説明

遠隔操作式排水栓装置

【課題】
排水装置本体5の、槽体底面と排水装置本体5上面との間からレリースワイヤ4を挿通する遠隔操作式排水栓装置について、レリースワイヤ4の屈曲する角度を小さくし、挫屈現象が生じにくくなるようにする。また、施工の容易化を図る。
【解決手段】
槽体の排水口1を遠隔操作的に開閉するための遠隔操作式排水栓装置を、槽体の底面に備えられた排水口1と、該排水口1を開閉する弁部材2と、弁部材2の動作を操作する操作部3と、操作部3に加えられた操作を弁部材2に伝達するレリースワイヤ4と、排水口1からの排水が流入する排水装置本体5と、排水装置本体5の上面に備えた、略水平方向に向かって開口した、レリースワイヤ4を挿入するための挿入口6と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作式排水栓装置に関し、更に詳しくは、槽体の底面下方と排水装置の上面の間隔が狭い排水機器に備えられる遠隔操作式排水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽や洗面ボウルなどの槽体の底面に設けられた排水口を、槽体の縁部など排水口から離れた場所に設けられた操作部に操作を加えることで、遠隔操作により開閉する遠隔操作式排水栓装置が知られている。以下に従来の遠隔操作式排水栓装置の一例を説明する。
従来の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体としての浴槽、防水パン、排水栓本体、排水装置本体(トラップ)、カバー部材、弁部材、レリースワイヤ、及び操作部から構成される。
浴槽は、上方が開口した箱体であって、底面に取付孔を開口する。
防水パンは浴槽を載置する為の、平坦に近い槽体を成す部材であって、底面に排水装置を取り付ける取着孔を備えてなる。
排水栓本体は、内部に排水口を形成した円筒状の部材であって、排水口内部にレリースワイヤ端部を接続するように構成されてなる。
排水装置本体は、上方に大きく開口した、防水パンの取着孔に取りつけられる開口部と、側面に設けられた排水を排出するための排出口とを備えてなる。
カバー部材は、上記排水装置本体の開口部を覆う部材であって、上下に貫通する挿入口と、排水栓本体からの排水が流入する接続口と、から構成されてなる。
弁部材は、この後に詳述するレリースワイヤの弁軸部と嵌合する、排水口の上部に配置される部材であって、上昇/下降することで、排水口を開口/覆って閉口させる部材である。
レリースワイヤは、四フッ化エチレンなどの樹脂から構成される円筒状のアウターチューブと、アウターチューブ内に進退自在に配置される、コイル状に形成された金属線からなるインナーワイヤと、インナーワイヤをアウターチューブに対して一方向(操作部側)に付勢する戻りスプリングと、排水栓側端部に設けられた、棒状にして弁部材と嵌合する弁軸部と、後述するスラストロック部材と、から構成される。
スラストロック部材は、レリースワイヤ端部に備えられる部材であって、アウターチューブ端部が接続されるスラストロック本体と、インナーワイヤ端部が当接するスラストロック軸部とを備えてなり、スラストロック軸部への押し込み操作毎に、スラストロック軸部が突出してインナーワイヤを弁軸部側に突出して固定/固定を解除しインナーワイヤの戻りスプリングの作用により操作部側に後退、を繰り返す部材である。
操作部は、弁部材を遠隔的に操作する部材であって、略円筒状にして、内部にスラストロック本体を固定する操作部本体と、スラストロック軸部の端部に固定されるボタン部材と、から構成される。尚、上記のような構成により、施工完了時においては、レリースワイヤのアウターチューブ端部は、スラストロック本体を介して操作部本体に固定される。
【0003】
以上のように構成した従来例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして槽体である浴槽に施工・取り付けされる。
まず浴槽の上縁に操作部本体を、浴槽の底面の取付孔に排水栓本体を、防水パンの取着孔に排水装置本体を、それぞれ取り付け固定する。
次に、排水装置本体の開口部にカバー部材を取り付けた後、浴槽を防水パンに載置する。この際に、排水栓の下端を、カバー部材の接続口に接続する。
更にレリースワイヤの一端を操作部に取り付けてから、他端をカバー部材の挿通孔上方から貫通するようにして挿入する。その後、ラジオペンチ等の冶具を利用し、排水装置本体内部に通されたレリースワイヤ先端を、排水口から引き上げる。次いで、支持部材にアウターチューブ端部を固定した上で、排水栓本体に支持部材を嵌合固定する。
最後にインナーワイヤの弁軸部に弁部材を、またスラストロック軸部の端部にボタン部材を、それぞれ嵌合固定させて、遠隔操作式排水栓装置の浴槽への施工・取り付けが完了する。
【0004】
前記のように取り付けられた遠隔操作式排水栓装置は、以下のように操作することで、遠隔操作により排水口を開閉できる。
まず弁部材が降下し、排水口が閉口している状態とする。この状態において操作部のボタン部材に押し込み操作を加えると、スラストロック軸部がインナーワイヤ側に突出し、それに伴ってインナーワイヤがアウターチューブに対し排水口側へ突出し、弁部材を押し上げて排水口を開口する。この状態にてスラストロック軸部が固定され、排水口の開口状態が維持される。
この状態から再度操作部のボタン部材に押し込み操作を加えると、スラストロック軸部の固定が解除され、弁部材の自重及び戻りスプリングの作用によりインナーワイヤが操作部側に後退し、弁部材が降下して排水口が閉口する。
以後、同様の操作を繰り返すことで、遠隔操作的に、排水口の開口/閉口を行うことができ、開口時には浴槽内の排水を排出することができる。
【0005】
【特許文献1】特許3633336号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような遠隔操作式排水栓装置の場合、レリースワイヤを、上方から差し込み、狭い排水装置本体内部で180度反転させて排水口内部の支持部材に取り付け固定を行う必要がある。このため、急激な屈曲によってレリースワイヤが折れ曲がってしまい、破損する「座屈」と呼ばれる現象を生じる場合がある。また、槽体と排水装置本体、またはその上面に取り付けられるカバー部材の挿入口との距離が狭いと、特許3633336号の図3のように、一旦レリースワイヤを水平方向に向けてから挿入し、更に挿入口上で90度折り曲げて、再度180度反転させる必要があり、座屈が生じる可能性が一層高まる、という問題があった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、槽体の底面下方と排水装置の上面(特に挿入口)との間隔が狭い排水機器に良好且つ故障が生じにくい遠隔操作式排水栓装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、槽体の排水口1を遠隔操作的に開閉するための遠隔操作式排水栓装置であって、
槽体の底面に備えられた排水口1と、該排水口1を開閉する弁部材2と、弁部材2の動作を操作する操作部3と、操作部3に加えられた操作を弁部材2に伝達するレリースワイヤ4と、排水口1からの排水が流入する排水装置本体5と、排水装置本体5の上面に備えた、略水平方向に向かって開口した、レリースワイヤ4を挿入するための挿入口6と、からなる遠隔操作式排水栓装置である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、上記挿入口6より挿入されたレリースワイヤ4が、排水装置本体5内を通過して配置されることを特徴とする、上記段落0007に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、上記挿入口6より挿入されたレリースワイヤ4が、排水装置本体5の上面上を通過して配置されることを特徴とする、上記段落0007に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、上記排水口1内に、弁部材2を上下動させるためのレリースワイヤ4の端部が上方を向いた状態で固定する支持部材7を備えたことを特徴とする、上記段落0007乃至段落0009のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、上記レリースワイヤ4の先端部を略水平方向に向けて配置すると共に、排水口1内に、操作部3の操作に応じて生じるレリースワイヤ4の動作により、レリースワイヤ4の軸方向に向かって生じる動作を、レリースワイヤ4の軸方向に対し上下に向かって生じる動作に変換する、変換部材を備えたことを特徴とする、上記段落0007乃至段落0009のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、上記変換部材を、レリースワイヤ4の先端部に備えた、レリースワイヤ4の軸方向への動作を、弁部材2を上下動させるための上下動作に変換するレバー体8としたことを特徴とする、上記段落0011に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0013】
請求項7に記載の本発明は、上記レリースワイヤ4の排水口1側端部の固定が、排水口1内から行う作業により行われることを特徴とする、上記段落0007乃至段落0013のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0014】
請求項8に記載の本発明は、上記レリースワイヤ4の排水口1側端部の固定が、挿入口6に対して行う作業により行われることを特徴とする、上記段落0007乃至段落0012のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
尚、ここで言う「固定」とは、排水口内にて行った作業により、レリースワイヤ端部が固定される場合を全て含むものであって、必ずしも排水口内部にレリースワイヤ端部が配置される必要はない。
【0015】
請求項9に記載の本発明は、上記操作部3から挿入口6までの間に、レリースワイヤ4を操作部3から挿入口6までガイドするための、ガイドチューブ9を配置したことを特徴とする、上記段落0007乃至段落0014のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0016】
請求項10に記載の本発明は、上記遠隔装置式排水栓装置の排水口1周縁上面が、槽体の底面下方に取り付けるように構成されたことを特徴とする、上記段落0007乃至段落0015のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の本発明では、遠隔操作式排水栓装置の操作を伝達するレリースワイヤを、略水平方向に向いて設けられた挿入口から挿入することで、レリースワイヤの曲がり角度を急激にならないようにする事ができ、レリースワイヤの挫屈を生じにくくする事ができる。また、挿入口が略水平方向を向くことで、挿入口の上方に槽体が配置される場合でも、レリースワイヤの挿入作業が容易となる。
請求項2に記載の本発明では、レリースワイヤの曲がり半径を大きく取ることができ、レリースワイヤが挫屈し難い遠隔操作式排水栓装置とする事ができる。
請求項3に記載の本発明では、レリースワイヤが排水装置本体内部を通過しないため、排水に晒される機会が減り、レリースワイヤの金属部分が錆びたり、排水中の塵芥が付着して動作ができなくなる、といった問題を低減することができる。
請求項4に記載の本発明では、レリースワイヤが直接的に弁部材を押し上げる構成とすることで、遠隔操作式排水栓装置の構成をシンプルなものにすることができる。
請求項5に記載の本発明では、変換部材を介して弁部材を押し上げすることで、レリースワイヤが無理な屈曲を生じない方向(例えば略水平方向)を向いたまま、弁部材を上下方向に動作させる事ができ、より一層挫屈の生じにくい遠隔操作式排水栓装置とすることができる。この変換部材を利用し、変換部材を主に排水口内に配置することで、排水にレリースワイヤを晒さなくても良い構成とすることができ、レリースワイヤの金属部分に錆を生じにくくすることができる。
請求項6に記載の本発明では、変換部材の具体例としてレバー体を示すことができる。
請求項7に記載の本発明では、槽体の内部からレリースワイヤ端部の固定を行うため、メンテナンス等の際、浴槽など槽体の表側のみからの作業しか行えない場合がある排水機器において好適である。
請求項8に記載の本発明では、挿入口に対してレリースワイヤ端部の固定を行うため、狭い排水口に対して作業を行う請求項7の発明と比較して施工作業が容易となる。このため、洗面台などキャビネットを介することで槽体の裏側に作業を行うことが可能な排水機器において好適である。
請求項9に記載の本発明では、操作部から挿入口までの間に、レリースワイヤを操作部から挿入口までガイドするための、ガイドチューブを配置したことで、操作部からレリースワイヤを抜き差しするメンテナンス作業を、槽体の表側からのみで行うことができる。
請求項10に記載の本発明では、遠隔装置式排水栓装置の排水口周縁上面を、槽体の底面下方に取り付けるように構成してなる。近年では、意匠性の向上のため、排水装置を槽体の裏面から取り付け、槽体の底面の開口を排水口として、排水口の上端周縁に弁部材が当接して止水する、フランジレス配管と呼ばれる配管構成が広まりつつある。
このようなフランジレス配管の問題点として、槽体の上面に排水口があり、その排水口上縁に弁部材が当接して排水口を閉口するようにすると、槽体の厚みに併せて、排水口上縁から弁部材を昇降させるためのレリースワイヤ端部の固定位置までの高さ幅が変わってしまう、という問題がある。
特に、本発明の内、レリースワイヤ端部が略水平方向を向いて配置される場合、レリースワイヤ端部の高さ位置を変更することはレリースワイヤ端部が垂直方向を向いて配置される場合に比べ困難であり、フランジレス配管を採用しにくい状況にあった。
これに対し、本発明のように、排水口上縁を槽体の上面ではなく、槽体の底面下方に取り付けるように構成すると、排水口上縁からレリースワイヤ端部までの高さ位置が一定となる。このため、どのような槽体に施工を行っても、排水口上縁からレリースワイヤ端部までの高さ位置が安定し、フランジレス配管を容易に利用することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施例の遠隔操作式排水栓装置を示す参考図である。
【図2】第一実施例の閉口状態を示す、排水口近傍の参考図である。
【図3】第一実施例の開口状態を示す、排水口近傍の参考図である。
【図4】第一実施例の排水口近傍の部材の部材構成を示す参考図である。
【図5】第二実施例の遠隔操作式排水栓装置を示す参考図である。
【図6】第二実施例の閉口状態を示す、排水口近傍の参考図である。
【図7】第二実施例の開口状態を示す、排水口近傍の参考図である。
【図8】第二実施例の排水口近傍の部材の部材構成を示す参考図である。
【図9】第三実施例の遠隔操作式排水栓装置を示す参考図である。
【図10】第三実施例の閉口状態を示す、排水口近傍の参考図である。
【図11】第三実施例の開口状態を示す、排水口近傍の参考図である。
【図12】第三一実施例の排水口近傍の部材の部材構成を示す参考図である。
【図13】他の実施例の遠隔操作式排水栓装置を示す参考図である。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明の第一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至図4に示した、本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体としての浴槽B、防水パンP、エプロン部材E、排水栓本体10、排水装置本体5、カバー部材11、弁部材2、レリースワイヤ4、操作部3、ガイドチューブ9、接続筒22等から構成される。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面に取付孔Boを開口する。
防水パンPは浴槽Bを載置する為の、平坦に近い槽体を成す部材であって、底面に排水装置を取り付ける取着孔を備えてなる。
エプロン部材Eは、浴槽Bの側面上縁から防水パンP上面までの間に着脱自在に配置される板状の部材であって、浴槽Bの側面上縁から防水パンP上面までの間の開口を覆い隠すために用いられる。
排水栓本体10は、内部に排水口1を形成する円筒状の部材であって、排水口1内部にレリースワイヤ4のアウターチューブ4a端部を固定した状態で嵌合固定する支持部材7を備えてなる。また、排水栓本体10の上縁外周には、外方向に向かって突出するフランジ部10aを備えてなる。
排水装置本体5は、上方に大きく開口した、防水パンPの取着孔に取りつけられる開口部12と、側面に設けられた排水を排出するための排出口13とを備えてなる。
カバー部材11は、上記排水装置本体5の開口部12を覆う部材であって、開口部12を覆う平坦部分11aと、該平坦部分11a部分に対して約15度程度の角度を持って立ち上げられ、ある程度の高さ位置に達したところで水平方向に屈曲して延出される、端部に挿入口6を備えた挿入管14と、平坦部分11aに備えられた、排水栓本体10の下端と接続して、排水口1からの排水が流入する接続口15と、から構成されてなる。
弁部材2は、この後に詳述するレリースワイヤ4の弁軸部2bと嵌合する、排水口1の上部に配置される部材であって、上昇/下降することで、排水口1を開口/覆って閉口させる部材である。
レリースワイヤ4は、四フッ化エチレンなどの樹脂から構成される円筒状のアウターチューブ4aと、アウターチューブ4a内に進退自在に配置される、コイル状に形成された金属線からなるインナーワイヤ4bと、インナーワイヤ4bをアウターチューブ4aに対して一方向(操作部3側)に付勢する戻りスプリング4cと、排水栓側端部に設けられた、棒状にして弁部材2と嵌合する弁軸部2bと、後述するスラストロック部材16と、から構成される。
スラストロック部材16は、レリースワイヤ4端部に備えられる部材であって、アウターチューブ4a端部が接続されるスラストロック本体16aと、インナーワイヤ4b端部が当接するスラストロック軸部16bとを備えてなり、スラストロック軸部16bへの押し込み操作毎に、スラストロック軸部16bが突出してインナーワイヤ4bを弁軸部2b側に突出して固定/固定を解除しインナーワイヤ4bの戻りスプリング4cの作用により操作部3側に後退、を繰り返す部材である。
操作部3は、弁部材2を遠隔的に操作する部材であって、略円筒状にして、内部にスラストロック本体16aを固定する操作部本体3aと、スラストロック軸部16bの端部に固定されるボタン部材3bと、から構成される。尚、上記のような構成により、施工完了時においては、レリースワイヤ4のアウターチューブ4a端部は、スラストロック本体16aを介して操作部本体3aに固定される。
ガイドチューブ9は、軟質塩ビ材等から構成される長い円筒状の部材であって、一端は操作部本体3aに、他端は排水装置本体5の接続部に、それぞれ水密的に固定される。
接続筒22は、上端を排水栓本体10下端に、下端を接続口15に、それぞれ接続される部材である。
【0020】
以上のように構成された本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして槽体である浴槽Bに施工・取り付けされる。
まず浴槽Bの上縁に操作部本体3aを、浴槽Bの底面の取付孔Boに排水栓本体10を、防水パンPの取着孔に排水装置本体5を、それぞれ取り付け固定する。この時の取付孔Boへの排水栓本体10の取り付けは、取付孔Boの上縁周縁に、排水栓本体10のフランジ部10a下面が当接した状態で、フランジ部10a下面と接続筒22上縁とで、取付孔Boの周縁を挟持するようにして行われる。
次に、排水装置本体5の開口部12にカバー部材11を取り付けた後、浴槽Bを防水パンPに載置する。この際に、接続筒22の下端を、カバー部材11の接続口15に接続する。これにより、排水栓本体10が、接続筒22を介して接続口15に接続される。
次いで、レリースワイヤ4の弁軸部2b側を、操作部本体3aの上方より挿入する。更に操作部3側からレリースワイヤ4を押し込み、挿入を続けると、レリースワイヤ4の先端が、ガイドチューブ9を通過し、挿入口6から挿入管14内に挿入され、排水装置本体5内部まで挿通される。この時、操作部本体3a内にスラストロック部が収納配置され、固定される。また、スラストロック軸部16bの端部にボタン部材3bを嵌合固定させる。
更に、ラジオペンチ等の冶具を利用し、排水装置本体5内部に通されたレリースワイヤ4先端を、排水口1から浴槽B内部側に引き上げる。次いで、支持部材7にアウターチューブ4a端部を固定した上で、排水栓本体10に支持部材7を嵌合固定する。
最後にインナーワイヤ4bの弁軸部2bに弁部材2を嵌合固定させて、遠隔操作式排水栓装置の浴槽Bへの施工・取り付けが完了する。
【0021】
上記のように施工された本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように操作することで、遠隔操作により排水口1を開閉できる。
まず図2のように、弁部材2が降下し、排水口1が閉口している状態とする。この状態において操作部3のボタン部材3bに押し込み操作を加えると、スラストロック軸部16bがインナーワイヤ4b側に突出し、それに伴ってインナーワイヤ4bがアウターチューブ4aに対し排水口1側へ突出し、弁部材2を押し上げて排水口1を開口する。この状態にてスラストロック軸部16bが固定され、図3に示したように、排水口1の開口状態が維持される。
この状態から再度操作部3のボタン部材3bに押し込み操作を加えると、スラストロック軸部16bの固定が解除され、弁部材2の自重及び戻りスプリング4cの作用によりインナーワイヤ4bが操作部3側に後退し、弁部材2が降下して排水口1が閉口し、図2の状態に戻る。
以後、同様の操作を繰り返すことで、遠隔操作的に、排水口1の開口/閉口を行うことができ、開口時には浴槽B内の排水を排出することができる。
【0022】
上記遠隔操作式排水栓装置においては、レリースワイヤ4は側面方向から挿入され、水平方向に対して挿入管14の傾斜部分の角度である15度を成して排水装置本体5内に挿入され、水平方向に対して90度を成して排水口1に向かって配置される。レリースワイヤ4の曲がり角度は直線状を基準に、この直線状からどれだけ曲がったかによって算出される。本第一実施例のレリースワイヤ4の曲がり角度は105度であり、従来例の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ4の曲がり角度である180度に対して、約75度分、屈曲が緩やかになっており、屈曲が穏やかになった分、レリースワイヤ4の挫屈が生じにくくなっている。更に、従来例の遠隔操作式排水栓装置では、挿入口6の部分でもほぼ90度レリースワイヤ4が屈曲しているところ、本発明の遠隔操作式排水栓装置では、挿入口6部分では屈曲は無く、挿入管14内で緩やかに15度程度の屈曲があるだけであり、この部分でもレリースワイヤ4の挫屈が生じにくくなっている。
【0023】
次に、本発明の第二実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図5乃至図8に示した、本発明の第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体としての浴槽B、防水パンP、エプロン部材E、排水栓本体10、排水装置本体5、カバー部材11、弁部材2、レリースワイヤ4、レバー体8、操作部3、ガイドチューブ9から構成される。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面に取付孔Boを開口する。
防水パンPは浴槽Bを載置する為の、平坦に近い槽体を成す部材であって、底面に排水装置を取り付ける取着孔を備えてなる。
エプロン部材Eは、浴槽Bの側面上縁から防水パンP上面までの間に着脱自在に配置される板状の部材であって、浴槽Bの側面上縁から防水パンP上面までの間の開口を覆い隠すために用いられる。
排水栓本体10は、内部に排水口1を形成した円筒状の部材であって、上縁外周には外方向に向かって突出するフランジ部10aを備えてなる。また、フランジ部10aには複数の貫通孔を設けると共に、この貫通孔を介して排水栓本体10を取付孔Bo周縁下面に取り付けるビス部材Vを備えてなる。
排水装置本体5は、上方に大きく開口した、防水パンPの取着孔に取りつけられる開口部12と、側面に設けられた排水を排出するための排出口13とを備えてなる。
カバー部材11は、上記排水装置本体5の開口部12を覆う部材であって、開口部12を覆う平坦部分11aと、平坦部分11aに備えられた、排水栓本体10からの排水が流入する接続口15と、接続口15内に設けられたレバー体取付部17と、接続口15のレバー体取付部17を起点とし、平坦部分11a部分に対して約20度程度の角度を持って立ち上げられ、ある程度の高さ位置に達したところで水平方向に屈曲して延出される、端部に挿入口6を備えた挿入管14と、から構成されてなる。尚、挿入管14の屈曲部分には滑らかな円弧が形成され、後述するレバー体8が内部を挿通する際に、エッジが引っかかる、という事が無いように工夫されている。
また、レバー体取付部17について詳述すると、後述するアウターチューブ4a端部が固定される固定部17aと、レバー体8がスライドすると共に、レバー体8の先端を上下動されるための凹凸を備えたスライド部17bを備えてなる。
また接続口15内面に当節するリング部18aと、固定部17aと嵌合する嵌合固定部18bと、からなる固定部材18を備えてなる。
弁部材2は、排水口1の上部に配置される部材であって、円盤状の弁部2aと、弁部2a中央から下方に延出された弁軸部2bと、から構成されてなり、上昇/下降することで、弁部2aが排水口1を開口/覆って閉口させる部材である。
レリースワイヤ4は、四フッ化エチレンなどの樹脂から構成される円筒状のアウターチューブ4aと、アウターチューブ4a内に進退自在に配置される、コイル状に形成された金属線からなるインナーワイヤ4bと、インナーワイヤ4bをアウターチューブ4aに対して一方向(操作部3側)に付勢する戻りスプリング4cと、後述するスラストロック部材16と、インナーワイヤ4b端部に上下方向に回動自在に軸支備されたレバー体8と、から構成される。
スラストロック部材16は、レリースワイヤ4端部に備えられる部材であって、アウターチューブ4a端部が接続されるスラストロック本体16aと、インナーワイヤ4b端部が当接するスラストロック軸部16bとを備えてなり、スラストロック軸部16bへの押し込み操作毎に、スラストロック軸部16bが突出してインナーワイヤ4bを弁軸部2b側に突出して固定/固定を解除しインナーワイヤ4bの戻りスプリング4cの作用により操作部3側に後退、を繰り返す部材である。
操作部3は、弁部材2を遠隔的に操作する部材であって、略円筒状にして、内部にスラストロック本体16aを固定する操作部本体3aと、スラストロック軸部16bの端部に固定されるボタン部材3bと、から構成される。尚、上記のような構成により、施工完了時においては、レリースワイヤ4のアウターチューブ4a端部は、スラストロック本体16aを介して操作部本体3aに固定される。
ガイドチューブ9は、軟質塩ビ材等から構成される長い円筒状の部材であって、一端は操作部本体3aに、他端は排水装置本体5の接続部に、それぞれ固定される。
【0024】
以上のように構成された本発明の第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして槽体である浴槽Bに施工・取り付けされる。
まず浴槽Bの上縁に操作部本体3aを、浴槽Bの底面の取付孔Boに排水栓本体10を、防水パンPの取着孔に排水装置本体5を、それぞれ取り付け固定する。この時の取付孔Boへの排水栓本体10の取り付けは、取付孔Boの周縁仮面に、排水栓本体10のフランジ部10a上面が当接した状態で複数箇所をビス部材Vで固定することで行われる。
次に、排水装置本体5の開口部12にカバー部材11を取り付けた後、浴槽Bを防水パンPに載置する。この際に、排水栓の下端を、カバー部材11の接続口15に接続する。
次いで、レリースワイヤ4のレバー体8側端部を、操作部本体3aの上方より挿入する。更に操作部3側からレリースワイヤ4を押し込み、挿入を続けると、レリースワイヤ4のレバー体8が、ガイドチューブ9を通過し、挿入口6から挿入管14内に挿入され、排水装置本体5内部まで挿通される。この時操作部本体3a内にスラストロック部が収納配置され、固定される。また、スラストロック軸部16b端部にボタン部材3bを取り付ける。
更に、レバー体8をレバー体取付部17のスライド部17bに配置し、アウターチューブ4a端部が固定部17aに当接した状態で、排水口1から固定部材18を挿入し、リング部18a外周面が接続口15内周面に当接した状態としつつ、固定部17aに嵌合固定部18bを嵌合固定させる。これにより、アウターチューブ4a端部が固定部17aに当接した状態で固定される。
最後に弁部材2を、弁軸がレバー体8の先端上に位置するように配置して、遠隔操作式排水栓装置の浴槽Bへの施工・取り付けが完了する。
【0025】
上記のように施工された本第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように操作することで、遠隔操作により排水口1を開閉できる。
まず図6のように、弁部材2が降下し、排水口1が閉口している状態とする。この状態において操作部3のボタン部材3bに押し込み操作を加えると、スラストロック軸部16bがインナーワイヤ4b側に突出し、これに伴ってインナーワイヤ4bがアウターチューブ4aに対し排水口1側へ突出し、その分レバー体8も突出する。これによりスライド部17bの凹凸によってレバー体8が上方に向かって回動し、レバー体8の先端部分が部が弁軸を押し上げ、弁部材2全体が上昇する。結果、図7に示したように排水口1から弁部2aが離間して排水口1を開口する。この状態にてスラストロック軸部16bが固定され、排水口1の開口状態が維持される。
この状態から再度操作部3のボタン部材3bに押し込み操作を加えると、スラストロック軸部16bの固定が解除され、弁部材2の自重及び戻りスプリング4cの作用によりインナーワイヤ4bが操作部3側に後退し、レバー体8も後退する。スライド部17bの凹凸によって上昇していたレバー体8の先端も降下し、自重により弁部材2が降下して図6の状態に戻り、排水口1が閉口する。
以後、同様の操作を繰り返すことで、遠隔操作的に、排水口1の開口/閉口を行うことができ、開口時には浴槽B内の排水を排出することができる。
【0026】
上記遠隔操作式排水栓装置においては、レリースワイヤ4は側面方向から挿入され、水平方向に対して挿入管14の傾斜部分の角度である20度を成して排水装置本体5内に挿入され、そのままアウターチューブ4a端部は固定部17aに固定され、インナーワイヤ4bもアウターチューブ4aと同じ方向にのみ摺動する。これにより、排水装置本体5内部ではレリースワイヤ4の屈曲が全く存在せず、従来例の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ4の曲がり角度である180度に対して、屈曲が生じない分レリースワイヤ4の挫屈が生じにくくなっている。更に、従来例の遠隔操作式排水栓装置では、挿入口6の部分でもほぼ90度レリースワイヤ4が屈曲しているところ、本発明の遠隔操作式排水栓装置では、挿入口6部分では屈曲は無く、挿入管14内で緩やかに20度程度の屈曲があるだけであり、この部分でもレリースワイヤ4の挫屈が生じにくくなっている。
また固定部材18がレリースワイヤ4上に配置されるため、排水にレリースワイヤ4端部が直接晒されることが無くなり、レリースワイヤ4の金属部分(アウターチューブ4a端部やインナーワイヤ4bなど)が錆びにくい構成とする事ができた。
【0027】
次に、本発明の第三実施例について、図面を参照しつつ説明する。
本発明の第三実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体としての浴槽B、防水パンP、エプロン部材E、排水栓本体10、排水装置本体5、カバー部材11、弁部材2、レリースワイヤ4、レバー体8、操作部3、ガイドチューブ9から構成される。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、底面に取付孔Boを開口する。
防水パンPは浴槽Bを載置する為の、平坦に近い槽体を成す部材であって、底面に排水装置を取り付ける取着孔を備えてなる。
エプロン部材Eは、浴槽Bの側面上縁から防水パンP上面までの間に着脱自在に配置される板状の部材であって、浴槽Bの側面上縁から防水パンP上面までの間の開口を覆い隠すために用いられる。
排水栓本体10は、内部に排水口1を形成した円筒状の部材であって、上縁外周には外方向に向かって突出するフランジ部10aを備えてなる。また、フランジ部10aには複数の貫通孔を設けると共に、この貫通孔を介して排水栓本体10を取付孔Bo周縁下面に取り付けるビス部材Vを備えてなる。
排水装置本体5は、上方に大きく開口した、防水パンPの取着孔に取りつけられる開口部12と、側面に設けられた排水を排出するための排出口13とを備えてなる。
カバー部材11は、上記排水装置本体5の開口部12を覆う部材であって、開口部12を覆う平坦部分11aと、排水栓本体10からの排水が流入する、上方に円筒状に突出した接続筒22と、接続筒22の上端に設けられた接続口15と、接続筒22の側面を起点として、水平面に対し上方に若干傾斜(1.6度程度)するものの、ほぼ略水平に配置される円筒状の挿入管14と、挿入管14の端部に設けられた挿入口6と、から構成されてなる。尚、上記した挿入管14の水平面に対する1.6度程度の勾配とは、挿入管14内に排水が流入した場合に、挿入管14内部に排水が留まることなく排出されるように、水抜きを目的として設定されたものであり、また内部に溜まった排水を排出するための水抜き孔19を備えてなる。
尚、上記に記載した構成により、施工完了時、レリースワイヤ4は排水装置本体5の内部、即ち排水が流れる部分ではなく、その排水が流れる部分と区画された、平坦部分11aの上面部分に配置されてなる。即ち挿入口6より挿入されたレリースワイヤ4は、排水装置本体5の上面上を通過して配置される。
また、挿入口6を水密的に閉塞すると共に、筒状ケーシング端部及びレリースワイヤ4を水密的に固定する、ブッシュ部材20を備えてなる。
弁部材2は、排水口1の上部に配置される部材であって、円盤状の弁部2aと、弁部2a中央から下方に延出された弁軸部2bと、から構成されてなり、上昇/下降することで、弁部2aが排水口1を開口/覆って閉口させる部材である。
レリースワイヤ4は、四フッ化エチレンなどの樹脂から構成される円筒状のアウターチューブ4aと、アウターチューブ4a内に進退自在に配置される、コイル状に形成された金属線からなるインナーワイヤ4bと、インナーワイヤ4bをアウターチューブ4aに対して一方向(操作部3側)に付勢する戻りスプリング4cと、後述する駆動部21及びスラストロック部材16と、から構成される。
駆動部21は、インナーワイヤ4b端部に取り付けられるレバー体8と、円筒状にして挿入口6から挿入管14内に配置される筒状ケーシングと、から構成されてなる。更に筒状ケーシングについて詳述すると、筒状ケーシングは、一端にアウターチューブ4a端部が固定される固定部17aと、レバー体8がスライドすると共にレバー体8の先端を上下動されるための凹凸を備えたスライド部17bを備えてなる。
スラストロック部材16は、レリースワイヤ4端部に備えられる部材であって、アウターチューブ4a端部が接続されるスラストロック本体16aと、インナーワイヤ4b端部が当接するスラストロック軸部16bとを備えてなり、スラストロック軸部16bへの押し込み操作毎に、スラストロック軸部16bが突出してインナーワイヤ4bを弁軸部2b側に突出して固定/固定を解除しインナーワイヤ4bの戻りスプリング4cの作用により操作部3側に後退、を繰り返す部材である。
操作部3は、弁部材2を遠隔的に操作する部材であって、略円筒状にして、内部にスラストロック本体16aを固定する操作部本体3aと、スラストロック軸部16bの端部に固定されるボタン部材3bと、から構成される。尚、上記のような構成により、施工完了時においては、レリースワイヤ4のアウターチューブ4a端部は、スラストロック本体16aを介して操作部本体3aに固定される。
【0028】
上記のように構成された本第三実施例の従来例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして槽体である浴槽Bに施工・取り付けされる。
まず工場などで、レリースワイヤ4の端部に筒状ケーシングとレバー体8を取り付け、駆動部21とする。詳細には、筒状ケーシングのスライド部17bを備えない側の端部からレリースワイヤ4を挿入し、インナーワイヤ4bにレバー体8を回動自在に取り付け、また固定部17aにアウターチューブ4a端部を取り付け固定する。
このように構成したレリースワイヤ4を含む各部材を、施工現場に搬入した上で、まず浴槽Bの上縁に操作部本体3aを、浴槽Bの底面の取付孔Boに排水栓本体10を、防水パンPの取着孔に排水装置本体5を、それぞれ取り付け固定する。この時の取付孔Boへの排水栓本体10の取り付けは、取付孔Boの周縁下面に、排水栓本体10のフランジ部10a上面が当接した状態で複数箇所をビス部材Vで固定することで行われる。
次に、排水装置本体5の開口部12にカバー部材11を取り付けた後、浴槽Bを防水パンPに載置する。この際に、排水栓の下端を、カバー部材11の接続口15に接続する。
更に操作部3側からレリースワイヤ4を、操作部本体3a下端から筒状ケーシングを貫通して、操作部本体3a内にスラストロック部材16が収納配置され、固定されるまで挿通する。また、スラストロック軸部16b端部にボタン部材3bを取り付ける。
この状態より、浴槽B側面から作業を行い、挿入口6からケーシング筒部を挿入し、ブッシュ部材20を挿入口6に水密的に嵌合させて、ケーシング筒部端部を挿入口6に、挿入口6を水密的に閉塞した状態で固定する。これにより、排水装置本体5と、それに接続される排水口1に対して、レリースワイヤ4と、その先端に取り付けられたレバー体8が位置決めされて取り付けられる。このように、上記構成においては、レリースワイヤ4の、排水口1側のアウターチューブ4aの端部の固定が、筒状ケーシングを介して挿入口6に対する固定作業により行われる。即ち、レリースワイヤ4の排水口1側端部の固定が、挿入口6に対して行う作業により行われてなる。
更に浴槽B側面の、浴槽Bの側面上縁から防水パンP上面までの間の開放部分を、エプロン部材Eを取り付けて覆い隠した上で、最後に排水口1に弁部材2を、弁軸がレバー体8の先端上に位置するように配置して、遠隔操作式排水栓装置の浴槽Bへの施工・取り付けが完了する。
【0029】
上記のように施工された本第三実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように操作することで、遠隔操作により排水口1を開閉できる。
まず図10のように、弁部材2が降下し、排水口1が閉口している状態とする。この状態において操作部3のボタン部材3bに押し込み操作を加えると、スラストロック軸部16bがインナーワイヤ4b側に突出し、これに伴ってインナーワイヤ4bがアウターチューブ4aに対し排水口1側へ突出し、その分レバー体8も突出する。これによりスライド部17bの凹凸によってレバー体8が上方に向かって回動し、レバー体8の先端部分が部が弁軸を押し上げ、弁部材2全体が上昇する。結果、図11に示したように排水口1から弁部2aが離間して排水口1を開口する。この状態にてスラストロック軸部16bが固定され、排水口1の開口状態が維持される。
この状態から再度操作部3のボタン部材3bに押し込み操作を加えると、スラストロック軸部16bの固定が解除され、弁部材2の自重及び戻りスプリング4cの作用によりインナーワイヤ4bが操作部3側に後退し、レバー体8も後退する。スライド部17bの凹凸によって上昇していたレバー体8の先端も降下し、自重により弁部材2が降下して図10の状態に戻り、排水口1が閉口する。
以後、同様の操作を繰り返すことで、遠隔操作的に、排水口1の開口/閉口を行うことができ、開口時には浴槽B内の排水を排出することができる。
【0030】
上記遠隔操作式排水栓装置においては、レリースワイヤ4は側面方向から挿入され、水平方向に対して挿入管14の傾斜部分の角度である20度を成して排水装置本体5内に挿入され、そのままアウターチューブ4a端部は固定部17aに固定され、インナーワイヤ4bもアウターチューブ4aと同じ方向にのみ摺動する。これにより、レリースワイヤ4の排水装置本体5内部では屈曲が全く存在せず、従来例の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ4の曲がり角度である180度に対して、その分レリースワイヤ4の挫屈が生じにくくなっている。更に、従来例の遠隔操作式排水栓装置では、挿入口6の部分でもほぼ90度レリースワイヤ4が屈曲しているところ、本発明の遠隔操作式排水栓装置では、挿入口6部分では屈曲は無く、挿入管14内で緩やかに20度程度の屈曲があるだけであり、この部分でもレリースワイヤ4の挫屈が生じにくくなっている。
また、遠隔操作式排水栓装置の取り付け、及び取り外してのメンテナンスなどを行う場合、エプロン部材Eを取り外して、浴槽Bの側面、即ち浴槽Bの裏側から作業を行う必要があるなど、使用できる浴槽Bの種類が限定されるが、その代わりレリースワイヤ4と排水装置本体5との施工作業は、挿入口6にレリースワイヤ4端部の筒状ケーシングを差し込み固定するだけでよく、作業の簡略化が図れる。また、流し台や洗面台など、キャビネットを備えた排水機器では、槽体の裏面側から作業を行うことは極めて容易であり、上記第三実施例のような構成を好適に利用できる。
【0031】
本発明の実施例は以上のようであるが本発明は上記実施例に限定されるものではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、槽体として浴槽Bを採用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、洗面台の洗面ボウルや、流し台のシンク等、他の槽体に本発明の遠隔操作式排水栓装置を採用しても構わない。
また、上記実施例の遠隔操作式排水栓装置では、スラストロック部材16と戻りスプリング4cを使用し、ボタン部材3bに押し操作を繰り返すことにより排水口1を開閉する構成としてなるが、スラストロック部材16と戻りスプリング4cを使用せず、操作部3のボタン部材3bをツマミに換えて、ツマミの押し引きによりインナーワイヤ4bを進退させ、弁部材2を昇降させるような構成としても構わない。
また、上記第二実施例では、排水装置本体5に対するレリースワイヤ4端部の固定に、嵌合を利用した固定部材18を採用してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えばビス部材Vなどを利用して排水装置本体5に対するレリースワイヤ4端部の固定を行うようにしても良い。
また、上記第三実施例では、筒状ケーシングを排水装置本体5上面に配置し、挿入口6に対して固定するように構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、図13に示した実施例のように、筒状ケーシングを排水装置本体5内部に挿入するように構成しても良い。またこの場合に、筒状ケーシングの固定も、排水口1内側の、接続口15に対して行った作業により固定するように構成しても良い。
また、排水口1周縁上面を槽体の底面下方に取り付けるように構成した場合、第二実施例、第三実施例に図示したように、排水口1を開口した際の、弁部材2の上端の高さ位置が、浴槽Bの底壁の上面と同じかそれよりも低い高さ位置となるように構成すると、排水口1の開口時に弁部材2を踏みつけ、強い応力(加重)で排水口1を無理矢理閉口してしまう、ということがほとんど無くなる。このため、弁部材2の踏みつけによるレリースワイヤ4等の破損、といった問題もほぼ解消することができ好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 排水口 2 弁部材
2a 弁部 2b 弁軸部
3 操作部 3a 操作部本体
3b ボタン部材 4 レリースワイヤ
4a アウターチューブ 4b インナーワイヤ
4c 戻りスプリング 5 排水装置本体
6 挿入口 7 支持部材
8 レバー体 9 ガイドチューブ
10 排水栓本体 10a フランジ部
11 カバー部材 11a 平坦部分
12 開口部 13 排出口
14 挿入管 15 接続口
16 スラストロック部材 16a スラストロック本体
16b スラストロック軸部 17 レバー体取付部
17a 固定部 17b スライド部
18 固定部材 18a リング部
18b 嵌合固定部 19 水抜き孔
20 ブッシュ部材 21 駆動部
22 接続筒 B 浴槽
Bo 取付孔 E エプロン部材
P 防水パン V ビス部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口1を遠隔操作的に開閉するための遠隔操作式排水栓装置であって、
槽体の底面に備えられた排水口1と、
該排水口1を開閉する弁部材2と、
弁部材2の動作を操作する操作部3と、
操作部3に加えられた操作を弁部材2に伝達するレリースワイヤ4と、
排水口1からの排水が流入する排水装置本体5と、
排水装置本体5の上面に備えた、略水平方向に向かって開口した、レリースワイヤ4を挿入するための挿入口6と、からなる遠隔操作式排水栓装置。
【請求項2】
上記挿入口6より挿入されたレリースワイヤ4が、排水装置本体5内を通過して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項3】
上記挿入口6より挿入されたレリースワイヤ4が、排水装置本体5の上面上を通過して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項4】
上記排水口1内に、弁部材2を上下動させるためのレリースワイヤ4の端部が上方を向いた状態で固定する支持部材7を備えたことを特徴とする、上記請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項5】
上記レリースワイヤ4の先端部を略水平方向に向けて配置すると共に、
排水口1内に、操作部3の操作に応じて生じるレリースワイヤ4の動作により、レリースワイヤ4の軸方向に向かって生じる動作を、レリースワイヤ4の軸方向に対し上下に向かって生じる動作に変換する、変換部材を備えたことを特徴とする、上記請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項6】
上記変換部材を、レリースワイヤ4の先端部に備えた、レリースワイヤ4の軸方向への動作を、弁部材2を上下動させるための上下動作に変換するレバー体8としたことを特徴とする、上記請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項7】
上記レリースワイヤ4の排水口1側端部の固定が、排水口1内から行う作業により行われることを特徴とする、上記請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項8】
上記レリースワイヤ4の排水口1側端部の固定が、挿入口6に対して行う作業により行われることを特徴とする、上記請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項9】
上記操作部3から挿入口6までの間に、レリースワイヤ4を操作部3から挿入口6までガイドするための、ガイドチューブ9を配置したことを特徴とする、上記請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項10】
上記遠隔装置式排水栓装置の排水口1周縁上面が、槽体の底面下方に取り付けるように構成されたことを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−102576(P2012−102576A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253313(P2010−253313)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000157212)丸一株式会社 (158)
【Fターム(参考)】