説明

選択可能なバックスキャッタパラメータを持つRFIDシステム

RFIDシステムで用いるためのRFIDタグが開示される。RFIDタグはRFIDリーダからの搬送波を受信するように動作可能なアンテナを備える。アンテナには状態機械が結合され、搬送波をバックスキャッタするために使用する、RFIDタグのためのバックスキャッタパラメータを含むバックスキャッタコマンドを受信する。アンテナと状態機械との間に変調器が結合される。変調器は、バックスキャッタコマンドに少なくとも部分的に基づいて、変調されたバックスキャッタ信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の表示】
【0001】
本出願は2003年8月29日に出願された米国仮出願60/498,843に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は無線周波数識別(radio frequency identification)に関連し、さらに詳細には選択可能なバックスキャッタ(反射)パラメータを持つRFIDシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近の激しい競争市場においては、在庫(inventory)を管理し、追跡する能力は極めて重要である。消費者小売店およびその他の大量の在庫をかかえるビジネスにおける主要なコストは、在庫の個々のアイテムを、それら在庫がサプライチェーンを通過するに際に追跡するコストである。
【0004】
従来はバーコードとバーコードスキャナが在庫を追跡するために用いられてきた。バーコードスキャンシステムは、製品識別番号をエンコードしたバーコードをアイテムに張る(ラベリング)ことによって機能する。必要に応じてバーコードリーダを用いてバーコードを読み取る。ある種の用途にはこのシステムは有用であるが、バーコードにはいくつかの欠点がある。第一に、バーコードにエンコードできる情報の量が限定されている。また、一度バーコードが印刷されるとそのバーコードを変更することが不可能であり、従ってエンコードされた情報を変更することができない。さらに、バーコードは読み取ろうとするバーコードリーダの「視線上」になければならない。
【0005】
バーコードシステムの欠点のいくつかを解決するために、様々な無線周波数識別(Radio Frequency Identification, RFID)システムが提案されている。一般的な資産追跡(asset-tracking)の実施形態では、RFIDシステムは、少なくとも一つのRFIDリーダと、少なくとも一つのRFIDタグを備える。RFIDタグは追跡対象となる資産に取り付けられる。RFIDタグは一般に2つのタイプのうちのどちらかに分けられる。一つは、オンボードの電源(例えば、バッテリ)を持つアクティブRFIDタグであり、もう一つはRFIDリーダから送信される無線周波数搬送波によって電力を得るパッシブRFIDタグである。一般に、アクティブRFIDタグは、パッシブRFIDタグよりも長い範囲においてRFIDリーダによる読み取りが可能である。通常、パッシブRFIDタグは、RFIDタグに電力を供給するための搬送波をRFIDリーダから受信する必要があるために、タグリーダの近くになければならない。
【0006】
一般的に、パッシブRFIDタグはデータを不揮発性メモリに記憶する。この記憶されたデータを読み出すために、RFIDリーダは時間と共に変化する無線周波数搬送波を放射する。この無線周波数搬送波は、パッシブRFIDタグのアンテナに交流電圧を生じさせることによって、タグに電力を供給する。この交流電圧は通常直流電圧に整流される。直流電圧は、RFIDタグを起動させる最低動作直流電圧に到達するまで積み重ねられる。一度起動すると、RFIDタグはRFIDタグのメモリ内に記憶されたデータを送信可能になる。通常、これはRFIDリーダから受信した搬送波の変調バックスキャッタ(modulated backscattering)によって行われる。RFIDタグは、RFIDリーダの搬送波周波数の振幅および/または位相に変化を生じさせることでバックスキャッタ(backscatter)する。RFIDタグは、RFIDタグアンテナ210の負荷インピーダンスを変化させることによって、RF搬送波の変調を実行する。
【0007】
一般的に、RFIDシステムは、低周波数帯125KHz、高周波数帯13.56MHzおよび極高周波数800-900MHzおよび2.45GHz(マイクロウェーブ)を含むいくつかの周波数帯のうちの一つのうちの周波数を利用する。もっともこれらは使用可能な周波数帯の一例に過ぎない。RFIDシステムに使用可能な正確な周波数帯は国によって変わりうる。割り当てられた周波数帯は、しばしば複数のRFIDリーダが同時に動作しうるように、チャンネル分けされる(複数のチャンネルに分離される)。チャンネル同士をくっつけすぎると、あるRFIDタグに隣接するRFIDリーダがRFIDタグからのバックスキャッタ変調に過大な電力を供給する可能性を生じさせる。多くの場合、現地の規制当局がチャンネル間隔(スペーシング)を設定し、固定されたバックスキャッタ変調率を持つタグを使用することで隣接するチャンネルの搬送波周波数に近い変調側波帯を生じさせる。干渉の一つの要因は、タグのバックスキャッタ変調側波帯の同じ周波数帯に入るリーダの発振器の位相ノイズから生じる。
【0008】
さらに、しばしばRFIDタグがバックスキャッタするように設計された周波数におけるノイズが多かったり、および/または混んでいる場合がある。これによって、RFIDリーダにバックスキャッタされて帰ってくる信号が弱くなり、システムの使用範囲を狭め、データが失われる潜在的可能性が生じる。RFIDタグはRFIDリーダの搬送波をバックスキャッタすることで変調する周波数を切り替えることができないので、そのような周波数干渉を回避することができない。それによって、RFIDタグとRFIDリーダの間の電波の受信状態が悪化する。
【0009】
従って、特定のコマンドを受信したときに、バックスキャッタのパラメータを変更可能なRFIDタグを供給する必要がある。一実施形態において、バックスキャッタのパラメータは、RFIDタグが搬送波をバックスキャッタ変調する周波数である。バックスキャッタのパラメータには、変調方法およびRFIDタグのデータレートをも含みうる。
【発明の開示】
【発明の概要】
【0010】
本発明の一実施形態として、RFIDシステムで使用するためのRFIDタグを開示する。RFIDタグは、RFIDリーダからの搬送波を受信するように動作可能なアンテナを備える。状態機械(state machine)がアンテナに結合され、搬送波をバックスキャッタするのに使用するためのRFIDタグのためのバックスキャッタパラメータを含むバックスキャッタコマンドを受信する。変調器がアンテナと状態機械との間に結合される。変調器は、少なくとも部分的にバックスキャッタコマンドに基づいた、変調されたバックスキャッタ信号を生成する。
【0011】
本発明の一態様において、バックスキャッタコマンドはバックスキャッタ信号の周波数を決定する。本発明の他の態様において、バックスキャッタコマンドはバックスキャッタ信号の変調方式を決定する。本発明のさらに他の態様において、不揮発性メモリが製品に関連するコードを記憶する。
【0012】
本発明の他の実施形態として、RFIDタグを動作させるための方法を開示する。第1のステップにおいて、RFIDリーダから受信したコマンドに基づいたバックスキャッタ変調信号設定が決定される。次に、そのバックスキャッタ信号設定に少なくとも部分的に基づいたバックスキャッタ変調信号が生成される。本発明の一態様において、バックスキャッタ変調信号設定は状態機械の状態(state)を設定し、バックスキャッタ変調信号が特定の周波数に設定される。本発明の他の態様において、バックスキャッタ変調信号設定は状態機械の状態を設定し、変調方式が設定される。
【0013】
以下では、添付の図面を参照して本発明を説明する。類似の符号は類似の要素を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の詳細な説明は本質的に単なる例示であって、本発明または本発明の用途および使用を限定しようとするものではない。さらに、前述の技術分野、発明の背景、発明の概要または以下の詳細な説明に示された明示の、または黙示の理論のどれにも制限を受けるものではない。以下ではパッシブRFIDタグが説明されているが、これは例示の目的としただけであって、本発明はパッシブ、セミパッシブまたはアクティブRFIDタグを用いることができる。
【0015】
図1、2は、本発明の教示に従ったRFIDシステム100を示す。一実施形態として、RFIDシステム100は少なくとも一つのRFIDタグ104に結合するRFIDリーダを有する。RFIDシステム100は、選択的に、RFIDリーダ102に結合されたコンピュータシステム106を有していてもよい。本発明の一実施形態において、RFIDリーダ102はRFIDシステム100によって用いられる周波数スペクトラムの品質を決定することができ、RFIDタグ104が変調されたバックスキャッタ信号108をバックスキャッタ(反射)するべき周波数または周波数群を示すRFIDタグ104に対するコマンドを含む、呼び掛け信号107を送ることができる。ここで、RFIDタグ104が搬送波をバックスキャッタ変調する周波数を変更するとRFIDタグのデータ速度を変更することになる可能性があることに注意すべきである。
【0016】
一実施形態において、RFIDリーダ102はプロセッサ204および信号品質表示回路206に結合したトランシーバ202を備える。トランシーバ202はRFIDリーダアンテナ207に結合する。信号品質表示回路206は信号強度アンテナ209に結合する。
【0017】
信号品質表示回路206は、RFIDシステム100が使用する周波数帯をスキャンして、その周波数帯中の個々の周波数チャンネルの品質を決定することができるどのような装置でもよい。ある実施形態では、周波数帯全体をスキャンすることができる。他の実施形態では、周波数帯中のRFIDタグ104によって使用可能な周波数に対応する、所定の周波数部分のみが信号品質を決定するためにチェックされる。例えば、各周波数の信号対ノイズ比をチェックすることができる。信号対ノイズ比の測定は、他の信号品質測定と同様に当該技術分野においてよく知られており、本発明においては様々な信号強度測定技術を用いることができる。信号品質表示回路206は信号強度アンテナ209を使用することができ、または代替的にRFIDリーダアンテナ207に結合することができ、それによって信号品質表示回路206および信号強度アンテナ209が不要になる。代替的な実施形態では、RFIDトランシーバ202を、周波数帯中の個々の周波数チャネルの品質を決定するために用いることができる。
【0018】
ある実施形態では、プロセッサ204は、信号強度表示回路206、または代替的にトランシーバ202から信号品質測定値を受信する。プロセッサ204は周波数帯中の各周波数について信号品質測定値を分析し、バックスキャッタのためにRFIDタグ104によって用いられるべき周波数または周波数群を決定する。さらに、ある実施形態では、プロセッサ204は、RFIDタグ104が所望のデータ速度に基づいて搬送波をバックスキャッタ変調するべき周波数を決定することができる。さらに、プロセッサ204はトランシーバ202にRFIDタグ104に送信するための適切なコマンドを供給することができる。プロセッサ204は、RFIDリーダまたは他の類似のアプリケーションで従来用いられているようなプロセッサなど、どのようなプロセッサでもよい。
【0019】
トランシーバ202は、RFIDタグ104に搬送波信号を送信することを含む信号の送信が可能であり、RFIDタグ104からバックスキャッタされた信号を含む信号の受信が可能な装置であればどのような装置であってもよい。トランシーバ202は、データを送受信するために必要なすべての回路、例えば必要な変復調回路およびエンコード/デコード回路を備える。
【0020】
出力203は、RFIDリーダによって、RFIDタグ104から取り出されたデータまたは取り出されたデータから派生したデータを表示し、記憶し、および/または送信するために用いられる任意の出力装置とすることができる。これには、RFIDリーダディスプレイ、メモリ、ワイヤレスローカルエリアネットワーク等と通信するワイヤレストランシーバを含みうる。例えば、出力203は、出力203への接続105を介して、コンピュータシステム106に接続することができる。この実施形態では、接続105は有線または無線の接続とすることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、RFIDタグ104は、復調器214および変調器216に結合された電圧整流器212に結合されたアンテナ210を含む。復調器214は、メモリ220に結合された状態機械218に結合される。変調器216は、状態機械218、メモリ220および選択的に発振器215に結合される。
【0022】
ある実施形態では、アンテナ210は、コイルアンテナ、ダイポールアンテナ、またはRFIDリーダ102から送信される搬送波のようなRF送信が交流(AC)電圧を誘導するように設計された任意のアンテナとすることができる。アンテナ210の設計は、RFIDタグ104のアプリケーションおよびRFIDタグ104が動作する周波数に依存しうる。
【0023】
ある実施形態では、電圧整流器212は誘導された交流電圧を使用可能な直流(DC)電圧に変換する。この直流電圧がRFIDタグ104の動作に電力を供給する。アンテナ210がRFIDリーダ102からの搬送波にさらされている間、誘導された交流電圧が電圧整流器212によって整流されて直流電圧に変換される。直流電圧は、RFIDタグ104を起動させる臨界電圧に達するまで上昇し続ける。
【0024】
復調器214は、RFIDリーダ102から受信したすべての入力変調信号を復調する。上述したとおり、RFIDリーダ102からの初期のRF搬送波はRFIDタグ104を起動し、電力を供給するように設計されている一方で、RFIDリーダ102からは、RFIDタグ104の状態を設定するために用いられるデータなどの変調されたデータを送信することもできる。
【0025】
状態機械218は、RFIDリーダ102からの適切な要求またはコマンドを受信して、RFIDタグ104の状態を設定することができる任意の装置でよい。RFIDタグの状態には、読み出し状態、書き込み状態、校正(calibration)状態およびコマンド状態を含みうる。本発明では、搬送波をバックスキャッタ変調する異なった周波数設定について異なった状態が存在しうる。さらに、搬送波のバックスキャッタに影響を与える他のパラメータの変更、例えば変調方式に対応する状態も存在しうる。
【0026】
本発明の一実施形態において、RFIDタグ104はRFIDリーダ102からのコマンドを受信することができる。ある実施形態では、RFIDタグ104によってRFIDリーダ102の搬送波をバックスキャッタするのに使用されるべき一以上の周波数を表す異なった状態のそれぞれについて複数の状態が存在しうる。RFIDリーダ102によって送信されるあるコマンドは、RFIDタグ104を、RFIDタグ104がバックスキャッタ変調のために使用するべき周波数としてRFIDリーダ102によって決定される周波数を示すように選択される状態とともに、RFIDタグ104をそのような状態の一つに設定することができる。代替的には、一以上の状態が他のバックスキャッタパラメータの変更(例えば、異なった変調方式を示す異なった状態)を表すことができる。RFIDタグ104はこれらの状態の一つを選択するコマンドを受信することができる。さらに、状態機械218の状態を変化させることでデータ速度を設定することもできる。RFIDタグ104で使用するための状態機械の設計は当該技術分野においてよく知られている。例えば、状態機械は、プログラマブルロジックデバイスなどのロジック回路を用いて実現可能である。本発明の一実施形態において、状態機械218は、状態機械の機能を実装可能な、または同様の動作が可能なプロセッサにすることができる。例えば、状態機械はプロセッサ上で動作するソフトウェアとして実装することができる。
【0027】
メモリ220は、RFIDタグ104の用途に応じて製品識別番号、製品説明などを含む、データを記憶する。メモリ220は好適には不揮発性メモリである。アプリケーションに応じて、メモリ220は読み出し専用メモリ(ROM)または読み出し/書き込みメモリであってもよい。ある実施形態では、メモリ220に記憶された製品識別コードをメモリ220から取り出して、RFIDリーダ102へ送信するために変調器に供給することができる。
【0028】
発振器215はRFIDタグ104にクロック信号を供給する。発振器215はある一定の周波数に設定することができ、その周波数は周波数分周回路を用いて他の周波数に分周することができる。発振器215によって設定された周波数は搬送波の変調周波数を設定するために使用できる。本発明の他の実施形態において、RFIDリーダ102からの搬送波を発振器215の精度を調整するために使用できる。さらに他の実施形態では、RFIDタグ104は発振器215を使用せず、すべてのタイミング情報はRFIDリーダ102の搬送波から取り出すことができる。
【0029】
変調器216は、RFIDリーダ102にデータを送信するために、RFIDリーダ102から送信された搬送波を変調する。変調器216は様々な変調手段、例えば周波数変位変調(FSK)、パルス変位変調(PSK)、振幅変位変調(ASK)を採用することができる。RFIDリーダ102からの搬送波は変調され、RFIDリーダ102に対してバックスキャッタされる。本発明の一実施形態では、変調方式はRFIDタグ104について変更可能な複数のバックスキャッタ特性の一つである。
【0030】
上述したとおり、典型的な実施形態では、RFIDタグ104は負荷変調、つまりRFIDタグアンテナの負荷インピーダンスを変化させることによってバックスキャッタを行う。一般的に、負荷変調はRFIDタグアンテナ210の負荷インピーダンスを変化させることで実現される。これを実行する一つの方法は、データストリームの送信に合わせて抵抗性負荷をオンおよびオフに切り替えるものである。抵抗の代わりにコンデンサを用いることもできる。負荷インピーダンスが変化する速度(抵抗性または容量性素子がオンおよびオフになるサイクル)が、バックスキャッタが生じる周波数を決定する。RFIDタグアンテナ210の負荷インピーダンスが変化する速度は、発振器215の出力またはその他のタイミング信号によって制御される。例えば、ある実施形態では、状態機械218によって設定された状態に応じて、変調器216が、RFIDタグ104の負荷インピーダンスが変化して、バックスキャッタ変調信号を第1周波数から第2周波数にシフトする、いくつかの速度のうちの一つを選択できる。
【0031】
例えば、FSK変調では、論理1と、論理0とは分離した周波数で送られる。一実施形態では、論理1は発振器の基本周波数を8分周して(つまり、発振器基本周波数の8分の1)バックスキャッタすることができ、論理0は発振器の基本周波数を10分周して(つまり、発振器基本周波数の10分の1)バックスキャッタすることができる。発振器215の出力を変更することで、論理1および0を変調する異なった周波数群を選択可能である。
【0032】
選択的なコンピュータシステム106は、RFIDリーダ102からデータを受信でき、そのデータになんらかの操作を加えることができるコンピュータであればどんなものであってもよい。RFIDシステム100が販売管理システムであるような環境では、RFIDリーダ102が製品に付されたRFIDタグ104から要求された製品コードを受信すると、その情報をコンピュータシステム106に送信することができる。コンピュータシステム106は値段を参照して、売り上げ伝票にエントリを作成する。在庫管理システムでは、RFIDリーダ102によって集められた情報は、在庫追跡ソフトウェアを動かしているコンピュータシステム106に送ることができる。様々な有用なコンピュータシステムおよびそれらを動作させるために必要なソフトウェアは当該技術分野において知られている。
【0033】
図3は、本発明の教示に従った、バックスキャッタパラメータを変化させる方法を示す流れ図である。第1のステップ、ステップ302において、RFIDリーダ102が周波数スペクトラムをスキャンして、RFIDタグのためにバックスキャッタリングの際に用いるための最適な周波数を決定する。バックスキャッタリングに用いるための最適な周波数の選択は、測定された様々な周波数の信号品質、一実施形態としては各周波数の信号対雑音比に基づいて行うことができる。他の実施形態では、RFIDタグ104に搬送波をバックスキャッタさせる周波数は、所望のデータ速度に基づいて決められる。ある種の変調方式では、データ速度およびバックスキャッタ変調された周波数の周波数は高くなる。さらに、使用する最適な周波数の選択は、他のバックスキャッタパラメータ、例えば変調形式などに少なくとも部分的に基づいて行うことができる。
【0034】
次に、ステップ304において、RFIDリーダ102はRFIDタグ104に電力を供給するために搬送波を送信する。上述のとおり、典型的な実施形態では、この搬送波がアンテナに交流電圧を誘導し、それは電圧整流器212によって直流電圧に変換される。直流電圧が十分なレベルに到達した後、RFIDタグ104が起動する。
【0035】
ステップ306において、RFIDリーダ102が、設定すべきバックスキャッタパラメータを表す信号を送信する。本発明の一実施形態では、この信号は、一以上のバックスキャッタパラメータを持つように選択される、状態機械218の状態を設定するために使用可能である。ある実施例では、バックスキャッタパラメータはバックスキャッタのために使用されるべき周波数とすることができる。ある実施例では、この信号は、RFIDタグ104に送信される任意の他のコマンドまたはデータとともに、コードとして送信することができる。他の実施例では、RFIDリーダ102は変更するべき他のバックスキャッタパラメータを示す信号を送信可能である。例えば、RFIDリーダ102は変調方式を変更するための信号を送信する。
【0036】
次に、ステップ308では、一実施形態として、RFIDリーダ102から送信されるコマンドが、バックスキャッタパラメータを変更するために、状態機械の状態を切り替える。例えば、それぞれが異なったバックスキャッタ周波数を含む複数の状態が存在しうる。
【0037】
次に、ステップ310では、RFIDタグ104が、RFIDリーダ102の搬送波をバックスキャッタすることによって、RFIDリーダ102に応答する。本発明では、バックスキャッタは、少なくとも部分的には、RFIDリーダ102から送信されたバックスキャッタパラメータを用いて実行される。例えば、バックスキャッタは、RFIDリーダ102によって設定された周波数で実行される。これは、RFIDアンテナのインピーダンスを、RFIDリーダ102によって決定された必要な周波数を生成する、発振器215によって制御される速度で変化させることによって実行できる。他の実施例では、RFIDリーダ102によって設定された変調方式を用いてバックスキャッタを変調することができる。
【0038】
これまでの詳細な説明では少なくとも一つの実施形態を提示したが、非常に多くの変形例が存在しうることは理解できるであろう。ここで、上述の実施形態または実施例は例示に過ぎず、いかなる意味においても本発明の範囲、用途または構成を限定することを意図したものではない。むしろ、上述の詳細な説明は当業者に実施形態または実施例を具現化するための便利なロードマップを提供するものである。ここで、添付の特許請求の範囲によって定められる発明の技術的範囲およびそれらの法的均等物から乖離することなしに、要素の機能および配置における様々な変更が可能であることを理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の教示に従ったRFIDシステムのブロック図。
【図2】本発明の教示に従ったRFIDリーダおよびRFIDタグのブロック図。
【図3】本発明の教示に従った、バックスキャッタパラメータの変更方法を示す流れ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグであって、
RFIDリーダからの搬送波を受信可能なアンテナと、
前記アンテナに結合され、前記搬送波をバックスキャッタするのに使用する前記RFIDタグのためのバックスキャッタパラメータを含む、バックスキャッタコマンドを受信可能な状態機械と、
前記アンテナと前記状態機械との間に結合され、前記バックスキャッタパラメータに少なくとも部分的に基づいて形成された、変調されたバックスキャッタ信号を生成するように動作可能な変調器とを備える、RFIDタグ。
【請求項2】
前記バックスキャッタコマンドは、前記変調されたバックスキャッタ信号の周波数を決定する、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記バックスキャッタコマンドは、前記変調されたバックスキャッタ信号の変調方式を決定する、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項4】
製品に関するコードを記憶する不揮発性メモリをさらに備える、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記メモリは読み出し/書き込みメモリである、請求項4記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記アンテナは極高周波帯の周波数を受信可能である、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項7】
前記搬送波によって誘導された誘導交流電圧を直流電圧に変換するように動作可能な電圧整流器をさらに含む、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項8】
前記変調されたバックスキャッタ信号の周波数を決定する周波数を持つ発振器をさらに含む、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項9】
前記発振器から出力された周波数は前記バックスキャッタコマンドによって設定された前記状態機械の前記状態によって決定される、請求項8記載のRFIDタグ。
【請求項10】
前記搬送波とともに送信されるタイミング信号は前記変調されたバックスキャッタ信号の周波数を決定するために用いられる、請求項9記載のRFIDタグ。
【請求項11】
前記タイミング信号によって生成される前記周波数は、前記バックスキャッタコマンドによって設定された前記状態機械の前記状態によって決定される、請求項10記載のRFIDタグ。
【請求項12】
RFIDシステムで用いるRFIDリーダであって、
ある周波数帯中の一以上の周波数の信号強度を決定する信号強度品質表示手段と、
前記信号強度回路の前記出力に基づいてコマンドを生成するプロセッサ手段と、
前記コマンドを含む信号を生成するためのトランシーバ手段とを備えるRFIDリーダ。
【請求項13】
前記コマンドはRFIDタグがバックスキャッタ信号のために使用するべき周波数を決定する、請求項12記載のRFIDリーダ。
【請求項14】
前記コマンドはRFIDタグがバックスキャッタ信号のために使用するべき変調方式を決定する、請求項12記載のRFIDリーダ。
【請求項15】
前記RFIDリーダは販売管理システムに結合されている、請求項12記載のRFIDリーダ。
【請求項16】
RFIDタグを動作させる方法であって、
RFIDリーダから受信したコマンドに基づいて、バックスキャッタ変調信号設定を決定するステップと、
前記バックスキャッタ変調信号設定に少なくとも一部は基づいて、バックスキャッタ変調信号を生成するステップとを含む方法。
【請求項17】
前記RFIDリーダから受信したコマンドに基づいて、バックスキャッタ信号設定を決定するステップは、前記バックスキャッタ変調信号が特定の周波数に設定されるように状態機械の状態を設定するステップをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記RFIDリーダから受信したコマンドに基づいて、バックスキャッタ信号設定を決定するステップは、ある選択された変調方式が前記バックスキャッタ変調信号を変調するのに用いられるように状態機械の状態を設定するステップをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
受信した搬送波から交流電圧を誘導するステップと、
前記交流電圧を整流して直流電圧を生成するステップと、
少なくとも部分的に前記直流電圧によって前記RFIDタグに電力を供給するステップとをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記バックスキャッタ変調信号中において製品識別番号を送信するステップをさらに含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504537(P2007−504537A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524904(P2006−524904)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027999
【国際公開番号】WO2005/022454
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(599101597)シンボル テクノロジーズ インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】