説明

選択的アンドロゲン受容体モジュレーター

式(I)の化合物もしくはその異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステルが開示される。本発明の化合物は、組織選択的なアンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)としての有用性を有しており、ホルモン療法において、例えば、性腺機能低下症、筋肉疲労、骨粗鬆症、良性の前立腺肥大、代謝症候群に関連した肥満、男性および女性の性的機能不全および性欲減退、ならびに高齢の男性または女性におけるアンドロゲン減少の治療または予防などにおいて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドロゲン受容体(AR)依存性の症状の治療に有用である治療上活性な化合物に関する。特に、本発明は、組織選択的なアンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)としての有用性を有する新規化合物を開示する。本発明の化合物は、ARアゴニスト活性を有しており、ホルモン療法において、特に性腺機能低下症、筋肉疲労、骨粗鬆症、良性の前立腺肥大、代謝症候群に関連した肥満、男性および女性の性的機能不全および性欲減退、ならびに高齢の男性または女性におけるアンドロゲン減少などのAR依存性の症状の治療または予防において有用である。
【背景技術】
【0002】
AR調節活性を有する、非ステロイド性プロピオンアニリドは、例えば、EP 100172、EP 253503、国際公開第98/53826号パンフレットおよび国際公開第02/16310号パンフレットに記載されている。プロピオンアニリド骨格を有するARモジュレーターの設計は、アニリド環がトリフルオロメチル基およびニトロ基などの2個の電子吸引性置換基によって置換されている化合物に集中されてきたが、これは、このような置換基がリガンドのアンドロゲン受容体結合親和性を促進することが報告されてきたためである。例えば、Tucker,HらのJ.Med.Chem.、1988、31、954−959を参照のこと。
【0003】
近年、アルキル基で置換されたアニリド環を有するAR調節化合物が、国際公開第2005/000794号パンフレットに記載された。しかしながら、依然として、アンドロゲン受容体における高い親和性および活性、組織選択的なアンドロゲン作用または同化作用、高い経口バイオアベイラビリティー、薬剤−薬剤相互作用の可能性が低いこと、深刻な副作用がないことならびに好ましい代謝形態などの特性の理想的な組み合わせを有するAR調節化合物が必要とされている。
【発明の開示】
【0004】
式(I)で表される化合物もしくはその異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステルが、アンドロゲン受容体への高い親和性および活性を有し、組織選択的なアンドロゲン作用または同化作用、良好な経口バイオアベイラビリティーを提供すること、および、同時に、低い薬剤−薬剤相互作用の可能性を有し、深刻な副作用が無くかつ好ましい代謝形態を有することが見出された。さらに、本発明の化合物は、容易に結晶化しかつほとんど溶媒和の形をとらない。したがって、本発明の化合物は、特に組織選択的なアンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)として有用である。本発明の化合物は特に、ホルモン療法における使用に適しており、特にAR依存性の症状、限定はされないが、例えば、性腺機能低下症、筋肉疲労、骨粗鬆症、良性の前立腺肥大、代謝症候群に関連した肥満、男性および女性の性的機能不全および性欲減退、ならびに高齢の男性もしくは女性におけるアンドロゲン減少などの治療または予防などにおける使用に適している。有益なアンドロゲン作用または同化作用は、同時に起こりうる前立腺の有害な刺激なしに得られる。
【0005】
本発明は、式(I)
【化1】

の化合物もしくは異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを提供する。
【0006】
特に好ましい式(I)の化合物は、式(I)の化合物のS−鏡像異性体、すなわち、(2S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミドである。
【0007】
特に好ましい式(I)の化合物の代謝産物は、アンドロゲン受容体(AR)依存性症状の治療または予防において有用な化合物である。そのような化合物としては、
2−シアノ−5−[(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル−アミノ]安息香酸、
(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ヒドロキシメチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド、および
(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ホルミルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド
が挙げられる。
【0008】
上記の代謝産物の薬学的に許容され得る塩またはエステルはまた、アンドロゲン受容体(AR)依存性症状の治療または予防において有用である。
【0009】
本発明はさらに、必要とする対象に治療的に有効量の式(I)の化合物もしくはその異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを投与することを含む、ホルモン療法の方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、必要とする対象に治療的に有効量の式(I)の化合物もしくはその異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを投与することを含む、アンドロゲン受容体(AR)依存性症状の治療または予防方法を提供する。
【0011】
本発明はさらに、必要とする対象に治療的に有効量の式(I)の化合物もしくはその異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを投与することを含む、アンドロゲン欠乏症の治療または予防方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、式(I)の化合物もしくはその異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを薬学的に許容され得る担体とともに含む医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の化合物は、文献で知られている方法に類似の様々な合成経路によって、適切な出発原料を用いて製造することができる。特に、本発明の化合物は、国際公開第2005/000794号パンフレットに記載されているような一般的な方法と同様に製造され得る。例えば、その光学活性な鏡像異性体を含む式(I)の化合物は、次の反応スキームにしたがって製造され得る(スキーム中、R1およびR3はメチル基であり、R4は水素、R2およびR7はシアノ基、R6はフルオロ基、ならびにR5、R8およびR9は水素である)。
【0014】
【化2】

【0015】
式(I)の化合物の代謝産物は、例えば、次の反応スキームにしたがって適切に製造され得る。
【0016】
【化3】

【0017】
薬学的に許容され得る塩、例えば有機および無機酸の両方の酸付加塩は、薬学の分野ではよく知られている。これらの塩の非限定的な例としては、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルフォン酸塩、蟻酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩およびアスコルビン酸塩などが挙げられる。適用可能な場合、薬学的に許容され得るエステルは、薬学の分野で通常使用されるようなおよび遊離型の薬理学的特性を保持するような薬学的に許容され得る酸を用いた既知の方法によって製造してもよい。これらのエステルの非限定的な例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルエステルなどの脂肪族または芳香族アルコールのエステルが挙げられる。リン酸エステルおよび炭酸エステルもまた本発明の範囲内である。
【0018】
上記の式(I)の定義は、例えばZおよびE異性体(シスおよびトランス異性体)などの幾何異性体、ならびに例えばジアステレオマーおよび鏡像異性体などの光学異性体を含む、化合物の全ての可能な立体異性体、ならびに例えばリン酸エステルおよび炭酸エステルなどの全てのプロドラッグエステルを含む。さらに、本発明はその範囲に、個々の異性体およびそれらの混合物、例えばラセミ体混合物などの両方を含む。
【0019】
一実施態様において、「異性体」という用語は、本発明の化合物の光学異性体を包含することを意味する。当業者にとって、本発明の化合物が少なくとも1つのキラル中心を含むことは、充分に理解されるであろう。したがって、本発明の化合物は、光学活性な形でまたはラセミ体の形で存在するかもしれない。本発明が、いかなるラセミ体もしくは光学的に活性な形、またはそれらの混合物をも含むことは理解されるであろう。一実施態様では、本発明の化合物は、純粋な(R)異性体である。別の実施態様では、本発明の化合物は、純粋な(S)異性体である。別の実施態様では、本発明の化合物は、(R)および(S)異性体の混合物である。別の実施態様では、本発明の化合物は、等量の(R)および(S)異性体を含むラセミ体混合物である。個々の異性体は、出発原料の対応する異性体の形を用いて得られてもよく、また、それらは従来の分離方法にしたがって、最終生成物の製造後に分離されてもよい。例えば鏡像異性体などの光学異性体のそれらの混合物からの分離のためには、例えば分別結晶化などの従来の分割方法を用いてもよい。
【0020】
本明細書中において定義される場合、「式(I)の化合物の代謝産物」という用語は、式(I)の化合物からインビボにて生成される生物学的に活性な薬剤を意味している。
【0021】
本発明によれば、アンドロゲン受容体(AR)依存性症状の治療または予防に有用である、式(I)の化合物の代謝産物が好ましい。このような好ましい代謝産物としては、
2−シアノ−5−[(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル−アミノ]安息香酸、
(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ヒドロキシメチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド、および
(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ホルミルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド
が挙げられる。
【0022】
上記の代謝産物の薬学的に許容され得る塩またはエステルはまた、アンドロゲン受容体(AR)依存性症状の治療または予防に有用である。
【0023】
アンドロゲン受容体(AR)依存性症状の治療または予防のために特に好ましい式(I)の化合物は、式(I)の化合物の(S)異性体、すなわち(2S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミドである。
【0024】
本発明の化合物は、1日当たり通常約0.1〜約1000mgまでの幅であって、年齢、体重、人種、患者の症状、治療すべき症状、投与経路および使用されるアンドロゲン(AR)モジュレーターに依存する、治療的に有効量で患者に投与され得る。本発明の化合物は、当該技術分野において公知の法則を用いて剤形に製剤され得る。患者にはそのまま、または薬学的に適切な賦形剤とともに錠剤、顆粒、カプセル、座薬、乳濁液、懸濁液または溶液の形で投与され得る。組成物に対し適切な成分を選択することは、当該技術分野における当業者にとっては通常のことである。適切な担体、溶媒、ゲル化成分、分散化成分、抗酸化剤、着色剤、甘味料、湿潤剤およびこの技術分野で通常使用されるその他の成分もまた使用され得ることは明らかである。活性化合物を含む組成物は、経腸的にまたは非経口で投与され得るが、経口経路が好ましい方法である。組成物中の活性化合物の含有量は、全体の組成物の重量に対して0.5〜100%であり、好ましくは0.5〜約20%である。
【0025】
本発明はより詳細に以下の実施例によって説明されるであろう。実施例は目的を明らかにすることのみを意図しており、特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0026】
実施例1
a)(2R)−3−ブロモ−N−(4−シアノ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド
【化4】

【0027】
(2R)−3−ブロモ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸(1.52g、8.3mmol)を35mlの乾燥THF中に溶解し、そして0.5mlの乾燥DMAを添加した。溶液を0℃まで冷却し、そしてチオニルクロライド(0.8ml;10.8mmol)を滴下により加えた。溶液を室温まで温め、そして室温で2時間攪拌した。5mlの乾燥THF中に4−シアノ−3−メチルアニリン(1.07g、8.1mmol)を加え、そして反応を2時間加熱還流した。THFを蒸発させ、残渣を40mlのCH2Cl2に溶解し、そして50mlの1%NaHCO3で洗浄し、そしてその後25mlの水で4回洗浄した。有機層を蒸発させ、そして残渣を40℃で終夜、減圧下で乾燥し、粗生成物2.24gを得た。粗生成物を、5mlのトルエンより再結晶し(75℃の後、室温までおよび0℃まで冷却した)、ろ過しそして5mlの氷冷トルエンで洗浄した。沈殿物を40℃で終夜、減圧下で乾燥し、1.54gの生成物を得た。
【0028】

【0029】
b)(2R)−2−メチルオキシラン−2−カルボン酸−(4−シアノ−3−メチルフェニル)アミド
【化5】

【0030】
(2R)−3−ブロモ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(4−シアノ−3−メチルフェニル)プロピオンアミド(1.54g、5.2mmol)を50mlのトルエンに溶解し、そして5分間室温で15mlの1M NaOHとともに攪拌した。有機層を分離し、そして25mlの水で2回洗浄した。トルエンをろ過し、そして蒸発させ、0.905gの生成物を得た。
【0031】

【0032】
c)(2S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド
【化6】

【0033】
2−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリル(0.81g、5.9mmol)および(2R)−2−メチルオキシラン−2−カルボン酸−(4−シアノ−3−メチルフェニル)アミド(0.905g、4.2mmol)を17.6mlの酢酸エチルに溶解した。無水のK2CO3(0.29g;2.1mmol)を加え、そして混合物を50℃まで加熱し、そして25.5時間攪拌した。混合物を室温まで冷却し、30mlの酢酸エチルを加え、そして、初め24mlの1M Na2CO3で2回、そしてその後24mlの水で2回洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして蒸発させ、1.05gの粗生成物を得た。
【0034】

【0035】
実施例2
a)5−アミノ−2−ブロモ安息香酸メチルエステル
【化7】

【0036】
アセチルクロライド(29.2ml、32.2g、410.7mmol)を、0〜10℃で窒素雰囲気下、メタノール(210ml)中に滴下して加え、そして溶液を0℃で30分間攪拌した。メタノール中の5−アセトアミド−2−ブロモ安息香酸(21.2g、82.1mmol)の0℃での添加の後、溶液を55℃で3時間攪拌した。メタノールを蒸発させた後、酢酸エチル(160ml)を加え、そして攪拌を室温で1時間続けた。沈殿をろ過し、そして水に溶解した。pHをNaHCO3で8に調節した。混合物を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させそして真空下濃縮した。
【0037】

【0038】
b)5−アミノ−2−シアノ安息香酸メチルエステル
【化8】

【0039】
5−アミノ−2−ブロモ安息香酸メチルエステル(14.27g、62.0mmol)およびCuCN(6.11g、68.2mmol)のDMF(130ml)中の混合物を、窒素雰囲気下、1時間10分の間、150℃で加熱した。混合物を、70℃まで冷却し、そして水(250ml)および12.5%のNH3(500ml)の混合物に注いだ。生成物を酢酸エチル(3×250ml)中に抽出した。有機層を、12.5%のNH3および水で数回洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、そして真空下濃縮した。
【0040】

【0041】
c)5−((R)−3−ブロモ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニルアミノ)−2−シアノ安息香酸メチルエステル
【化9】

【0042】
チオニルクロライド(3.9ml、5.3mmol)を、190mlのTHF中の(2R)−3−ブロモ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸(8.19g、44.8mmol、国際公開第2005/000794号パンフレットに記載されているように製造した)および5.8mlのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)の溶液に、5℃で窒素雰囲気下、滴下して加えた。溶液を3時間、室温で攪拌した。75mlのTHF中の5−アミノ−2−シアノ安息香酸メチルエステル(7.50g、4.3mmol)の溶液を加え、そして反応混合物を50℃で3時間および室温で16時間維持した。混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、そして減圧下蒸発させた。粗生成物をトルエン中で撹拌し、そしてろ過により精製された生成物が得られた。
【0043】

【0044】
d)2−シアノ−5−[(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニルアミノ]安息香酸メチルエステル
【化10】

【0045】
THF(150ml)中の2−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリル(4.80g、35.0mmol)、5−((R)−3−ブロモ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニルアミノ)−2−シアノ安息香酸メチルエステル(8.41g、24.7mmol)およびK2CO3(8.51g、61.6mmol)を、窒素雰囲気下、65℃で5時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、そして水を加えた。生成物を酢酸エチル中に抽出した。有機層を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、そして蒸発させた。粗生成物を、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 7:3〜6:4)によって精製した。
【0046】

【0047】
e)2−シアノ−5−[(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニルアミノ]安息香酸
【化11】

【0048】
1M LiOH(34ml)を、2−シアノ−5−[(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニルアミノ]安息香酸メチルエステル(4.52g、11.4mmol)のTHF(50ml)およびメタノール(6ml)の溶液に16〜18℃で加えた。得られた溶液を、室温で2.5時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、そしてpHをHCl溶液で2に調節した。生成物を酢酸エチル中に抽出した。有機層を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、そして蒸発させた。残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(溶離液:CH2Cl2/メタノール 98:2)によって精製した。熱CH2Cl2への粉砕、室温までの冷却およびろ過により標題の化合物を得た。
【0049】

【0050】
f)(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ヒドロキシメチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド
【化12】

【0051】
(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロリン酸塩(BOP、335mg、0.757mmol)を、2−シアノ−5−[(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニルアミノ]安息香酸(250mg、0.652mmol)の無水THF(8ml)の溶液に窒素雰囲気下加えた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.14ml、0.803mmol)を混合物に加え、そして室温で10分間攪拌した。その後、NaBH4(30mg、0.793mmol)を加え、そして混合物を50分間室温で攪拌した。溶媒を減圧下除去し、そして残渣を酢酸エチルに溶解した。有機層を0.5MのHCl、濃NaHCO3および食塩水で洗浄し、そしてNa2SO4上で乾燥させた。溶媒を減圧下除去し、そして残渣を、シリカゲル上で溶離液としてジクロロメタン/メタノール(95:5)を用いてフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、所望のアルコールを得た。
【0052】

【0053】
g)(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ホルミルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド
【化13】

【0054】
無水CH2Cl2(10ml)中、(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ヒドロキシメチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド(170mg、0.460mmol)およびクロロクロム酸ピリジニウム(150mg、0.696mmol)を室温で1時間45分間攪拌した。その後、溶媒を蒸発させ、そして残渣を、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール 96:4)によって精製し、(S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−ホルミルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミドを得た。
【0055】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物もしくは異性体、代謝産物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩もしくはエステル。
【請求項2】
(2S)−3−(4−シアノ−3−フルオロフェノキシ)−N−(4−シアノ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミドである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2記載の化合物を薬学的に許容され得る担体とともに含む医薬組成物。
【請求項4】
アンドロゲン受容体依存性の症状の治療または予防方法であって、治療または予防を必要とする対象に治療的に有効量の請求項1または2記載の化合物を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2009−528333(P2009−528333A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556805(P2008−556805)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/FI2007/000055
【国際公開番号】WO2007/099200
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(300046083)オリオン コーポレーション (31)
【Fターム(参考)】