°反転してお互いを接触配置して乾燥部を形成させ、集穀部下端にはその左右を熱風室、中央部を排風室として配置し、それぞれの乾燥室に備えた燃焼装置によって発生する乾燥風を左右の熱風室から乾燥風供給胴を流通して二つの乾燥体へ供給し、乾燥体に挟まれた中央の排風胴を降下して排風室の送風機から機外に排風する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環流下する穀物に遠赤外線を均等に放射して穀物を乾燥する、遠赤外線穀物乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後方向に長い角筒状の乾燥機本体内の集穀部の両側の一方を熱風送風室、そしてもう一方を排塵風室とし、乾燥機の短辺となる左右方向に、熱風送風室に通ずる複数の熱風室と排塵風室に通ずる複数の排風室とを両室間に巾狭の乾燥通路を形成されるよう交互に架設してそれぞれを熱風室、乾燥通路、排風室として配置し、乾燥部の直下に乾燥機の長辺となる前後方向に複数配置した山形仕切壁により形成された複数列の交差流下繰出し室の下部に前後方向に回転自在に軸架した繰出しロールによって穀物を定量的に繰出し、繰出しロールの周囲を熱風送風室、排塵風室および繰出し室で囲まれた構成となった穀物乾燥機は特開昭61−55037号公報のように公知となっている。
【0003】
また上記の構成に、集穀部に繰出し部より散粒状態で排出される穀物に遠赤外線を放射する遠赤外線放射体を配設し、さらに遠赤外線放射体の上半分周囲を反射板で覆って、遠赤外線放射体より排出された排熱風は、吸入外気とともに熱風起成室へ吸入する構成とした遠赤外線穀物乾燥機は、特許第3043572号公報のように公知である。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−055037号公報
【特許文献2】特許第3043572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1を実施した穀物乾燥機においては、乾燥通路を巾狭としているにも係わらずその乾燥通路の通風面積を広く確保することが出来るので、効率よくしかも均一に穀物が流下することが出来るので、穀物の均一乾燥を実現することが出来ている。また乾燥通路が巾狭であるので通風抵抗が少なく、無理なく穀物層の通風を行うことが出来るので、送風機の動力を小さくしても有効に通風できることを可能としている。
【0006】
さらに、特許文献2のように特許文献1の構成の集穀部に遠赤外線放射体を設け、繰出しロールから定量的に散粒状態で流下する穀物に遠赤外線を放射して穀物を内部から温め、穀物の水分を表面に移行させ、その後乾燥部の乾燥通路で遠赤放射体で発生した燃焼風と外気を混合させた乾燥風の通風を受けて穀物から水分を取除く乾燥方式によって、穀物の内部と表面の水分差で発生する穀物の亀裂を生じさせること無く、早く品質よく穀物を乾燥することを可能としている。
【0007】
近年の農業改革において大規模農業が奨励され、集団化、企業化が促進される中で大型の穀物乾燥機の要望が高まってきているのが現状である。遠赤外線を利用した乾燥時間を短縮した穀物乾燥機であってもこうした要望にこたえるため、大型の穀物乾燥機の開発に着手する必要がある。しかしながら上記特許文献の構成を備える乾燥機をそのまま大型化するだけであっては、乾燥機の品質、性能、構成に支障をきたし、以下のような不具合が発生する場合がある。
【0008】
第一に、左右方向の乾燥部の延長化による乾燥通路の幅の均一化の維持が困難になるため、乾燥通路が場所によって薄厚が発生して、均一の通風と、穀物の均一な流下を損なうこととなり、穀物の乾燥を均一に行うことが出来なくなる可能性がある。
【0009】
第二に、乾燥機自体を大きくすることは、乾燥機の貯留槽に貯留する穀物の量が多くなり、乾燥部に加わる重量も増すこととなる。特に乾燥部自体を前後若しくは左右及びその両方の方向に延長させた場合においては、乾燥部に加わる重量に耐え、乾燥部の変形を防ぐために、乾燥部に使われる部材の厚さを増すか、重量に耐えうる構造に変更を余儀なくされ、従前に使用されている乾燥部の長さを延長するだけでは、その機能を果たさない結果となってしまう。また部材を厚くする、または荷重に耐える乾燥部の構造の新設計はコスト的に問題となり、商品価格の高騰をまねく結果となる。
【0010】
第三に、乾燥部の大型化を行うことによって、乾燥部を通過する乾燥風の流れの不具合をきたし、通風しやすい場所と滞留しやすい場所の格差を増し、排塵風室に塵埃の堆積を増すばかりか、穀物を均一に乾燥する乾燥機の目的の達成が困難になる可能性があるので、乾燥部のそれぞれの場所に均一に乾燥風を通風するような装置を必要とするため、乾燥機自体のコストを高める結果となるものである。
【0011】
第四に、乾燥部の横方向の延長に伴う集穀部の横方向の拡張により、集穀部中央への集穀を行うため集穀部の高さ延長する必要が発生し、集穀部内を流下する穀物と遠赤外線放射体との間隔が増すことによる、穀物への遠赤外線放射効率の低下をきたす事となる。
【0012】
そこで本発明では、上記の不具合を解消するように、乾燥部自体を大きく構成しても、部材の厚さを増す方法や、強度を増す構造を新たに設計しなくても従来の乾燥部の構造を利用して、荷重に耐え均一な乾燥層の幅を保って、乾燥風の乾燥層への均一な通風と穀物の均等な流下を可能とした乾燥部を提供すると共に、均一に乾燥風を熱風層と排風層と排風室に供給を行い、排風室内の通風の滞留を防止して、排風室内の塵埃の堆積を低減し、さらに、集穀部が横方向に拡張しても、穀物が散粒状に流下する部位に良好な間隔を保って遠赤外線放射体を配置し、効率よくしかも均一に穀物に遠赤外線を放射できるようにした遠赤外線穀物乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明における穀物乾燥装置は請求項1ないし請求項5に係わる遠赤外線穀物乾燥装置を提案する。
【0014】
即ち、請求項1に係わる遠赤外線穀物乾燥装置は、上段から貯留槽、乾燥部、集穀部を順に配置し、集穀部と貯留槽には穀物を揚穀する揚穀装置と接合して、貯留槽、乾燥部、集穀部を循環する穀物乾燥装置であって、乾燥部は左右方向を横断する熱風層、乾燥層、排風層若しくは、排風層、乾燥層、熱風層の順で前後方向に繰り返し配置し、それぞれの層の左右両端は下方になるにつれて逆円錐形状を成す乾燥体を複数配置し、隣り合う乾燥体は180°反転して接触配置して乾燥部を形成して、集穀部には流下する穀物に遠赤外線を放射する遠赤外線放射体を配置したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項2に係わる遠赤外線穀物乾燥装置は、上段から貯留槽、乾燥部、集穀部を順に配置し、集穀部と貯留槽には穀物を揚穀する揚穀装置と接合し、貯留槽の上面には揚穀装置から排出される穀物を均等に貯留するための張り込み装置を備え、集穀部には熱風室と排風室と、穀物を一方に流下させる集穀流下路とその下端に揚穀装置の投入部につながる集穀装置を備えて、穀物が貯留槽、乾燥部、集穀部を循環する穀物乾燥装置であって、乾燥部は左右方向を横断する熱風層、乾燥層、排風層若しくは、排風層、乾燥層、熱風層の順で前後方向に繰り返し配置し、それぞれの層の左右両端は下方になるにつれて逆円錐形状を成す乾燥体を二つ配置し、隣り合う乾燥体の一方を180°反転させて接触配置して乾燥部を形成して、それぞれの乾燥体の下方にはそれぞれの集穀部の集穀流下路を備え、集穀部には、集穀流下路を散粒状に流下する穀物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を配置して、均一に穀物へ遠赤外線を照射させるように構成したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に係わる遠赤外線穀物乾燥装置は、請求項1または請求項2記載の遠赤外線穀物乾燥機において、集穀部はその下方左右両端を遠赤外線放射体の燃焼風と外気を混合して乾燥風を生成する熱風室とし、中央部は吸引送風機を備える排風室としたことを特徴としたものである。
【0017】
請求項4に係わる遠赤外線穀物乾燥装置は、請求項1、2または請求項3記載の遠赤外線穀物乾燥装置において、角筒状の乾燥機の前後方向のいずれかの中央部には乾燥機本体から若干の距離をおいて揚穀装置を配置し、二つの乾燥体の下端に接続された集穀流下路下端の集穀装置の排出口は、揚穀装置の左右に備える張り込み口に個々に接続されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に係わる遠赤外線穀物乾燥装置は、請求項1、2、3または請求項4記載の遠赤外線穀物乾燥装置であって、貯留槽の天井には揚穀装置で集穀部から揚穀した穀物を貯留槽内に均一に投入するための張り込み装置を、揚穀装置の排出口から斜め後方に角度をもって、そして揚穀装置の上部の排出方向を反転させた場合においては、斜め後方の角度の取り付け位置を、穀物乾燥装置の前後方向の中央を対象として、対象位置に取り付けられる構成としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
乾燥機の大型化に伴う乾燥部の設置面積の拡大においても、従前の乾燥部を複数利用することで、部材の厚さ及び構造を考慮した新たな乾燥部の再設計を行わずに大型化に対応でき、コスト低減を可能とした乾燥部を提供することが出来る。
【0020】
また、穀物の均一な流下幅を保った乾燥層と、熱風層、排風層の均一な通風の幅の確保が可能となるので、各乾燥層での均一な流下と均一な通風の実施を可能とすることが出来る。特に乾燥機の集穀部の下方左右方向に熱風室を、そして中央部に排風室を備え、排風室の送風機によって左右の乾燥体から均等に吸引できる構成としているので、排風室の均一な通風を可能とし、排風室での風の滞留と乱流の発生を防止して排風室内の塵埃の堆積を最小限に抑えることが出来る。
【0021】
さらに集穀部には隣り合う二つの集穀流下路を設置し、それぞれの集穀流下路の中央に遠赤外線放射体を配置し、集穀流下路を均等に散粒状に流下する穀物に遠赤外線を放射体から良好な距離を保って均一に照射できるコンパクトな集穀流下路を提供し、より均一にしかも早く乾燥を可能とする、遠赤外線穀物乾燥装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第一の実施の形態に係わる遠赤外線穀物乾燥装置を破断して示す斜視図、図2は本発明の第一の実施の形態に係わる遠赤外線穀物乾燥装置の正面断面略図、図3は図1及び図2に示す遠赤外線穀物乾燥装置の乾燥部と遠赤外線放射体の関係を示す平面断面図、図4は図2に表す正面断面図の集穀部の拡大図。図5は本発明の第一の実施に係わる遠赤外線穀物乾燥装置の平面図と揚穀装置の上部を示す正面図、図6は図5における楊穀装置の上部を180°反転して設置した状態を示す、遠赤外線穀物乾燥装置の平面図と揚穀装置の上部を示す正面図である。
【実施例】
【0023】
図1及び図2で示すように1は遠赤外線穀物乾燥装置である。遠赤外線穀物乾燥装置1は上段より貯留槽2、乾燥部3、集穀部4を積み重ねて設置し、集穀部4と貯留槽2の上部は揚穀装置5で接続されている。貯留槽2の上面には揚穀装置5から排出される穀物を貯留槽2内に均一に張り込むための張り込み装置13が備えられ、この張り込み装置13は螺旋の回転によって穀物を移動させるスクリューコンベアである。
【0024】
乾燥部3は左右方向に横断、即ち左右方向層で下方に同長となる、熱風層7、乾燥層8、排風層9若しくは排風層9、乾燥層8、熱風層7の順に前後方向に繰り返し配置し、それぞれの層の左右両端は下方になるにつれて逆円錐形状を成した乾燥体6を隣り合わせて並列に配置して、遠赤外線穀物乾燥装置の乾燥部3の左右側板面と乾燥体6の逆円錐形状で発生する空間を乾燥風供給胴30とし、乾燥体6同士の逆円錐形状で発生する空間を排風胴31として、乾燥部3を形成している。なお、乾燥体6の左右方向で下方同じ高さをもったそれぞれの層は、乾燥装置の前板と接する層が熱風層7であれば後板に接する最後層も熱風層7とし、前板に接する層が排風層9であれば、後板に接する最後層は排風層9になるように構成されている。
【0025】
さらに図1及び図2に示す乾燥体6は、左右両端を逆円錐形状とした上部乾燥体28と、上面と底面の面積が同じ角柱の下部乾燥体29とを結合して構成され、熱風供給胴30と排風胴31を縦方向にそれぞれの空間を延長して穀物への流通空間を増やしている。
【0026】
乾燥体6は図3に示すように、乾燥部3の前面に接する層が排風層9となりその後ろが乾燥層8、その後ろが熱風層7となって、最後層が排風層9となるように構成し、熱風層7を4つ、乾燥層8を8つ、排風層9が5つになるように構成されている。なおこの層の配列を熱風層7から配置してもよく、その場合は、熱風層7を5つ、乾燥層8を8つ、排風層9を4つの構成としてもよい。このようにそれぞれの層の配置をした乾燥体を二つ並列に配置し、一方の乾燥体6を180°反転して配置することによって、熱風層7、乾燥層8、排風層9が対向して配置されるようになっている。
【0027】
集穀部4には集穀流下路12がそれぞれの乾燥体6の下端に備えられていて、図1、図2及び図4に示すように乾燥体6は並列に一方が反転して排風胴31を挟んで配置されているので、集穀流下路12も並列に排風室11の空間を空けて集穀部4に配置されている。この集穀流下路12はその内部に繰出しロール19を複数配置し、流下する穀物を繰出しロール19に滞りなく導くように山形仕切26が備えられていて、繰出しロール19の回転によって排出された穀物は集穀流下路12の斜面を流下し、集穀装置14のスクリューコンベアに流れ込むようになっている。なお繰出しロール19の下側で集穀流下路12の中央空間には液体を燃料とする燃焼装置15を一端に接続した遠赤外線放射体17がそれぞれの集穀流下路12の斜面から距離を保って均等に配置し、その上面には遠赤外線放射体17から放射される遠赤外線を反射するための反射板35を集穀流下路12の全長に渡り設けられている。
【0028】
繰出しロール19はモータ(図示せず)によって回転し、それぞれの集穀流下路12の単位にモータを設けてそれぞれを駆動するか、または全ての繰出しロール19をチェーンで接続し、一つのモータで駆動させる方法でもよい。
【0029】
遠赤外線放射体17は前後端に放射体が容易に回転できるように軸受37を備えており、その回転は繰出しロール19、または集穀装置14などの乾燥装置の一部の回転部から回転動力を伝達する方法や、単独にモータを備えて遠赤外線放射体17が一定の方向に回転するようになっている(図示せず)。
【0030】
遠赤外線放射体17の後端には放射体内で燃焼する燃焼風を熱風室10に導く燃焼風ダクト36が接続されており、さらにその外周には集穀流下路12内の空間と熱風室10の吸引口38付近を繋ぐ温風ダクト39が備えられていて、送風機16の動作による吸引作用によって熱風室10内では、吸引口38から吸引される外気と、燃焼風ダクト36からは排出される燃焼風と、温風ダクト39からの温風を混合して乾燥に有用な乾燥風の生成を行う。なお、燃焼装置15が接続された遠赤外線放射体17の前端には、外気流入口40が設けられていて、温風ダクト39の吸引作用によって外気流入口40から外気を吸引し、前端の軸受37の冷却の後、集穀流下路12の空間内で発生する塵埃と共に温風ダクト39を流通し熱風室10に流入するようになっている。
【0031】
集穀部4では二つの集穀流下路12の下端と乾燥装置底面とを繋ぐ仕切板41によって三つの空間を生成し、その左右方向を熱風室10、中央を排風室11として形成し、左右それぞれの熱風室10の吸引口38は乾燥機前後方向の中央を対称とした位置に設けられており、排風室11には2台の送風機16が備えられている。熱風室10の上方は乾燥風供給胴30と連通し、排風室11は排風胴31に連通されている。
【0032】
揚穀装置5は内部をバケット23を備えるベルトが一方向に回転して穀物を上部に搬送するバケット昇降機であって、遠赤外線穀物乾燥装置1の前後方向に対する中央で、乾燥機の前面から若干の距離をおいて備えられている。この揚穀装置5のバケット昇降機の下部には、集穀部4の集穀装置14のスクリューコンベアで集穀した穀物をバケット昇降機内に投入するための張り込み口18が左右両方向に取り付けられており、それぞれの集穀装置14からの穀物が投入できるようになっている。なお、張り込み口18は外部から遠赤外線穀物乾燥装置1内に穀物を投入する場合のホッパーとして使用されるとよい。
【0033】
揚穀装置5は上部のモータ22からの動力で回転して穀物を上方に搬送し、その排出口は、張り込み装置13の受入口と接合されていて、その受入口の下端には排出シュート34が備えられ、穀物を乾燥機の外部にここから排出することが出来るように、受入口のシャッタを設けて穀物の機内循環と、機外排出を選択することができる。張り込み装置13はモータ32によって螺旋を回転させて穀物を移動させるスクリューコンベアであって、張り込み装置13のその受入口を基点として、乾燥機の縦方向の中央線33に接する方向で、斜め後方に角度を持って備えられている。
【0034】
張り込み装置13の底部と貯留槽2の天井面には螺旋の回転によって搬送される穀物を、貯留槽2内に投入するための投入口A20と投入口B21を配置されており、この投入口はその開度をそれぞれ調節して投入の量を調節することができるようになっている(図5参照)。
【0035】
さらに図6に示すように、揚穀装置5のバケット昇降機のモータ22を備えた上部だけ、若しくは全体を180°反転させて備えることも出来るように構成しているので、張り込み装置13は中央線33を基線として対称位置に備えられるようになっていて、張り込み装置13から貯留槽2内に投入するための投入口C24と投入口D25が備えられている。なお、揚穀装置5の上部の方向によって張り込み装置13が設置されない投入口が発生するので、使用されていない投入口には蓋が取り付けられ閉じられているものである。
【0036】
以上のように構成された遠赤外線穀物乾燥装置において、収穫後の穀物がトラック等の運搬装置から搬送機によって張り込み口18に投入され、揚穀装置5のバケット昇降機によって上方に揚穀されて、その排出口から張り込み装置13に移動し、螺旋の回転によって張り込み装置13の前方から斜め後方に向かって搬送され、投入口A20と投入口B21から貯留槽2内に投入される。
【0037】
通常の揚穀装置の排出方向が図5であるとすると、穀物は投入口A20と投入口B21から貯留槽2内に穀物が投入されるが、乾燥の後工程の方向によっては図6のように揚穀装置5の向きを変える必要があるので、その場合は揚穀装置5(バケット昇降機)の上部を180°反転させ、バケット23を取り付けたベルトの向きも反転させて設置し、張り込み装置13も中央線33を基線にして対称位置に向けて揚穀装置5の排出口と接続し、投入口C24と投入口D25を開口し、投入口A20と投入口B21に蓋をして閉じるようにする。
【0038】
遠赤外線穀物乾燥装置への張込操作では、揚穀装置5に備える張り込み口18のどちらから一方若しくは両方から投入される穀物が、揚穀装置5によって張り込み装置13に達し、二つの投入口(A,B若しくはC、D)から投入され、穀物が貯留槽2内に堆積される。この張込操作は集穀部4に備える繰出しロール19を動作させないので、貯留槽2内に二つの山を築いて貯留槽内をほぼ均一に穀物が堆積する。
【0039】
張込操作終了後、次いで乾燥操作によって集穀部4の繰出しロール19が回転を開始し、穀物の流下及び循環が開始される。二つの集穀流下路12に取り付けられたそれぞれの繰出しロール19は均一に穀物を流下させるので、それぞれの乾燥体6を流下する穀物の流下速度も同一となる。
【0040】
集穀流下路12内部の遠赤外線放射体17は、高温になると線赤外線を発生する塗料を塗布してあるので、燃焼装置15での液体燃料の放射体内での燃焼によって、放射体自体が高温になり遠赤外線放射体17から遠赤外線を放射し、集穀流下路12を均一にしかも散粒状に流下する穀物に遠赤外線の照射を行う。遠赤外線放射体17の上方に設けられた反射板35によって、上方に放射された遠赤外線は下方に反射され、穀物に浴びせることが出来る。この遠赤外線放射体17は前後端に設けられた軸受37によって自在に回転するように構成されているので、乾燥機の一部の動力またはモータの回転を伝達することによって、遠赤外線放射体17を回転させて、その内部で燃焼する炎のあたる部分などの特に高温になる部分を転換することが出来るので、その遠赤放射性能と耐久性を向上させると共に、集穀流下路12内で穀物が散粒状に流下する場合に発生する塵埃が遠赤外線放射体17上面に堆積することを防止できるようになっている。
【0041】
図3、図4に示すように、送風機16を2台、集穀部4の排風室11に配置して、乾燥装置の左右方向に備えた二つの熱風室10で、それぞれの遠赤外線放射体17内で発生する燃焼装置15の燃焼風と、外気流入口40から外気が吸引されて軸受37を冷却しその後、集穀流下路12内を流通しながら集穀流下路12内で発生する塵埃と共に温風ダクト39を流通する空気と、吸引口38から流入する外気を混合して乾燥風を生成させて、送風機16の吸引作用によってそれぞれの乾燥風供給路30を上昇して乾燥体6に供給される。
【0042】
遠赤外線の照射を受けた穀物は、その内部の温度を上昇させて、水分を穀物表面に移行させる事となるので、集穀流下路12で遠赤外線を照射した穀物は、揚穀装置5によって上昇し貯留槽2から乾燥部3に流下してそれぞれの乾燥体6に至り、乾燥風供給路30を上昇した乾燥風によって、その表面の水分を取除かれて穀物の乾燥が行われる。
【0043】
なお、二つの乾燥体6は、一方が180°反転して備えられているので、熱風層7と乾燥層8と排風層9のそれぞれが対向して配列されることとなり、送風機16からそれぞれの乾燥体6の対向する排風層9までの距離と、それぞれの吸引口38と燃焼風ダクト36及び温風ダクト39から熱風層7までの距離が同一であるので、吸引され外気と混合された乾燥風の熱風層への供給の風速、風量を同一とすることが出来る。例えば一方の乾燥体6を反転しないで配置した場合、それぞれの層と送風機16、燃焼装置15との風の流通距離が異なるので乾燥層8に通風される乾燥風がそれぞれの乾燥体6で異なる。特にそれぞれの排風層9と送風機16の距離が二つの乾燥体6で異なった場合には排風室9内で乱流が発生してそれぞれの乾燥層8の通風量が異なる現象が発生し、均一の乾燥が困難となる。
【0044】
以上のように集穀流下路12で遠赤外線の放射を受けた穀物は、その下端に配置した集穀装置4で揚穀装置5方向に集められ、張り込み口18から揚穀装置5に投入され貯留槽2から乾燥部3を流下し、また集穀流下路12で遠赤外線の照射を受ける工程を循環し、設定の水分値まで乾燥の後、排出シュート34から排出されて後工程の作業へ移行する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係わる遠赤外線穀物乾燥装置を破断して示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係わる遠赤外線穀物乾燥装置の正面断面略図である。
【図3】図1及び図2に示す遠赤外線穀物乾燥装置の乾燥部の平面断面を表す略図である。
【図4】図2に表す正面断面図の集穀部の拡大図である。
【図5】本発明の第一の実施に係わる遠赤外線穀物乾燥装置の平面図と、揚穀装置の上部を示す正面図である。
【図6】図5における楊穀装置の上部を180°反転して設置した状態を示す遠赤外線穀物乾燥装置の平面図と、揚穀装置の上部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 穀物乾燥機
2 貯留槽
3 乾燥部
4 集穀部
5 揚穀装置
6 乾燥体
7 熱風層
8 乾燥層
9 排風層
10 熱風室
11 排風室
12 集穀流下路
13 張り込み装置
14 集穀装置
15 燃焼装置
16 送風機
17 遠赤外線放射体
18 張り込み口
19 繰出しロール
20 投入口A
21 投入口B
22 モータ
23 バケット
24 投入口C
25 投入口D
26 山形仕切
28 上部乾燥体
29 下部乾燥体
30 乾燥風供給胴
31 排風胴
32 モータ
33 中央線
34 排出シュート
35 反射板
36 燃焼風ダクト
37 軸受
38 吸引口
39 温風ダクト
40 外気流入口
41 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上段から貯留槽、乾燥部、集穀部を順に配置し、集穀部と貯留槽には穀物を揚穀する揚穀装置と接合して、貯留槽、乾燥部、集穀部を循環する穀物乾燥装置であって、
乾燥部は左右方向を横断する熱風層、乾燥層、排風層若しくは、排風層、乾燥層、熱風層の順で前後方向に繰り返し配置し、それぞれの層の左右両端は下方になるにつれて逆円錐形状を成す乾燥体を複数配置し、隣り合う乾燥体は180°反転して接触配置して乾燥部を形成して、
集穀部には流下する穀物に遠赤外線を放射する遠赤外線放射体を配置したことを特徴とする、遠赤外線穀物乾燥装置。
【請求項2】
上段から貯留槽、乾燥部、集穀部を順に配置し、集穀部と貯留槽には穀物を揚穀する揚穀装置と接合し、貯留槽の上面には揚穀装置から排出される穀物を均等に貯留するための張り込み装置を備え、集穀部には熱風室と排風室と、穀物を一方に流下させる集穀流下路とその下端に揚穀装置の投入部につながる集穀装置を備えて、穀物が貯留槽、乾燥部、集穀部を循環する穀物乾燥装置であって、
乾燥部は左右方向を横断する熱風層、乾燥層、排風層若しくは、排風層、乾燥層、熱風層の順で前後方向に繰り返し配置し、それぞれの層の左右両端は下方になるにつれて逆円錐形状を成す乾燥体を二つ配置し、隣り合う乾燥体の一方を180°反転させて接触配置して乾燥部を形成して、
それぞれの乾燥体の下方にはそれぞれの集穀部の集穀流下路を備え、
集穀部には、集穀流下路を散粒状に流下する穀物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を配置して、均一に穀物へ遠赤外線を照射させるように構成したことを特徴とする、遠赤外線穀物乾燥装置。
【請求項3】
集穀部はその下方左右両端を遠赤外線放射体の燃焼風と外気を混合して乾燥風を生成する熱風室とし、中央部は吸引送風機を備える排風室としたことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の遠赤外線穀物乾燥装置。
【請求項4】
角筒状の乾燥機の前後方向のいずれかの中央部には乾燥装置本体から若干の距離をおいて揚穀装置を配置し、二つの乾燥体の下端に接続された集穀流下路下端の集穀装置の排出口は、揚穀装置の左右に備える張り込み口に個々に接続されていることを特徴とする、請求項1、2または請求項3記載の遠赤外線穀物乾燥装置。
【請求項5】
貯留槽の天井には揚穀装置で集穀部から揚穀した穀物を貯留槽内に均一に投入するための張り込み装置を、揚穀装置の排出口から斜め後方に角度をもって、そして揚穀装置の上部の排出方向を反転させた場合においては、斜め後方の角度の取り付け位置を、穀物乾燥装置の前後方向の中央を対象として、対象位置に取り付けられる構成としたことを特徴とする、請求項1、2、3または請求項4記載の遠赤外線穀物乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−107043(P2008−107043A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292041(P2006−292041)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】