説明

遠隔診断システム

【課題】 被験体側装置および診断者側装置における設定に差が発生することを抑えることができる遠隔診断システムを提供する。
【解決手段】 超音波診断装置11を診断者側装置3から遠隔操作できる遠隔診断システムにおいて、被験体側装置1および診断者側装置3のそれぞれが、送受信部と、遠隔操作に関して被験体側装置1および診断者側装置3間で共通に保有されるべき設定情報を記憶する設定情報記憶部と、前記設定情報を更新する設定情報処理部とを備え、被験体側装置1および診断者側装置3のそれぞれにおいて、設定情報に変更が生じたときまたは所定の時期に、少なくとも変更が生じた部分を含む設定情報を、通信回線2を介して他の装置へ送信し、他の装置から前記設定情報を受信した場合、前記設定情報処理部が、受信した設定情報に基づき自装置の設定情報処理部の設定情報を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者と診察者とが物理的に離れていても、リアルタイム操作が可能な遠隔診断対応の遠隔診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の断層像をリアルタイム超音波動画像として検出する超音波診断装置が知られている。この超音波診断装置は、近年小型化がすすみ、超音波検査室以外の場所(例えば病棟のベッドサイド、個人診療所、企業内健康管理室など)での各種の医療診断や検査において、重要な役割を果たしつつある。
【0003】
また、近年は、インターネットに代表される通信回線網の高速化が進むにつれて、あらゆるフィールドで、遠隔地にある2台以上の装置を通信回線経由で接続することが可能となってきている。これに伴い、飛行中の航空機、航行中の船舶、走行中の列車内などで急病人やけが人が発生した場合や、傷病者を搬送中の救急車などにおいて、患者の近くに医師が不在の場面であっても、通信回線経由で接続された先の病院の医師から的確な診断ができる、遠隔診断可能な超音波診断装置の開発が期待されている。
【0004】
このような通信回線を利用した遠隔超音波診断システムとして、例えば、一つの端末装置をネットワーク経由で他の端末装置から遠隔操作するシステムであって、前記他の端末が、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)上で、被操作端末の現場における操作を模擬するものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−175870号公報(第2−4頁、図1,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような遠隔超音波診断システムでは、操作端末と被操作端末とにおいて、設定情報を共通に保持する必要がある。近年、インターネットなどの通信回線のデータレートが飛躍的に向上され、その通信遅延時間(非リアルタイム性)も小さくなってきているため、2台以上の装置間で設定情報をやりとりすることは比較的容易である。しかし、通信回線で接続された2台以上の装置のそれぞれにおいて同時に設定変更を実施した場合や、通信障害などにより設定変更情報が正しく届かなかった場合などに、各装置の設定に差が発生することは不可避である。そのため、遠隔地で診断している医師のストレスが増大し、診断効率を低下させる要因となる。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためのもので、被験体側装置および診断者側装置における設定に差が発生することを抑えることができる遠隔診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる遠隔診断システムは、診断機器を含む被験体側装置と、前記被験体側装置に通信回線を介して接続された診断者側装置とを備え、前記診断機器を前記診断者側装置から遠隔操作できる遠隔診断システムであって、前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれが、当該遠隔診断システム上の他の装置と前記通信回線を介して情報通信を行う送受信部と、前記遠隔操作に関して被験体側装置および診断者側装置間で共通に保有されるべき設定情報を記憶する設定情報記憶部と、前記設定情報記憶部に記憶されている設定情報を更新する設定情報処理部とを備え、前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、前記設定情報記憶部の設定情報に変更が生じたときまたは所定の時期に、前記送受信部が、少なくとも変更が生じた部分を含む設定情報を、前記通信回線を介して当該遠隔診断システム上の他の装置へ送信し、前記送受信部が、当該遠隔診断システム上の他の装置から前記通信回線を介して前記設定情報を受信した場合、前記設定情報処理部が、受信した設定情報に基づき自装置の設定情報処理部の設定情報を更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信回線の通信障害などに起因して、診断者側装置と被験体側装置との間で遠隔操作に必要な設定情報が正しく送信されない事態が生じても、被験体側装置と診断側装置との間で設定情報に差が発生することを最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかる遠隔システムは、診断機器を含む被験体側装置と、前記被験体側装置に通信回線を介して接続された診断者側装置とを備え、前記診断機器を前記診断者側装置から遠隔操作できる遠隔診断システムであって、前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれが、当該遠隔診断システム上の他の装置と前記通信回線を介して情報通信を行う送受信部と、前記遠隔操作に関して被験体側装置および診断者側装置間で共通に保有されるべき設定情報を記憶する設定情報記憶部と、前記設定情報記憶部に記憶されている設定情報を更新する設定情報処理部とを備え、前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、前記設定情報記憶部の設定情報に変更が生じたときまたは所定の時期に、前記送受信部が、少なくとも変更が生じた部分を含む設定情報を、前記通信回線を介して当該遠隔診断システム上の他の装置へ送信し、前記送受信部が、当該遠隔診断システム上の他の装置から前記通信回線を介して前記設定情報を受信した場合、前記設定情報処理部が、受信した設定情報に基づき自装置の設定情報処理部の設定情報を更新する構成である。
【0010】
この構成によれば、被験体側装置および診断者側装置のいずれかで設定情報に変更がある都度、あるいは、所定の時期に、更新後の設定情報が他の装置へ送信され、他の装置の設定情報が更新される。これにより、通信回線の通信障害などに起因して、診断者側装置から被験体側装置へ、あるいは、被験体側装置から診断者側装置へ、遠隔操作に必要な設定情報が正しく送信されない事態が生じても、被験体側装置と診断側装置との間で設定情報に差が発生することを最小限に抑えることができる。なお、上記の所定の時期とは、所定の時間間隔、あるいは、所定の時刻などを含む。
【0011】
上記の構成にかかる遠隔診断システムが、前記被験体側装置および診断者側装置を1台ずつ含む場合、前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、当該遠隔診断システム上の他の装置から前記通信回線を介して前記設定情報を受信した場合、前記設定情報処理部が、受信した設定情報に一致するよう、自装置の設定情報処理部の設定情報を更新することが好ましい。これにより、被験体側装置および診断者側装置の2台が、設定情報に対する変更を互いに反映することにより、設定情報を同一に維持することが可能となる。
【0012】
上記の構成にかかる遠隔診断システムが、前記被験体側装置および診断者側装置を合計3台以上含む場合、前記被験体側装置および前記診断者側装置のいずれか1台の装置において、当該遠隔診断システム上の複数の他の装置から受信した設定情報を比較し、前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、前記設定情報処理部が、前記1台の装置における比較結果に基づいて自装置の設定情報処理部の設定情報を更新することが好ましい。これにより、被験体側装置および診断者側装置が合計3台以上含まれるシステムにおいても、設定情報に対する変更を互いに反映することにより、設定情報を同一に維持することが可能となる。また、装置間で設定情報に不一致が生じた場合でも、いずれか1台の装置において、複数装置の設定情報を比較することにより、例えば多数決などの方法により、全ての装置の設定情報を一致させることが可能である。
【0013】
あるいは、上記の構成にかかる遠隔診断システムが、前記被験体側装置および診断者側装置を合計3台以上含む場合、前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、前記設定情報処理部が、当該遠隔診断システム上の複数の他の装置から受信した設定情報を比較し、比較結果に基づいて自装置の設定情報処理部の設定情報を更新することも好ましい。これにより、被験体側装置および診断者側装置が合計3台以上含まれるシステムにおいても、設定情報に対する変更を互いに反映することにより、設定情報を同一に維持することが可能となる。また、装置間で設定情報に不一致が生じた場合でも、各装置において、複数装置の設定情報を比較することにより、例えば多数決などの方法により、全ての装置の設定情報を一致させることが可能である。
【0014】
なお、上記の遠隔診断システムにおいて、診断機器としては、例えば超音波診断装置などを用いることができる。
【0015】
以下、本発明にかかる遠隔診断システムの具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の遠隔診断システムの第1の実施形態として、遠隔超音波診断システムの一構成例を図1に示す。
【0017】
本実施形態にかかる遠隔超音波診断システムは、被験体側装置1と、診断者側装置3とが、通信回線(ネットワーク)2で接続された構成である。通信回線2は、有線または無線のいずれであっても良いし、公衆網またはローカルエリアネットワークのいずれであっても良い。被験体側装置1は、被験体に対して超音波診断を行うための超音波診断装置11を含む。診断者側装置3は、例えば病院などに設定され、医師などが操作することにより、通信回線2を介して被験体側装置1の遠隔操作を行うことが可能である。また、被験体側装置1から診断者側装置3を遠隔操作することも可能である。これらの遠隔操作により、装置の各種設定が可能である。設定対象項目としては、例えば、表示モード、送信周波数、画像サイズ(表示深さ)、画像の向き(上下左右)、輝度(ゲイン)調整、拡大表示率選択、拡大表示の部位、フリーズ制御、フリーズ後のシネ再生頁の選択、各種の計測(距離、面積、体積)など一般的な(単体型の)超音波装置の操作卓を使ってユーザ(医師)が選択できる任意の項目が挙げられる。
【0018】
被験体側装置1は、上記の超音波診断装置11の他に、パーソナルコンピュータ12を含む。なお、図1では、被検体側装置1に含まれる装置として、超音波診断装置11とパーソナルコンピュータ12のみを示したが、これらの他に、必要に応じて他の装置が含まれていても良い。また、診断者側装置3は、パーソナルコンピュータ31を含む。診断者側装置3も、必要に応じて、パーソナルコンピュータ31以外の装置を含んでも良い。
【0019】
被験体側装置1の超音波診断装置11は、超音波プローブ111、超音波送信部112、超音波受信部113、フィルタリング部114、動作制御部115などを備えている。なお、超音波診断装置11は、この他にタイミング制御回路などの周知の構成も備えているが、図1では主な構成要素のみを図示し、その他についての詳細な説明は省略する。
【0020】
超音波プローブ111は、先端部に複数の振動子(図示せず)を備えている。超音波送信部112は、タイミング制御回路からのタイミング信号に基づき、超音波プローブ111の各振動子にパルス電圧を順次に印加する。これにより、超音波プローブ111から被験体へ超音波が照射される。また、超音波プローブ111は、被験体からの反射波を各振動子で受信し、受信した信号を超音波受信部113へ送信する。超音波受信部113は、超音波プローブ111の各振動子から送られた受信信号を加算し、フィルタリング部114へ送る。フィルタリング部114は、超音波受信部113から送られた信号に対して各種の信号処理を実施し、パーソナルコンピュータ12へ送信する。動作制御部115は、パーソナルコンピュータ12から与えられる制御コマンドなどに従い、超音波診断装置11の観測モードの制御など、超音波診断装置11の全体動作の制御を行う。
【0021】
パーソナルコンピュータ12は、図2に示すように、送受信処理部121、設定情報記憶部122、設定処理部(設定情報処理部)123、操作制御部124、設定データ入力部125などの他、超音波診断装置11と接続するためのインタフェース(図示せず)を備えている。送受信処理部121は、通信回線2の通信プロトコルに応じたインタフェースを持つ。設定情報記憶部122は、メモリまたはハードディスクなどで実現される。設定処理部123および操作制御部124は、パーソナルコンピュータ12のCPUが所定のプログラムに従って動作することにより実現される。設定データ入力部125は、キーボードやマウスなどの周知の入力デバイスにより実現される。
【0022】
送受信処理部121は、診断者側装置3との間で、データや制御コマンドの送受信を行う。設定情報記憶部122は、超音波診断装置11の動作を制御するために必要なパラメータの集合体(設定値テーブル)を記憶している。操作制御部124は、設定情報記憶部122の設定値テーブルを参照し、設定されているパラメータに従って、超音波診断装置11の動作制御部115へ制御コマンドなどを与えることにより、超音波診断装置11の動作を制御する。
【0023】
設定情報記憶部122に記憶されるパラメータとしては、例えば、表示モード、送信周波数、画像サイズ、画像の向き、輝度(ゲイン)値、拡大表示率、拡大部位、フリーズ状態、シネ記録枚数、シネ再生頁番号、フレームレート、フォーカス深度、フォーカス段数、操作ポインタ位置、各種フィルタの設定値などがある。なお、後述するが、この設定値テーブルと同じテーブルが、診断者側装置3のパーソナルコンピュータ31にも設けられている。
【0024】
設定データ入力部125は、被験体側装置1の操作者より、設定情報記憶部122の設定値テーブルへのパラメータの追加、修正、削除などの指示を受け付ける。設定処理部123は、設定データ入力部125で受け付けた指示に従い、設定情報記憶部122の設定値テーブルの内容を変更する。また、設定処理部123は、通信回線2および送受信部処理部121を介して診断者側装置3から受信した情報に基づき、設定情報記憶部122の設定値テーブルの内容を、診断者側装置3のパーソナルコンピュータ31に設けられた設定値テーブルの内容と一致させるための処理も行う(詳細は後述)。
【0025】
一方、診断者側装置3のパーソナルコンピュータ31は、図3に示すように、送受信処理部131、設定情報記憶部132、設定処理部133、操作制御部134、設定データ入力部135などを備えている。送受信処理部131は、通信回線2の通信プロトコルに応じたインタフェースを持つ。設定情報記憶部132は、メモリまたはハードディスクなどで実現される。設定処理部133および操作制御部134は、パーソナルコンピュータ31のCPUが所定のプログラムに従って動作することにより実現される。設定データ入力部135は、キーボードやマウスなどの周知の入力デバイスにより実現される。
【0026】
送受信処理部131は、被験体側装置1との間で、データや制御コマンドの送受信を行う。設定情報記憶部132は、被験体側装置1の超音波診断装置11を遠隔操作するために必要なパラメータの集合体である設定値テーブルを記憶している。操作制御部134は、設定情報記憶部132の設定値テーブルを参照し、設定されているパラメータに従って、超音波診断装置11の動作を制御する制御コマンドを生成する。生成された制御コマンドは、送受信処理部131を介して被験体側装置1へ送信され、被験体側装置1のパーソナルコンピュータ12の操作制御部124で生成される制御コマンドと同様に、超音波診断装置11の動作を制御する。
【0027】
設定データ入力部135は、キーボードやマウスなどの周知の入力デバイスを含み、診断者側装置3の操作者より、設定情報記憶部132の設定値テーブルへのパラメータの追加、修正、削除などの指示を受け付ける。設定処理部133は、設定データ入力部135で受け付けた指示に従い、設定情報記憶部132の設定値テーブルの内容を変更する。また、設定処理部133は、通信回線2および送受信部処理部131を介して被験体側装置1から受信した情報に基づき、設定情報記憶部132の設定値テーブルの内容を、被験体側装置1の設定値テーブルの内容と一致させるための処理も行う(詳細は後述)。
【0028】
次に、以上のように構成された本実施形態の遠隔超音波診断システムの動作について、図4を参照しながら説明する。図4は、被験体側装置1の設定値テーブルと、診断者側装置3の設定値テーブルについて、それぞれの内容の変遷を表すものである。なお、図4に示した設定値テーブルの例では、“0”〜“5”のいずれかの値を選択値として設定できるものとし、四角で囲んだ値が選択値として設定されている様子を模式的に示したが、設定値テーブルの内容はこの一例にのみ限定されるものではない。
【0029】
当初、図4の(a)に示すように、被験体側装置1の設定値テーブルと、診断者側装置3の設定値テーブルとは、設定内容が一致していたものとする。ここで、例えば図4の(b)に示すように、被験体側装置1の操作者による設定データ入力部125からの入力により、設定処理部123が、設定情報記憶部122の設定値テーブルにおける設定Gのパラメータを、「4」から「2」へ変更したものとする。
【0030】
このとき、設定処理部123は、上述のように設定値テーブルにおけるパラメータを変更すると共に、変更後の設定値テーブルの内容を、パラメータの集合体として送受信処理部121へ送る。送受信処理部121は、設定処理部123から送られたパラメータの集合体を、通信回線2を介して診断者側装置3へ送信する。
【0031】
そして、診断者側装置3では、パーソナルコンピュータ31の送受信処理部131が、被験体側装置1からパラメータの集合体を受信し、設定処理部133へ渡す。設定処理部133は、受け取ったパラメータの集合体と、設定情報記憶部132の設定値テーブルに記憶されているパラメータとを比較し、設定情報記憶部132の設定値テーブルのパラメータを最新の状態に更新する。これにより、図4の(c)に示すように、被験体側装置1の設定値テーブルにおいて変更された設定Gのパラメータ「2」が、診断者側装置3の設定値テーブルにも反映され、被験体側装置1と診断者側装置3の設定値テーブルの内容が、互いに一致した状態となる。
【0032】
ここで、設定値テーブルの更新処理に関する被験体側装置1の動作手順を、図5のフローチャートに示す。設定値テーブルの更新処理は、被験体側装置1において設定データ入力部125による設定入力があるか、あるいは、送受信処理部121が診断者側装置3からパラメータの集合体を受信したか、のいずれかによって開始される(ステップS1)。被験体側装置1において設定データ入力部125による設定入力があった場合は、ステップS2へ進み、設定処理部123が、設定データ入力部125により入力されたパラメータを、設定情報記憶部122の設定値テーブルに反映させる(ステップS2)。次に、設定処理部123は、ステップS2において更新された設定値テーブルのパラメータを設定情報記憶部122から全て読み出し、送受信処理部121へ送る(ステップS3)。そして、送受信処理部121は、そのパラメータを、通信回線2を介して診断者側装置3へ送信する(ステップS4)。
【0033】
一方、ステップS1において、送受信処理部121が診断者側装置3からパラメータの集合体を受信した場合は、送受信処理部121は、通信回線2を介して診断者側装置3から受信したパラメータの集合体を、設定処理部123へ渡す(ステップS5)。そして、設定処理部123は、渡されたパラメータの集合体を、設定情報記憶部122の設定値テーブルに反映させる(ステップS6)。
【0034】
なお、設定値テーブルの更新処理に関しては、診断者側装置3における処理も、図5のフローチャートと同様である。すなわち、診断者側装置3の操作者が設定データ入力部135より設定入力を行った場合はステップS2〜S4の処理が実行され、送受信処理部131が被験体側装置1からパラメータの集合体を受信した場合は、ステップS5〜S6の処理が実行される。
【0035】
以上のように、本実施形態にかかる遠隔超音波診断システムによれば、被験体側装置1と診断者側装置3のいずれか一方で設定値テーブルの内容に変更がある都度、更新後の設定値テーブルのパラメータの集合体が他方の装置へ送信され、他方の装置の設定値テーブルが更新される。これにより、通信回線2の通信障害などに起因して、診断者側装置3から被験体側装置1へ、あるいは、被験体側装置1から診断者側装置3へ、制御コマンドが正しく送信されない事態が生じても、被験体側装置1と診断側装置3との間でパラメータの設定に差が発生することを、最小限に抑えることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、被験体側装置1と診断者側装置3のいずれか一方で設定値テーブルの内容に変更がある都度、他方の装置へ設定値テーブルのパラメータの集合体を送信するものとした。しかし、本発明はこの実施形態にのみ限定されない。例えば、設定値テーブルの内容に変更がある都度に限らず、一定期間毎に設定値テーブルのパラメータの集合体を送信するものとしても良い。また、被験体側装置1と診断者側装置3との間で送信するパラメータは、設定値テーブルの全パラメータの集合体でなくとも良く、各種設定に必要十分なパラメータを最低限含んでいれば良い。例えば、変更があったパラメータのみを送信するようにしても良い。
【0037】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態にかかる遠隔超音波診断システムについて説明する。
【0038】
本実施形態にかかる遠隔超音波診断システムは、図6に示すように、1台の被験体側装置1と、2台の診断者側装置3,4が、通信回線2を介して接続された構成である。なお、診断者側装置4は、診断者側装置3のパーソナルコンピュータ31と同様の構成のパーソナルコンピュータ41を有し、通信回線2を経由して被験体側装置1を遠隔操作可能である。
【0039】
このように、3台以上の装置が相互に接続された状態であっても、本来は、全装置の設定テーブルは同一でなければならない。しかし、被験体側装置1の操作者または診断者側装置3または診断者側装置4の操作者が数々の操作を繰り返しているうちに、ネットワーク経由の遅延時間などの事由により、被験体側装置1と診断者側装置3,4の設定に差が発生することがある。その状態の一例を図7の(a)に示す。図7の(a)では、被験体側装置1の設定値テーブルの設定Gにおけるパラメータと、診断者側装置3,4の設定値テーブルにおける設定Gのパラメータとの間に差が生じている。
【0040】
本実施形態では、被験体側装置1、診断者側装置3,4が、通信回線2を介して、それぞれの設定値テーブルのパラメータの集合体を相互に送受信する。これにより、各装置は、設定値テーブルの設定Gにおけるパラメータが一致していないことを認識できる。各装置の設定が一致していないことを認識すると、被験体側装置1および診断者側装置3,4のうち特定のいずれか1台の装置、またはこれらの全ての装置で、設定値テーブルのパラメータの集合体を比較して、例えば多数決などの方法により、不一致のパラメータをどのように修正すべきかを決定する。そして、決定結果に従い、全装置の設定値テーブルのパラメータを変更する。
【0041】
例えば、図7の(a)に示した状態であれば、被験体側装置1の設定値テーブルのみ設定Gのパラメータ値が「2」であり、診断者側装置3,4では設定Gのパラメータ値が「4」である。従って、多数決に従えば、被験体側装置1の設定Gのパラメータ値を「4」に変更すべきであると判断される。その結果、被験体側装置1の設定値テーブルの設定Gの値は、図7の(b)に示すように、「4」に修正される。このような機能を設けることにより、通信障害などに起因して正しく制御コマンドが届かない場合でも、被験体側装置と診断者側装置との設定に差が生じることを抑えることができる。
【0042】
なお、上記装置間において設定に差が生じた際に、設定情報の集合体を決定する方法として、各装置の設定の選択値による多数決により変更後の選択値を決定しても良い。
【0043】
なお、上述の各実施形態では、診断機器として超音波診断装置を用いた構成を例に挙げたが、本発明は遠隔超音波診断システムのみに限定されるものではなく、遠隔操作が可能な診断機器を含む様々な遠隔診断システムに適用可能である。
【0044】
また、上記の実施形態では、被験体側装置が診断装置(例えば超音波診断装置)とパーソナルコンピュータで構成された例を示したが、上記の実施形態においてパーソナルコンピュータで実現した機能を、診断装置の内蔵コンピュータに持たせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、被験体側装置と診察者側装置との間で設定に差が生じても、これを自動的に変更する機能を有し、医師のストレスを低減し、診断効率を低下させない、リアルタイム操作が可能な遠隔診断システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる遠隔超音波診断システムの概略構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態にかかる遠隔超音波診断システムにおける被験体側装置のパーソナルコンピュータの構成を示すブロック図
【図3】第1の実施形態にかかる遠隔超音波診断システムにおける診断者側装置のパーソナルコンピュータの構成を示すブロック図
【図4】第1の実施形態における被験体側装置および診断者側装置の設定値テーブルの内容の変遷の一例を示す説明図
【図5】第1の実施形態において、設定値テーブルの更新処理に関する被験体側装置の動作手順を示すフローチャート
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる遠隔超音波診断システムの概略構成を示すブロック図
【図7】第2の実施形態における被験体側装置および診断者側装置の設定値テーブルの内容の変遷の一例を示す説明図
【符号の説明】
【0047】
1 被験体側装置
2 通信回線
3,4 診断者側装置
11 超音波診断装置
12,31 パーソナルコンピュータ
111 超音波プローブ
112 超音波送信部
113 超音波受信部
114 フィルタリング部
115 動作制御部
121,131 送受信処理部
122,132 設定情報記憶部
123,133 設定処理部
124,134 操作制御部
125,135 設定データ入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断機器を含む被験体側装置と、前記被験体側装置に通信回線を介して接続された診断者側装置とを備え、前記診断機器を前記診断者側装置から遠隔操作できる遠隔診断システムであって、
前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれが、
当該遠隔診断システム上の他の装置と前記通信回線を介して情報通信を行う送受信部と、
前記遠隔操作に関して被験体側装置および診断者側装置間で共通に保有されるべき設定情報を記憶する設定情報記憶部と、
前記設定情報記憶部に記憶されている設定情報を更新する設定情報処理部とを備え、
前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、
前記設定情報記憶部の設定情報に変更が生じたときまたは所定の時期に、前記送受信部が、少なくとも変更が生じた部分を含む設定情報を、前記通信回線を介して当該遠隔診断システム上の他の装置へ送信し、
前記送受信部が、当該遠隔診断システム上の他の装置から前記通信回線を介して前記設定情報を受信した場合、前記設定情報処理部が、受信した設定情報に基づき自装置の設定情報処理部の設定情報を更新することを特徴とする遠隔診断システム。
【請求項2】
前記被験体側装置および診断者側装置を1台ずつ含み、
前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、当該遠隔診断システム上の他の装置から前記通信回線を介して前記設定情報を受信した場合、前記設定情報処理部が、受信した設定情報に一致するよう、自装置の設定情報処理部の設定情報を更新する、請求項1記載の遠隔診断システム。
【請求項3】
前記被験体側装置および診断者側装置を合計3台以上含み、
前記被験体側装置および前記診断者側装置のいずれか1台の装置において、当該遠隔診断システム上の複数の他の装置から受信した設定情報を比較し、
前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、前記設定情報処理部が、前記1台の装置における比較結果に基づいて自装置の設定情報処理部の設定情報を更新する、請求項1記載の遠隔診断システム。
【請求項4】
前記被験体側装置および診断者側装置を合計3台以上含み、
前記被験体側装置および前記診断者側装置のそれぞれにおいて、前記設定情報処理部が、当該遠隔診断システム上の複数の他の装置から受信した設定情報を比較し、比較結果に基づいて自装置の設定情報処理部の設定情報を更新する、請求項1記載の遠隔診断システム。
【請求項5】
前記診断機器が超音波診断装置である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遠隔診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−43298(P2006−43298A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231554(P2004−231554)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】