説明

遺伝子に基づいた薬物の細胞質送達のためのトリブロックコポリマー

本発明は、親水性ブロック;疎水性ブロック;および負荷電分子、例えば核酸、を可逆的に複合体形成することができる正荷電ブロックを含むトリブロックコポリマーであって、疎水性ブロックが親水性ブロックと正荷電ブロックとの間に配置されている、トリブロックコポリマーを特徴とする。望ましくは、トリブロックコポリマーは、自己集合してミセルまたはベシクルのような超分子構造を構築することができる。本発明はさらに、本発明のポリマーを用いて、負荷電分子を送達する方法および疾患または状態を処置する方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー化学および核酸トランスフェクションの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在、標的遺伝子の発現を沈黙させるために用いられる2つの方法:アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)およびRNA干渉(RNAi)がある。最近まで、ODNは、治療目的として遺伝子発現を減少または沈黙させるための主要な希望であった。ODNは、メッセンジャーRNA(mRNA)配列に相補的なDNAまたはRNAの短い断片である。それらは、二本鎖領域を生じるようにmRNAとハイブリダイズすることにより機能する。DNAの場合、RNA-DNA二重鎖が形成され、それはRNアーゼにより認識されることができ、それに従って、mRNAを分解し、標的配列によるタンパク質発現を排除する。この過程はインビトロで成功しているが、適切な送達機構の欠如がインビボ適用において制限している[9]。遺伝子サイレンシングの第二方法はRNAiであり、最初に、1998年に線虫において記載された[3]。この現象がまた、昆虫[4]、カエル[5]、マウス[6]において作動することが後で見出され、今や、すべての動物に存在すると考えられている。RNAiの本来の機能は、トランスポゾンおよびウイルスのような移動性遺伝物質要素による侵入に対するゲノムの保護であると思われる。トランスポゾンおよびウイルスは、それらが活性になった場合、異常なRNAまたはdsRNAを生じ[7]、従って、そのような核酸を除去することが望ましい。いったんこのdsRNA(>30ヌクレオチド(nt))が細胞内部にあったならば、RNAiの過程は、小さな干渉RNA(siRNA)と呼ばれる、dsRNAの約22ヌクレオチド長dsRNAセグメントへの酵素分解から始める[8]。ヌクレアーゼおよび他のタンパク質と共にsiRNAは、集合してRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を構築する。RISCは、siRNAのアンチセンス鎖がmRNAの相補配列に結合するのを可能にし、この結合した複合体が、次に、相補mRNAの分解を誘導する。哺乳動物細胞において、過程は長いdsRNA(>30nt)により開始される場合には、インターフェロン応答が活性化され、かつプロテインキナーゼRおよびRNアーゼIが活性化されて、すべてのタンパク質合成の停止へ導く。siRNA(<30nt)の送達後の細胞のアポトーシスは、哺乳動物細胞において、より一般的に、遺伝子発現を損なうことなく、特定の遺伝子を沈黙させる効率的な方法であることが示されている。siRNAの構造は、典型的には、2〜3ヌクレオチド長の3'オーバーハングを有する21〜22ヌクレオチド二本鎖RNA(dsRNA)からなる[10]。siRNAを介して遺伝子を沈黙させることは、非常に効率的な過程であり、ODNより1000倍効果的であると報告されている[9]。生物医学的適用についてのsiRNAの送達は、そのストリンジェントな配列特異的のために非常に有望である。siRNAの長さに渡っての一塩基ミスマッチは、応答の誘導を妨げるのに十分である[10]。
【0003】
RNAi経路またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて特異的に遺伝子発現を下方制御する、および非ウイルス遺伝子送達を介して遺伝子発現を上方制御する能力は、治療としておよび基礎科学におけるツールとして、途方もない可能性をもつ。しかしながら、小さな干渉RNA(siRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)、またはプラスミドDNA(pDNA)を標的細胞へ特異的に送達する能力がある効率的送達系が現在、利用できない。電荷に基づいて核酸と自己集合できる陽イオン性ポリマーは、最も広く研究され、かつ一般的に利用されている遺伝子送達媒体の一部である。陽イオンに基づいた遺伝子送達系の制限は、毒性、凝集、およびDNAの非パッキングを含む。siRNA送達は、標的内部移行およびエンドソーム回避を含む非ウイルス遺伝子送達アプローチと同じ制限の多くを被り、ウイルスベクターと同じくらい効率的であるその送達系はまだ見出されていない。被覆小窩への受容体媒介性取り込みおよびエンドサイトーシス後、エンドソームは、リソソーム融合へシャトルされ、それらの内容物の分解を行う。エンドソーム内容物のわずかな部分のみが免れる。
【0004】
siRNAは、インビトロおよびインビボで機能性で、様々なモデルにおいて標的遺伝子サイレンシングを媒介することが示されている。レポーター遺伝子は、インビトロ系[9, 13]および成体マウス[1, 21]の両方において、siRNA送達についての原理の証拠として広く利用されている。治療に関連した遺伝子のサイレンシングもまた、VEGFを標的とするsiRNAを送達することによる新血管新生の阻害にいくらかの成功を示している。
【0005】
siRNAを用いる遺伝子のサイレンシングは、siRNAが細胞によって内部に取り入れられ、RNAi経路が活性化されるサイトゾルへ移され、標的mRNAが破壊され、対象となる遺伝子が沈黙させられることを必要とする。siRNA送達は、標的内部移行およびエンドソーム回避のような他の非ウイルス遺伝子送達アプローチと同じ制限の多くを被り、ウイルスベクターと同じくらい効率的であるその送達系はまだ見出されていない。それにもかかわらず、siRNAの送達についての現在のストラテジーは、静電気的にsiRNAと自己集合する陽イオン性ポリマー、脂質[11, 12]、およびペプチド[13]のような非ウイルス遺伝子送達について用いられるのと同じ送達ベクターを用いる。siRNAおよびプラスミドの行動の機構における2つの重要な違いは、siRNAは活性であるために核バリアを横断する必要がないこと、およびsiRNAは活性の損失なしでの化学修飾の可能性をもって、サイズがよりずっと小さいことである[11]。siRNAが核へ侵入する必要がないという事実は、DNAの細胞への効率的な送達が、核膜が損なわれている活発に分裂中の細胞を、または核移行配列を含むベクターと共に、必要とするため、著しく有利な点である。なおさらに、siRNAは二本鎖であるため、それは、他のRNAサイレンシングアプローチより分解に対して感受性が低く、それを化学修飾および送達のためのより強固な材料にさせている。プラスミドDNAについての陽イオン性ポリマー送達系は、遺伝子移入のためにバリアを乗り越える能力がある合成ベクターを設計するように機能ドメインで広範に修飾されており、siRNA送達に適用されうる。
【0006】
ゲノムにおいて任意の遺伝子を沈黙させる能力は、鍵分子を下方制御することにより、健康な組織形成および創傷治癒を増強するために用いられうる。例えば、腹骨盤手術後、創傷の隣接側間のフィブリンの蓄積は、健康な機能性組織の再生を妨げる。卵管または小腸のような器官の近くの腹部手術は、癒着が管を圧迫し、不妊症を引き起こしうるため、特別な問題をもたらす[2, 3]。1994年において、腹部手術を受けた310万人米国患者の90パーセントに癒着が起き、約15パーセントが癒着を除去するための二次処置を受けた[4]。バリアおよびポリマー洗浄が導入されているが、問題はほとんど処理が不成功のままである。機構に関しては、術後癒着形成は、プラスミノーゲンアクチベーター活性(PAA)のPAI-1による阻害の結果として腹腔内沈着フィブリンを分解する中皮細胞の能力の低下と関連している[5]。PAI-1活性は、HIF-1α、転写因子、により一部制御され、そのHIF-1αは、立ち代わって、傷害の部位における低酸素により上方制御される[6]。それゆえに、PAI-1およびHIF-1αのmRNAを標的とすることは、フィブリン形成とフィブリン吸収との間のバランスを全体的吸収の方へ傾け、それに従って、腹部癒着を防ぐために用いられうる。HIF-1αは、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)を含むいくつかの他の瘢痕形成タンパク質の産生を制御し、その結果として、転写因子の阻害は、複数の正の効果を生じうる。組織プラスミノーゲンアクチベーターおよびアンクロド[7,8]での外科患者の処置が良好な治癒を阻害しなかったことが以前に見出されており、組織内の凝固/線維素溶解のバランスが腹腔内においてよりロバストであることを実証していることもまた注目に値する。PAI-1およびHIF-1αが、腹膜の表面上の中皮細胞、および傷害の部位におけるフィブリン凝塊に侵入する線維芽細胞により産生されることを考慮すれば、そのような治療用物質が送達する複数の細胞標的が存在する。
【0007】
従って、核酸および他の負荷電分子についての新しい送達系、ならびに手術に起因する癒着のような疾患および状態についての効果的処置の必要性がある。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
空間的に分離された疎水性部分および親水性部分を含む新規なトリブロック構造をもつポリマーは、核酸のような負荷電分子の標的細胞への効果的な送達のために開発されている。
【0009】
従って、一つの局面において、本発明は、親水性ブロック;疎水性ブロック;および負荷電分子、例えば、核酸を可逆的に複合体形成することができる正荷電ブロックを含むトリブロックコポリマーであって、疎水性ブロックが親水性ブロックと正荷電ブロックとの間に配置されている、トリブロックコポリマーを特徴とする。望ましくは、トリブロックコポリマーは、自己集合してミセルまたはベシクルのような超分子構造を構築する能力がある。特定の態様において、疎水性ブロックと正荷電ブロックとの間の結合、例えば、ジスルフィド結合、ビニルエーテル、オルトエステル、アシルヒドラゾン、または-N-PO3-基、はエンドソームにおいて不安定である。親水性ブロックは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ジブロックもしくはマルチブロックコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、ポリペプチド、多糖、ポリ(N,N-ジアルキルアクリルアミド)、ヒアルロン酸、またはポリ(N-アクリロイルモルホリン)を含みうる。疎水性ブロックは、ポリ(プロピレンスルフィド)、ポリ(プロピレングリコール)、エステル化ポリ(アクリル酸)、エステル化ポリ(グルタミン酸)、エステル化ポリ(アスパラギン酸)、またはポリペプチドを含みうる。正荷電ブロックは、ポリペプチド(例えば、TAT、Arg9、Lys9、またはArg-Lysコポリマー)、ポリ(エチレンイミン)、またはポリ(アミドアミン)を含みうる。一つの態様において、親水性ブロックはPEGであり、疎水性ブロックはPPSであり、正荷電ブロックはポリペプチド、例えば、PEG45、PPS5またはPPS10、およびTATである。トリブロックコポリマーはさらに、トランスフェリン、葉酸、レクチン、増殖因子、RGDペプチド、またはマンノース含有グリコペプチドのような内部移行剤を含みうる。コポリマーはさらに、負荷電分子、例えば、薬物、ポリペプチド、合成もしくは天然のポリマー、またはsiRNA、ODN、もしくはプラスミドのような核酸、へ複合体形成されうる。一つの態様において、核酸は、HIF-1α(例えば、GenBankアクセッション番号NM001530、NM181054、またはNM017902)またはPAI-1(例えば、GenBankアクセッション番号X04744)を標的とするsiRNAである。特定の態様において、ポリマーと複合体形成される核酸は、細胞における標的mRNAまたは標的遺伝子の核酸配列に対して相補性または同一性の領域を有する。さらなる態様において、核酸は、細胞における標的mRNAまたは標的遺伝子からのタンパク質の発現に減少をもたらす能力がある。
【0010】
本発明はさらに、本明細書に記載されているようなトリブロックコポリマー、トリブロックコポリマーと複合体形成される負荷電分子、例えば、核酸、および薬学的に許容される希釈剤を含む薬学的組成物を特徴とする。
【0011】
もう一つの局面において、本発明は、負荷電分子、例えば、核酸、と可逆的に複合体形成される、本明細書に記載されているようなトリブロックコポリマーを供給する段階、および細胞をトリブロックコポリマーと接触させる段階を含む、負荷電分子、例えば、核酸、を細胞へ送達するための方法であって、トリブロックコポリマーが細胞において内部に取り入れられ、負荷電分子を細胞へ送達する、方法を特徴とする。いったん送達されたならば、例えば、核酸は、細胞において標的遺伝子の発現を低下させる、または細胞において遺伝子の発現を増加させる。
【0012】
本発明はまた、負荷電分子、例えば核酸、と可逆的に複合体形成される、本明細書に記載されているようなトリブロックコポリマーを提供する段階、およびトリブロックコポリマーの治療的有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体において疾患または状態を処置するための方法であって、トリブロックコポリマーが被験体の細胞において内部に取り入れられ、それにより、負荷電分子を細胞へ送達し、被験体において疾患または状態を処置する、方法を特徴とする。処置される疾患または状態は、例えば、癌、再狭窄、瘢痕形成、または術後癒着(例えば、HIF-1αまたはPAI-1を標的にするsiRNAを送達することによる)である。負荷電分子、例えば核酸は、例えば、標的核酸からの発現を減少させることにより、または細胞において発現する能力がある核酸配列を提供することにより、細胞においてタンパク質の発現を低下または増加させうる。
【0013】
「負荷電分子」とは、正荷電ポリマーブロックと複合体形成する能力がある任意の分子またはイオンを意味する。この明細書の目的にとって、負荷電分子は、正味負電荷を有する必要はない、例えば、分子の一部は複合体形成するのに十分、負に帯電しうるが、全体としての分子の正味電荷は中性または正である。例示的な負荷電分子は、薬物、ポリペプチド、合成または他の天然ポリマー、および核酸を含む。
【0014】
「核酸」とは、任意の核酸塩基オリゴマーを意味する。当技術分野において公知のように、ヌクレオシドは核酸塩基-糖の組合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の2つの最も一般的なクラスは、プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドについて、リン酸基は、糖の2'、3'、または5'ヒドロキシル部分のいずれかに連結されうる。オリゴヌクレオチドを形成するにおいて、リン酸基は、お互いに隣接したヌクレオシドを共有結合し、線状重合化合物を形成する。次に、この線状重合構造のそれぞれの末端がさらに連結されて、環状構造を形成する;開いた線状構造が一般的に好ましい。オリゴヌクレオチド構造内では、リン酸基は一般に、オリゴヌクレオチドの骨格を形成していると呼ばれる。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3'から5'へのホスホジエステル結合である。
【0015】
本発明において有用な好ましい核酸塩基オリゴマーの具体例は、改変骨格または非天然ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを含む。本明細書に定義されているように、改変骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、骨格においてリン原子を保持するもの、および骨格においてリン原子を有しないものを含む。本明細書の目的にとって、ヌクレオシド間骨格においてリン原子を有しない改変オリゴヌクレオチドもまた、核酸塩基オリゴマーであるとみなされる。
【0016】
改変オリゴヌクレオチド骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル-ホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3'-5'結合を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'結合類似体、およびヌクレオシド単位の隣接対が3'-5'から5'-3'へ、または2'-5'から5'-2'へ連結されている逆方向性を有するものを含む。様々な塩、混合塩、および遊離酸型もまた含まれる。上記のリン含有結合の調製を開示している代表的な米国特許は、限定されるわけではないが、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を含み、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている。
【0017】
リン原子を含まない改変オリゴヌクレオチド骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、混合されたヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式のヌクレオシド間結合により形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合されたN、O、S、およびCH2成分部分を有する他のものを含む。上記のオリゴヌクレオチドの調製を開示している代表的な米国特許は、限定されるわけではないが、米国特許第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;および第5,677,439号を含み、それぞれは参照により本明細書に組み入れられている。
【0018】
他の核酸塩基オリゴマーにおいて、糖およびヌクレオシド間結合、すなわち骨格、の両方は、新規な基と置換される。一つのそのような核酸塩基オリゴマーは、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖-骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格と置換される。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へ直接的にまたは間接的に結合している。これらの核酸塩基オリゴマーを作製および使用するための方法は、例えば、「Peptide Nucleic Acids: Protocols and Applications」Ed. P.E. Nielsen, Horizon Press, Norfolk, United Kingdom, 1999に記載されている。PNAの調製を開示している代表的な米国特許は、限定されるわけではないが、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号を含み、それぞれは参照により本明細書に組み入れられている。さらなるPNA化合物の開示は、Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500に見出されうる。
【0019】
本発明の特定の態様において、核酸塩基オリゴマーは、ホスホロチオエート骨格、ならびにヘテロ原子骨格、および特に、-CH2-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られている)、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、および-O-N(CH3)-CH2-CH2-を有するヌクレオシドを有する。他の態様において、オリゴヌクレオチドは、米国特許第5,034,506号に記載されたモルホリノ骨格構造を有する。
【0020】
核酸塩基オリゴマーはまた、1つまたは複数の置換糖部分を含みうる。核酸塩基オリゴマーは、2'位に以下の1つを含み:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-、もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルであって、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換もしくは非置換C1〜C10アルキル、またはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルでありうる。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3]2であって、nおよびmは1から約10までである。他の好ましい核酸塩基オリゴマーは、2'位に以下の1つを含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル、またはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断群、レポーター群、インターカレーター、核酸塩基オリゴマーの薬物動態学的性質を改善するための群、または核酸塩基オリゴマーの薬力学的性質を改善するための群、および類似した性質を有する他の置換基。好ましい修飾は、2'-O-メチルおよび2'-メトキシエトキシ(2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られた、2'-O-CH2CH2OCH3)である。もう一つの望ましい修飾は、2'-DMAOEとしても知られた2'-ジメチルアミノオキシエトキシ(すなわち、O(CH2)2ON(CH3)2)である。他の修飾は、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)を含む。同様の修飾もまた、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸塩基オリゴマー上の他の位置、特に、3'末端ヌクレオチド上の糖の3'位、または2'-5'連結オリゴヌクレオチドにおいて、5'末端ヌクレオチドの5'位でなされうる。核酸塩基オリゴマーはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣体を有しうる。そのような改変糖構造の調製を開示している代表的な米国特許は、限定されるわけではないが、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;および第5,700,920号を含み、それぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0021】
核酸塩基オリゴマーはまた、核酸塩基修飾または置換を含みうる。本明細書に用いられる場合、「非修飾の」または「天然の」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン;5-ハロウラシルおよびシトシン;5-プロピニルウラシルおよびシトシン;6-アゾウラシル、シトシン、およびチミン;5-ウラシル(シュードウラシル);4-チオウラシル;8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンおよびグアニン;5-ハロ(例えば、5-ブロモ)、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン;7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン;8-アザグアニンおよび8-アザアデニン;7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン;ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンのような、他の合成および天然の核酸塩基を含む。さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されたもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, 858-859頁, Kroschwitz, J.I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されたもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613により開示されたもの、およびSanghvi, Y.S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, 289-302頁, Crooke, S.T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993に開示されたものを含む。これらの核酸塩基の若干数は特に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合親和性を増加させるために有用である。これらは、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6、およびO-6置換プリンを含む。5-メチルシトシン置換は、0.6〜1.2℃で、核酸二重鎖安定性を増加させることが示されており(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T.およびLebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、特に2'-O-メトキシエチルまたは2'-O-メチル糖修飾と組み合わされた場合よりいっそう、望ましい塩基置換である。上記の修飾核酸塩基および他の修飾核酸塩基の若干数の調製を開示している代表的な米国特許は、米国特許第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,681,941号;および第5,750,692号を含み、それぞれは参照により本明細書に組み入れられている。
【0022】
本発明の核酸塩基オリゴマーのもう一つの修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを増強する1つもしくは複数の部分または結合体を核酸塩基オリゴマーへ化学的に連結することを含む。そのような部分は、限定されるわけではないが、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553-6556, 1989)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let, 4:1053-1060, 1994)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:306-309, 1992; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 3:2765-2770, 1993)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 20:533-538: 1992)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 10:1111-1118, 1991; Kabanov et al., FEBS Lett., 259:327-330, 1990; Svinarchuk et al., Biochimie, 75:49-54, 1993)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-ラック-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-ラック-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995; Shea et al., Nucl. Acids Res., 18:3777-3783, 1990)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 14:969-973, 1995)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1264:229-237, 1995)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 277:923-937, 1996)のような脂質部分を含む。そのような核酸塩基オリゴマー結合体の調製を開示している代表的な米国特許は、米国特許第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,828,979号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,948,882号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,109,124号;第5,112,963号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,214,136号;第5,218,105号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号;第5,391,723号;第5,414,077号;第5,416,203号;第5,451,463号;第5,486,603号;第5,510,475号;第5,512,439号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,578,717号;第5,578,718号;第5,580,731号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,591,584号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号;第5,608,046号;および第5,688,941号を含み、それぞれは参照により本明細書に組み入れられている。
【0023】
本発明はまた、キメラ化合物である核酸塩基オリゴマーを含む。「キメラ」核酸塩基オリゴマーは、それぞれが少なくとも1つの単量体単位、すなわち、オリゴヌクレオチドの場合ヌクレオチド、から構成される、2つまたはそれ以上の化学的に異なる領域を含む核酸塩基オリゴマー、特にオリゴヌクレオチド、である。これらの核酸塩基オリゴマーは、典型的には、核酸塩基オリゴマーが、核酸塩基オリゴマーに、ヌクレアーゼ分解に対する増加した抵抗性、増加した細胞取り込み、および/または標的核酸に対する増加した結合親和性を与えるように修飾されている少なくとも1つの領域を含む。核酸塩基オリゴマーの追加領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断する能力がある酵素についての基質として働きうる。例として、RNアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。RNアーゼHの活性化は、それゆえに、結果として、RNA標的の切断を生じ、それにより、遺伝子発現の核酸塩基オリゴマー阻害の効率を大いに増強する。従って、同様の結果が、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、キメラ核酸塩基オリゴマーが用いられる場合のより短い核酸塩基オリゴマーでしばしば、得られうる。
【0024】
本発明のキメラ核酸塩基オリゴマーは、上記のような2つまたはそれ以上の核酸塩基オリゴマーの複合構造として形成されうる。そのような核酸塩基オリゴマーは、オリゴヌクレオチドの場合、ハイブリッドまたはギャップマーとも当技術分野において呼ばれている。そのようなハイブリッド構造の調製を開示している代表的な米国特許は、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;および第5,700,922号を含み、それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0025】
ロックド核酸(LNA)は、本発明に用いられうる核酸塩基オリゴマーである。LNAは、ヌクレオチド類似体のリボフラノース環の柔軟性を制限し、強固な二環式N型立体構造へそれをロックする2'O, 4'-Cメチレン架橋を含む。LNAは、特定のエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼに対する抵抗性の向上を示し、RNアーゼHを活性化し、ほとんどいずれの核酸塩基オリゴマーへも取り込まれることができる。さらに、LNA含有核酸塩基オリゴマーは、標準ホスホルアミダイト合成プロトコールを用いて調製されうる。LNAに関する追加の詳細は、それぞれが参照により本明細書に組み入れられている、PCT公報WO 99/14226および米国特許出願公開番号US 2002/0094555 A1に見出されうる。
【0026】
アラビノ核酸(ANA)もまた、本発明の方法および試薬に用いられうる。ANAは、天然のD-2'-デオキシリボース糖の代わりにD-アラビノース糖に基づいた核酸塩基オリゴマーである。非誘導体化ANA類似体は、ホスホロチオエートと類似したRNAに対する結合親和性を有する。アラビノース糖がフッ素で誘導体化されている場合(2'F-ANA)、結合親和性における増強が結果として生じ、結合したRNAの選択的加水分解が、結果として生じたANA/RNAおよびF-ANA/RNA二重鎖において効率的に起こる。L単糖でのそれらの末端における誘導体化により細胞培地においてこれらの類似体を安定にさせうる。治療におけるANAの使用は、例えば、Damha et al., Nucleosides Nucleotides & Nucleic Acids 20:429-440, 2001に考察されている。
【0027】
「可逆的に複合体形成される」とは、構成要素、例えば、正荷電ブロックおよび負荷電分子が適した条件下で解離するように複合体形成されることを意味する。適した条件は、サイトゾル中または核内のような生理学的条件下を含む。負荷電分子はまた、本明細書に記載されているように、トリブロックコポリマーが分解された後に解離しうる。適した条件下において、負荷電分子の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%までも荷電ブロックから解離しうる。
【0028】
「治療的有効量」とは、疾患または状態を処置するのに十分な負荷電分子と複合体形成されたトリブロックコポリマーの有効量を意味する。
【0029】
「処置すること」とは、疾患もしくは状態の最初または次の発生を予防するまたは遅らせること;疾患または状態の消失とその再発の間の無病生存時間を増加させること;疾患または状態に付随した有害症状を安定させるまたは低減すること;または疾患もしくは状態の進行を抑制するもしくは安定させることを意味する。これは、疾患または状態の前の処置が確立されており、疾患もしくは状態を予防する、または疾患もしくは状態の重症度または期間を低減する予防的処置を含む。もう一つの態様において、疾患または状態と診断され、本発明の方法を用いて処置された後に患者が生存する時間の長さは、(i)未処置の患者が生存する平均時間、または(ii)別の治療で処置された患者が生存する平均時間より少なくとも20%、40%、60%、80%、100%、200%、または500%までも多い。「癌を処置すること」とは、腫瘍のサイズにおける低下を引き起こすこと、腫瘍のサイズにおける増加を遅くするもしくは防ぐこと、腫瘍の消失とその再発の間の無病生存時間を増加させること、腫瘍の最初もしくは次の発生を防ぐこと、または腫瘍に付随した有害症状を低減させるもしくは安定させることを意味する。一つの態様において、処置にもかかわらず生きている癌性細胞のパーセントは、任意の標準アッセイ法を用いて測定する場合、癌性細胞の最初の数より少なくとも20%、40%、60%、80%、または100%低い。好ましくは、本発明の組成物の投与より誘導される癌性細胞の数における減少は、非癌性細胞の数における減少の少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、または50倍である。さらにもう一つの態様において、本発明の組成物の投与後に存在する癌性細胞の数は、媒体対照の投与後に存在する癌性細胞の数の少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、または50分の1である。好ましくは、本発明の方法は、結果として、標準方法を用いて測定される場合、腫瘍のサイズにおいて20%、40%、60%、80%、または100%の減少を生じる。好ましくは、癌は再発しない、または少なくとも5年、10年、15年、もしくは20年後に再発する。もう一つの望ましい態様において、癌と診断され、本発明の組成物で処置された後に患者が生存する時間の長さは、(i)未処置の患者が生存する平均時間、または(ii)別の治療で処置された患者が生存する平均時間より少なくとも20%、40%、60%、80%、100%、200%、または500%までも多い。
【0030】
他の特徴および利点は、以下の説明および特許請求の範囲から明らかであると思われる。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、核酸のような負荷電分子の細胞への送達のためのトリブロックコポリマーを特徴とする。コポリマーは、送達および治療作用の両方についての生物学的経路を利用しうる。一つの態様において、水性環境において自己集合してナノスケールミセルを構築する両親媒性トリブロックコポリマーは、siRNAまたは他の核酸のような負荷電分子の送達のために利用されうる。さらに、本発明のトリブロックコポリマーは、負荷電分子の効率的送達のために変化する細胞内環境、例えば、エンドソームの還元性環境、および治療作用のために生物学的経路、例えば、遺伝子サイレンシングのためにRNAi経路の活性化、を活用できる。初期エンドソーム内で治療剤の放出を誘導し、かつそれを不安定にしうる生物学的応答性物質の開発は、現在の送達系の制限を克服することができる送達系の開発として見込みがある。
【0032】
トリブロックコポリマー
薬物送達の分野において、水性環境において自己集合して安定な超分子構造を構築できる両親媒性ブロックコポリマーに大きな関心が寄せられている。両方とも薬理学的適用のために重要でありうるミセルおよびベシクルアセンブリーのような様々な超分子構造が作製されうる。広範な研究が、ポリ(プロピレングリコール)[22-24]およびポリ(エチルエチレン)[25]とのコポリマーのようなポリ(エチレングリコール)(PEG)含有ブロックコポリマーにおいて行われた。そのようなブロックコポリマーは、一般的に、非対称ブロックコポリマーを得ることを、または生体分子を導入することを困難にする厳密な無水条件下でイオン重合を介して調製される。以前、本発明者らは、極度の無水性条件を必要としない穏やかな重合条件を用いて合成されうる、かつそれに従って、ペプチドおよび核酸のような比較的不安的な生体分子の取り込みを可能にする、親水性PEG(A)および疎水性PPS(B)ポリマードメインで構成される両親媒性トリブロックコポリマー(ABA)の新規なクラスを開発した[26]。これらのトリブロックコポリマーが、例えば、疎水性および親水性ブロックの合計の長さの約20〜45%の(場合によっては、より小さいおよびより大きいブロックもまたミセルおよび他の構造への自己集合へと導くだろうが)、実質的疎水性部分(例えば、PPS長さ)を含む場合、それらは、自己集合して、カプセル化薬物に用いられうる親水性PEG内層を有する<100nmサイズのポリマーソームを構築する[27]。しかしながら、ミセルのような他の超分子構造の形成もまた、疎水性および親水性ポリマーの長さを加減することにより可能である。これらの超分子構造の表面におけるPEGの存在もまた、それらの表面がタンパク質抵抗性であるため、構造を生物学的適用にとって理想的にしている[27]。
【0033】
本発明者らのアプローチの基礎をなす中心的設計は、親水性ブロック、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG45)、と正荷電ブロック、例えば、TATペプチド、CGGWRKKRRQRRR、の間に配置された疎水性ブロック、例えば、ポリ(プロピレンスルフィド)(PPSx)を有するトリブロックコポリマー(例えば、PEG-PPS-S-S-TAT)は、siRNAおよび他の核酸に基づいた薬物のような負荷電分子を、電荷および親水性/疎水性相互作用を介して複合体形成するように仕立てられうる(図2)。さらになお、トリブロックコポリマーは、siRNAまたは他の関連したペイロードのサイトゾル(図1)へ、または特定のオルガネラへまでもの効率的な送達を達成するために細胞オルガネラおよび細胞経路における化学的違いを利用するために、還元性かつpH感受性であるように設計されうる。
【0034】
トリブロックコポリマー(例えば、PEG-PPSx-ペプチド)は、自己アセンブリーおよび生物学的機能にとって重要である。負荷電分子、例えば、siRNA、は荷電ブロックにより供給される静電気相互作用を通して結合され、複合体は、疎水性および親水性ブロックにより供給される疎水性/親水性相互作用によりさらに安定にされうる。各ブロックのサイズは、他のブロックとは無関係に、例えば、各ブロックの機能を調整するように、決定されうる。
【0035】
各ブロックは、当技術分野において公知の方法を用いて合成され、他のブロックに結合されることができ、例えば、US 2003/0059906を参照されたい。
【0036】
親水性ブロック:
親水性ブロック、例えば、PEG、は(i)身体において血清タンパク質、細胞、および組織との負荷電分子/陽イオン性ポリマー複合体の非特異的相互作用を防ぎ、特異的相互作用が取り込まれたリガンドを介して設計されるのを可能にする、(ii)水性環境において複合体の可溶性を増加させる、(iii)負荷電分子/陽イオン性ポリマー複合体間の相互作用を防ぎ、溶液中でのそれらの凝集を制限する、および/または(iv)負荷電分子を酵素分解から立体的に保護するために利用されうる。一つの態様において、トリブロックコポリマーは、PEGのタンパク質抵抗性特性を用いて、負荷電分子を酵素分解から遮蔽する。
【0037】
水性環境において可溶性である、または膨張するポリマーまたは分子は、タンパク質吸収を妨げ、同時になお粒子の溶解性を増強する。例えば、ヒアルロン酸(HA)のような糖ポリマーは、それらの容積の約1000倍まで膨張することができ、天然でタンパク質吸収を防ぐために用いられる。他の糖ポリマーまたは分子候補は、天然から見出されうる。例示的な親水性ブロックは、脂肪族鎖に極性、イオン性、またはイオン化基を潜在的に有する、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ジ-またはマルチブロックコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、ポリペプチド、多糖、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはポリ(N,N-ジアルキルアクリルアミド)を含む。より高い分子量の親水性ブロックを用いてもよいが、500g/molと10,000g/molの間の分子量を有する親水性ブロックが実用的かつ便利である。
【0038】
疎水性ブロック:
疎水性ブロックは、(i)核酸のような負荷電分子と形成された自己集合化構造をさらに安定させることができる疎水性相互作用を供給する、および/または(ii)形成される粒子のサイズを決定する。疎水性ブロックは、本文中、疎水性である任意のポリマーまたは分子を含みうる。好ましい疎水性ブロックはPPSを含む。ポリ(プロピレングリコール)(PPG)は、骨格においてイオウ原子の代わりに酸素原子を有する、PPSの構造相同体である。PPS鎖の有用な長さと比較して、より大きなPPG鎖が必要とされうる。一般的に、低い融解温度またはガラス転移温度が、この特性が最も効果的なミセル化へ導く点において、最も望ましい。
【0039】
側鎖上の疎水性官能基で誘導体化されているが、他の点では親水性である他のポリマーは、疎水性ブロックに用いられうる。例は、エステル化ポリ(アクリル酸)、エステル化ポリ(グルタミン酸)またはポリ(アスパラギン酸)、および疎水性ペプチドまたはペプトイド(例えば、N-置換グリシン)を含む。より高い分子量の疎水性ブロックもまた用いられうるが、300g/molと5000g/molの間の分子量を有する疎水性ブロックは実用的かつ便利である。
【0040】
荷電ブロック:
荷電ブロックは、(i)核酸もしくは他の負荷電を静電気的相互作用を介して結合する、(ii)自己集合化構造が細胞へ入るのを助ける、および/または(iii)もう一つの生物学的機能を有するために用いられる。望ましくは、荷電ブロックは、負荷電分子、例えば、核酸、との可逆性結合を生じるようなサイズにされる。例示的な荷電ブロックはペプチドを含む。ペプチドは、薬物送達および他の医学的適用の分野において広範に利用されている。それらは、基礎科学研究および臨床適用の両方においてそれらを大いに重要にさせる多数の化学的および生物学的機能を有する。荷電ペプチドの例は、生物活性のあるTATペプチドおよびオリゴ(リシン)(例えば、Lys9)ペプチドを含む。両方のペプチドは荷電されており、核酸および他の負荷電分子に結合することができる。荷電ブロックの追加の例は、オリゴ(ヒスチジン)、オリゴ(アルギニン)(例えば、Arg9)、ならびにLys、Arg、およびHisのコポリマーを含む。短鎖ポリ(エチレンイミン)(PEI)もまた、荷電ブロックに含まれうる。さらになお、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーは、核酸を複合体形成するために用いられており、荷電ブロックに含まれうる。PAMAMは、エンドソームを効率的に回避することが示されており、サイトゾルにおいて複合体形成された内容物の放出を可能にする。
【0041】
特定の態様において、荷電ブロックは、負荷電分子、例えば、核酸、との可逆性複合体を形成するようなサイズにされる。例えば、分子の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%までもが適切な細胞条件下、例えば、サイトゾル中または核内において、荷電ブロックから解離しうる。加えて、短い荷電ブロックは、任意の毒性を低減または除去するために用いられうる。より大きなブロックもまた用いられうるが、5電荷と20電荷の間を有する荷電ブロックは実用的かつ便利である。ブロックが長くなればなるほど、一般的に、対応する細胞毒性は高い。
【0042】
インビボでの分解
本発明者らのトリブロックコポリマーは、それらがエンドソームの変化する環境に応答するように合成されうる。例えば、エンドソームの環境が還元するようになるにつれて、結合が切断され、それにより荷電ドメインを放出するように、ジスルフィド結合が、疎水性ブロックと荷電ブロックの間に導入されうる。この放出は、エンドソーム内での複合体の不安定化へ導くことができ、それに従って、内部移行後、負荷電分子、例えば核酸、のより効果的な放出を生じる。エンドソームの(低い)pHに応答するN-PO3結合もまた、構造へ導入されうる。細胞内分解に感受性があるビニルエーテル、オルトエステル、およびアシルヒドラゾンのような追加の結合もまた用いられうる。
【0043】
標的器官における不可逆性蓄積を避けるために、自己集合化担体は、インビボで、ある種の分解を示しうる。ポリスルフィドは、例えば、過酸化水素のような穏やかな酸化剤の作用により、ポリスルホキシドへ、およびポリスルホンへまでもの酸化を容易に受けることが知られている。生物学的条件下で、この酸化は、例えば、マクロファージにより、細胞外的に、またはエンドソームもしくはリソソームコンパートメントへの細胞取り込み後、細胞内的に、行われうる。似たような種類の反応は、汚水泡を壊すためにチオエーテル末端PEG(パルプおよび紙加工における乳化剤として用いられる)を酸化するのに用いられるが(Wood et al., 米国特許第4,618,400号)、それは、生理学的条件下で医療用材料における分解に用いられたことはない。
【0044】
ポリスルフィドのポリスルホキシドへの変換は、水中においてトリブロックコポリマーを可溶化にすることができ、排出を通しての除去を可能にする[32]。変換、例えば、ゲルのミセルもしくは可溶性ポリマーへの変換、ベシクルのミセルもしくは可溶性ポリマーへの変換、またはミセルの異なるサイズおよび形のミセルへもしくは可溶性ポリマーへの変換は、自己集合化凝集体の不安定性を引き起こしうる。凝集体を不安定にすることはまた、負荷電分子、例えば、核酸、の放出を引き起こすことができる。可溶性ポリマーのクリアランスの機構は比較的良く理解されている。最も重要なそのような機構は、腎臓濾過を介してのクリアランスであり、有効分子量カットオフは約30,000である。約100nm未満のサイズの粒子は、肝臓において血流からクリアランスされうる。リンパ管取り込みもまた、クリアランスに重要な役割を果たしている。
【0045】
自己アセンブリー
両親媒性ブロックコポリマーは、幅広い種類の適用において界面活性剤および分散剤として長い間用いられている;ブロックの1つとして選択できる溶媒における組織化構造はこの行動の根底にある。
【0046】
球状もしくは円柱状ミセル、ラメラ、またはベシクルのような明確な自己集合化構造(Booth et al., Macromol. Chem., Rapid Commun. 2000, 21, 501-527; Won, Science 1999, 283, 960-963; Discher et al., Science 1999, 284, 1143-1146;およびEisenberg et al., Macromolecules 1998, 31, 3509)は、ポリ(オキシアルキレン)ブロックコポリマーに観察されている。ポリマー溶液の濃度および温度は、形成されうる凝集体の種類に影響を大きく及ぼす:例えば、温度が上昇すると、液体球状ミセル相から球状ミセルの立方相へ、および最後には、円柱状ミセルの六方相へと変化する(Mortensen, Progr. Coll. Polym. Sci. 1993, 93)。 両親媒性ブロックコポリマーの相図および接触可能構造は、ブロック長さおよび数への、すなわち、基本的に、親水性/親油性バランスへの、依存を示す。
【0047】
PEGのポリ(エチルエチレン)とのブロックコポリマーは、親水性繰り返し単位と疎水性繰り返し単位間の比率55/45で虫のようなミセルを形成する(総MW=4900)、および比率40:37でラメラ構造を形成する(総MW=3900)性向を示している。
【0048】
ミセルの生成のための適した条件において、自己集合化担体は、疎水性薬物のカプセル化に用いられうる。ラメラ相が形成されることになっている場合、ベシクルは、ラメラ構造曲げから生成されうる;このようにして、水溶性薬物はベシクルの内部空洞に閉じ込められうる。
【0049】
本発明は、幅広い種類の構造を生成する能力がある物質を記載する;例えば、親水性基の長い配列を含む物質はミセルを形成することができ、一方、高疎水性内容物はラメラゲル、および適した条件下でベシクルの形成を促進する。
【0050】
ベシクルの形成はまた、有機溶媒におけるコポリマーの溶液またはコロイド懸濁液を水へ加え、その後、有機溶媒を除去することにより達成されうる。
【0051】
薬学的組成物
本発明のトリブロックコポリマーは、薬学的に許容される希釈剤に分散されうる。様々な態様において、薬学的組成物は、負荷電分子、例えば、RNA、DNA、およびプラスミドのような核酸、の約1ng〜約20mgを含む。いくつかの態様において、組成物は、負荷電分子の約10ng〜約10mg、負荷電分子の約0.1mg〜約500mg、約1mg〜約350mg、約25mg〜約250mg、または約100mgを含む。臨床薬理学の業者は、日常的な実験を用いて投与量に容易に達することができる。負荷電分子に加えて、本発明の自己集合化構造は、他の薬学的活性化合物または生物活性化合物を含みうる。
【0052】
適した希釈剤は、限定されるわけではないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組合わせを含む。組成物は、投与様式に適応することができ、例えば、丸薬、錠剤、カプセル、スプレー、粉末、または液体の形をとりうる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、選択された投与経路および様式に適した1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤を含む。これらの組成物は、非限定的に、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、髄腔内を含む任意の非経口経路により、加えて、局所的に、経口で、および鼻腔内、吸入、直腸、膣、頬、および舌下のような粘膜送達経路により、投与されうる。いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、滅菌した非発熱性注射用液体を含む液体、乳濁液、粉末、エアゾール、錠剤、カプセル、腸溶性コーティング化錠剤、または坐剤の形をとって脊椎動物(例えば、哺乳動物)被験体への投与のために調製される。
【0053】
内部移行のための方法および治療方法
ナノスフェア、リポソーム、およびミセルのようなコロイド粒子は、部位特異的薬物送達について広範に研究されている。細網内皮系(RES)が標的でない限り、粒子は肝臓のRESおよび肺の濾過活性による捕獲を回避しなければならない。血液におけるコロイド系の長時間生存は、PEG含有両親媒性物質の使用により得られている(Lasic et al., Ed. Stealth Liposomes; CRC Press: Boca Raton, FL, 1995)。血漿タンパク質によるオプソニン化の著しい低下により、PEGに基づいたリポソームのマクロファージクリアランスが劇的に低下している(Torchilin et al., Biochim Biophys Acta 1994, 1195, 11-20)。
【0054】
様々な内部移行剤、すなわち、抗体、増殖因子、サイトカイン、接着因子、オリゴヌクレオチド配列、および核移行配列のような、本発明のコポリマーの内部移行を増強する化合物または種、はPEGコーティング化リポソームの送達能力を増強するように働いており、最大活性は、PEG鎖の遠位末端に繋がれたリガンドにより示されることが実証されている(Blume et al., Biochim. Biophys. Acta 1993, 1149, 180-184; Zalipsky et al., Bioconjugate Chem. 1995, 6, 705-708; Zalipsky, J. Controlled Release 1996, 39, 153-161; Gabizon, Bioconjugate Chem. 1999, 10, 289-298)。このアプローチは、本発明のポリマーに関して用いられうる。いくつかの内部移行剤は、増殖因子、例えば線維芽細胞増殖因子、の使用のように、非常に効率的な取り込みへ導くことができ、DNA製剤の細胞取り込みをもたらしうる。他の内部移行剤は、核移行配列のような非常に効率的な細胞内輸送へ導くことができ、これらは本発明に用いられうる。追加の内部移行剤は、トランスフェリン、葉酸、レクチン、増殖因子、RGDペプチド、およびマンノース含有糖ペプチドを含む。
【0055】
本発明のコポリマーは、負荷電分子、例えば核酸の、例えばサイトゾルまたは核における、徐放においての任意の適用に有用である。本明細書に記載されたトリブロックコポリマーを用いることにおける利点は以下である:
(i)構造の柔軟性:同じ過程で、かつ同じファミリーの試薬で、様々な構造が生成されうる;
(ii)薬物送達の選択性を増強する内部移行剤の挿入の容易さ;
(iii)細胞取り込み中の遅い酸化または細胞誘導性酸化を通しての、特定のペプチド配列の挿入による標的タンパク分解性分解、または酸化的分解の可能性;
(iv)自己集合化系の表面上にディスプレイされうるPEGまたは他の親水性ブロックの量であって、本質的に系内のあらゆる構成要素分子が、合体されたPEGまたは他のオプソニン化阻止親水性ポリマーを含む、量;
(v)薬物をその意図された標的に達する前の分解またはクリアランスから保護するために、ミセルまたはベシクルのような自己集合化凝集体の保護的環境内に核酸およびその他の感受性薬物を保護する可能性;
(vi)ミセルまたはベシクルのような自己集合化凝集体の内容物、例えば核酸の放出を、エンドソームからリソソームへの細胞内輸送の過程中のpHの低下、酸化の程度における増加、およびプロテアーゼの濃度における増加に基づいて放出を引き起こすような環境に対する凝集体の感受性を通して引き起こす可能性;ならびに
(vii)核酸の細胞質への、または最終的には核への輸送を増強するためにエンドソームまたはリソソームの膜のような生体膜を不安定化または透過処理するのを援助する作用物質の取り込みのような、核酸または他の負荷電分子と共に、それがその最終生物学的標的に達するのを助けるために賦形剤を取り込む可能性。
【0056】
核酸に加えて、本発明のポリマーは、正荷電ブロックと複合体形成する能力がある任意の負荷電分子を送達するために用いられうる。例示的な負荷電分子は、薬物、ポリペプチド、合成または他の天然ポリマー、および核酸を含む。ポリマーはまた、負荷電分子の混合物、例えば、2つもしくはそれ以上の異なる核酸、または核酸および抗生物質のような薬物、を細胞へ送達するために用いられうる。
【0057】
遺伝子に基づいた薬物
本発明のトリブロックコポリマーは、遺伝子の上方または下方制御のために核酸を送達するために用いられうる。核酸の例は、siRNA、ODN、および治療用タンパク質をコードするpDNAを含むpDNAを含む。
【0058】
DNA/陽イオン性ポリマー複合体の内部移行は、トランスフェリン[14]、葉酸[15]、レクチン[16]、上皮細胞増殖因子(EGF)[17]、RGDペプチド[18]、およびマンノース受容体に結合するマンノース含有糖ペプチドのようなマンノース含有種[33]のようなリガンドの共有結合性付着により増強されうる。リガンドは、受容体に特異的に結合し、エンドサイトーシスを媒介することによりDNA複合体を細胞表面へ向けるように機能する。融合ペプチドおよび他の官能基は、DNA複合体のエンドソーム回避を増強するために付着している[19,20]。
【0059】
ODNおよびpDNAを含む他の遺伝子に基づいた薬物の送達について類似した必要性が存在する。ここで、作用物質はまた、細胞およびその細胞質へ、ならびに最終的には核へ、送達されなければならない。ODNに関して、それらは化学量論的競合により機能するため、その必要性はよりいっそう緊急である。プラスミドに関して、プラスミドの大きなサイズは細胞の膜、例えば、血漿膜およびエンドソーム膜、を通してのその通過を非常に阻害するため、その課題はよりいっそう高度である。
【0060】
負荷電分子を送達するための方法
本発明は、負荷電分子と複合体形成したトリブロックコポリマーを細胞に接触させること、または動物もしくは植物に投与することにより、負荷電分子、例えば、核酸を細胞、または動物、例えば、哺乳動物、もしくは植物へ送達するための方法を提供する。送達は、細胞(例えば、真核細胞、植物細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、哺乳動物もしくはヒト細胞のような脊椎動物細胞、または病原体細胞)において標的遺伝子の発現を低下させうるまたは阻害しうる。方法は、病原体による感染症を処置するために、または非病原性疾患、例えば、癌、術後癒着、瘢痕形成、もしくは動脈閉塞の除去(例えば、バルーン血管形成またはステントグラフト留置術による)後の再狭窄を処置するために用いられうる。典型的には、細胞において内部移行した核酸は、標的遺伝子、例えば、疾患に関連したもの(例えば、遺伝子の全部または領域、遺伝子プロモーター、または遺伝子およびそのプロモーターの一部)、の発現を特異的に低下させるまたは阻害する。例示的な病原体は、細菌、原生動物、酵母、および真菌を含む。いくつかの態様において、核酸または他の分子は、脊椎動物細胞もしくは病原体細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、または真菌細胞)において内因性遺伝子の発現を阻害する、または病原体に感染した細胞(例えば、植物細胞または動物細胞)において病原体遺伝子の発現を阻害する。核酸または他の分子はまた、例えば、癌細胞において、または望ましくない効果、例えば、再狭窄、瘢痕形成、および術後癒着、を生じる細胞において、内因性遺伝子の発現を低下させうる、または阻害しうる。いくつかの態様において、標的遺伝子は、発癌遺伝子のような癌に関連した遺伝子、または突然変異体タンパク質、ドミナントネガティブなタンパク質、もしくは過剰発現したタンパク質のような疾患に関連したタンパク質をコードする遺伝子である。
【0061】
または、送達される核酸または他の分子は、遺伝子の発現を増加させうる。例えば、本発明のコポリマーは、プラスミド上に含まれる1つまたは複数の遺伝子が発現しうる、プラスミドまたは他の遺伝子ベクターを核へ送達するために用いられうる。そのような系は、内因性遺伝子産物の発現を増加させるために、または突然変異している、もしくは別なふうに機能していない遺伝子産物を置換するために、内因的に発現していない遺伝子産物の発現を可能にするために用いられうる。場合によっては、非限定的に、血管内皮細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、血小板由来増殖因子、線維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、骨形成タンパク質、増殖分化因子、神経増殖因子、ニューロトロフィン、サイトカイン、ならびにhif-1α、runx2、およびsox-9のような転写因子のように、これらの遺伝子の局所性発現はほとんど、望ましい。
【0062】
核酸または他の分子は、標的遺伝子の発現を少なくとも20%、40%、60%、80%、90%、95%、または100%、低下させうる、阻害しうる、または増加させうる。発明の方法はまた、1つもしくは複数の他の標的遺伝子の発現を増加させると同時に、1つもしくは複数の標的遺伝子の発現を低下させる、または阻害するために用いられうる。
【0063】
本明細書に記載された方法を用いて処置されうる例示的な癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、唾液腺癌、消化管癌、肺癌、結腸癌、黒色腫、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、および癌腫を含む。良性腫瘍もまた、本発明の方法を用いて処置されうる。処置されうる他の癌および癌関連遺伝子は当技術分野において公知である。
【0064】
疾患に関連しうる例示的な内因性タンパク質は、SLE(全身性エリテマトーデス)に見出されるANA(抗核抗体)、IgGおよびIgAを含む異常な免疫グロブリン、様々な多発性骨髄腫と関連したベンズ・ジョーンズタンパク質、ならびに遺伝性アミロイドーシスおよびアルツハイマー病を含む様々なアミロイドーシスにおける異常なアミロイドタンパク質を含む。ハンチントン病において、HD(ハンチンチン)遺伝子における遺伝的異常は、結果として、反復グルタミン残基の拡張区域を生じる。この突然変異体遺伝子に加えて、HD患者は、正常なサイズのCAGリピートを有する第4番染色体のコピーを有する。従って、本発明の方法は、異常遺伝子を沈黙させるが、正常遺伝子を沈黙させないために用いられうる。
【0065】
本方法で処置されうる例示的な疾患は、ウイルス、細菌、酵母、真菌、原生動物、または寄生生物のような病原体による感染症を含む。核酸は、病原体へ、または病原体に感染した細胞へ送達されうる。病原体は、細胞内または細胞外病原体でありうる。標的核酸配列は、例えば、複製および/もしくは病原性に必要である病原体の遺伝子、または病原体に感染しうる細胞に必要な細胞受容体をコードする遺伝子である。そのような方法は、感染を防ぐために、留置器具の患者への投与の前に、投与と同時に、または投与後に、用いられうる。留置器具は、限定されるわけではないが、外科的インプラント、人工器官、およびカテーテル、すなわち、個体の身体へ導入され、長時間、適切な位置に留まっている器具、を含む。そのような器具は、例えば、人工関節、心臓弁、ペースメーカー、血管移植片、血管カテーテル、脳脊髄液シャント、尿路カテーテル、および持続的携帯型腹膜透析(CAPD)カテーテルを含む。
【0066】
細菌感染は以下の細菌の1つまたは複数によるものでありうる:クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、C. シッタシ(C. psittaci)、C. アボルツス(C. abortus)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、シンカニア・ネゲベンシス(Simkania negevensis)、パラクラミジア・アカントアメーバ(Parachlamydia acanthamoebae)、シュードモナス・アエルギノサ(Psedomonas aeruginosa)、P. アルカリゲネス(P. alcaligenes)、P. クロロラフィス(P. chlororaphis)、P. フルオレセンス(P. fluorescens)、P. ルテオーラ(P. luteola)、P. メンドシナ(P. mendocina)、P. モンテリー(P. monteilii)、P. オリジハビタンス(P. oryzihabitans)、P. ペルトシノゲナ(P. pertocinogena)、P. シューダルカリゲネス(P. pseudalcaligenes)、P. プチダ(P. putida)、P. スツツェリ(P. stutzeri)、ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、アエロモナス・ヒドロフィリア(Aeromonas hydrophilia)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインディー(Citrobacter freundii)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、S. チフィ(S. typhi)、S. パラチフィ(S. paratyphi)、S. エンテリティディス(S. enteritidis)、シゲラ・ディゼンテリエ(Shigella dysenteriae)、S. フレックスネリ(S. flexneri)、S. ソンネイ(S. sonnei)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、E. アエロゲネス(E. aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、K. オキシトカ(K. oxytoca)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、モルガネラ・モルガニー(Morganella morganii)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens))、P. レットゲリ(P. rettgeri)、P. スツアルティー(P. stuartii)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、A. ヘモリティカス(A. haemolyticus)、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、Y. ペスティス(Y. pestis)、Y. シュードツベルクローシス(Y. peudotuberculosis)、Y. インテルメディア(Y. intermedia)、ボルデテラ・ペルツシス(Bordetella pertussis)、B. パラペルツシス(B. parapertussis)、B. ブロンチセプティカ(B. bronchiseptica)、ヘモフィラス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、H. パラインフルエンザ(H. parainfluenzae)、H. ヘモリティカス(H. haemolyticus)、H. パラヘモリティカス(H. parahaemolyticus)、H. デュクレイ(H. ducreyi)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、P. ヘモリティカ(P. haemolytica)、ブランハメラ・カタルハリス(Branhamella catarrhalis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクター・フェツス(Campylobacter fetus)、C. ジェジュニ(C. jejuni)、C. コリ(C. coli)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、V. コレラ(V. cholerae)、V. パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ナイセリア・ゴノルヘア(Neisseria gonorrhea)、N. メニンジティディス(N. meningitidis)、キンゲラ・デントリフィカンス(Kingella dentrificans)、K. キンガエ(K. kingae)、K. オラリス(K. oralis)、モラクセラ・カタルハリス(Moraxella catarrhalis)、M. アトランテ(M. atlantae)、M. ラクナタ(M. lacunata)、M. ノンリクエファシエンス(M. nonliquefaciens)、M. オスロエンシス(M. osloensis)、M. フェニルピルビカ(M. phenylpyruvica)、ガルドネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・ディスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデス(Bacteroides)3452A相同性群、バクテロイデス・ブルガツス(Bacterodies vulgatus)、B. オバルス(B. ovalus)、B. テタイオタオミクロン(B. thetaiotaomicron)、B. ウニホルミス(B. uniformis)、B. エッグエルチー(B. eggerthii)、B. スプランクニカス(B. splanchnicus)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、M. アビウム(M. avium)、M. イントラセルラレ(M. intracellulare)、M. レプラエ(M. leprae)、C. ジフテリア(C. diphtheriae)、C. ウルセランス(C. ulcerans)、C. アコレンス(C. accolens)、C. アフェルメンタンス(C. afermentans)、C. アミコラツム(C. amycolatum)、C. アルゲントレンセ(C. argentorense)、C. オーリス(C. auris)、C. ボビス(C. bovis)、C. コンフスム(C. confusum)、C. コイレアエ(C. coyleae)、C. デュルム(C. durum)、C. ファルセニー(C. falsenii)、C. グルクロノリティカム(C. glucuronolyticum)、C. イミタンス(C. imitans)、C. ジェイケイウム(C. jeikeium)、C. クツシェリ(C. kutscheri)、C. クロッペンステッドティー(C. kroppenstedtii)、C. リポフィルム(C. lipophilum)、C. マクジンレイ(C. macginleyi)、C. マツルコティ(C. matruchoti)、C. ムシファシエンス(C. mucifaciens)、C. ピロスム(C. pilosum)、C. プロピンクウム(C. propinquum)、C. レナレ(C. renale)、C. リエゲリー(C. riegelii)、C. サングイニス(C. sanguinis)、C. シングラレ(C. singulare)、C. ストリアツム(C. striatum)、C. スンドスバレンセ(C. sundsvallense)、C. トムセニー(C. thomssenii)、C. ウレアリティカム(C. urealyticum)、C. キセロシス(C. xerosis)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、S. アガラクティエ(S. agalactiae)、S. ピロゲネス(S. pyrogenes)、エンテロコッカス・アビウム(enterococcus avium)、E. カセリフラブス(E. casseliflavus)、E. セコルム(E. cecorum)、E. ディスパル(E. dipar)、E. デュランス(E. durans)、E. フェカリス(E. faecalis)、E. フェシウム(E. faecium)、E. フラベセンス(E. flavescens)、E. ガリナルム(E. gallinarum)、E. ヒラエ(E. hirae)、E. マロドラツス(E. malodoratus)、E. ムンドティー(E. mundtii)、E. シュードアビウム(E. pseudoavium)、E. ラフィノスス(E. raffinosus)、E. ソリタリウス(E. solitarius)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)、S. エピデルミディス(S. epidermidis)、S. サプロフィティカス(S. saprophyticus)、S. インテルメディウス(S. intermedius)、S. ヒイカス(S. hyicus)、S. ヘモリティカス(S. haemolyticus)、S. ホミニス(S. hominis)、および/またはS. サッカロリティカス(S. saccharolyticus)。
【0067】
ウイルス感染は、以下のウイルスの1つまたは複数によるものでありうる:B型肝炎(Hepatitis)ウイルス、C型肝炎ウイルス、ピコルナウイルス(picornavirus)、ポリオ(polio)ウイルス、HIV、コクサッキー(coxsacchie)ウイルス、単純ヘルペス(herpes simplex)ウイルス1型および2型、セントルイス脳炎(St. Louis encephalitis)ウイルス、エプスタイン・バー(Epstein-Barr)ウイルス、ミクソウイルス(myxovirus)、JCウイルス、コクサッキーウイルス(coxsakievirus)B、トガウイルス(togavirus)、麻疹(measles)ウイルス、パラミクソウイルス(paramyxovirus)、エコウイルス(echovirus)、ブンヤウイルス(bunyavirus)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)、水痘帯状疱疹(varicella-zoster)ウイルス、流行性耳下腺炎(mumps)ウイルス、ウマ脳症(equine encephalitis)ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎(lymphocytic choriomeningitis)ウイルス、狂犬病(rabies)ウイルスを含むラブドウイルス(rhabdovirus)、シミアンウイルス(simian virus)40、ヒトポリオーマ(human polyoma)ウイルス、パルボウイルス(parvovirus)、パピローマ(papilloma)ウイルス、霊長類アデノウイルス(adenovirus)、コロナウイルス(coronavirus)、レトロウイルス(retrovirus)、デング熱(Dengue)ウイルス、黄熱病(yellow fever)ウイルス、日本脳炎(Japanese encephalitis)ウイルス、BKウイルス、レトロウイルス(Retrovirus)、ヘルペスウイルス(Herpesvirus)、ヘパデノウイルス(Hepadenovirus)、ポックスウイルス(Poxvirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、パピローマウイルス(Papillomavirus)、およびパポバウイルス(Papovavirus)。標的ウイルス核酸配列は、例えば、感染した細胞におけるウイルスの複製および/または病原性に必要である。そのようなウイルス標的遺伝子は、ウイルスの増殖に必要であり、例えば、HIV gag、env、およびpol遺伝子、HPV6 L1およびE2遺伝子、HPV II LIおよびE2遺伝子、HPV 16 E6およびE7遺伝子、BPV 18 E6およびE7遺伝子、HBV表面抗原、HBVコア抗原、HBV逆転写酵素、HSV gD遺伝子、HSV vp 16遺伝子、HSV gC、gH、gL、およびgB遺伝子、HSV ICPO、ICP4、およびICP6遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスgB、gC、およびgH遺伝子、ならびにBCR-abl染色体配列、ならびに細胞から細胞への感染の伝達に必要な制御機能を提供する非コードウイルスポリヌクレオチド配列、例えば、とりわけ、HIV LTR、およびHSV vp 16プロモーター、HSV-ICPOプロモーター、HSV-ICP4、ICP6、およびgDプロモーター、HBV表面抗原プロモーター、HBVプレゲノムプロモーターなどを含む。
【0068】
本発明のコポリマーは、HIV gagのようなウイルス複製および/または病原性に必須のウイルス遺伝子機能を停止させるまたは阻害するために、HIVのようなウイルスにすでに感染した被験体を処置するために用いられうる。または、この方法は、潜伏ウイルス、例えば、水痘帯状疱疹ウイルス、帯状疱疹の原因物質、として哺乳動物に存在するウイルスの機能を阻害するために用いられうる。同様に、少なくとも一部、ウイルス、細菌、または他の病原体により引き起こされることが示されている、とりわけ、アテローム性動脈硬化症、潰瘍、慢性疲労症候群、および自己免疫疾患、HSV-1およびHSV-2の再発、HPV持続的感染、例えば、生殖器疣、ならびに慢性BBV感染症は、哺乳動物被験体においてウイルス複製および/または病原性に必須の特定のウイルスポリヌクレオチド配列を標的にすることにより本方法に従って処置されうる。
【0069】
好ましくは、核酸または他の分子は、病原体の増殖を防ぐ、安定化する、もしくは阻害するために、または病原体を殺すために、または発現不足もしくは過剰発現が結果として疾患を生じる内因性遺伝子の発現を増加もしくは減少させるために、疾患または状態を処置するのに十分な量で投与される。
【0070】
実施例
ポリマー合成
PEG-アリル合成:
PEG45モノメチルエーテル(PEG45)を、修飾に関して以前に記載されているように[26]、臭化アリルで修飾した。短く言えば、PEG45(20g、10mmol)を不活性雰囲気下でテトラヒドロフラン(THF、300mL)に溶解し、分子篩で満たされたソクスレー装置において3〜4時間、加熱して還流した。溶液を、触れる程度まで冷却し、2.5等価量(0.6g、25mmol)を加えた。溶液を撹拌し、15分間反応させてから、1.4mL(3.46g、40mmol)の臭化アリルを撹拌しながら溶液に加え、24時間反応させた。反応混合物を濾過ケーキに通過させて、反応中に形成されたNaBr塩を除去した。その後、溶液を蒸発させて、ジエチルエーテル中に2回、沈殿させた。白色固体ポリマーが得られた(16.68g、83.4%収率、変換100%)。H NMR(CDCl3):δ3.56〜3.7(広幅、PEGポリマープロトン)、3.41(S、3H、-OCH3)、4.01〜4.04(dd、2H、-CH2OCH2CH=CH2)、5.15〜5.30(m、2H、-CH2OCH2CH=CH2)、5.85〜5.98(m、1H、-CH2OCH2CH=CH2)。
【0071】
PEG-チオアセテート合成:
修飾に関して以前に記載されているように[26]、PEG-アリルエーテルをチオ酢酸で修飾し、PEG-チオアセテートを形成した。PEG-アリルエーテル(8g、4mmol)を、トルエン(64mL)中において、シュレンクチューブへ導入した。トルエンを超音波処理で20分間、脱ガスし、アルゴンガスで30分間、泡立たせた。PEG/トルエン溶液をさらにポンプ排気で脱ガスし、シュレンクチューブをアルゴンで満たした。この手順を3回、繰り返した。反応混合物をその後60℃まで温め、5つのAIBNアリコートの第1番目(1.3gx5、0.8mmolx5)を、続いて、5つのチオ酢酸アリコートの第1番目(0.456mLx5、6.4mmolx5)を加えた。5つのアリコートを8〜10時間に渡って加えた。反応を、60℃で18時間、および室温でさらに24時間、継続させておいた。反応混合物を、活性化DOWEX 1/8-100(Cl)樹脂と混合し、1時間インキュベートした。濾過後、溶液を溶媒蒸発させ、その後、ジエチルエーテルで3回、沈殿させた。ジクロロメタン(CH2Cl2)を用いて、沈殿物を再溶解した。ややうすい黄色の固体が得られた(5.26g、65.7%収率、変換90%)。H NMR(CDCl3):δ1.81〜1.90(q、2H、-OCH2CH2CH2S-)、2.35(s、3H、-SCOCH3)、2.92〜2.97(t、2H、-OCH2CH2CH2S-)、3.39〜3.89(広幅、PEG鎖プロトン)、3.41(s、3H、-OCH3)。
【0072】
PEG-PPSジブロックポリマー合成:
ポリマーPEG45-PPSx-ピリジルジチオを、プロピレンスルフィド(PS)の陰イオン性重合を用いて末端キャッピング剤として2,2-ジピリジンジチオンと合成し、PEG-PPS-ピリジルジチオを形成した(図3)。PEG-チオ酢酸(1g、0.5mmol)を乾燥THF(23mL)に溶解した。ナトリウム・メトキシレート(NaMeOH、1.1mL、0.55mmol)を溶液に加え、30分間反応させた。PS(0.394mL、5mmol、または0.196mL、2.5mmol)を注射器で加え、1.5時間反応させた。ジピリジンジチオン(0.44mg、2mmol)をTHFに溶解し、注射器で反応混合物へ加えた。反応の進行は、非常に濃い黄色の出現により容易に追跡されうる。濾過および溶媒蒸発後、産物をジエチルエーテルに沈殿させた。うすい黄色の固体が得られた(336.2mg、33.6%収率、n=5.056、および284mg、28.41%収率、n=9.648)。H NMR(CDCl3):δ1.35〜1.45(d、PPS鎖におけるCH3)、1.81〜1.90(広幅q、2H -OCH2CH2CH2S)、3.6〜3.7(広幅PEG鎖プロトン)、7.8〜7.83(m、1Hピリジン基)。PPSブロックの重合の程度は、PEGプトロンのPPSプロトンに対する比率を取得することにより決定され、結果として、n=5.056およびn=10.708を有するポリマーを生じた。ポリマーの多分散性指数(PDI)は、GPCにより、n=5.056およびn=10.708、それぞれについてPDI=1.147およびPDI=1.259と決定された。
【0073】
PEG-PPS-ペプチドトリブロックコポリマー合成:
ペプチドAc-CGGWRKKRRQRRR-NH2(TAT)およびAc-CGGWKKKKKKKKK-NH2(K9)を、PEG45-PPS-ピリジルジチオポリマーに、ジスルフィド末端キャッピングPEG-PPSとペプチドのシステイン残基の間のジスルフィド交換反応を用いて結合させた。反応の経過は342nmにおける2-ピリジンチオンの放出を追跡してモニターされた(図3におけるE参照)。12mg/mLでのD2Oにおける希釈により、溶液は、凝集体の形成を示す濁りに変わった。さらに、12mg/mLでのCDCl3における希釈により、溶液は、凝集体の形成および分子の強い両親媒性性質を示す、緑色の濁りに再び変わった。水におけるH NMR:δ1.35〜1.45(d広幅、PPS鎖におけるCH3)、1.81〜1.90(広幅ピークq可視無しおよびシグナル積分低下、2H -OCH2CH2CH2S)、3.6〜3.7(広幅PEG鎖プロトン無変化)。ペプチド由来のプロトンは観察されなかった。CDCl3におけるH NMR:δ1.35〜1.45(広幅d可視無し、PPS鎖におけるCH3)、1.81〜1.90(q、2H -OCH2CH2CH2S)、3.6〜3.7(広幅PEG鎖プロトン)、7.08〜7.13および7.2〜7.24(t、トリプトファンアミノ酸残基)、ならびに7.5〜7.54および7.6〜7.64(d、トリプトファンアミノ酸残基)。
【0074】
ポリマー合成および特徴分析の概要
ABCトリブロックコポリマーPEG-PPS-ペプチドを、不活性雰囲気下でプロピレンスルフィドの活性化PEG-チオールへの陰イオン性重合を用いて合成した(図3)。ペプチドの付加は、水性雰囲気下でジスルフィド交換反応を用いて行われた。反応は、342nmにおける2-ピリジンジチオンの放出を用いてモニターされ、結果として、反応が2時間後にプラトーに達した(図3におけるE参照)。各段階後、合成は、正しい生成物が達成されたこと、および残存不純物がなかったことを確認するためにH-NMRで特徴分析した。しかしながら、H-NMR解析に必要とされる濃度において、トリブロックコポリマーは、その強い両親媒性性質のために、水性環境(D2O)またはD-クロロホルムの両方において、凝集体、おそらくミセル、を形成した。トリブロックのH-NMRは、積分かつ測定するのが困難である幅広いシグナルを含み、結果として、凝集体が形成されない場合に予想されるものより低い積分数を生じた。合成はまた、ゲル透過クロマトグラフィーにより確認された。図4は、合成経路における各中間生成物が100%変換で合成されたことを測定するために用いられた、D-クロロホルムにおけるH-NMRおよびTHFにおける気体透過クロマトグラフィーを示す。得られたプロトン比および分子量は、予想値と一致した。
【0075】
蛍光低下アッセイ法:
siRNAと複合体を形成するPEG-PPS-ペプチドの能力は、ゲル電気泳動および臭化エチジウム(EtBr)蛍光低下アッセイ法を用いて試験された(図6)。siRNA(150pmol、100μL)を、EtBrと混合し、その結果生じた蛍光放射を蛍光マイクロプレートリーダー(Tecan, Germany)を用いて測定した。トリブロックコポリマーを加えて、示された電荷比を生じた時、蛍光放射の低下が測定された。より多くのポリマーが加えられる(より高い電荷比)につれて、すべてのポリマーはsiRNAからEtBrを排除することができ、凝縮した粒子が形成されつつあることを示している。単独で用いられる場合のペプチドTATおよびK9の両方は、結果として、蛍光強度において80%減少まで達する最も凝縮した粒子を生じた。TATに基づいたトリブロックコポリマー(図6E)は、siRNAとの凝縮した粒子を形成するそれらの能力においてほとんど差を示さず、最大蛍光減少は、3の電荷比において50%減少で達成された。他方、K9に基づいたトリブロックコポリマー(図6F)は、結果としてPPS10より凝縮した構造を生じるPPS5に関するPPS長さの効果よりも多く示した。最大蛍光減少はまた50%であった。
【0076】
サイズおよびゼータ電位特徴分析:
PEG-PPS-ペプチドの単独またはsiRNAとの溶液においてのナノサイズ凝集体を形成する能力は、ナノ-ゼータサイザー(nano-zetasizer)(Malvern, UK)において動的光散乱(DLS)を用いて研究された。トリブロックコポリマー単独のサイズ測定は、トリス緩衝食塩水(TBS)において10mg/mLで個々のポリマーを溶解し、装置において標準設定を用いて測定された。PEG-PPS-ペプチド/siRNAサイズ測定について、トリブロックポリマー溶液(150μL)をsiRNA溶液(150μL TBS中150pmol)へ異なる電荷比で加えて、複合体を形成した。100μLの溶液を、サイズを測定するために用い、残りをMiliQ水に溶解して1000μLにし、複合体のゼータ電位を測定するために用いた。
【0077】
siRNAの非存在下において、トリブロックポリマーPEG-PPS5-TAT、PEG-PPS10-TAT、PEG-PPS5-K9、PEG-PPS10-K9は、10mg/mLの濃度で溶液中に凝集体を形成し、それぞれ、11.3±0.4nm、16.0±0.25nm、13.1±0.08nm、および16.0±0.57nmのサイズであった。TATおよびK9の両方についてPEG-PPS5-ペプチドとPEG-PPS10-ペプチドとのサイズの間にp<0.001での統計学的有意性があり、PPS単位のサイズが形成された粒子の全体的サイズに影響を及ぼすことを示した。さらになお、5のPPS重合度を有するトリブロックについて(n=5)、TATとK9との間の形成された凝集体のサイズの統計学的差、p<0.01があり、ペプチドの特徴もまた結果として生じる凝集体のサイズに影響を及ぼすことを示した。
【0078】
siRNAと、PEG-PPS5-TAT、PEG-PPS10-TAT、PEG-PPS5-K9、PEG-PPS10-K9、ならびにTATおよびK9との間に形成される凝集体のサイズおよび表面電荷は、DLSおよびゼータ電位を用いて測定された(図5)。複合体サイズは、用いられたポリマーの量(電荷比)および疎水性ブロック(PPS)の長さに依存することが見出された。試験されたペプチドの両方について、および小さなPPSブロック(PPS5)を有するトリブロックポリマーについて、形成された粒子のサイズは、ポリマーの量が増加するにつれて減少し、サイズは、PEG-PPS5-TATについて199.0±79.3nmから160.2±1.45nmまで(図5B、白色三角)、およびPEG-PPS5-K9について170.5±38.2nmから188.8±16.5nmまで(図5E、白色三角)の範囲であった。しかしながら、PPS単位がより長いトリブロックポリマーについて(PPS10)、傾向は逆転され、ポリマー含量を増加させることは、粒子のサイズを増加させ、粒子サイズは、PEG-PPS10-TAT(図5B、黒色三角)およびPEG-PPS10-K9(図5E、黒色三角)について、それぞれ、222.2±0.75nmから601.2±72.83nmまで、および312.3±42.73の範囲であった。TATポリマーで形成された粒子についてのゼータ電位は、マイナス〜-20mVから〜0mVまで、およびK9ポリマーについては、〜0mvから出発し、〜+10mVまで増加した。
【0079】
PEG-PPS-ペプチド/siRNA内部移行研究:
細胞内部移行研究は、蛍光顕微鏡法(Zeiss, Feldbach, Switzerland)および蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって評価された。Cy3(顕微鏡法)またはCy5(FACS)で標識されたsiRNAとの複合体を加える前の日にHeLa細胞(40,000細胞/ウェル、24ウェルプレート)を播いた。トランスフェクションの日において、siRNA/ポリマー複合体(25pmol siRNA)を顕微鏡法研究について6の電荷比で、FACS研究について3または6の電荷比で形成し、細胞に加えて、顕微鏡法実験について24時間か、またはFACS実験について4時間かのいずれかで細胞とインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで3回、洗浄し、そして、蛍光顕微鏡を用いて可視化するか、またはトリプシン処理し、遠心分離し、PBS中1%FBSにおいて再懸濁するかのいずれかを行った。細胞を固定しなかった。未処理細胞を、細胞の天然バックグラウンドを測定するために、およびゲートを調整するために用いた。生細胞ゲートを、10,000個の事象が読み取られるように調整した。陽性細胞ゲートは、未処理細胞について0.5%未満の陽性細胞を占めると定義された(95%信頼区間)。FACSデータを用いて内部移行を比較するために、各細胞集団の平均蛍光強度を、未処理細胞のバックグラウンド蛍光に対して標準化した(図7および8)。FACSデータは、陽性ゲートにおける細胞数および細胞集団の総平均蛍光強度を測定することにより分析された。PEG-PPS-ペプチド複合体の細胞内部移行は、血清により影響を及ぼされ、血清の存在下における内部移行は、PEG-PPS5-TAT(+/-6)およびPEG-PPS10-K9(+/-6)について、それぞれ、複合体を取り込んだ最高60%または93%までの細胞を与えた(図7Aおよび8A)。対照的に、血清の非存在下において、すべての複合体は、細胞の>90%によって内部に取り入れられた。興味深いことに、ポリマーのK9ファミリーは、ポリマーのTATファミリーより血清による影響が少なかった。血清含有条件において、すべてのトリブロックポリマーについての内部移行の量は、電荷比により影響を及ぼされ、より高い電荷比(+/-6)が結果として、低い電荷比(+/-3)より内部移行されたより多くの細胞を生じた。
【0080】
細胞の平均蛍光強度(MFI)は、血清の存在、PPSの長さ、および複合体の電荷比により影響を及ぼされた。一般的に、より長いPPSドメインおよびより高い電荷比が、短いPPSドメインまたはより低い電荷比より多くの粒子内部移行(より高いMFI)を達成した。興味深いことに、MFIはまた、用いられるペプチドの型によって影響を及ぼされ、TATペプチドがK9ペプチドより、血清によってより多く影響を及ぼされた。血清の存在下において、観察された最大MFIは、LF2000についての94.9±2.2と比較して、PEG-PPS10-K9について12.4±0.08であった。血清の非存在下において、PEG-PPS-K9ポリマーのみによる内部移行は、適度に増加し、最大MFIは、LF2000についての580±14.53と比較して、PEG-PPS10-K9について22.4±1.6であった(図8B)。PEG-PPS-TATポリマーについて、血清の非存在下における複合体内部移行の増加は、より多量であり、最大MFIは、LF2000についての580±14.53と比較して、263.3±68.8であった(図7B)。
【0081】
PEG-PPS-ペプチド/siRNA複合体の毒性:
トリブロックポリマー/siRNA複合体の毒性は、MTTアッセイ法(Promega Corp, Madison, Wisconsin)を用いて評価された。HeLa細胞(7,000細胞/ウェル)を、それらがトリブロックコポリマー/siRNA複合体に曝される前の日に96ウェルプレート上に播いた。複合体濃度の毒性への効果を測定するために、異なるsiRNA濃度を6の電荷比における複合体と共に送達した。複合体を24時間、細胞とインキュベートし、その後、除去し、新しい培地を加えた。MTT溶液(20μL)を各ウェルへ加え、2時間インキュベートした。吸光度読み取りは490nmにおいて測定された。未処理細胞は、100%細胞増殖対照として用いられ、LF2000は、20pmol siRNA/μL LF2000を用いる比較対照として用いられた。異なるトリブロックコポリマー/siRNAトランスフェクションに用いられた濃度のいずれも、結果として、細胞増殖の低下を生じず、複合体の結果として毒性は生じないことを示した(図9)。対照的に、LF2000/siRNA複合体は、結果として、10pmol/ウェルより多い濃度において有意な毒性を生じた。
【0082】
GAPDH遺伝子下方制御:
送達ストラテジーの有効性は、GAPDH酵素活性アッセイ法(Ambion)を用いて研究された。HeLa細胞(7,000細胞/ウェル)を、トランスフェクションの前日に96ウェルプレートに播き、6の電荷比における10pmol siRNAでトランスフェクションした。トランスフェクションは、FBSの存在下および非存在下において(0%または10%)、ならびにクロロキン(Sigma、100μM)の存在下および非存在下においての両方で生じた。トランスフェクションの前に、細胞培地をトランスフェクション培地と交換した。複合体形成について、siRNA(30pmol、60μL OptimMem)をトリブロックまたは非修飾ペプチドポリマー(60μL、TBS)と混合し、10秒間、ボルテックスすることにより混合した。混合物を、10分間、乱されずに形成するようにしておいた。遺伝子下方制御の程度は、トランスフェクションから48時間後に評価した。LF2000複合体は、1μLのLF2000および20pmolのsiRNAを用いて形成された。トランスフェクション手順がGAPDH発現に影響を及ぼすかどうかを測定するために、siRNAの非標的配列を用いた(siNEG)。GAPDH活性は、LF2000がsiNEGについての送達ベクターとして用いられた場合のみ有意に低下した。残存GAPDH活性は、5分間に渡る動力学的蛍光増加方法を用いて製造会社により記載されているように、測定され、以下の方程式に従って計算された:%残存発現=Δ蛍光、GAPDH蛍光、siNEG(式中、トランスフェクションされた細胞(GAPDH)、偽トランスフェクションされた細胞(siNEG)、またはトランスフェクションされていない細胞のいずれかについて、Δ蛍光=蛍光1分−蛍光5分)。トランスフェクションされていない細胞は、トランスフェクションの4時間、血清または非血清培地に曝され、その後、cMEMと交換された細胞である。LF2000について、対照は、トランスフェクション手順のために起こる下方制御のレベルを測定するためにsiNEGを用いる偽トランスフェクションである。
【0083】
血清の存在下および非存在下においてインビトロでGADPH酵素の遺伝子下方制御を媒介するPEG-PPS-ペプチド/siRNA複合体の能力は、20pmol/ウェルsiRNAにおいて調べられた(図10)。血清の存在下において、有意な量の下方制御は観察されなかった。しかしながら、血清の非存在下において、有意な下方制御がすべてのトリブロックポリマーについて観察され、PEG-PPS5-TATおよびPEG-PPS10-TATは、それぞれ、53±0.009および56.2±0.05 GAPDH遺伝子下方制御を達成した。PEG-PPS5-TATおよびPEG-PPS10-TATは、統計学的に、TATペプチド単独より多く遺伝子下方制御を媒介できた。興味深いことに、K9ポリマーは、一般的に、TATポリマーが達成したほど遺伝子下方制御を媒介することができず、PEG-PPS5-K9についてせいぜい34%±0.06 GAPDH遺伝子下方制御であった。PEG-PPS5-K9は、統計学的に、K9およびPEG-PPS10-K9より遺伝子下方制御をより多く媒介することができた。
【0084】
siRNA複合体濃度のトランスフェクション効率への効果を測定するために、トランスフェクションを、6の電荷比におけるsiRNAの10pmol、20pmol、または100pmolを用い、かつ血清の非存在下において行った(図11)。10pmolから20pmolへの複合体濃度における増加は、LF2000を含む試験されたすべての複合体のGADPH下方制御へ統計学的有意に影響を及ぼした。しかしながら、20pmolから100pmolへの増加だけは、ポリマーのK9ファミリーについてGAPDH下方制御の増強を生じたが、ポリマーのTATファミリーについて生じず、異なる作用機構を示した。100pmolにおけるPEG-PPS5-K9を用いる下方制御は、結果として、MTTアッセイ法(上記参照)により評価される場合、毒性なしで90.5%の下方制御レベルを生じた。対照的に、20pmolにおけるLF2000でのトランスフェクションは、結果として、有意な毒性をもつ80%のレベルでの下方制御を生じた。LF2000について、100pmolにおけるトランスフェクションは、結果として、完全な細胞死を生じた。
【0085】
内部移行剤の組み入れ:
内部移行剤は、反応を開始するために単官能性のものよりむしろ二官能性疎水性ブロック、例えば、PEG、を用いることによりトリブロックコポリマーへ導入されうる。二官能性PEG、NHS-PEG-メラミドが用いられる。RGD、葉酸、または別の内部移行剤は、二官能性PEGへカルボン酸/アミン化学作用(NHS末端)を介して結合される。メラミンは、その後、一方の末端に遊離チオールを含む二官能性チオール基で修飾されることができ、分子RGD-PEG-SHが生成される。通常のPPS-TAT合成はその後、行われうる。
【0086】
参考文献



【0087】
他の態様
本発明の特定の態様の記載は、例証を目的として示されている。網羅的であることも、本発明の範囲を本明細書に記載された特定の型に限定することも意図していない。本発明はいくつかの態様に関して記載されているが、様々な改変が、特許請求の範囲に示されているような本発明の真意および範囲から逸脱することなく、なされうることは当業者により理解されているものと思われる。本明細書で言及されたすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0088】
他の態様は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】内部移行およびエンドソーム回避は、siRNA送達の主要な制限である。本発明は、細胞内部移行および/またはエンドソーム回避の2つの可能な経路(i)内部移行を増強することが見出されているHIVのTATドメインRKKRRQRR(残基48〜57位)[30,31]および(ii)界面活性剤として作用し、エンドソーム膜を乱しうるPEG-PPSポリマーを含みうる。
【図2】トリブロックコポリマーの一つの態様は、核酸、例えばsiRNAを酵素分解から遮蔽するPEGのタンパク質抵抗性特性をうまく利用する。siRNAはTATペプチドに結合しており、複合体は、PEGおよびPPSにより提供される疎水性/親水性相互作用によりさらに安定化される。
【図3】ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレンスルフィド)-ペプチド(PEG-PPS-ペプチド)の合成スキームである。PEG-チオアセテート(A)はナトリウムメトキシレートにより活性化され、プロピレンスルフィドの陰イオン性重合を作動してBを形成することができるスルフィドを形成する。2,2'-ジピリジルジスルフィドは、末端キャッピング剤として用いられ、混合されたピリジルジスルフィドを有するABジブロックコポリマーを生成した(C)。ペプチドTAT(CGWRKKRRQRRR)およびK9(CGGWKKKKKKKKK)は、ジスルフィド交換反応を介してCと反応し、示されたABCトリブロックコポリマーを生成した(D)。トリブロックコポリマーの形成は、ピリジンチオンの放出に対応する342nmにおける吸光度を記録することによりモニターされた(E)。
【図4】D-クロロホルムにおけるH-NMRおよびTHFにおける気体透過クロマトグラフィーが、合成経路における各中間生成物が100%変換で合成されたことを測定するために用いられた。得られたプロトン比および分子量は予想値と一致した。
【図5】水にトリブロックコポリマーを溶解すると(10mg/mL)、ポリマーは粒子へと凝集した。PEG-PPS5,10-TAT(A)およびPEG-PPS5,10-K9(D)の平均直径が示されている。ポリマーは、siRNAと、それらの臨界ミセル濃度より下の濃度で混合され、結果として生じた凝集体は、サイズ(B、E)、および電荷比の関数としてのゼータ電位(C、F)について分析された。GおよびHは、異なるPPSドメインサイズを有するトリブロックポリマーがどのように異なって凝集しうるかを示す。
【図6】PEG45-PPS5-TATおよびPEG45-PPS5-K9のプラスミドDNAと自己集合する能力はゲル電気泳動によって評価された。TBS中のDNA溶液(20μg/mL)へ少量の凝縮ポリマーを加えた。各添加後、一部分を取り出し、複合体形成の程度を評価するためにゲルに流した。(A)TATペプチド(B)K9ペプチド(C)REG45-PPS5-TATトリブロックポリマー(D)REG45-PPS5-K9トリブロックポリマー。ゲルは、トリブロックコポリマーがDNAと自己集合して、アガロースゲルにおいて移動しない粒子を形成することができることを示している。トリブロックポリマーがsiRNAとの凝縮した構造を形成したことをさらに証明するために、蛍光低下アッセイが用いられた。siRNA-EtBrの相対蛍光強度は、添加されることになっているPEG45-PPS5,10-TAT(E)またはPEG45-PPS5,10-K9(F)の増加する量に関して測定された。蛍光強度は、粒子が形成されたことを示すプラトーが達成されるまで、より多くのポリマーが加えられるにつれて減少した。点線は、アガロースゲル電気泳動における複合体移動が停止した電荷比を示す。
【図7】10%血清(A)および0%血清(C)の存在下における4時間に渡るsiRNA-Cy5/PEG45-PPS5,10-TATポリマーのHeLa細胞内部移行のFACS解析である。バーは、陰性対照がゲートにおける細胞の5%を占めるように陽性ゲートが設定された場合の複合体を内部移行した細胞のパーセントを表す。平均蛍光強度は、10%血清(B)または0%血清(D)について示されている。リポフェクタミン2000は陽性対照として用いられた。蛍光顕微鏡法は、細胞内部移行結果をさらに確証するために用いられ、(E)はPEG45-PPS5-TATにより媒介された内部移行を示し、(F)はTATペプチドによる内部移行を示す。
【図8】10%血清(A)および0%血清(C)の存在下における4時間に渡るsiRNA-Cy5/PEG45-PPS5,10-K9ポリマー複合体のHeLa細胞内部移行である。グラフ挿入部分において示されているように、バーは、陰性対照がゲートにおける細胞の5%を占めるように陽性ゲートが設定された場合の複合体を内部移行した細胞のパーセントを表す。平均蛍光強度は、10%血清(B)または0%血清(D)について示されている。LF2000は陽性対照として用いられた。蛍光顕微鏡法は、細胞内部移行結果をさらに確証するために用いられ、(E)はPEG45-PPS5-K9により媒介された内部移行を示し、(F)はK9ペプチドにより媒介された内部移行を示す。
【図9】トリブロックコポリマーが毒性かどうかを測定するために、MTTアッセイ法が用いられた。対照としてLF2000を用いる、(A)PEG-PPS5,10-TATポリマーおよび(B)PEG-PPS5,10-K9ポリマーについてのMTT毒性アッセイが示されている。リポフェクタミンを用いるトランスフェクションは結果として、10pmolより多いsiRNAが用いられる場合、有意な毒性を生じたが、本発明のすべてのABCトリブロックポリマーについて、毒性は、100pmol siRNA、用いられた最高濃度、まで極小であったことに注目されたい。
【図10】siRNA GAPDH下方制御アッセイ法である。HeLa細胞に、血清の存在下または非存在下において、TATに基づいたポリマー(A)またはK9に基づいたポリマー(B)を用いてGAPDH酵素をコードするsiRNAをトランスフェクションした。LF2000は対照として用いられた。統計学的解析は、多重比較およびテューキー解析を用いて行われた。記号および***は、それぞれ、p<0.05およびp<0.001のレベルにおける統計学的有意性を示す。記号†は、少なくともp<0.05の有意性を示す。
【図11】異なるsiRNA濃度:10pmol、20pmol、または100pmolにおけるsiRNA GAPDH送達である。100pmolにおけるLF2000でのトランスフェクションは試みられたが、極度の毒性のためにいずれの細胞も生存しなかった。PEG-PPS5,10-TAT(A)およびPEG-PPS5,10-K9(B)についてのトランスフェクションは、複合体の最低濃度から開始して下方制御が可能であることを示している。100pmol siRNAにおいて、PEG-PPS5-K9は、この送達ストラテジーの効果を示す見事な90.5% GAPDHサイレンシングを達成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)親水性ブロック;
(ii)疎水性ブロック;および
(iii)負荷電分子と可逆的に複合体形成することができる正荷電ブロック
を含むトリブロックコポリマーであって、
該疎水性ブロックが該親水性ブロックと該正荷電ブロックとの間に配置されている、トリブロックコポリマー。
【請求項2】
トリブロックコポリマーが自己集合して超分子構造を構築することができる、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項3】
超分子構造がミセルまたはベシクルである、請求項2記載のトリブロックコポリマー。
【請求項4】
疎水性ブロックと正荷電ブロックの間の結合がエンドソームにおいて不安定である、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項5】
結合がジスルフィド結合、ビニルエーテル基、オルトエステル基、アシルヒドラゾン基、または-N-PO3-基を含む、請求項4記載のトリブロックコポリマー。
【請求項6】
親水性ブロックが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ジブロックもしくはマルチブロックコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、ポリペプチド、多糖、ポリ(N,N-ジアルキルアクリルアミド)、ヒアルロン酸、またはポリ(N-アクリロイルモルホリン)を含む、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項7】
疎水性ブロックが、ポリ(プロピレンスルフィド)、ポリ(プロピレングリコール)、エステル化ポリ(アクリル酸)、エステル化ポリ(グルタミン酸)、エステル化ポリ(アスパラギン酸)、またはポリペプチドを含む、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項8】
正荷電ブロックが、ポリペプチド、ポリ(エチレンイミン)、またはポリ(アミドアミン)を含む、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項9】
ポリペプチドが、TAT、Arg9、Lys9、またはArg-Lysコポリマーを含む、請求項8記載のトリブロックコポリマー。
【請求項10】
親水性ブロックがPEGであり、疎水性ブロックがPPSであり、かつ正荷電ブロックがポリペプチドである、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項11】
トリブロックコポリマーがPEG45、PPS5またはPPS10、およびTATを含む、請求項10記載のトリブロックコポリマー。
【請求項12】
内部移行剤をさらに含む、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項13】
内部移行剤が、トランスフェリン、葉酸、レクチン、増殖因子、RGDペプチド、またはマンノース含有グリコペプチドを含む、請求項12記載のトリブロックコポリマー。
【請求項14】
正荷電ブロックと複合体形成した負荷電分子をさらに含む、請求項1記載のトリブロックコポリマー。
【請求項15】
負荷電分子が核酸を含む、請求項14記載のトリブロックコポリマー。
【請求項16】
核酸がsiRNA、ODN、またはプラスミドである、請求項15記載のトリブロックコポリマー。
【請求項17】
核酸が、HIF-1αまたはPAI-1を標的とするsiRNAである、請求項16記載のトリブロックコポリマー。
【請求項18】
(i)請求項1記載のトリブロックコポリマー、(ii)該トリブロックコポリマーと複合体形成した核酸、および(iii)薬学的に許容される希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項19】
以下の段階を含む、負荷電分子を細胞へ送達するための方法:
(i)(1)親水性ブロック;
(2)疎水性ブロック;
(3)正荷電ブロック;および
(4)該正荷電ブロックと可逆的に複合体形成した負荷電分子
を含むトリブロックコポリマーを提供する段階であって、該疎水性ブロックが該親水性ブロックと該正荷電ブロックとの間に配置されている、段階;ならびに
(ii)該細胞を該トリブロックコポリマーと接触させる段階であって、該トリブロックコポリマーが該細胞において内部に取り入れられ、それにより該負荷電分子を該細胞へ送達する段階。
【請求項20】
負荷電分子が核酸を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
核酸がsiRNA、ODN、またはプラスミドである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
核酸が細胞において遺伝子の発現を低下させる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
核酸が細胞において遺伝子の発現を増加させる、請求項20記載の方法。
【請求項24】
以下の段階を含む、被験体において疾患または状態を処置するための方法:
(i)(1)親水性ブロック;
(2)疎水性ブロック;
(3)正荷電ブロック;および
(4)該正荷電ブロックと複合体形成した負荷電分子
を含むトリブロックコポリマーを提供する段階であって、該疎水性ブロックが該親水性ブロックと該正荷電ブロックとの間に配置されている、段階;ならびに
(ii)該トリブロックコポリマーの治療的有効量を該被験体に投与する段階であって、該トリブロックコポリマーが該被験体の細胞において内部に取り入れられ、それにより該負荷電分子を該細胞へ送達し、かつそれにより該被験体において該疾患または状態を処置する段階。
【請求項25】
疾患または状態が癌である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
疾患または状態が再狭窄である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
疾患または状態が瘢痕形成である、請求項24記載の方法。
【請求項28】
疾患または状態が術後癒着である、請求項24記載の方法。
【請求項29】
負荷電分子が、HIF-1αまたはPAI-1を標的とするsiRNAである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
負荷電分子が核酸を含む、請求項24記載の方法。
【請求項31】
核酸がsiRNA、ODN、またはpDNAである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
核酸が細胞において遺伝子の発現を低下させる、請求項30記載の方法。
【請求項33】
核酸が細胞において遺伝子の発現を増加させる、請求項30記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−542500(P2008−542500A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514756(P2008−514756)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/020760
【国際公開番号】WO2007/008300
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(507393757)
【Fターム(参考)】