説明

遺伝子マッピング及びハプロタイプ決定の方法

本発明は、被検体の確定ハプロタイプを提供する方法に関する。本明細書に記載の方法により生成されたハプロタイプ情報は、推定ハプロタイプを与えるのみの従来技術による方法によって提供される情報に比べて、より正確である。それに応じて、1つの態様では、本発明は、被検体の確定ハプロタイプを決定する方法を提供し、該方法は、実質的に単離された該被検体に由来する1倍体要素を提供するステップと、該1倍体要素からヌクレオチド配列情報を取得するステップと、を含む。出願人が提唱するのは、実質的に単離された1倍体要素を使用することは、ハプロタイプ内の2つ以上の遺伝子座の相に関する推定が、不正確或いは誤解を招きやすいという問題を解消し、遺伝形式の差異による複雑さをもたらさずに、ハプロタイプ内の2つ以上の参加遺伝子の解明を可能にするということである。厳密なシス相型関連の保障は、本方法では、実質的に単離された1倍体要素を配列解析の開始物質として使用することによって提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[01]本発明は、概して遺伝学の分野に関する。より具体的には、本発明は、ゲノムマッピングの方法及び被検体のハプロタイプ決定方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
[02]ゲノム地図とは、各染色体上での遺伝子又は他のマーカーの順序及びそれらの間の間隔を説明する。ヒトゲノム地図は、いくつかの異なる縮尺又は解像度レベルで作成される。遺伝子連鎖地図は、最も解像度が低く、DNAマーカー(遺伝子及び他の同定可能なDNA配列)の相対的染色体位置を遺伝様式によって表す。遺伝子連鎖地図は、特定DNAマーカーの染色体上の相対的位置を表す。個体間で異なり実験室で検出可能である、いかなる遺伝性の身体的又は分子的特徴も、潜在的な遺伝子マーカーである。マーカーは、発現性DNA領域(遺伝子)であってもよく、又は公知のコード機能を有しないが、その遺伝様式が追跡可能であるDNA区域であってもよい。DNA配列の相異は、それらが数多く存在し、且つ正確に特徴づけるのが容易であるため、特に有益なマーカーである。
【0003】
[03]マッピングに有益であるためには、マーカーは多型性でなければならない。すなわち、それらが系統調査で異なる構成員に検出されるように、代替形態が個体間に存在しなければならない。多型とは、平均して300から500bp毎に1つ発生するDNA配列の変異である。エクソン配列内の変異は、眼の色、血液型、及び疾患感受性の差異などの観察可能な変化を導くことがある。ほとんどの変異はイントロン内に発生し、生物の外見や機能にほとんど又は全く影響を有しないものの、それらはDNAレベルでは検出可能であり、マーカーとして使用可能である。そうしたタイプのマーカーの例には、(1)DNA制限酵素によって切断され得るDNA部位の配列変異を反映した制限断片長多型(RFLP)及び(2)反復ユニットの数、したがって長さ(容易に測定される特徴)が異なる短い反復した配列である、可変数のタンデム反復配列が含まれる。ヒト遺伝子連鎖地図は、どの程度の頻度で2つのマーカーが一緒に遺伝するかを観察することにより作成される。
【0004】
[04]同一染色体上で互いに近接して位置する2つのマーカーは、親から子へと一緒に受け継がれる傾向がある。精子及び卵細胞が正常に生産される間、DNA鎖は時折分断され、同一染色体上又はその同一染色体のもう一方の複製(すなわち相同染色体)上の異なる場所で再結合することがある。この過程(減数分裂性組換え)は、本来は同一染色体上にある2つのマーカーの分離をもたらす可能性がある。マーカーが互いに近接していればいるほどより密接に連鎖し、両者側で組換え現象が起こってそれらが分離される可能性は減少することになろう。それ故、組換え頻度は2つのマーカー間の距離の推測を提供する。
【0005】
[05]遺伝子地図の価値は、罹患者に存在する(しかし非罹患者には存在しない)DNAマーカーの遺伝を追跡することにより、たとえ疾患の分子的基盤がまだ不明でも、或いは原因遺伝子が未同定でも、遺伝性疾患を地図上に位置づけることが可能だということである。遺伝子地図は、嚢胞性線維症、鎌状赤血球症、テイサックス病、脆弱性X症候群、及び筋強直性ジストロフィーを含む、いくつかの重要な疾患遺伝子の正確な染色体位置を見出すために使用されてきた。
【0006】
[06]ゲノム内で遺伝子機能に影響を与える遺伝子を同定する現在の手法には、2つの共通した特徴がある。第1には、候補遺伝子を含有する染色体領域を明らかにするために、非コード性の配列変異マーカーが用いられることであり、第2には、全ゲノム解析には、配列変異マーカーと対象になる表現型との間に関連性が要求されることである。全ゲノム関連解析(連鎖不平衡マッピングとしても知られている)による遺伝子発見は、米国特許第5851762号明細書の主題である。
【0007】
[07]ゲノム情報が連鎖研究に有益である一方、ハプロム(haplome)に関する情報は、疾患関連遺伝子の機能を明確にする際に、対象となるゲノム領域のマーカーを同定するのにさらに有益であると考えられている。ハプロム配列(haplomic sequence)の使用は、その遺伝子の第2の複製(相同染色体上にあると仮定して)が考慮中の形質に関与するのを考慮する必要がないため、連鎖研究のエラーを低減させる。
【0008】
[08]2003年、国立衛生研究所(National Institute of Health)が設立した国際コンソーシアムは、ハプロタイプに基づいてマーカー対立遺伝子と疾患遺伝子とを関連づけることによって、複雑な疾患での遺伝子発見を促進するために、ヒトゲノムハプロタイプ地図(「ハップマップ」と名づけられた)を作成する、3年間にわたる100,000,000ドルの計画を開始した。連鎖不平衡対立遺伝子関連マッピング(「関連マッピング」)のこの戦略は、無関係の個々の患者を含み、系統群が利用できないときに、系統(家系)連鎖解析の従来型手法に代わる、より最新の代替法である。
【0009】
[09]ハップマップが基盤とする前提は、2倍体DNAの遺伝子型解析からハプロタイプを推定することが、関連マッピングに十分な解像度を持ち、全ゲノム遺伝子発見の戦略として連続性を保障することにある。
【0010】
[10]さらなる前提は、4集団(西アフリカ系ナイジェリア人、日本人、中国人、アメリカ人)からの数百人のSNP(1塩基多型)解析が、重複性SNPの同定に妥当であり、したがって、混合集団を含む全ての集団でハプロタイプブロックを特徴づけるのに十分な、ハプロタイプマーキング用の個々のSNP又は最小SNPセットの同定に妥当であろうということである。ハップマップコンソーシアムはまた、一般的な多重遺伝子性疾患及び薬物反応性にとっては、共通ハプロタイプ(>5〜10%)のみが重要であり、それらの共通ハプロタイプは、200人程度の研究で同定可能となろうと提唱している。
【0011】
[11]さらなる前提は、ハプロムが個別の「ブロック」にまとめられ、各ブロックは独自のSNP「タグ」で同定が可能ということである。遺伝学の分野で現在認められていることであるが、疾患遺伝子の検索及び薬物指向の薬学ゲノミクスでは、ハップマップ計画により解明された最小限の基本的SNPを使用すれば、いかなる集団でも、過剰なハプロタイプ共有の検出に十分な共通ハプロタイプが同定されよう。
【0012】
[12]それ故に、現在の技術水準では、ハップマップは、確定的であり、連鎖研究に十分すぎるほどの情報を提供できよう。しかしながら、ハップマップ計画をより詳しく検討すると、この計画は、せいぜい限られた情報しか達成せず、多重遺伝子性疾患の発見に応用する際には本質的な欠陥をもち得ることが示唆される。例えば、SNPの同定によって、現存するハプロタイプの一部が検出されるだけで、おそらく共通に発生するハプロタイプの全てすら検出されることはなかろう。非共通ハプロタイプ(ハップマップで検出できない恐れがある)もまた、個体間の遺伝子機能の差異に寄与していることもあり得る。
【0013】
[13]ハプロムのブロック構造を想定することもまた、エラーを招く恐れがある。組換え及び他の再編成が、「中核」集団の限定的解析では明らかにならないこともある、混合集団内のハプロタイプブロック構造に影響すると予想することができる。
【0014】
[14]異なる遺伝形式(劣性遺伝性、優性遺伝性、共優性遺伝性)を有し、機能(疾患素因的、疾患防御的)を異にし、疾患進行の異なる段階で作用する、2つ以上の遺伝子が単一の染色体領域内に発生する場合、推定ハプロタイプの分解能が疑問視されると予想することができる。複合へテロ接合性の劣性遺伝性疾患におけるように、両染色体によりリスクが提供されるとき、及びシス型だけでなくトランス型の共優性相互作用が、HLA複合体の遺伝子などの共優性遺伝する遺伝子に発生する場合に、分解能は最も疑問視されよう。これらの疑念の重要性は、当技術分野においてこれまで認識されていない。
【0015】
[15]ハプロタイプ決定関連マッピングの有用性の決定的検証は、すでに家系連鎖解析で同定された対象遺伝子領域を同定する能力である。重要なテストケースでは、関連マッピングは、ハプロタイプ共有連鎖解析によって同定された、上咽頭癌の6p21.3(HLA)遺伝的危険領域(RR:下限20〜上限無限大)を同定することに失敗した。これは、本分野のもう1つの問題を指摘している。すなわち、非コード性に基づく戦略は、いかなる一般的ヒト癌との最も強い遺伝子関連でさえ検出するのに不十分な分解能しか有しないのである。
【0016】
[16]数多くの疾患が、多重遺伝子性であると知られているか又は疑われている。実際に、ほとんどの疾患が多重遺伝子性であり、単一遺伝子性疾患は例外であると考えられている。多重遺伝子性疾患に関与する遺伝子の同定は、母系及び父系の遺伝子型からの遺伝子の遺伝様式が原因で、従来技術の方法では難しい問題である。それ故に、マッピング及び遺伝子発見の従来技術による方法は、単純な遺伝形式及び単純な疾患関与を有する遺伝子の同定には有益であるが、複雑な疾患での遺伝子関与を解き明かすための、より強力な方法が依然として必要とされているのは明らかである。
【0017】
[17]それに応じて、従来技術の問題点を克服又は少なくとも軽減することが、本発明の1つの態様である。特に、本発明は、1倍体情報を使用して、より正確に遺伝子をマッピングする方法を提供することを目的とする。
【0018】
[18]文献、行為、物質、装置、及び論文などの考察は、本発明の文脈を提供する目的のためだけに本明細書に含まれる。それが本出願の各請求項の優先日以前に存在していたという理由で、それらのいずれか又は全ての事項が、従来技術基盤の一部分を形成していた、又は本発明に関連する分野の一般的で共通の知識であったことを、示唆或いは主張しない。
[発明の概要]
【0019】
[19]本発明は、被検体の確定ハプロタイプを提供する方法に関する。本明細書に記載の方法により生成されたハプロタイプ情報は、推定ハプロタイプを与えるのみの従来技術による方法によって提供される情報に比べて、より正確である。それに応じて、1つの態様では、本発明は、被検体の確定ハプロタイプを決定する方法を提供し、該方法は、実質的に単離された該被検体に由来する1倍体要素を提供するステップと、該1倍体要素からヌクレオチド配列情報を取得するステップと、を含む。出願人が提唱するのは、実質的に単離された1倍体要素を使用することは、ハプロタイプ内の2つ以上の遺伝子座の相に関する推定が、不正確或いは誤解を招きやすいという問題を解消し、遺伝形式の差異による複雑さをもたらさずに、ハプロタイプ内の2つ以上の参加遺伝子の解明を可能にするということである。厳密なシス相型関連の保障は、本方法では、実質的に単離された1倍体要素を配列解析の開始物質として使用することによって提供される。
【0020】
[20]本方法の1つの形態では、配列情報は対立遺伝子に関する。本方法の別の形態では、対立遺伝子は、コード配列性対立遺伝子である。
【0021】
[21]出願人は、ハプロタイプの定義に際して、最大尤度推定アルゴリズムの使用と組み合わせて2倍体物質を使用することに特有な問題の重要性を認識している。従来技術の方法でのエラーは、多重遺伝子的基盤を有する形質を調査するときに、特に問題となることが予期される。
【0022】
[22]本方法の1つの実施形態では、被検体に由来する1倍体要素を実質的に単離するステップは、1倍体要素の供給源として2倍体物質の使用を含む。2倍体ゲノム又はその一部から1倍体要素を単離するのは、当業者に知られている方法のいずれか1つ又は組合せを使用して達成してもよい。本発明の1つの形態では、マイクロダイセクションなどの物理的方法を使用する。例えば、セントロメアで切断することにより2つの染色分体を産生するように、染色体をマイクロダイセクションしてもよい。
【0023】
[23]2倍体ゲノム又はその一部の分離は、体細胞などの2倍体細胞上で実施してもよい。精子細胞又は卵細胞などの天然性1倍体物質を使用することは、医療機関でこれらの生殖細胞を取得するのに問題があるため、回避すべきである。減数分裂のプロセス中に、以前はシス型に連鎖していた遺伝子座がトランス型の関係になるような組換えイベントが時折あることを考慮すると、ハプロタイプ決定に配偶子を回避することは、さらに有利となる。それ故に、配偶子のハプロタイプ解析は、2倍体細胞から取得した1倍体要素とは異なる(すなわち不正確な)ハプロタイプ情報を与えることになろう。
【0024】
[24]別の態様では、本発明は、被検体の確定ハプロタイプを決定するための1倍体要素の使用を提供する。
【0025】
[25]さらに別の態様では、本発明は、遺伝子領域と形質との間の関連を決定する方法を提供し、該方法は、複数の被検体に由来する1倍体要素の第1のセットを提供するステップであり、該個体が母集団の遺伝的多様性を代表している該ステップと、対立遺伝子の存在又は非存在について、1倍体要素の該第1のセットを解析するステップと、該母集団からの複数の被検体に由来する1倍体要素の第2のセットを提供するステップであり、該被検体が該形質を有し、該被検体が単一の系統に由来していない該ステップと、該対立遺伝子の存在又は非存在について、1倍体要素の該第2のセットを解析するステップであり、1倍体要素の該第1及び該第2の両セットの間で、該対立遺伝子の対立遺伝子共有レベルを決定する該ステップと、を含み、過剰な対立遺伝子共有は、該対立遺伝子が該形質と関連していることを示す。本方法の1つの形態では、該対立遺伝子はコード配列性対立遺伝子である。
【0026】
[26]別の態様では、本発明は、多重遺伝子性の疾患又は形質に関与する遺伝子を同定する方法を提供し、該方法は本明細書に記載の方法の使用を含む。本明細書に記載の確定ハプロタイプの提供は、多重遺伝子系における単一遺伝子関与の解明に交絡をきたす不確実性を取り除く。
[発明の詳細な説明]
【0027】
[36]1つの態様では、本発明は、被検体の確定ハプロタイプを決定する方法を提供し、該方法は、実質的に単離された該被検体に由来する1倍体要素を提供するステップと、該1倍体要素からヌクレオチド配列情報を取得するステップと、を含む。出願人が提唱するのは、実質的に単離された1倍体要素を使用することは、ハプロタイプ内の2つ以上の遺伝子座の相に関する推定が、不正確或いは誤解を招きやすいという問題を解消し、遺伝形式の差異による複雑さをもたらさずに、ハプロタイプ内の2つ以上の参加遺伝子の解明を可能にするということである。
【0028】
[37]本発明は、従来技術のハプロタイプ決定方法に対する改良と、本明細書に記載の確定ハプロタイプ決定方法とに基づく。この区別をよりよく理解するためには、現在、本技術分野で理解されているハプロタイプの概念と、被検体のハプロタイプを決定する方法とを考慮することが有意義である。
【0029】
[38]「ハプロタイプ(haplotype)」という用語は、「1倍体の遺伝子型(haploid genotype)」という語句の短縮形であり、単一の母系又は父系染色体上に存在し、通常は1つのユニットとして遺伝される、ヌクレオチド配列の一連の多型又は対立遺伝子を意味すると、現在では受容されている。ヒトなどの2倍体生物の場合、ハプロタイプは、ある遺伝子座の1対の対立遺伝子の一方を含有することになろう。
【0030】
[39]従来技術の方法では、ハプロタイプの決定は、臨床的に取得が簡便である2倍体物質の使用から始まる。出願人は、2倍体物質を使用するハプロタイプ決定の受容されている形態は、妥当ではないと提唱する。代替法は、天然性1倍体物質(例えば精子又は卵子からの)を使用することである。しかしながら、それは一般的に簡便ではなく、女性にとっては過度に侵襲的である。さらに、配偶子からの配列情報は、減数分裂時の乗換えイベントにより混乱するため、SNP間のシス相型関連が真正であると保証できない。
【0031】
[40]2倍体DNAを利用する手法は、シス型に連鎖した遺伝子座をハプロタイプとして直接的に決定できないため、ハプロタイプの生起確率は、最大尤度及び類似アルゴリズムに基づく推側によって推定される。それ故に、2つの多型がトランス相に存在する可能性が常にあり、したがって、単一のメンデルユニットとして遺伝していない。したがって、従来技術の方法は、より正確には「推定ハプロタイプ」を提供すると説明される。本方法は、メンデル遺伝の基本ユニットを、親の組換え部位により境界される染色体区域とみなすことによって、厳密なハプロタイプの定義により密接に関連している。
【0032】
[41]これまで、当業者は、2倍体の開始物質を使用することにより導入されるエラーの影響を疑ってこなかった。したがって、集団内での形質関連の決定又は被検体のハプロタイプ決定における問題点への疑念は、認識されてこなかった。対照的に、出願人は、ハプロタイプの定義に際して、最大尤度推定アルゴリズムの使用と組み合わせて2倍体物質を使用することに特有な問題の重要性を認識している。従来技術の方法でのエラーは、多重遺伝子的基盤を有する形質を調査する際に、特に問題となることが予期される。
【0033】
[42]それ故に、本発明は、確定ハプロタイプを提供する方法を対象とする。本明細書で使用する場合、「確定ハプロタイプ」という用語は、ハプロタイプを認定するのに、厳密にシス相型関連のみを考慮することを意味すると意図している。本明細書に記載の方法は、2つの多型が同一のDNA分子上に存在するかどうかに関して、いかなる推測又は推定を含まない。これは、配列情報について2倍体物質を精査することにより取得された(ハップマップ計画で実施されたような)、上述の「推定ハプロタイプ」とは異なる。
【0034】
[43]推定の問題は全く別にしても、2倍体細胞の使用は、より長い対立遺伝子が特異的に増幅されないという短対立遺伝子の優性(「対立遺伝子のドロップアウト」)に起因する、さらに複雑な問題を導入する。それ故に、より長い対立遺伝子の存在が完全に無視され、間違ったハプロタイプ情報が生じる。
【0035】
[44]厳密なシス相型関連の保障は、本方法では、実質的に単離された1倍体要素を配列解析の開始物質として使用することによって提供される。本明細書で使用する場合、「1倍体要素」という用語は、母系由来又は父系由来のヌクレオチド配列だけを含有する、任意の核酸分子(DNA、RNA、又はその誘導体)を含むことを意図している。1倍体要素は、染色体の全長、染色分体、又は染色分体の一部を含む、任意の長さの核酸分子でよい。本発明は、配列情報の精査のために、1つ又は複数の1倍体要素を使用してもよい。ヒトの場合、本方法は、46個の1倍体要素の全てを使用してもよく、46個の1倍体要素の全てを別々に解析してもよい。
【0036】
[45]「実質的に単離された」という用語は、精査している1倍体要素上でのシス相型関連のみの特定を妨害できる汚染性遺伝物質から、実質的に単離されたという意味を意図している。典型的には、考慮中である1倍体要素が父系に由来する場合は、汚染性遺伝物質とは、母系に由来する1倍体要素であり、考慮中である1倍体要素が父系に由来する場合は、汚染性遺伝物質とは、母系に由来する1倍体要素である。
【0037】
[46]本発明の1つの形態では、本方法は、被検体に由来する1倍体要素を実質的に単離するステップを含む。1倍体要素の実質的な単離を達成する手段は、当業者に公知である、好適ないかなる方法であってもよい。実質的な単離を達成する手段は本発明の範囲を限定しないと理解すべきであるが、本方法の1つの形態では、1倍体要素を実質的に単離するステップは、物理的手段による。1倍体要素を汚染性遺伝物質から物理的に取り出すことにより、1倍体要素を汚染性遺伝物質から単離し得ることは理解されよう。この手法は、1倍体要素が2倍体細胞内に存在している場合に使用してもよい。1倍体要素の取出しは、例えば、手動又は非接触機器操作のいずれかで実施される染色体マイクロダイセクションによって達成できる。その代わりに、汚染性遺伝物質を、精査中の1倍体要素から物理的に除去してもよい。
【0038】
[47]本方法の別の形態では、汚染性遺伝物質がもはやその機能を果たさないように、汚染性遺伝物質を不活化又は切断する。例えば、これは、注意深く照準を合わせたレーザービームを使用して、相同染色体を破壊することによって達成してもよい。
【0039】
[48]他の可能性としては、1倍体要素DNAの複製数が汚染性DNAの複製数をはるかに上回るように、PCRを使用して1倍体要素を選択的に増幅することがある。次いで、実質的に全ての汚染性DNAが消化され、少量の1倍体要素DNAが残存するように、DNA分子の混合物をヌクレアーゼで部分的に消化することができよう。
【0040】
[49]タグを組み込んだプライマーを使用したロングPCRによって1倍体要素を選択的に増幅し、そのタグを使用して複製物を分離するということにもまた、可能性がある。
【0041】
[50]1倍体要素は、被検体のゲノム又はその一部から単離してもよい。本明細書で使用する場合、「ゲノム」という用語は、被検体の全遺伝物質を意味し、被検体のDNA配列の完全な1セットを含む。ゲノムの「その一部」への言及は、被検体のゲノムに由来する、デオキシリボ核酸(DNA)などの核酸の一部を意味する。
【0042】
[51]ゲノム又はその一部は、核酸を含有するいかなる細胞又は生物試料からでも入手可能である。ゲノムを2倍体細胞から取得する場合、コルセミドなどの当業者に公知の誘導剤を添加することにより、その細胞を分裂中期に誘導してもよい。分裂中期では個別の染色体が出現し、以下に説明するように、構成ハプロム要素に解体可能である。
【0043】
[52]本方法の1つの実施形態では、被検体に由来する1倍体要素を実質的に単離するステップは、1倍体要素の供給源として2倍体物質の使用を含む。2倍体ゲノム又はその一部から1倍体要素を単離するのは、当業者に知られている方法のいずれか1つ又は組合せを使用して達成してもよい。本発明はまた、将来において開発される可能性のある他のいかなる方法をも含む。本発明の1つの形態では、マイクロダイセクションなどの物理的方法を使用する。セントロメアで切断することによって、それぞれが1倍体要素である2つの染色分体を産生するように、染色体をマイクロダイセクションしてもよい。その代わりに、セントロメアに対して末端側で染色体を切断し、それぞれが1倍体要素である短腕及び長腕を分離してもよい。それ故に、1倍体要素は、染色分体又は染色分体の一部であってもよい。
【0044】
[53]当業者は、マイクロマニピュレーションに使用されるプラットフォーム及び器具に精通している。マイクロダイセクションは、技術的に厳密さを要求されるものの、最新式の実験室という状況で達成可能である。設備的な必要条件は、マイクロマニピュレータ及び回転試料台付の顕微鏡(正立又は倒立のいずれか)、ピペットプラー(マイクロニードルを生じさせるため)からなる。顕微鏡の防振が推奨される。特別なクリーンルームは必須ではないが、マイクロダイセクションされた染色体断片はフェムトグラム量のDNAしか含有せず、外来性DNAによる汚染は管理されなければならない。
【0045】
[54]非接触式方法を使用してもよい。この手法の1例は、レーザーマイクロビームの使用である。レーザーマイクロビームマイクロダイセクションは、顕微鏡と接続した高ビーム質のパルス状紫外レーザーの使用を含んでもよい。レーザービームマイクロダイセクションは、例えば、商業的に入手可能なP.A.L.M.(登録商標)ロボットマイクロビーム(Robot Microbeam)(P.A.L.M.GmbH Bernried、ドイツ)を使用して実施してもよい。典型的には、光レーザーは、DNAなど核酸の吸光極大から離れた337nmなどの、ゲノム区域を損傷又は破壊しない波長を有する。
【0046】
[55]染色体のレーザーマイクロダイセクションに有益な別のシステムには、ライカレーザーマイクロダイセクション顕微鏡(Leica Laser Microdissection Microscope)がある。このシステムはDMLA正立顕微鏡を使用し、電動ノースピース、電動試料台、xyz制御要素、及び新型DMLA顕微鏡の他の有利性を全て備えている。使用レーザーは、波長337nmのUVレーザーである。切断中の移動は光学的に行われ、試料台は静止したままである。対象領域はモニター上で印を付けることが可能で、PC制御により切断される。試料は、追加的な力なしでPCRチューブに落下する。切断の結果は、自動検査モードにより容易に調べることが可能である。
【0047】
[56]1倍体要素の単離は、例えば、PALMレーザーを使用した、例えば、染色体区域のレーザー射出によるマイクロダイセクションによって達成してもよい。この場合、非接触プロセスでは、目標の染色体要素周辺をレーザー切断し、その後、画定した該要素を、極微量遠心用チューブキャップなどのチューブキャップ上へレーザーの力により射出し、単腕DNAのその後の解析に供する。
【0048】
[57]その結果生じた1倍体要素(複数可)は、レーザー圧力射出を使用して回収してもよい。レーザー圧力射出は、例えば、対象となる1倍体ゲノム区域又は区域群にレーザーマイクロビームの焦点を合わせ、高光子密度の結果として力を発生させることにより達成してもよい。この高光子密度は、発達し、必要とする1倍体要素が不必要なゲノム区域から射出される起因となる。本方法の1つの形態では、試料は、光子波動に乗って移動し回収チューブに射出される。好適な回収用チューブは、当業者にとって公知であり、それにはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用汎用チューブ又は極微量遠心用チューブなどが含まれよう。
【0049】
[58]1倍体要素は、調製用のフローサイトメトリーにより実質的に単離してもよい。別の方法は、放射線ハイブリッドの利用によってであり、2倍体物質の発生が各染色体対の一方のみとしてのヒト染色体を伴う。別の戦略は、GMPテクノロジーズ社(GMP Tecnologes Inc.)が開発したような「変換技術(conversion technology)」の使用である。GMP Conversion Technology(登録商標)は、対になった染色体を単一の染色体に分離するプロセスを利用する。分離したら、遺伝子配列を同定する遺伝子プローブを使用して、対立遺伝子を個々に解析してもよい。この技術は、遺伝子、染色体、又はヒトゲノム全体に応用可能である。
【0050】
[59]2倍体ゲノム又はその一部の分離は、典型的には、体細胞の常染色体に対して実施される。「常染色体」という用語は、性染色体以外の、正常な体細胞又は生殖細胞内の任意の染色体を意味する。例えば、ヒトでは、1番から22番染色体が常染色体である。
【0051】
[60]上記で考察したように、精子細胞又は卵細胞などの天然性1倍体物質の使用は、医療機関でこれらの生殖細胞を取得するのに問題があるため、回避すべきである。減数分裂のプロセス中に、以前はシス型に連鎖していた遺伝子座がトランス型の関連になるような組換えイベントが時折あることを考慮すると、ハプロタイプ決定に配偶子を回避することは、さらなる有利性を有する。それ故に、配偶子のハプロタイプ解析は、2倍体細胞から取得した1倍体要素とは異なる(すなわち不正確な)ハプロタイプ情報を与えることになろう。
【0052】
[61]「配列情報を取得する」への言及は、直接配列決定を含む、核酸分子のヌクレオチド配列を決定するための、当業者に知られている、いかなる方法をも含むことを意図している。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual Maniatis他著、Cold Spring Harbor Laboratory 1982に記載の方法などの周知の技術を使用して、核酸配列を取得してもよい。また、商業的に入手可能である様々な装置の使用を含む自動化技術を使用して、核酸配列を取得してもよい。本明細書で使用する場合、「核酸」という用語は、2重鎖核酸分子の単鎖又は両鎖を包含し、無傷の核酸分子の任意の断片又は一部を含む。DNA及びRNAの両方が含まれる。
【0053】
[62]配列情報はまた、オリゴヌクレオチドプローブの使用などの間接的方法によっても取得できる。典型的には、配列情報の取得にはSNPの同定がなされ、当業者であればSNPの検出可能なプローブを設計できよう。プローブは、典型的には、およそ25ヌクレオチドの長さで、多型部位がプローブの中心とハイブリダイズするように設計されよう。
【0054】
[63]典型的には、配列情報取得の先行ステップは、対象領域に隣接するプライマーを使用した核酸の増幅である。DNAは、事実上いかなる組織供給源(純粋な赤血球以外)からでも入手可能である。例えば、簡便な組織試料には、全血、精液、唾液、涙液、尿、糞便物質、汗、頬粘膜、皮膚、及び毛髪が含まれる。
【0055】
[64]DNAは、適正なプライマーを使用したPCRによるなど、当業者に公知の任意の好適な方法によって、解析用に調製してもよい。ゲノム全体の解析が求められる場合は、全ゲノム増幅(WGA)法を使用してもよい。例えば、後期細胞を処理して2つのハプロムを分離可能にしてもよく、その後にWGAが実行可能である。シグマ−アルドリッチ社(Sigma−Aldrich Corp)(St Louis、MO、米国)が製造するGenoPlex(登録商標)コンプリートWGAキット(Complete WGA kit)を含む、市販キットがこの方法のために容易に入手可能である。このキットは、ゲノムを一連のテンプレートに無作為断片化することに基づく。その結果生じるDNAの短鎖は、3プライミング及び5プライミングされた末端で定義されるDNA断片のライブラリーを生成する。このライブラリーは、開始段階では線形、恒温増幅を使用し、その後は、有限回数の幾何級数的(PCR)増幅を使用して複製される。
【0056】
[65]DNAのPCR増幅には、多数の戦略が利用可能である。これらには、Klein他(PNAS 96(8):4494−4499、Apr.13、1999)が説明する方法が含まれ、この方法によって、(1)完全で不偏性な全ゲノム増幅ができ、(2)単離された1倍体要素内の数十から数百の遺伝子座の増幅が可能であるという見通しが立つ。
【0057】
[66]mRNA試料もまた、頻繁に増幅にかけられる。この場合、典型的には、逆転写が増幅の前に行われる。発現した全mRNAの増幅は、国際公開第96/14839号パンフレット及び国際公開第97/01603号パンフレットに記載のように実施可能である。もし試料を取得する被検体が、発現したmRNA内に発生する多型部位でヘテロ接合性であるならば、2倍体試料に由来するRNA試料の増幅は、2種類の目標分子を産生可能である。
【0058】
[67]ヌクレオチドの多型を同定する簡便な方法は、マイクロアレイ技術の使用による。本発明のこの形態の例示的な実施形態は、アフィメトリックス社(Affymetrix)(登録商標)が販売するGeneChip(登録商標)技術に見出される。この技術は、ウェハーと、作製されるDNAプローブの第1ヌクレオチドと、の間の結合を防止する感光性の化学化合物で、5”x5”の水晶ウェハーをコーティングすることによるフォトリソグラフィプロセスに依存する。リソグラフィのマスクは、ウェハー表面の特定の場所への光を遮断するか又は透過するかのいずれかに使用される。その後、その表面は、アデニン、チミン、シトシン、又はグアニンを含有する溶液で満たされ、光照射を介して脱保護されたガラス上のそれらの領域のみで結合が起こる。結合したヌクレオチドもまた感光性の保護基を携えており、そのため、このサイクルは反復が可能である。プローブを固定する他の方法は、オックスフォードジーンテクノロジー社(Oxford Gene Technology)(Oxford、英国)、アジレントテクノロジーズ社(Agilent Technologies)(Palo Alto、CA、米国)、及びNimblegen Systems Inc社(Madison、WI、米国)を含む、多数の企業により提供されている。
【0059】
[68]被検体の両ハプロタイプ情報を提供するために設計されたプローブは、単一のマイクロアレイチップに組み込まれてもよいと予期される。父系由来のハプロタイプ情報を提供する役割を果たすプローブは、1つの型の蛍光タグで標識してもよく、その一方で、母系由来のハプロタイプ情報は、異なるタグで標識することが可能である。
【0060】
[69]本発明の1つの形態では、2つ以上の多型が、コード配列性対立遺伝子の一部である。本方法は、過剰な対立遺伝子共有を実証することによって、遺伝子と形質との間の関連を示すのに使用してもよい。本発明に関しては、「対立遺伝子」という用語は、コード領域に関連した遺伝子変異を指すために使用され、所与の遺伝子の代替形態を含む。本明細書で使用する場合、「対立遺伝子共有」という用語は、ある遺伝子の1つの対立遺伝子が個体の一群内に存在する(共有されている)という概念を指す。対立遺伝子共有の存在及びその程度は、当業者が入手可能である多数の統計ソフトウエアパッケージのいずれか1つを使用して求めることができる。コード配列性対立遺伝子の使用は、コード性ハプロタイプを間接的に示すために非コード配列性変異(例えばSNP及びSTR)をハップマップ的に使用するのとは全く異なる。ハップマップによるこの間接的手法は、集団ハプロタイプ多様性のSNP代表性、ハプロタイプブロックの長さ、連鎖不平衡、及び相に特有な不確実性を有する。本発明は、特定の対立遺伝子の解析に全く限定されることはないが、例示的な対立遺伝子は、CFTR、DRB1、及びHLA−Aに関する対立遺伝子である。
【0061】
[70]別の態様では、本発明は、被検体の確定ハプロタイプを決定するための1倍体要素の使用を提供する。
【0062】
[71]さらに別の態様では、本発明は、遺伝子領域と形質との間の関連を決定する方法を提供し、該方法は、複数の被検体に由来する1倍体要素の第1のセットを提供するステップであり、該個体が母集団の遺伝的多様性を代表している該ステップと、対立遺伝子の存在又は非存在について、1倍体要素の該第1のセットを解析するステップと、該母集団からの複数の被検体に由来する1倍体要素の第2のセットを提供するステップであり、該被検体が該形質を有し、該被検体が単一の系統に由来していない該ステップと、該対立遺伝子の存在又は非存在について、1倍体要素の該第2のセットを解析するステップであり、1倍体要素の該第1及び該第2の両セットの間で、該対立遺伝子の対立遺伝子共有レベルを決定する該ステップと、を含み、過剰な対立遺伝子共有は、該対立遺伝子が該形質と関連していることを示す。本方法の1つの形態では、該対立遺伝子はコード配列性対立遺伝子である。
【0063】
[72]別の態様では、本発明は、多重遺伝子性疾患及び形質に関与する遺伝子を同定する方法を提供し、該方法は本明細書に記載の方法の使用を含む。推定に基づくハプロタイプ決定の現行方法を考慮すると、いかなる任意の遺伝子でも、多重遺伝子性疾患又は形質で果たす役割を十分に調査することは、不可能でないとしても、非常に難しい。本明細書に記載の確定ハプロタイプの提供は、多重遺伝子系における単一遺伝子関与の解明に交絡をきたす不確実性を除去する。
【0064】
[73]本発明が多数の使用を有することは、当業者には明白となろう。1つの実施形態では、本発明は、単一遺伝子性の疾患又は表現型に関与する遺伝子を同定するための本明細書に記載の方法の使用を提供する。別の実施形態は、多重遺伝子性の疾患又は表現型に関与する遺伝子を同定するための本明細書に記載の方法の使用を提供する。確定ハプロタイプの提供は、組織移植の際に、ドナーとレシピエントとをより緊密に適合させることも可能にするであろう。
【0065】
[74]本発明は、いかなる被検体にも適用可能である。被検体は、ヒト、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、又はブタであってもよい。当業者であれば、植物などの生物もまた好適であると理解されよう。ある生物は多数体であり(例えば、ある植物及び甲殻類)、本発明は、細胞あたり3つ以上の相同染色体が存在することにより起こる交絡問題を考慮すると、なおさら大きな有利性を有すると期待される。
【0066】
[75]別の様態では、本発明は、薬物応答に関与する遺伝子を同定するための本明細書に記載の方法の使用を提供する。薬学ゲノム学とは、個体の遺伝子の遺伝様式が、薬物に対する体の応答にどのように影響するかを研究することである。薬学ゲノム学の基盤は、自らの遺伝子構造に適応するように、個体に合わせて薬物をテーラーメードできる可能性があるということである。環境、食事、年齢、生活スタイル、及び健康状態は全て、薬に対する個人の応答に影響を与えるが、個体の遺伝子構造を理解することは、より高い効率性及び安全性を有する個別化された薬物を作り出すための鍵であると考えられている。
【0067】
[76]本発明を使用して、遺伝子及び疾患に関連するタンパク質、酵素、及びRNA分子に基づく薬物を作り出せる可能性がある。これは創薬を促進し、研究者が特定の疾患に目標をより絞った治療法を生み出すのを可能にするであろう。この正確性は、治療効果を最大化するだけでなく、周囲の健康な細胞への損傷を減少させることになろう。
【0068】
[77]患者を好適な薬物と適合させる標準的な試行錯誤法の代わりに、臨床医は患者の遺伝子プロファイルを解析し、治療の初期から、行い得る最善の薬物治療を処方することができよう。こうすることで、患者に適正な薬物を特定する際に憶測を除外するだけでなく、有害反応の可能性を排除し得るために、回復時間が早まり、安全性が増加することになろう。薬学ゲノム学は、有害反応の結果としてアメリカ合衆国で毎年発生している推定100,000人の死亡者及び2百万の入院件数を劇的に低減させる潜在能力を有する。
【0069】
[78]本発明の実施がもたらす1つの結果は、適正な薬物投与量を決定するより正確な方法となり得る。投与量が体重及び年齢に基づく現在の方法は、患者の遺伝的特徴に基づく投与量に取って代わられよう。例えば、正確な遺伝子プロファイルは、体がどの程度順調に薬物を代謝するか、したがって代謝に要する時間に関して指標を提供できよう。これにより、治療の価値は最大となり、過剰投与の可能性は減少することになろう。
【0070】
[79]本発明の実施がもたらす別の結果は、疾患スクリーニング法の改良にもなり得る。個体の遺伝子プロファイルを知ることで、1つ又は複数の疾患感受性が特定できよう。疾患感受性に関する知識があると、人が若年齢で生活スタイル及び、環境を適切に変化させ、遺伝子性疾患の重症度を回避又は緩和することが可能になろう。同様に、特定の疾患感受性を事前に知ると、個体を慎重にモニタリングできるようになり、最も適正な段階で処置を導入して治療を最適化することが可能である。
【0071】
[80]本発明の実施のさらに別の結果は、ワクチンの改良であってもよい。遺伝物質(DNA又はRNAのいずれか一方)で作られるワクチンは、危険性を全く伴わず、既存のワクチンの利点を保証する。遺伝子ワクチンは、免疫系を活性化するが、感染を引き起こすことはできないと見込まれる。それらは、安価で、安定的で、保存が容易であり、且つ病原体の菌株数種を同時に保持するように操作することができよう。
【0072】
[81]本発明はまた、創薬及び承認プロセスの改善に使用してもよい。製薬企業は、ゲノム目標を使用して潜在的治療薬をより容易に発見することができよう。以前不成功に終わった薬物候補は、それらが救済するニッチな集団と適合するために見直される可能性がある。治験がより大きな成功度を提供する特定の遺伝的集団群を目標とするため、薬物承認プロセスは促進されるべきである。ある薬物に応答可能な人々だけを対象にすることで、臨床治験の費用及び危険性は低減されよう。
【0073】
[82]それ故に、本発明による正確な遺伝子情報の提供は、有害薬物反応の数、不成功に終わる薬物治験の数、薬物の規制認可を達成するのにかかる時間、患者が投薬されている時間の長さ、効果的な治療法を特定するのに患者が受けなければならない投薬の回数、体に与える疾患の影響(初期検出を介して)の減少に繋がり、且つ可能性のある薬物目標の範囲増大に繋がる可能性がある。これらの有利性は、医療費の純減に繋がる可能性がある。
【0074】
[83]上記で考察したように、本発明の方法はまた、個体に疾患感受性を与える遺伝子又は遺伝子群の同定に有益である可能性がある。これは、糖尿病などの多重遺伝子性疾患の場合に特にあてはまる。例えば、欠損複製を持つ人々の2型糖尿病の発症率を3倍高くする可能性のある、主要な糖尿病感受性遺伝子が発見されている。カルパイン−10(プロテアーゼ)遺伝子のSNPが、2型糖尿病と関連することは公知である。この関連は、この疾患に感受性のあるメキシコ系アメリカ人で立証された。この集団からのDNA試料を配列決定し、その配列の統計的解析を実施して、これらのメキシコ系アメリカ人はインスリン耐性を有し、カルパイン−10遺伝子の発現量低減を示したのが認められた。本発明は、遺伝子/疾患の関連をより単純に検出するのを可能にし、喘息、統合失調症、及びアルツハイマー病など、遺伝的に複雑な他の障害の遺伝子的基盤の特定を促進することになろう。
【0075】
[84]別の態様では、本発明は、薬物又は遺伝子治療の目標遺伝子(又は目標タンパク質)を同定するための方法の使用を提供する。本発明の実践によって取得した疾患の遺伝子的基盤に関する知識によって、薬物設計及び遺伝子治療のための妥当な目標が提供されよう。例えば、遺伝子又は遺伝子群が疾患との関連を有すると確認されれば、その遺伝子の活性を阻害又は亢進して、治療結果を提供できる可能性がある。その代わりに、その遺伝子のタンパク質産物は、結合してそのタンパク質の活性を調節可能な物体のスクリーニングアッセイの基盤を形成する可能性がある。さらには、そのタンパク質の3次元立体構造を生成できれば、理論的薬物設計が行える可能性がある。
【0076】
[85]別の態様では、本発明は、疾患素因を持つ個人を特定するための本明細書に記載の方法の使用を提供する。本方法を使用して、ある遺伝子が特定の疾患と関連すると確認されれば、当業者であれば、その遺伝子の欠損形態をスクリーニングするアッセイを設計することができよう。ある種の疾患の危険性がある人々を特定すれば、薬物治療及び生活スタイルの変化などの予防的措置の促進が可能となろう。
【0077】
[86]さらに別の態様では、本発明は、環境刺激に対する応答素因を持つ個体を特定するための本方法の使用を提供する。この使用の1例は、様々な物質にアレルギーを持つ人々を特定することであってもよい。個体の中には、アレルゲン(例えば、ピーナッツ中又はハチ毒中の)に対する応答が、潜在的に致死的なアナフィラキシー反応を導く可能性がある。特に敏感な個体が特定されれば、脱感作処置の実施が促進されよう。
【0078】
[87]以下の非限定的な実施例において、本発明を説明する。
【0079】
[実施例]
実施例1:100X対物レンズでPALM ロボット(PALM ROBOT)を使用し、分裂中期染色体を単離するレーザーマイクロダイセクション及び圧力射出(LMPC)処理
[88]100x対物レンズ下でP.A.L.M顕微鏡を使用し、次に行うレーザー捕獲に好適なスライド上に分裂中期スプレッドを調製した。単一染色体を含む単一分裂中期(姉妹染色体から空間的に分離された染色体)を、6μlの0.1%(v/v)トリトン−X−100を含有する、200μLのUltraFluxフラットキャップPCRチューブのキャップに、P.A.L.M顕微鏡の標準的な手順を使用して射出した。解析のために、射出した物質を遠心法によってチューブの底に移動させた。
【0080】
実施例2:単離された染色体の増幅
[89]レーザーマイクロ捕獲により単離されたDNAを、標準的な手順を使用してPCR又はMDAにより増幅した。CFTR(エクソン10)、HLA−A(エクソン2)、DRB1(エクソン2)用の、エクソン特異的PCR増幅の手順は以下の通りである。
【0081】
CFTR
[90]gDNA、分裂中期、又は単一染色体からのネステッドPCR戦略を使用して、CFTR遺伝子座のエクソン10を増幅した。1巡目の増幅は、TaqDNAポリメラーゼを含む30μLの反応体積で、95℃で3分間;95℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で45秒間を25サイクル;72℃で5分間;4℃を保持というサイクル条件下で実施し、プライマー
【化1】

を用いた。
【0082】
[91]1巡目の産生物をテンプレートとして使用した2巡目のネステッドPCRは、プライマー
【化2】

を使用して実施した。1巡目の2μlを30μL反応液に移し、95℃で3分間;95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル;72℃で5分間;4℃を保持というサイクル条件下で、TaqDNAポリメラーゼを使用した。
【0083】
HLA−A
[92]gDNA、分裂中期、又は単一染色体からのネステッドPCR戦略を使用して、HLA−A遺伝子座のエクソン2を増幅した。1巡目のHLA−Aエクソン2の増幅は、以下の汎用プライマーを使用して実施した:
【化3】

【0084】
[93]ゲノムDNA、単一分裂中期、又は単一染色体を開始テンプレートとして使用した。プラチナTaqDNAポリメラーゼを25μLの反応体積で用いたPCRを、以下のサイクル条件下で実施した。98℃で2分間;98℃で5秒間、60℃で120秒間、72℃で120秒間を10サイクル;98℃で5秒間、65℃で30秒間、72℃で60秒間を25サイクル;72℃で10分間;4℃を保持。
【0085】
[94]HLA−A遺伝子座のエクソン2の2巡目のネステッド増幅では、1巡目の2μlを25μLの反応液中で用い、98℃で30秒間;98℃で5秒間、65℃で30秒間、72℃で60秒間を10サイクル;98℃で5秒間、60℃で30秒間、72℃で60秒間を25サイクル;72℃で10分間;4℃を保持というサイクル条件を用い、以下のプライマーを利用した。
【化4】

【0086】
HLA−DRB1
[95]gDNA、分裂中期、又は単一染色体からのネステッドPCR戦略を使用して、HLA−DRB1遺伝子座のエクソン2を増幅した。HLA−DRB101及び−DRB109エクソン2の1巡目の増幅は、特異的プライマーを使用して実施した。DRB101は、以下のプライマーを使用して増幅した:
【化5】

DRB109は、以下のプライマーを使用して増幅した:
【化6】

【0087】
[96]ゲノムDNA、単一の分裂中期、又は単一染色体を開始テンプレートとして使用した。PCRには、95℃で3分間;95℃で30秒間、50℃で120秒間、72℃で90秒間を30サイクル;72℃で10分間;4℃を保持というサイクル条件下で、プラチナTaqDNAポリメラーゼを25μLの反応体積で用いた。
【0088】
[97]この最初の反応の2μLを、50μlの2巡目(ネステッド)反応液に含入し、95℃で3分間;95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を30〜40サイクル;72℃で5分間;4℃を保持というサイクル条件下で、TaqDNAポリメラーゼ及び縮重プライマー
【化7】

を使用した。
【0089】
CFTR遺伝子座10、HLA−A、HLA−DBR1の解析結果を図1〜7に示す。図は、レーザーマイクロダイセクション圧力射出技術を使用して、情報価値のある配列情報が、単離された1倍体要素から取得されたことを確認する。
【0090】
[98]最後に、本明細書で概説した本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、他の種々の修正及び/又は変更がなされてもよいことは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】ヒト6番染色体のレーザー圧力射出(laser pressure catapulting)の光学顕微鏡写真である。パネルは左から右に:分裂中期スプレッド、同定6番染色体、フィールドポスト射出物(field post catapalt)。
【図2】ヒト6番染色体のさらなる射出例の光学顕微鏡写真である。左パネル、同定;右パネル、フィールドポスト射出物。
【図3】7番染色体の射出物からのCFTRエクソン10ネステッドPCRのアンプリコンを表す図である。レーン1から3、7番染色体。レーン4、陰性対照。レーン5、陽性対照。
【図4】レーザー圧力射出された単一6番染色体群からの直接HLA−Aエクソン2ネステッドPCRを表す図である。レーン1、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン2、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン3、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン4、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン5、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン6、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン7、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン8、10μLの0.1%トリトンx−100溶液にレーザー圧力射出された単一6番染色体。レーン9、10μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲されたPEN膜の空白セクションを含有する陰性対照。レーン10、10μLの0.1%トリトンx−100溶液のみを含有する陰性対照。レーン11、陽性対照、合計容積が10μLの0.1%トリトンx−100溶液内に1μLの200pg/μL gDNA。レーン12、分子量マーカーVIII。レーン1、5、及び6は配列決定に提出された。レーン1、5、及び6は純粋な03配列、円で囲まれて強調されている。
【図5】図4のレーン1、5、及び6からのHLA−Aアンプリコンの配列を表す図である。
【図6】分裂中期のレーザー射出物からのDRB1エクソン2ネステッドPCRのアンプリコンを表す図である。 上段の2つのゲル(「単一分裂中期」と標識された大括弧により括られている)は、DRB101特異的PCRを表す。上段の2つのゲルのレーンは次の通り:レーン1、マーカー。レーン2(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン3、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン4、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン5、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン6、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン7(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン8(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン9、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン10(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン11、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン12、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン13、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン14、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン15、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン16、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン17、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン18、マーカー。レーン19、マーカー。レーン20、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン21、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン22、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン23、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン24、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン25(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン26(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン27、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン28(鮮明なバンド)、陽性対照、合計容積が10μLの0.1%トリトンx−100溶液内に1μLの400pg/μL gDNA。レーン29、マーカー。 下段のゲルは、DRB109特異的PCRを表す。レーン1、マーカー。レーン2、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン3、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン4、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン5、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン6(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン7、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン8、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン9、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン10、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン11、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン12、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン13、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン14(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン15、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン16(鮮明なバンド)、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン17、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン18、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン19、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン20、6μLの0.1%トリトンx−100溶液に捕獲された単一LMPC分裂中期。レーン21、6μLの0.1%トリトンx−100溶液を含有する陰性対照。レーン22(鮮明なバンド)、陽性対照、合計容積が10μLの0.1%トリトンx−100溶液内に1μLの1ng/μL純粋gDNA。レーン23、マーカー。
【図7】クロモパルト(chromopult)に由来するDRB1アンプリコンのドットブロット特徴分析を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の確定ハプロタイプを決定する方法であって、前記被検体に由来する実質的に単離された1倍体要素を用意するステップと、前記1倍体要素からヌクレオチド配列情報を取得するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記被検体に由来する1倍体要素を実質的に単離するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1倍体要素を実質的に単離する前記ステップが物理的手段による、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物理的手段が染色体マイクロダイセクションである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1倍体要素の前記実質的単離を達成するために、前記1倍体要素をレーザー射出するステップを含む、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記被検体に由来する1倍体要素を実質的に単離する前記ステップが、前記1倍体要素の供給源として2倍体物質の使用を含む、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記2倍体物質が体細胞から取得される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1倍体要素が、染色分体又は染色分体の1部分である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヌクレオチド配列情報が1塩基多型の存在又は非存在である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヌクレオチド配列情報が対立遺伝子情報を提供する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記配列情報が直接配列決定によって提供される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記配列情報が、情報価値のあるオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションによって提供される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドプローブが1塩基多型の存在又は非存在を検出する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
シス相型1塩基多型関連のみが提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対立遺伝子がコード領域の対立遺伝子である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対立遺伝子がCFTR、DRB1、又はHLA−Aに関する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
被検体の確定ハプロタイプを決定するための1倍体要素の使用。
【請求項18】
遺伝子領域と形質との間の関連を決定する方法であって、
複数の個体に由来する1倍体要素の第1のセットを用意するステップであり、前記個体が母集団の遺伝的多様性を代表しているステップと、
対立遺伝子の存在又は非存在について、1倍体要素の前記第1のセットを解析するステップと、
前記母集団からの複数の個体に由来する1倍体要素の第2のセットを提供するステップであり、前記個体が前記形質を有し、前記個体が単一の系統に由来していないステップと、
前記対立遺伝子の存在又は非存在について、1倍体要素の前記第2のセットを解析するステップであり、1倍体要素の前記第1及び第2の両セット間について、前記対立遺伝子の対立遺伝子共有レベルを決定するステップと
を含み、
過剰な対立遺伝子共有は、前記対立遺伝子が前記形質と関連していることを示す方法。
【請求項19】
前記対立遺伝子がコード配列性対立遺伝子である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18又は請求項19に記載の方法の使用を含む、多重遺伝子性疾患又は形質に関与する遺伝子を同定する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−517054(P2009−517054A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542563(P2008−542563)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001836
【国際公開番号】WO2007/062486
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508165021)サイモンズ ハプロミクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】