説明

遷移金属を含有するCeAlO3ペロフスカイト

下記式(I)により表されるペロフスカイト:AA’(1−x)(1−y)B’3−δ[式中、AおよびA’は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Thを含むランタニド系列およびアクチニド系列の三価希土類元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、Bは、Sc、および、Al、Ga、Inを含むがそれらに限定されないIIIA族元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、B’は、遷移金属から選択されるが、Ni、Cu、Co、Fe、Mn、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Ag、Auに限定されない少なくとも一種の元素であり、x=0〜1、貴金属に対して0≦y≦0.2、貴金属以外の遷移金属に対して0≦y≦0.5、そして、δは、酸素欠損量を表す。]が、ここに開示されている。さらに、ペルフォスカイトの調製のための低温プロセスおよびその使用がここに開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の技術分野:]
本発明は、一般式AA’(1−x)(1−y)B’3−δによって表されるペロフスカイト(perovskite)型複合酸化物に関する。特に、本発明は、CeAlO族のペロフスカイトを含有する遷移金属に、そしてペロフスカイト型複合酸化物を含有する触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[背景と先行技術:]
ペロフスカイトは、結晶性セラミックス族のうちの大きな族のひとつであり、その名称は、その結晶質構造によりペロフスカイト(CaTiO)として知られているある特定の鉱物からとられており、サイズと原子価が大きく異なるカチオンを「A」および「B」とし、両者を接合するアニオンをXとすると、一般化学式ABXによって表される。ペロフスカイト材料は、さまざまな産業用途が見出されており、センサーや特定の種類の燃料電池内の触媒電極として使用される。
【0003】
水素は、化石燃料枯渇の筋書きにおいて最も魅力的な代替エネルギー源と考えられている。水素は、現在のところ、主にアンモニア製造工場用に、大規模生産がなされているが、小規模および家庭用の用途に改造しようとすると、技術上の課題は多い。この技術においては、まず炭化水素の水蒸気改質と部分酸化を行い、次いでCO濃度の低減と追加水素の生成に必要な水性ガスシフト反応のような中間浄化プロセスを行う。既存のプロセスは、家庭向け用途には導入できない大がかりな前処理を必要とする卑金属触媒を利用している。また、これらの触媒は、頻繁なオン−オフ工程によって急速に不活性化するものであるとともに、空気に触れると自然発火しうるものであって、そのような場合のために保証が付けられる。さらに、これらの触媒においては、貴金属および遷移金属は酸化物上に担持されるのであって、格子中に組み込まれるわけではない。
【0004】
米国特許出願公開(US)第2006182679号(発明の名称「希土類元素で修飾した酸化物担体を備える貴金属水性ガスシフト触媒(Precious Metal water-gas shift catalyst with oxide support modified with rare earth elements)」)は、希土類酸化物/アルミナ担体上に分散させた白金金属族を含有する触媒であって、その希土類酸化物がランタン(lanthanum)、セリウム(cerium)、ガドリニウム(gadolium)、プラセオジム(paraseodymium)、ネオジム(neodymium)等から選択されるものに関する。触媒は、その活性を増強するため、アルカリ金属化合物を前記修飾した無機酸化物担体に添加して含有させてもよい。触媒は、燃料電池に供給されるガス流中の水素を生成する際に、水性ガスシフト反応を導くことに使用される。もっとも、Pt添加・酸化セリウム修飾アルミナ担体は、水性ガスシフト反応の間、非常に不安定になることがわかっている。
【0005】
トーマス・スクリーン(Thomas Screen)による論文「白金族金属ペロフスカイト触媒(Platinum Group Metal Perovskite Catalysts)」、第51巻、第2号、2007年4月、87〜92頁(Volume 51, Issue 2, April 2007, Pages 87-92)、DOI(デジタルオブジェクト識別子)10.1595/147106707X192645は、パラジウム含有ペロフスカイトLaFe0.77Co0.17Pd0.06O3を、自触媒として、硝酸金属塩の共沈によって合成したものを開示している。
【0006】
欧州特許出願公開(EP)第0715879号(発明の名称「排ガス浄化用触媒およびその製造方法」)は、多孔質担体(好ましくはアルミナ)上に相互固溶状態の酸化セリウムまたは酸化セリウムと酸化ジルコニウムの固溶体を添加させたものを記載している。前記多孔質担体には、続いてPt、Pd、Rh等の貴金属が添加される。前記EP‘879号に開示されているところの触媒は、したがって、固溶体であって、ペルフォスカイトとして組織化されてはいない。さらに、混合酸化物上に担持されただけの触媒活性金属は、凝塊形成作用により不活性化しやすい。
【0007】
米国特許出願公開(US)第2007213208号には、式A(1−y)Pd3+δのペロフスカイト系が開示されている。ここで、‘A’は希土類元素およびアルカリ土類金属から選択された少なくとも一種の元素を表し、‘B’は(希土類元素およびPdを除く)遷移元素、AlおよびSiから選択された少なくとも一種の元素を表し、xは次の条件:1<xを満たす原子数比を表し、yは次の条件:0<y<=0.5を満たす原子数比を表し、δ[デルタdelta]は酸素過剰量を表す。
【0008】
より具体的にいえば、それは、ペロフスカイト型複合酸化物の化学量論的比率であるA:B:O=1:1:3に対して、Aサイトの構成元素が過剰となりうるようにすることによる酸素原子の余剰原子数比である。
【0009】
ペロフスカイト系は、具体的には、系のLaFeO(ABO)型に属し、発明者らは、La位置(A位置)においてさまざまな希土類元素およびアルカリ土類元素で置換しつつ、同時に‘B’位置において(Feを置き換えて)、Pdとともに、アルミニウム、シリコン、遷移金属類で置換することを試みた。また、前記ペロフスカイト型複合酸化物はその調製に空気中での熱処理を伴い、その結果、酸素を多く含む組成物が形成される。しかし、前記特許文献は、ペロフスカイト系において、Pt、Rh、Ru、Re、Ir等の貴金属で置換することについて言及するものではない。
【0010】
貴金属および遷移金属に関連する先行技術調査の結果、高表面積セリア上に担持された白金をベースにした酸化物系が良好な水性ガスシフト反応活性を示すが、この結果は白金の粒径に依存するものであり、温度に依存するものでもあることが明らかになっている。また、高温では、貴金属が焼結するので、表面積が減少し、ひいては活性の低減をもたらす。また、ペロフスカイト型酸化物系は酸素を多く含むので、還元条件下で格子の安定性が低下する。
【0011】
この課題に対しては、Pt−Reのようなバイメタル系の合金化と利用により対応がなされてきた。Reは、Ptナノ粒子のオンストリーム中の焼結を最少化することが報告されているとはいえ、これらのバイメタル触媒は、長期間にわたる操業や頻繁に繰り返される停止・開始操作を経て不活性化してしまう。
【0012】
したがって、前記の事情を考慮すると、ペロフスカイト構成組織材料をベースに、燃料処理装置用の安定した触媒を開発するニーズが残されている。
【0013】
セリアをベースにした担体は、WGS触媒の活性において重要な役割を果たしているので、原子空孔を形成するとともにWGS反応用に導入されるCe3+/Ce4+レドックス系を構成するためにアルミニウムイオンを白金で同形に置換したCeAlOペロフスカイトが試みられている。また、構造化された酸化物格子に金属イオンが組み込まれる場合には、凝集の可能性は非常に低いので、触媒の安定性と活性が向上する。この点も本発明の目的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[発明の目的:]
したがって、前記した事情を考慮し、本発明は、貴金属類を備えるCe−Al−O系であって、貴金属の焼結が防止されるものを提供することを目的とする。
【0015】
本発明の他の目的としては、高還元条件下で安定した格子網に貴金属の活性中心を構造的に組み込むことがあげられる。
【0016】
本発明の目的としてもう一つあげるとするなら、Ce−Al−Oに基づく系であって焼結されない遷移金属を備えたものを提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、安定した格子網に遷移金属の活性中心を構造的に組み込むことである。
【0018】
本発明の他の目的は、貴金属類を備えるCe−Al−O系であって、貴金属の焼結が防止されるものに対する低温処理プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[発明の概要:]
前記した状況を鑑み、本発明が開発された。
【0020】
したがって、本発明は、レドックス反応作用があって、高温を条件とする水素の発生および処理のステップを含む反応の触媒として有用なセリウムとともに、レドックス反応作用がない安定化元素を備える、ペロフスカイトを開示するものである。
【0021】
さらに、本発明は、A+3+3型のCeAlO3ペロフスカイトに関する。
【0022】
一実施形態において、本発明は、酸素欠損系における格子中に貴金属を挿入してなるペロフスカイトを記述する。したがって、CeAlO3系におけるアルミニウムイオン(Al3+)が白金イオン(Pt2+)で部分的に置換されて水性ガス(WGS)シフト反応用に導入される原子空孔を生成する。
【0023】
このように、ペロフスカイト型複合酸化物を含む触媒組成物であって、安定的な格子網を形成するために、一般式(I)により表されるものが提供される。
A’(1−x)(1−y)B’3−δ
ここで、AおよびA’は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、TbおよびDyから選択されたランタニド系列およびアクチニド系列の三価希土類元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、Bは、Scおよび、Al、GaおよびInに限定されることのないIIIA族元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、B’は、遷移金属から選択されるが、Ni、Cu、Co、Fe、Mn、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Ag、Auに限定されない、少なくとも一種の元素であり、x=0〜1、貴金属に対して0≦y≦0.2、貴金属以外の遷移金属に対して0≦y≦0.5、そして、δは、酸素欠損量を表す。
【0024】
他の側面において、本発明は、ペルフォスカイトの調製のための低温プロセスであって温度を≦750℃としたものを開示する。
【0025】
さらに、本発明のペルフォスカイトは、水素発生、水性ガスシフト反応、自己熱改質、水蒸気改質、CO改質、部分酸化などのための反応における触媒として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】不純物相のない構成組織の形成を示すCeAlOペロフスカイトに組み込まれた2および4wt%のRhおよびPtのXRDパターンである。
【図2】PtおよびRhを組み込んだペロフスカイトの場合における、2+の状態のPtおよび3+の状態のRhの存在を示すXPSグラフである。
【図3】さまざまな空間速度におけるCe1.0Al0.975Rh0.02Pt0.005触媒存在下でのメタンのATR。
【図4】Ce1.0Al0.975Rh0.02Pt0.005触媒使用のLPG転化。
【図5】y=0.02および0.05のペロフスカイト触媒を含有するPtのWGS。
【図6】PtCeAlO3−ペロフスカイト触媒存在下での水性ガスシフト活性への空間速度の影響。供給原料:H2:40%、N2:35%、CO:10%、CO2:15%、H2O:40%、温度350℃。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[発明の詳細な説明]
以下、本発明のさまざまな側面がより十全に理解し認識できるように、特定の好適かつ任意選択的な実施形態と関連づけて本発明を詳しく説明する。
【0028】
本明細書中にて説明しているように、「ペロフスカイト(Perovskite)」は、同じ構造をとる化合物の族の名称である。基本的な化学式はABOのパターンに従う。ここで、AおよびBはサイズと原子価の異なるカチオンである。
【0029】
したがって、本発明は、次の式(I)により表される新規なペロフスカイトを開示する:
A’(1―x)(1−y)B’3−δ
ここで、AおよびA’は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Thを含むランタニド系列およびアクチニド系列の三価希土類元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、Bは、Sc、および、Al、Ga、Inを含むがこれらに限定されないIIIA族元素、から選択された少なくとも一種の元素を表し、B’は、遷移金属から選択されるが、Ni、Cu、Co、Fe、Mn、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Ag、Auに限定されない少なくとも一種の元素であり、x=0〜1、貴金属に対して0≦y≦0.2、貴金属以外の遷移金属に対して0≦y≦0.5、そして、δは、酸素欠損量を表す。本発明のペロフスカイトは、下記、実施例5および6にて例示されているように、安定的な格子網を形成する。
【0030】
貴金属を含む遷移金属は、金属を担持する系よりもペロフスカイトの安定的な格子網に組み込まれるので、図1および2に見られるように、先行技術における遷移金属の焼結という難点を克服するものである。
【0031】
このように、一実施形態において、貴金属を含む遷移金属が還元条件下でペロフスカイトの安定的な格子網に組み込まれているので、ATR(autothermal reforming:自己熱改質)、WGS(water gas shift:水性ガスシフト)、乾式改質などに有用な酸素欠損材料が得られる。さらに、貴金属を格子構造に組み込むことで、金属の焼結が防止され、その高温下での使用が可能になり、触媒の不活性化の問題が克服される。
【0032】
PtおよびRhのような貴金属は、構造中に固定される(金属粒子の焼結、触媒不活性化を防止する)ので、そのイオンの形態において安定化しており、したがって高還元条件下で高い安定性を有する触媒が得られる。ペロフスカイト構造中の置換された貴金属(Pt、Rh、Au)は、少なくとも5%に達する。本発明のペロフスカイトの表面積は、文献でよく知られている窒素吸着法による測定で、20〜30m/gである。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明のペロフスカイトは、本明細書中で説明する低温プロセスにより調製される。
【0034】
したがって、ペロフスカイトは、温度を750℃以下とし、次のステップからなる低温クエン酸塩プロセスにより調製される:
a)硝酸セリウムおよび硝酸アルミニウムのモル比Ce:Al=1:1水溶液を、CeおよびAlのモル量をやや上回るクエン酸を添加してから60℃で2時間攪拌する。
b)ステップ(a)の溶液を攪拌しながら80℃まで加熱し、水を蒸発させて多孔質材料を得る。
c)このようにステップ(b)で得られた多孔質材料を200℃で2時間加熱し、有機物を分解する。
d)このようにステップ(c)で得られた材料を、空気中で3時間、500℃でか焼(calcining)し、前駆物質を形成する。
e)このようにステップ(d)で形成された前駆物質を、750℃以下の温度のHの流れ(4〜30mL/min)に5時間投入して還元し、CeAlOペロフスカイトを得る。
【0035】
貴金属/遷移金属の組み込みのために、貴金属/遷移金属の対応する塩を適切な比率でステップ(a)に記載した初期金属溶液混合物に添加し、CeAl1−yB’3−δを得る。
【0036】
本明細書に記載されているプロセスによって、本明細書の実施例1〜6に例示されているように、本発明のペロフスカイトに貴金属を含む他の遷移金属が組み込まれる。
【0037】
同様に低温プロセスである共沈プロセスにしたがって、各元素の塩(材料物質)を含有する混合塩水溶液を調製して当該各元素の前記化学量論的比率にした後で、そこに中和剤を添加することで共沈させ、得られた共沈物を乾燥させて熱処理にかける。
【0038】
本発明のペロフスカイトが、温度を750℃以下とし、低温共沈プロセスによって調製されることを以下に説明する:
(a)モル比1:1のセリウムとアルミニウムを、沈殿剤としてのKOH存在下、約80℃で同時に添加して勢いよく攪拌することによって共沈させ、ゲルを形成する。
(b)ステップ(a)で形成されたゲルのpHを約9〜10.5に調整し、ゲルを80℃で12時間エージングさせて沈殿物を得る。
(c)このようにステップ(b)で得られた沈殿物を、pH7.5になるまで水で洗浄する。
(d)ステップ(c)の沈殿物を100℃で約12時間乾燥し、空気中で3時間、500℃でか焼して前駆物質を形成する。
(e)形成した前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(4〜30mL/min)に5時間投入して還元し、CeAlOペロフスカイトを得る。
【0039】
貴金属/遷移金属の組み込みのために、貴金属/遷移金属の対応する塩を適切な比率でステップ(a)に記載した初期金属溶液混合物に添加し、CeAl1−yB’3−δを得る。
【0040】
中和剤の例としては、アンモニアや尿素、トリエチルアミンやピリジンなどのアミン類を含む有機塩基、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムや炭酸ナトリウムや炭酸カリウムや炭酸アンモニウムなどの無機塩基が挙げられる。中和剤は、混合塩水溶液に、そのpHを6〜約10の範囲に調整するために添加される。
【0041】
本発明のペロフカイトの調製のための750℃以下の温度で行われる熱水低温プロセスは以下の通りである:
(a)モル比1:1のセリウムとアルミニウムの水溶液をアンモニア溶液で共沈させ、ゲルを得る。
(b)ステップ(a)で形成されたゲルを、テフロン(登録商標)で裏打ちしたステンレス鋼のオートクレーブに移し、炉の中で200℃に加熱して沈殿物を得る。
(c)ステップ(b)の沈殿物を濾過して100℃で乾燥してから、空気中で、500℃でか焼して前駆物質を形成する。
(d)ステップ(c)で形成した前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(4mL/min)に5時間投入して還元し、CeAlOペロフスカイトを得る。
【0042】
貴金属/遷移金属の組み込みのために、貴金属/遷移金属の対応する塩を適切な比率でステップ(a)に記載した初期金属溶液混合物に添加し、CeAl1−yB’3−δを得る。
【0043】
このようなペロフスカイトは、水素製造において、そして、水性ガスシフト反応、水蒸気改質、自己熱改質、部分酸化、CO改質を含むがこれらに限定されない数多くの反応のための利用において、触媒として使用され、本発明の触媒の本明細書に記載したさまざまな反応への利用は、本明細書中に例示したような、LPG、メタン、エタノール、および、炭素数が8以下の低級炭化水素などを含む群から選択される燃料源に依存しない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のペロフスカイト型複合酸化物は、水蒸気改質やCO改質や自己熱改質を含む改質反応、水性ガスシフト反応、水素添加反応、水素化分解反応において、そして、燃料電池の電解質材料として、広く利用することができる。
【0045】
以下の実施例は、好ましい実施形態を含み、本発明の実施を例示するのに役立つであろう。なお、示されている詳細事項は、例示として、本発明の好ましい実施形態を例示的に説明することを目的とするものであることを理解されたい。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
CeAlOペロフスカイト
(a)硝酸セリウム(5.9g)、硝酸アルミニウム(5.1g)、およびクエン酸(7g)の水溶液を60℃で2時間攪拌した。
(b)溶液を攪拌しながら80℃まで昇温し、水を蒸発させて多孔質材料を得た。
(c)ステップ(b)で得た多孔質材料を200℃で2時間加熱して有機物を分解した後、該材料を空気中で3時間、500℃でか焼し、
(d)ステップ(c)で形成された前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(30mL/min)に5時間投入して還元し、CeAlOペロフスカイトを得た。
【0047】
[実施例2]
ロジウムを有するペロフスカイト
(e)硝酸セリウム(5.9g)、硝酸アルミニウム(5g)、硝酸ロジウム(0.0784g)、およびクエン酸(7g)の水溶液を60℃で2時間攪拌した。
(f)溶液を攪拌しながら80℃まで昇温し、水を蒸発させて多孔質材料を得た。
(g)ステップ(b)で得た多孔質材料を200℃で2時間加熱して有機物を分解した後、該材料を空気中で3時間、500℃でか焼し、
(h)ステップ(c)で形成された前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(30mL/min)に5時間投入して還元し、CeAl1−yRh3−δペロフスカイト(y=0.02)を得た。
【0048】
[実施例3]
パラジウムを有するペロフスカイト
(a)硝酸セリウム(11.57g)、硝酸アルミニウム(10g)、および硝酸パラジウム(0.0577g)、ならびにクエン酸(7g)の水溶液を60℃で2時間攪拌し、
(b)溶液を攪拌しながら80℃まで昇温し、水を蒸発させて多孔質材料を得た。
(c)ステップ(b)で得た多孔質材料を200℃で2時間加熱して有機物を分解した後、該材料を空気中で3時間、500℃でか焼し、
(d)ステップ(c)で形成された前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(30mL/min)に5時間投入して還元し、CeAl1−yPd3−δペロフスカイト(y=0.02)を得た。
【0049】
[実施例4]
ニッケルを有するペロフスカイト
(a)硝酸セリウム(12.18g)、硝酸アルミニウム(10g)、および硝酸ニッケル(0.407g)、ならびにクエン酸(7g)の水溶液を60℃で後2時間攪拌し、
(b)溶液を攪拌しながら80℃まで昇温し、水を蒸発させて多孔質材料を得た。
(c)ステップ(b)で得た多孔質材料を200℃で2時間加熱して有機物を分解した後、該材料を空気中で3時間、500℃でか焼し、
(d)ステップ(c)で形成された前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(4mL/min)に5時間投入して還元し、CeAl1−yNi3−δペロフスカイト(y=0.05)を得た。
【0050】
[実施例5]
白金を有するペロフスカイト
(a)硝酸セリウム(6.1g)、硝酸アルミニウム(5g)、および硝酸テトラアンミン白金(II)(0.271g)、ならびにクエン酸(7g)の水溶液を60℃で2時間攪拌し、
(b)溶液を攪拌しながら80℃まで昇温し、水を蒸発させて多孔質材料を得た。
(c)ステップ(b)で得た多孔質材料を200℃で2時間加熱して有機物を分解した後、該材料を空気中で3時間、500℃でか焼し、
(d)ステップ(c)で形成された前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(4mL/min)に5時間投入して還元し、CeAl1−yPt3−δペロフスカイト(y=0.05)を得た。
【0051】
[実施例6]
ロジウムおよび白金を有するペロフスカイト
(a)硝酸セリウム(6.1g)、硝酸アルミニウム(5g)、硝酸ロジウム(0.0784g)、および硝酸テトラアンミン白金(II)(0.0271g)、ならびにクエン酸(7g)の水溶液を60℃で2時間攪拌し、
(b)溶液を攪拌しながら80℃まで昇温し、水を蒸発させて多孔質材料を得た。
(c)ステップ(b)で得た多孔質材料を200℃で2時間加熱して有機物を分解した後、該材料を空気中で3時間、500℃でか焼し、
(d)ステップ(c)で形成された前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(4mL/min)に5時間投入して還元し、CeAl1−yPt3−δペロフスカイト(y=0.05)を得た。
【0052】
[実施例7]
(1−x)(1−y)3−δ型のペロフスカイトのキャラクタリゼーション:
ペロフスカイト相および任意の他の不純物を特定するためのX線回折調査を実施した。相CeAlOは、何らかの不純物相の存在なしに形成された。Pt、RhおよびNiを組み込んだ場合の例を図1に示す。
【0053】
[実施例8]
PtをCeAlOペロフスカイトに組み込んだ場合(左)のXPSスペクトル(黒の実線−生データのピーク;黒の点線−フィッティング後のピーク;明るいグレー−Al3+;黒の一点鎖線−Pt2+;暗いグレー−Pt0)と、RhをCeAlOペロフスカイトに組み込んだ場合(右)のXPSスペクトル。
【0054】
[実施例9]
触媒Ce1.0Al0.975Rh0.02Pt0.0053−δを使用したメタンの自己熱改質(ATR)
図3に、本発明のCe1.0Al0.975Rh0.02Pt0.0053−δ触媒存在下で空間速度を変えて実施したメタンの自己熱改質(ATR)を示す。この例は、本発明のペルフォスカイトをメタンの自己熱改質に利用することに関連する。すなわち、メタンの転化に関するGHSVおよびS/Cの変化による触媒の活性の影響である。ペルフォサイトは、反応温度650℃、GHSV=34900h−1、S/C=1.2、O/C=0.79で99.8%のメタンの転化をもたらしたが、空間速度が64390h−1に達したときその転化率は92%に低下した。水素およびCOの含有量は33.2%および10%であったが、空間速度が高くなると36%および11%に増加した。この触媒を、S/C比を異なるものとしてさらに評価した。S/C比を異ならしめることの影響を図3に示す。図を参照すると、S/C=1では転化率は90%よりも低かったが、S/C=1.2では99%を超えるところまで増加した。さらに供給原料中の水蒸気の含有量を増やす(S/C>1.2)と、メタンの転化率は低下し、S/C2.5に対して約94%に達した。同様に、過剰水蒸気の加熱に必要とされるため量を増やした空気による希釈化によって、H含有量のわずかな低下がある。CO含有量の同時低下にしたがって、COは増加していた。
【0055】
[実施例10]
コージエライトモノリス基体上に被覆した触媒を用いて自己熱改質を行った。モノリス触媒は、Inconelダウンフロー反応器中に懸垂させた。水は定量ポンプを用いて余熱セクションに供給し、LPGおよび空気はマスフローコントローラーを用いて供給した。生成したガスは、過剰水を濃縮した後、ガス分析器を用いて分析した。図4に、LPG転化、すなわち、Ce1.0Al0.975Rh0.02Pt0.0053−δ触媒を用いた改質油中のHおよびCOの含有量を示す。転化率は、600℃ではほんの40.6%にすぎなかったが、700℃で99.6%まで増加していた。COおよびCOの含有量は、700℃でそれぞれ12.5%および8.7%の領域内に入っていた。
【0056】
[実施例11]
y=0.02および0.05としたPt含有ペロフスカイト触媒を水性ガスシフト反応について評価した。結果は図5に示す。
【0057】
図5は、CeAlOペルフォスカイト触媒の触媒活性に対するPt含有量の影響を示している。y=0.02および0.05の触媒はともに、実質的に同様のCO転化活性を示し、350℃で平衡転化に達した。
【0058】
[実施例12]
図6は、ガス毎時空間速度(gas hour space velocity)の、y=0.02および0.05の触媒への影響を示している。すべての高空間速度で、y=0.05としたペロフスカイト触媒でのCO転化率がy=0.02とした場合に比べて高いことは明らかである。GHSVが20000h−1以下では、y=0.05のペロフスカイト触媒存在下でのCO転化は、ずっと遅くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)により表されるペロフスカイト。
A’(1−x)(1−y)B’3−δ
[式中、AおよびA’は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Thを含むランタニド系列およびアクチニド系列の三価希土類元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、Bは、Sc、および、Al、Ga、Inを含むがそれらに限定されないIIIA族元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、B’は、遷移金属から選択されるが、Ni、Cu、Co、Fe、Mn、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Ag、Auに限定されない少なくとも一種の元素であり、x=0〜1、貴金属に対して0≦y≦0.2、貴金属以外の遷移金属に対して0≦y≦0.5、そして、δは、酸素欠損量を表す。]
【請求項2】
前記ペルフォスカイトが安定的な格子網を形成する、請求項1に記載のペルフォスカイト。
【請求項3】
前記貴金属が焼結されていない、請求項1に記載のペルフォスカイト。
【請求項4】
前記ペルフォスカイトは、750℃以下の温度である低温でのクエン酸塩プロセス、共沈プロセスおよび熱水プロセスにより調製される、請求項1に記載のペルフォスカイト。
【請求項5】
前記クエン酸塩プロセスが、
a)硝酸セリウムおよび硝酸アルミニウムのモル比Ce:Al=1:1水溶液に、CeおよびAlのモル量をやや上回るクエン酸を添加してから60℃で2時間攪拌するステップと、
b)ステップ(a)の溶液を攪拌しながら80℃まで加熱して、水を蒸発させて多孔質材料を取得するステップと、
c)このようにステップ(b)で得られた多孔質材料を200℃で2時間加熱して、有機物を分解するステップと、
d)このようにステップ(c)で得られた材料を、空気中で3時間、500℃でか焼して、前駆物質を形成するステップと、
e)ステップ(d)で形成された前駆物質を、750℃以下の温度のHの流れ(4〜30mL/min)に5時間投入して還元し、CeAlOペロフスカイトを取得するステップと
を含み、貴金属/遷移金属の組み込みのために、貴金属/遷移金属の対応する塩を適切な比率でステップ(a)に記載した初期金属溶液混合物に添加し、CeAl1−yB’3−δを得る、請求項1に記載のペルフォスカイト。
【請求項6】
前記共沈プロセスが、
(a)モル比1:1のセリウムとアルミニウムを、沈殿剤としてのKOH存在下、約80℃で同時に添加して勢いよく攪拌することによって共沈させて、ゲルを形成し、
(b)ステップ(a)で形成されたゲルのpHを約9〜10.5に調整して、ゲルを80℃で12時間エージングさせて沈殿物を取得するステップと、
(c)ステップ(b)で得られた沈殿物を、pH7.5になるまで水で洗浄するステップと、
(d)ステップ(c)の沈殿物を100℃で約12時間乾燥し、空気中で3時間、500℃でか焼して前駆物質を形成するステップと、
(e)ステップ(d)で形成した前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(4〜30mL/min)に5時間投入して還元し、CeAlOペロフスカイトを取得するステップと
を含み、貴金属/遷移金属の組み込みのために、貴金属/遷移金属の対応する塩を適切な比率でステップ(a)に記載した初期金属溶液混合物に添加し、CeAl1−yB’3−δを得る、請求項1に記載のペルフォスカイト。
【請求項7】
前記熱水プロセスが、
(a)モル比1:1のセリウムとアルミニウムの水溶液をアンモニア溶液で共沈させ、ゲルを取得するステップと、
(b)ステップ(a)で形成されたゲルを、テフロン(登録商標)で裏打ちしたステンレス鋼のオートクレーブに移し、炉の中で200℃に加熱して沈殿物を取得するステップと、
(c)ステップ(b)の沈殿物を濾過して100℃で乾燥してから、空気中で、500℃でか焼して前駆物質を形成するステップと、
(d)ステップ(c)で形成した前駆物質を750℃以下の温度のHの流れ(4mL/min)に5時間投入して還元し、CeAlOペロフスカイトを取得するステップと
を含み、貴金属/遷移金属の組み込みのために、貴金属/遷移金属の対応する塩を適切な比率でステップ(a)に記載した初期金属溶液混合物に添加し、CeAl1−yB’3−δを得る、請求項1に記載のペルフォスカイト。
【請求項8】
前記ペルフォスカイトがCeAlOである、請求項4に記載のペルフォスカイト。
【請求項9】
下記式(I)により表されるペロフスカイト
A’(1−x)(1−y)B’3−δ
[式中、AおよびA’は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Thを含むランタニド系列およびアクチニド系列の三価希土類元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、Bは、Sc、および、Al、Ga、Inを含むがそれらに限定されないIIIA族元素から選択された少なくとも一種の元素を表し、B’は、遷移金属から選択されるが、Ni、Cu、Co、Fe、Mn、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Ag、Auに限定されない少なくとも一種の元素であり、x=0〜1、貴金属に対して0≦y≦0.2、貴金属以外の遷移金属に対して0≦y≦0.5、そして、δは、酸素欠損量を表す。]の、水素発生、水性ガスシフト反応、自己熱改質、水蒸気改質、部分酸化、CO改質のための触媒としての使用であって、当該ペルフォスカイトの触媒としての使用は、燃料源に依存しないことを特徴とする、ペロフスカイトの使用。
【請求項10】
ATRおよび水蒸気改質のための前記燃料源は、LPG、メタン、エタノール、および、炭素数が8以下の低級炭化水素を含む、請求項6に記載のペルフォスカイト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533512(P2012−533512A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521158(P2012−521158)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000482
【国際公開番号】WO2011/039761
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(511295508)カウンシィル オブ サイアンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (3)
【Fターム(参考)】