説明

遮断弁装置

【課題】本発明は、燃料ガス中において発火要因とならない程度の電流値、および電圧値の範囲で可動できる遮断弁装置を提案する。
【解決手段】
本発明の遮断弁30は、回転軸45を回転させるモータ31と、回転軸45に形成したリードスクリュー46と、このリードスクリュー46と螺合するためのリードナット49を有し、回転軸45の回転に応じて軸方向に移動する、流路を塞ぐための弁体32とを備え、リードスクリュー46とリードナット49とが接触する接触面に乾性潤滑皮膜が形成されており、モータ31のインダクタンスに対して、該モータに印加する電流が燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ、弁体32を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲となるように、リードスクリュー46のねじ山のピッチ間隔が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路内を通過する燃料ガスの流量を計測する流量計測装置に備えられ該流路を遮断するための遮断弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスメータでは、ガスの適正かつ安全な使用態様を確保するために種々の保安機能が備えられている。特に、ガスメータでは、必要に応じて、ガスメータに内蔵された遮断弁によりガスを遮断することができるように構成されている。具体的には、ガスメータに内蔵されたマイクロコンピュータが、流量センサ、地震センサ、圧力センサ、ガス漏れ警報器等のセンシング結果に応じて、異常な状態にあると判断した場合、遮断弁によりガスを遮断する(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、比較的強い閉止力、復帰力を実現でき、非通電時は状態保持が可能なPM型ステッピングモータを駆動源とする遮断弁が注目されており、なかでもロータをガス流路内、ステータをガス流路外とする気密隔壁を持った遮断弁が注目されている。
【0004】
ところで、既に設置されているガスメータの中には上述した遮断弁を備えないものもある。そこで、このように遮断弁を備えないガスメータに対して、保安機能の面からのみならず、ガス料金不払い者に対するガス供給を停止するために遮断弁を設ける必要性が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−202259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガスメータの中にはガスの入口、流量計測部、出口に至る流路が独立して設けられておらず、入口から入ったガスが一旦、筐体内に解放された後、流量計測部に導入される様に構成されたガスメータがあり、このようなガスメータの入口近傍の内部に遮断弁を設ける場合、遮断弁全体がガスに曝されることとなる。つまり、遮断弁の弁体を弁座に対して移動させるために動作するモータにおいて電流が印加される部分(例えばステータ)までもがガス中に配置されることとなる。
【0007】
したがって、遮断弁は、電流が印可されるステータが流路外になる通常の使用形態以外に、遮断弁全体がガスに曝される形態でも使用することができる構成とすることが求められる。すなわち、ガスの発火を防ぐ点で安全性を確保できる構成とする必要がある。
【0008】
そこで、ガスの発火を防ぐように構成としては、遮断弁を稼動させるモータから火花がガス中に漏れないように全体をシーリングする構成が考えられる。しかしながら、このような構成の場合、シーリングするために新たな部材等を設けるなど、大きく構成を変更させた遮断弁を別途作成する必要がある。通常の使用形態で利用している遮断弁の構成を大きく変更させることなく遮断弁全体がガスに曝される形態でも利用できる方が製造コストの面で好適である。このため、大きな設計変更なくガスの発火を防ぎ安全性を確保できる遮断弁が求められている。
【0009】
さらにまた、ガスメータは、内蔵電池で動作しており、電池交換なしでガスメータの交換時期(最大20年間)まで動作し続ける必要がある。そこで、遮断弁は電池電圧で、かつ発火要因とならない電圧での動作が要求される。
【0010】
ここで特許文献1に開示された遮断弁を、既設のガスメータに取り付けた場合、印加される電流等が発火要因となる場合があるという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、料ガス中において発火要因とならない程度の電流値、および電圧値の範囲で可動できる遮断弁装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある形態に係る遮断弁装置は、上記した課題を解決するために、流路内を通過する燃料ガスの流量を計測する流量計測装置に備えられ、該流路を遮断するための遮断弁装置であって、回転軸を回転させるモータと、前記回転軸に形成した雄ねじ部と、前記雄ねじ部と螺合するための雌ねじ部を有し、前記回転軸の回転に応じて軸方向に移動する、前記流路を塞ぐための弁体とを備え、前記雄ねじ部と雌ねじ部とが接触する接触面に乾性潤滑皮膜が形成されており、前記モータのインダクタンスに対して、該モータに印可する電流が、燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ、前記弁体を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲となるように、前記雄ねじ部のねじ山のピッチ間隔が設定されている。
【0013】
ここで、乾性潤滑皮膜とは、潤滑性を有する固体により形成された膜である。潤滑性を有する固体としては、例えば、二硫化モリブデン、グラファイト、雲母、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、あるいは軟質金属が挙げられる。
【0014】
上記した構成によると、雄ねじ部と雌ねじ部とが接触する接触面に乾性潤滑皮膜が形成されているため、この接触面において生じる動摩擦係数を小さくすることができる。また、グリスやオイルなどは酸化などの経年劣化により粘度が増して潤滑性が低下するといった不具合の懸念があるが、潤滑皮膜が乾性であるため、摩擦抵抗を経年劣化することなく小さくする。
【0015】
また、雄ねじ部のねじ山のピッチ間隔が、モータに印加する電流と該モータのインダクタンスとの関係が燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ、弁体を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲となるように設定されている。
【0016】
ここで、モータに印加する電流および電圧、該モータのインダクタンスとの関係が燃料ガス中で爆発を起こさない範囲としては、例えば、IEC60079−11:1999, Electrical apparatus for explosive gas atmospheres - Part 11:Intrinsic safety “i”、あるいは日本工業規格等の本質安全防爆の規格を利用することができる。
【0017】
なお、本質安全防爆とは、正常時及び事故時に発生する火花や高温部によりガスが発火しないことが、公的機関において試験や確認された規格である。つまり、遮断弁の中の回路自身が、ガス(爆発性雰囲気)の環境で爆発を起こす能力がない機器に適用される規格である。
【0018】
また、弁体を移動させるための推力と、雄ねじ部のねじ山のピッチ間隔と、動摩擦係数と、モータトルクとは以下の関係にある。すなわち、ピッチ間隔と動摩擦係数とをそれぞれ小さくするとモータのトルクを下げても弁体を移動させるための推力は一定のまま維持することができる。つまり、ピッチ間隔と動摩擦係数とをそれぞれ小さくすることで、モータに印加する電流(および電圧)が小さくなっても弁体を移動させるための推力を維持することができる。
【0019】
このように、前記ピッチ間隔を適切に設定することでモータに印加する電流および電圧を小さくすることができる。このため、本発明に係る遮断弁装置は、モータに印加する電流および電圧を燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内とすることができる。
【0020】
よって、本発明に係る遮断弁装置は、燃料ガス中において発火要因とならない程度の電流値、および電圧値の範囲で可動できるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明の他の形態に係る遮断弁装置は、上記した構成において、前記モータのインダクタンスの値は、5から50mHであり、前記燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ前記弁体を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲となる前記モータに印加する電流の最大値の範囲は、80から250mAであることが好ましい。
【0022】
また、本発明の他の形態に係る遮断弁装置は、上記した構成において、前記ピッチの間隔は、0.3から1mmの範囲で設定されることが好ましい。
【0023】
また、本発明の他の形態に係る遮断弁装置は、流路内を通過する燃料ガスの流量を計測する流量計測装置に備えられ、該流路を遮断するための遮断弁装置であって、回転軸を回転させるモータと、前記回転軸に形成した雄ねじ部と、前記雄ねじ部と螺合するための雌ねじ部を有し、前記回転軸の回転に応じて軸方向に移動する、前記流路を塞ぐための弁体とを備え、前記雄ねじ部と雌ねじ部とが接触する接触面に乾性潤滑皮膜が形成されており、 前記モータのインダクタンスの範囲が5から50mHであり、かつモータの内部抵抗の抵抗値の範囲が8から15Ωであって、前記インダクタンスの範囲、および抵抗値の範囲から、燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ、前記弁体を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲として前記モータに印加する電流の最大値の範囲を、80から250mAに設定するとともに、前記雄ねじ部のねじ山のピッチ間隔が0.3から1mmの範囲に設定されている。
【0024】
上記した構成によると、モータのインダクタンスの範囲が5から50mHであり、内部抵抗の抵抗値の範囲が8から15Ωであるとき、このモータに印可する電流の最大値の範囲を、80から250mAに設定し、雄ねじ部のねじ山のピッチ間隔が0.3から1mmの範囲に設定する構成である。このため、遮断弁装置は、燃料ガス中において発火要因とならない程度の電流値、電圧値、およびインダクタンスの範囲で可動できるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明の他の形態に係る遮断弁装置は、上記した構成において、前記乾性潤滑皮膜は、前記接触面における雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との間に形成される間隙部よりも小さい粒径のフッ素樹脂から形成されていることが好ましい。
【0026】
また、本発明の他の形態に係る遮断弁装置は、上記した構成において、前記モータは、ステッピングモータであって、前記モータにパルス状電流を印加する電流印加手段と、前記電流印加手段によって印加するパルス状電流のパルス数とその周波数を変更して、前記モータの回転速度を変更する変更手段とを備えるように構成されていてもよい。
【0027】
上記した構成によると、電流印可手段と変更手段とを備えるため、パルス状電流のパルス数とその周波数とを変更してモータに印可することができる。そして、モータの回転速度を変更することができる。
【0028】
ここで、ステッピングモータは、回転速度が遅いとモータトルクが大きくなり、逆に回転速度が速くなるとモータトルクが小さくなる特性がある。このため、本発明に係る遮断弁装置は、モータの回転速度を自在に変更させることができるため、回転速度の制御により推力をコントロールすることができる。
【0029】
したがって、本発明に係る遮断弁装置は、燃料ガス中において発火要因とならない程度の電流値、電圧値、およびインダクタンスの範囲で弁体を移動させるための推力をコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る遮断弁装置は以上に説明したように構成され、燃料ガス中において発火要因とならない程度の電流値、および電圧値の範囲で可動できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るガス計測装置の要部構成の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示すガス計測装置が備える遮断弁の開弁状態の一例を示す断面図である。
【図3】本実施の形態に係るガス計測装置の検定方式の概略の一例を示す図である。
【図4】リードスクリューのねじ山をつる巻き線で示した図であって、ねじリード角度を説明するための図である。
【図5】IEC60079−11の規格において定められたグループIIに属する誘導性回路におけるインダクタンスと最小点火電流との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態を示すものであり、ガス計測装置の要部構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
【0033】
(ガス計測装置)
まず、図1、2を参照して本実施の形態に係るガス計測装置(流量計測装置)1の構成について説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係るガス計測装置1の要部構成の一例を示す概略図である。図2は、図1に示すガス計測装置1が備える遮断弁の開弁状態の一例を示す断面図である。
【0035】
本実施の形態に係るガス計測装置1は、燃料ガスを供給するためのガス配管の途中に設置されて、運用時(使用時)には、ガス使用量としてガス流量の積算値を算出するものである。また、ガス流量異常を検出して異常警報を出力したり、ガス流路の遮断を行ったりすることができる。
【0036】
ガス計測装置1は図1に示すように、入口流路2、遮断部3、出口流路4、膜式流量計測部5、計測装置制御部6、無線アンテナ7、および電池8を備えてなる構成である。なお、ここでガスは、入口流路2からガス計測装置1内部に入って、膜式流量計測部5と連通している出口流路4からガス計測装置1の外部に流出する。
【0037】
入口流路2は、需要者に供給するガスをガス計測装置1内部に流入させるための円筒状の管であって、図1に示すようにその端部に遮断部3が設けられている。
【0038】
遮断部3は、無線により外部から受信した指示に応じて、入口流路2を塞ぎ、ガスの流れを遮断する機構である。この遮断部3は、入口流路2の下流側の端部に着脱自在に取り付けられている。また、遮断部3は、図2に示すように、入口流路2の内側に形成された、断面がO形の環型をした弁座50と、該弁座50の開口51を塞ぐことで入口流路2内のガスの流れを遮断する遮断弁(遮断弁装置)30とを備えている。
【0039】
遮断弁30は、弁座50の開口51よりも入口流路2の上流側に位置し、この開口51と対向する位置に配置される。そして、遮断弁30は、計測装置制御部6からの制御指示に基づき、入口流路2を塞ぐように構成されている。この遮断弁30は、入口流路2に着脱可能となっている。また、遮断弁30の動力源としてステッピングモータが利用されている。なお、遮断弁30の詳細な構成と、その動作については後述する。
【0040】
出口流路4は、需要者に供給するガスをガス計測装置1からその外部に導くための円筒状の管であって、図1に示すように下流側の端部で膜式流量計測部10と接続され、上流側の端部がガス計測装置1の外部へとつながっている。
【0041】
膜式流量計測部5は、ガス計測装置1内部におけるガスの流量を計測するものである。図1では特に図示しないが、膜式流量計測部5の内部は、可動式の膜で仕切られている2つの計量室A,B、クランク、およびバルブで構成されている。そして、バルブの移動によりガスの充填および排出を計量室AおよびBで交互に繰り返し、これらの計量室A,Bの容積と動作回数からガスの流量を計測する。このような膜式ガスメータの計量原理は公知の技術であるため詳細な原理説明は省略する。
【0042】
計測装置制御部6は、ガス計測装置1の各種制御を行うものであり、機能ブロックとして、計測処理部61、遮断指示部62、および無線部63を備えてなる構成である。計測装置制御部6は、電池8から印可される電力により駆動する。
【0043】
計測処理部61は、膜式流量計測部5において計測されたガスの流量の計測結果に係る各種処理を行うものである。具体的には、計測処理部61は、計測したガスの流量を不図示のメモリに記録したり、不図示のメモリに記録した流量を不図示の表示部などに出力したりする。
【0044】
遮断指示部62は、無線部63から受信した通知に応じて、遮断部3における遮断弁30に対して弁体を閉じるように指示するものである。
【0045】
無線部63は、無線アンテナ7を通じて、外部にある無線機と通信を確立するものである。外部の無線機から入口流路2を閉じる旨の指示を受信すると、その指示を遮断指示部62に通知する。
【0046】
以上のように、本実施の形態に係るガス計測装置1は、膜式流量計測部5によりガス流量を計測できる。また、外部からの指示により、遮断弁30は入口流路2を塞ぐことができる。このため、入口流路2を流れるガスを遮断することができるため、ガスが漏れたり、ガスが発火したりするなどの事故を防止することができる。
【0047】
ところで、本実施の形態に係る遮断部3は、ガス計測装置1に予め内蔵されているものではなく後で取り付けたものである。このため、遮断弁30において電流が印加される部材(例えば、ステータ34)を含めて遮断弁30全体がガスに曝される。それゆえ、遮断弁30に印加する電流および電圧を、発火要因とならない程度の電流値および電圧値として本質安全防爆で規定されている範囲となるようにする必要がある。また、モータ31のインダクタンスも本質安全防爆で規定されている範囲となるようにする。なお、本質安全防爆とは、正常時及び事故時に発生する火花や高温部によりガスに点火しないことが、公的機関において試験や確認された規格である。具体的には、欧州規格のIEC60079−11:1999, Electrical apparatus for explosive gas atmospheres - Part 11:Intrinsic safety “i”、またこの規格に基づき作成した日本工業規格がある。
【0048】
さらにまた、ガス計測装置1は、内蔵電池で動作しており、電池交換なしでガスメータの交換時期(最大20年間)まで動作し続ける必要がある。そこで、遮断弁30は低消費電力で動作可能なものとなる必要がある。
【0049】
(遮断弁の構成)
以下において、上記した本質安全防爆の規格に適合し、低消費電力で動作可能な構成となる遮断弁30の詳細な構成について図2から図4を参照して説明する。
【0050】
遮断弁30は、図2に示すように、モータ31と、該モータ31により駆動されてガスの流れを遮断する弁体32とを備える。さらにまた、遮断弁30は、モータ31と弁体32との間に、遮断弁30を入口流路2の側壁に取り付ける際に利用するフランジ部36、およびモータ31側から弁座50側に向かって弁体32を付勢するスプリング35も備える。
【0051】
モータ31は、弁体32を可動させるための動力源であり、パルス状電流の入力によって一定角度ずつ回転するステッピングモータである。モータ31は、図2に示すように、ロータ33、ステータ34を備える。
【0052】
ロータ33は、軸受け40、円管状で外周を分極着磁された永久磁石44、金属性の回転軸45、およびリードスクリュー(雄ねじ部)46を備える。
【0053】
回転軸45は、弁体32に向かって永久磁石44を貫通するように配されており、その一端にリードスクリュー46が軸受け40を介して回転自在に支持されている。
【0054】
回転軸45およびその端部に設けられたリードスクリュー46の表面には、乾性潤滑皮膜37を塗布して摩擦抵抗を低減させる等の表面処理が施されている。ここで、乾性潤滑皮膜37とは、潤滑性を有する固体により形成された膜である。潤滑性を有する固体としては、例えば、二硫化モリブデン、グラファイト、雲母、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、あるいは軟質金属が挙げられる。本実施の形態に係る遮断弁30では、粒径が4ミクロン程度のフッ素樹脂からなる乾性潤滑皮膜37が塗布される。
【0055】
なお、この乾性潤滑皮膜37は、上述したようにリードスクリュー46だけに塗布するのではなく、該リードスクリュー46と螺合する、弁体32に形成されたリードナット(雌ねじ部)49に塗布されていてもよい。リードスクリュー46とリードナット49とが摺動する接触面に乾性潤滑皮膜37が形成されていればよい。
【0056】
また上述のように摩擦抵抗を下げるためには、本実施形態に係る乾性潤滑皮膜37ではなくグリスなどの潤滑剤も考えられるが、以下の理由により本実施形態では乾性潤滑皮膜を利用する。すなわち、本実施の形態に係る遮断弁30は、通常では全く動作することなく放置されている。これは、異常状態となるような事態の発生頻度が少ないからである。しかしながら、長期間放置されていた状態であっても、異常状態を検知した場合は、適切に遮断弁30は動作する必要がある。そこで、長期間の放置により固着する可能性のあるグリスなどの液状の潤滑剤より、上述したような乾性潤滑皮膜37の方が好適なのである。
【0057】
また、ねじとなるリードスクリュー46は、上述のように金属で構成されており、一方、雌ねじとなるリードナット49が形成されている弁シート保持部48は、後述するが、合成樹脂から構成されている。つまり、リードスクリュー46とリードナット49とは線膨張係数が異なる材料で構成されており、温度変化時に伴う長さ変化の割合の違いから両者の摺動部分がロックしてしまう可能性がある。
【0058】
そこで、温度変化時にロックして動かなくなることを防止するために、リードスクリュー46を構成する材質とリードナット49を構成する材質とが、遮断弁30の用途として通常想定される材料の範囲でいかなる組合せであってもロックしないように、図3(a)に示す最小隙間(間隙)が設定されている。そして、本実施の形態に係る乾性潤滑皮膜37として、フッ素樹脂を用いる場合、フッ素樹脂の粒径がこの最小隙間よりも小さくなるもの(具体的には4ミクロン以下のもの)を採用する。図3(a)、(b)は、本実施の形態に係る遮断弁30が備えるリードスクリュー46とリードナット49との螺合状態を模式的に示す図である。この図3(a)、(b)では、説明の便宜上、リードスクリュー46とリードナット49とが螺合している部分の一部を拡大し、模式的に示している。また、図3(b)では、リードスクリュー46とリードナット49との間隙に乾性潤滑皮膜37が塗布された状態の一例を示す。
【0059】
ステータ34は、ロータ33の外周に配され、該ロータ33と相互作用して回転モーメントを発生させる固定子である。ステータ34は、コイル41、外電磁ヨーク42、および内電磁ヨーク43を備える。
【0060】
コイル41は、糸巻き状のコイルボビンに導線が巻線された励磁コイルである。ステータ34では、外電磁ヨーク42と内電磁ヨーク43とがコイル41に周設されている。すなわち、コイル41を挟み込むような配置で、ステータ34の外側に外電磁ヨーク42が、ステータ34の内側に内電磁ヨーク43が設けられている。
【0061】
弁体32は、弁シート47、弁シート保持部48を備える。この弁体32は、特に図示しないが、リードスクリュー46の回転とともに自身も一緒に回転してしまわないように回転防止手段を備えている。すなわち、モータ31と弁体32との間には回転軸45を中心に放射状に突出したフランジ部36が設けられており、このフランジ部36には複数の突起部(不図示)が形成されている。一方、弁体32には、この突起部と係合して、回転軸45を中心とする回転方向に弁体32が回転できないようにするスリット状の回転防止手段が形成されている。このため、弁体32は、回転軸45の回転に伴いリードスクリュー46が回転すると、回転することなく回転軸45(リードスクリュー46)の軸方向に移動することができる。
【0062】
弁シート47は、モータ31により弁体32が弁座50に向かって移動したとき、弁座50の開口51を塞ぎガスの流れを遮断するための弁である。弁シート47は、合成ゴム等の可撓性を有する材質から構成される。弁シート47は、弁シート保持部48の、モータ31が配される側とは反対側の端部、すなわち、弁座50が設けられている側の端部に設けられる。
【0063】
弁シート保持部48は、モータ31と接合し、弁シート47を保持するものであり、自己潤滑性を有する合成樹脂により構成される。より具体的には、弁シート保持部48は、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、カーボングラファイト、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤が付与された合成樹脂により構成される。弁シート保持部48は、その内部にリードナット49が形成されており、このリードナット49とモータ31のリードスクリュー46とが螺合することで弁体32をモータ31に取り付けることができる。なお、弁体32は、スプリング35によって弁座50側に付勢された状態でリードスクリュー46の先端部分に取り付けられている。
【0064】
(遮断弁の動作)
上述した構成を有する遮断弁30の開閉動作について説明する。なお、遮断弁30によって入口流路2が塞がれ、ガスの流れが遮断された状態を閉弁状態、入口流路2が開放されており、ガスの流れが遮断されていな状態を開弁状態と称するものとする。
【0065】
遮断弁30の駆動機構は、回転軸45の端部に支持されているリードスクリュー46と弁シート保持部48に形成されたリードナット49とを螺合させることで実現できる構造であり、モータ31の回転トルクをそのまま弁体32の推力として使用できる構成となっている。
【0066】
ここで、無線により外部から入口流路2の遮断指示を受信した場合、計測装置制御部6からの制御指示に応じて、電池8からステータ34に電流が印加される。すなわち、電池8からステータ34の各コイル41に位相差を持ったパルス状電流が印加され、ロータ33を正回転させる。このロータ33の回転によりリードスクリュー46が正方向に回転する。これにより弁体32がモータ31側から弁座50側に前進し、弁シート47の周端部が弁座50に当接する。そして、開口51を弁シート47で塞ぎ、これにより、入口流路2においてガスの流れを遮断することができる。すなわち、遮断弁30は閉弁状態となる。
【0067】
なお、正方向の回転とは、上述したように弁体32をモータ31側から弁座50側へ前進させるロータ33の回転であり、具体的には、遮断弁30から弁座50に向かってみた場合、時計周りとは逆の回転である。
【0068】
また、遮断弁30が閉弁状態になり、通電が停止されると、遮断弁30では、ロータ33はディテントトルクによって静止しており、また弁体32は弁座50にスプリング35により付勢され、この閉弁状態を保持する。
【0069】
ところで、計測装置制御部6が、無線により外部からの復帰指示を受信した場合、遮断弁30に対して開弁状態となるように制御している。
【0070】
すなわち、計測装置制御部6からの制御指示に応じて、電池から遮断弁30のステータ34が備える各コイル41に位相差をもったパルス状電流が印加される。そして、ロータ33を逆回転させる。このロータ33の回転によりリードスクリュー46が逆方向に回転する。これにより弁体32が弁座50側からモータ31側に移動して、弁座50の開口部を開く。その後、計測装置制御部6からの指示に応じて電池からの通電が停止される。このように通電が停止された場合であっても、ロータ33はディテントトルクのため静止し遮断弁30は開弁状態を維持する。
【0071】
なお、計測装置制御部6は、各コイル41に印加するパルス状電流におけるパルス数とその周波数を決定し、ロータ33の回転速度、回転角度を制御している。すなわち、計測装置制御部6により、パルス状電流のコイル41への印加を指示する電流印加手段と、印加するパルス状電流のパルス数およびその周波数を変更する変更手段とを実現することができる。
【0072】
ところで、推力は、モータ31の回転により弁体32を弁座50に向かう方向、もしくは弁座50からモータ31に向かう方向におしすすめる力である。なお、後者の方が、ガスの流れる方向に逆らって弁体32を移動させるため、推力は大きくなる。
【0073】
推力(F)は以下数(1)に示すように表すことができる。なお、数(1)では、モータ31のモータトルク(T)、リードスクリュー46のねじリード(L)、ねじ山角度(α)、および、ねじリード角度(β)とする。
【0074】
F=T・2π・η/L・・・(1)
なお、
η=(cos(α/2) − μtanβ)/(cos(α/2) − μcotβ)・・・(2)
ここで、μは動摩擦係数を示す。
【0075】
上述した式において、ねじリード(L)は、ねじを1回転させた時の軸方向の移動量であり、ねじ山角度(α)は、リードスクリュー46に形成されているねじ山の角度である。すなわち、リードスクリュー46の軸線を含んだ断面形状において測った隣り合う2つのフランクがなす角度である。ねじリード角度(β)は、例えば、リードスクリュー46を平行ねじとした場合、図4に示すように、ねじ山のつる巻き線と、その上の一点を通るねじの軸に直角な平面とがなす角度である。ねじは、図4に示すように、ごくゆるい傾きを持った三角形の紙を円筒に巻きつけたもの(つる巻き線)と想定することができる。図4は、リードスクリューのねじ山をつる巻き線で示した図であって、ねじリード角度(β)を説明するための図である。
【0076】
ここで、数式(1)、(2)に示す関係より、ねじリード(L)、動摩擦係数(μ)それぞれの値を小さくすると推力(F)が一定でもモータトルク(T)を小さくすることができることがわかる。また、このように推力(F)が一定で、モータトルク(T)を小さくすることができるため、結果としてモータ31の出力(=電流×電圧)を小さくすることができる。
【0077】
例えば、リードスクリュー46をM3規格のねじであるとしたとき、ねじ山角度(α)は60°、リードスクリュー46の回転軸の直径は3mm、ねじリード(L)は0.5となるため、βは3°となる。ここで、例えば、μを0.2とすると、ηは0.18となり、μ=0.1とするとηは0.31となる。このことから動摩擦係数(μ)が小さい方がηの値が大きくなる。また、ηが大きくなれば、数式(1)よりトルク(T)が一定でも推力(F)を大きくすることができる。つまり、推力(F)が一定であればモータトルク(T)を小さくすることができる。
【0078】
つまり、数式(1)をTについて書き換えると以下数式(3)となり、
T=F×L/(2π・η)・・・(3)
この数式(3)から、推力(F)が一定のとき、ねじリード(L)が小さくなればモータトルク(T)が小さくなることが分かる。
【0079】
そこで、本実施の形態に係る遮断弁30では、リードスクリュー46のねじリード(L)の長さ、すなわち、ピッチの長さを、通常使用されている遮断弁30のリードスクリュー46のねじリード(L)の長さよりも小さくする。さらにまた、乾性潤滑皮膜37を塗布することで動摩擦係数(μ)を下げる。このようにして、モータトルク(T)を下げる、つまり、モータ31に印加する電流および電圧を下げる構成である。
【0080】
具体的には、通常、使用されている遮断弁のリードスクリューのねじリード(L)が2mm、動摩擦係数が0.14のところを、本実施の形態に係る遮断弁30は、ねじリード(L)を0.5mm、動摩擦係数を0.04とする。この場合、通常使用されている遮断弁のモータトルクを約25パーセントの大きさまで下げても推力(F)は変化しない。つまり、本実施の形態に係る遮断弁30では、ねじリード(L)を小さくし、動摩擦係数(μ)を小さくすることで、より小さなモータトルクでモータトルクを下げる前と同様な推力(F)を得ることができる。
【0081】
したがって、遮断弁30のモータ31に印加する電流および電圧の大きさを、通常、印加する電流および電圧の大きさから、質安全防爆の規格に適合する範囲まで下げることができる。さらに電池電源の電圧1.5V以下であっても、弁体32を移動させ閉弁状態とすることができる。
【0082】
ここで、本質安全防爆の規格(IEC60079-11)では、例えば、遮断弁30のモータ31のような誘導性回路を有する機器では、図5に示すようにインダクタンスと最小点火電流の関係が定められている。図5は、IEC60079−11の規格において定められたグループIIに属する誘導性回路におけるインダクタンスと最小点火電流との関係を示すグラフである。図5は回路試験電圧を24Vとした場合の、誘導性回路におけるインダクタンスと最小点火電流との関係を示す。この図5において、括弧内に示すエネルギーレベル(例えば(320μJ)・・・)は、曲線のエネルギー一定部分を表している。なお、図5では、曲線IIA(320μJ)の左側の領域が規格により安全であると定められている安全領域となる。ただし実際には、1.5倍の安全率を考慮するため、安全領域は図5の曲線IIA(320μJ)の左側の領域よりもさらに小さい領域となる。
【0083】
ところで、通常、本実施の形態に係るガス計測装置1のようなガス計測装置が備える遮断弁30に利用するステッピングモータのインダクタンスの範囲は5から50mHである。そこで、図5に示すインダクタンスと最小点火電流との関係から、インダクタンスの範囲が5から50mHである場合、本質安全防爆の規格内となる電流の最大値は、1.5倍の安全率を考慮すると80から250mAとなる。すなわち、5mHであれば最大250mAまで、50mHの場合は、最大80mAまで可能となる。
【0084】
また、通常、本実施の形態に係るガス計測装置1のようなガス計測装置が備える遮断弁30に利用するステッピングモータの内部抵抗の抵抗値は、8から15Ωである。本質安全防爆の規格内となる電流の値が80から250mA程度であるため、電圧は0.64から3.75Vの範囲となる。ただし、本実施の形態に係るガス計測装置1の電源は動作電圧が1.5Vの電池である。このため、実際にモータ31に印可できる電圧は、0.64から1.5Vの範囲となる。
【0085】
このように、遮断弁30に利用するステッピングモータのインダクタンスに対して、本質安全防爆の規格内となる電流量が決まってくる。ただし、従来の遮断弁に印可していた電流量が本質安全防爆の規格を満たすような範囲に制限されると、モータトルク(T)が低下する。
【0086】
しかしながら、本実施形態に係るガス計測装置1では、上述のように遮断弁30におけるねじリード(L)と動摩擦係数(μ)とを小さくなるように構成することで、従来の遮断弁が有する推力を維持することができるのである。
【0087】
したがって、本実施の形態に係るガス計測装置1では、ねじリード(L)を2mmから0.3〜1mmとすることで、モータ31の推力(F)を維持したまま、上記した本質安全防爆の規格を満たすようなインダクタンス、電流、および電圧の範囲とすることができる。
【0088】
なお、ねじリード(L)の範囲は、リードスクリュー46の製作のし易さを考慮すると、0.5mmとすることが好ましい。つまり、リードスクリュー46の加工上、リードスクリュー46の径(ねじ径)は2〜4mm程度となる。ここで、ねじ径を3mmとし、ねじリード(L)を0.5mmとするとM3規格のねじと合致するため、製造が容易となる。
【0089】
また、モータ31のようなステッピングモータは、回転速度が遅いとモータトルクが大きくなり、逆に回転速度が速くなるとモータトルクが小さくなる特性がある。ここで、ステッピングモータは、回転速度を自在に変化させることができるため、回転速度の制御により推力をコントロールすることができる。そこで、上述したように、ねじリード(L)と動摩擦係数(μ)の値を小さくするとともに、計測装置制御部6がモータ31の回転速度を下げて印加する電流、電圧、インダクタンスを、本質安全防爆で規定された範囲に適合するように調整する構成としてもよい。なお、本質安全防爆で規定された範囲は、ここでは上述したようにモータ31のインダクタンスの範囲が5から50mHであるのに対して、電流の最大値の範囲が80〜250mAとなる。また、モータ31の内部抵抗の抵抗値から電圧の最大値の範囲が0・64〜1・5Vの範囲となる。
【0090】
また、本実施の形態に係るリードスクリュー46では、本質安全防爆の基準を満たすようにねじリード(L)を0.3〜1mmの範囲で設定する構成である。特に加工上の観点から、上述したようにねじ径を3mmとし、ねじリード(L)を0.5mm、リード角度(β)を約3°とすることが好適である。
【0091】
また、上述したように、遮断弁30では、リードスクリュー46とリードナット49とを螺合する構成である。ここで、リードナット49のねじ山が多くなればなるほど、リードスクリュー46とリードナット49の接触面が大きくなり締結強度は増すが、リードスクリュー46の回転運動に対する抵抗が大きくなる。
【0092】
したがって、抵抗を小さくするためには、リードナット49に形成するねじ山の数を少なくする方がよいが、数が少なくなればなるほどリードスクリュー46とリードナット49と接触面が小さくなり締結強度が小さくなる。そこで、本実施形態では、上述した接触面において必要な締結強度を維持しつつ、できるだけねじ山の数を少なくするという観点からねじ山を4つ形成するように構成されている。
【0093】
このように、ねじ山を4つとすることで、リードスクリュー46とリードナット49との締結強度を維持しつつ、リードスクリュー46の回転運動に対する抵抗をできるだけ抑制することができる。
【0094】
なお、遮断弁30が有するモータとしてステッピングモータを例に上げ説明したが、利用するモータはこのステッピングモータに限定されるものではない。つまり、上述した、図5に示すインダクタンスと電流との関係はステッピングモータ以外の、例えば、DCモータなどの他の種類のモータにも適用できるものである。そして、上記した数式(1)、(2)の関係もステッピングモータだけではなく他の種類のモータにも適用できる。
【0095】
以下に本実施形態の変形例を説明する。
【0096】
(変形例1)
また、本実施の形態に係るガス計測装置1は、膜式のガス計測メータであったが、図6に示すような構成を有する超音波式のガス計測装置100にも適用できる。なお、図6は本発明の他の実施形態を示すものであり、ガス計測装置100の要部構成の一例を示す概略図である。
【0097】
すなわち、ガス計測装置100は図6に示すように、図1に示すガス計測装置1が備える膜式流量計測部5の代わりに計測流路103、第一超音波センサ104、および第二超音波センサ105を備えた超音波式流量計測部102を備える構成である。
【0098】
超音波式流量計測部102が備える計測流路103は、入口流路2からガス計測装置100内部に流入したガスを外部に流出させるために導くための流路である。この計測流路103には、図6に示すようにその上流側から順に第一超音波センサ104、および第二超音波センサ105が設けられている。
【0099】
第一超音波センサ104および第二超音波センサ105は、相互に超音波を送受信するものである。第一超音波センサ104は、計測流路103における上流側の側壁に、第二超音波センサ105は計測流路103における下流側の側壁に設けられている。計測装置制御部6からの駆動信号によって第一超音波センサ104から出力した超音波は、計測流路103内を下流側に向かって斜め下方向に進み、第二超音波センサ105に向かって伝搬する。一方、計測装置制御部6からの駆動信号によって第二超音波センサ105から出力した超音波は、計測流路103内を上流側に向かって斜め上方向に進み、第一超音波センサ104に向かって伝搬する。そして、それぞれの超音波の到達時間を、計測装置制御部106が計測し、到達時間の差から計測流路103を流れるガスの流速を計算する。
【0100】
計測装置制御部6は、ガス計測装置100の各種制御を行うものであり、計測処理部61の機能のみ、図1に示すガス計測装置1の計測処理部61と異なる。すなわち、ガス計測装置1が備える計測処理部61は、膜式流量計測部5において計測したガスの流量をメモリに記録したり、表示部などに出力したりするものであった。これに対して、図6に示すガス計測装置100が備える計測処理部61は、以下のように流速を求め、流量を計算する機能を有する点で異なる。
【0101】
すなわち、計測処理部61は、第一超音波センサ104から出力された超音波が第二超音波センサ105に到達するまでの時間と、第二超音波センサ105から出力された超音波が第一超音波センサ104に到達するまでの時間との差から流速を求める。そして、計測処理部61は求めた流速に計測流路103の断面積、補正係数をかけあわせて流量を求める。
【0102】
上述した構成の超音波式のガス計測装置においても、入口流路2と計測流路103との間の空きスペースを利用して、該入口流路2の下流側の端部に遮断部3を設けることができる。
【0103】
本実施の形態に係るガス計測装置1および本実施形態の変形例1に係るガス計測装置100では、無線による外部からの指示に応じて遮断弁30により入口流路2を遮断する構成であったがこれに限定されるものではない。
【0104】
例えば、計測流路103中に異常検知センサを備え、このセンサのセンシング結果から異常の発生有無を計測装置制御部6が判定し、この判定結果に応じて遮断弁30により入口流路2を遮断する構成としてもよい。この異常とは、例えば、ガス流量異常や、地震などが挙げられる。ガス流量異常を検知する場合、この異常検知センサは、計測流路103内を流れるガスの圧力を測定する圧力センサによって実現できる。また、地震を検知する場合は、この異常検知センサは、地震の揺れを検知する地震センサによって実現できる。
【0105】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の遮断弁装置は、流路内を通過する燃料ガスの流量を計測する流量計測装置内に備え、必要に応じて該流路を遮断する際に有用である。
【符号の説明】
【0107】
1 ガス計測装置(流量計測装置)
2 入口流路
3 遮断部
4 出口流路
5 膜式流量計測部
6 計測装置制御部
8 電池
10 膜式流量計測部
30 遮断弁(遮断弁装置)
31 モータ
32 弁体
33 ロータ
34 ステータ
35 スプリング
36 フランジ部
37 乾性潤滑皮膜
41 コイル
42 外電磁ヨーク
43 内電磁ヨーク
44 永久磁石
45 回転軸
46 リードスクリュー(雄ねじ部)
47 弁シート
48 弁シート保持部
49 リードナット(雌ねじ部)
50 弁座
51 開口
61 計測処理部
62 遮断指示部
63 無線部
100 ガス計測装置(流量計測装置)
102 超音波式流量計測部
103 計測流路
104 第一超音波センサ
105 第二超音波センサ
106 計測装置制御部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を通過する燃料ガスの流量を計測する流量計測装置に備えられ、該流路を遮断するための遮断弁装置であって、
回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸に形成した雄ねじ部と、
前記雄ねじ部と螺合するための雌ねじ部を有し、前記回転軸の回転に応じて軸方向に移動する、前記流路を塞ぐための弁体とを備え、
前記雄ねじ部と雌ねじ部とが接触する接触面に乾性潤滑皮膜が形成されており、
前記モータのインダクタンスに対して、該モータに印可する電流が、燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ、前記弁体を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲となるように、前記雄ねじ部のねじ山のピッチ間隔が設定されている遮断弁装置。
【請求項2】
前記モータのインダクタンスの値は、5から50mHであり、
前記燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ前記弁体を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲となる前記モータに印加する電流の最大値の範囲は、80から250mAである請求項1に記載の遮断弁装置。
【請求項3】
前記ピッチの間隔は、0.3から1mmの範囲で設定される請求項2に記載の遮断弁装置。
【請求項4】
流路内を通過する燃料ガスの流量を計測する流量計測装置に備えられ、該流路を遮断するための遮断弁装置であって、
回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸に形成した雄ねじ部と、
前記雄ねじ部と螺合するための雌ねじ部を有し、前記回転軸の回転に応じて軸方向に移動する、前記流路を塞ぐための弁体とを備え、
前記雄ねじ部と雌ねじ部とが接触する接触面に乾性潤滑皮膜が形成されており、
前記モータのインダクタンスの範囲が5から50mHであり、かつモータの内部抵抗の抵抗値の範囲が8から15Ωであって、
前記インダクタンスの範囲、および抵抗値の範囲から、燃料ガス中で爆発を起こさない範囲内でかつ、前記弁体を移動させるために必要な推力を得ることができる範囲として前記モータに印加する電流の最大値の範囲を、80から250mAに設定するとともに、前記雄ねじ部のねじ山のピッチ間隔が0.3から1mmの範囲に設定されている遮断弁装置。
【請求項5】
前記乾性潤滑皮膜は、前記乾性潤滑皮膜は、前記接触面における雄ねじのねじ山と雌ねじのねじ山との間に形成される間隙よりも小さい粒径のフッ素樹脂から形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の遮断弁装置。
【請求項6】
前記モータは、ステッピングモータであって、
前記モータにパルス状電流を印加する電流印加手段と、
前記電流印加手段によって印加するパルス状電流のパルス数とその周波数を変更して、前記モータの回転速度を変更する変更手段とを備える請求項1から5のいずれか1項に記載の遮断弁装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−167686(P2012−167686A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26490(P2011−26490)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】