説明

遠隔医療システム

【課題】 遠隔医療システムにおいて、サーバとの被測定者端末が通信不能の状態でも利用者に対して利用者固有の情報に基づくサービスを提供する。
【解決手段】 サーバ2は各々の利用者を識別するための利用者識別情報15、各々の利用者の健康情報17、及び各々の利用者が被測定者端末を使用する際の利用環境を決める設定情報16を記憶するサーバ側記憶手段14を有する。被測定者端末1の被測定者端末側記憶手段6内に利用者識別情報15と、設定情報16に対応する情報の全てまたは一部が適当な間隔で更新された状態で記憶される。通信検出手段18がサーバとの通信不能を検知した場合に、被測定者端末は被測定者端末側記憶手段6に記憶された情報を基に利用者の識別し、利用者に固有な利用環境を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設と遠隔通信を行うことによって在宅患者の病状管理や健康管理を行う遠隔医療システムに関し、特に複数の利用者が利用可能で、各々の利用者に対して個別的に利用環境を設定できる被測定者端末を備えた遠隔医療システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、在宅での病状管理や健康管理の必要性の高まりに応じて、様々な様態の遠隔医療システムが市場に現れつつある。このようなシステムの被測定者端末は、従来、家庭での一人もしくは数人での使用を想定しており、これらの利用者の認証は行わないか端末自体の機能によって行なわれていた。また、利用者に対する利用環境の設定は固定である場合が多かった。
【0003】
これに対して、このようなサービスをより多くの利用者に提供するために、多くの利用者を受け入れることが可能な遠隔医療システム、例えば、特許文献1に記載されている在宅医療システムがある。
【0004】
この在宅医療システムでは、複数の端末装置がネットワークを介してホストコンピュータに接続されている。端末装置の主要な機能はホストコンピュータによって生成される端末画面のブラウザである。ホストコンピュータには、端末装置を使用するユーザの利用者識別情報、各利用者の健康情報、利用者や担当医によるコメント情報、利用者の操作を助ける支援情報等が記憶され、ホストコンピュータは、これらの記憶された情報と端末装置から送られる利用者からの入力情報とから、次に表示すべき端末画面を生成して端末装置に送出する。このような制御を繰り返すことによって、利用者は、端末装置を介して端末画面にログインしてユーザ認証を受け、生体データや問診データ等の健康情報を入力し、担当医師からのアドバイスを受け取ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−325356号公報(図1、4〜7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記したような従来の遠隔医療システムにおいては、どの端末装置からでも全てのユーザからの利用を可能するために、ユーザの識別情報や利用情報はホストコンピュータに記録されている。このため、端末装置とホストコンピュータの間の通信が途絶えたり、ホストコンピュータが稼動していない状態では、利用者は生体情報の入力はおろか、ログインすることさえできないという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、ホストコンピュータとの通信ができない、あるいはホストコンピュータが稼動していない状態でも、利用者に対する一定のレベルでのサービスを提供することのできる端末装置を有する遠隔医療システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遠隔医療システムは、生体情報を収集する生体情報収集手段を備え、かつ測定者が操作する被測定者端末と、この被測定者端末で収集、参照、又は編集される情報を蓄積して管理するサーバとがネットワークによって接続され、前記生体情報収集手段で収集された情報は前記ネットワーク介して前記サーバに送信される遠隔医療システムであって、前記サーバは、複数の利用者をそれぞれ識別するための利用者識別情報と前記生体情報収集手段で収集された情報及び利用者の健康情報と利用者が前記被測定者端末を使用する際の利用環境を決める設定情報とを記憶するサーバ側記憶手段を有し、前記被測定者端末は、前記被測定者端末と前記サーバとの間でやり取りされる前記利用者識別情報及び前記設定情報の全てまたは一部が適当な間隔で更新された状態で記憶する被測定者端末側記憶手段と、前記利用者識別情報に基づいて利用者の識別を行なう識別手段と、前記設定情報に基づいて利用者の利用環境を提供するサービス提供手段と、前記被測定者端末と前記サーバ間の通信の可否を検知する通信検出手段を有し、前記被測定者端末の前記通信検出手段が前記被測定者端末と前記サーバ間の通信不能を検出すると、前記被測定者端末の前記識別手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された前記利用者識別情報に基づいて利用者を識別し、前記被測定者端末の前記サービス提供手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された前記設定情報に基づいて利用者に固有な利用環境を提供する。
【0009】
この構成により、被測定者端末はサーバとの通信を行なうことなく利用者の利用認証を行ない、利用者固有の利用環境を構築することができる。
【0010】
詳細には、前記被測定者端末の前記被測定者端末側記憶手段は、前記利用者識別情報と前記設定情報の全部もしくは一部とを記憶し、前記被測定者端末の前記通信検出手段が前記被測定者端末と前記サーバ間の通信不能を検出すると、前記被測定者端末の前記識別手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された利用者識別情報に基づいて利用者を識別し、前記被測定者端末の前記サービス提供手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された利用者個別の設定情報に基づいて前記利用環境を提供する。
【0011】
この構成により、被測定者端末はサーバとの通信を行なうことなく利用者の利用認証を行ない、被測定者端末に記憶された設定情報の範囲で利用者固有の利用環境を利用者に提供することができる。
【0012】
前記設定情報は、各々の利用者が使用する生体センサの設定に関する情報を含む。
【0013】
これにより、被測定者端末はサーバとの通信が行なえない状態でも、ログインした利用者の測定項目に応じた生体センサの設定を利用者に提供することができる。
【0014】
また、設定情報は、各々の利用者が使用する問診の設定に関する情報を含んでもよい。
【0015】
これにより、被測定者端末はサーバとの通信が行なえない状態でも、ログインした利用者に割り当てられた問診の設定を利用者に提供することができる。
【0016】
前記被測定者端末は、当該被測定者端末を使用する利用者の数によって前記被測定者端末側記憶手段に記憶する前記利用者識別情報の内容と、前記設定情報に含まれる設定パラメータの種類とを変更する制御手段を更に備えてもよい。
【0017】
この構成により、被測定者端末はその用途や設置目的等に応じて、サーバとの通信が行える状態及び行なえない状態でのサービス品質を調整することができる。
【0018】
また、前記被測定者端末は、当該被測定者端末と前記サーバ間の通信環境によって前記被測定者端末側記憶手段に記憶する利用者識別情報の内容と、前記設定情報に含まれる設定パラメータの種類を変更する制御手段を更に備えてもよい。
【0019】
この構成により、被測定者端末はサーバとの通信速度等の通信環境に応じてサービス品質を調整することができる。
【0020】
前記被測定者端末の前記被測定者端末側記憶手段は、前記利用者識別情報と当該被測定者端末の全ての利用者に対して適用される既定の設定情報とを記憶し、前記被測定者端末の前記通信検出手段が前記被測定者端末と前記サーバ間の通信不能を検出すると、前記被測定者端末の前記識別手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された前記利用者識別情報に基づいて利用者を識別し、前記被測定者端末の前記サービス提供手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された既定の設定情報に基づいて既定の利用環境を提供してもよい。
【0021】
この構成により、被測定者端末はサーバとの通信を行なうことなく利用者の利用認証を行ない、既存の利用環境を構築することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の遠隔医療システムでは、サーバが有する利用者識別情報と利用者が被測定者端末を使用する際の利用環境を決める設定情報の全てまたは一部を被測定者端末が被測定者端末側記憶手段内に記憶し、被測定者端末とサーバ間の通信不能時には、被測定者端末はこの情報を基に利用者を識別し利用者に固有な利用環境を提供する。従って、被測定者端末とサーバ間の通信不能時にも利用者に対して一定の水準のサービスを提供できる。また、端末単体でのサービスが可能になり、例えば通信手段の無い場所でのサービス提供や、端末を携行してのサービスが可能になり、システムの利便性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の遠隔医療システムについて、図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の実施の形態の遠隔医療システムを図1に示す。同図に示すように、遠隔医療システムは、被測定者端末1と、センターサーバ2を備える。被測定者端末1とセンターサーバ2は、各々、端末側通信装置3、センター側通信装置4に接続され、通信回線(ネットワーク)5を介してデータの交換を行う。
【0025】
被測定者端末1は、タッチパネル、表示装置等のような入出力装置を備え、更に記憶装置(被測定者端末側記憶手段)6、センサインターフェース7が接続されている。記憶装置6には、被測定者端末1で実行されるOSやアプリケーションプログラムの他に、被測定者端末1を利用する患者等の被測定者であるユーザの利用者情報8、ユーザがこの端末を使用する際の利用環境(使用するセンサの種類と数、問診の内容等)を規定する端末設定情報(設定情報)9、測定データ(健康情報)10等が記憶されている。センサインターフェース7には、体温計11、血圧計12、心電計13のようなユーザの生体データを計測するセンサ(生体情報収集手段)が接続され、これらによって計測されたデータは、記憶装置6内の測定データ部10に記録され、必要に応じて端末側送信装置3によりセンターサーバ2に送られる。センサインターフェース7に接続されるセンサの数と種類は、これを使用するユーザの病状によって変更することができる。
【0026】
被測定者端末1は更に、通信監視装置(通信検出手段)18及び、制御装置(制御手段)19を備えている。通信監視装置18は通信回線5を監視して、サーバのとの通信状態が正常で通信が可能である否かを監視してその結果を制御装置19に通知する。制御装置19はこの結果によって被測定者端末1とサーバ2との間の通信処理の形態を規定する。通信処理の形態としては、被測定者端末1にデータの蓄積をせずにセンターサーバ2に格納されているデータを用いてユーザへのサービスを行なうオンラインモードと、被測定者端末1に利用者情報と端末設定情報の一部もしくは全てを保持してこの情報を基にユーザへのサービスを提供するオフラインモードがある。
【0027】
センターサーバ2は記憶装置(サーバ側記憶手段)14を備えている。記憶装置14には、センターサーバ2を利用するユーザに関する利用者情報15、センターサーバ2に接続される被測定者端末1の台数や各被測定者端末1に割り振られたユーザやセンサの情報等のシステム設定情報(設定情報)16、個々の被測定者端末1から送られてくる各ユーザの測定データ17等が記録されている。被測定者端末1の記憶装置6内の利用者情報8、端末設定情報9、測定データ10は、各々、センターサーバ2の記憶装置14内の利用者情報15、システム設定情報16、測定データ17の一部になっており、夫々の被測定者端末1に必要な情報のみが通信回線5を介してセンターサーバ2から被測定者端末1へ送られる。
【0028】
図1に示す遠隔医療システムにおいて、被測定者端末1の記憶装置6には、図2に示す利用者情報テーブル20の形態で利用者情報8が記憶されている。利用者情報テーブル20は、システム内でユーザの識別を行なうためのユーザID21、そのユーザが被測定者端末1にログインする際のログイン名22、そのユーザが被測定者端末1にログインする際のパスワード23、当該ユーザの氏名24、当該ユーザの担当医の氏名25等より構成される。センターサーバ2の記憶装置14内の利用者情報15も概ね同じ構成を有する。センターサーバ2の記憶装置14内の利用者情報15はセンターサーバ2にアクセス可能なすべての被測定者端末1のすべてのユーザについての利用者情報であるのに対し、個々の被測定者端末1の記憶装置6に記憶されている利用者情報8は、この内の当該被測定者端末1に登録されたユーザに関する情報のみを含む。
【0029】
図1に示す遠隔医療システムにおいて、被測定者端末1の記憶装置6には端末設定情報9の一部として、図3に示すセンサテーブル30が記憶されている。このセンサテーブル30は、被測定者端末1を使う各々のユーザが使用するセンサと問診の情報を含む。具体的には、センサテーブル30は、ユーザID21、センサの種類を示すセンサ名32、被測定者端末1の画面での表示順序または操作順序を規定する表示順33、センサを動作させるために必要なパラメータ34、センサの操作方法を表示するためのヘルプデータ(もしくは、その格納場所)35等より構成される。
【0030】
図1に示す遠隔医療システムにおいて、被測定者端末1の記憶装置6には端末設定情報9の一部として、図4に示す問診テーブル40が記憶されている。この問診テーブル40は、被測定者端末1を使う各々のユーザが使用する問診の情報を含む。具体的には、問診テーブル40は、センサテーブル30のパラメータ項34によって各ユーザと関連付けられた問診名41、問診名41で特定される個々の問診を構成する個別問診を識別するための個別問診名42、個別問診を表示する順序を規定する表示順43、個別問診の問診内容を記述する問診内容44、個別問診の回答を列挙する選択肢45等の項目より構成される。
【0031】
前述のようにセンサテーブル30、及び問診テーブル40は、被測定者端末1の端末設定情報9の一部であり、センターサーバ2の記憶装置14内のシステム設定情報16もこれに相当するユーザ全員に関する情報を含む。端末設定情報9はこの内の当該被測定者端末1に登録されたユーザに関する情報のみが記憶されている。
【0032】
図1に示す遠隔医療システムにおいて、被測定者端末1の記憶装置6には、図5に示す測定データテーブル50の形態で測定データ10が記憶されている。この測定データテーブル50は、被測定者端末1を使う各々のユーザが測定した生体データや回答した問診結果の情報を含む。具体的には、測定データテーブル50は、ユーザID21、センサテーブル30のセンサ名32及び問診テーブル40の個別問診名42に対応するセンサ名52、測定結果のデータもしくは問診の回答結果である測定値53、測定もしくは回答を行なった時刻である測定時刻54、当該データをサーバに送信済みかどうかを示す送信フラグ55等により構成される。センターサーバ2の記憶装置14内の測定データ情報17も概ね同じ構成を有する。被測定端末1の記憶装置6に記憶されている測定データ情報10は、この内の当該被測定者端末1に登録されたユーザに関する情報のみを含む。
【0033】
以下、図1に示した遠隔医療システムにおいて、被測定者端末1の起動からユーザが被測定者端末1にログインして操作を終了するまでの手順と、被測定者端末1とセンターサーバ2と間のデータのやり取りを説明する。
【0034】
図6は、通信回線5により被測定者端末1とセンターサーバ2の間の通信が可能で、制御装置19がオンラインモードを規定している場合の通信手順(通信手順1)を示している。
【0035】
以下、手順を図中の符号に従って説明する。
【0036】
(ステップS6−1)
被測定者端末1の電源を入れると、アプリケーションプログラムが起動し、センターサーバ2への接続を開始する。センターサーバ2との通信が確立すると、被測定者端末1はセンターサーバ2に対して接続要求を行う。
【0037】
(ステップS6−2)
センターサーバ2は、被測定者端末1からの接続要求メッセージから被測定者端末1の端末番号を特定して認証を行ない、接続を許可する。被測定者端末1はこれを確認して、ユーザログイン画面を表示する。これ以降、ユーザはこの被測定者端末1にログインしてサービスの提供を受けることができる。
【0038】
(ステップS6−3)
ユーザがログイン名を入力してログインを行なうと、このログイン名がサーバに転送され、ユーザのログイン認証が行なわれる。
【0039】
(ステップS6−4)
センターサーバ2は被測定者端末からの応答を解析して被測定者端末のログイン認証処理を行ない、認証結果が正当であれば被測定者端末1にログイン許可を返信する。
【0040】
(ステップS6−5)
ユーザは引き続いてパスワードを入力する。被測定者端末1は通信回線5を介してセンターサーバ2にパスワードを転送する。
【0041】
(ステップS6−6)
センターサーバ2は被測定者端末1からの応答を解析して被測定者端末のパスワード認証処理を行ない、認証結果が正当であれば被測定者端末1に使用許可を返信する。
【0042】
(ステップS6−7)
引き続きセンターサーバ2は端末設定情報を被測定者端末1に対して送信する。被測定者端末1は、これを受信してユーザに対してメニュー画面を表示する。
【0043】
(ステップS6−8)
ユーザがメニュー画面から「測定」を選択すると、この情報がセンターサーバ2に送信される。
【0044】
(ステップS6−9)
センターサーバ2は、システム設定情報18から当該ユーザに設定されたセンサ情報を検索し、その結果を被測定者端末1に送信する。被測定者端末1はこれを受信して、ユーザに対して測定項目(センサ)一覧画面を表示する。
【0045】
(ステップS6−10)
ユーザは測定したいセンサを選択して生体データの測定を行い、被測定者端末1はセンサより受信した生体データをセンターサーバ2に送信する。センターサーバ2はこれを受信して測定データ情報17に格納する。測定後は再び測定項目一覧画面が表示され、ユーザは設定された各々のセンサによる測定を繰り返す。図6の例では、血圧と体重が測定され、センターサーバ2に送信されている。
【0046】
(ステップS6−11)
引き続き、ユーザは測定項目一覧画面から「問診」を選択する。被測定者端末1はこの情報をセンターサーバ2に送信する。
【0047】
(ステップS6−12)
センターサーバ2は、システム設定情報18から当該ユーザに設定された問診情報を検索し、その結果を被測定者端末1に送信する。被測定者端末1はこれを受信して、ユーザに対して問診画面を表示する。
【0048】
(ステップS6−13)
ユーザが設定された問診に対して回答すると、それらの回答がセンターサーバ2に送信され、これを受信したセンターサーバ2は測定データ情報17として格納する。被測定者端末1において、設定された問診が終了すると再び測定項目一覧画面が表示される。図6の例では、3種類の問診の回答が行われ、それらの回答データがセンサーサーバ2に送信されている。
【0049】
(ステップS6−14)
ユーザが「終了」を選択すると、この情報がセンターサーバ2に送信される。
【0050】
(ステップS6−15)
センターサーバ2は終了通知を被測定者端末1に対して送信する。被測定者端末1はこれを受信してこのユーザとのセッションを終了し、次のユーザが利用するためにユーザログイン画面(ステップS6−3)を表示する。
【0051】
以上説明したように、この通信手順1によれば、被測定者端末1はユーザに対する情報を保持せず、都度センターサーバ2から必要な情報を要求し、これを受信しながらサービスを継続する。このため、センターサーバ2の処理速度やメモリ容量等の性能が許す範囲の非常に多数のユーザに対してユーザ固有のサービスを提供することができ、また、センターサーバ2と被測定者端末1でやり取りされる1通信当たりのデータ量が多くないため、通信回線5の通信速度が低くても比較的応答の良いサービスを提供することができる。反面、通信回線5による通信が途切れている状態では全くサービスを提供することができない。
【0052】
図7は、被測定者端末1とセンターサーバ2の間の通信が可能で、制御装置19がオフラインモードを規定している場合の通信手順(通信手順2)を示している。
【0053】
以下、手順を図中の符号に従って説明する。
【0054】
(ステップS7−1)
被測定者端末1の電源を入れると、アプリケーションプログラムが起動し、センターサーバ2への接続を開始する。センターサーバ2との通信が確立すると、被測定者端末1はセンサーサーバ2に対して接続要求を行う。
【0055】
(ステップS7−2)
センターサーバ2は、被測定者端末1からの接続要求メッセージから被測定者端末1の端末番号を特定して認証を行ない、接続を許可する。
【0056】
(ステップS7−3)
被測定者端末1はオフラインモードでの起動準備を開始し、起動時に必要な初期データをセンターサーバ2に対して要求する。
【0057】
(ステップS7−4)
センターサーバ2は、被測定者端末1にアサインされたユーザ全て、あるいは被測定者端末1を利用する可能性のある全てのユーザの利用者情報を被測定者端末1に送信する。これを受信した被測定者端末1は、利用者情報8を記憶装置6内に、図2に示す利用者情報テーブル20として記録する。
【0058】
(ステップS7−5)
更にセンターサーバ2は、被測定者端末1においてユーザが使用する際に必要となる種々の設定情報、例えば、システム設定情報16の内、この被測定者端末1にアサインされたユーザに対するセンサ情報を抽出した情報、問診テーブル等を被測定者端末1に送信する。被測定者端末1は受信した情報を記憶装置6内に、それぞれ図3に示すセンサテーブル30、図4に示す問診テーブル40に記録する。これらの初期データを受信すると被測定者端末1は、ログイン画面を表示して起動シーケンスを終了する。その後、ユーザがこの被測定者端末1を利用するためにログイン画面でログイン名とパスワードを入力すると、被測定者端末は利用者情報8を検索して認証を行なう。認証が成功した場合、被測定者端末1はメニュー画面を表示する。ユーザがメニュー画面から「測定」を選択すると、被測定者端末1は端末設定情報9内のセンサテーブル30(図3)を検索し、ユーザに対して測定項目(センサ)一覧画面を表示する。
【0059】
(ステップS7−6)
ユーザは測定したいセンサを選択して生体データの測定を行い、被測定者端末1はセンサより受信した生体データをセンターサーバ2に送信する。センターサーバ2はこれを受信して測定データ情報17に格納する。測定後は再び測定項目一覧画面が表示され、ユーザは設定された各々のセンサに対して測定を繰り返す。
【0060】
(ステップS7−7)
引き続き、ユーザは測定項目一覧画面から「問診」を選択する。被測定者端末1は端末設定情報9から当該ユーザに設定された問診情報を検索して問診テーブル40(図4)を検索し、ユーザに対して問診画面を表示する。ユーザが回答した問診はセンターセンターサーバ2に送信され、測定データ情報17に格納される。同様にして、被測定者端末1は問診テーブル40(図4)を参照しながら以降の問診を表示し、その結果を都度センターサーバ2に送信する。センターサーバ2はこれらのデータを測定データ情報17として格納する。
【0061】
設定された問診が全て終了すると再び測定項目一覧画面が表示される。ユーザが「終了」を選択すると、被測定者端末1はこのユーザとのセッションを終了し、次のユーザが利用するためにユーザログイン画面を表示する。以降、この処理が繰り返される。
【0062】
以上説明したように、この通信手順2によれば、被測定者端末1は当該被測定者端末1を利用するユーザの情報とこれらのユーザに対する設定情報を、起動時にサーバから一括してダウンロードして記憶装置6に記録し、以降ユーザがこの端末を利用する場合にはセンターサーバ2に接続することなしにユーザに対してユーザ固有のサービスを提供することができる。この場合の被測定者端末1の応答は、センターサーバ2の処理能力や通信回線5の影響を受けないため、応答性の良いサービスを提供することができる。また、被測定者端末1とサーバ2の間の通信は測定データと問診データの送信に限られ、センターサーバ2の負荷は被測定者端末1の起動時を除けば、図6に示す通信手順1に比べて非常に低く、センターサーバ2はより多くの台数の被測定者端末1からの処理要求に応えることができる。
【0063】
図8は、センターサーバ2の停止、通信回線5上の障害等の原因により被測定者端末1とセンターサーバ2の間が通信不能である場合の通信手順(通信手順3)を示している。
【0064】
以下、手順を図中の符号に従って説明する。
【0065】
(ステップS8−1)
被測定者端末1の電源を入れると、アプリケーションプログラムが起動し、センターサーバ2への接続を試みる。通信監視装置18はサーバとの通信不能状態を検知し制御装置19に通知し、被測定者端末1はオフラインモードで起動し、ログイン画面を表示して起動シーケンスを終了する。利用者情報8や端末設定情報9は、以前にセンターサーバ2に接続し際にサーバ2からダウンロードされた情報が記憶装置6内に保持されている。すなわち、記憶装置6内には、この被測定者端末1にアサインされたユーザ全ての利用者情報、センサ情報、問診情報等が記憶されている。その後、ユーザがこの被測定者端末1を利用するためにログイン画面でログイン名とパスワードを入力すると、被測定者端末1は記憶装置6内に保持されている利用者情報8を検索して認証を行なう。認証が成功した場合、被測定者端末1はメニュー画面を表示する。
【0066】
ユーザがメニュー画面から「測定」を選択すると、被測定者端末1は端末設定情報9内のセンサテーブル30(図3)を検索し、ユーザに対して測定項目(センサ)一覧画面を表示する。ユーザは測定したいセンサを選択して生体データの測定を行い、被測定者端末1はセンサより受信した生体データを測定データテーブル10(図5)に格納する。測定後は再び測定項目一覧画面が表示され、ユーザは設定された各々のセンサに対して測定を繰り返し、その結果は記憶装置6内の測定データテーブル10に記録される。
【0067】
引き続き、ユーザは測定項目一覧画面から「問診」を選択する。問診の回答結果も記憶装置6内の測定データテーブル10に記録される。
【0068】
ユーザが全てのメニューを終了し、メインメニューで「終了」を選択すると、被測定者端末1はこのユーザとのセッションを終了し、次のユーザが利用するためにユーザログイン画面を表示する。以降、この処理が繰り返される。
【0069】
(ステップS8−2,S8−3)
被測定者端末1がオフラインで動作中に、通信監視装置18がセンターサーバ2との接続状態を検知すると制御装置19に通知し、被測定者端末1はセンターサーバ2への未送信データの送信を試みる。測定データテーブル10(図5)は各データ毎に送信フラグを備えており、センターサーバ2に送信されていないデータに対してはこのフラグが立っていない。未送信データの送信処理では、このフラグをチェックしながらセンターサーバ2へのデータ送信が行なわれる。
【0070】
以上説明したように、この通信手順3によれば、被測定者端末1は、センターサーバ2との通信が不可能で最新の利用者情報や端末設定情報の獲得ができない場合には、以前の接続で取得し記憶装置6に記録されている利用者情報と端末設定情報を用いて、当該被測定者端末1を利用するユーザに対してユーザ固有の設定環境(センサや問診の設定)でサービスを提供し、測定データや問診に対する回答データの収集と蓄積を行うことができる。また、測定されたデータは一時的に記憶装置6中の測定データテーブル50に格納される。一般に、センターサーバ2との通信が不能になる機会やその期間は非常に限定的と考えられ、この間に利用者情報や端末設定情報が変更される機会は非常に低く、また設定を変更されるユーザの割合も非常に小さいと考えられる。このため、センターサーバ2との通信ができない場合の利用者に対するサービスの水準は、サーバとの通信が可能の場合とほぼ同等に保たれる。被測定者端末1の応答は、通信手順2に場合と同等にセンターサーバ2の処理能力や通信回線の影響を受けないため、応答性の良いサービスを提供することができる。また、被測定者端末1とサーバ2の間の通信は接続復帰後の測定データと問診データの送信に限られ、サーバの負荷は図7に示す通信手順2と同等で、通信手順1の場合と比較すると非常に低く、サーバはより多くの台数の被測定者端末からの処理要求に応えることができる。
【0071】
制御装置19は被測定者端末1を使用する利用者の数によって、通信手順2(図7)のステップS7−4においてセンターサーバ2からダウンロードして記憶装置6に記憶する利用者情報の内容や、ステップS7−5においてセンターサーバ2からダウンロードして記憶装置6に記憶する端末設定情報に含まれる設定パラメータの種類を変更してもよい。具体的には、制御装置19は被測定者端末1を使用する利用者の数が多いほど、記憶装置6に記憶する利用者識別情報の内容と端末設定情報に含まれる設定パラメータの数を低減する。これにより、被測定者端末1の用途や設置目的等に応じてセンターサーバ2との通信が可能である状態(通信手順1,2)及び可能でない状態(通信手順3)でのサービス品質を調整できる。
【0072】
また、制御装置19は通信回線5の通信速度等の被測定者端末1とセンターサーバ2間の通信速度等の通信環境によって、通信手順2(図7)のステップS7−4においてセンターサーバ2からダウンロードして記憶装置6に記憶する利用者情報の内容や、ステップS7−5においてセンターサーバ2からダウンロードして記憶装置6に記憶する端末設定情報に含まれる設定パラメータの種類を変更してもよい。具体的には、制御装置19は通信環境が良好であるほど、記憶装置6に記憶する利用者識別情報の内容と端末設定情報に含まれる設定パラメータの数を増加させる。これによって通信速度等の通信環境に応じてサービス品質を調整できる。
【0073】
本実施の形態の被測定者端末1においては、当該被測定者端末1にアサインされる利用者数が非常に多い場合、初期接続時にサーバ2からダウンロードされる利用者情報や端末設定情報のデータ量が非常に大きくなる。このため、利用者のセンサ設定に対して標準的な設定(標準設定)を規定して、この情報を図9に示すような標準センサテーブルに記述する。この設定に沿う利用者に対しては当該利用者のセンサ設定を図3に示すセンサテーブルに記録せず、利用する際にセンサテーブルにセンサ設定がない場合には標準設定が適用される。大多数の利用者のセンサ設定が標準センサ設定であれば、センサテーブルのデータ量は非常に小さいものとなる。同様に、図4に示す問診テーブルに関しても標準的な問診を規定して標準問診テーブルに記録することによってセンサテーブルの問診設定項目の数を減らすことができる。この場合も、利用者が利用する際に問診の設定がセンサテーブルにない場合には標準問診テーブルが適用される。
【0074】
被測定者端末1とセンターサーバ2が通信不能である場合、前述の図9に示す標準センサテーブルと標準問診テーブルを全てのユーザに対して適用される既定の設定情報として使用してもよい。具体的には、通信監視装置18が通信不能を検出した場合、まず、記憶装置6に記憶された利用者情報8(図2の利用者情報テーブル20)によりユーザの識別を行った後、そのユーザが被測定者端末1にアサインされたいずれのユーザであるかにかかわらず、標準センサテーブルと標準問診テーブルの情報に基づいて、生体データの測定や問診を実行に必要なメニュー画面表示、測定画面表示、問診表示等の処理を実行してもよい。このように標準センサテーブルと標準問診テーブルを全てのユーザに対する既存の設定情報として使用することによっても、被測定者端末1とセンターサーバ2の通信不能時に測定データや問診に対する回答データの収集と蓄積が可能である。
【0075】
本実施の形態において、図3に示すように問診の設定はセンサの設定と同じテーブルに記述しているが、別のテーブルであってもよい。また、問診内容の記述方法として図4に示すような構成で説明したが、別の構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明にかかる遠隔医療システムは、サーバが有する利用者識別情報と端末設定情報の一部もしくは全てを被測定者端末がその記憶手段内に記憶することによって、被測定者端末とサーバ間の通信不能時に被測定者端末がこの情報を基に利用者を識別し利用者に固有な利用環境を提供し、利用者に対して一定の水準の固有なサービスを確保できるという効果を有し、遠隔通信を用いた医療システム、特に健康管理システムや病状・疾病管理システム等に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態における遠隔医療システムのシステム構成図。
【図2】本発明の実施の形態における利用者情報テーブルの構成図。
【図3】本発明の実施の形態におけるセンサテーブルの構成図。
【図4】本発明の実施の形態における問診テーブルの構成図。
【図5】本発明の実施の形態における測定データテーブルの構成図。
【図6】本発明の実施の形態におけるサーバ−被測定者端末間の第1の通信手順のフロー図。
【図7】本発明の実施の形態におけるサーバ−被測定者端末間の第2の通信手順のフロー図。
【図8】本発明の実施の形態におけるサーバ−被測定者端末間の第3の通信手順のフロー図。
【図9】本発明の実施の形態における標準センサテーブルの構成図。
【符号の説明】
【0078】
1 被測定者端末
2 センターサーバ
3 端末側通信装置
4 センター側通信装置
5 通信回線
6 端末側記憶装置
7 センサインターフェース
8 利用者情報
9 端末設定情報
10 測定データ
11 体温計
12 血圧計
13 心電計
14 センターサーバ記憶装置
15 利用者情報
16 システム設定情報
17 設定データ
18 通信監視装置
19 制御装置
20 利用者情報テーブル
30 センサテーブル
40 問診テーブル
50 測定データテーブル
60 標準センサテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を収集する生体情報収集手段を備え、かつ測定者が操作する被測定者端末と、この被測定者端末で収集、参照、又は編集される情報を蓄積して管理するサーバとがネットワークによって接続され、前記生体情報収集手段で収集された情報は前記ネットワーク介して前記サーバに送信される遠隔医療システムであって、
前記サーバは、複数の利用者をそれぞれ識別するための利用者識別情報と前記生体情報収集手段で収集された情報及び利用者の健康情報と利用者が前記被測定者端末を使用する際の利用環境を決める設定情報とを記憶するサーバ側記憶手段を有し、
前記被測定者端末は、前記被測定者端末と前記サーバとの間でやり取りされる前記利用者識別情報及び前記設定情報の全てまたは一部が適当な間隔で更新された状態で記憶する被測定者端末側記憶手段と、前記利用者識別情報に基づいて利用者の識別を行なう識別手段と、前記設定情報に基づいて利用者の利用環境を提供するサービス提供手段と、前記被測定者端末と前記サーバ間の通信の可否を検知する通信検出手段を有し、
前記被測定者端末の前記通信検出手段が前記被測定者端末と前記サーバ間の通信不能を検出すると、前記被測定者端末の前記識別手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された前記利用者識別情報に基づいて利用者を識別し、前記被測定者端末の前記サービス提供手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された前記設定情報に基づいて利用者に固有な利用環境を提供することを特徴とした遠隔医療システム。
【請求項2】
前記被測定者端末の前記被測定者端末側記憶手段は、前記利用者識別情報と前記設定情報の全部もしくは一部とを記憶し、
前記被測定者端末の前記通信検出手段が前記被測定者端末と前記サーバ間の通信不能を検出すると、前記被測定者端末の前記識別手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された利用者識別情報に基づいて利用者を識別し、前記被測定者端末の前記サービス提供手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された利用者個別の設定情報に基づいて前記利用環境を提供することを特長とした請求項1記載の遠隔医療システム。
【請求項3】
前記設定情報が、各々の利用者が使用する生体センサの設定に関する情報を含むことを特徴とした請求項2記載の遠隔医療システム。
【請求項4】
前記設定情報が、各々の利用者が使用する問診の設定に関する情報を含むことを特徴とした請求項2記載の遠隔医療システム。
【請求項5】
前記被測定者端末は、当該被測定者端末を使用する利用者の数によって前記被測定者端末側記憶手段に記憶する前記利用者識別情報の内容と、前記設定情報に含まれる設定パラメータの種類とを変更する制御手段を更に備えることを特徴とした請求項2記載の遠隔医療システム。
【請求項6】
前記被測定者端末は、当該被測定者端末と前記サーバ間の通信環境によって前記被測定者端末側記憶手段に記憶する利用者識別情報の内容と、前記設定情報に含まれる設定パラメータの種類を変更する制御手段を更に備えることを特徴とした請求項3記載の遠隔医療システム。
【請求項7】
前記被測定者端末の前記被測定者端末側記憶手段は、前記利用者識別情報と当該被測定者端末の全ての利用者に対して適用される既定の設定情報とを記憶し、
前記被測定者端末の前記通信検出手段が前記被測定者端末と前記サーバ間の通信不能を検出すると、前記被測定者端末の前記識別手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された前記利用者識別情報に基づいて利用者を識別し、前記被測定者端末の前記サービス提供手段は前記被測定者端末側記憶手段に記憶された既定の設定情報に基づいて既定の利用環境を提供することを特長とした請求項1記載の遠隔医療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−37892(P2007−37892A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227713(P2005−227713)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】