説明

避難誘導システム

【課題】災害に対して人々を適確に安全な場所に避難誘導することができるシステムを提供すること。
【解決手段】スピーカ16を内蔵する各PLC12と、各PLC12を制御する集中管理センター14とを具備し、各PLC12を建屋内各所に配置する一方、集中管理センター14により、建屋内に避難者を避難させる経路を構築させると共に、各PLC12に対してスピーカ16を避難経路に従って発音制御させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時や火災発生時に建屋内の人々に当該建屋内での避難方向等を示すなどして避難誘導する避難誘導システムに関するものであり、特にプログラマブルコントローラ(以下、PLC)を用い避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PLCは、制御機械をシーケンス制御するものであり、内部に、シーケンス制御を行うCPU、ラダープログラム等のシーケンスプログラム等を格納するメモリ、制御機械の運転状態を示すセンサ等の複数の入力機器からの入力信号を入力する入力部、制御機械を駆動するアクチュエータ等の複数の出力機器側へその制御のための出力信号を送り出す出力部等を有する。PLCにおいて、CPUは、上記入力機器からの入力信号を入力部を通じてメモリに取り込み、ラダープログラムに基づき演算実行し、その演算実行結果をメモリに書き込むと共に、その書き込んだ演算実行結果を出力部を通じて出力機器側へその制御のための出力信号を送り出す処理を行うことができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そして本件出願人は、このようなPLCを地震発生時や火災発生時に建屋内の人々に当該建屋内での避難方向等を示すなどして避難誘導する避難誘導システムに用いることを考えたのである。しかしながら、PLCは定まった制御を繰り返し実行するものであるのに対して、地震や火災等は突発的に発生する事象であり、PLCにおける制御の実行をこの突発発生事象にいかにそぐわせるかが重要であるといえる。また地震発生や火災発生は例えば、ランプ、あるいは、ブザー等により報知することが行われているが、そのような報知では、避難方向の情報は与えられない。また、室内から廊下に出たときの非常出口は例えば火災時に発生する煙で見えないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−259079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明により解決すべき課題は、PLCを用いて地震や火災等の突発発生事象に対して人々を適確に安全な場所に避難誘導することができるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による避難誘導システムは、音声手段を内蔵すると共に指令に応答してその音声手段を制御し駆動することができる複数のPLCと、上記各PLCを制御する集中管理センターと、を具備し、上記各PLCを建屋内各所に配置する一方、上記集中管理センターにより建屋内に避難者を避難させる経路を構築させると共に、上記各PLCに対してそれぞれの音声手段を上記経路に従って発音制御させる指令を行い、各PLCは、その指令に応答してそれぞれの音声手段を駆動する、ことを特徴とするシステムである。
【0007】
本発明において、好ましい態様は上記各PLCがシーケンスプログラムを実行するシーケンスプログラム実行部と、音声を再生処理する音声処理部とを有し、シーケンスプログラム実行部は集中管理センターからの指令に応答して音声処理部をシーケンス制御して音声動作させるようになっている、ことである。
【0008】
本発明において、好ましい態様は上記各PLCが、シーケンスプログラムを実行するシーケンスプログラム実行ユニットと、音声を再生処理する所定数の音声処理ユニットとを有し、音声処理ユニットは経路に従い配置されていると共に、シーケンスプログラム実行ユニットは集中管理センターからの指令に応答して各音声処理ユニットをシーケンス制御して音声動作させるようになっている、ことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシステムでは、集中管理センターにより、建屋内に避難者を避難させる経路を構築し、各PLCに対してそれぞれの音声手段を上記経路に従って発音制御させる指令を行い、各PLCは、指令に応答して音声手段を駆動するので、地震や火災等は突発的に発生する災害に対して人々を適確に安全な場所に避難誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施の形態のシステムによる建屋内廊下での各PLCの配置例を示す図である。
【図2】図2は集中管理センターと各PLCの接続関係を示す図である。
【図3】図3は集中管理センターとPLCの概略ブロック構成を示す図である。
【図4】図4(a)は実施の形態のシステムの動作説明に用いる図であり、火災初期段階での廊下の状況を示し、図4(b)は図4(a)での集中管理センターのモニタ画面を示す図である。
【図5】図5(a)は実施の形態のシステムの動作説明に用いる図であり、火災により廊下上方に火災により煙が充満していると共に各部屋の扉が開放されている状態を示し、図5(b)は図5(a)の状態での集中管理センターのモニタ画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態に係る避難誘導システムを詳細に説明する。
【0012】
図1に実施の形態のシステムによる建屋内廊下での各PLCの配置例を示し、図2に集中管理センターと各PLCの接続関係、図3に集中管理センターとPLCの概略ブロック構成を示す。
【0013】
図1を参照して、建屋内廊下10における各部屋の扉11上方の壁にPLC12が装備されている。各PLC12は、音声手段であるスピーカを内蔵すると共に集中管理センターからの指令に応答してスピーカを制御し駆動することができるようになっている。
【0014】
廊下10には避難方向を矢印で示す避難誘導表示板13が敷設されている。避難誘導表示板13は、点灯、消灯、避難誘導方向を示す矢印の向きを制御することができる。図1では矢印頭が実線と点線で示される。実施の形態では実線矢印頭が選択されて点灯し廊下10表面に表示されている。
【0015】
各PLC12は、避難誘導表示板13の点灯、消灯および矢印頭の表示等を制御することができる。各PLC12は集中管理センターからの指令に応答して、避難誘導表示板13の上記表示を制御するようになっている。避難誘導表示板13は点灯制御により廊下10表面に視認可能となり、消灯制御により廊下10表面からは視認されないようになっている。
【0016】
図2を参照して、集中管理センター14は各PLC12にバス15で接続されている。各PLC12それぞれは音声手段であるスピーカ16を内蔵している。避難誘導表示板13は、集中管理センター14の指令の下に各PLC12により点灯、消灯、矢印の向きなどが制御されるようになっている。各PLC12は、集中管理センター14の指令に従い、複数の避難誘導表示板13をセットで制御することができるようになっている。
【0017】
図3を参照して、集中管理センター14は、避難誘導を制御するCPU14aと、避難誘導プログラムが格納されているメモリ14bと、避難経路表示用のモニタ画面14cと、メモリ14bへのデータ格納やモニタ表示等の入力操作に用いる操作部14dと、通信インタフェース14eとを備える。さらに集中管理センター14は、廊下10や天井、壁等に敷設された火災センサ、煙センサ、その他のセンサの信号が入力される入出力インターフェース14fを有する。
【0018】
避難誘導プログラムは、入出力インターフェース14fから入力するセンサ信号に応答して、避難誘導に関して、モニタ画面14cの制御、操作部14dの操作に対応する制御、各PLC12への制御をするためのプログラムである。
【0019】
CPU14aは、避難誘導プログラムに従い、モニタ画面14cの画面上に避難経路を表示制御させることで、集中管理センター要員が的確に各部屋に居る被災者に避難経路を的確に与えて緊急に避難させることができる。CPU14aはまた、各PLC12に指令を与えて、各PLC12それぞれのスピーカ16を駆動して的確に各部屋に居る被災者に音声にて避難経路を教えることで緊急に安全な箇所に避難させることができる。
【0020】
各PLC12は、シーケンスプログラムの実行部として集中管理センター14の指令に応答してシーケンスプログラムに従い避難誘導を制御するCPU12aと、シーケンスプログラムが格納されるプログラムメモリ12bと、音声データが格納される音声データメモリ12cと、音声データを処理して音声信号に変える音声処理部12dと、スピーカ16を駆動するスピーカドライバ12eと、スピーカ16と、避難誘導表示板ドライバ12fと、通信インターフェース12gと、を有する。避難誘導表示板ドライバ12fは、複数の避難誘導表示板13を駆動することができるようになっている。
【0021】
この場合、廊下10や天井、壁等に敷設された火災センサ、煙センサ、その他のセンサの信号は、集中管理センター14に入力するようにしたが、各PLC12にも入力するようにしてもよい。そして各PLC12は、このセンサ信号に基づいて、火災の発生等を自己診断し、スピーカ16を駆動したり、避難誘導表示板13の表示を制御することができるようにしてもよい。また、実施の形態を室内にモニタを有するカラオケ店などに適用する場合、そのモニタ画面上に避難経路を表示させるようにしてもよい。
【0022】
動作を図4、図5を参照して説明する。
【0023】
図4(a)で示すように、廊下10上方には煙が無く、各部屋の扉11は開放されていない。この状態で被災者は前方の視界が遮られていないから、前方への避難が容易な状況である。このような火災初期の段階では、廊下10上方の非常出口は視認可能である。このような状況は、集中管理センター14のモニタ画面14cには図4(b)で示すように避難経路が映し出されている。この避難経路は避難誘導表示板13の表示に対応する避難経路矢印17が表示されていると共に、CPU14aは、各PLC12に対してそれぞれのスピーカ16を避難誘導言語として例えば「廊下を廊下表面で点滅している矢印方向に避難してください。」と発声させるよう指令を送信する。なお、廊下10には、図示略の火災センサと煙センサとが配備されていて、集中管理センター14は、火災センサにより火災発生場所を示す信号と、これら煙センサからの信号とにより、避難誘導表示板13の矢印方向と表示点灯とを制御する。煙センサは、煙を構成するガスの種類ならびに廊下における煙の充満度を検知することができるように設置されている。
【0024】
そして、火災が進行して例えば図5(a)で示すように廊下10に煙が充満してくると共に廊下10の扉11が開放しているようになると、被災者は廊下10を避難することも困難となる。集中管理センター14は、火災センサからの信号により、図5(b)で示すようにモニタ画面14c上で点線で囲む箇所18に火災が発生していて危険ゾーンであり、集中管理センター14は避難誘導表示板13を実線と点線とで示すように矢印向きに点灯を変更制御するよう各PLC12に指令する。各PLC12は、廊下10上の避難誘導表示板13の矢印表示の向きと点灯とを集中管理センター14の指令に従い制御することで、被災者を適確に安全な避難方向に避難誘導する。
【0025】
なお、各PLC12では、CPU12aがシーケンスプログラムを実行するシーケンスプログラム実行部として、集中管理センター14からの指令に応答して音声処理部12dをシーケンス制御して音声動作させるようになっているが、このCPU12aと音声処理部12d、とを別々にユニット化し、CPU12aのユニットとは別に、この音声処理ユニットを経路に従い配置し、集中管理センター14からの指令に応答して各音声処理ユニットをシーケンス制御して音声動作させるようにしてもよい。
【0026】
なお、各PLC12は廊下10側に敷設したが、各部屋内にも配置し、各部屋内の被災者に各PLC12それぞれのスピーカから火災発生等を即座に知らせることができるようにしてもよい。こうすれば、室外の各PLC12内蔵のスピーカ16が発声しても室内の被災者に聞こえないことによる不具合を解消することができる。
【0027】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、種々な変更ないしは変形を含むものである。
【符号の説明】
【0028】
10 廊下
11 扉
12 PLC
13 避難誘導表示板
14 集中管理センター
15 バス
16 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声手段を内蔵すると共に指令に応答してその音声手段を制御し駆動することができる複数のPLCと、
上記各PLCを制御する集中管理センターと、を具備し、
上記各PLCを建屋内各所に配置する一方、
上記集中管理センターにより、建屋内に避難者を避難させる経路を構築させると共に、上記各PLCに対してそれぞれの音声手段を上記経路に従って発音制御させる指令を行い、
各PLCは、その指令に応答してそれぞれの音声手段を駆動する、
ことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
上記各PLCは、
シーケンスプログラムを実行するシーケンスプログラム実行部と、
音声を再生処理する音声処理部とを有し、
シーケンスプログラム実行部は、集中管理センターからの指令に応答して音声処理部をシーケンス制御して音声動作させるようになっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記各PLCは、
シーケンスプログラムを実行するシーケンスプログラム実行ユニットと、
音声を再生処理する所定数の音声処理ユニットとを有し、
音声処理ユニットは経路に従い配置されていると共に、シーケンスプログラム実行ユニットは、集中管理センターからの指令に応答して各音声処理ユニットをシーケンス制御して音声動作させるようになっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−205104(P2010−205104A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51599(P2009−51599)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】