説明

選択的発色団

本発明は一般式Iの蛍光発色団を含む,細胞または細胞の部分を選択的に染色するための発色団に関する。本発明は更に細胞の分別方法,細胞のターゲティング方法並びに細胞の同定方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,いわゆるナイルレッド及びナイルブルー化合物である細胞及び/または細胞の部分を選択的に染色するための発色団,並びに細胞及び細胞の部分を仕分け,同定及びターゲティングするための方法,並びに細胞内の酵素活性を調べるための中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
適当な画像形成装置と組み合わせた蛍光染色は,分子生物学及び生化学の研究所において広く使用されている感度の高い方法である。商業的に入手可能な蛍光色素は多数あるが,可視または近可視から近赤外領域(600〜1000nm)で作用するものは少なく,それはいくつかの重要な利点を有する。分子レベルで多くの染料の特異性の相対的な欠如は,より選択的な染料及び染色方法の設計を刺激する。
【0003】
異なる細胞を同定するため及び表面分子並びに細胞内のタンパク質を検出するための蛍光染料の使用は,近年著しく成長してきた。これらの染料は重要なマーカーとなってきており,その高い感度のために有力な視覚化技術,蛍光顕微鏡法の一つに含まれる。しかしながら,多くの商業的に入手可能な蛍光染料は,低い蛍光度のようなその特異性の欠如により制限されている。所定の細胞においては殆どの高分子が比較的少ない複製数で存在し,例えば睾丸における幹細胞のように一つの型の細胞が稀な組織が存在するので,検出する染料が特異的でなければならない[1,2]。
【0004】
アメシャム ファーマシア バイオテック ユーケー リミテッド(Amersham Pharmacia Biotech UK Ltd) の米国特許第6,166,202号(国際公開公報WO97/29154号)は,ベンゾフェノキサジン染料に関する。これは,蛍光性であり,生体分子を標識することができる。開示されている化合物のいくつかはオキソカルボン酸,オキソカルボン酸エステル,オキソケトカルボン酸,オキソケトカルボン酸安息香酸エステル,オキソカルボン酸アミド誘導体,及びオキソカルボン酸−(ジケトピロリドンエステル)である。しかしながら,これらの染料は,発色団による細胞分画の研究を促進する細胞の選択的な発色団であるとは開示されていない。上記文献は本発明の化合物を開示しておらず選択性を論じてもいない。
【0005】
米国特許第6,140,500号は,ベンゾフェノキサジン核酸染料及びその使用法を開示する。これらの誘導体は,プロピルアンモニウム塩を用いてC7−NH2−位が置換されており,それらのDNAへの結合に関する。
【0006】
スピーカーマン他(Spiekermann et al.), 微生物学のアーカイブ 171号,73〜80頁,(1999)(Archives of Microbiology, vol. 171, p 73-80, (1999)) は,ポリヒドロキシアルカノン酸及び他の脂質貯蔵化合物を蓄積する細菌のダイレクトスクリーニングのためのナイルレッドを用いる高感度生存コロニー染色方法を開示する。
【0007】
19世紀の初期,織物を染色する染料に対する要求が有機化学の肥沃な期間を導いた。染料のいくつかは生物の組織を染色することが見いだされ,予想外に細胞の特定の部分に対する指向性をしばしば示した。動物細胞は小さいだけでなく,無色透明であり,十分な差異を提供する様々な染色がそれらの特徴を目に見えるようにする。今日まで,染料は様々な用途に使用され,少なくとも例えば,癌の研究における診断・治療薬として潜在的に重要である。細胞化学の研究は細胞の経路に関与する分子のメカニズムを追跡するのに不可欠である。
【0008】
組織学は組織の顕微鏡的構造,ならびにこれらの個々の成分がどのように結びついているかの科学である。ほとんどの細胞がそれらの自然な状態で無色であるので,それらを研究できるようにするには染色しなければならない。ここ約百年の間に,その知識が利用可能になり発展した。一般的な技術は,組織材料を染料ヘマトキシリンおよびエオシンを使用して染色することである。しかしながら,これらの二つの染料は,多くの研究について十分な感度を有しないという欠点を有する。特に,細胞の特定の高分子を研究したい場合である。これらの高分子は細胞で少数しか得られないので,今日利用可能で使用されている多くの染料が十分に高い感度を有しない。さらに,これらの染料の多くは特定の細胞または特定の組織材料に対する特異性を欠いている。従って,細胞の一定の部分または細胞全体をブロックするブロッキング工程を行うことがしばしば必要であろう。蛍光染料を用いると,より高い選択性が得られ,これらの高分子及びその反応または細胞の動力学を研究することも可能であろう。増加した知識及び細胞内でどのように化学反応が起こり機能するかの理解により,より感度の高い選択性染料が開発されてきたという事実にもかかわらず,特定の細胞に選択的に結合する新しい染料に対する要望がまだ存在する。
【0009】
本発明の化合物と同じ様式で作用するシステムは可能であるが,これらは本発明の化合物よりかなり複雑な方法で製造される。例えば,他のタンパク質に結合した緑色蛍光タンパク質 (green fluorescencing protein; GFP) は,特異的な部位に結合する。これらの結合体を調製する方法は,下記の文献に記載されている:「β-アレスチンのAP-2アダプタとの相互作用は,クラスリン被覆小胞へのβ2−アドレナリン作用レセプタのクラスター形成に有用である」(The interaction of b-arrestin with the AP-2 adaptor is required for the clustering of b2-adrenergic receptor into Clathrin-coated pits.), キャロン他(Caron et.al.), 生化学ジャーナル 275号 23120〜23126頁(2000)(The journal of Biological Chemistry vol. 275 pp. 23120-23126 (2000)) 。
【発明の開示】
【0010】
本発明は,化合物ナイルレッド及びナイルブルーの誘導体である細胞及び/または細胞の部分を選択的に染色するための発色団に関する。そして,1,2,3位のいずれかにおける一定の誘導体が睾丸の幹細胞及び精母細胞及び小腸の全ての核を染色することができることが示されている。
【0011】
本発明の詳細な説明
ここで,本発明の化合物が細胞の染色のための選択的な発色団であり,該化合物が下記の一般式Iの蛍光発色団を含むことが見出された。


式中,1,2または3位の一つのみが置換基を有し,Rはプロピニル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるアミノアルキル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるメトキシ−(エトキシ)−アルキル基(nは0〜4である),アルキル基の炭素原子数が2〜10である(トリメチルアミノ)−アルキルまたは(トリエチルアミノ)−アルキル または(トリプロピルアミノ)−アルキルまたはアセチルアミノアルキル基またはアルキル基の炭素原子数が2〜10である(イソインドリニル−1,3−ジオン)−アルキル基を表し,XはOまたはNであり,R’は水素,メチル基,エチル基あるいはプロピル基である。
【0012】
プロピル基は末端位に三重結合を有する。
【0013】
本発明の別の態様は,式IIの無色の中間体に関する。


式中,R,n,R’及びXは上述の意味を表し,R’’はメチル基,エチル基,プロピル基およびブチル基のような低級アルキル基を表すか,Xが5位でNの場合はR’’はアミノ酸またはペプチド配列を表し得る。この化合物はエステラーゼあるいはフォスファターゼのような酵素との相互作用により,5位のXが二重結合を介して芳香環に結合するOまたはN結合を表す対応する式Iの化合物に転化する。適正なRが適正な位置に存在する場合,転化された化合物は,存在する場合にはその特異的な細胞に入る。
【0014】
Xが5位でOであるこれらの場合,中間体化合物はリン誘導体を形成する式IIbであり得る:


上述のように,式II及びIIbの化合物は,エステラーゼ,アミダーゼ,フォスファターゼ及び他の酵素のような酵素活性を示すために使用することができる。上述のように,それらは無色であるが,酵素反応で特徴的な着色を得るであろう。
【0015】
選択的且つ迅速な染色に対する要求は,新しい蛍光染料の設計を刺激する。この研究において合成された染料は,置換基の位置及び置換基自体に応じて異なる細胞を染色する。例えばPA−2はラットの睾丸の幹細胞を選択的に染色し,これに対し,PASU−2は精母細胞と精子を染色する。結果として,比較的小さな分子の変化が染料の選択性を変える可能性がある。細胞染色は組織に添加された染料の濃度にも依存する。
【0016】
分子レベルでの多くの染料の特異性の相対的な欠如は,より選択的な発蛍光団及び染色方法の設計を刺激する。優れた染料は,可視または近可視〜近赤外領域(600〜1000nm)で作用すべきであり,大きなストークスシフト及び化学的及び光化学的安定性を有するべきである。殆どの生物学的発色団ははるかに低い波長で光を吸収し発するので,このスペクトル領域で光を吸収する分子は生体分子の蛍光からの光学的影響を受けにくいという利点を有する[3−5]。また,ラジカルの発生が最小限にされている望ましい作用領域でもあり,これにより光退色および光毒性の危険が減少する。我々は,迅速且つ選択的な染色方法のための新しい発蛍光団を発見しようと,発蛍光団ナイルレッドをベースとして4つの置換された染料の調査及び研究を行った。ナイルレッドは非常に疎水性が高く親油性の部分に結合する溶媒和発色染料(solvatochrome dyes)である。結果として,それは脂質の染色に使用されてきているが,いくつかの脂質の極性を測定するための溶媒和発色プローブとしても使用される[6−8]。フェノキサジン染料は双極子モーメントの変化による80〜100nmの大きなストークスシフトを有する傾向があり,ナイルレッドは,550nmより高いエネルギーを吸収する高度に蛍光性の染料としての利点を有する[9]。この新しい染料をラットの睾丸の切片に添加し,親和性が小分子の変化により変化し得るかを調べた。異なる型の細胞を含有するため,睾丸の薄片が好ましかった。
【0017】
これらの染料を細胞内の事象を調べるために用いることもできる。例として,有糸核分裂,細胞増殖を図3に示す。
【0018】
本発明の別の態様は,細胞の質と量についての分別方法,細胞のターゲティング方法,並びに癌治療の後または最中のような細胞治療または放射線治療後の細胞内構造または部分の存在の決定を含む細胞の同定方法を含む。
【0019】
新しいクラスの赤色の蛍光発光ベンゾフェノキサジン染料を合成した。これらの新しい染料は異なる細胞を染色する。PA−2は睾丸中の幹細胞及び精母細胞,並びに小腸の全ての核を染色する非常に蛍光性の高い染料である。PASU−1は,異なる細胞及び細胞の部分を染色するPASU−2及びPASU−3に比べて親和性を有しない。
【0020】
細胞の選択的な染色は,細胞を分別することを可能にし,従ってそれらは個々に研究され得る。幹細胞生物学の研究は睾丸におけるこれらの細胞の数が少なく,おそらく10個の睾丸細胞に2個程度であるため複雑であり,それらを豊富にする方法の開発が必要である。[10,11]。胚細胞からの精子の形成は,雄の生殖寿命の全体にわたる精液を生じる細管中で起こる精子形成として知られている細胞学的な事象の結果である(図1)。この工程は,精子形成を刺激するか阻止するホルモンの信号へ変換される環境上の合図に基づいて中断されるか一連の別の相に細分化される[12,13]。三つの主な相があり,第一は,有糸核分裂の工程の幹細胞の再生である。なお,精子形成の工程のための幹細胞を精原細胞と命名する。精原細胞は減数分裂に入ることにより第一の及び第二精母細胞になる。これが第二段階である。第三の工程において,精細胞を形成するために,第二精母細胞は減数分裂によって分割され,それらは最終的には成熟した精子になる。精子形成は,細管の基部で始まり,そして細胞の分化とともに,次第に細胞は細管のルーメンの方へ移動する。これが,分割しないまたは安定した数のセルトリ細胞集団により達成される生殖活性の波となる[12]。睾丸で起きている全反応を理解するにはまだ解明しなければならないシグナル経路がある。精原幹細胞の生化学的及び分子的性質はまだ記述されていない。これは,これらの細胞を明白に同定するための機能的なアッセーがまだ利用可能ではないからである[14,15]。もし知識が非選択性の染料,環境及び時間を消費する染色方法によって制限されなければ,例えば今日では極めて一般的な生殖の問題において強化された理解を与える新しい機会が現れるであろう。
【0021】
比較的小さい分子変化により染料の親和性を変化させる可能性がある。結果も組織に添加される染料の濃度に依存しているようである。さらに,染料は感度が限られているので,特定の細胞の日常的な検出のための単純且つ選択性の蛍光方法の開発及び利用がかなり有利である。
【0022】
発蛍光団/発色団は,細胞内の特定の部分に結合するので,細胞内の標的タンパク質の挙動を追跡する分析に使用することができる。皮膚,肺,甲状腺その他の組織中の外来細胞を見つけること。これは通常は非常に困難である。なぜならそれら外来細胞はその周囲とは差異がないように見えるからである。
【0023】
本発明は,この合成を記載し,異なる型の細胞の選択的染色を示す。これらの染料の選択性の例として,これらの染料のいくつかがいかに同じ組織材料を異なって染色するかを実施例に示す。
【0024】
いかに異なる細胞が染色されるかを示す写真
本発明に記載された化合物は,生存細胞の培養液の染色にも使用され得る。例として,図1及び2に明らかに示されるように,レセプターを同定する。図1には,細胞内の特定結合が示されており,図2は殆ど非特異的な結合,即ち蛍光の均一な分布を示す。
【0025】
図2では該レセプターは刺激を受けていないので,蛍光マーカーは細胞内で均一に分布している。図1には,染色によるレセプターの活性化が示されており,該染料はこのレセプターのみに結合するであろう。さらに化学物質を添加することにより該レセプターが活性化されると,蛍光マーカーが好ましく活性化するように結合する。これは,細胞の小さい点のみが蛍光を示すという事実により可視化されてきた。従って,これらの化合物は,細胞内のタンパク質の既知及び未知の特定部位/レセプターをサーチするのに使用することができる。蛍光化合物の置換基がどの部位にも適合しない場合は,蛍光は細胞内に均一に分散するであろう。しかし,逆に該置換基が部位に適合すれば,蛍光が細胞内の小さな点としてのみ示されるであろう。
【0026】
蛍光顕微鏡は,切片の染色に使用される染料から発した波長のみを許容するので,非常に感度の高い器具である。蛍光標識及び蛍光顕微鏡を使用することにより,染料の感度の問題は解決すると考えられた。蛍光染料も感度及び特異性が限られており,染料の物理的性質に依存する。成功する蛍光標識は,多くの性質を有しなければならない。それは,大きなストークスシフトを有するべきであり,化学的及び光化学的安定性を有するべきであり,600〜1000nmの領域の光を吸収すべきである。この吸収間隔は,望ましくは生物分子の蛍光からの妨害が最小限となり,光分解の危険性の少ない望ましい作用領域である。大きなストークスシフトは,励起波長と発光波長を区別するのに必要なフィルターの型を単純化するのに有用であり,これにより感度の制限が改良される。
図1


PASU−2(4b)及びPA−2(5)関連化合物の合成及び構造
(i)NaNO/HCI;
(ii) 1,6−ジヒドロキシナフタレン/DMF;
(iii) N−(3−ブロモプロピル)−フタルイミド/KCO/DMF;
(iv)N/EtOH/HCI
PASU−5(4a)及び7(4c)は(ii)が各々1,5及び1,7−ジヒドロキシナフタレンであるという一つの例外を除いて同様の方法で合成した。
【0027】
ナイルレッドの誘導体(図1)を合成し,これによるラットの睾丸及び小腸切片の染色を調べた。ナイルレッドは一群の蛍光染料を提供するベンゾフェノキサジン化合物の一種であり,種々の用途において生物分子の標識に使用することができる。フェノキサジン染料は,80〜100nmの大きなストークスシフトを有する傾向がある。ナイルレッドは高度に蛍光性の染料であり,550nm以上のエネルギーを吸収する。従って,脂質の染色に主に使用されており,いくつかの脂質の溶媒度を測定する溶媒和発色プローブとしても使用されている。
【0028】
結果及び議論
合成
1−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−1),
2−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−2),
3−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−3)及び
2−(3−アミノプロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジンン−5−オン(PA−2)を図1に概略を示したように,且つ下記の実施例に従って合成した。フェノール2は塩酸中,ジメチルアミノフェノール1のニトロソ化により容易に得られた[16]。その後,化合物2を,各々1,5,1,6及び1,7−ジヒドロキシナフタレンと縮合させ,ナイルレッド誘導体3a,3b及び3cを製造した。これらの化合物を全てN−(3−ブロモプロピル)−フタルイミドで置換し,PASU−1,2及び3を得た。誘導体3bはまたトリメチルアンモニウムプロピルブロマイドとも反応させ,化合物4を製造した。その後,PASU−2をヒドラジンによる還元により化合物PA−2に転化した。
【0029】
睾丸及び小腸の染色
医学を含む多くの領域で,研究者や技術者はしばしば細胞を同定または分別する必要がある。もし結果が疾病状態の存在を示すことができるのであれば,そのような用途は迅速で,高感度で且つ選択的な方法を要求する。これらの染料のために開発された染色方法は,1回,15分間のインキュベーション,染色工程のみを含む。通常選択性を得るためのブロッキング工程(72時間以上)を要するこの分野における他の染色工程と比較すると,時間の節約になる。合成された化合物の励起及び発光最大値は,可視スペクトルの赤色領域にあった(図10)。これは緑の領域と比較して,蛍光顕微鏡法の感度を増加させる。細胞成分は,通常は赤色光に対して透過性であり,赤色レーザーは緑色レーザーよりも安価である。
【0030】
重要性
所定の細胞の中にあるほとんどの高分子は比較的少数のコピーであり,異なる疾病を理解するためにより多くの反応カスケードを解明しなければならないので,染料の特異性が上がる。蛍光染料は,非蛍光分子より感度が高いが,それでも限界がある。多くの利用可能な染料の化学的ベースでの親和性はまだ知られていない。我々は分子のレベルで小さな差異のある4つの発色団を開発し,それらを組織学的に研究した。これらの染料はラットの睾丸及び小腸の切片の染色において異なる特性を示した。例えば化合物2−(3−アミノプロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−2)は,睾丸における幹細胞及び精母細胞並びに小腸の切片における全ての核に高い親和性を有する。合成された他の染料である2−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−2)は,精子及び精細胞に対する指向性を有する。この場合,結果は小腸における染料の濃度により大きく異なる。研究した化合物は,生物学的検出のための蛍光染料の重要な性質である550nmで大きなストークスシフトを有する。
【0031】
これらの化合物の分子親和性はまだわからないが,小さな分子変化でさえ細胞及び細胞の部分に対する特異性を変化させることは興味深い。
【0032】
ヒト線維肉腫細胞の染色
これらの染料をヒトの線維肉腫の細胞系HT80に添加したところ,PASU及びPAは,細胞膜を染色するPATM−2と比べて細胞膜の大きな透過性を示した。PATM−2が細胞の細胞質に達しない理由はそのカチオン組成による。分子の正に帯電した部分は細胞膜に存在するリン脂質のアニオン性リン酸基に結合するかもしれない。PASU染料は帯電しておらず,比較的小さい分子なので,細胞の外層を通り抜けることができる。図8は,PASU−2がいかに細胞質を染色するが,この研究で使用された癌細胞の核は染色しないかを示す。どの染料が親和性を有するかの疑問に答えるためには,さらなる調査を行わなければならない。さらに,これらの染料を細胞のレセプターの検出に使用することができる。該染料がレセプターに適合しない時は,細胞質に均一に分散する。染料がレセプターに結合しなくなるレセプターの形状変化を誘導する物質を添加するか,不活性化したレセプターに適合する置換基を有する染料を使用することにより,ターゲット,レセプターを小さな蛍光粒子,いわゆるピットとして検出できる。従って,これらの染料はレセプターの検出に使用することができ,レセプターの形状変化,レセプターの活性化−不活性化を追跡できる。
【0033】
材料及び方法
装置及び試薬
核磁気共鳴(Nuclear magnetic resonance; NMR)スペクトルは,重水素を含むジメチルスルホキシド(DMSO)またはDMSOを数滴添加したクロロホルム(CDCl)を用いて400MHzでバリアン(Varian)UNITY−VXR 500分光計に記録した。質量スペクトルは電離技術として電子衝撃(EI)を使用して,フィニガンマット(Finnigan MAT) TSQ 700(サンホセ,カリフォルニア州)に記録した。クロマトグラフィーはシリカゲル(Merck,等級60,70−230メッシュ,60ナ)を使用して行った。試薬はアルドリッチケミカルカンパニー (Aldrich Chemical Company) (ミルウォーキー,ウィスコンシン州)から購入し,さらに精製することなく使用した。蛍光顕微鏡実験は,プランネオファー(Plan Neofuar)40/0.9Imm Ph3及びプランネオファー25/0.8W−Oel Ph2対物レンズを備えたツァイス顕微鏡 (Zeiss microscope)(西ドイツ)を用いて行った。ウィンダー (Winder) M35カメラを顕微鏡画像を得るために使用した。
【0034】
化合物3:a及びbの合成(出発物質)
5−ジメチルアミノ−2−ニトロソフェノール塩酸塩(2.0g,10mmol),1,5,1,6および1,7−ジヒドロキシナフタレン(1.6g,10mmol)を各々ジメチルホルムアミド(DMF)(50ml)中で還流して4.5時間160℃に加熱した。この混合物を水(400ml)に注ぎ,沈殿物をろ過によって集めた。純度を上げるために,この固体をアセトン中で10分間還流し,一晩+8℃で保存した後,ろ過した。ほんの少量しか得られなかったので,酢酸エチルを添加することにより,ろ液からさらに生成物を沈殿させ,+8℃で一晩放置した。その後,ろ過により生成物を集めた(1.5g,収率49%)。
【0035】
PASU−1,2及び3(化合物4:a,b及びc)の合成
化合物3:a及びb,各々(0.9g,3mmol)及びN−(3−ブロモプロピル)−フタルイミド(0.8g,3mmol)を,乾燥したジメチルホルムアミド(30ml)に部分的に溶解したKCO(8.3g,60mmol)に添加した。この混合物を80℃で4.5時間撹拌し,一晩室温で放置した。この反応を酢酸エチル中で薄層クロマトグラフィー(TLC)によって完了した。生成物を酢酸エチル(75ml)中で沈殿させ,ろ過により集め,水及びアセトンで洗浄して,所期の生成物(700mg,収率47%)を得た。H−NMR (CDCl):H−NMR(CDCl),PASU−2:2.18(m,2H),3.11(s,6H),3.90(t,2H),4.22(t,2H),6.13(s,1H),6.45(s,1H),6.68(d,1H),6.94(d,1H),7.56(d,1H),7.71(s,2H),7.80(s,2H),7.90(s,1H),8.04(d,1H).H−NMR(CDCl),PASU−3:2.26(m,2H),3.14(s,6H),3.97(t,2H),4.22(t,2H),6.41(s,1H),6.54(s,1H),6.72(d,1H),7.14(d,1H),7.64(d,1H),7.66(s,1H),7.74(s,2H),7.86(s,2H),8.54(d,1H)
【0036】
PA−2(化合物5)の合成
化合物4c(0.6g,1.2mmol)及びN(0.1g,2.2mmol)を,エタノール(2g)に添加し,90℃に加熱した。この反応をエタノール中,TLCで続け,1.5時間後に完了した。HCl(0.3ml,5mmol)をヒドラジン水和物を分解するために添加し,反応をさらに0.75時間続けた。反応物を室温で1時間放置した後,濾過し,水洗した。濾液を蒸発させてエタノールを除去し,過剰のNaOH水溶液(20%)で塩基性にした。生成物をCHCl(700ml)で抽出し,蒸発により集めた。合成した染料を精製するために,クロマトグラフィを行った。H−NMR(CDCl),2.15(s,2H),3.20(s,6H),4.10(t,2H),4.11(t,2H),6.42(s,1H),6.57(d,1H),6.96(d,1H),7.47(d,1H),7,83(s,1H),8.01(d,1H),8.13(s,1H),8.13(s,2H)
【0037】
PATM−3(化合物5’)の合成
CO(0.8g,0.33mmol)を部分的に乾燥したDMF(4ml)に添加し,化合物3c(0.1g,0.33mmol)及び(3−ブロモプロピル)トリメチルアンモニウムブロマイド(0.09g,0.33mmol)を各々添加した。この混合物を80℃に加熱し,反応物を酢酸エチル中のTLCで3.5時間後に完結させた。生成物を酢酸エチル中(20ml)で沈殿させ,濾過し,アセトンで洗浄した。H−NMR:2.35(m,2H),3.05(s,6H),3.25(s,9H),3.55(t,2H),4.30(t,2H),6.25(s,1H),6.75(s,1H),6.85(d,1H),7.30(d,1H),7.65(d,1H),8.00(s,1H),8.10(d,1H)
【0038】
同様の方法により下記の化合物を製造した。
1−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−1),
2−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−2),
3−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−3)
9−ジメチルアミノ−1−(トリメチルアンモニウム−プロポキシ)−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PATM−1)
9−ジメチルアミノ−2−(トリメチルアンモニウム−プロポキシ)−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PATM−2)
9−ジメチルアミノ−3−(トリメチルアンモニウム−プロポキシ)−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PATM−3)
1−(3−アミノ−プロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−1)
2−(3−アミノ−プロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−2)
3−(3−アミノ−プロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−3)
1−(3−プロピン−1−オキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン
2−(3−プロピン−1−オキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン
3−(3−プロピン−1−オキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン
【0039】
染色
染料のストック溶液をPBSまたはPBS+トリトン(Triton)−xで5μg/mlに希釈し,固定した及び未固定の成熟線維肉腫細胞の細胞系HT80に添加した。時間がないため,トリトン−xで処理していない生存細胞のみを結果で論じる。
【0040】
睾丸の染色
睾丸組織は,別の研究で対照として使用された雄のスプラグ・ドウリー(Sprague-Dawley)ラットから得た。組織を4%ホルムアルデヒドで固定し,4μmの厚さの切片に切り,脱ロウし,水和した。5mg染料/mlDMSO及びエタノールを含むストック溶液を調製した。これらを,水で0.05,0.5,5,10,及び50μg/mlに希釈した。実験の時に,各溶液の各々100μlを各々切片に添加した。切片を15分間インキュベートし,過剰の染料を水で洗浄することにより除去した。
【0041】
医学を含む多くの領域で,研究者や技術者はしばしば細胞を同定または分別する必要がある。もし結果が疾病状態の存在を示すことができるのであれば,そのような用途は迅速で,高感度で且つ選択的な方法を要求する。この報告書でこれらの染料のために開発された染色方法は,1回,15分間のインキュベーション,染色工程のみを含む。合成された化合物は,550nm近辺の光を吸収し,660nm近辺で最大の発光がある。
【0042】
置換基としてのベンゾスクシンイミジル基の位置が染料の親和性を変えると仮定して,睾丸を二つのPASU染料で染色した。PASU−2は,睾丸中の単一の染色体の半数を有する細胞のみを染色するので,互いに密接に関係のある精細胞および精子に結合する。PASU−3は精細胞及び精子ではなく幹細胞を染色する。PA−2で染色する場合,組織に添加される染料の濃度が染色される細胞を決定する。最も低い濃度0.05μg/mlでは,幹細胞だけが染色された。染料の量が0.5μg/mlに増加されると,胚細胞及び精細胞が蛍光を発した。高含有量,10μg/mlのPA−2を使用した場合,精母細胞も染色された。PATM−2は胚細胞を染色したが濃度依存性は示さなかった。
【0043】
重要性
適切な像形成装置と組み合わせた蛍光染色は広く使用される高感度の方法である。不運にも,商業的に入手し得る染料の多くは特異的な親和性が欠如しているため,限界がある。免疫化学は抗体とやはり非特異的結合の製剤である発蛍光団を含む分子組織学の強力なツールである。免疫学的染色は,インキュベーションにより時間を消費するという欠点を有する。単純な染色法によって使用することができる新しい分子構造は,時間の節約および染料の特異性の両方を解決することができる。我々は,分子のレベルで小さな差異を有する4つの発蛍光団を開発し,それらを組織学的に研究した。研究された化合物は大きなストークスシフトを有し,550nmで光を吸収する。これは蛍光染料の重要な性質である。ラットの睾丸の切片を染色したところ,異なる染色パターンが得られた。例えば,2−(3−アミノプロポキシ)−9−ジメチルアミノベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−2)は睾丸中,低濃度で幹細胞への親和性を有する。該合成染料は,比較的小さい分子変化が全く異なる染色パターンをもたらすことを示す。これらの化合物の分子親和性は知られていないが,現在進行中である。
【0044】
蛍光顕微鏡法と画像処理
蛍光顕微鏡実験は,プランネオファー40/0.9I mm Ph3及びプランネオファー25/0.8W−Oel Ph2対物レンズを備えたツァイス顕微鏡(西ドイツ)を用いて行った。ウィンダー(Winder) M35カメラを顕微鏡画像を得るために使用した。
【0045】
選択的な染色の結果は上述の添付写真から明白である。
【0046】
毒物学
本化合物は二本鎖DNAへのインターカレーションにより細胞毒性であると考えられる。一般通念により,この作用はインターカレーション剤が適所にある間の転写のブロッキングに基づくと考えられる。親水性の残基は細胞毒性分子の反対側にあり,従って複合体の外部に露出し,転写の集結をコードするために配置される。これはRNAポリメラーゼをそのポイントで解離させ,不完全で機能を有しないポリマーを残す。
【0047】
毒性は,数えられた細胞の数対希釈度のグラフである図4に示されている。
【0048】
図5〜10は,本発明の原理及び精子形成における睾丸細胞の染色の結果を示す。
【0049】
図5は,染料自体は選択的な染色を提供しないが,染料の置換基が選択性を提供することの原理を示す。
【0050】
図6は,選択性の理由,一定の部位,レセプター部位へのヴィズ結合(viz binding)を示す。
【0051】
図7は,結合部位のタイプによる答えの差を示す。
【0052】
図8はそれらが異なる結合部位を提供する時の細胞に結合時の答えの違いを示す。
【0053】
図9は精子形成を示し,下側の写真の右に幹細胞から精子の形成が示され,下側の写真の左に,細胞表面に移動中の精子が示され,上側の写真に睾丸細胞の表面に移行した精子が示されている。
【0054】
図10は生存細胞の着色を示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
記載無し
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式Iの蛍光発色団を含む細胞または細胞の部分の選択的な染色のための発色団。


式中,1,2または3位の一つのみが置換基を有し,Rはプロピニル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるアミノアルキル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるメトキシ−(エトキシ)−アルキル基(nは0〜4である),アルキル基の炭素原子数が2〜10である(トリメチルアミノ)−アルキルまたは(トリエチルアミノ)−アルキル または(トリプロピルアミノ)−アルキルまたはアセチルアミノアルキル基またはアルキル基の炭素原子数が2〜10である(イソインドリニル−1,3−ジオン)−アルキル基を表し,XはOまたはNであり,R’は水素,メチル基,エチル基あるいはプロピル基である。
【請求項2】
前記Rのアルキル基が3〜4の炭素原子を有し,R’がメチル基である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
下記の化合物:
1−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−1),
2−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−2),
3−[3−(9−ジメチルアミノ−5−オキソ5H−ベンゾ[a]フェノキサジン−2−イルオキシ)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(PASU−3)
9−ジメチルアミノ−1−(トリメチルアンモニウム−プロポキシ)−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PATM−1)
9−ジメチルアミノ−2−(トリメチルアンモニウム−プロポキシ)−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PATM−2)
9−ジメチルアミノ−3−(トリメチルアンモニウム−プロポキシ)−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PATM−3)
1−(3−アミノ−プロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−1)
2−(3−アミノ−プロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−2)
3−(3−アミノ−プロポキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン(PA−3)
1−(3−プロピン−1−オキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン
2−(3−プロピン−1−オキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン
3−(3−プロピン−1−オキシ)−9−ジメチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサジン−5−オン
【請求項4】
下記式Iの化合物を含む細胞の選択的染色のための化合物。


式中,1,2または3位の一つのみが置換基を有し,Rはプロピニル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるアミノアルキル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるメトキシ−(エトキシ)−アルキル基(nは0〜4である),アルキル基の炭素原子数が2〜10である(トリメチルアミノ)−アルキルまたは(トリエチルアミノ)−アルキル または(トリプロピルアミノ)−アルキルまたはアセチルアミノアルキル基またはアルキル基の炭素原子数が2〜10である(イソインドリニル−1,3−ジオン)−アルキル基を表し,XはOまたはNであり,R’は水素,メチル基,エチル基あるいはプロピル基である。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか1項記載の化合物の一つまたはそれ以上で分別すべき細胞を染色することにより,選択的な発色団を用いて細胞を分別及び/または数えるための方法。
【請求項6】
細胞の定性的分別を行う請求項5記載の方法。
【請求項7】
細胞の定量的分別を行う請求項5記載の方法。
【請求項8】
目的とする細胞を請求項1〜3いずれか1項記載の選択的発色団の一つまたはそれ以上を用いて染色することによる選択的細胞のターゲティング方法。
【請求項9】
請求項1〜3いずれか1項記載の選択的発色団の1つまたはそれ以上を用いて同定すべき細胞を選択的に染色することによる細胞の同定方法。
【請求項10】
細胞が細胞治療後の構造の存在について同定される請求項9記載の方法。
【請求項11】
細胞が放射線治療の後の存在及び/または構造について同定される請求項9記載の方法。
【請求項12】
下記式II


または5位のXがOの場合の式Iib


式中,1,2または3位の一つのみが置換基を有し,Rはプロピニル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるアミノアルキル基,アルキル基の炭素原子数が2〜10であるメトキシ−(エトキシ)−アルキル基(nは0〜4である),アルキル基の炭素原子数が2〜10である(トリメチルアミノ)−アルキルまたは(トリエチルアミノ)−アルキル または(トリプロピルアミノ)−アルキルまたはアセチルアミノアルキル基またはアルキル基の炭素原子数が2〜10である(イソインドリニル−1,3−ジオン)−アルキル基を表し,XはOまたはNであり,R’は水素,メチル基,エチル基あるいはプロピル基であり,R’’はメチル基,エチル基,プロピル基およびブチル基のような低級アルキル基を表すか,Xが5位でNの場合はR’’は−Oアセチルまたは−Nアセチルに酵素を作用させると式Iの化合物に転化することができるアミノ酸またはペプチド配列を表すことができ,Xが5位のOまたはNを表す対応する式Iの化合物を生じさせる中間体化合物。

【公表番号】特表2006−503119(P2006−503119A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−511280(P2004−511280)
【出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【国際出願番号】PCT/SE2003/000947
【国際公開番号】WO2003/104210
【国際公開日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(504446571)
【Fターム(参考)】