説明

遠隔医療システムおよび方法

遠隔医療システムおよび方法は、広く普及した電話機、および、ハブとインタフェースをとるように、またいくつかの実施形態では直接医療センサ装置とインタフェースをとるように構成された対話型音声応答(IVR)システムを備える。本システムおよび方法は、関係者が電話を使用してハブとインタフェースをとることを可能にする。本システムおよび方法は、ハブからユーザインタフェースを排除し、任意で別個のサーバを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、慢性疾患の観察の分野に関する。より詳細には、本開示は、遠隔医療システムおよび方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔医療は、急速に発展している領域である。図1を参照すると、提案されている多くのシステム10では、医療センサ装置20から生理学的データを取り込み、そのデータを中央サーバ30に送り返してケースワーカーや臨床医が検討する。こうしたシステム10の大半は、既製消費者製品の医療センサ装置20を活用して測定値を取り込む。血圧計、血糖値測定器、体重計等を含むそうした装置は、一般に、薬局およびデパートから入手することができる。それらセンサ装置20からのデータは、多くの場合は、集約のためにハブ40に送信され、そこから中央サーバ30に転送される。
【0003】
センサ装置20とハブ40との間で使用される通信方法は、多くの場合、ユニバーサルシリアルバス(USB)50またはワイヤレスBluetooth(登録商標)(BT)60である。ハブ40と中央サーバ30の間で使用される通信手段70は、広帯域、電話モデム、セルラ方式等である。典型的には、センサ装置20とハブ40はともに非臨床環境80に置かれ、一方、サーバ30は、診療所や研究所等の臨床環境に配置される。
【0004】
一部の方法は、携帯電話をハブ40として使用することを推進している。他の方法では、ハブ40として、セットトップボックスと併せて専用の卓上ボックスやテレビ受信機を必要とする。典型的には、データは、毎日収集され、ケースワーカーや臨床医による検討のために中央サーバ30に送られる。
【0005】
遠隔医療の恩恵を受ける患者層の1つは、慢性的疾患の患者層である。そうした患者は、通例は高齢であり、しばしば視力、手先の自由度、および認知能力の低下を抱えている。さらに、そうした患者らは、しばしば、携帯電話やその他の電子機器等の新しい技術に慣れていない。しかし、そうした患者の大半は、従来の電話機は楽に扱うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
米国特許第2005/250995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のシステム10は、ハブ40として携帯電話や何らかの他の電子機器(卓上ボックス等)に依拠するため、ターゲット層は、そうした装置のインタフェースを使用する際に困難を感じる可能性が高い。小さなボタン、複雑なユーザインタフェース、非常に小型のディスプレイは、多くの患者の能力を超えていると思われる。さらに、ハブ40に直接ユーザインタフェースを備えると、ハブ40のサイズと製造コストが増大する。
【0008】
また、臨床医、ケースワーカー、家族、親戚、近所の人等、当該患者の健康に関心を持つ者が、患者の状態の定期的な最新情報を受け取り、問題が生じた際には通知を受けることを望む場合がある。従来のシステム10では、これは、一般には、じかに患者の家を訪ねるか、もしくは電話で患者を呼び出すことによって直接患者に連絡を取るか、または、十分な権限がある場合には、中央サーバ30上の患者の情報にアクセスするか、臨床環境90にいる医療関係者と話をすることによってしか行うことができない。しかしこれらの方法は、特に関係者のスケジュールが患者と異なる場合や、関係者がウェブブラウザにアクセスすることができない場合には実用的でない可能性がある。
【0009】
さらに、医療センサ装置20は、通例は既製の消費者製品であり、独自のユーザインタフェースを有する。例えば、患者が血圧計装置を持っている場合、その装置は恐らくは、開始/停止ボタンと、数値およびエラー状態を報告するための画面を備えている。同様に、患者の(別のメーカ製の)血糖値測定器は異なるユーザインタフェースを備えている可能性がある。体重計は恐らくさらに別の独自のユーザインタフェースを備えている。ターゲット層は、こうした多種のユーザインタフェースに混乱してしまう可能性が高い。患者は、ある時に携帯電話または卓上ボックスと対話することを求められ(「血圧を測る時間です。左腕に腕帯をつけて下さい」)、次には血圧計装置と対話するよう要求されることが考えられる。
【0010】
最後に、従来のシステム10は、データを記憶し、そのデータを関係者に伝達するために中央サーバ30に依拠する。中央サーバ30は、いくらかの支援インフラを必要とし、購入および維持管理されなければならない。さらに、中央サーバ30は、小規模の患者層を管理する場合は費用対効果が低い場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本遠隔医療システムおよび方法は、広く普及した電話機、および、ハブとインタフェースをとるように、またいくつかの実施形態では直接医療センサ装置とインタフェースをとるように構成された対話型音声応答(IVR)システムを備える。本システムおよび方法は、関係者が電話を使用してハブとインタフェースをとることを可能にする。本システムおよび方法は、ハブからユーザインタフェースを排除し、任意で別個のサーバを含む。
【0012】
本発明の一態様は、遠隔の患者から生理学的データを収集し、その生理学的データを取り出すためのシステムであって、このシステムは、医療センサ装置とワイヤレス通信するハブであって、データリポジトリシステムおよび対話型音声応答(IVR)システムを備えるハブと、ハブのIVRシステムと通信する第1の電話機であって、患者は第1の電話機を通じてIVRから指示のセットを受け取る、第1の電話機とを備え、指示のセットは、医療センサ装置を用いた生理学的データ・セットの収集を自身で行うようにユーザを促し、患者が第1の電話機のユーザインタフェースを用いて指示のセット中の複数のステップ各々を確認することを要求する。
【0013】
本発明の別の態様は、遠隔の患者から生理学的データを収集し、その生理学的データを取り出すためのシステムであって、このシステムは、医療センサ装置とワイヤレス通信するハブであって、第1の対話型音声応答(IVR)システムを備えるハブと、ハブとワイヤレス通信するサーバであって、第2のIVRおよびデータリポジトリシステムを備えるサーバと、ハブのIVRシステムと通信する第1の電話機であって、患者は第1の電話機を通じてIVRから指示のセットを受け取る、第1の電話機とを備え、指示のセットは、医療センサ装置を用いた生理学的データ・セットの収集を自身で行うようにユーザを促し、患者が第1の電話機のユーザインタフェースを用いて指示のセット中の複数のステップ各々を確認することを要求する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術による遠隔医療システムの図式表現である。
【図2】本開示のシステムの一実施形態の図式表現である。
【図3】本開示のシステムの別の実施形態の図式表現である。
【図4】本開示の方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願の遠隔医療システム100の一実施形態を図2に示す。システム100は、電話機110と対話型音声応答(IVR)125システムを利用してハブ120とのインタフェースをとり、いくつかの実施形態では、医療センサ装置130ともインタフェースをとる。IVR125は、コンピュータが従来の電話機を使用した音声および/またはタッチトーンを検出することを可能にする電話技術である。IVR125システムは、事前に録音された音声、または動的に生成される音声で応答して、進行方法について発呼者にさらに指示を与えることができる。IVR125システムは、インタフェースを一連の単純なメニュー選択肢に細分化することができる機能であれば、ほぼあらゆる機能の制御に使用することができる。高齢者はすでに従来の電話機およびIVR125システムは楽に扱えるため、このシステムは、高齢のターゲット層に対して好適に機能する。また、関係者140、例えば患者150から離れた場所に住んでいる親戚や臨床医は、IVR125システムと電話機110(従来型または携帯型)を使用してハブ120と直接インタフェースをとって患者150の状況を知ることができ、直接患者150に連絡を取らずに、あるいは患者の邪魔をせずに済む。さらに、ハブ120は、ユーザインタフェース(例えばキーボードや画面)がなくなるので、小型化し、より低費用で製造することができる。
【0016】
遠隔医療システム100は、中央サーバ205を備えて実施しても、中央サーバ205を備えずに実施してもよい。図3の遠隔医療システム200の実施形態は、そのような中央サーバ205を実施したものであり、図2の遠隔医療システム100は実施しないものである。不揮発性メモリのコストが低いことを考えると、ハブ120は、すべてのデータを本体内に記憶し、そのデータを、IVR125インタフェースを介して電話を通じて入手できるようにすることができる。それにより、図2のシステム100の実施形態における別個のサーバを購入し、維持管理する必要がなくなる。さらに、システム100は、小規模の患者層に対応するためにより容易に規模を変更することができる。それに代えて、またはそれに加えて、図3に示すように、ハブ220は、受信時に(実質的に実時間)、またはバッチ方式で(例えば一日に一度)、記憶および処理のためにデータを中央サーバ205に転送することもできる。
【0017】
図2で、ハブ120は、「ブラインド(blind)」セルラ通信装置であり、内蔵データリポジトリおよびIVR125システムを備える。ハブ120にはワイヤレスプロバイダから電話番号が割り当てられている。患者150および/または関係者140は、従来の電話機110または携帯電話を使用してハブ120の電話番号に電話をかけて、内蔵IVR125システムを使用してハブ120内のデータを照会することができる。患者150および/または関係者140は、ハブ120に電話をかけて、IVR125を使用してハブ120を設定またはプログラムすることもできる。いずれの場合も、IVR125システムは、データへのアクセスレベルおよび/または設定能力を患者150および関係者140について設定できるように、セキュリティ識別システムを備えることができる。医師は設定能力を持つべきであり、一方、患者の親戚や友人はより制限された「読み取り専用」のアクセス権/能力を持つ方がよいことは明白である。さらに、ハブ120も、下記で説明するような種々の理由で、患者150および/または関係者140を呼び出すことができる。
【0018】
図3の場合、ハブ220は、この場合も「ブラインド」セルラ通信装置であり、内蔵IVR225システムを備えるが、長期データリポジトリは備えない。代わりに、ハブ220は、中央サーバ205にデータを転送し、中央サーバ205は、データを長期間記憶し、同じくIVR225システムを備える。患者250および/または関係者240は、従来型電話機210または携帯電話を使用して中央サーバ205に電話をかけて、IVR225を使用してデータを照会することができる。患者250および/または関係者は、ハブ220に電話をかけて、内蔵IVR225を使用してハブ220をプログラムまたは設定することもできる。ハブ220は、下記で説明するような種々の理由で、患者250および/または関係者240を呼び出すことができる。
【0019】
再度図2を参照すると、ハブ120は、これらに限定しないがBluetooth(登録商標)等のワイヤレスインタフェース160、および/または必要時に接続される有線インタフェース(図示せず)を介して、医療センサ装置130からデータを受信する。ハブ120は、腕帯を膨らませる、測定を開始する、測定を再試行する等のコマンドを医療センサ装置130に対して発行することもできる。好ましい実施形態におけるハブ120は、表示画面や入力ボタン等の実質的なインタフェース機能を備えない点で「ブラインド」であるが、バッテリ電力表示器(例えば4バー(4−bar)ディスプレイ)、セルラ信号強度表示器(例えば4バーディスプレイ)、問題状態表示器(例えば問題状態には赤色LED、良好状態には緑色LED等)、充電表示灯等の基本的な状態表示器を備えてよい。「ブラインド」ハブ120は、電源(on/off)ボタンも備えてよい。ハブ120は、患者150の身体に装着されても、または単に、机の上に置く、もしくは壁に取り付けるように設計された小型の携帯型装置としてもよい。
【0020】
ハブ120にデータを送信する医療センサ装置130も、ディスプレイや入力ボタンを備えない場合もあるという点において「ブラインド」であってよい。そのような場合、センサ装置130は、ワイヤレスインタフェース160または有線インタフェースを介してハブ120から制御することができる。
【0021】
上記の図2を引き続き参照すると、ハブ120は、医療装置130から受信するセンサデータを格納する。ハブ120は、電話機110、IVR125インタフェースを介して収集された自己評価データ等、他の手段で収集された他のデータも格納することができる。上記のように、ハブ120は、従来型電話機またはワイヤレス電話110を使用して関係者140から照会することを可能にするIVR125システムも備える。また、IVR125システムは、従来型電話機またはワイヤレス電話110を通じて、IVR125システムを介して、患者150に指示、教育的題材、および指導を提供する。要約すると、データがハブ120内に存在し、同じくハブ120に存在するIVR125システムによって照会への対応が行なわれる。
【0022】
次いで図3を参照すると、ハブ220は、ワイヤレスインタフェース260(または代替の有線接続)を通じてセンサ装置230から受信するデータを、セルラ通信270を介して中央サーバ205に転送する。中央サーバ205は、この実施形態ではいくつかの機能を提供する。第1に、中央サーバ205は、医療センサ装置230によって収集されたすべてのデータの長期リポジトリとして機能する。中央サーバ205は、この場合も電話210を介して収集される自己評価データ等、他の手段によって収集された他のデータも記憶する。第2に、中央サーバ205は、従来型電話機またはワイヤレス電話機210を介して患者250に指示、教育的題材、および指導を提供することが可能なIVR225を制御する。それに代えて、またはそれに加えて、ハブ220は、患者250と対話するため、およびハブ220のプログラムまたは設定を行うための内蔵IVR225を備えることもできる。要約すると、中央サーバ205にデータが存在し、同じく中央サーバ205に備わることが可能なIVR225システムを介してそのデータが提供される。
【0023】
上記の両実施形態において、そのようなハブ120、220に従来備わるユーザインタフェースは、セルラ通信機能と、内蔵型あるいは容易に利用できるIVR125、225システムとを使用することにより、不要になる(したがって省くことができる)。したがって、広く普及した電話機110、210が、基本的にハブ120、220への主要なユーザインタフェースとなる。図2に示す一実施形態では、セルラハブ120がデータを格納し、そのデータを関係者140に提供するIVRシステムをホストする。図3に示す別の実施形態では、中央サーバがデータを格納し、そのデータを関係者240に提供するIVR225システムをホストする。
【0024】
次いで図4を参照すると、本願の一実施形態の方法300をフローチャートの形態で示している。ここでは方法300のステップを説明し、図4のフローチャートに図示するが、方法300は、上記のシステムの構成要素を利用することを理解されたい。ステップ305で、遠隔にいる患者が第1の電話機で対話型音声応答システムに電話をかける。ステップ310で、そのユーザはIVRから指示のセットを受け取り、その指示は、ステップ312で生理学的データの収集を自身で行うように促し、さらにステップ314で第1の電話機のユーザインタフェースを使って複数のステップと指示のセットの各々を確認するようにユーザを促す。ステップ315で、生理学的データが、上記で説明したようにハブ内に設定されたデータリポジトリシステムに格納される。最後に、ステップ320で、上記で本願のシステムに関して説明したように、第2の電話機を使って生理学的データを設定または取り出すことができる。
【0025】
以下の例は、本願の実施形態の使用例を例示するものである。この例は、本願の各実施形態を利用する患者を例示するために与えられるが、それらの実施形態を、この特定の例の詳細および状況に制限するものではない。
例#1
ジョンドウ(John Doe)は、79歳で、ステージ3の鬱血性心疾患を患っている。病気をより良好に管理するために、ジョンは、毎日の体重と血圧の測定値を担当医に知らせる必要がある。すると、臨床医は、そのデータを使用してジョンの投薬治療をより適切に調節することができる。ジョンには視力の低下と両手に多少の関節炎もある。ジョンは、科学技術に明るくない。ジョンは、自宅に、ワイヤレスの体重計とワイヤレスの血圧計を持っている。また、小型のハブ装置も所持しており、ポケットに入れている。ジョンには、毎朝IVR125、225システムから電話がかかってくる。IVR125、225システムは、小型のハブ装置に存在するが、中央サーバ(存在する場合)、または何らかの他のシステム上にあってもよい。電話はジョンの壁掛け式電話機にかかってくるが、この電話機はジョンが楽に使用できる機器である。ジョンが電話に出ると、IVR125、225は次のように言う。「ジョン、おはようございます。今日の血圧値を測る必要があります。血圧計の腕帯を腕につけて下さい。腕帯の取り付け方についてより詳しい指示が必要な場合は、「1」を押すか、または「1」と言って下さい。腕帯を持っていないか、腕帯が動かない場合は、「2」を押すか、または「2」と言って下さい。すでに腕帯を腕につけている場合は、「3」を押すか、「3」と言って下さい」。
【0026】
ジョンは、腕帯をつけると「3」を押す。図2および図3を参照すると、IVR125、225システムがハブ120、220から遠隔にある場合、IVRシステムは、ハブ装置120、220にコマンドを送信する。このコマンドは、「血圧測定開始」である。ハブ120、220は、コマンドを受信し、ワイヤレスインタフェース160、260を通じて血圧計装置130にコマンドを転送する。IVR125、225システムがハブ120、220にある場合は、ハブ120、220が直接血圧計130、230に血圧の読み取りを開始するように指令する。いずれの場合も、血圧計130、230は、コマンドを受け取り、測定を開始する。測定で得られたデータは、ハブ120、220に送信され、そこから中央サーバ205に転送されるか、または、ハブ120、220が、患者が測定を行うように指示された時間と、患者が実際に測定を行なった時間を反映するタイムスタンプ等の他の関連情報と共に、測定結果をローカルメモリのデータベースに格納してもよい。ハブ120、220は、設定された期間(例えば前週、前月、または前年)に受信されたすべての患者データを記憶しても、またはメモリが一杯になるまですべてのデータを記憶しても(その場合は古いデータの上に上書きしてもよい)、またはデータの記憶機構を全く備えなくともよい(データ送信のための一時キュー以外には)。いずれの場合も、IVR125、225システムは、次いで、「血圧は上が134、下が98です。次に進みたい場合は「1」を押すか、「1」と言って下さい。もう一度血圧の値を聞きたい場合は「2」を押すか、「2」と言って下さい」等の分かりやすい音声メッセージを使用して、壁掛け電話機を通じてジョンに数値を報告する。ジョンは「1」を押す。
【0027】
次いで、IVR125、225システムは、「血圧が昨日よりも高くなっています。最近薬を飲んでいますか?薬を飲んでいる場合は「1」を押すか、「1」と言って下さい。最近薬を飲み忘れたことがあった場合は、「2」を押すか、「2」と言って下さい。手持ちの薬がなくなっている場合は、「3」を押すか、「3」と言って下さい。次に進む場合は「4」を押すか、「4」と言って下さい」と言う。ジョンは「4」を押す。するとIVR125、225システムは、「今日は体重を確認する必要があります」と応答し、ジョンは、血圧の測定に関して上記で説明したのと同様に、自分の体重を測って、体重についての情報を送信するように指示される。
【0028】
関係者(例えば親戚、医師、臨床医)は、IVR125、225システムを介してハブ120、220に電話をかけ、ジョンが血圧を測定したことを確認することができ、ジョンが測定していない場合は、IVR125、225システムからジョンに電話をかけさせ、血圧を測る必要がある旨のメッセージを繰り返させることができる。関係者は、1回または複数回の以前の測定時のジョンの血圧の測定値を直接知ることもできる。
【0029】
本方法およびシステムは、ジョンが、各種の複雑で異なるユーザインタフェースを扱わなくて済むように構成されている。図2および図3を参照すると、ジョンは標準的な電話機110、120とのインタフェースをとるのみである。また、関係者は、ジョンと同じように、IVRシステムを介してハブ120、220、および医療センサ装置130、230と対話することができる。
例#2
次の週にジョンは数日間娘の家を訪ねる計画を立てている。ジョンは、荷物に装置130、230(血圧計、体重計、およびハブ)を入れる。娘の家に到着すると、ジョンは、ハブに印刷された電話番号に電話をかける。IVR125、225システムは、「こんにちは。現在自宅以外の場所から電話をおかけです。自宅の電話番号を入力して下さい」と応答する。ジョンは入力を行い、IVR125、225システムは、ジョンを認識し、「こんにちは、Elm通り1234番地のジョンドウさん。Elm通り1234番地のジョンドウさんでない場合は、「1」を押すか、「1」と言って下さい。Elm通り1234番地のジョンドウさんの場合は、「2」を押すか、「2」と言って次に進んで下さい」。ジョンは2を押す。「こんにちは、ジョン。明日、今使用している番号に電話をかけてほしい場合は「1」を押すか、「1」と言って下さい。明日は自宅の電話番号への連絡を希望する場合は「2」を押すか、「2」と言って下さい」。ジョンは数日間滞在する予定なので「1」を押す。IVR125、225システムは、明日使用するために発呼者のID番号を記憶し、「今日は体重を確認する必要があります」と応答する。
【0030】
別の実施形態では、IVR225システムは、臨床医と非医療者の介護者が中央サーバ205(図3)と対話し、患者250の状態を管理するための機構でもある。例えば、IVR225システムは、何らかの介入が必要なときに臨床医240に連絡する。
例#3
「こんにちは、スミス先生。担当患者のジョンドウが6日間血圧の測定を行なっていません」、あるいは、「こんにちは、ウィルソン看護師。あなたの担当患者ジョンドウが手持ちの薬を使い切ってしまったようです」、あるいは、「患者ジョンドウを選択しました。ドウの最後に測定された血圧値を聞きたい場合は「1」を押すか、「1」と言って下さい。乾燥重量を聞きたい場合は、「2」を押すか、「2」と言って下さい。最後に報告された体重を聞きたい場合は「3」を押すか、「3」と言って下さい」等。
【0031】
本開示のシステムおよび方法は、下記の機能を実施するさらなる実施形態も包含する。
【0032】
図2および図3を参照すると、ハブ120、220装置は、個人緊急応答ボタン(PERS)を備えてよい。PERS(図示せず)として知られるこの機能は、ボタンが押されると警察または救急車を呼び出す。さらに、ハブ120、220装置は、全地球測位システム受信機(GPS)(図示せず)を備えて、ボタンが押されたときにハブ120、220の位置を送信してもよい。
【0033】
ハブ120、220装置は、「記憶して転送」の方式で動作することも可能である。測定工程が単純で、日課になった場合には、例えば血糖値の測定等、測定によってはユーザインタフェースが必要でない可能性もある。その場合、患者150、250は、IVR125、225システムからの指示を受けずに、非同期に測定を行うことができる。このシナリオでは電話機110、210のユーザインタフェースは必要なくなるので、測定値は、患者150、250が移動中および/またはセルラカバレッジの外にいる時等でも、いつでも取り込まれることが可能である。このシナリオでは、ハブ120、220は、内部に値を記憶し、セルラカバレッジが再び利用できるようになったときに中央サーバ205に値を転送する。
【0034】
さらなる実施形態では、ハブ120、220装置が患者150、250の身体に装着される場合に、ハブ120、220装置は加速度計を備えることができ、その加速度計により、活動レベル、運動レベル、安定性等の患者150、250の状態についての追加的なデータを提供することができる。
【0035】
さらなる実施形態では、十分なメモリがあれば、ハブ120、220装置が長期データ記憶用のサーバとなり、中央サーバ205を不要にする。この実施形態では、臨床医140、240は、セルラインタフェース170、270を通じて直接ハブ120、220に接触し、IVR125、225システムを活用してハブ120、220装置と対話して、患者150、250の状態を判断する。
【0036】
本発明について、その構成と動作の原理の理解を助けるための詳細を含む具体的な実施形態に基づいて説明した。本明細書中の特定の実施形態の参照とその詳細は、添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、例示のために選択された実施形態に変更を加えてよいことは、当業者には明白であろう。
【符号の説明】
【0037】
10、100 システム
20、130、230 医療センサ装置
30、205 中央サーバ
40、120、220 ハブ
50 USB
60 Bluetooth
70 通信手段
110、210 電話機
125、225 IVRシステム
140、240 関係者
150、250 患者
160 ワイヤレスインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔の患者から生理学的データを収集し、この生理学的データを取り出すためのシステムにおいて、
医療センサ装置とワイヤレス通信するハブであって、データリポジトリシステムおよび対話型音声応答(IVR)システムを備えるハブと、
前記ハブの前記IVRシステムと通信する第1の電話機であって、患者はこの第1の電話機を通じて前記IVRから指示のセットを受け取る、第1の電話機と、
を備え、
前記指示のセットは、前記ユーザに、前記医療センサ装置を用いて生理学的データ・セットの収集を自身で行うように促す指示と、前記患者に、前記第1の電話機のユーザインタフェースを用いて前記指示のセット中の複数のステップの各々を確認することを要求する指示とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記ハブは、前記医療センサ装置にコマンドを送信するように構成され、前記コマンドは、前記医療センサ装置に、前記患者からの前記生理学的データ・セットの収集を開始または停止するように指示することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記医療センサ装置は、前記患者から前記生理学的データ・セットを収集した後に、前記生理学的データ・セットを前記ハブに送信するように構成されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記生理学的データ・セットは前記ハブに格納されることを特徴とする請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記ハブの前記IVRシステムと通信する第2の電話機をさらに備え、関係者は、前記第2の電話機を通じて前記IVRおよび前記ハブ内の前記生理学的データ・セットにアクセスし、設定することができることを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記IVRシステムは、前記第2の電話機を通じて前記関係者に連絡を取るように構成されることを特徴とする請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記ハブはユーザインタフェースを備えないことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記医療センサ装置はユーザインタフェースを備えないことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記ハブは、前記第1の電話を通じて前記患者が入手可能な教育的題材のセットをさらに備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記IVRは、設定可能なセキュリティシステムを備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記ハブは、個人緊急応答ボタンを備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記ハブは、全地球測位システムの受信機を備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項13】
遠隔の患者から生理学的データを収集し、前記生理学的データを取り出すためのシステムにおいて、
医療センサ装置とワイヤレス通信するハブと、
前記ハブとワイヤレス通信する中央サーバと、
前記ハブおよび前記中央サーバの少なくとも1つの中に配置された対話型音声応答(IVR)システムと、
前記IVRシステムと通信する第1の電話機であって、患者がこの第1の電話機を通じて前記IVRから指示のセットを受け取る、第1の電話機とを備え、
前記指示のセットは、前記医療センサ装置を用いた生理学的データ・セットの収集を自身で行うように前記ユーザを促す指示と、前記患者が前記第1の電話機のユーザインタフェースを用いて前記指示のセット中の複数のステップ各々を確認することを要求する指示とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記ハブは、前記医療センサ装置にコマンドを送信するように構成され、前記コマンドは、前記医療センサ装置に、前記患者からの前記生理学的データ・セットの収集を開始または停止するように指示することを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記医療センサ装置は、前記患者から前記生理学的データ・セットを収集した後に、前記生理学的データ・セットを前記ハブに送信するように構成されることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記生理学的データ・セットは、転送され、前記サーバの前記データリポジトリシステムに格納されることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記サーバの前記第2のIVRシステムと通信する第2の電話機をさらに備え、
関係者は、前記第2の電話機を通じて前記第2のIVRおよび前記サーバ中の前記生理学的データ・セットにアクセスし、設定することができることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項18】
前記第2のIVRシステムは、前記第2の電話機を通じて前記関係者に連絡を取るように構成されることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記ハブはユーザインタフェースを備えないことを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項20】
前記医療センサ装置はユーザインタフェースを備えないことを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項21】
前記ハブは、前記第1の電話を通じて前記患者が入手可能な教育的題材のセットをさらに備えることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項22】
前記第2のIVRは、前記生理学的データ・セットへの種々のアクセスレベルすべてに合わせて設定可能なセキュリティシステムを備えることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項23】
前記ハブは個人緊急応答ボタンを備えることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項24】
前記ハブは全地球測位システムの受信機を備えることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項25】
前記IVRシステムは前記ハブ内に配置されることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項26】
前記IVRシステムは前記中央サーバに配置されることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項27】
前記IVRシステムは、前記ハブと前記中央サーバの両方に配置されることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項28】
遠隔の患者から生理学的データを収集し、前記生理学的データを取り出す方法において、
第1の電話機で、ハブの中に配置されている対話型音声応答(IVR)システムに電話をかけるステップと、
前記第1の電話機を通じて前記IVRから指示のセットを受け取る指示セット受信ステップであって、前記指示のセットが、
ユーザに、前記ハブとワイヤレス通信可能な医療センサ装置を用いて生理学的データ・セットの収集を自身で行うように促す指示するステップと、
前記ユーザを促して、前記指示のセット中の複数のステップの各々を、前記第1の電話機のユーザインタフェースを用いて確認するように指示するステップと、
を含む指示セット受信ステップと、
前記生理学的データ・セットを、前記ハブ内に配置されたデータリポジトリシステムに格納するステップと
を含むことを特徴とする生理学データ収集取り出し方法。
【請求項29】
前記ハブにより前記医療センサ装置にコマンドを送信するステップをさらに備え、前記コマンドは、前記患者からの前記生理学的データ・セットの収集を開始または停止するように前記医療センサ装置に指示することを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記患者から前記生理学的データ・セットを収集した後に、前記医療センサ装置により、前記生理学的データ・セットを前記ハブに送信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記生理学的データ・セットを前記ハブに格納するステップをさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項32】
第2の電話機が前記ハブの前記IVRシステムと通信し、前記方法は、関係者が前記第2の電話機を通じて前記IVRおよび前記ハブ内の生理学的データ・セットにアクセスし、設定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記IVRシステムが前記第2の電話機を通じて前記関係者に連絡を取るステップをさらに含むことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記ハブはユーザインタフェースを備えないことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項35】
前記医療センサ装置はユーザインタフェースを備えないことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項36】
前記ハブは、前記第1の電話機を通じて前記患者が入手可能な教育的題材のセットをさらに備えることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項37】
前記IVRは設定可能なセキュリティシステムを備えることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項38】
前記ハブは個人緊急応答ボタンを備えることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項39】
前記ハブは全地球測位システムの受信機を備えることを特徴とする請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−516990(P2011−516990A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504033(P2011−504033)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/036875
【国際公開番号】WO2009/126399
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】