説明

遠隔通信システムの構成方法

【課題】CDMA無線リンクにおいて、サービスの質が異なる複数のトランスポートチャネルをそれらの間で確実に伝送する、少なくとも1つの送信側エンティティと1つの受信側エンティティとを含む、遠隔通信システムを構成する方法、および、該方法を用いた遠隔通信システムを提供する。
【解決手段】送信側エンティティは、種々のサービスの質の間でレートマッチングを行ない、その完了時に、それらサービスの質を多重化する。各サービスの質に特定的なマッチングレートは、干渉の平均エネルギに対する1ビットの平均エネルギの比Eb/Iを表わす第1のパラメータ(Eq)および、該当のサービスの質に特定的な最大パンクチャレートを表わす第2のパラメータ(Pq)に基づいて判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトランスポートチャネルによって搬送されるデータを無線通信するフェーズを実行する複数のエンティティを含む、遠隔通信システムを構成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project、第3世代パートナーシップ・プロジェクト)グループは、もともとはETSI(European Telecommunication Standardization Institute、欧州電気通信標準化機構)やARIB(Association of Radio Industries and Businesses、電波産業会)を含む複数の地域標準化団体から立ち上げられた協会であって、移動用の第3世代の遠隔通信システムの標準化をその目的とする。第3世代のシステムを第2世代のシステムと区別する基本的な1局面は、第3世代のシステムが無線スペクトルをより効率的に使用するという事実を別にすれば、それらが非常に柔軟なサービスを提供するであろうということである。第2世代のシステムは、限られたサービスに対しては最適化された無線インターフェイスを提供する。たとえば、GSM(登録商標)(Global System for Mobiles、移動用グローバルシステム)は、音声の伝送(電話技術)について最適化されている。第3世代のシステムは、あらゆる種類のサービスおよびサービスの組合せに適合する、無線インターフェイスを提供するであろう。
【0003】
第3世代の移動無線システムにおいて懸案となっている問題の1つに、サービスの質(QoS)に対する要求が異なるサービスを、無線インターフェイス上で効率的に多重化する問題がある。サービスの質は、従来、処理の遅延、ビット誤り率、および/または、伝送されるブロック当りの誤り率等の、少なくとも1つの判断基準に従って規定されている。これらサービスの質が異なる場合、対応するトランスポートチャネルには異なるチャネルコーディングおよびチャネルインタリーブが必要となる。さらに、それらが要求する最大ビット誤り率(BER)も異なる。任意のチャネルコーディングに対して、BERに関する要求は、コード化されたビットが少なくともある程度のコーディングに依存した比Eb/Iを有した場合に満たされる。この比Eb/Iは、干渉の平均エネルギに対するコード化された各ビットの平均エネルギの比を表わす。
【0004】
要するに、異なるサービスの質は、比Eb/Iについて要求が同じではない。今、CDMA(Code Division Multiple Access、符号分割多元接続)のシステムにおいて、システムの容量は干渉のレベルによって制限されている。したがって、各サービスに対して、比Eb/Iはできる限り正しく設定する必要がある。このため、比Eb/Iを均衡させるためにレートマッチング操作が、種々のサービス間で必要となる。この操作なくしては、比Eb/Iは要求が最大であるサービスによって設定されてしまい、その結果、他のサービスにとってはその質が「良すぎる」ことになり、ひいては、システムの容量に直接影響を与えてしまうことになりかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これは問題となる。というのも、レートマッチング比は、何らかの方法で、無線リンクの両端において同様に規定されねばならないためである。
【0006】
本発明は、CDMA無線リンクの両端において同様にレートマッチング比を規定するための、構成方法に関する。
【0007】
ISO(International Standardization Organization、国際標準化機構)が提案したOSI(Open System Interconnection、開放型システム間相互接続)モデルにおいては、遠隔通信機器は、プロトコルの積み重ねからなる層状のモデルによってモデル化されており、各レベルは、その上方のレベルにサービスを提供するプロトコルである。レベル1は、特に、チャネルコーディングおよびチャネルインタリーブを実行する責任を負う。レベル1によって提供されるサービスが「トランスポートチャネル」と称される。トランスポートチャネルは、より高次のレベルがあるサービスの質でデータを伝送することを可能にする。サービスの質は、特に、遅延およびBERによって特徴付けられる。
【0008】
サービスの質に対する要求を満たすことができるように、レベル1は、何らかの符号化(encoding)および好適なチャネルインタリーブを用いる。
【0009】
公知の解決策、特に3GPPグループによって提案される解決策を、図1および図2を参照して説明する。
【0010】
図1および図2に示すのは、3GPPグループの現時点における提案によって規定された、インタリーブおよび多重化のためのブロック図である。ただし、この提案は未だ最終的に承認されてはいない。
【0011】
図1および図2において、同様のブロックには同じ参照番号が付されている。どちらの場合にも、(移動局からネットワークへの)アップリンクは、(ネットワークから移動局への)ダウンリンクとは区別することができ、また、送信部分のみが示されている。
【0012】
番号100が付された各トランスポートチャネルは、番号102が付されたより高次のレベルから、トランスポートブロックの組を周期的に受取る。この組内のトランスポートブロック100の数およびそれらのサイズは、トランスポートチャネルに依存する。トランスポートブロックの組が供給される最小の周期は、トランスポートチャネルのインタリーブのタイムスパンに対応する。1つかつ同じサービスの質(QoS)を有するトランスポートチャネルは、1つかつ同じ処理チェーン103A、103Bによって処理される。
【0013】
処理チェーン103A、103Bの各々において、トランスポートチャネルは、特にチャネルの符号化およびチャネルのインタリーブの後に、ステップ104において連結によって互いに多重化される。この多重化は、多重化フレームごとに実行される。多重化フレームとは、それに対して少なくとも部分的に逆多重化を行なうことのできる、データの最小単位である。多重化フレームは典型的に、無線フレームに対応する。無線フレームは、ネットワークと同期しかつネットワークによって期間が定められる、連続的な時間間隔を形成する。3GPPグループによる提案において、無線フレームは10msの時間期間に対応する。
【0014】
3GPPの提案は、103Cで概略的に表わされる、サービスに特定的なコーディングおよびインタリーブオプションを含む。このようなオプションの可能性が、現時点において考慮されつつある。というのも、それが不可欠であるかどうかが未だに判断されていないためである。
【0015】
一般的な場合において、処理チェーン100Aはまず、ステップ106を含む。このステップ106において、FCS(フレームチェックシーケンス)と称されるビット語が各トランスポートブロックに付与される。このビット語FCSは典型的に、いわゆるCRC技術(巡回冗長検査)によって計算される。この巡回冗長検査は、トランスポートブロックのビットを多項式Pの係数であると考え、いわゆる生成多項式Gによって多項式(P+P0)を除した余りから、CRCを計算するものである。ここで、P0は、任意の次数Pに対する所定の多項式である。ビット語FCSの付与はオプションであって、このステップを含まないトランスポートチャネルも存在する。ビット語FCSを計算するための技術もまた厳密にはトランスポートチャネルに依存し、特に、トランスポートブロックの最大サイズに依存する。ビット語FCSは、受信されたトランスポートブロックが有効であるか破壊されているかを判定できる点で有効である。
【0016】
次のステップ108において、同じサービスの質(QoS)のトランスポートチャネル(TrCH)を互いに多重化する。これは、同じサービスの質を有するそれらのトランスポートチャネルが同じチャネルコーディングを使用することができるためである。典型的に、ステップ108における多重化は、各トランスポートチャネルにつき、トランスポートブロックの組をそれらのFCSと連結することによって行なわれる。
【0017】
番号110が付された次のステップは、チャネルの符号化を行なうステップである。
チャネルエンコーダ110の出口に、コード化されたブロックの組が存在する。典型的に、畳込み符号の場合には、ゼロまたは単一の可変長のコード化されたブロックが存在する。その長さは、
output=Ninput/(コーディングレート)+Ntail(コード化されたブロックの長さ)
という公式によって与えられる。式中、
・Noutputは、出力におけるビット数(コード化されたブロックの長さ)、
・Ninputは、入力におけるビット数、
・コーディングレートは、一定の比、および、
・Ntailは、Ninputとは独立の、一定量の情報であって、コード化されたブロックを受信した時点においてチャネルデコーダをきれいに空にする役割を果たす。
【0018】
このステップ110以降は、アップリンクはダウンリンクと区別される。
アップリンク(図1)においてもダウンリンク(図2)においても、各トランスポートチャネルにおいて、チャネル符号化ステップ110の後にレートマッチングステップが行なわれる。このステップには、アップリンクにおいては112が、ダウンリンクにおいては114が付されている。レートのマッチングは、チャネルの符号化110の直後に必ずしも行なわれることはない。
【0019】
レートマッチングステップ112または114の目的は、サービスの質の異なるトランスポートチャネル間で比Eb/Iを均衡させることにある。この比Eb/Iは、干渉の平均エネルギに対する1ビットの平均エネルギを表わす。多重アクセスCDMA技術を用いるシステムにおいては、この比が大きいほど、得ることのできる質は高い。したがって、サービスの質の異なるトランスポートチャネルのEb/Iに対する要求は同じではなく、レートのマッチングがなされなければ、最も高いサービスの質を要求するチャネルに従ってそのサービスの質が定められてしまい、そのサービスの質があるトランスポートチャネルにとってはそれらの要求に対して「良すぎる」という事態が生じ得る。この場合、そのようなトランスポートチャネルは不必要に干渉を引き起こすおそれがある。したがって、レートのマッチングには、Eb/Iの比をマッチングさせる役割がある。レートのマッチングは、入力におけるXビットが出力においてYビットをもたらすようにするものであり、このため、Eb/Iを比Y/Xで、したがってマッチング能力で乗算する。この比Y/Xはレートマッチング比としても知られており、以下の説明において、この比Y/Xをレートマッチング比と称する。
【0020】
レートのマッチングは、アップリンクとダウンリンクとでは異なる方法で行なわれる。
これは、アップリンクにおいては、非連続的な送信が移動局の出力における無線周波数パワーのピーク/平均比を劣化させるので、連続的に送信するように決められているためである。この比は1に近づくほど良い。なぜなら、もしこの比が劣化すれば(すなわち上昇すれば)、それは、パワー増幅器が平均動作点に対してより大きな線形性のマージン(バックオフ)を必要とすることを意味するためである。このように大きなマージンでは、パワー増幅器の効率は悪化し、したがって、発散される同じ平均パワーに対してより多くを消費するようになり、それにより、特に、移動局の電池駆動耐性を受入れることのできないほどに減じてしまうことになる。アップリンクにおいては連続的に送信する必要があるため、レートマッチング比Y/Xは一定とすることはできない。なぜなら、マッチングを行なった後のビット数の合計Y1+Y2+…Ykは、そのデータに対する無線フレームにおけるビットの合計数と等しくなければならないためである。この数字は、予め定められた何らかの値N1、N2、…、Npのみをとり得る。したがって、k個の未知数Y1、…、Ykにおいて以下に示す系を解くことが適切である。系中、XiおよびEbi/IおよびPiは、各トランスポートチャネルの特性定数であって、この系においては、p個の可能な値N1、N2、…、NP中の、Njを最小にする解が求められる(注:Piはコード化されたトランスポートチャネルに対する最大許容可能なパンクチャレートである)。
【0021】
【数1】

【0022】
したがって、アップリンクにおいては、各トランスポートチャネルに対するレートマッチング比Y/Xは、多重化フレームごとに一定ではないが、乗法定数(multiplicative constant)内で規定され、したがって、これらの比の間の対ごとの比は一定に保たれる。
【0023】
ダウンリンクにおいては、無線周波数パワーのピーク/平均比は、どのような場合にも非常に劣る。なぜなら、ネットワークは複数のユーザに同時に送信を行なうためである。これらユーザに向けられる信号は、建設的または破壊的に組合わさって、ネットワークによって発せられる無線周波数パワーに大きなばらつきを生じさせ、したがって、ピーク/平均比を劣化させる。したがって、ダウンリンクについては、種々のトランスポートチャネル間のEb/Iは、一定のレートマッチング比Y/Xを有するレートマッチングによって均衡させるようにするよう決定され、また、多重化フレームにはダミービット、すなわち送信されないビットを補充し、したがって、非連続な送信を行なうように決められた。
【0024】
したがって、アップリンクとダウンリンクにおける違いは、アップリンクにおいてはレートのマッチング112が多重化フレームを補充するように動的であるのに対し、ダウンリンクにおいてはレートのマッチング114が静的であって、多重化フレームがそのすぐ後に続くステップ124においてダミービットを挿入することによって補充される点にある。
【0025】
動的であれ静的であれ、レートのマッチングは、SMG2/UMTS−L1/Tdoc428/98の参照番号が付された技術文書において、シーメンス社(Siemens company)(登録商標)によってETSIに提案されたアルゴリズムに従って、反復またはパンクチャ(puncture)によって行なわれる。このアルゴリズムは、整数でないパンクチャ/反復比を得ることができるようにする。これに関する情報を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
このアルゴリズムの具体的な特徴は、それがパンクチャモードで演算を行なう場合に、連続するビットのパンクチャは行なわずに、2つのパンクチャされたビット間の間隙を最大にすることである。反復に関しては、反復されるビットがそれらが反復するビットの後に続く。このような条件下においては、レートのマッチングはインタリーブの前に行なわれることが有益であることを理解されたい。なぜなら、反復については、インタリーブがレートのマッチングの後に行なわれることにより、反復されたビットの間隔を離すことが可能となるためである。パンクチャについては、インタリーバがレートのマッチングの前に置かれることにより、チャネルエンコーダの出口においてレートマッチングによって連続するビットがパンクチャされるおそれが生じる。
【0028】
したがって、レートのマッチングはできるだけ高い位置で行なわれることが望ましく、すなわち、チャネルエンコーダのできるだけ近くで行なわれることが好ましい。
【0029】
さらに、各処理チェーン103A、103Bはまた、チャネル符号化ステップ110の後に、アップリンクについては116の符号が付されかつダウンリンクについては118の符号が付された第1のインタリーバを含み、その後に、アップリンクについては120、ダウンリンクについては122の符号が付された、多重化フレームごとにセグメント化するステップが行なわれる。第1のインタリーバ118は必ずしもチャネル符号化110の直後に置かれる必要はない。
【0030】
ダウンリンクについては、レートマッチング比が一定であるため、チャネルの符号化110のちょうど出力に、レートのマッチング114を位置付けることが可能である。したがって、先験的には単一のインタリーバ118のみが必要とされる。
【0031】
しかし、サービスの質QoSが異なるトランスポートチャネルの多重化が単純な連結によって行なわれ、また、そのような方法が各多重化ブロックのタイムスパンを実際に制限してしまうために、第2のインタリーバ136もまた必要となる。
【0032】
アップリンクについては、レートマッチング比は多重化フレームごとに変化し得る。このため、コード化ブロックのビットを複数の多重化フレームにわたって分配するために、レートのマッチング112の前には少なくとも第1のインタリーバ116が必要であり、さらに、レートマッチング112によって反復されたビットを離すために、レートマッチングの後に第2のインタリーバ128を配置する必要がある。
【0033】
したがって、図1および図2のブロック図において、第1のインタリーバおよび第2のインタリーバと称される2つのインタリーバが配置されている状態が示される。第1のインタリーバ116、118は、そのタイムスパンが、対応するトランスポートチャネルのためのインタリーブのタイムスパンと等しい、インタリーバである。このスパンは、多重化フレームの時間期間よりも長くてもよく、典型的に、それを一定の比で乗じたものである。このために、第1のインタリーバ116、118はときとして、フレーム間(inter-frame)インタリーバとも称される。
【0034】
第2のインタリーバ126、128はまた、そのタイムスパンが多重化フレームのタイムスパンであるために、フレーム内(intra-frame)インタリーバとも称される。
【0035】
したがって、120、122の符号が付された、多重化フレームごとのセグメント化のステップは、(第2のインタリーバがある場合、)第1のインタリーバ116、118と第2のインタリーバ128、126との間に位置付けられる。このステップは、コード化されかつ第1のインタリーバによってインタリーブされたブロックを、多重化フレームの時間期間に対する第1のインタリーバのタイムスパンの比と等しい、できるだけ多くのセグメントにセグメント化するステップを含む。このセグメント化は典型的には、セグメントの連結によって再び、インタリーブされたコード化ブロックが生み出されるような方法で行なわれる。
【0036】
アップリンクにおいては、このセグメント化のステップ120がレートのマッチング112の前に置かれなければならないことに留意されたい。これは、そのレートのマッチング112が、多重化フレームごとに動的に構築される比に従って行なわれるために、複数の多重化フレームにわたって延び得るデータの単位では行なうことができないためである。
【0037】
アップリンクおよびダウンリンクにおいて、各第2のインタリーバ126、128の前に、物理的チャネルへのセグメント化のステップ130が実行される。同様に、第2のインタリーバ126、128の後には、適正な送信のための物理的チャネルのマッピングのステップ132が行なわれる。
【0038】
現時点において、多重化、チャネルの符号化、インタリーブおよびレートのマッチングのアルゴリズムのみが規定されかつ検討されている。ビットレートマッチング器にサイズXのブロックが入力されると、それに対応して出力にサイズYのブロックが得られるような方法を固定することを可能にする規則は存在しない。すべての(X、Y)の対の組合せが予め定められかつ固定された形でメモリ内に記憶されていると仮定すると、以下の2つの方法のうち一方のみが可能である。すなわち:
−(X、Y)の対の組は固定されたままとされ、問題となるサービスに対するこの(X、Y)の対の組の定義には柔軟性は何ら得られない。これは、求められている効果に反する。または、
−(X、Y)の対の組が関連する遠隔通信ネットワークと移動局との間で折衝され、大きい数の信号化ビット(signaling bits)、かつしたがって付加的な資源の固定化が予見されねばならない。
【0039】
他のブロックとレートがマッチングされたレートマッチング済ブロックのサイズYを、レートのマッチング前のそのブロックのサイズXに基づいて判定する規則が、少なくともアップリンクにおいて必要である。なぜなら、サービスが可変ビットレートを有するので、各トランスポートチャネルに対して提供されるトランスポートブロックの数が可変であるためである。レートがマッチングされるべきブロックのサイズのリスト(X1、X2、…、Xk)はしたがって、多重化フレームごとに異なり得る。このリストにおける要素の数kもまた必ずしも一定ではない。
【0040】
サイズXiに関連するサイズYiは、動的なマッチングのために、Xiばかりでなくリスト全体(X1、X2、…、Xk)に依存するので、各リスト(X1、X2、…、Xk)に対してリスト(Y1、Y2、…、Yk)が存在することになる。リストの数はしたがって非常に大きい場合があり、これは少なくとも、トランスポートフォーマットの組合せの数と同じだけの数となる。トランスポートフォーマットの組合せは、多重化フレームの逆多重化の方法を規定するものである。
【0041】
したがって、送信側エンティティおよび受信側エンティティは、同じ関連リスト(X1、X2、…、Xk)→(Y1、Y2、…、Yk)を用いねばならない。コード化されたトランスポートチャネルの複合を接続する時点において、これら2つのエンティティ間のこの関連リストを信号化すること(signaling)は、信号化ビットについて無視できないコストがかかることを意味する。コード化されたトランスポートチャネルの複合は、コード化されたトランスポートチャネルの少なくとも2つのグループを含む。さらに、コード化されたトランスポートチャネルの複合内への各付加または各除去に対して、新しい関連のリスト(X1、X2、…、Xk)→(Y1、Y2、…、Yk)を交換することができるようにしなければならないであろう。
【0042】
さらに、比Eb/Iの厳密なマッチングは、各サービスの質QoSに対するチャネルデコーダの技術に依存する。このようなデバイスの性能は、製造業者のそれぞれのノウハウに応じて製造業者間でばらつき得る。実際に、このレートのマッチングは、各デコーダの絶対的な性能によるものではなく、互いに対するそれらの性能に依存し、したがって、製造業者によってその性能に違いがある場合にはそれらに従ってばらつき得る。
【0043】
このため、用いられる送信側および受信側エンティティが、信号化メッセージの適切な交換を通じて、比(Eb/I)のマッチングを「折衝する」ことができるようにすることは不可能である。
【0044】
このことを説明するために、2つのサービスの質AおよびB、ならびに、2つの製造業者MおよびNを想定する。MおよびNはAに対して同じチャネルデコーダを有するが、Bに対してはMの方がNよりもはるかに効率的なデコーダを有する。この場合、製造業者Mの方がBについてより小さい比Eb/Iから恩恵を得ることができることは明らかである。というのも、これにより、必要とされるパワーの総量が減じられ、かつしたがって、容量の利得が得られ、これにより、Mは、それを主張することによってネットワークオペレータに対してより多くの携帯用遠隔通信機器を販売することが可能となるためである。
【0045】
したがって、マッチング前のブロックのサイズXからレートマッチングの後のブロックのサイズYを判定するための規則X→Yを規定することを可能にするパラメータを通知することができることは、非常に有益であろう。これにより、比Eb/Iの割合を折衝または再折衝することができるようになるであろう。ただし、この通知は、できる限る低費用でなければならない。
【0046】
より高次のレベルによって行なわれる比Eb/Iの接続中のこの調整は、したがって、2つの遠隔通信局AおよびBがサービスの多重化がそれにわたって行なわれる接続を構築したいかまたは修正したい場合に、それらが以下のステップをたどることを意味する。すなわち:
1.BがAに対して、Bが送信することのできる多重化フレームの最大負荷Nを通知する。
【0047】
2.Aは、以下の点から、比Eb/IのAに対する理想的な割合を判定する:
−Bから受信したNの値、
−各サービスの質QoSについてAによって許容される最大パンクチャレート、
−Eb/Iに関する、各サービスの質QoSの相対的な要求、および、
−Aについて特定される最小性能要求。
【0048】
3.AがBに対して、Aが期待する比Eb/Iの割合を伝える。
上述のステップ1は必ずしも存在しない。システムによっては、最大負荷が予めわかっており、それがシステムの特性の一部を形成するようなシステムも考えられ得る。ただし、そのようなシステムは柔軟性に欠けるため、存在しそうにない。
【0049】
場合によっては、Aによって判定される比Eb/Iの割合が、どのトランスポートチャネルもそれに見合う以上のものを有してはならないという、求められる目標に対して最適ではないことがあり得る。これは、妥協的な状況であって、この場合、サービスを組合せた接続が構築できる場合には、ネットワークの容量を減じることが望ましい。
【0050】
このような妥協は、その劣化が、システムの仕様において規定された最小性能要求によって定められる限界内である場合に、受入れ可能である。
【0051】
また、実際の許容限度が一部、ネットワークに一任されている場合も考えられる。これは、保証されないレベルのサービスを規定することを可能にし、この場合、トラフィック条件が許せばサービスが提供され、さもなければサービスは下方向に再折衝される。
【0052】
可能なサービスの組合せの仕様は確かに存在するであろう。この仕様においては、各サービスの組合せについて、トランスポートフォーマットの組合せの組が関連付けられるであろう。これは明らかに、従来の電話サービス、および、電話呼出、スタンバイ等のすべての関連サービスのような、基本的なサービスに当てはまるであろう。
【0053】
しかし、可能性のある組合せの数は将来的に増加し、またその場合、より高次のレベルが、どのような組合せが可能であるか、どのようにそれらを折衝するかおよび/またはそれらを再折衝するかを判定するのに、また、それらが任意の組合せに対するトランスポートフォーマットの組合せの組を判定するのに、明確な規則が必要となるであろう。
【0054】
したがって、そのような高次のレベルは、どのようなトランスポートフォーマットの組合せが可能であるかを、簡単な演算アルゴリズムの助けを借りて判定することができなければならない。このために、それらのより高次のレベルが適用すべき、以下のような少なくとも3つの演算規則がある:
・第1の規則は、チャネルの符号化に関し、これは、トランスポートブロックの組のエレメントの数およびそれらそれぞれのサイズを、コード化されたブロックの組のエレメントの数およびそれらそれぞれのサイズへと、変換することを可能にする。たとえば、この規則は、
Y=X/(コーディングレート)+Ntail
のタイプのものであり、式中「コーディングレート」および「Ntail」はそのコードの特性定数である。
【0055】
・第2の規則はセグメント化に関し、これは、コード化されたブロックのサイズを多重化フレームごとのセグメント化によって得られたセグメントのサイズへと変換する。一般に、この規則は、関連のトランスポートチャネルの伝送間隔がF個の多重化フレームに対応する場合には、Fによる単純な除算である。しかし、そのセグメント化が等しいかまたは等しくないかはまだ明らかではない。等しいセグメント化の場合には、コード化されたブロックはFの倍数であるサイズを有する。この場合、すべてのセグメントは同じサイズである。なぜなら、Fによって除されるとき丸め誤差が生まれないためである。不平等なセグメント化の場合、セグメントのサイズは切り上げまたは切り捨ての丸め誤差のために1ビット以内に規定され、セグメントの曖昧さを減ずるために連続番号を知る必要が生じる。たとえば、80ビットがF=8フレームにセグメント化される場合、すべてのセグメントは10ビットを含み、そのサイズを確定するのに関連するセグメントの連続番号(またはセグメントの位置)を知る必要はない。これに対し、78ビットをF=8フレームにセグメント化する場合には、6つのセグメントが10ビットを含み、他の2つのセグメントは9ビットを含むことになり、そのサイズを確定するのにセグメントの連続番号を知る必要がある。
【0056】
・第3の規則は、レートがマッチングされるべきブロックのサイズXから、レートがマッチングされたブロックのサイズYを導出することを可能にする規則である。
【0057】
この第3の規則は特定されておらず、本発明はこの、マッチングされるべきブロックについて対応のサイズを導出する問題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0058】
[発明の概要]
本発明の目的は、移動用遠隔通信ネットワークの送信側エンティティおよび受信側エンティティの各々が、1つかつ同じサービスの質に関連する各トランスポートチャネルについて、レートマッチング手段の出力において得られかつ各サービスの質に関連するブロックのサイズYを、そのマッチング手段に入力されるブロックのサイズXの関数として、簡単な方法で知ることができるようにすることである。
【0059】
本発明の目的はまた、レートマッチング手段の出力において得られかつそれらレートマッチング手段に入力されるブロックのサイズXに関連するブロックのサイズYを、送信側エンティティおよび受信側エンティティに共通の方法で規定することを可能にする、通知ビットの数を最小限に抑えることである。
【0060】
本発明のさらなる目的は、レートマッチング手段に入力されるブロックのサイズXとレートマッチング手段によって出力されるブロックのサイズYとの関連付けの規定において、柔軟性を保つことである。
【0061】
この目的のために、本発明の主題は、複数のトランスポートチャネルによって搬送されるデータを無線で通信するフェーズを実行する複数のエンティティを含む、遠隔通信システムを構成する方法であって、上記複数のエンティティは少なくとも1つの移動局および少なくとも1つの基地局を含み、上記移動局の通信のフェーズは上記トランスポートチャネルの各々に特定的な複数の一連の処理手順を含み、上記複数の一連の処理手順の各々はレートマッチングステップを含み、上記レートマッチングステップは、初期サイズの入力ブロックから最終サイズの出力ブロックへのビットのパンクチャリングまたは反復のアルゴリズムを実行し、上記方法は、上記移動局によって、上記複数の一連の処理手順の各々につき、上記レートマッチングステップによって得られる上記出力ブロックの上記最終サイズを、上記搬送されるデータのサービスの質に基づく判断基準に基づいて、上記入力ブロックの上記初期サイズの関数として計算するステップを含み、上記関数は、上記移動局と上記基地局とにおいて同じ丸め込み誤差が生成され、かつ、上記移動局と上記基地局とで計算の結果が同じになる、関数であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】現時点の3GPPの提案における、アップリンク上でのトランスポートチャネルの多重化を示す概略図である。
【図2】現時点の3GPPの提案における、ダウンリンク上でのトランスポートチャネルの多重化を示す概略図である。
【図3】本発明に従った、ダウンリンクのためのアルゴリズムの実現を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に従った、アップリンクのためのアルゴリズムの実現を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、例示の目的のみで示された以下の説明を添付の図面を参照して読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【0064】
一般に、本発明においては、各サービスの質は2つの整数EおよびPによって特徴付けられる。Eは、比Eb/Iに対応し、すなわち、1、2、…、pが付された複数のサービスの質が存在する場合、そのそれぞれの係数EはE1、E2、…、Epで表わされ、各サービスの質の比Eb/Iは、係数Eiと同じ割合となる。
【0065】
係数Pは、任意のサービスの質に対して認められ得る最大のパンクチャレートに対応する。したがって、各サービスの質1、2、…、pに対して、最大パンクチャレートP1、P2、…、Ppが関連付けられる。最大パンクチャレートは、該当のサービスの質に特定的な処理チェーン内で実行されるチャネルコーディングによって課される。パンクチャは、コード化されたビットの削除を含む。この削除は、チャネルのコーディングが冗長性をもたらす場合に限り許容可能である。しかし、パンクチャされたビットの数は、コード化されたビットの合計数に対して大きすぎてはならず、したがって、チャネルのコーディングに依存しかつ使用されるデコーダに依存する最大パンクチャレートが存在する。
【0066】
遠隔通信システムにおいては、制御データの伝送専用の物理的チャネルが、システムの種々の送信側および/または受信側エンティティの間に設けられる。具体的には、そのようなチャネルは、移動無線通信システムの固定されたネットワークと移動局との間に存在する。このチャネルは、3GPP標準においてはDPCCH(すなわち、Dedicated Physical Control Channel、専用物理制御チャネル)と共通に称される。これは、同じ標準においてDPDCH(すなわち、Dedicated Physical Data Channel、専用物理データチャネル)と称される物理的なデータ伝送チャネルに沿って共存する。
【0067】
本発明に従えば、遠隔通信システムの各エンティティが、レートがマッチングされたブロックのサイズYiとマッチングされるべきブロックのサイズiとの間の対応の組を確定することができるように、かつ、それを各サービスの質について行なうことができるようにするために、i∈[1,p]である対(Ei,Pi)のみが、互いに通信せねばならないシステムのすべてのエンティティに対して論理的制御データ伝送チャネルを介して伝送される。これらの対は、複数のエンティティのうちの1つによって構築されるか、または、第1の実施例においては複数のエンティティの間で「折衝」され得る。第2の実施例においては、パラメータ(Ei)のみが折衝され、パラメータ(Pi)は任意のチャネル符号化について予め定められる。第3の実施例においては、パラメータ(Pi)のみが折衝され、パラメータ(Ei)の組は任意のトランスポートチャネルのグループに対して予め定められる。上に規定した対(Ei,Pi)からブロックXi、Yiのサイズの間の対応を判定するための方法は、本明細書中、後に説明する。
【0068】
EおよびPに対して整数が使用されるのは以下の理由による。すなわち:
−整数または固定小数点の計算は、実現するのが簡単であり、換言すれば、それらはより高速にかつより少ない資源で行なうことができる。また、
−整数の計算の正確性は、それらの整数がその中に記憶されるレジスタのビット数を通じて非常に容易に定量化することが可能である。したがって、ネットワークおよび移動局において同じ丸め誤差が生成され、かつしたがって、計算の結果が無線インターフェイスの各側において厳密に同じになることを容易に確信することができる。
【0069】
より正確には、ダイナミクスは以下のように規定される。すなわち:
・Eは1からEMAXまでの整数である、
・Pは0からPMAXまでの整数である。
【0070】
【数2】

【0071】
したがって、本発明のアルゴリズムは、3つの整数の定数EMAX、PMAXおよびPBASEによって特徴付けられる。
【0072】
以下においては、計算の正確性に関連する、第4の整数の定数LBASEが使用される。
【0073】
アップリンク、すなわち移動局からネットワークへのリンクと、ダウンリンク、すなわちネットワークから移動局へのリンクにおいて、同じ符号EMAX、PMAX、PBASEおよびLBASEが使用されるが、対応する定数が両方の場合において必ずしも同じ値を有するわけではないことに留意されたい。
【0074】
また以下において、同じ符号XおよびYが、アップリンクとダウンリンクの場合において異なる意味で使用される。
【0075】
さらに、各リンクについて、ブロックの任意の指標に対してサービスの質QoSの値を与える、Qの符号が付されたマッピングを、アップリンクとダウンリンクの両方の場合に規定することとする。
【0076】
ダウンリンクにおいては、X1、X2、…、Xkは、任意のサービスの質(QoS)のブロックに対する、レートマッチング前の可能なサイズのリストを示し、これは、サービスの質(QoS)のすべての可能な値に対して示される。
【0077】
より正確には、サービスの質QoSが1からpまでの値をとる場合には、
k(0)+1、…、Xk(1)は、QoS 1に対する可能なすべてのブロックサイズであり、
k(1)+1、…、Xk(2)は、QoS 2に対する可能なすべてのブロックサイズであり、

k(p-1)+1、…、Xk(p)は、QoS pに対する可能なすべてのブロックサイズであって、
ここで、k(0)=0および、k(p)=kおよび、k(0)<k(1)<…<k(p)であるものとする。
【0078】
さらに、各サービスの質QoSに対するブロックサイズの指標の組{1、…、k}から、サービスの質の指標の組{1、…、p}へのマッピングQを考える。したがって、以下の式が得られる。
【0079】
【数3】

【0080】
以上の定義から、サービスの質が同じでない(Q(i)≠Q(j))とすると、同じブロックサイズを2回(Xi=Xj、ただしi≠j)有することが可能であることに留意されたい。
【0081】
アップリンクについては、任意の多重化フレームに対してレートがマッチングされるべきブロックには、1、2、…、kの番号が付され、それらそれぞれのサイズはX1、X2、…、Xkとなる。
【0082】
したがって、リスト(X1、X2、…、Xk)は多重化フレームごとに変化する。そのエレメントの数kは特に、必ずしも一定ではない。
【0083】
Qは、{1、…、k}から{1、…、p}へのマッピングであって、これは、該当する多重化フレームについて、ブロックの指標iに関連し、そのサービスの質はQ(i)である。
【0084】
このように規定した場合、サービスの質が同じであるかないかにかかわらず(Q(i)=Q(j)またはQ(i)≠Q(j))、同じブロックサイズを2回(Xi=Xj、ただしi≠j)有することが可能である。
【0085】
実際に、同様のサービスの質の2つのブロックが同じサイズを有するには、チャネルエンコーダが、同じサイズのエレメントを少なくとも2つ有するコード化ブロックの組を出力するだけで十分である。
【0086】
要約すれば、ダウンリンクについては、1、2、…、kは、レートがマッチングされるべきブロックの可能なすべてのサイズについての指標であって、ただしこの場合、異なるサービスの質に対応するブロックサイズは別個にカウントされる。アップリンクについては、1、2、…、kは、任意の多重化フレームに対する、レートがマッチングされるべきブロックのリストの指標である。
【0087】
1、…、Ykは、レートマッチング後のX1、…、Xkにそれぞれ対応する、ブロックのサイズである。
【0088】
ダウンリンクに関して、図3に、サービスの質qに関連する値EqおよびPqから対(Xi、Yi)の組を判定するためのアルゴリズムを、1つかつ同じ処理チェーン(Qd(i))について、また、干渉の平均エネルギに対する1ビットの平均エネルギの比(Eb/I)のマッチングを折衝する一方でパラメータの対の組{Eq、Pq}を受信する1つのエンティティについて、例示する。このエンティティは、トランスポートチャネルの複合に対する(少なくとも1つの基地局を含む)送信側エンティティ、または、トランスポートチャネルのこの複合に対する(少なくとも1つの移動局を含む)受信側エンティティであってもよく、これは、現時点における折衝の結果を判定するエンティティに依存する。大半の場合には、決定するのはトランスポートチャネルのグループに対する受信側エンティティであって、本発明の構成方法を実現するのは送信側エンティティである。
【0089】
{1、…、p}における各サービスの質qに対して、すなわち、各処理チェーンに対して、上述のように規定された2つの特徴的な整数EqおよびPqが存在するものと仮定する。これらは、既に構築されているトランスポートチャネルによって実行されるステップ300Aおよび300Bにおいて受信される。さらに、ステップ300Cにおいては値Xiが入手可能である。Xiは、サービスの質qに対して予め定められているかまたは折衝されたものである。
【0090】
このアルゴリズムの最初のステップ302は、1からpまでの各qについて、以下の式(1)によって規定される整数パラメータLqを計算するステップである。
【0091】
【数4】

【0092】
一般に、パラメータを判定するための、その中で丸め操作が実行されるべきステップにおいては、どのステップにおいてもどのような丸め操作も適用することができる。さらに、パラメータを判定するための2つのステップが、2つの異なる、互いに独立した丸め操作を用いることも可能である。
【0093】
【数5】

【0094】
本発明の構成方法は、以下の利点を有する。すなわち、特に、同じサービスの質を示すトランスポートチャネルの少なくとも1つのグループの、現時点におけるトランスポートチャネルの複合内での付加および/または削除という状況において、または、任意のサービスの質に求められる、干渉の平均エネルギに対する1ビットの平均エネルギの比(Eb/I)の変更という状況において、使用されるサービスの質のすべてに対するパラメータの対{Eq、Pq}の組ではなく、求められる比(Eb/I)の付加および/または変更によって影響を受けるトランスポートチャネルのグループに関連するパラメータの対{Eq、Pq}のみしか再伝送する必要がない、という利点を有する。
【0095】
アルゴリズムのこれまでの部分は、アップリンクに対しても当てはまる。しかし、アルゴリズムの最後はダウンリンクに特定的なものである。
【0096】
ステップ306の完了後、Xi→Yiの関係がステップ308において以下の式(5)によって規定される。
【0097】
【数6】

【0098】
iおよび対応するYiの各値を知ることによって、ステップ310においてサイズの対(Xi、Yi)の組が構築される。
【0099】
要約すれば、ダウンリンクにおいては、アルゴリズムは実質的に以下の4つのステップを含む。
【0100】
【数7】

【0101】
アップリンクに関して、図4に、サービスの質qに関連する値EqおよびPqから対(Xi、Yi)の組を判定するためのアルゴリズムを、干渉の平均エネルギに対する1ビットの平均エネルギの比(Eb/I)の均衡を折衝する一方でパラメータの対{Eq、Pq}の組を受取る1つのエンティティについて、1つかつ同じ処理チェーン(Qm(i))について、例示する。このエンティティは、現時点の折衝の結果を決定するエンティティに応じて、トランスポートチャネルの複合に対する(少なくとも1つの基地局を含む)送信側エンティティであってもよく、または、トランスポートチャネルのこの複合に対する(少なくとも1つの移動局を含む)受信側エンティティであってもよい。大半の場合には、その決定をするのはトランスポートチャネルの複合に対する受信側エンティティであって、本発明の構成方法を実現するのは送信側エンティティである。
【0102】
アップリンクについては、各多重化フレームに対してレートマッチング比が計算される。したがって、これはXi→Yiのマッピングを判定する問題ではなく、むしろ、(X1、X2、…、Xk)→(Y1、Y2、…、Yk)のマッピングの問題である。実際に、YiからYkまでの合計は、多重化フレームの最大のペイロードに等しくなければならない。
【0103】
さらに、多重化フレームの(潜在的な)最大ペイロードは、使用される物理的資源に応じて、(伝送されるブロックのすべてのサイズXiからXkに対する入力データの量に対応する)伝送されるべきデータの量の関数として、フレームごとに変化し得る。したがって、多重化フレームに対して、たとえばN1≦…≦Nrである、可能な最大ペイロードの組{N1、…、Nr}を規定することが可能である。より一般的には、N1、N2からNrの指標の次数1、2、…、rは、種々の最大ペイロード{N1、N2、…、Nr}の伝送を可能にする物理的資源の選好序列に対応する。
【0104】
したがって、レートのマッチングを判定するためのアルゴリズムの結果のうちの1つは、{1、2、…、r}から、最大ペイロードNJSELの伝送を可能にする、JSELで識別される物理的資源の組を選択し、かつ、以下の式(6)を確実にすることである。
【0105】
【数8】

【0106】
この目的のために、2つの連続的なフェーズが実現される。
第1のフェーズにおいては、ブロックサイズY′iがダウンリンクの場合と同様に「静的に」判定される。このフェーズのステップは、図3と同じ参照番号にそれぞれ100を加えた番号で表わされる。したがって、これはXi→Y′iのマッピングである。
【0107】
第2のフェーズにおいて、NJSELおよびY′iの値に対応するYiの値が、式(1)を満たすように「動的に」判定される。したがって、これは、(Y′1、Y′2、…、Y′k)→(Y1、Y2、…、Yk)のマッピングである。
【0108】
ステップ400から408を含む第1のフェーズは、単に、式:Y′i=SQ(i)・Xiによって規定される。
【0109】
次に、JSELが、ステップ410において以下の式(7)によって規定される。
【0110】
【数9】

【0111】
言い換えれば、もしN1≦N2…≦Nrの場合には、伝送を可能にする最小の最大ペイロードが選択される。
【0112】
その後、ステップ412において、以下によって最終サイズの集合体の値に対応する整数Z0、Z1、…、Zkが規定される。
【0113】
【数10】

【0114】
最後に、ステップ414においてYiが、
i=Zi−Zi-1
によって簡単に計算される。
【0115】
このように、最終サイズ(Yi)の計算における丸め誤差は集約されないことが理解されるであろう。したがって、データブロックの数kにかかわらず、次の2つの丸め操作のみが実行される:
iが付された集合体のサイズの値に対する第1の丸め操作、および
i-1が付された先の集合体のサイズの値に対する第2の丸め操作。
【0116】
求められる対(Xi、Yi)が、ステップ416において最終的に得られる。
要約すれば、アップリンクにおいては、アルゴリズムは実質的に以下の7つのステップを含む。
【0117】
【数11】

【0118】
最後に、本明細書中においては、サービスの質の概念をトランスポートチャネルのサービスの質として、すなわち、レベル1からより高次のレベルによって提供されるサービスの質として規定したが、その目的がレートのマッチングを判定することにあることを考えると、インタリーブおよび多重化チェーンの底部によってチャネルエンコーダに対して提供されるサービスの質について述べる方がより正確であろうということを理解されたい。
【0119】
以上に述べた実施例は、本発明の範囲を限定する意図を含むものではなく、したがって、それに対してその概念から離れることなく種々の変形を行なうことが(いずれにせよ)可能である。特に、パラメータの対{Eq、Pq}を判定するステップは、サービスの質ごとにのみ行なわれるのではなく、1つかつ同じサービスの質についてコード化されたビットのクラスごとにも行なわれ得るものであると理解されたい。実際に、(特にターボコーディング等の)何らかのチャネル符号化においては、幾分パンクチャに敏感に反応するコード化ビットの種々のクラスが与えられることが思い起こされる。
【符号の説明】
【0120】
100 トランスポートチャネル、103A,103B 処理チェーン、110 チャネルの符号化、112 レートのマッチング、116 第1のインタリーバ、128 第2のインタリーバ、132 物理的チャネルのマッピング、302 整数パラメータLqを計算するステップ、304 パラメータLMAXを規定するステップ、306 整数Sqを規定するステップ、308 関係Xi→Yiを規定するステップ、310 サイズの対(Xi、Yi)の組を構築するステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランスポートチャネルによって搬送されるデータを無線で通信するフェーズを実行する複数のエンティティを含む、遠隔通信システムを構成する方法であって、前記複数のエンティティは少なくとも1つの移動局および少なくとも1つの基地局を含み、前記移動局の通信のフェーズは前記トランスポートチャネルの各々に特定的な複数の一連の処理手順を含み、前記複数の一連の処理手順の各々はレートマッチングステップを含み、
前記レートマッチングステップは、初期サイズの入力ブロックから最終サイズの出力ブロックへのビットのパンクチャリングまたは反復のアルゴリズムを実行し、
前記方法は、
前記移動局によって、前記複数の一連の処理手順の各々につき、前記レートマッチングステップによって得られる前記出力ブロックの前記最終サイズを、前記搬送されるデータのサービスの質に基づく判断基準に基づいて、前記入力ブロックの前記初期サイズの関数として計算するステップを含み、
前記関数は、前記移動局と前記基地局とにおいて同じ丸め込み誤差が生成され、かつ、前記移動局と前記基地局とで計算の結果が同じになる、関数であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記判断基準は、前記トランスポートチャネルによって搬送されるデータのサービスの質を特徴づける複数種類のパラメータに基づくことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関数は、床関数を用いることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記計算するステップは複数のサブステップを含み、前記床関数を最後のサブステップで用いる特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数種類のパラメータの少なくとも1つは、前記基地局から送信され前記移動局で受信されることを特徴とする、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記複数種類のパラメータの少なくとも1つは、整数値をとることを特徴とする、請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記処理手順は符号化処理を含み、前記入力ブロックは符号化後のデータブロックであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記移動局は、前記移動局が送信することのできる多重化フレームの最大負荷を前記基地局へ通知することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記移動局は、プロトコルの積み重ねからなる層状のモデルによってモデル化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−66206(P2013−66206A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247626(P2012−247626)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2010−158166(P2010−158166)の分割
【原出願日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】