説明

選択的神経ペプチドY2受容体作動薬

本発明は、インビトロでは選択的NPY2受容体作動薬として作用しかつインビボでは食物摂取量を低下させるに有効であるペプチドを提供する。本発明は、特定群の誘導体化NPY関連ペプチドまたはこれらの機能的同等物から選択したペプチドである。本発明は、また、哺乳動物における代謝病を治療する方法にも向けたものであり、この方法は、前記哺乳動物に本ペプチドを食物摂取および体重を低下させる治療的に有効な量で投与することを含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2003年11月25日付けで出願した米国仮出願連続番号60/525,482(これの内容は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)の利点を請求するものである。
【0002】
本発明は神経ペプチドY2(NPY2)受容体の選択的作動薬であるペプチドおよび前記ペプチドを治療の目的で用いることに関する。本発明のペプチドは体重減少および/または食欲またはカロリー摂取量の調節で用いるに有用であり、それによって、代謝疾患、例えば肥満、2型糖尿病、摂食障害、インスリン抵抗症候群(X症候群)、耐糖能異常(IGT)、異常脂質血症および心疾患などにかかっている人に治療任意選択を与えるものである。
【背景技術】
【0003】
肥満および関連した疾患は米国および世界中の共通した非常に重大な一般健康問題である。肥満は高血圧、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、卒中、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群など、乳癌、前立腺癌、結腸癌、および全身麻酔合併症罹病率の増大にとって危険であると認識されている要因である。加うるに、肥満はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とも非常に関連しており、NIDDM患者の80%以上が肥満である。従って、肥満は社会に負担をかける危険性が高い医療の一因になり、有効な治療が必須である。
【0004】
神経ペプチドY(NPY)、ペプチドYY(PYY)および膵臓ペプチド(PP)は膵臓ペプチド(PP)ファミリーの員であり、これらはチロシンアミドをカルボキシ末端に有しかつ保存C末端アミノ酸を6個有するアミノ酸数が36の配列を有することで特徴づけられる。5種類の神経ペプチドY受容体サブタイプ(NPY1、NPY2、NPY4、NPY5およびNPY6)が知られていて、これらの受容体が多種多様な生理学的作用の責任を負っていて、そのような作用には、摂食調節、エネルギー恒常性、移動運動、発作、体温調節、日周期、不安、心肺機能、痛覚および生殖能力が含まれる。PYYの主要な循環形態であるPYY(3−36)(これはPYYの残基3−36に相当する)は少なくとも3種類のNPY受容体サブタイプ(NPY1、NPY2およびNPY5)と相互作用する。
【0005】
食欲を低下させる目的でPYYを末梢投与することが1993年に初めて報告された(非特許文献1)。最近、PYY(3−36)が齧歯類およびヒトの食欲を抑制することが報告された(非特許文献2)。しかしながら、PYY(3−36)が食欲を抑制する能力を再現するのは容易ではなく(非特許文献3)、このことは、未修飾のPYY(3−36)は必ずしも肥満治療に有効な治療任意選択ではないことを示唆している(非特許文献4)。PYY(3−36)はNPY2受容体サブタイプが欠如しているマウスの摂食に対しては全く効果を示さないが野生型の同種動物(litter mates)では摂食を抑制することが確認されたことで、PYY(3−36)はNPY2受容体を通して摂食を調節していると言った仮定が裏付けられた。PYY(3−36)を中枢に投与するとNPY1およびNPY5受容体によって調節される摂食が強く刺激される。NPY1受容体が活性化すると結果として血管収縮がもたらされる(非特許文献5)一方、NPY5受容体の活性化は心筋細胞の肥大に関係していると考えられている(非特許文献6)。NPY1およびNPY5受容体よりもNPY2受容体が選択されるようにすることができれば、副作用の度合が低下しかつ安全性プロファイルが改善する可能性があると言った利点がもたらされるであろう。そのようにNPY2受容体の効力のある選択的作動薬を開発することができれば、それは肥満の治療にとって望ましいことである。また、NPY2受容体の選択的作動薬は肥満に関連した共存症、2型糖尿病、摂食障害、インスリン抵抗性症候群(X症候群)、耐糖能異常(IGT)、異常脂質血症および心疾患を軽減する可能性もある。
【非特許文献1】Okada,Endocrinology Suppl:180,1993
【非特許文献2】Batterham,Nature 418:650-654,2002
【非特許文献3】Tschop,Nature 430:165,2004
【非特許文献4】Tschop,Nature 430:165,2004
【非特許文献5】Pedrazzini,Nature Med. 4:722-6,1998
【非特許文献6】Bell,J. Pharm. Exp. Ther. 303:581-591,2002
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明は、NPY2受容体の選択的作動薬として機能するペプチドを提供するものであり、本ペプチドは、NPY2受容体作動活性を有する薬剤によって改善され得る病気および状態の治療で使用可能である。本ペプチドは、例えば、これらに限定するものでないが、摂食を抑制しかつ体重減少を助長する。本発明のペプチドは、NPY1およびNPY5受容体に作用する度合よりもNPY2受容体に作用する度合の方が大きい選択的NPY2受容体作動薬である。
【0007】
本発明は、また、哺乳動物における肥満および/または本発明のペプチドによって影響を受ける、好適には本発明のペプチドが示すNPY2受容体作動機能による影響を受ける他の病気または状態を治療する方法にも向けたものであり、この方法は、前記哺乳動物に本発明のペプチド、例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドなどのいずれかまたはNPY2に作用するペプチドのいずれかを治療的に有効な量で投与することを含んで成る。
【0008】
本発明のペプチドは、また、肥満に関連した疾患、例えば糖尿病、X症候群、耐糖能異常、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、高コレステロール血症、低HDL濃度、高血圧、心疾患(アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、冠動脈疾患および高血圧を包含)、脳血管疾患および末梢血管疾患および本明細書に示す他の病気の予防および/または治療にも使用可能であるか、或は本明細書の以下に記述するように、他の様式でも機能し得る。
【0009】
本発明の1つの面は、式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドおよびこれらのPEG化(PEGylated)誘導体、およびこれらのフラグメント、誘導体および変異体[本明細書に記述するペプチドが果たす生物学的機能と実質的に同じ少なくとも1種の生物学的機能を示す](これらの機能的同等物を包含)(集合的に「本発明のペプチド」)から成る群から選択したペプチドである。
【0010】
本発明の別の態様は、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばSEQ ID NO:7−11)および本発明のペプチドを組換え的に発現させるに必要な付随ベクターおよび宿主細胞である。
【0011】
また、本発明のペプチドと選択的に結合する抗体および抗体フラグメントも提供する。そのような抗体は本発明のペプチドの検出で用いるに有用であり、これらは本技術分野で良く知られた手順を用いて識別および製造可能である。例えば、本発明のペプチドを認識するポリクローナルN末端IgG抗体およびモノクローナルC末端Fab抗体などを生じさせた。
発明の説明
本発明は、式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドおよびこれらのフラグメント、誘導体および変異体[前記ペプチドが果たす生物学的機能と実質的に同じ少なくとも1種の生物学的機能を示す](集合的に本発明のペプチド)を提供する。本発明のペプチドは、インビトロでは受容体活性化の意味で内因性リガンド(例えばNPYまたはPYY)に相当する機能的反応を示す選択的NPY2受容体作動薬として機能しそしてインビボでは食物摂取量を低下させる。本発明のペプチドは、受容体選択性の意味で天然のリガンドであるPYYおよびNPYよりも向上しており、それによって、NPY1およびNPY5受容体作動性による望まれない他の影響を誘発することなく潜在的に食物摂取量を低くする。従って、本発明のペプチドは食物摂取量を低下させかつ体重減少を助長する。
【0012】
天然に存在するNPY2受容体作動剤であるNPYおよびPYYはNPY2、NPY1およびNPY5受容体の作動剤である。NPY1受容体にもNPY5受容体にも作用しないか或はそれらに作用する度合が最小限である選択的NPY2作動薬を開発することができれば、これは望ましいことである。
【0013】
PYYのN末端残基を欠失させることでNPY1またはNPY5受容体と結合しない選択性を与えることは可能である(Balasubramaniam,Peptide Res.,1:32-35,1988)。しかしながら、それに伴ってまたNPY2受容体への親和力も顕著に低下し、その結果として、NPY2受容体作動性が不足してしまう。NPYのペプチドフラグメントにアセチル化を受けさせると、結果として、PYYの長い方のフラグメントに関して以前に示されたように(Murase,J. Biochem. 119:37-41,1996)、NPY2受容体への親和性がより高くなる。本発明は、NPY2受容体への親和性が顕著に高いと同時にNPY1およびNPY5受容体に作用しない選択性を保持している新規なN末端修飾物[例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチド]を提供するものであり、これは、望まれる属性、例えば薬効の改善などがもたらされるように機能的誘導体化を受けさせるに適する。
【0014】
高度に切断されたペプチドの有益なN末端修飾に関する最新技術はPYY(25−36)のアセチル化である(例えばMurase,J. Biochem. 119:37-41,1996)。そのようなアセチル化ペプチドは、NPY2親和性の意味で未修飾ペプチドよりもいくらか改善していることが確かめられたが、インビボ効力を改善させる修飾、例えばPEG化または脂質化などによる部位特異的誘導体化には適さない。
【0015】
本発明は、現存の修飾であるアセチル化に比べてNPY2受容体への親和性および活性がより高いと同時にNPY1およびNPY5受容体に作用しない選択性を保持している新規な修飾物を提供するものである。1番目のペプチド残基が有するアミノ基の所に起こさせるそのようなN末端修飾には、脂肪族、5員もしくは6員のアルキル、窒素もしくは硫黄ヘテロ原子を1個以上含有する5員もしくは6員の複素環による修飾が含まれ得る。加うるに、そのようなN末端修飾によって適切な誘導体化用部位(アミノおよびチオール基)を与えることも可能である。そのようなN末端修飾の例には、これらに限定するものでないが、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノ−2−クロロ−安息香酸、4−アミノ−3−メトキシ−安息香酸、4−アミノ−3−メチル−安息香酸、1−アミノ−シクロペンタン−3−カルボン酸、トランス−3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、D−ピペコリン酸、4−アミノ−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸、4−メチルチオ安息香酸、2−メチルチオ安息香酸、2−メチルチオニコチン酸、プロリン、6−アミノヘキサン酸、安息香酸、(S)−テトラヒドロイソキノリン酢酸、インドリン−2−カルボン酸、シス−3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、L−ピペコリン酸、9−グルオレニルメトキシカルボニル、2−チオ−ポリエチレングリコール(5kDa)安息香酸、2−チオ−ポリエチレングリコール(5kDa)ニコチン酸、4−アミノ−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸、1−アミノ−シクロペンタン−3−カルボン酸、4−アミノ−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸、1−アミノ−シクロペンタン−3−カルボン酸および1−アミノ−シクロペンタン−3−カルボン酸による修飾が含まれる[例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドを参照]。
【0016】
選択性およびNPY2受容体親和性の向上はペプチドのN末端に結合させた部分に驚くべきほど特異的であることを注目すべきである。詳細には、本明細書に記述する新規な修飾物は、現存の修飾であるアセチル化に比べてNPY2受容体に高い親和性および活性を示すと同時にNPY1およびNPY5受容体に作用しない選択性を維持している。このような見いだしたことはNPY2受容体への親和性および選択性の向上はペプチドのN末端に結合させた部分に特異的であることを示しており、そのような結果は推測で予測されるものではない。
【0017】
また、本修飾物が示す効果はPYYのフラグメントにも依存する。例えば、PYY(25−36)に関して受けさせたN末端修飾に顕著な(一般的ではない)効果を見ることができると同時にPYY(22−26)に関して受けさせた同様な修飾にも良好な効果が見られる。しかしながら、N末端に修飾を受けさせた場合、PYY(25−36)より短いPYYフラグメントの方が効力および選択性の向上がもたらされる。例えば、決して限定するものでないが、PYY(26−36)およびPYY(27−36)に新規なN末端修飾を受けさせるとNPY2親和性および選択性に有益な効果がもたらされる(アセチル化に比べて)。そのような見いだしたことは本分野の技術者が予測することができることではない。
【0018】
この開示した機能を実質的に保持させながら有益な薬効または他の特性を与える目的で、ペプチドに誘導体化を受けさせることも可能である。例えば、ペプチドにPEG化(Greenwald,Adv. Drug. Del. Rev. 55:217-250,2003)を受けさせると典型的にそれがインビボで示す半減期が長くなる。PEG化N末端修飾ペプチドが示すインビトロプロファイルは、PEG化によってペプチドがインビトロで示す特性がNPY2との結合の意味でも受容体の選択性の意味でも無効になることはないことを示している。
【0019】
本発明のペプチドはNPY2受容体作動薬である。即ち、本発明のペプチドはNPY2受容体の選択的作動薬(例えば少なくとも5倍高い選択性を示すと同時に、食欲増進の如き望まれない影響および/または高血圧の如き望まれない影響の一因になっている他の受容体に作用しない選択性がある)であり、それによって、例えば食物摂取量を低下させる。
【0020】
この開示するペプチド、これらの誘導体および修飾物は哺乳動物における食物摂取量を低下させる結果として体重を減少させると期待する。限定するものでなく、例として、本発明のペプチドは絶食−再給食の細身マウスモデルにおいて食物摂取量を低下させる。
【0021】
本発明は式(I)
Z-RHYLNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO: 1)
(I)
[式中、
Zは
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
から選択される]
で表されるペプチドに関する。
【0025】
本発明は式(II)
Z-HYLNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:2)
(II)
[式中、
Zは
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
から選択される]
で表されるペプチドに関する。
【0029】
本発明は式(III)
Z-YLNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:3)
(III)
[式中、
Zは
【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
から選択される]
で表されるペプチドに関する。
【0033】
本発明は式(IV)
Z-LNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:4)
(IV)
[式中、
Zは
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
から選択される]
で表されるペプチドに関する。
【0037】
本発明は式(V)
Z-NLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:5)
(V)
[式中、
Zは
【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
から選択される]
で表されるペプチドに関する。
【0041】
式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドでは、前記ペプチドが有する1番目のアミノ酸のアルファ−アミノ基にN末端修飾物をアミド結合で結合させる。
【0042】
本明細書全体に渡って用いる特定の用語を以下に定義しそして他の用語はこれを導入した時に定義する。個々のアミノ酸の1文字省略形、それの相当するアミノ酸および3文字省略形は下記の通りである:A,アラニン(Ala);C,システイン(Cys);D,アスパラギン酸(Asp);E,グルタミン酸(Glu);F,フェニルアラニン(Phe);G,グリシン(Gly);H,ヒスチジン(His);I,イソロイシン(Ile);K,リシン(Lys);L,ロイシン(Leu);M,メチオニン(Met);N,アスパラギン(Asn);P,プロリン(Pro);Q,グルタミン(Gln);R,アルギニン(Arg);S,セリン(Ser);T,トレオニン(Thr);V,バリン(Val);W,トリプトファン(Trp);および Y,チロシン(Tyr)。
【0043】
用語「ペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、当該ペプチドのコード領域のみを含有するポリヌクレオチドばかりでなく追加的コードおよび/または非コード配列を含有するポリヌクレオチドも包含する。本発明は、更に、本明細書の上に記述した配列とハイブリッド形成しているポリヌクレオチドにも関する(配列と配列の間の同一性が少なくとも約70%、少なくとも約90%、および少なくとも約95%であるならば)。本発明は、本明細書の上に記述したポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成しているペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本明細書で用いる如き用語「ストリンジェントな条件」は「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」を意味する。ハイブリッド形成は配列と配列の間の同一性が少なくとも約90%、約95%、または約99%の時に起こり得る。本明細書の上に記述したポリヌクレオチドとハイブリッド形成しているポリヌクレオチドがコードするペプチドは、1つの態様において、そのcDNAがコードする成熟ペプチドが示す生物学的機能または活性と実質的に同じ機能または活性を保持している。
【0044】
「機能的同等物」および「実質的に同じ生物学的機能または活性」は、各々、各ペプチドが示す生物学的活性を同じ手順で測定した時に生物学的活性度がそれと比較するペプチドが示す生物学的活性度の約30%以上から約100%の範囲内であることを意味する。
【0045】
本明細書における「生物学的活性」、「活性」または「生物学的機能」(これらを互換的に用いる)は、ペプチド(天然であるか或は変性形態であるかに拘らず)、またはそれらのフラグメント、誘導体および変異体のいずれかが直接または間接的に果たすエフェクター機能を意味する。生物学的活性には、例えばポリペプチドとの結合、他の蛋白質または分子との結合、DNA結合蛋白質としての活性、転写調節因子としての活性、損傷を受けたDNAと結合する能力などが含まれる。
【0046】
本発明のペプチドを言及する時の用語「フラグメント」、「誘導体」および「変異体」は、以下に更に説明するように、前記ペプチドと実質的に同じ生物学的機能または活性を保持しているペプチドフラグメント、誘導体および変異体を意味する。
【0047】
フラグメントは、例えば本明細書に開示するインビボモデルで記述するように、実質的に同様な機能的活性を保持しているペプチド部分である。
【0048】
誘導体には、以下に更に記述するように、本明細書に開示する機能を実質的に保持しかつ追加的構造および付随する機能を含有するペプチド修飾物(例えばN末端が修飾を受けたペプチドまたはPEG化ペプチド)、意図した標的に目標の特異性または追加的活性、例えば毒性などを与える融合ペプチドの全部が含まれる。
【0049】
本発明のペプチドは、組換え型ペプチド、精製した天然ペプチドまたは合成ペプチドであってもよい。
【0050】
本発明のペプチドのフラグメント、誘導体または変異体は、(i)アミノ酸残基の中の1つ以上が保存もしくは非保存アミノ酸残基で置換されているフラグメント、誘導体または変異体(前記置き換わるアミノ酸残基は遺伝子コードがコードする残基であってもよいか或はそのような残基でなくてもよい)、または(ii)アミノ酸残基の中の1個以上が置換基を含有するフラグメント、誘導体または変異体、または(iii)成熟したペプチドが別の化合物、例えば当該ペプチドの半減期を長くする化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合しているフラグメント、誘導体または変異体、または(iv)成熟ペプチドに追加的アミノ酸、例えばリーダー配列または分泌配列、または成熟ペプチドの精製で用いるに適した配列などが融合しているフラグメント、誘導体または変異体、または(v)ペプチド配列により大きなペプチド(例えば効果持続期間を長くするヒトアルブミン、抗体またはFc)が融合しているフラグメント、誘導体または変異体であってもよい。そのようなフラグメント、誘導体、変異体および類似物は、本明細書に示す教示により、本分野の技術の範囲内であると思われる。
【0051】
本発明の誘導体は、必須ではない1個以上のアミノ酸残基の所に保存アミノ酸置換基(以下に更に定義)が位置する誘導体であってもよい。「必須ではない」アミノ酸残基は、野生型蛋白質配列から生物学的活性を変えることなく変更可能な残基である一方、「必須」アミノ酸残基は生物学的活性に必要な残基である。「保存アミノ酸置換基」は、アミノ酸残基が同様な側鎖を有するアミノ酸残基に置き換わっている置換基である。同様な側鎖を有するアミノ酸残基の系列は本技術分野で定義される系列である。そのような系列には、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、帯電していない極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝している側鎖を有するアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。フラグメント、即ち生物学的活性部分には、薬剤として用いるに適したペプチドフラグメント、抗体を生じさせる目的で用いるに適したペプチドフラグメント、研究用試薬として用いるに適したペプチドフラグメントなどが含まれる。フラグメントには、本発明のペプチドが有するアミノ酸配列に充分な類似性を示すか或はそれに由来するアミノ酸配列を含有しかつ本発明のペプチドが示す少なくとも1種の活性を示すが本明細書に開示する全長ペプチドに比べてアミノ酸含有数が少ないペプチドが含まれる。生物学的に活性な部分は、典型的に、本ペプチドが示す少なくとも1種の活性を示すドメインまたはモチーフを含んで成る。ペプチドの生物学的活性部分は例えばアミノ酸数が5以上の長さを有するペプチドであり得る。そのような生物学的に活性な部分の調製は合成または組換え技術を用いて実施可能であり、そしてそれが本発明のペプチドが示す機能的活性の中の1つ以上を有するか否かの評価は、本明細書に開示する手段および/または本技術分野で良く知られている手段を用いて実施可能である。
【0052】
その上、本発明の誘導体には、別の化合物、例えば当該ペプチドの半減期を長くしそして/または当該ペプチドの潜在的免疫原性を低くする化合物(例えばポリエチレングリコール、即ち「PEG」)などと縮合させておいたペプチドも含まれ得る。PEG化の場合、ペプチドとPEGの融合は本分野の技術者に公知の如何なる手段で達成されてもよい。例えば、最初に当該ペプチドにシステイン変異を導入することでリンカーを生じさせた後、それにPEGを結合させそして次にPEG−マレイミドによる部位特異的誘導体化を実施することなどで、PEG化を達成することができる。例えば、システインを当該ペプチドのC末端に付加させてもよい(例えばTsutsumi他,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(15):8548-53,2000;Veronese, Biomaterials 22:405-417,2001;Goodsoon & Katre,Bio/Technology 8:343-346,1990を参照)。本発明のペプチドの変異体には、本発明のペプチドが有するアミノ酸配列またはこれのドメインと充分な類似性を示すアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。用語「充分な類似性」は、1番目のアミノ酸配列と2番目のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能的活性を有するように1番目のアミノ酸配列が2番目のアミノ酸配列と同じまたは相当するアミノ酸残基を充分または最小限の数で含有することを意味する。本明細書では、例えば、含有する共通構造ドメインの同一性が少なくとも約45%、約75%から98%のアミノ酸配列は充分な類似性を示す配列であると定義する。変異体は本発明のペプチドが有するアミノ酸配列に対して充分な類似性を示すであろう。変異体には、本発明のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成しているポリヌクレオチドまたはこれの補体がコードするペプチド変異体が含まれる。そのような変異体は一般に本発明のペプチドが示す機能的活性を保持している。当該ポリヌクレオチドのフラグメントのライブラリーを用いて多様なフラグメントの集団を生じさせ、選別した後、選択してもよい。例えば、ポリヌクレオチドの2本鎖PCRフラグメントにヌクレアーゼによる処理をニッキングが1分子当たりほぼ1回のみ起こるような条件下で受けさせて前記2本鎖DNAを変性させることでフラグメントのライブラリーを生じさせ、そのDNAを復元させることで異なるニック産物に由来するセンス/アンチセンス対を含有し得る2本鎖DNAを生じさせ、再び生じさせた2本鎖にS1ヌクレアーゼによる処理を受けさせることで1本鎖部分を取り出しそしてその結果として得たフラグメントライブラリーを発現ベクターに連結させてもよい。このような方法を用いることで、本発明のペプチドのN末端および内部フラグメント(いろいろな大きさを有する)をコードする発現ライブラリーを生じさせることができる。
【0053】
変異体には、変異が理由でアミノ酸配列が異なるペプチドが含まれる。NPY2受容体作動薬として機能する変異体の識別は、本発明のペプチドの変異体、例えば切断変異体などの組み合わせライブラリーをNPY2受容体作動活性に関して選別することで実施可能である。
【0054】
1つの態様では、組み合わせ変異を核酸レベルで起こさせることで多様な類似物のライブラリーを生じさせ、そして多様な遺伝子ライブラリーを用いてコードさせる。例えば、変異を起こし得る1組の縮重アミノ酸配列が個々のペプチドとして発現し得るようにするか或は別法としてそのような組の配列を含有する1組のより大きな融合蛋白質(例えばファージ提示用)として発現し得るように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素で連結させて遺伝子配列を生じさせることなどで、多様な変異体のライブラリーを生じさせることができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から可能な変異体のライブラリーを生じさせる目的で使用可能な方法はいろいろ存在する。縮重遺伝子配列の化学的合成は自動DNA合成装置を用いて実施可能であり、そして次に、その合成した遺伝子を適切な発現ベクターの中に連結させる。1組の縮重遺伝子を用いることで、変異を起こし得る1組の所望配列をコードする配列の全部を1つの混合物として生じさせることができる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は本技術分野で公知である(例えばNarang,Tetrahedron 39:3,1983;Itakura他,Annu. Rev. Biochem. 53:323,1984;Itakura他,Science 198:1056,1984;Ike他,Nucleic Acid Res. 11:477,1983を参照)。
【0055】
点変異または切断変異で生じさせた組み合わせライブラリーの遺伝子産物を選別する技術および選択した特性を持たせた遺伝子産物のcDNAライブラリーを選別する技術は本技術分野でいくつか公知である。R作動薬であるペプチドの組み合わせ変異によって生じさせた遺伝子ライブラリーを迅速選別する目的でそのような技術を用いることができる。大きな遺伝子ライブラリーを選別するに適した高処理量の分析に適していて最も幅広く用いられている技術には、典型的に、そのような遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローン化する技術、適切な細胞に形質転換を受けさせる結果としてベクターのライブラリーを生じさせる技術、および検出すべき産物の遺伝子をコードするベクターの単離を所望活性の検出によって容易に行うことを可能にする条件下で組み合わせ遺伝子の発現を起こさせることが含まれる。所望の変異体を識別する目的で、ライブラリーの中の機能的変異の頻度を高める技術である再帰的アンサンブル変異(Recursive ensemble mutagenesis)(REM)を選別検定と組み合わせて用いることも可能である。
【0056】
本発明はまたキメラペプチドまたは融合ペプチドも提供する。起こり得る副作用を最小限にする目的で送達するペプチドが局在化するように標的配列を考案する。ペプチド結合または修飾ペプチド結合で互いに結合させたアミノ酸で本発明のペプチドを構成させてもよく(即ちペプチド等量式)、そしてそれに前記20個の遺伝子がコードするアミノ酸以外のアミノ酸を含有させてもよい。そのようなペプチドに修飾を自然な過程、例えば翻訳後プロセスなどまたは本技術分野で良く知られている化学的修飾技術のいずれかを用いて受けさせてもよい。そのような修飾は基本的な教科書およびより詳細な論文ばかりでなく豊富に存在する研究文献に充分に記述されている。ペプチドに受けさせる修飾の場所は如何なる場所であってもよく、それらには、ペプチドのバックボーン、アミノ酸側鎖およびアミノもしくはカルボキシル末端が含まれる。所定ペプチドの中の数カ所に同じ種類の修飾を同じまたはいろいろな度合で存在させてもよいことは理解されるであろう。また、所定ペプチドにいろいろな種類の修飾部を含有させることも可能である。ペプチドは例えばユビキチン化の結果として分枝している可能性があり、そしてそれらは分枝を伴うか或は伴わない環状である可能性もある。環状、分枝および分枝環状ペプチドは天然の翻訳後プロセスの結果としてもたらされ得るか、合成方法を用いてそのようなペプチドを生じさせることも可能である。修飾にはアセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル、共有架橋の形成、システインの生成、ピログルタメートの生成、構築、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、蛋白分解プロセス、燐酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アミノ酸から蛋白質が生じるトランスファー−RNA介在付加、例えばアルギニル化およびユビキチン化などが含まれる(例えばProteins,Structure and Molecular Properties,第2版,T. E. Creighton,W.H. Freeman and Company,New York(1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B. C. Johnson編集,Academic Press,New York,1-12頁(1983);Seifter他,Meth. Enzymol 182:626-646,1990;Rattan他,Ann. N.Y. Acad. Sci. 663:48-62,1992を参照)。
【0057】
本発明のペプチドには、式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドばかりでなくそれらの配列から変化した度合が実体のない度合である配列が含まれる。「変化した度合が実体のない度合」には、本発明のペプチドが有する少なくとも1種の生物学的機能、例えばNPY2受容体作動活性、選択的NPY2受容体作動活性および/または本明細書に示す食物摂取抑制および体重減少などを実質的に維持している配列付加、置換または欠失変異体のいずれも含まれる。そのような機能的同等物には、本発明のペプチドとの同一度が少なくとも約90%、本発明のペプチドとの同一度が少なくとも95%、および本発明のペプチドとの同一度が少なくとも99%であるペプチドが含まれ得、かつまた、実質的に同じ生物活性を示す部分(前記ペプチドの)も含まれる。しかしながら、アミノ酸配列は本発明のペプチドから実質的に変化していても本明細書に更に記述するように機能的等価性を示す如何なるペプチドも本発明の記述の中に含まれる。
【0058】
本発明は、また、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドばかりでなく前記ポリヌクレオチドを含有させたベクター、本発明のベクターを用いる遺伝子操作を受けさせた宿主細胞、および組換え技術による本発明のペプチドの産生にも関する。宿主細胞に本発明のベクター(これは例えばクローニングベクターまたは発現ベクターなどであり得る)による遺伝子操作(遺伝子導入、形質転換またはトランスフェクション)を受けさせることができる。そのようなベクターは、例えばプラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。その遺伝子操作を受けさせた宿主細胞をプロモーターを活性化させるか或は形質転換体を選別するに適するような修飾を受けさせておいた通常の栄養培地中で培養してもよい。培養条件、例えば温度、pHなどは発現の目的で選択した宿主細胞で以前に用いた培養条件であり、それらは本分野の通常の技術者に明らかであろう。本発明のポリヌクレオチドは組換え技術でペプチドを生産しようとする時に使用可能である。従って、本ポリヌクレオチドの配列を例えばいろいろな発現媒体、特にペプチド発現用ベクターまたはプラスミドの中のいずれか1つの中に含有させてもよい。そのようなベクターには染色体配列、非染色体配列および合成DNA配列(例えばSV40の誘導体)、細菌のプラスミド、ファージのDNA、酵母菌のプラスミド、プラスミドとファージDNAの組み合わせから誘導されたベクター、ウイルスのDNA、例えば痘疹、アデノウイルス、禽痘ウイルスおよび仮性狂犬病が含まれる。しかしながら、他の如何なるベクターもプラスミドもそれらが宿主の中で複製しかつ生存し得る限り使用可能である。
【0059】
適切なDNA配列をいろいろな手順でベクターの中に挿入することができる。一般的には、本技術分野で公知の手順を用いてDNA配列を適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入する。そのような手順および他の手順は本分野の技術の範囲内であると考えている。発現ベクターの中に入れるDNA配列をmRNA合成を管理する適切な発現制御配列1種または2種以上(プロモーター)と動作可能なように連結させる。そのようなプロモーターの代表例には、これらに限定するものでないが、LTRもしくはSV40プロモーター、大腸菌lacもしくはtrp、ファージラムダPプロモーター、そして原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターが含まれる。そのような発現ベクターにまた翻訳開始および転写終結用リボソーム結合部位を含有させることも可能である。そのようなベクターにまた発現を増幅させるに適した配列を含有させることも可能である。加うるに、そのような発現ベクターに形質転換宿主細胞の選択に適した表現型形質、例えば真核細胞培養用のジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン耐性、または大腸菌におけるテトラシクリンもしくはアンピシリン耐性などを与える遺伝子を含有させることも可能である。本明細書の上に記述した如き適切なDNA配列ばかりでなく適切なプロモーターまたは制御配列も含有させたベクターを用いて適切な宿主に形質転換を受けさせることで前記宿主が当該蛋白質を発現するようにすることができる。適切な宿主の代表例には、これらに限定するものでないが、細菌の細胞、例えば大腸菌、ネズミチフス菌、ストレプトミセスなど、菌・カビの細胞、例えば酵母菌など、昆虫の細胞、例えばショウジョウバエS2およびシロイチモンジョトウSf9など、動物の細胞、例えばCHO、COSまたはBowesメラノーマなど、アデノウイルス、植物の細胞などが含まれる。適切な宿主の選択は、本明細書の教示により、本分野の技術の範囲内であると思われる。
【0060】
本発明は、また、この上に幅広い意味で記述した如き配列の中の1種以上を含んで成る組換え型構築物も包含する。そのような構築物はベクター、例えばプラスミドまたはウイルスベクターなどを含んで成っていて、その中に本発明の配列が前方向または逆方向に挿入されている。このような態様の1つの面では、そのような構築物に更に調節配列も含有させるが、そのような調節配列には、例えば、前記配列と動作可能なように連結しているプロモーターが含まれる。多種多様な適切なベクターおよびプロモーターが本分野の技術者に知られておりかつ商業的に入手可能である。下記のベクターを例として示す。細菌:pQE70,pQE60,pQE-9,pBS,phagescript,psiX174,pBluescript SK,pBsKS,pNH8a,pNH16a,pNH18a,pNH46a,pTRC99A,pKK223-3,pKK233-3,pDR540,および PRIT5。真核生物: pWLneo,pSV2cat,pOG44,pXT1,pSG,pSVK3,pBPV,pMSG,および PSVL。しかしながら、他の如何なるプラスミドもベクターもそれらが宿主の中で複製して生存し得る限り使用可能である。プロモーター領域はCAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは選択可能なマーカーを有する他のベクターを用いて所望遺伝子のいずれからも選択可能である。適切なベクターの2つはpKK232-8 および pCM7である。特に挙げるべき細菌プロモーターにはlaci,lacZ,T3,T7,gpt,ラムダ PR,PL,および trpが含まれる。真核生物のプロモーターには前初期CMV,HSV チミジンキナーゼ,初期および後期 SV40,レトロウイルスに由来するLTRおよびマウスのメタロチオネイン-Iが含まれる。適切なベクターおよびプロモーターの選択も同様に本分野の通常の技術水準の範囲内である。
【0061】
本発明は、また、この上に記述した構築物を含有させた宿主細胞にも関する。そのような宿主細胞は高等真核生物細胞、例えば哺乳動物の細胞など、または下等真核生物細胞、例えば酵母菌細胞などであってもよいか、或はそのような宿主細胞は原核生物細胞、例えば細菌の細胞などであってもよい。そのような構築物を宿主細胞に導入する時、これは燐酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン介在トランスフェクションまたはエレクトロポレーション(Davis他,Basic Methods in Molecular Biology,1986)で実施可能である。その宿主細胞の中に入れた構築物を通常様式で用いることで、前記組換え型配列がコードする遺伝子産物を産生させることができる。別法として、通常のペプチド合成装置を用いて本発明のペプチドを合成的に製造することも可能である。
【0062】
成熟蛋白質を適切なプロモーターの制御下で哺乳動物の細胞、酵母菌、細菌または細胞の中に発現させることができる。また、細胞を用いない翻訳システムを用い、本発明のDNA構築物から生じさせたRNAを用いることで、そのような蛋白質を生産することも可能である。原核生物および真核生物宿主で用いるに適したクローニングおよび発現ベクターがSambrook他,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版,(Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0063】
高等真核生物を用いて本発明のペプチドをコードするDNAを転写させようとする時、エンハンサー配列を前記ベクターの中に挿入すると転写が向上する。エンハンサーはDNAのシス作用エレメントであり、これは一般に約10から約300bpであり、これはプロモーターに作用して転写を向上させる。その例には、複製起点の末側に位置するSV40エンハンサー(bp100から270)、サイトメガロウイルス早期プロモーターエンハンサー、複製起点の末側に位置するポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。組換え型発現ベクターに、一般に、宿主細胞の形質転換を可能にする複製起点および選択可能マーカー(例えば大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子またはS.セレヴィシエTRP1遺伝子)および下流の構造配列の転写を管理する高発現遺伝子に由来するプロモーターを含有させる。そのようなプロモーターはとりわけ糖分解酵素、例えば3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α因子、酸ホスファターゼまたは熱ショック蛋白質などをコードするオペロンに由来するプロモーターであり得る。適切な段階で翻訳開始および終結配列および場合により翻訳された蛋白質がペリプラスム空間または細胞外培地の中に分泌されるのを管理し得るリーダー配列を用いて異種構造配列を組み立てる。場合により、そのような異種配列が所望の特性(例えば発現した組換え産物を安定にするか或は精製を簡潔にする)を与えるN末端識別用ペプチドを含有する融合蛋白質をコードするようにしてもよい。
【0064】
細菌用途で用いるに有用な発現ベクターの構築では、有効読み取り段階における適切な翻訳開始および終結シグナルと一緒に所望蛋白質をコードする構造DNA配列を機能的プロモーターと一緒に挿入することで構築を実施することができる。そのようなベクターの維持を確保しかつ望ましくは宿主の中で増殖するようにする目的で、前記ベクターに1種以上の選択可能な表現型マーカーおよび複製起点を含有させてもよい。形質転換用の適切な原核細胞宿主には、例えば大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、およびシュードモナス、ストレプトミセスおよびスタフィロコッカス属に属するいろいろな種が含まれるが、選択の問題としてまた他の宿主を用いることも可能である。細菌用途用の有用な発現ベクターは選択可能マーカーおよび細菌の複製起点を含んで成り得るが、それらは、良く知られているクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝要素を含んで成る市販のプラスミドに由来するものであってもよい。そのような商業的ベクターには、例えばpKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals,Uppsala,スウェーデン)および GEM1(Promega,Madison,Wis.,USA)が含まれる。そのような pBR322「バックボーン」断片を適切なプロモーターおよび発現させるべき構造配列と組み合わせてもよい。
【0065】
適切な宿主株に形質転換を受けさせそしてその宿主株を適切な細胞密度になるまで増殖させた後、選択したプロモーターを適切な手段(例えば温度シフトまたは化学的誘発)で活性化させそして細胞を追加的時間培養する。典型的には、細胞を遠心分離で収穫し、物理的もしくは化学的手段で崩壊させ、そしてその結果として得た粗抽出液を保持して更に精製する。蛋白質の発現で微生物の細胞を用いた場合には、それを便利な方法のいずれかで崩壊させてもよく、そのような方法には、凍結解凍サイクル、音波処理、機械的崩壊、または細胞溶解剤の使用が含まれる。
【0066】
組換え型蛋白質を発現させる目的で、また、いろいろな哺乳動物細胞培養システムを用いることも可能である。哺乳動物の発現システムの例には、Gluzman,(Cell 23:175,1981)に記述されているサル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、および適合ベクターを発現し得る他の細胞株、例えばC127,3T3,CHO,HeLaおよび BHK細胞株などが含まれる。哺乳動物の発現ベクターに、複製起点、適切なプロモーターおよびエンハンサーを含有させてもよく、かつまた、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与および受容部位、転写終止配列および5’フランキング非転写配列のいずれかを含有させることも可能である。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列、例えばSV40複製起点、早期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化部位を用いて必要な非転写遺伝要素を与えることができる。
【0067】
本発明のペプチドを今までに用いられた方法で組換え型細胞培養物から回収して精製してもよく、そのような方法には、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈澱、酸抽出、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが含まれる。必要に応じて、成熟蛋白質の構築を完成させる時に蛋白質再折り畳み段階を用いてもよい。最後に、最終的精製段階で高性能液クロ(HPLC)を用いてもよい。
【0068】
本発明のペプチドは、化学的合成手順の生成物であってもよいか、或は原核生物もしくは真核生物宿主(例えば細菌、酵母菌、高等植物、昆虫および哺乳動物の細胞)を用いた組換え技術で産生可能である。組換え生産手順で用いる宿主に応じて、本発明のペプチドに哺乳動物もしくは他の真核生物の炭水化物によるグリコシル化を受けさせてもよいか、或はグリコシル化を受けさせなくてもよい。本発明のペプチドにまた初期メチオニンアミノ酸残基を含有させることも可能である。
【0069】
本発明のペプチドの単離は便利に本技術分野で良く知られている方法を用いて実施可能である。この調製物の純度の評価もまた本技術分野で公知の如何なる手段で実施されてもよく、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法および質量分析および液クロなどで評価可能である。
【0070】
本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の全体または一部を合成しようとする時、これは本技術分野で良く知られている化学方法(例えばCaruthers他,Nucl. Acids Res. Symp. Ser. 215-223,1980;Horn他,Nucl. Acids Res. Symp. Ser. 225-232,1980を参照)を用いて実施可能である。次に、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現ベクターにクローン化することで前記ペプチドを発現させることができる。
【0071】
本分野の技術者が理解するであろうように、天然には存在しないコドンを有していてペプチドをコードするヌクレオチド配列を生じさせることができれば、これは有利であり得る。例えば、個々の原核生物もしくは真核生物宿主に好適なコドンを選択することで、ペプチドの発現速度を速めるか或は望ましい特性、例えば天然に存在する配列によって生じる転写産物が示す半減期よりも長い半減期などを示すRNA転写産物を生じさせることができる。
【0072】
ペプチドをコードする配列をいろいろな理由で改変する目的でヌクレオチド配列を本技術分野で一般に公知の方法で操作してもよく、それには、これらに限定するものでないが、ペプチドまたはmRNA産物の終止、処理および/または発現を修飾する改変が含まれる。ランダムフラグメンテーションによるDNAシャフリングおよび遺伝子フラグメントと合成オリゴヌクレオチドのPCRリアセンブリを用いてヌクレオチド配列を操作することができる。例えば部位特異的突然変異誘発法を用いて、新しい制限部位を挿入すること、グリコシル化パターンを変えること、コドン優先性を変えること、スプライス変異をもたらすこと、変異を導入することなどを実施することができる。
【0073】
また、本分野の技術者の理解の範囲内の関連ペプチド、例えば化学的類似物、有機類似物またはペプチド類似物なども提供する。本明細書で用いる如き用語「類似物」、「ペプチド類似物」、「ペプチド類似物」、「有機類似物」および「化学的類似物」は、これらに本発明のペプチドが有する三次元定位に相当する三次元定位に配置している原子を有するペプチド誘導体、ペプチド類似物および化学的化合物を包含させることを意図する。本明細書で用いる如き語句「同等物」にペプチドの中の特定原子または化学的部分が1つまたは2つ以上置き換わっているが本発明のペプチドが有する生物学的機能を有するように同じまたは充分なほど類似している原子および部分の配置または配向をもたらす結合の長さ、結合角および配置(類似ペプチドの中の)を有するペプチドを包含させることを意図することは理解されるであろう。ペプチド類似物では、化学的成分の三次元配置が構造的および/または機能的に本ペプチドの中のペプチドバックボーンおよび成分であるアミノ酸側鎖の三次元配置に類似しており、その結果として、本発明のペプチドのそのようなペプチド類似物、有機類似物および化学的類似物は実質的な生物学的活性を示し得る。これらの用語を本技術分野における理解に従って用いるが、それらは例えばFauchere,(Adv. Drug Res. 15:29,1986);Veber & Freidinger,(TINS 392頁,1985);および Evans他,(J. Med. Chem. 30:1229,1987)(引用することによって本明細書に組み入れられる)などに説明されている如くである。
【0074】
本発明の各ペプチドが生物学的活性を示すようにする目的で活性基を存在させることは理解されるであろう。活性基は生物学的活性に要求される構造的要求の理想化した三次元的限定を包含するとして本技術分野で理解されている。現在のコンピューターモデル化ソフトウエア(コンピューター補助薬剤デザイン)を用いて各活性基に適合するペプチド類似物、有機類似物および化学的類似物を設計することができる。前記類似物の製造は本発明のペプチドの中の置換原子による位置情報を基にした構造機能分析で実施可能である。
【0075】
本発明で提供する如きペプチドの合成は、有利に、本技術分野で公知の化学的合成方法のいずれかで実施可能であり、特に固相合成技術、例えば市販の自動化ペプチド合成装置を用いて実施可能である。本発明の類似物の合成はペプチドの合成で通常用いられる固相もしくは液相方法を用いて実施可能である[例えばMerrifield,J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54,1963;Carpino,Acc. Chem. Res. 6:191-98,1973;Birr,Aspects of the Merrifield Peptide Synthesis,Springer-Verlag: Heidelberg,1978;The Peptides: Analysis,Synthesis,Biology,1,2,3および5巻,(Gross & Meinhofer編集),Academic Press: New York,1979;Stewart他,Solid Phase Peptide Synthesis,第2版,Pierce Chem. Co.: Rockford,Ill.,1984;Kent,Ann. Rev. Biochem. 57:957-89,1988;および Gregg他,Int. J. Peptide Protein Res. 55:161-214,1990(これらは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)を参照]。
【0076】
本発明のペプチドの調製は固相方法を用いて実施可能である。簡単に述べると、N保護C末端アミノ酸残基を不溶担体、例えばジビニルベンゼン架橋ポリスチレン、ポリアクリルアミド樹脂、ケイソウ土/ポリアミド(ペプシン K)、制御された孔を有するガラス、セルロース、ポリプロピレン膜、アクリル酸被覆ポリエチレンロッドなどと連結させる。脱保護、中和そして逐次的保護アミノ酸誘導体の連成のサイクルを用いて、アミノ酸配列に応じてアミノ酸をC末端から連結させる。ある種の合成ペプチドでは、酸に敏感な樹脂を用いたFMOC方策を用いてもよい。これに関する固体状担体はジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂であり得、これはいろいろな官能化形態で商業的に入手可能であり、それらにはクロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、パラアセトアミドメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂、オキシム樹脂、4−アルコキシベンジルアルコール樹脂(Wang樹脂)、4−(2’,4’−ジメトキシフェニルアミノメチル)−フェノキシメチル樹脂、2,4−ジメトキシベンズヒドリル−アミン樹脂および4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−FMOC−アミノ−メチル)−フェノキシアセトアミドノルロイシル−MBHA樹脂(RinkアミドMBHA樹脂)が含まれる。加うるに、望まれるならば、酸に敏感な樹脂を用いることでまたC末端酸も生じさせる。アルファアミノ酸用の保護基は塩基で不安定になる9−フルオレニルメトキシ−カルボニル(FMOC)である。
【0077】
アミノ酸の側鎖官能性に適した保護基は本技術分野で良く知られているが、BOC(t−ブチルオキシカルボニル)およびFMOC基が化学的に相性が良い。FMOC化学を用いると、下記の保護されたアミノ酸誘導体を利用することが可能になる:FMOC-Cys(Trit),FMOC-Ser(But),FMOC-Asn(Trit),FMOC-Leu,FMOC-Thr(Trit),FMOC-Val,FMOC-Gly,FMOC-Lys(Boc),FMOC-Gln(Trit),FMOC-Glu(OBut),FMOC-His(Trit),FMOC-Tyr(But),FMOC-Arg(PMC(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル)),FMOC-Arg(BOC)2,FMOC-Proおよび FMOC-Trp(BOC)。本技術分野で公知のいろいろな連成剤および化学を用いてアミノ酸残基を連成させることができ、例えばDIC(ジイソプロピル−カルボジイミド)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、BOP(ヘキサフルオロ燐酸ベンゾトリアゾリル−N−オキシトリスジメチルアミノホスホニウム)、PyBOP(ヘキサフルオロ燐酸ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノホスホニウム)、PyBrOP(ヘキサフルオロ燐酸ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウム)を用いた直接的連成を行うか、対称的無水物を前以て生じさせておくか、活性エステル、例えばペンタフルオロフェニルエステルなどを経由するか、或はHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)の活性エステルを前以て生じさせておくか、或はFMOC−アミノ酸フルオライドおよびクロライドを使用するか、或はFMOC−アミノ酸−N−カルボキシ無水物を使用することなどで連成させることができる。HBTU(ヘキサフルオロ燐酸2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル),1,1,3,3−テトラメチルウロニウム)またはHATU(ヘキサフルオロ燐酸2−(1H−7−アザ−ベンゾトリアゾール−1−イル),1,1,3,3−テトラメチルウロニウム)による活性化をHOBtまたはHOAt(7−アザヒドロキシベンズトリアゾール)の存在下で起こさせるのが好適である。
【0078】
そのような固相方法は手動でか或は市販のペプチド合成装置(例えばApplied Biosystems 431Aなど;Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いた自動的合成で実施可能である。典型的な合成では、1番目の(C末端)アミノ酸をクロロトリチル樹脂に充填する。ABI FastMoc プロトコル(Applied Biosystems)に従う逐次的脱保護[20%ピペリジン/NMP(N−メチルピロリドン)を用いた]そして連成のサイクルを用いることでペプチド配列を生じさせることができる。また、無水酢酸によるキャッピングを伴う二重および三重連成も使用可能である。
【0079】
その合成した模擬ペプチドにTFA(トリフルオロ酢酸)を含有させておいた適切な捕捉剤を用いた処理を受けさせることでそれを前記樹脂から開裂させかつそれに脱保護を受けさせてもよい。そのようないろいろな開裂用反応体、例えばReagent K(結晶性フェノールが0.75gでエタンジチオールが0.25mLでチオアニソールが0.5mLで脱イオン水が0.5mLでTFAが10mL)などを用いることができる。当該ペプチドを前記樹脂から濾過で分離した後、エーテルを用いた沈澱で単離する。通常の方法、例えばゲル濾過および逆相HPLC(高性能液クロ)などを用いてさらなる精製を達成することができる。本発明に従う合成類似物は薬学的に受け入れられる塩、特に塩基付加塩の形態であり得るが、そのような塩には有機塩基の塩および無機塩基の塩が含まれる。酸性アミノ酸残基の塩基付加塩を生じさせようとする場合、本分野の技術者に良く知られた手順に従って当該ペプチドを適切な塩基または無機塩基で処理することでそれを生じさせるか、或は適切な塩基に凍結乾燥を受けさせることで所望塩を直接得ることも可能である。
【0080】
本分野の技術者は、一般に、本明細書に記述する如きペプチドに修飾をいろいろな化学的技術を用いて受けさせることで未修飾のペプチドが示す活性と本質的に同じ活性を有しかつ場合により他の望ましい特性も有するペプチドを生じさせることができることを認識するであろう。例えば、当該ペプチドのカルボン酸基を薬学的に受け入れられるカチオンの塩の形態にすることができる。当該ペプチドの中のアミノ基を薬学的に受け入れられる酸の付加塩、例えばHCl、HBr、酢酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸などの塩および他の有機塩の形態にしてもよいか、或はそれをアミドに変化させることも可能である。チオールは充分に認識されている数多くの保護基、例えばアセトアミド基などの中のいずれか1つを用いて保護可能である。本分野の技術者は、また、天然の結合形態により近づくように本発明のペプチドに環状構造物を導入する方法も認識するであろう。例えば、カルボキシル末端もしくはアミノ末端システイン基を本ペプチドに付加させておくと、本ペプチドが酸化された時にジスルフィド結合を含有し、それによって、環状ペプチドが生じ得る。他のペプチド環化方法には、チオエーテルおよびカルボキシル末端およびアミノ末端アミドおよびエステルを生じさせることが含まれる。
【0081】
具体的には、相当するペプチドと同じまたは同様な所望の生物学的活性を有するが溶解性、安定性および加水分解および蛋白分解の起こし易さに関して当該ペプチドよりも好ましい活性を有するペプチド誘導体および類似物を構築する目的でいろいろな技術を利用することができる。そのような誘導体および類似物には、N末端アミノ基の所に修飾を受けさせ[この例は、これらに限定するものでないが、式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドである]、C末端アミド基の所に修飾を受けさせそして/または当該ペプチドの中のアミド結合の1つ以上をアミドではない結合に変化させたペプチドが含まれる。そのような修飾の2つ以上を1つのペプチド類似物構造の中に一緒に存在させてもよいことは理解されるであろう(例えばC末端アミド基の所の修飾とペプチドの中の2個のアミノ酸の間に−CH−カルバメート結合を含有させること)。
【0082】
本発明で提供するペプチド類似物は、本技術分野で理解されるであろうように、本発明のペプチドに構造的に類似しているが、本技術分野で公知の方法および下記の文献:Spatola,Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,(Weinstein編集),Marcel Dekker: New York,267頁,1983;Spatola,Peptide Backbone Modifications 1:3,1983;Morley,Trends Pharm. Sci. 463-468頁,1980;Hudson他,Int. J. Pept. Prot. Res. 14:177-185,1979; Spatola他,Life Sci. 38:1243-1249,1986;Hann,J. Chem. Soc. Perkin Trans. I 307-314,1982;Almquist他,J. Med. Chem. 23:1392-1398,1980;Jennings-White,他.,Tetrahedron Lett. 23:2533,1982;Szelke,他.,EP045665A;Holladay,他.,Tetrahedron Lett. 24:4401-4404,1983;およびHruby,Life Sci. 31:189-199,1982(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)に更に記述されている方法を用いて1個以上のペプチド結合を場合により--CH2NH--,--CH2S--,--CH2CH2--,--CH=CH-(シスおよびトランス配置の両方),--COCH2--,--CH(OH)CH2--および --CH2SO--などの如き結合に置き換えておいた類似物である。そのようなペプチド類似物はペプチド具体例に比べて有意な利点を有する可能性があり、そのような利点には、例えば生産がより経済的であること、化学的安定性がより高いこと、または薬理学的特性(例えば半減期、吸収、効果、効力など)が向上していること、抗原性が低下していること、および他の特性が含まれる。
【0083】
また、通常または論理的薬剤考案[例えばAndrews他,Proc. Alfred Benzon Symp. 28:145-165,1990;McPherson,Eur. J. Biochem. 189:1-24,1990;Hol他,in Molecular Recognition: Chemical and Biochemical Problems,(Roberts編集);Royal Society of Chemistry;84-93頁,1989a;Hol,Arzneim-Forsch. 39:1016-1018,1989b;Hol, Agnew Chem. Int. Ed. Engl. 25:767-778,1986(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照]の原理を用いて、本発明のペプチドの模擬類似物を得ることも可能である。
【0084】
通常の薬剤考案方法に従い、「天然のペプチド」の構造に共通の属性を有する構造を持つ分子を無作為に試験することで所望の模擬分子を得ることができる。推定類似物が示す生物学的活性を当該ペプチドが示す活性と比較して測定することで、結合用分子が有する個々の基を変える結果としてもたらされる量的貢献度を決定することができる。論理的薬剤考案の1つの態様では、当該ペプチドが有する最も安定な三次元配置の属性を共有する類似物を考案する。このように、例えば、本明細書に開示するように、本発明のペプチドが示すイオン、疎水またはファンデルワールス相互作用に類似したそれらがもたらされるに充分な様式で配向している化学基を有する類似物を考案してもよい。
【0085】
論理的類似物考案を実施する1つの方法では、当該ペプチドが有する三次元構造の中の代表的な構造を生じさせ得るコンピューターシステム、例えばHol,1989a;Hol,1989b;および Hol,1986に例示されているコンピューターシステムを用いる。本技術分野で商業的に入手可能なコンピューター補助デザインプログラムを用いて、本発明のペプチドのペプチド類似物、有機類似物および化学的類似物の分子構造を作成することができる。そのようなプログラムの例には、sybyl 6.5(R),hqsarTM,および alchemy 2000TM(Tripos);galaxyTM および am2000TM(AM Technologies,Inc.,San Antonio,TX);catalystTM and ceriusTM(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA);cache productsTM,tsarTM,amberTM,および chem-xTM(Oxford Molecular Products,Oxford,CA) および chembuilder3dTM(Interactive Simulations,Inc.,San Diego,CA)が含まれる。
【0086】
例えば本技術分野で認識されている分子モデル化プログラムを用いることなどで本明細書に開示したペプチドを用いて生じさせるペプチド類似物、有機類似物および化学的類似物の製造は、例えば高処理量の選別に適合するように考案された通常の化学合成技術を用いて実施可能であり、そのような技術には組み合わせ化学方法が含まれる。本発明のペプチド類似物、有機類似物および化学的類似物を生じさせようとする時に用いるに有用な組み合わせ方法には、ファージディスプレーアレイ、固相合成および組み合わせ化学アレイが含まれ、それらを例えばSIDDCO(Tuscon,Arizona);Tripos,Inc.;Calbiochem/Novabiochem(San Diego,CA);Symyx Technologies,Inc.(Santa Clara,CA);Medichem Research,Inc.(Lemont,IL);Pharm-Eco Laboratories,Inc.(Bethlehem,PA);または N.V. Organon(Oss,Netherlands)が提供している。本発明のペプチド類似物、有機類似物および化学的類似物を組み合わせ化学で製造しようとする時、本技術分野で公知の方法に従って製造可能であり、そのような方法には、これらに限定するものでないが、Terrett,(Combinatorial Chemistry,Oxford University Press,London,1998);Gallop,他.,J. Med. Chem. 37:1233-51,1994;Gordon,他., J. Med. Chem. 37:1385-1401,1994;Look,他.,Bioorg. Med. Chem. Lett. 6:707-12,1996;Ruhland,他.,J. Amer. Chem. Soc. 118: 253-4,1996;Gordon,他.,Acc. Chem. Res. 29:144-54,1996;Thompson & Ellman,Chem. Rev. 96:555-600,1996;Fruchtel & Jung,Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35:17-42,1996;Pavia,“The Chemical Generation of Molecular Diversity”,Network Science Center,www.netsci.org,1995;Adnan,他.,“Solid Support Combinatorial Chemistry in Lead Discovery and SAR Optimization,” Id.,1995;Davies and Briant, “Combinatorial Chemistry Library Design using Pharmacophore Diversity,” Id.,1995;Pavia, “Chemically Generated Screening Libraries: Present and Future,” Id.,1996;および米国特許第5,880,972;5,463,564;5,331573;および 5,573,905に開示されている技術が含まれる。
【0087】
新しく合成したペプチドを調製用高性能液クロ(例えばCreighton,Proteins: Structures And Molecular Principles,WH Freeman and Co.,New York,N.Y.,1983を参照)で実質的に精製してもよい。本発明の合成ペプチドの組成の立証はアミノ酸分析または配列決定、例えばEdman減成手順(Creighton、上記)などで実施可能である。加うるに、本ペプチドが有するアミノ酸配列のいずれかの部分を直接合成中に変えそして/または化学的方法を用いて他の蛋白質に由来する配列と組み合わせることで変異ペプチドまたは融合ペプチドを生じさせることも可能である。
【0088】
また、本発明のペプチドと選択的に結合する抗体および抗体フラグメントも本発明に包含させる。本技術分野で良く知られている方法を用いることで本技術分野で公知の如何なる種類の抗体も生じさせることができる。例えば、本発明のペプチドが有するエピトープに特異的に結合する抗体を生じさせることができる。本明細書で用いる如き「抗体」には、そのままの免疫グロブリン分子ばかりでなくそれのフラグメント、例えば本発明のペプチドが有するエピトープと結合し得るFab,F(ab')2および Fvなどが含まれる。エピトープの形成には典型的に連続的に存在するアミノ酸が少なくとも6、8、10または12個必要である。しかしながら、連続的に位置しないアミノ酸を伴うエピトープはより多くのアミノ酸を必要とし、例えば少なくとも15、25または50個のアミノ酸を必要とし得る。
【0089】
本発明のペプチドが有するエピトープと特異的に結合する抗体は治療で使用可能であるばかりでなく免疫化学検定、例えばウエスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学的分析、免疫沈澱または本技術分野で公知の他の免疫化学的分析にも使用可能である。いろいろな免疫学的検定を用いて所望の特異性を示す抗体を識別することができる。競合結合または免疫放射定量測定法のいろいろなプロトコルが本技術分野で良く知られている。そのような免疫学的検定は、典型的に、免疫原とこの免疫原と特異的に結合する抗体の間に形成される複合体を測定することを伴う。
【0090】
本発明のペプチドと特異的に結合する抗体は、典型的に、これを免疫化学的検定で用いた時、他の蛋白質が与える検出シグナルよりも強い検出シグナルを与える。本発明のペプチドと特異的に結合する抗体は、免疫化学的検定で他の蛋白質を検出することはなく、そして本発明のペプチドを溶液から免疫沈澱させ得る。
【0091】
本発明のペプチドを用いて哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット、サルまたはヒトなどに免疫を与えることでポリクローナル抗体を生じさせることができる。望まれるならば、本発明のペプチドを担体蛋白質、例えばウシ血清アルブミン、チログロブリンおよびキーホールリンペットヘモシアニンなどと接合させてもよい。宿主種に応じていろいろなアジュバントを用いて免疫反応を高めることができる。そのようなアジュバントには、これらに限定するものでないが、フロインドアジュバント、鉱物ゲル(例えば水酸化アルミニウム)および表面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳液、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノール)が含まれる。ヒトで用いられるアジュバントの中で特にBCG(bacilli Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)が有用である。
【0092】
本発明のペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体の調製は、連続継代細胞系による抗体分子の産生を培養物の状態で起こさせるに適した技術のいずれかを用いて実施可能である。そのような技術には、これらに限定するものでないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびEBVハイブリドーマ技術が含まれる(Kohler,他.,Nature 256:495-97,1985;Kozbor,他.,J. Immunol. Methods 81:3142,1985;Cote,他.,Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-30,1983;Cole,他.,Mol. Cell Biol. 62:109-20,1984)。
【0093】
加うるに、「キメラ抗体」を生じさせる目的で開発された技術、即ちマウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に継ぎ合わせることで適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得る技術を用いることも可能である(Morrison,他.,Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-55,1984;Neuberger,他.,Nature 312:604-08,1984;Takeda,他.,Nature 314:452-54,1985)。また、モノクローナルおよび他の抗体を「ヒト化する」ことで、それを治療で用いた時に患者が前記抗体に対して免疫反応を起こさないようにすることができる。そのような抗体を配列の点で治療で直接用いられるヒト抗体のそれに充分に類似させてもよいか、或は鍵となる残基のいくつかを変える必要があり得る。齧歯類抗体の配列とヒト配列の間の差を最小限にしようとする場合、ヒト配列の残基とは異なる残基を個々の残基の部位特異的突然変異誘発で置き換えるか或は相補性決定領域全体に格子を付けることで最小限にすることができる。別法として、組換え方法(例えばGB2188638Bを参照)を用いてヒト化抗体を生じさせることも可能である。本発明のペプチドと特異的に結合する抗体に、米国特許第5,565,332号に開示されているように、ある程度または完全にヒト化しておいた抗原結合部位を含有させてもよい。
【0094】
別法として、本発明のペプチドと特異的に結合する1本鎖抗体を生じさせる目的で、1本鎖抗体の産生に適することが記述されている技術を本技術分野で公知の方法で適合させることも可能である。関連した特異性を示すが異なるイディオタイプ組成を有する抗体を生じさせようとする場合、無作為組み合わせ免疫グロブリンライブラリーを用いた鎖シャフリング(Burton,Proc. Natl. Acad. Sci. 88:11120-23,1991)でそれを生じさせることができる。
【0095】
また、DNA増幅方法、例えばPCRなどを用い、ハイブリドーマcDNAを鋳型として用いることで1本鎖抗体を構築することも可能である(Thirion,他,Eur. J. Cancer Prev. 5:507-11,1996)。1本鎖抗体は一特異的または二特異的であり得かつ二価または四価であり得る。四価の二特異的1本鎖抗体の構築が例えばColoma & Morrison(Nat. Biotechnol. 15:159-63,1997)に教示されている。二価の二特異的1本鎖抗体の構築がMallender & Voss(J. Biol. Chem. 269:199-206,1994)に教示されている。
【0096】
以下に記述するように、1本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を手動または自動化ヌクレオチド合成で構築し、標準的組換えDNA方法を用いて発現構築物にクローン化し、そして細胞の中に導入することでコード配列を発現させる。別法として、例えば線状ファージ技術(Verhaar他,Int. J. Cancer 61:497-501,1995;Nicholls他,J. Immunol. Meth. 165:81-91,1993)などを用いて1本鎖抗体を直接生じさせることも可能である。
【0097】
また、本発明のペプチドと特異的に結合する抗体の製造を、文献(Orlandi他,Proc. Natl. Acad. Sci. 86:38333-37,1989;Winter他,Nature 349:293-99,1991)に開示されているように、リンパ球集団の中にインビボ産生を誘発させるか或は免疫グロブリンライブラリーまたは一団の高度に特異的に結合する反応体を選別することで実施することも可能である。
【0098】
他の種類の抗体を構築して本発明の方法における治療で使用することも可能である。例えば、WO 93/03151に開示されているようにしてキメラ抗体を構築することも可能である。また、免疫グロブリンに由来しかつ多価で多特異的である結合蛋白質、例えば「二重特異性抗体」などを調製することも可能である(例えばWO 94/13804を参照)。
【0099】
また、本発明のペプチドと結合する能力を有するヒト抗体を下記の如くMorphoSys HuCAL(R) ライブラリーから同定することも可能である。本発明のペプチドでミクロタイタープレートを被覆した後、それをMorphoSys HuCAL(R) Fab ファージライブラリーと一緒にインキュベートしてもよい。本発明のペプチドと結合していなくてファージと連結しているFabを前記プレートから洗い流すことで、本発明のペプチドと強固に結合しているファージのみを残存させる。その結合しているファージを例えばpHを変えるか或は大腸菌を用いた溶離などで溶離させた後、大腸菌である宿主に感染させることで増殖させてもよい。この選別過程を1回または2回繰り返すことで本発明のペプチドと強固に結合している抗体の個体数を豊富にしてもよい。次に、その豊富にしたプールからFabを発現させ、精製した後、ELISA検定で選別する。
【0100】
本発明に従う抗体に精製を本技術分野で良く知られた方法で受けさせてもよい。例えば、本発明のペプチドが結合するカラムに通すことで抗体を親和性で精製してもよい。次に、塩濃度が高い緩衝液を用いて、その結合した抗体を前記カラムから溶離させてもよい。
使用方法
本明細書で用いる如きいろいろな用語を以下に定義する。
【0101】
本発明の要素およびこれらの好適な態様を紹介する時の品詞“a,” “an,” “the,”および “said”は、当該要素の1つ以上の存在を意味することを意図する。用語「含んで成る」、「含む」および「有する」は、包含を意図しかつ挙げる要素以外の追加的要素が存在してもよいことを意味する。
【0102】
本明細書で用いる如き用語「被験体」には哺乳動物(例えばヒトおよび動物)が含まれる。
【0103】
用語「治療」には、当該被験体の状態を直接または間接的に改善するか或は当該被験体の状態または疾患の進行を遅らせる目的で被験体(ヒトを包含)に医療扶助を与える過程、作用、適用、治療などのいずれも含まれる。
【0104】
用語「組み合わせ治療」または「共治療」は、肥満状態および/または疾患などを治療する目的で2種以上の治療薬を投与することを意味する。前記投与は、2種以上の治療薬を実質的に同時様式、例えば活性材料が固定比率で入っている単一のカプセルまたは各々に阻害薬が入っている個別の複数のカプセルなどとして一緒に投与することを包含する。加うるに、前記投与は各種類の治療薬を逐次的様式で用いることも包含する。
【0105】
語句「治療的に有効」は、投与する各薬剤の量が肥満状態または疾患のひどさを改善する目標を達成すると同時に所定治療処置に関連した副作用がないか或は最小限である量を意味する。
【0106】
用語「薬学的に受け入れられる」は、主題品目が薬品における使用に適することを意味する。
【0107】
式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドは治療薬として価値が有ると期待する。従って、本発明の態様は、ある患者(哺乳動物を包含)におけるいろいろな状態を治療する方法を包含し、この方法は、前記患者に式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表されるペプチドを標的となる病気の治療に有効な量で含有させておいた組成物を投与することを含んで成る。
【0108】
本発明のペプチドはNPY2受容体と相互作用することでNPY2受容体が関与する病気および/または挙動の治療または予防で使用可能である。
【0109】
本発明の目的は、例えば、本発明のペプチドを投与することで個人の肥満を治療しかつ体重減少を誘発する方法を提供することなどにある。本発明の方法は、個人に本発明の少なくとも1種のペプチドを体重減少を誘発するに充分な治療的に有効な量で投与することを含んで成る。本発明は、更に、本発明の少なくとも1種のペプチドを体重増加を防止するに充分な量で投与することで個人の体重増加を防止する方法も包含する。
【0110】
本発明は、また、本発明のペプチドを肥満に関連した病気[肥満に関連した異常脂質血症、および肥満および過剰体重に関連した他の合併症、例えばコレステロール結石、胆嚢疾患、痛風、癌(例えば結腸、直腸、前立腺、乳、卵巣、子宮内膜、頸部、胆嚢および胆管)、生理不順、不妊症、多嚢胞性卵巣、変形性関節症および睡眠時無呼吸を包含]の治療で使用することばかりでなくそれに関連した他の数多くの薬学的使用、例えば食欲および食物摂取の調節、異常脂質血症、高トリグリセリド血症、X症候群、2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、アテローム性動脈硬化症、例えば心不全、高脂血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高血圧、心疾患(アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、冠動脈疾患および高血圧を包含)、脳血管疾患、例えば卒中など、および末梢血管疾患などにおける薬学的使用にも関する。本発明のペプチドは、また、生理学的疾患、例えばインスリン感受性、炎症反応、血漿中トリグリセリド、HDL、LDLおよびコレステロールレベルなどに関連した生理学的疾患の治療で用いるにも有用である。
【0111】
本発明のペプチドは単独または1種以上の追加的治療薬と組み合わせて投与可能である。組み合わせ治療には、本発明のペプチドと1種以上の追加的治療薬を含有させた単一の薬製剤を投与することばかりでなく本発明のペプチドと追加的治療薬の各々をそれ自身の個別の薬製剤として投与することを包含する。例えば、本発明のペプチドと治療薬を患者に単一の経口投薬組成物、例えば錠剤またはカプセルの状態で一緒に投与してもよいか、或は各薬剤を個別の経口製剤として投与してもよい。
【0112】
個別の薬剤を用いる場合、本発明のペプチドと1種以上の追加的治療薬を本質的に同じ時(例えば同時)または個別に交互(例えば逐次的)に投与してもよい。
【0113】
また、本発明のペプチドを抗肥満薬と組み合わせて用いることも可能である。抗肥満薬には、例えばβ−3作動薬、例えばCL 316,243;カンナビノイド(cannabinoid)(例えば CB-1) 拮抗薬;食欲抑制薬、例えばシブトラミン(sibutramine )(Meridia)など;およびリパーゼ阻害薬、例えばオルリスタット(orlistat)(Xenical)などが含まれる。また、本発明のペプチドを消化および/または代謝を調節する薬剤化合物、例えば熱発生、脂肪分解、腸運動性、脂肪吸収および満腹などを調節する薬剤などと組み合わせて投与することも可能である。
【0114】
加うるに、本発明のペプチドを糖尿病または糖尿病関連疾患を治療するに適した下記を包含する薬剤の中の1種以上と組み合わせて投与することも可能である:PPAR リガンド(作動薬、拮抗薬),インスリン分泌促進薬、例えばスルホニル尿素薬および非スルホニル尿素系分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、インスリン抵抗性改善薬、肝臓グルコース生産低下用化合物、およびインスリンおよびインスリン誘導体。そのような治療薬は本発明のペプチドを投与する前、同時または投与後に投与可能である。インスリンおよびインスリン誘導体には、長期および短期両方の作用形態およびインスリン製剤が含まれる。PPAR リガンドには、PPAR 受容体いずれかの作動薬および/または拮抗薬またはこれらの組み合わせが含まれ得る。PPAR リガンドには、例えばPPAR-α,PPAR-g,PPAR-δ またはPPARの受容体の中の2種または3種の任意組み合わせのリガンドが含まれ得る。PPAR リガンドには、例えばロシグリタゾン(rosiglitazone)、トログリタゾン(troglitazone)およびピオグリタゾン(pioglitazone)が含まれる。スルホニル尿素薬剤には、例えばグリブリド(glyburide)、グリメピリド(glimepiride)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、トルブタミド(tolbutamide)およびグリピジド(glipizide)が含まれる。
【0115】
糖尿病の治療で本発明のペプチドを投与する時に用いるに有用であり得るα-グルコシダーゼ阻害剤には、アカルボース(acarbose)、ミグリトール(miglitol)およびボグリボース(voglibose)が含まれる。糖尿病の治療で用いるに有用であり得るインスリン抵抗性改善薬には、PPAR-g 作動薬、例えばグリタゾン(glitazones) [例えばトログリタゾン(troglitazone)、ピオグリタゾン (pioglitazone)、エングリタゾン(englitazone)、 MCC-555,ロシグリタゾン(rosiglitazone)など、および他のチアゾリジンジオンおよび非チアゾリジンジオン化合物、ビグアニド(biguanides)、例えばメトホルミン(metformin)およびフェンホルミン(phenformin)など、蛋白質チロシンホスファターゼ−1B(PTP-1B)阻害薬、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV) 阻害薬および11ベータ-HSD 阻害薬が含まれる。糖尿病の治療で本発明のペプチドを投与する時に用いるに有用であり得る肝臓グルコース生産低下用化合物には、グルカゴン拮抗薬およびメトフォルミン(metformin)、例えばGlucophage および Glucophage XRなどが含まれる。糖尿病の治療で本発明のペプチドを投与する時に用いるに有用であり得るインスリン分泌促進薬には、スルホニル尿素および非スルホニル尿素系薬剤: GLP-1,GIP,PACAP,セクレチンおよびこれらの誘導体、ナテグリニド(nateglinide)、メグリチニド(meglitinide)、レパグリニド(repaglinide)、グリベンクラミド(glibenclamide)、グリメピリド(glimepiride)、クロルプロパミド(chlorpropamide)、グリピジド(glipizide)が含まれる。GLP-1 には、天然のGLP-1よりも半減期が長いGPI−1誘導体、例えば脂肪酸誘導体化GLP-1およびエキセンジン(exendin)などが含まれる。
【0116】
また、本発明のペプチドをある患者における脂質異常を治療する目的で通常用いられる薬剤と組み合わせて本発明の方法で用いることも可能である。そのような薬剤には、これらに限定するものでないが、HMG-CoA 還元酵素阻害薬、ニコチン酸、脂肪酸低下化合物[例えばアシピモックス(acipimox)]、脂肪低下薬[例えばスタノールエステル(stanol esters)、ステロールグリコシド、例えばチクエシド(tiqueside)およびアゼチジノン(azetidinones)、例えばエゼチミベ(ezetimibe)]、 ACAT 阻害薬[例えばアバシミベ(avasimibe)]、胆汁酸抑制薬、胆汁酸再取り込み阻害薬、ミクロソームトリグリセリド輸送阻害薬およびフィブリン酸誘導体が含まれる。HMG-CoA 還元酵素阻害薬には、例えばロバスタチン(lovastatin)、シムバスタチン(simvastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、フルバスタチン(fluvastatin)、アトルバスタチン(atorvastatin)、リバスタチン(rivastatin)、イタバスタチン(itavastatin)、セリバスタチン(cerivastatin)および ZD-4522が含まれる。フィブリン酸誘導体には、例えばクロフィブレート(clofibrate)、フェノフィブレート(fenofibrate)、ベザフィブレート(bezafibrate)、シプロフィブレート(ciprofibrate)、ベクロフィブレート(beclofibrate)、エトフィブレート(etofibrate)およびゲムフィブロジル(gemfibrozil)が含まれる。抑制薬には、例えばコレスチラミン(cholestyramine)、コレスチポール(colestipol)および架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体が含まれる。
【0117】
また、本発明のペプチドを抗高血圧薬、例えばβ遮断薬およびACE阻害薬などと一緒に用いることも可能である。本発明のペプチドと組み合わせて用いるに適した追加的抗高血圧薬の例には、カルシウムチャンネル遮断薬[L型およびT型、例えばジルチアゼ(diltiazem)、ベラパミル(verapamil)、ニフェジピン(nifedipine)、アムロジピン(amlodipine)およびミベフラジル(mybefradil)など]、利尿薬[例えばクロロチアジド(chlorothiazide)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、フルメチアジド(flumethiazide)、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethiazide)、ベンドロフルメチアジド(bendroflumethiazide)、メチルクロロチアジド(methylchlorothiazide)、トリクロロメチアジド(trichloromethiazide)、ポリチアジド(polythiazide)、ベンズチアジド(benzthiazide)、エタクリン酸トリクリナフェン(tricrynafen)、クロルタリドン(chlorthalidone)、フロセミド(furosemide)、ムソリミン(musolimine)、ブメタニド(bumetanide)、トリアムトレネン(triamtrenene)、アミロリド(amiloride)、スピロノラクトン(spironolactone)]、レニン阻害薬、ACE阻害薬[例えばカプトプリル(captopril)、ゾフェノプリル(zofenopril)、フォシノプリル(fosinopril)、エナラプリル(enalapril)、セラノプリル(ceranopril)、シラゾプリル(cilazopril)、デラプリル(delapril)、ペントプリル(pentopril)、キナプリル(quinapril)、ラミプリル(ramipril)、リシノプリル(lisinopril)]、AT-1受容体拮抗薬[例えばロサルタン(losartan)、イルベサルタン(irbesartan)、バルサルタン(valsartan)]、ET 受容体拮抗薬[例えばシタクスセタン(sitaxsentan)、アトルセンタン(atrsentan)]、中性エンドペプチダーゼ(NEP) 阻害薬、バソペプシダーゼ阻害薬(二重NEP-ACE 阻害薬)[例えばオマパトリラット(omapatrilat)およびゲノパトリラット(gemopatrilat)]および硝酸塩が含まれる。
薬剤組成物
哺乳動物におけるこの上に示した状態の治療の効力を測定する目的で用いた良く知られた検定を基にしかつその結果をそのような状態の治療で用いられる公知薬剤の結果と比較することで、望まれる適応症の各々の治療に有効な本発明のペプチドの投薬量を容易に決定することができる。そのような状態の中の1つの治療で投与すべき活性材料の量は、用いる個々のペプチドおよび投薬単位、投与様式、治療期間、治療すべき患者の年齢および性、および治療すべき状態の性質および度合の如き考慮に応じて幅広く態様であり得る。
【0118】
投与すべき活性材料の総量は体重1kg当たり一般に例えば約0.001mgから約200mg/日または約0.01mgから約200mg/日の範囲であり得る。単位投薬物に含有させる活性材料の量は例えば約0.05mgから約1500mgであってもよく、それを日に1回以上投与してもよい。注射(静脈内、筋肉内、皮下および非経口注射を包含)および輸液技術を用いて投与する場合の1日当たりの投薬量は、例えば約0.01から約200mg/kgであり得る。直腸投薬療法の1日当たりの投薬量は例えば総体重1kg当たり約0.01から約200mgであり得る。経皮濃縮液の場合には、1日当たりの投薬量が例えば約0.01から約200mg/kgになるように維持する必要があり得る。
【0119】
各患者に特定の初期および継続投薬療法は、勿論、担当診断医が決定する如き状態の性質およびひどさ、用いる特定ペプチドが示す活性、患者の年齢、患者の食事、投与時間、投与経路、薬剤排泄速度、薬剤組み合わせなどに応じて多様である。本分野の技術者は通常の処置試験を用いて本発明のペプチドの所望治療様式および投与回数を確かめることができるであろう。
【0120】
本発明のペプチドを用いて、それを必要としている被験体にそれを適切に調合した薬剤組成物として投与することで所望の薬理学的効果を達成することができる。個々の状態または病気の治療を必要としている被験体は例えば哺乳動物(ヒトを包含)であり得る。従って、本発明は、薬学的に受け入れられる担体と薬学的に有効な量の本発明のペプチドで構成させた薬剤組成物を包含する。薬学的に受け入れられる担体は、この担体に起因する如何なる副作用も本活性材料が示す有益な効果を無効にすることもないように本活性材料が有効な活性を示すことに矛盾しない濃度で患者に比較的無毒で無害な担体のいずれかである。あるペプチドの薬学的に有効な量は、治療を受けさせる個々の状態にある結果をもたらすか或は影響を及ぼす量である。本発明のペプチドは薬学的に受け入れられる担体と一緒にした有効な通常の投薬単位形態物を用いて投与可能であり、そのような形態物には、例えば即効型および徐放性製剤、経口、非経口、局所などの形態が含まれる。
【0121】
本ペプチドを経口投与する場合、これを固体状もしくは液状製剤、例えばカプセル、ピル、錠剤、トローチ、ロゼンジ、溶融物、粉末、溶液、懸濁液または乳液などに調製してもよく、かつこれは薬剤組成物の製造に適することが本技術分野で公知の方法に従って調製可能である。固体状単位投薬形態物はカプセルであってもよく、それは殻が硬質もしくは軟質の通常のゼラチン型であってもよく、それに例えば界面活性剤、滑剤および不活性充填材、例えばラクトース、スクロース、燐酸カルシウムおよびコーンスターチなどを含有させてもよい。
【0122】
別の態様では、本発明のペプチドを通常の錠剤基材、例えばラクトース、スクロースおよびコーンスターチなどと一緒に結合剤、例えばアカシア、コーンスターチまたはゼラチンなど、投与後の錠剤の崩壊および溶解を補助することを意図した崩壊剤、例えばジャガイモ澱粉、アルギン酸、コーンスターチおよびグアーゴムなど、錠剤顆粒品の流れを向上させかつ錠剤の材料が錠剤用ダイスおよびパンチの表面に粘着しないようにすることを意図した滑剤、例えばタルク、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム、カルシウムもしくは亜鉛など、錠剤の美的品質を向上させてそれらが患者に受け入れられる度合を高くすることを意図した染料、着色剤および風味剤などと組み合わせて錠剤にしてもよい。液状の経口投薬形態物で用いるに適した賦形剤には、希釈剤、例えば水およびアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコールなど(薬学的に受け入れられる界面活性剤、懸濁剤または乳化剤の添加有り無し)が含まれる。他のいろいろな材料を被膜としてか或はさもなければ投薬単位の物理的形態を修飾する目的で存在させてもよい。例えば、錠剤、ピルまたはカプセルなどをシェラック、糖または両方で被覆してもよい。
【0123】
水性懸濁液を調製しようとする場合には分散し得る粉末および顆粒が適切である。そのことから本活性材料を分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤および1種以上の防腐剤と混合してもよい。適切な分散もしくは湿潤剤および懸濁剤の例はこの上に既に挙げたそれらである。また、追加的賦形剤、例えばこの上に記述した甘味剤、風味剤および着色剤などを存在させることも可能である。
【0124】
本発明の薬剤組成物をまた水中油エマルジョンの形態にすることも可能である。その油相は植物油、例えば液状パラフィンまたは植物油の混合物などであってもよい。適切な乳化剤は、(1)天然に存在するゴム、例えばアカシアゴムおよびトラガカントゴムなど、(2)天然に存在する燐脂質、例えば大豆およびレシチンなど、(3)脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導されたエステルもしくは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエートなど、および(4)前記部分エステルとエチレンオキサイドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどであり得る。そのようなエマルジョンにまた甘味剤および風味剤を含有させることも可能である。
【0125】
シロップおよびエリキシルを甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースなどと一緒に配合してもよい。そのような配合物にまた粘滑剤および防腐剤、風味剤および着色剤を含有させることも可能である。
【0126】
本発明のペプチドを、また、本ペプチドを生理学的に受け入れられる希釈剤の中に薬剤担体[これは無菌の液体または液体混合物、例えば水、食塩水、デキストロース水溶液および関連糖溶液、アルコール、例えばエタノール、イソプロパノールまたはヘキサデシルアルコールなど、グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど、グリセロールケタール、例えば2,2−ジメチル−1,1−ジオキソラン−4−メタノールなど、エーテル、例えばポリ(エチレングリコール)400など、油、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくはグリセリドまたはアセチル化脂肪酸グリセリド(薬学的に受け入れられる界面活性剤、例えば石鹸または洗浄剤など、懸濁剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなど、または乳化剤および他の薬学的アジュバントの添加有り無し)であり得る]と一緒に入れることで生じさせた注射可能投薬物として非経口、即ち皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内投与することも可能である。
【0127】
本発明の非経口製剤で使用可能な油の例は、石油、動物、植物または合成が源になった油、例えば落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ペトロラタムおよび鉱油である。適切な脂肪酸にはオレイン酸、ステアリン酸およびイソステアリン酸が含まれる。適切な脂肪酸エステルは、例えばオレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルである。適切な石鹸には、脂肪アルカリ金属、アンモニウムおよびトリエタノールアミン塩が含まれ、適切な洗浄剤にはカチオン性洗浄剤、例えばハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジニウムおよび酢酸アルキルアミンなど、アニオン性洗浄剤、例えばアルキル、アリールおよびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセリドスルフェート、およびスルホスクシネートなど、非イオン性洗浄剤、例えば脂肪アミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミドおよびポリオキシエチレンポリプロピレン共重合体など、および両性洗浄剤、例えばアルキル−ベータ−アミノプロピオネートおよび2−アルキルイミダゾリン第四級アンモニウム塩ばかりでなく混合物が含まれる。
【0128】
本発明の非経口組成物に本活性材料を溶液の状態で典型的には約0.5から約25重量%含有させてもよい。また、防腐剤および緩衝剤も有利に使用可能である。注射部位の刺激を最小限にするか或はなくす目的で、前記組成物に親水性−親油性バランス(HLB)が約12から約17の非イオン性界面活性剤を含有させることも可能である。そのような製剤に入れる界面活性剤の量は約5から約15重量%の範囲である。そのような界面活性剤は前記HLBを示す単一の成分であってもよいか或は所望のHLBを示すように2種以上の成分を含有させた混合物であってもよい。
【0129】
非経口製剤で用いる界面活性剤の例は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルの種類、例えばソルビタンモノオレエートなど、およびプロピレンオキサイドとプロピレングリコールの縮合で生じさせた疎水性基材とエチレンオキサイドの高分子量付加体である。
【0130】
本薬剤組成物を無菌の注射可能水性懸濁液の形態にすることも可能である。そのような懸濁液の調製は、公知方法に従い、適切な分散もしくは湿潤剤および懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムなど、分散もしくは湿潤剤(天然に存在する燐脂質、例えばレシチンなど、アルキレンオキサイドと脂肪酸の縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレートなど、エチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノールなど、脂肪酸とヘキシトールから誘導された部分エステルとエチレンオキサイドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなど、または脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとエチレンオキサイドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどであってもよい)を用いて実施可能である。
【0131】
前記無菌の注射可能製剤は、また、無毒の非経口的に受け入れられる希釈剤または溶媒に入っている無菌の注射可能溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な希釈剤および溶媒は、例えば水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液などである。加うるに、無菌の不揮発性油も溶媒または懸濁用媒体として通常用いられる。この目的で、如何なるブランドの不揮発性油も使用可能であり、それらには合成のモノもしくはジグリセリドが含まれる。加うるに、脂肪酸、例えばオレイン酸などを注射可能物の調製で用いることも可能である。
【0132】
本発明の組成物をまた薬剤を直腸投与するに適した座薬の形態で投与することも可能である。そのような組成物の調製は本薬剤を非刺激性の適切な賦形剤(これは通常の温度では固体であるが直腸の温度では液体であり、従って直腸の中で溶融して前記薬剤を放出する)と混合することで実施可能である。そのような材料は、例えばココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0133】
本発明の方法で用いる別の製剤では、経皮送達用デバイス(「パッチ」)を用いる。そのような経皮パッチを用いることで本発明のペプチドを制御した量で連続的または断続的に注入することができる。薬剤の送達に適した経皮パッチの構成および使用は本技術分野で良く知られている[例えば米国特許第5,023,252号(引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照]。そのようなパッチを薬剤を連続的、パルス的または要求に応じて送達するに適するように構築してもよい。
【0134】
本薬剤組成物を患者に機械的送達用デバイスを用いて導入するのが望ましいか或は必要があり得る。薬剤の送達に適した機械的送達用デバイスの構成および使用は本技術分野で良く知られている。例えば、薬剤を脳に直接投与するに適した直接的技術は、通常、薬剤送達用カテーテルを患者の脳室系の中に入れることで血液脳関門を迂回させることを伴う。薬剤を体の特定の身体構造領域に輸送する目的で用いられるそのようなある種の移植可能送達システムが米国特許第5,011,472号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0135】
本発明の組成物に、また、他の通常の薬学的に受け入れられる配合用材料を必要または所望に応じて含有させることも可能であり、それを一般的に担体または希釈剤と呼ぶ。本発明の組成物のいずれにも抗酸化剤、例えばアスコルビン酸などまたは他の適切な防腐剤を添加することで防腐処理を受けさせてもよい。そのような組成物を適切な投薬形態物に調製するに適した通常の手順を用いることができる。
【0136】
本組成物を意図した投与経路に適するように配合する時に適宜使用可能な通常用いられる薬学的材料には、酸性化剤、例えばこれらに限定するものでないが、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸など、およびアルカリ化剤、例えばこれらに限定するものでないが、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロラミンなどが含まれる。
【0137】
本明細書に記述する方法で同定したペプチドは、単独の薬剤としてか或は他の1種以上の薬剤と組み合わせて投与可能であるが、組み合わせ投与の場合には、その組み合わせによって受け入れられない不利な影響が引き起こされないようにする。例えば、本発明のペプチドを公知の抗肥満薬または公知の抗糖尿病薬または他の適応症薬などばかりでなくそれらの混合物および組み合わせと一緒に組み合わせてもよい。
【0138】
本明細書に記述する方法で同定したペプチドをまた遊離塩基形態または組成物の状態で研究および診断薬としてか或は分析標準などとして用いることも可能である。従って、本発明は、不活性な担体と有効量の本発明のペプチドで構成させた組成物を包含する。不活性な担体は、担持させるべきペプチドと相互作用を起こさずかつ担持させるべきペプチドに支持、運搬手段、かさ、追跡可能材料などを与える材料のいずれかである。ペプチドの有効量は、実施すべき個々の手順にある結果をもたらすか或はある影響を及ぼす量である。
【0139】
皮下、静脈内、筋肉内などに適した製剤、適切な薬剤担体の調製そして調製および投与技術は本技術分野で良く知られている方法のいずれかを用いて実施可能である(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,第20版,2000を参照)。
【0140】
本明細書に記述するペプチドをまた組成物、研究および診断または分析標準などとして用いることも可能である。従って、本発明は、不活性担体と有効量の本発明のペプチドで構成させた組成物を包含する。不活性担体は、担持すべきペプチドと相互作用せずかつ担持すべきペプチドに支持、輸送手段、かさ、追跡可能材料などを与える材料のいずれかである。ペプチドの有効量は実施すべき個々の手順にある結果をもたらすか或は影響を及ぼす量である。
【0141】
ペプチドは水性および非水性環境下で加水分解、アミド分解、酸化、ラセミ化および異性化を起こすことが知られている。劣化、例えば加水分解、アミド分解または酸化などは毛細管電気泳動法で容易に検出可能である。血漿中の半減期が長いか或は生物学的滞留時間が長いペプチドは、酵素による分解を受けるとしても、最低でも水溶液中で安定であるべきである。例えば、ペプチドが体温で1日当たりに示す劣化度は10%未満であるか、或は体温で1日当たりで示す劣化度は5%未満である。体温で1週間に渡って安定(即ち劣化度が数パーセント未満)であると投与の頻度を少なくすることができるであろう。冷蔵庫の温度で数年の桁で安定であると製造業者は液状の製剤を提供することが可能になることで、再構成の不便さが回避されるであろう。加うるに、ペプチドが有機溶媒中で安定であるとそれを新規な投薬形態物、例えば移植片などに調製することも可能になるであろう。
【0142】
本明細書に記述する構造物、材料、組成物および方法は本発明の代表例を示すことを意図したものであり、かつ本発明の範囲を本実施例の範囲に限定するものでないことは理解されるであろう。本分野の技術者は、開示した構造物、材料、組成物および方法に対して変更を行うことを伴わせて本発明を実施することができそしてそのような変形も本発明の範囲内であると見なされることを認識するであろう。
【0143】
以下の実施例は本明細書に記述する発明を説明する目的で示すものであり、決して本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
[実施例]
【0144】
本発明をより良好に理解することができるようにする目的で、以下の実施例を挙げる。本実施例は単に説明の目的で示すものであり、決して本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。本明細書に挙げる出版物は全部引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【実施例1】
【0145】
ペプチド合成
ペプチドの合成をRinkアミド樹脂上でHBTUを活性化させることを伴うFMOC化学が用いられているApplied Biosystems 430Aペプチド合成装置を用いて実施した。Standard Applied Biosystemsプロトコルを用いた。TFAを84.6%とフェノールを4.4%と水を4.4%とチオアニソールを4.4%とエタンジチオールを2.2%用いてペプチドを開裂させた。冷t−ブチルメチルエーテルを用いて前記開裂混合物からペプチドを沈澱させた。その沈澱物を冷エーテルで洗浄した後、アルゴン下で乾燥させた。ペプチドの精製を逆相C18HPLCをTFA含有量が0.1%の水/アセトニトリル線形勾配で用いることで実施した。ペプチド同定の立証をMALDIおよびエレクトロスプレー質量分析およびアミノ酸分析で実施した。
【実施例2】
【0146】
N末端修飾用化合物を付加させる方法
ペプチドの合成をRinkアミド樹脂上でHBTUを活性化させることを伴うFMOC化学が用いられているApplied Biosystems 430Aペプチド合成装置を用いて実施した。Standard Applied Biosystemsプロトコルを用いた。アミノ酸連成で用いられる方法と同じ方法を用いてN末端修飾用化合物を前記ペプチドに連成させた。N末端修飾用化合物は商業的に入手可能であった。アミン含有およびメルカプト含有N末端修飾用化合物の場合には、それらを当該ペプチドに連成させている間、アミン基およびメルカプト基のそれぞれをFMOCまたはトリチルで保護しておいた。TFAを84.6%とフェノールを4.4%と水を4.4%とチオアニソールを4.4%とエタンジチオールを2.2%用いてペプチドを開裂させた。冷t−ブチルメチルエーテルを用いて前記開裂混合物からペプチドを沈澱させた。その沈澱物を冷エーテルで洗浄した後、アルゴン下で乾燥させた。ペプチドの精製を逆相C18HPLCをTFA含有量が0.1%の水/アセトニトリル線形勾配で用いることで実施した。ペプチド同定の立証をMALDIおよびエレクトロスプレー質量分析およびアミノ酸分析で実施した。
【実施例3】
【0147】
PEG化ペプチドの製造
PEG誘導体の調製を本分野の技術者に公知の方法を用いてmPEG-MAL(Nektar)を目標のペプチドと一緒にpH8および室温でインキュベートすることで実施した。実施例1に記述した如きC18HPLCを用いて精製を行うことで誘導体化を受けなかったpHをPEG化ペプチドから除去した。
【実施例4】
【0148】
NPY受容体サブタイプを発現する細胞から膜を調製
ヒト神経芽細胞腫KAN-TS(NPY2)細胞をグルタミンを2mM、ウシ胎仔血清を10%および抗生物質/抗真菌薬(Gibco)を補充しておいたダルベッコ修飾イーグル培地中で増殖させた。ヒト神経芽細胞腫SK-N-MC(NPY1)細胞をグルタミンを2mM、ピルビン酸ナトリウムを1mM、ウシ胎仔血清を10%および抗生物質/抗真菌薬(Gibco)を補充しておいたダルベッコ修飾イーグル培地中で増殖させ、そしてヒトNPY5組換え型細胞株(HEK-293 )をグルタミンを2mM、ウシ胎仔血清を10%、抗生物質/抗真菌薬(Gibco)およびG−418を350μg/ml補充しておいたダルベッコ修飾イーグル培地中で増殖させた。全ての細胞株を37℃でCOが5%の湿った雰囲気中で維持した。密集度が80−90%になった時点で膜を調製する目的で細胞を収穫した。細胞を20mlの氷冷PBSで2回洗浄し、かき取った後、500rpmの遠心分離(Beckman)に5分間かけた。次に、細胞沈澱物を25 mM Tris-HCl/5 mM EDTA(pH7.7)に入れて2 x 10 秒間均一にし(Polytron 12 mm プローブ,7000-8000 rpm)た後、遠心分離(Beckman) に4℃で5分間かけた。次に、その上澄み液を30,000 x gの遠心分離に4℃で30分間かけた後、その結果として得た沈澱物を−80℃で貯蔵した。ウシIgGを標準として用いたBradford Assay(BioRad)を用いて蛋白質濃度を測定した。
【実施例5】
【0149】
KAN−TS膜を用いたNPY2に関する[125I]PYY SPA結合検定
ペプチド、膜、放射性リガンドおよびビーズの全部を結合用緩衝液(50 mM のHEPES,10 mMのCaCl2,5 mMのMgCl2( pH 7.4) にウシ血清アルブミンを0.1%補充)で希釈した。競合検定の目的で、ペプチドの濃度を高くしながら、これを50 pMの[125I]ヒトPYY(NEX-341),200 μgの麦芽アグルチニンビーズ(Amersham RPNQ0001)および膜(10 μg)と一緒に96穴PETGプレート(Perkin Elmer Life Sciences)の中で最終体積が200μlになるようにインキュベートした。1 μMのPYY(American Peptide,CA)を用いて非特異的結合を限定した。プレートを振とうしながら室温で30分間インキュベートし、振とう器から取り出した後、室温に更に2.5時間保持した。シグナルは少なくとも3から18時間に渡って安定であった。次に、Microbeta(Perkin Elmer Life Sciences)を用いてサンプルが示す放射能の量を量化した。結合データをPRISM(Graphpad)で解析した。
【実施例6】
【0150】
35S]GTPy[S]結合検定を用いたNPY2機能的活性の評価
ペプチド、膜、放射性リガンドおよびビーズの全部を結合用緩衝液(50 mM のHEPES,100 mMのNaCl,1 mMのMgCl2,1 μMのGDP,10 μg/mlのサポニンにBSAを0.1%補充、pH7.4)で希釈した。ペプチドの濃度を高くしながら、これをKAN-TS 膜(10 μg)、300 μgの麦芽アグルチニンビーズ(Amersham RPNQ0001)および100 pMの[35S]GTPγ[S](NEG030H)と一緒に96穴PETGプレート(Perkin Elmer Life Sciences)の中で最終体積が100μlになるようにインキュベートした。GTPγS(10 μM)を用いて非特異的結合を測定した。前記96穴プレートを振とう器の上に室温で60分間置き、2000rpmの遠心分離(Beckman)に5分間かけた後、Microbeta(Perkin Elmer Life Sciences)を用いて計数を1時間実施した。結合データをPRISM(Graphpad)で解析した。
【実施例7】
【0151】
SK−N−MC膜を用いたNPY1に関する[125I]PYY結合検定
ペプチド、膜、放射性リガンドおよびビーズの全部を結合用緩衝液(20mM のHEPES,137 mMの NaCl,5.4 mMの KCl,0.44 mM のKH2PO4,1.26 mMの CaCl2,0.81 mMの MgSO4,pH 7.4,にウシ血清アルブミンを0.3%補充)で希釈した。競合検定の目的で、ペプチドの濃度を高くしながら、これを75 pMの[125I]ヒトPYY(NEX-341)および膜(20−30 μg)と一緒に96穴ポリプロピレン製プレート(Perkin Elmer Life Sciences)の中で最終体積が200μlになるようにインキュベートした。1 μMのPYYを用いて非特異的結合を限定した。プレートを振とうしながら室温で2時間インキュベートした。インキュベーション後、穴の全内容物をMillipore HV プレート(0.2% のBSAで前以て処理しそして移す前に吸引で除去しておいた)に移し、急速濾過した後、200 μlの氷冷結合用緩衝液で3回洗浄した。次に、フィルターを空気で乾燥させ、シンチラント(Microscint O,Packard)を15−20μl加え、粘着性フィルムで覆った後、Microbeta(Perkin Elmer Life Sciences)で計数を実施した。結合データをPRISM(Graphpad)で解析した。
【実施例8】
【0152】
組換え型HEK 293膜を用いたNPY5に関する[125I]PYY結合検定
ペプチド、膜、放射性リガンドおよびビーズの全部を結合用緩衝液(25mM のTris,120 mMのNaCl,5 mMの KCl,1.2 mMの KH2PO4,2.5 mMの CaCl2,1.2 mM のMgSO4,pH 7.4にウシ血清アルブミンを0.1%補充)で希釈した。競合検定の目的で、ペプチドの濃度を高くしながら、これを75 pMの[125I]ヒトPYY(NEX-341)および膜(10μg)と一緒に96穴ポリプロピレン製プレート(Perkin Elmer Life Sciences)の中で最終体積が200μlになるようにインキュベートした。1 μMのPYYを用いて非特異的結合を限定した。プレートを振とうしながら室温で2時間インキュベートした。インキュベーション後、穴の全内容物をMillipore HV プレート(0.2% のBSAで前以て処理しそして移す前に吸引で除去しておいた)に移し、急速濾過した後、200 μlの氷冷結合用緩衝液で3回洗浄した。次に、フィルターを空気で乾燥させ、シンチラント(Microscint O,Packard)を15−20μl加え、粘着性フィルムで覆った後、Microbeta(Perkin Elmer Life Sciences)で計数を実施した。結合データをPRISM(Graphpad)で解析した。
【実施例9】
【0153】
ポリクローナル抗体の産生
ペプチドAc-CRHYLNLVTRQRY-NH2(SEQ ID NO: 6)の合成を実施例1に記述した如く実施した。PerSeptive V Biosystems Voyager DE Pro MALDI質量分析計を用いたMALDI 質量分析でペプチドの同定を立証した。Pierce Imject Maleimide Activated mcKLH キットおよびプロトコル(Pierce,Rockford,IL)を用いてシステイン残基をKLHに連成させた。本分野の技術者に公知の手順を用いてウサギに免疫を与えた後、抗体を単離した。
【0154】
ウサギがペプチドAc-CRHYLNLVTRQRY-NH2(SEQ ID NO: 6)に対して産生した抗体は、本分野の技術者に公知の方法を用いた酵素免疫吸着測定法(ELISA)で実証するように、ペプチドPYY(3-36)およびN末端修飾PYY(25-36) ペプチドを認識した。
【実施例10】
【0155】
一晩絶食させた細身マウスにおける食物摂取量低下に対してペプチドが示す効力の評価
絶食−再給食急性摂食検定
このプロトコルの目的は、ペプチドの1回投与が一晩絶食させておいた細身マウスの餌消費に対して示す効果を測定することにある。絶食−再給食マウスモデルは肥満の分野で食欲抑制効果を有する化合物を識別しようとする時に頻繁に用いられる。そのような動物モデルは肥満ヒトの体重を管理しようとする時に用いられるか或は用いられた化合物が示す効力プロファイルを同定かつ特徴づけしようとする時に成功裏に用いられた(例えばBalvet,他,Gen. Pharmacol. 13:293-297,1982;Grignaschi,他,Br. J. Pharmacol. 127:1190-1194,1999;McTavish および Heel,Drug 43:713-733,1992;Rowland,他,Life Sci. 36:2295-2300,1985を参照)。
【0156】
典型的な試験は、平均体重が約22gのオスマウス(2匹のマウス/ケージ;n=10/処置群)を100−140匹用いることを包含する。マウスを温度と湿度を制御した標準的な動物用部屋の中に入れて12/12の明暗サイクルで維持する。マウスをメッシュ床が備わっている宙づりケージの中に1匹ずつ入れる。試験の目的で動物を絶食状態にする時以外は水と餌を絶えず取ることができるようにする。
【0157】
暗段階(全体で約16−18時間)中にはマウスを一晩絶食状態に置く。この動物を割り当て量のペプチドで処置する。投与してから30分後に前以て重量を測定しておいた餌のジャーをケージに戻す。餌を再び与えてから1、2、4および24時間後の餌摂取を記録する。各時間点でこぼれた餌を餌のジャーに戻した後、餌のジャーの重量を測定する。餌消費量を各時間点で測定する。適切な統計学的分析を用いて処置群間の差を決定する。
【実施例11】
【0158】
肥満ズッカーfa/faラットにおける体重減少および餌と水の消費に対してペプチドが示す効果の評価
長期摂食検定
このプロトコルの目的はペプチドを肥満ズッカーfa/faラットに長期間投与した時にそれが体重および餌と水の消費に対して示す効果を測定することにある。化合物が体重減少に対して示す効力を測定しようとする時に肥満ズッカーfa/faラットが頻繁に用いられる。この動物モデルは肥満ヒトにおける体重の管理で用いられるか或は用いられた化合物が示す効力プロファイルを識別かつ特徴づけようとする時に成功裏に用いられた(例えばAl-Barazanji,他.,Obes Res. 8:317-323,2000;Assimacopoulos-Jeannet,他., Am. J. Physiol. 260(2 Pt 2):R278-283,1991;Dryden,他.,Horm. Metab. Res. 31:363-366,1999;Edwards および Stevens,Pharmacol. Biochem. Behav. 47:865-872,1994;Grinker,他.,Pharmacol. Biochem. Behav. 12:265-275,1980を参照)。
【0159】
典型的な試験は、平均体重が約550gのオスズッカーfa/fa(n=10/処置群)を60−80匹用いることを包含する。ラットを温度と湿度を制御した標準的な動物用部屋の中に入れて12/12の明暗サイクルで維持する。水と餌を絶えず取ることができるようにする。ラットをグリッド床が備わっている大型のラットシューボックスの中に1匹ずつ入れる。2日間の基礎体重測定値および24時間の餌と水の消費を記録する前に少なくとも4日間に渡って動物をグリッド床に順応させかつ試験用媒体を疑似投与する。ラットを基礎体重を基にして6から8匹の処理群の中の1つに割り当てる。体重の平均値および平均値からの標準誤差が同様になるように群を組み立てる。
【0160】
前以て決めておいた日数(典型的には6−14日間)に渡って毎日LD/サイクルの暗段階前に動物に割り当てた量のペプチドを強制経口投与する。その時点で体重、餌と水の消費量を測定する。最終日に動物をCO吸入で安楽死させた後、体重を測定する。
【0161】
このような長期摂取検定を用いて本発明のペプチドが体重減少もしくは制御に対して示す効力を測定することができる。
【0162】
この上の明細書に挙げた出版物および特許は全部引用することによって本明細書に組み入れられる。本発明の範囲および精神から逸脱しない記述した本発明の組成物および方法のいろいろな修飾形および変形が本分野の技術者に明らかになるであろう。本発明を特定の態様に関連して記述してきたが、請求する如き発明をそのような具体的な態様に過度に限定すべきではないと理解されるべきである。実際、本発明を実施する目的でこの上に記述した様式のいろいろな修飾形が分子生物学分野または関連分野の技術者に明らかになるであろうが、それらは本請求項の範囲内であることを意図する。本分野の技術者はほんの常規実験を用いることで本明細書に記述する発明の具体的態様の数多くの同等物を認識するか或は確かめることができるであろう。そのような同等物を本請求項に包含させることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
Z-RHYLNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO: 1)
(I)
[式中、
Zは
【化1】

【化2】

から選択される]
で表されるペプチド。
【請求項2】
式(II)
Z-HYLNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:2)
(II)
[式中、
Zは
【化3】

【化4】

から選択される]
で表されるペプチド。
【請求項3】
式(III)
Z-YLNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:3)
(III)
[式中、
Zは
【化5】

【化6】

から選択される]
で表されるペプチド。
【請求項4】
式(IV)
Z-LNLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:4)
(IV)
[式中、
Zは
【化7】

【化8】

から選択される]
で表されるペプチド。
【請求項5】
式(V)
Z-NLVTRQRY-NH2 (SEQ ID NO:5)
(V)
[式中、
Zは
【化9】

【化10】

から選択される]
で表されるペプチド。
【請求項6】
PEG化されている請求項1から5のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項7】
治療的に有効な量の請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドを薬学的に受け入れられる担体と一緒に含んで成る薬剤組成物。
【請求項8】
治療的に有効な量の請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドを薬学的に受け入れられる担体および1種以上の薬剤と一緒に含んで成る薬剤組成物。
【請求項9】
前記薬剤がβ−3作動薬、CB−1拮抗薬、食欲抑制薬およびリパーゼ阻害薬から成る群から選択される抗肥満薬である請求項8記載の薬剤組成物。
【請求項10】
前記薬剤がインスリン、インスリン誘導体、PPARリガンド、スルホニル尿素薬、α−グリコシダーゼ阻害薬、ビグアニド、PTP−1B阻害薬、DPP−IV阻害薬、11−ベータ−HSD阻害薬、GLP−1およびGLP−1誘導体、GIPおよびGIP誘導体、PACAPおよびPACAP誘導体およびセクレチンおよびセクレチン誘導体から成る群から選択される糖尿病治療薬である請求項8記載の薬剤組成物。
【請求項11】
前記薬剤がHMG−CoA阻害薬、ニコチン酸、脂肪酸低下化合物、脂質低下薬、ACAT阻害薬、胆汁抑制薬、胆汁酸再取り込み阻害薬、ミクロソームトリグリセリド輸送阻害薬およびフィブリン酸誘導体から成る群から選択される脂質障害治療薬である請求項8記載の薬剤組成物。
【請求項12】
前記薬剤がβ−遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿薬、レニン阻害薬、ACE阻害薬、AT−1受容体拮抗薬、ET受容体拮抗薬および硝酸塩から成る群から選択される抗高血圧薬である請求項8記載の薬剤組成物。
【請求項13】
肥満を治療する方法であって、それを必要としている被験体に請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドまたは請求項7記載の組成物を治療的に有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【請求項14】
体重減少を誘発する方法であって、それを必要としている被験体に請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドまたは請求項7記載の組成物を治療的に有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【請求項15】
体重増加を防止する方法であって、それを必要としている被験体に請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドまたは請求項7記載の組成物を治療的に有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【請求項16】
肥満に関連した疾患を治療する方法であって、それを必要としている被験体に請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドまたは請求項7記載の組成物を治療的に有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【請求項17】
前記肥満に関連した疾患が異常脂質血症、コレステロール結石、胆嚢疾患、痛風、癌、生理不順、不妊症、多嚢胞性卵巣、変形性関節症、睡眠時無呼吸、高トリグリセリド血症、X症候群、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高血圧、心疾患、冠状動脈性心臓病、冠動脈疾患、脳血管疾患、卒中および末梢血管疾患から成る群から選択される請求項16記載の方法。
【請求項18】
肥満を治療する方法であって、それを必要としている被験体に治療的に有効な量の請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドを1種以上の薬剤と一緒に投与する段階を含んで成る方法。
【請求項19】
請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドと1種以上の薬剤を単一の薬製剤として投与する請求項18記載の方法。
【請求項20】
肥満を治療する方法であって、それを必要としている被験体に請求項8、9、10、11または12記載の組成物を治療的に有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【請求項21】
肥満に関連した疾患を治療する方法であって、それを必要としている被験体に請求項8、9、10、11または12記載の組成物を治療的に有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【請求項22】
肥満および肥満に関連した疾患を治療および/または予防するための請求項1から5のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項23】
請求項1から5のいずれか1項記載の少なくとも1種のペプチドを少なくとも1種の薬学的に受け入れられる薬学的に安全な担体もしくは賦形剤と一緒に含有する薬剤。
【請求項24】
肥満および肥満に関連した疾患を治療および/または予防する薬剤を製造するための請求項1から5のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項25】
肥満を治療および/または予防するための請求項23記載の薬剤。

【公表番号】特表2007−512365(P2007−512365A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541620(P2006−541620)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039216
【国際公開番号】WO2005/053726
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(503211596)バイエル・フアーマシユーチカルズ・コーポレーシヨン (46)
【Fターム(参考)】