説明

遮熱材

【課題】対向する本体部の端部同士が所定の重ね代で重ね合わされるとともに位置決めが容易であり、かつ、遮熱材の連結部分の前後における起立部の高さが同一に揃えられて収まりがよく、設置の作業性が向上すること。
【解決手段】並行して延びる垂木間に、垂木の延在方向Yに沿って連設される遮熱材1であって、垂木間に配置される板状の本体部6と、本体部6の垂木側の端部から立設され、該垂木の側面に連結される一対の起立部8と、を備え、一対の起立部8のうち、一方の起立部8Aにおける延在方向Yに沿う一端部と、他方の起立部8Bにおける延在方向Yに沿う他端部とに、一対の切り欠き部23が形成され、一方の起立部8Aにおける延在方向Yに沿う他端部と本体部6との境界に沿う部分と、他方の起立部8Bにおける延在方向Yに沿う一端部と本体部6との境界に沿う部分とに、一対のスリット24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野地板の室内側の面に設置された垂木同士の間に配設されて、屋根からの輻射熱を反射する遮熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物(家屋)の屋根の小屋裏側(室内側)には野地板が設けられており、この野地板の室内側の面には、複数の垂木が並行して延びるように設置される。これら垂木同士の間には、パネル状の遮熱材が垂木の延在方向に沿って連設されているとともに、これら遮熱材と野地板との間に空間(通気層)が画成されて、遮熱効率を高めるようにしている。
【0003】
この種の遮熱材として、例えば、下記特許文献1、2に記載されたものが知られている。
特許文献1の遮熱材は、垂木間に配置される板状の本体部と、該本体部の垂木側の端部から立設され、該垂木の側面に連結される一対の起立部と、を備えている。そして、垂木の延在方向に沿って連設された隣り合う遮熱材同士は、互いの前記延在方向の端部同士を重ね合わせて設置され、これにより、遮熱材同士の連結部分における通気層の遮蔽性が確保されている。
また、特許文献2の遮熱材は、一対の起立部における前記延在方向の一端部近傍がそれぞれ切り欠かれており、これら切り欠き部分同士の間に位置する本体部における前記延在方向の一端部が、隣接する他の遮熱材の本体部における前記延在方向の他端部に重ね合わされるようになっている。この場合、隣り合う遮熱材同士は、対向する起立部同士を重ね合わせる必要はなく、これら起立部の端面同士を当接させることによって、互いの本体部の端部同士が所定の重ね代で重ね合わされることとなり、遮熱材の前記延在方向の位置決めが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−213077号公報
【特許文献2】実用新案登録第3137988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の遮熱材においては、下記の課題を有していた。
すなわち、特許文献1のように、垂木の延在方向に隣り合う遮熱材の端部同士を単に重ね合わせた場合、これら遮熱材のうち少なくともいずれかにおける一対の起立部間の距離を縮めるか拡げるかする必要が生じて、遮熱材同士の連結作業が困難となり、無理に連結していずれかの本体部に撓みが生じた場合には、見栄えが悪くなるばかりか通気層の遮蔽性が確保できなくなる。
【0006】
また、この種の遮熱材は、垂木の側面に対してタッカーの芯や釘等を用いて連結(固定)されるが、特許文献1においては、隣接する遮熱材の起立部同士を重ねて設置するため、起立部2枚を貫通して垂木に固定しなければならず、作業性が悪かった。
また、隣接する遮熱材同士の重ね代を大きくとりすぎた場合には、その分遮熱材の使用量が増大して、コストが嵩んでしまうこととなる。
【0007】
また、この種の遮熱材は、剛性を確保するために厚さが数mm程度に比較的厚く設定されるが、前述のように本体部の端部同士が重ね合わされることで、起立部の上端(起立部における本端部側とは反対の先端)の高さが、遮熱材同士の連結部分の前後で凹凸し揃わなくなり(特許文献1の図3を参照)、収まりが悪く設置しづらかった。また、このように野地板の室内側の面と起立部の上端との間に隙間が生じることは、通気層の遮蔽性を鑑みて好ましくはない。
【0008】
一方、特許文献2のように、一対の起立部における前記延在方向の一端部近傍がそれぞれ切り欠かれた構成によれば、前記延在方向に隣り合う遮熱材の対向する起立部の端面同士を当接させることにより、互いの本体部の端部同士(一端部と他端部)が所定の重ね代で重ね合わされるので、遮熱材の前記延在方向の位置決めは容易となる。しかしながらその一方で、これら遮熱材のうち、一の遮熱材において切り欠き部分の間に位置する本体部の一端部と、他の遮蔽材において切り欠き部分の間には位置していない本体部の他端部とを対応させるように、遮熱材の設置方向を考慮しなければならず、設置の作業性がよいとは言えなかった。
尚、特許文献2においても、前述の特許文献1と同様に、遮蔽材同士の連結部分の前後で起立部の上端の高さが揃わず、収まりが悪く設置しづらかった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、垂木の延在方向に沿って連設される遮熱材同士において、対向する本体部の端部同士が所定の重ね代で重ね合わされるとともに位置決めが容易であり、かつ、これら遮熱材の連結部分の前後における起立部の高さが同一に揃えられて収まりがよく、設置の作業性が向上する遮蔽材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、並行して延びる垂木間に、前記垂木の延在方向に沿って連設される遮熱材であって、前記垂木間に配置される板状の本体部と、前記本体部の前記垂木側の端部から立設され、該垂木の側面に連結される一対の起立部と、を備え、前記一対の起立部のうち、一方の起立部における前記延在方向に沿う一端部と、他方の起立部における前記延在方向に沿う他端部とに、一対の切り欠き部が形成され、前記一方の起立部における前記延在方向に沿う他端部と前記本体部との境界に沿う部分と、前記他方の起立部における前記延在方向に沿う一端部と前記本体部との境界に沿う部分とに、一対のスリットが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る遮熱材によれば、垂木の延在方向に沿う一端部側においては、一方の起立部における一端部が切り欠かれて切り欠き部が形成され、他方の起立部における一端部と本体部との境界に沿う部分にスリットが形成されて、これら切り欠き部とスリットとの間に位置する本体部における一端部は、その幅方向(並行する垂木同士が対向する方向)の両側が起立部に拘束されない状態とされる。また、垂木の延在方向に沿う他端部側においては、他方の起立部における他端部が切り欠かれて切り欠き部が形成され、一方の起立部における他端部と本体部との境界に沿う部分にスリットが形成されて、これら切り欠き部とスリットとの間に位置する本体部における他端部は、その幅方向の両側が起立部に拘束されない状態とされる。
すなわち、この遮熱材は、本体部の前記延在方向に沿う両端部における前記幅方向の両側が起立部に拘束されないように形成されており、かつ、一対の切り欠き部同士及び一対のスリット同士が、本体部の中心回りに回転対称となるように配置されているのである。
【0012】
このような構成とされた遮熱材を複数用いて、並行する垂木同士の間に前記延在方向に沿って連設する際には、該延在方向に隣り合う遮熱材同士において、対向する本体部の端部(一端部と他端部)同士を重ね合わせつつ、対向する一方の起立部の端面同士、及び、対向する他方の起立部の端面同士をそれぞれ当接させる。これにより、対向する本体部の端部同士が所定の重ね代で重ね合わされることとなり、遮熱材の前記延在方向の位置決めが容易に行える。またこのように、隣接する遮熱材の本体部同士の重ね代が所定の値に決まることから、従来のように、重ね代を大きくとりすぎて遮熱材の使用量が増大するようなことが防止され、コスト削減の効果を奏する。
【0013】
また、隣り合う遮熱材において対向する起立部同士を重ね合わせずに、これら起立部の端面同士を当接させていることから、従来のように、これら遮熱材のうちいずれかにおける一対の起立部間の距離を縮めたり拡げたりする必要がなく、遮熱材同士の連結作業が簡便に行える。またこれによれば、本体部に対して前記幅方向に無理な力が加えられることがなく、該本体部が意図せず変形するようなことが防止され、設置の見栄えがよくなるとともに、野地板の室内側の面と遮熱材の本体部との間の空間(通気層)における外部空間(室内)に対する遮蔽性が確保される。さらに、隣り合う遮蔽材において対向する起立部同士を重ね合わせないことから、従来のように、これら遮蔽材同士の連結部分において起立部が2重とされることはなく、よってタッカーの芯や釘等を用いて該起立部を垂木の側面に連結(固定)する際の作業性が向上する。
また、この遮熱材は、前述のように回転対称の形状を有しているので、設置方向を考慮する必要がなく、作業性が大幅に高められている。
【0014】
また、隣り合う遮熱材において本体部の端部同士を接近させ重ね合わせる際、前述したように、これら本体部の端部は前記幅方向の両側が起立部に拘束されていないので、互いに摺接しつつ重なりやすい向き(厚さ方向に互いに離間する向き)に撓まされることとなる。すなわち、起立部とは独立して本体部の端部のみが撓まされるので、該起立部の上端(起立部における本体部側とは反対の先端)の高さが、遮蔽材同士の連結部分の前後で同一に揃えられて収まりがよくなり、設置の作業性がより高められるのである。またこれにより、野地板の室内側の面と起立部の上端との間に隙間が生じるようなことが防止されて、通気層の遮蔽性が高められている。
【0015】
また、本発明に係る遮熱材において、前記スリットの前記延在方向に沿う長さL1は、前記切り欠き部の前記延在方向に沿う長さL2よりも大きく設定され、前記切り欠き部には、前記起立部と前記本体部との境界に沿って延びる補助スリットが開口されていることとしてもよい。
【0016】
この場合、前記延在方向に連設される遮熱材において、本体部の端部同士の重ね代を抑制しつつ、これら本体部の端部において起立部に拘束されない領域を前記延在方向に比較的長く確保できるとともに、該本体部の端部の撓み量を確保できるので、前述した効果がより確実に得られることになる。
【0017】
詳しくは、本体部の端部同士の重ね代は、切り欠き部の長さL2に等しくなることから、例えば、単に切り欠き部の長さL2及びスリットの長さL1を増大させることにより該本体部の端部における撓み量を確保しようとした場合、前記重ね代が増大するとともに、その分遮熱材の使用量が増大してコストが嵩むこととなる。一方、本発明によれば、前記重ね代を抑制して遮熱材の使用量を抑えつつも、本体部の端部における撓み量は確保され、よって遮熱材同士の連結部分の前後で起立部の上端が確実に面一とされ、設置の作業性が大幅に向上する。
【0018】
また、本発明に係る遮熱材において、前記切り欠き部の前記延在方向に沿う長さL2と前記補助スリットの前記延在方向に沿う長さL3との和(L2+L3)、及び、前記スリットの前記延在方向に沿う長さL1が、それぞれ前記長さL2に対して2〜3倍の範囲内に設定されることとしてもよい。
【0019】
この場合、本体部の端部における撓み量が十分に確保されつつも、剛性が確保できなくなるようなことが防止される。詳しくは、例えば、切り欠き部の長さL2と補助スリットの長さL3との和(L2+L3)、及び、スリットの長さL1が、それぞれ切り欠き部の長さL2に対して2倍未満に設定された場合、本体部の端部における撓み量が十分に確保できず、遮熱材の連結部分の前後で起立部の上端が面一とならない虞がある。また、前記(L2+L3)及び前記L1が、それぞれ前記L2に対して3倍を超えて設定された場合、遮熱材の本体部の端部における剛性が十分に確保できなくなる虞がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る遮熱材によれば、垂木の延在方向に沿って連設される遮熱材同士において、対向する本体部の端部同士が所定の重ね代で重ね合わされるとともに位置決めが容易であり、かつ、これら遮熱材の連結部分の前後における起立部の高さが同一に揃えられて収まりがよく、設置の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る遮熱材の設置状態を説明する側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る遮熱材を複数用いて、野地板側(屋根側)から垂木間に連設する状態(作業)を説明する斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る遮熱材となる遮熱基材を示す平面図である。
【図4】図3のB部を拡大して示す図である。
【図5】図3のC部を拡大して示す図である。
【図6】図3のD部を拡大して示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る遮熱材の内部構造を説明する正断面図である。
【図8】図2のE部を拡大して示す図である。
【図9】図8の遮熱材同士の連結部分を示す側断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る遮熱材を垂木間に設置する方法を説明する要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る遮熱材1は、野地板2の室内3側の面に設置された垂木4同士の間に配設されて、屋根5からの輻射熱を反射させるものである。垂木4は、野地板2の室内3側の面に複数配設されているとともに、互いに並行して延びている。尚、図2は遮熱材1を野地板2側から見た斜視図であり、図2において、両矢印Xは、並行する垂木4同士が対向する方向(すなわち遮熱材1の幅方向、以下「幅方向」と省略)を示しており、両矢印Yは、垂木4の延在方向を示しており、両矢印Zは、これら幅方向X及び延在方向Yに垂直な高さ方向を示している。図2に示すように、遮熱材1は、垂木4の延在方向Yに沿って複数連設される。
【0023】
遮熱材1は、対向する垂木4の側面4a同士を連結させるように垂木4間に配置される板状の本体部6と、本体部6における垂木4の側面4a側の端部から立設され、例えばタッカーの芯や釘等の連結手段7(図10参照)により該垂木4の側面4aに連結される一対の起立部8と、を備えている。図示の例では、本体部6は矩形板状に形成され、起立部8は帯板状に形成されている。
【0024】
また、起立部8は、本体部6から野地板2側へ向けて高さ方向Zに沿って立ち上げられており、該起立部8における野地板2側の先端(起立部8における本体部6側とは反対の先端、以下「起立部8の上端」と省略)は、野地板2の室内3側を向く面に当接されている(図10参照)。起立部8は、本体部6の幅方向Xの両端部にそれぞれ設けられているとともに、該本体部6の長手方向(垂木4の延在方向Y)に沿って延びており、該本体部6の面方向に対して垂直に立ち上げられている。
【0025】
この遮熱材1は、図3に示される矩形板状の遮熱基材Aの幅方向Xの両端部を高さ方向Zに沿うように折り曲げることにより、前述の形状とされている。すなわち、遮熱基材Aにおける幅方向Xの両端部がそれぞれ起立部8とされ、これら起立部8、8同士に挟まれた領域が本体部6とされている。また、図10に示すように、遮熱材1を垂木4、4間に設置する際は、本体部6に対して垂直に立ち上げられた起立部8の幅方向Xの外側を向く面が、垂木4の側面4aに当接される。尚、本実施形態では、遮熱基材A(遮熱材1)の厚さが、例えば5mm程度とされている。
【0026】
図3において、遮熱材1(遮熱基材A)の延在方向Yに沿う両端部同士の間に位置する部位には、本体部6と起立部8との境界に沿うように延びるとともにその延在方向Yの両端が閉じられた中間スリット9と、中間スリット9から本体部6側へ向けて延びるとともに、互いに対向する一対の中間補助スリット10、10とが形成されている。中間スリット9は、本体部6の幅方向Xの両端にそれぞれ複数形成されている。また、各中間スリット9に対して、一対の中間補助スリット10、10がそれぞれ形成されている。
【0027】
また、本体部6の延在方向Yに沿う両端部同士の間に位置する部位には、幅方向Xに沿って延びる通気スリット22が、互いに間隔をあけて複数形成されている。これら中間スリット9、中間補助スリット10及び通気スリット22は、遮熱材1を厚さ方向(高さ方向Z)に貫通して形成されている。
【0028】
また、図3において、中間スリット9及び一対の中間補助スリット10、10に囲まれるように形成された弾性変形可能な舌片11は、本体部6の孔部12を開閉可能に閉塞している。図3、図6において、舌片11は略矩形状をなしており、この舌片11に閉塞される孔部12は該舌片11と同一形状の略矩形穴状とされている。
尚、図示の例では、中間スリット9は、中間補助スリット10よりも舌片11とは反対側へ向けて切り込まれている。
【0029】
また、特に図示しないが、遮熱基材Aには、本体部6と起立部8との境界に沿って凹溝状の折り溝が形成されていてもよい。このような折り溝が形成されることによって、遮熱基材Aの起立部8を本体部6に対して容易に立ち上げることができる。
【0030】
そして、この遮熱材1は、一対の起立部8のうち、幅方向Xの一方側Xa(図3における左側)に位置する一方の起立部8Aにおいて、その延在方向Yに沿う一端側Ya(図3における下側)の端部(一端部)と、幅方向Xの他方側Xb(図3における右側)に位置する他方の起立部8Bにおいて、その延在方向Yに沿う他端側Yb(図3における上側)の端部(他端部)とに、一対の切り欠き部23、23が形成されている。
また、一方の起立部8Aにおける延在方向Yに沿う他端側Ybの端部(他端部)と本体部6との境界に沿う部分と、他方の起立部8Bにおける延在方向Yに沿う一端側Yaの端部(一端部)と本体部6との境界に沿う部分とに、一対のスリット24、24が形成されている。
【0031】
図4に示すように、切り欠き部23は、遮熱基材Aの隅部が矩形状に切り欠かれるようにして形成されている。切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2、すなわち該切り欠き部23が形成された起立部8の延在方向Yを向く端面28から本体部6の延在方向Yを向く端面26までの距離は、本実施形態では、例えば15mm程度とされている。
【0032】
また、図4において、切り欠き部23には、起立部8と本体部6との境界に沿って延びる補助スリット25が開口されている。補助スリット25の延在方向Yに沿う長さL3、すなわち端面28からその閉じられた他端部(又は一端部)までの距離は、本実施形態では、例えば25mm程度とされている。
【0033】
また、図5に示すように、スリット24は、その延在方向Yに沿う一端部側(又は他端部側)が開口されており、他端部側(又は一端部側)が閉じられた形状とされている。また、スリット24に隣接する起立部8において延在方向Yを向く端面29と、該スリット24を挟んでこの起立部8に隣り合う本体部6の端面26とは互いに面一とされている。スリット24の延在方向Yに沿う長さL1、すなわち端面26、29から該スリット24における閉じられた他端部(又は一端部)までの距離は、切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2よりも大きく設定されており、本実施形態では、例えばこの長さL1が40mm程度に設定されている。
【0034】
詳しくは、切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2と補助スリット25の延在方向Yに沿う長さL3との和(L2+L3)、及び、スリット24の延在方向Yに沿う長さL1が、それぞれ切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2に対して、2〜3倍の範囲内に設定されている。尚、本実施形態においては、前記(L2+L3)と前記L1とが、互いに同一の値(40mm程度)に設定されている。
【0035】
また、スリット24及び補助スリット25は、遮熱材1を厚さ方向(高さ方向Z)に貫通して形成されている。
尚、本実施形態の切り欠き部23、スリット24、補助スリット25及び中間スリット9は、例えば打ち抜き型等を用いて遮熱基材Aを打ち抜くことにより形成されており、これらのうち各スリットにおいては、その溝幅が視認できる程度(本実施形態では4mm程度)とされている。また、本体部6に位置する中間補助スリット10及び通気スリット22は、例えばプレス型等を用いて切れ目を入れることにより形成されており、その溝幅が0mm程度とされている。
【0036】
また、この遮熱材1は、本体部6の中央(中心)回りに180°回転対称(2回対称)に形成されており、これにより、一対の切り欠き部23同士及び一対のスリット24同士が、前記中心回りに回転対称に配置されている。すなわち、この遮熱材1は、延在方向Yに沿う中心線に関して、及び、幅方向Xに沿う中心線に関して、それぞれ非線対称に形成されている。
【0037】
また、図7に示すように、遮熱材1は、例えばPP等の樹脂材料からなる多孔板状の基体15と、基体15の表面に形成された金属蒸着層16と、金属蒸着層16の表面に形成された保護コーティング層17と、を備えている。
【0038】
基体15は、押し出し成形等により作製されており、該基体15には、断面矩形の複数の孔15aが形成されている。これら孔15aは、遮熱材1(遮熱基材A)の長手方向(延在方向Y)に沿って互いに並行して延びている。
【0039】
また、金属蒸着層16は、例えばアルミニウムからなり、この金属蒸着層16上に保護コーティング層17が設けられて一体とされた遮熱フィルムが、基体15上に張り合わされることにより、遮熱材1が作製されている。
そして、遮熱材1を垂木4、4間に設置する際は、遮熱フィルム側が野地板2側を向くように配設することで、遮熱効率が高められている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る遮熱材1によれば、垂木4の延在方向Yに沿う一端部側Yaにおいては、一方の起立部8Aにおける一端部が切り欠かれて切り欠き部23が形成され、他方の起立部8Bにおける一端部と本体部6との境界に沿う部分にスリット24が形成されて、これら切り欠き部23とスリット24との間に位置する本体部6における一端部は、その幅方向Xの両側が起立部8に拘束されない状態とされる(図3参照)。また、垂木4の延在方向Yに沿う他端部側Ybにおいては、他方の起立部8Bにおける他端部が切り欠かれて切り欠き部23が形成され、一方の起立部8Aにおける他端部と本体部6との境界に沿う部分にスリット24が形成されて、これら切り欠き部23とスリット24との間に位置する本体部6における他端部は、その幅方向Xの両側が起立部8に拘束されない状態とされる。
すなわち、この遮熱材1は、本体部6の延在方向Yに沿う両端部における幅方向Xの両側が起立部8に拘束されないように形成されており、かつ、一対の切り欠き部23同士及び一対のスリット24同士が、本体部6の中心回りに回転対称となるように配置されている。
【0041】
このような構成とされた遮熱材1を複数用いて、並行する垂木4同士の間に延在方向Yに沿って連設する際には、図2、図8及び図9に示すように、延在方向Yに隣り合う遮熱材1同士において、対向する本体部6の端部(一端部と他端部)同士を重ね合わせつつ、対向する一方の起立部8Aの端面28、29同士、及び、対向する他方の起立部8Bの端面28、29同士をそれぞれ当接させる。これにより、対向する本体部6の端部同士が所定の重ね代L2で重ね合わされることとなり、遮熱材1の延在方向Yの位置決めが容易に行える。またこのように、隣接する遮熱材1の本体部6同士の重ね代L2が所定の値に決まることから、従来のように、重ね代L2を大きくとりすぎて遮熱材1の使用量が増大するようなことが防止され、コスト削減の効果を奏する。
【0042】
また、隣り合う遮熱材1において対向する起立部8同士を重ね合わせずに、これら起立部8の端面28、29同士を当接させていることから、従来のように、これら遮熱材1のうちいずれかにおける一対の起立部8A、8B間の距離を縮めたり拡げたりする必要がなく、遮熱材1同士の連結作業が簡便に行える。またこれによれば、本体部6に対して幅方向Xに無理な力が加えられることがなく、該本体部6が意図せず変形するようなことが防止され、設置の見栄えがよくなるとともに、野地板2の室内側の面と遮熱材1の本体部6との間の空間(通気層)21における外部空間(室内)3に対する遮蔽性が確保される。さらに、隣り合う遮蔽材1において対向する起立部8同士を重ね合わせないことから、従来のように、これら遮蔽材1同士の連結部分において起立部8が2重とされることはなく、よってタッカーの芯や釘等の連結手段7を用いて該起立部8を垂木4の側面4aに連結(固定)する際の作業性が向上する。
また、この遮熱材1は、前述のように回転対称の形状を有しているので、設置方向を考慮する必要がなく、作業性が大幅に高められている。
【0043】
また、隣り合う遮熱材1において本体部6の端部同士を接近させ重ね合わせる際、前述したように、これら本体部6の端部は幅方向Xの両側が起立部8に拘束されていないので、互いに摺接しつつ重なりやすい向き(厚さ方向に互いに離間する向き)に撓まされることとなる。すなわち、起立部8とは独立して本体部6の端部のみが撓まされるので、該起立部8の上端の高さが、遮蔽材1同士の連結部分の前後(延在方向Yに沿う連結部分の両側)で同一に揃えられて収まりがよくなり、設置の作業性がより高められるのである。またこれにより、野地板2の室内側の面と起立部8の上端との間に隙間が生じるようなことが防止されて、通気層21の遮蔽性が高められている。
【0044】
また、本実施形態では、スリット24の延在方向Yに沿う長さL1が、切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2よりも大きく設定され、切り欠き部23には、起立部8と本体部6との境界に沿って本体部6の内側へ延びる補助スリット25が開口されている。これにより、延在方向Yに連設される遮熱材1において、本体部6の端部同士の重ね代L2を抑制しつつ、これら本体部6の端部において起立部8に拘束されない領域を延在方向Yに比較的長く確保できるとともに、該本体部6の端部の撓み量を確保できるので、前述した効果がより確実に得られることになる。
【0045】
詳しくは、本体部6の端部同士の重ね代L2は、切り欠き部23の延在方向Yの長さL2に等しくなることから、例えば、単に切り欠き部23の長さL2及びスリット24の長さL1を増大させることにより該本体部6の端部における撓み量を確保しようとした場合、重ね代L2が増大するとともに、その分遮熱材1の使用量が増大してコストが嵩むこととなる。一方、本実施形態によれば、重ね代L2を抑制して遮熱材1の使用量を抑えつつも、本体部6の端部における撓み量は確保され、よって遮熱材1同士の連結部分の前後で起立部8の上端が確実に面一とされ、設置の作業性が大幅に向上する。
【0046】
また、切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2と補助スリット25の延在方向Yに沿う長さL3との和(L2+L3)、及び、スリット24の延在方向Yに沿う長さL1が、それぞれ切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2に対して2〜3倍の範囲内に設定されている。これにより、本体部6の端部における撓み量が十分に確保されつつも、剛性が確保できなくなるようなことが防止される。詳しくは、例えば、切り欠き部23の長さL2と補助スリット25の長さL3との和(L2+L3)、及び、スリット24の長さL1が、それぞれ切り欠き部23の長さL2に対して2倍未満に設定された場合、本体部6の端部における撓み量が十分に確保できず、遮熱材1の連結部分の前後で起立部8の上端が面一とならない虞がある。また、前記(L2+L3)及び前記L1が、それぞれ前記L2に対して3倍を超えて設定された場合、遮熱材1の本体部6の端部における剛性が十分に確保できなくなる虞がある。
【0047】
また、図6に示すように、この遮熱材1には、中間スリット9と、該中間スリット9から本体部6側へ向けて延びる一対の中間補助スリット10、10とが形成されている。すなわち、中間補助スリット10は本体部6上に形成されており、これら中間補助スリット10、10及び中間スリット9に囲まれるように、弾性変形可能な舌片11が形成されている。詳しくは、舌片11の周囲のうち三方が中間スリット9及び中間補助スリット10、10で囲まれることにより、該舌片11は本体部6に連結される部位(ヒンジ部13)を支点に回動可能とされている。また、舌片11が回動して本体部6に開口される部位が孔部12とされており、舌片11は、この孔部12を開閉可能に閉塞している。このような構成により、下記の効果が得られる。
【0048】
すなわち、遮熱材1を垂木4、4間に設置する施工が、野地板2側(屋根5側)と室内3側の両側から行える。詳しくは、図2に示すように、野地板2側から起立部8を垂木4の側面4aに連結する際は、該起立部8が野地板2側の通気層21に露出しているので、タッカー等の工具先端を起立部8に押し当て、そのまま垂木4の側面4aに留めることができる。また、室内3側から起立部8を垂木4の側面4aに連結する際は、図10に2点鎖線で示すように、舌片11を野地板2側へ押し上げてヒンジ部13を支点に回動させるとともに孔部12を開口させ、この孔部12を通してタッカー等の工具先端を起立部8に押し当て、連結手段7を用いて該起立部8を垂木4の側面4aに留めることができる。
このように、遮熱材1を垂木4、4間に設置する作業が、野地板2側と室内3側の両側から行えるので、建物(家屋)の建築時・リフォーム時に係わらず、施工性が確保される。
【0049】
また、室内3側から起立部8を垂木4の側面4aに連結した場合、孔部12は、作業後に該孔部12からタッカー等の工具先端を引き抜く際、舌片11が弾性復元力で復元変形することにより自動的に閉塞されるようになっている。すなわち、起立部8を垂木4の側面4aに連結した後、特別な作業を必要とすることなく通気層21と室内3空間とを本体部6が確実に区画して、該通気層21の遮熱効率が高められている。
そして、下記に示すように、遮熱材1同士の連結部分についても、このような作用効果が同様に得られるのである。
【0050】
すなわち、本体部6の延在方向Yの両端部は、その幅方向Xの両側が起立部8に拘束されていないため、弾性変形可能とされているとともに、比較的自由に撓むことができる。従って、遮熱材1同士の連結部分近傍において、起立部8を室内3側から留める施工の場合には、本体部6の重ね代L2部分における幅方向Xの端部をタッカー等の工具先端で押し上げ、起立部8を室内3側に露出させることができる。このように起立部8が室内3側に露出したら、前述のように連結手段7で起立部8を留めればよい。
【0051】
また、図7において、遮熱材1の基体15には、該遮熱材1の長手方向(延在方向Y)に沿って延びる孔15aが複数形成されている。孔15aがこのように形成されることにより、隣り合う孔15a、15a同士の間に形成された壁部15bが長手方向に延在することとなり、遮熱材1の剛性が確保される。また、遮熱材1が複数の孔15aを有する中空構造とされているとともに、これら孔15aが長手方向に延びていることから、該遮熱材1の素材である遮熱基材Aにおいて、幅方向Xの外形を垂木4の側面4a同士の距離に対応して容易に調整でき、種々様々な要望に対応でき、施工性が向上する。
【0052】
また、本体部6には、該本体部6の厚さ方向に貫通して通気スリット22が複数形成されているので、室内3側(小屋裏側)の湿気がこれら通気スリット22を通過するとともに野地板2側(屋根5側)へ排出される。これにより、室内3側から本体部6の通気スリット22を通して野地板2と本体部6との間の通気層21に流入した湿気が、該通気層21を通じて棟(建物)から排出される。よって、前述した遮熱効率が高められつつも室内3の湿気が排出されて、より快適な室内3空間とすることができる。
【0053】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
例えば、前述の実施形態では、スリット24、補助スリット25及び中間スリット9は、打ち抜き型等により打ち抜かれて形成されているとしたが、この代わりに、プレス型等により切れ目を入れて形成されていてもよい。
【0055】
また、中間補助スリット10及び通気スリット22は、プレス型等により切れ目を入れて形成されているとしたが、この代わりに、打ち抜き型等により打ち抜かれて形成されていてもよい。ただし、本実施形態で説明したように、本体部6に配置される中間補助スリット10及び通気スリット22が、切れ目を入れることにより形成されることで、通気層21の遮蔽性がより高められることから好ましい。
【0056】
また、前述の実施形態では、スリット24の延在方向Yに沿う長さL1が、切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2よりも大きく設定され、切り欠き部23には、起立部8と本体部6との境界に沿って本体部6の内側へ延びる補助スリット25が開口されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、補助スリット25は形成されていなくてもよく、この場合、スリット24の延在方向Yに沿う長さL1は、切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2と同一に設定されていてもよく、或いは前記L2未満に設定されても構わない。
【0057】
また、切り欠き部23の延在方向Yに沿う長さL2と補助スリット25の延在方向Yに沿う長さL3との和(L2+L3)、及び、スリット24の延在方向Yに沿う長さL1が、それぞれ前記長さL2に対して2〜3倍の範囲内に設定されるとしたが、これらが前述の範囲外に設定されても構わない。
【符号の説明】
【0058】
1 遮熱材
4 垂木
4a 垂木の側面
6 本体部
8 起立部
8A 一方の起立部
8B 他方の起立部
23 切り欠き部
24 スリット
25 補助スリット
L1 スリットの延在方向Yに沿う長さ
L2 切り欠き部の延在方向Yに沿う長さ(本体部の端部同士の重ね代)
L3 補助スリットの延在方向Yに沿う長さ
Y 垂木の延在方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並行して延びる垂木間に、前記垂木の延在方向に沿って連設される遮熱材であって、
前記垂木間に配置される板状の本体部と、
前記本体部の前記垂木側の端部から立設され、該垂木の側面に連結される一対の起立部と、を備え、
前記一対の起立部のうち、一方の起立部における前記延在方向に沿う一端部と、他方の起立部における前記延在方向に沿う他端部とに、一対の切り欠き部が形成され、
前記一方の起立部における前記延在方向に沿う他端部と前記本体部との境界に沿う部分と、前記他方の起立部における前記延在方向に沿う一端部と前記本体部との境界に沿う部分とに、一対のスリットが形成されていることを特徴とする遮熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の遮熱材であって、
前記スリットの前記延在方向に沿う長さL1は、前記切り欠き部の前記延在方向に沿う長さL2よりも大きく設定され、
前記切り欠き部には、前記起立部と前記本体部との境界に沿って延びる補助スリットが開口されていることを特徴とする遮熱材。
【請求項3】
請求項2に記載の遮熱材であって、
前記切り欠き部の前記延在方向に沿う長さL2と前記補助スリットの前記延在方向に沿う長さL3との和(L2+L3)、及び、前記スリットの前記延在方向に沿う長さL1が、それぞれ前記長さL2に対して2〜3倍の範囲内に設定されることを特徴とする遮熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−41741(P2012−41741A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184114(P2010−184114)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】