避雷用コネクタ
【課題】 避雷用コネクタと鉄筋との間の接触抵抗を安定的に下げる。
【解決手段】 第2の避雷用コネクタ30は、ベースプレート31と、ベースプレート31に設けられた係合片32と、一対の接触片33と、一対の押圧部材34と、一対の締結手段35によって構成されている。ベースプレート31は中央部に鉄筋25Aを挿入する挿入孔36を有し、導電材によってリング状に形成されている。導電材によって形成された係合片32を継手1の開口部4の外周部に係合させることにより、第2の避雷用コネクタ30が継手1に取り付けられ、継手1とベースプレート31と電気的に接続される。導電材によって形成された接触片33,33はベースプレート31に立設され、一対の押圧部材34,34間を締結手段35によって狭めることで、接触片33が塑性変形する。塑性変形した接触片33と鉄筋25Aとが電気的に接続されることで、第2の避雷用コネクタ30を介して鉄筋25Aと継手1とが電気的に接続される。
【解決手段】 第2の避雷用コネクタ30は、ベースプレート31と、ベースプレート31に設けられた係合片32と、一対の接触片33と、一対の押圧部材34と、一対の締結手段35によって構成されている。ベースプレート31は中央部に鉄筋25Aを挿入する挿入孔36を有し、導電材によってリング状に形成されている。導電材によって形成された係合片32を継手1の開口部4の外周部に係合させることにより、第2の避雷用コネクタ30が継手1に取り付けられ、継手1とベースプレート31と電気的に接続される。導電材によって形成された接触片33,33はベースプレート31に立設され、一対の押圧部材34,34間を締結手段35によって狭めることで、接触片33が塑性変形する。塑性変形した接触片33と鉄筋25Aとが電気的に接続されることで、第2の避雷用コネクタ30を介して鉄筋25Aと継手1とが電気的に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部雷保護システムの引き下げ導線に適用することと、内部雷保護の等電位ボンディングとして利用することを目的とし、鉄筋と継手とを電気的に接続する避雷用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造りの建物や鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物の避雷針設備においては、JIS A 4201-2003 「建築物等の雷保護」の規格に準じて、2条以上の主鉄骨、主鉄筋をもって引き下げ導線に代行している。一方、鉄筋の継手構造の一つとして、モルタル充填機械式継手を用いるものは、連結すべき各鉄筋の端部を、モルタル充填機械式継手の貫通孔の両端部から差し込み、この貫通孔と各鉄筋との間の隙間にモルタル等の充填材を充填し、これを硬化・固定すること等によって両鉄筋を一連に一体化するものである。このモルタル充填機械式継手自体には金属製のものが多用されるが、このモルタル充填機械式継手を用いた鉄筋の継手構造では、両鉄筋は互いに直接接触せず、また各鉄筋と金属製の継手とも互いに直接接触しないため、このモルタル充填機械式継手を用いた継手箇所で、両鉄筋は電気的に接続されているとはいえない。このため、このモルタル充填機械式継手を採用した鉄筋コンクリート構造では、鉄筋を引き下げ導線の代替えとすることができず、個別の引き下げ導線を設ける必要があった。
【0003】
これに対して、金属製のモルタル充填機械式継手に形成された貫通孔の下端の開口部に貫通孔内にすぼまる金属製電極を固着し、貫通孔の下端の開口部から貫通孔内に挿入した鉄筋を金属製電極に接触させることにより、鉄筋が金属製電極を介してモルタル充填機械式継手と電気的に接続され、モルタル充填機械式継手を用いた継手構造に導電性を付与することで、引き下げ導線として鉄筋を代用したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−280349号公報(段落〔0012〕、図2(a))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の金属製電極においては、鉄筋を金属製電極に電気的に接続させるのに専ら金属製電極のばね性を利用しているため、鉄筋に対する金属製電極による接触圧が充分に得られなかったり、接触圧が安定しないことにより接触圧にばらつきが発生するため、鉄筋と金属製電極との間の電気的な接触抵抗が下がらないという問題があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、避雷用コネクタと鉄筋との間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることを可能にした避雷用コネクタを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、両端に設けた開口のそれぞれから鉄筋が挿入され導電材によって筒状に形成された継手と、この継手に挿入された前記鉄筋とを電気的に接続する避雷用コネクタであって、前記継手の開口に取り付けられ中央部に前記鉄筋が挿入される挿入孔を有し導電材によってリング状に形成されたベースプレートと、このベースプレートの挿入孔の内周縁に互いに対向するように前記ベースプレートに立設され導電材によって塑性変形可能に形成された一対の接触片と、この一対の接触片を互いに近接する方向に押圧し押圧することにより当該接触片を前記鉄筋の周面に電気的に接触させる一対の押圧部材と、この一対の押圧部材のそれぞれの両端部間に設けられた一対の締結手段とによって構成したものである。
【0008】
本発明は、前記発明において、前記押圧部材の中央部に前記接触片を押圧する押圧凸部を設けたものである。
【0009】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記押圧凸部は前記一対の締結手段間を結んだ線における断面が円弧状に形成されているものである。
【0010】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記押圧部材に、前記接触片の両側部のそれぞれに係合する一対の第1の係合部を設けたものである。
【0011】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記接触片の先端部に、前記押圧部材が係合する第2の係合部を設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押圧部材によって押圧される一対の接触片が塑性変形するため、従来のように鉄筋を金属製電極に電気的に接続させるのに専ら金属製電極のばね性を利用していた場合と比較して、鉄筋に対する接触片の接触圧が充分かつ安定して得られるため、鉄筋と避雷用コネクタとの間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることができる。
【0013】
前記発明のうちの一つの発明によれば、押圧部材による接触片に対する押圧力を凸部を介して集中させることができるため、鉄筋に対する接触片の接触圧を容易に上げることができる。
【0014】
前記発明のうちの一つの発明によれば、一対の押圧部材間の間隔を狭くするとき、仮に互いの押圧部材が平行でなく傾いていたとしても、常に押圧凸部が接触片に同じ状態で押圧する。このため、接触片は鉄筋に対して同じ状態で塑性変形するから、接触片と鉄筋との間の接触圧が安定する。
【0015】
前記発明のうちの一つの発明によれば、作業中に避雷用コネクタが鉄筋から脱落するようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して一方の鉄筋をモルタル充填機械式継手内に挿入した状態を示す断面図、同図(B)は第1の避雷用コネクタを介して他方の鉄筋をモルタル充填機械式継手内に挿入した状態を示す断面図である。
【図2】第1の避雷用コネクタをモルタル充填機械式継手の開口部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】第1の避雷用コネクタにおいて、接触部材を鉄筋に電気的に接触させる操作について説明するための平面図であって、同図(A)は接触部材を引っ張る以前の状態を示し、同図(B)は接触部材を引張り支持部材を塑性変形させることにより、接触部材が鉄筋に電気的に接触した状態を示す。
【図4】モルタル充填機械式継手の開口部に取り付けた本発明に係る第2の避雷用コネクタを介してモルタル充填機械式継手と鉄筋とを電気的に接続した状態を示す斜視図である。
【図5】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタを構成するベースプレートを上方から視た斜視図、同図(B)は下方から視た斜視図である。
【図6】本発明に係る第2の避雷用コネクタを構成する押圧部材を締結手段によって連結した状態を示す斜視図である。
【図7】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタの平面図、同図(B)は同図(A)におけるVII(B)-VII(B) 線断面図である。
【図8】本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に挿入する状態を示す正面図である。
【図9】本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に電気的に接続した状態を示し、同図(A)は平面図、同図(B)は同図(A)におけるIX(B)-IX(B) 線断面図である。
【図10】図9(B)におけるX-X 線断面図である。
【図11】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に電気的に接続するときに押圧部材が撓む状態を示す平断面図、同図(B)は押圧部材に押圧凸部が設けられていない場合を説明するための平断面図である。
【図12】本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に電気的に接続するときに一対の押圧部材が互いに平行にならない場合を説明するための平断面図である。
【図13】本発明に係る避雷用コネクタを使用して鉄筋同士を電気的に接続する方法を説明するための断面図であって、同図(A)は接続する以前の状態を示し、同図(B)は接続した状態を示す。
【図14】本発明に係る避雷用コネクタを使用して鉄筋同士を電気的に接続する第2の方法を説明するための断面図であって、同図(A)は接続する以前の状態を示し、同図(B)は接続した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図14に基づいて説明する。
【0018】
図1に全体を符号1で示すモルタル充填機械式継手(以下、単に継手という)は、導電性を有する金属によって中央部に貫通孔2が設けられ円筒状に形成されており、両端のそれぞれに開口部3,4が設けられている。貫通孔2の中央部には係合突起5が突設されており、下部側の周面には継手1内にモルタルを注入するための注入孔6が設けられ、上部側の周面には注入されたモルタルを排出するための排出孔7が設けられている。
【0019】
次に、図2および図3を用いて、継手1の一方の開口3に取り付けられる第1の避雷用コネクタ10について説明する。図2に示すように、第1の避雷用コネクタ10は、導電性を有する金属によって形成されたベース11と、このベース11に固定され導電性を有する金属によって形成された支持部材12と、この支持部材12に固定され導電性を有する金属によって形成された接触部材13と、この接触部材13を引っ張る引張部材14とによって概ね構成されている。
【0020】
ベース11は平面視リング状に形成されており、中央部に後述する鉄筋を遊挿させる遊挿孔16が設けられており、下面には導電材によって弾性変形可能な係合片17が遊挿孔16の円周方向に等間隔をおいて複数本取り付けられている。18,18はベース2の外周縁の円周方向に互いに180°間隔をおいた部位に、上方に折り曲げ形成されて対向する一対の支持片である。
【0021】
接触部材13は、細長い長方形の弾性変形可能な金属製の板材によって平面視コ字状に形成されており、中央部に設けられた基部19と、この基部19の両端に設けられ互いに対向する一対の挟持部20,20とによって一連に形成されている。一対の挟持部20,20は互いに接離自在となるように弾性変形が可能であり、互いの間隔は後述する鉄筋25A,25Bの平坦部26,26間の間隔よりもわずかに小さく形成され、互いの先端部間の間隔はこれよりもわずかに先細に形成されている。
【0022】
一対の支持部材12,12はCuによって、偏平な直方体に形成された弾性材からなり、一端部がベース2の支持片18にボルトによって固定され、他端側が湾曲状に折り返され、この状態で他端部が接触部材4の挟持部20の先端部にボルトによって固定されることにより、全体が略J字状に弾性変形している。このように、支持部材12,12によって支持された接触部材4は、挟持部20,20が、図3(A)中遊挿孔16の下方側に位置するように、すなわち遊挿孔16に臨むことなく退避した位置に位置付けられている。
【0023】
引張部材14は、互いに対向する一対の腕部21,21とこれら腕部21,21を連結する基部22とからなり鋼線によって平面視コ字状に形成されており、腕部21,21の自由端部が接触部材4の挟持部20,20の先端部に中継端子20a,20aを介して取り付けられている。23は金属によって円筒状に形成された把持部材であって、中空部内に引張部材14の基部22が貫挿されている。
【0024】
この第1の避雷用コネクタ10は、図2に示すように継手1の一方の開口部3の内フランジ(図示せず)に係合片17を弾性変形させながら係合させることにより、遊挿孔16と開口部3とを一致させて開口部3に取り付けられ、係合片17を介してベース11と継手1とが電気的に接続される。この状態で、第1の避雷用コネクタ10の接触部材13は、図3(A)に示すように開口部3に臨まずに開口部3から退避している。
【0025】
図1ないし図3において、25A,25Bは外周部にねじ山が形成された鉄筋であって、外周面の円周方向に互いに180°間隔をおいた部位に平坦部26,26が軸線方向に延在するように設けられている。
【0026】
次に、図4ないし図6および図10を用いて、本発明の特徴である第2の避雷用コネクタ30について説明する。第2の避雷用コネクタ30は、図4に示すように、中央部に鉄筋25Aが挿入される挿入孔36を有し導電材によってリング状に形成されたベースプレート31と、このベースプレート31の挿入孔36の内周縁に互いに対向するようにベースプレート31に立設され導電材によって塑性変形可能に形成された一対の接触片33,33と、この一対の接触片33,33を互いに近接する方向に押圧し押圧することにより接触片33,33を鉄筋25の周面に電気的に接触させる一対の押圧部材34,34と、この一対の押圧部材34,34のそれぞれの両端部間に設けられた一対の締結手段35,35とによって概ね構成されている。
【0027】
ベースプレート31の裏面には、図5(B)に示すように導電材によって弾性変形可能に形成された複数の係合片32が円周方向に等角度の間隔をおいて取り付けられており、この係合片32を介して第2の避雷用コネクタ30が継手1の他方の開口部4に電気的に接続された状態で取り付けられる。
【0028】
接触片33は断面略L字状に形成され、一対の接触片33,33の互いの先端部(第2の係合部37b側の端部)間の間隔が、互いの基部(底部37a側の端部)間の間隔よりもわずかに大きくなるように、略直角に折り曲げられた底部37aがベースプレート31の裏面であって挿入孔36の周縁に取り付けられており、同図(A)に示すように先端部が互いに反対方向に折り曲げられ第2の係合部37bを形成している。
【0029】
押圧部材34は、図6に示すように押圧部38と、押圧部材34の全体の強度を上げるために互いに対向するように折り曲げられた対向部39,39とによって断面コ字状に形成されており、押圧部38の中央部に上記の接触片33を押圧する押圧凸部40が設けられている。押圧部38には、押圧凸部40を挟むように一対の第1の係合部としての係合突起41,41が突設されており、これら係合突起41,41間の間隔W1は、上記した接触片33の幅W2よりもやや大きく形成されている。また、押圧部38の両端部(係合突起41,41の外側)には、後述するボルト43が貫挿される貫挿孔42が設けられている。上記の押圧凸部40は、図6および図10に示すように、一対の貫挿孔42,42間(矢印C−D方向)を結んだ線における断面が円弧状に形成されている。一対の押圧部材34,34が、後述するように締結手段35によって連結されることにより、図6に示すように互いの押圧凸部40,40が向かい合う。
【0030】
締結手段35は、レンチ穴が形成された頭部43aを有するボルト43と、このボルト43のねじ部に螺合されるナット44とによって構成されている。
【0031】
次に、このように構成された第1および第2の避雷用コネクタ1,30を使用して、コンクリート構造体に埋設された鉄筋どうしを電気的に接続する方法について説明する。先ず、図4ないし図13を用いて、第2の避雷用コネクタ30を介して、鉄筋25Aを継手1に電気的に接続した上で、コンクリート構造体に埋設させる方法について説明する。
【0032】
一対のボルト43,43を、図6に示すように一方の押圧部材34の貫挿孔42,42から貫挿し、他方の押圧部材34の貫挿孔42,42内を貫挿させ、ボルト43のねじ部にナット44を螺合させることにより、一対の押圧部材34,34を一対のボルト43,43を介して連結する。ボルト43,43を介して連結された押圧部材34,34を、図5(A)に示すベースプレート31の上方から下降させ、押圧部材34,34間に接触片33,33を位置付けるようにして押圧部材34,34をベースプレート31上に載置する。
【0033】
次いで、ボルト43の頭部43aのレンチ穴に図示を省略したレンチを差し込み、ボルト43を回転させると、押圧部材34の一対の対向部39,39間に入り込んだナット44が対向部39,39によって回転が規制されるため、このナット44とボルト43の頭部43aとに挟持された一対の押圧部材34,34間の間隔が狭くなり、図7(B)に示すように、押圧凸部40,40が接触片33,33に対接する。この状態で、同図(A)に示すように、押圧部材34,34の係合突起41,41間に接触片33が位置付けられるため、各係合突起41が接触片33の両側部のそれぞれに挟まれることにより、押圧部材34,34の矢印C−D方向の移動が規制される。同時に、同図(B)に示すように、各押圧部材34の上方の対向部39が接触片33の第2の係合部37bに対向するため、押圧部材34,34の矢印A−B方向の移動が規制される。したがって、押圧部材34,34のベースプレート31からの脱落が規制される。
【0034】
この状態で、図8に示すように、下層階の鉄筋25Aの平坦部26,26を第2の避雷用コネクタ30の一対の接触片33,33の間を通すようにして、鉄筋25Aの一端側を遊挿孔36内を挿通させた後、継手1の開口部4に嵌合させたパッキン48を通して、鉄筋25Aの一部を継手1の貫通孔2内に挿入する。
【0035】
次いで、図9(B)に示すように、係合片32を弾性変形させながら、この係合片32を継手1の開口部4の外周部に嵌合させることにより、図4に示すように第2の避雷用コネクタ30が開口部4に取り付けられ、この係合片32を介してベースプレート31と継手1とが電気的に接続される。
【0036】
この状態で、ボルト43の頭部43aのレンチ穴にレンチを差し込み、ボルト43を締め付け、一対の押圧部材34,34間の間隔を狭めることにより、接触片33,33が鉄筋25Aの平坦部26,26に対接される。さらに、一対の押圧部材34,34間の間隔を狭めることにより、押圧凸部40,40によって一対の接触片33,33も互いの間隔が狭くなるように塑性変形し、接触片33と鉄筋25Aとが電気的に接続される。したがって、鉄筋25Aと継手1とが、第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続される。
【0037】
このように、押圧部材34,34の押圧によって接触片33,33が塑性変形するため、従来のように鉄筋を金属製電極に電気的に接続させるのに専ら金属製電極のばね性を利用していた場合と比較して、鉄筋25Aに対する接触片33,33の接触圧が充分かつ安定して得られるため、接触片33,33を介して鉄筋25Aとベースプレート31との間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることができる。
【0038】
このとき、接触片33の押圧が押圧凸部40によって行われるため、押圧部材34,34の押圧力が押圧凸部40に集中することになり、小さな押圧力によっても接触片33の塑性変形が充分に得られるから、鉄筋25Aに対する接触片33,33の接触圧をより一層大きくすることができる。
【0039】
ここで、矢印C−D方向の各端部間において二本のボルト43,43によって押圧部材34,34間の締め付けを行うと、図11(B)に示すように、押圧部材34,34の矢印C−D方向の両端部が互いに近接するように撓む。仮に、押圧部材34に押圧凸部40が設けられていない場合は、押圧部材34が撓むことにより、押圧部材34の押圧部38によって接触片33が押圧できない場合がある。
【0040】
これに対して、押圧部材34の矢印C−D方向の中央部に押圧凸部40が設けられていることにより、同図(A)に示すように、押圧部材34,34の矢印C−D方向の両端部が互いに近接するように撓んだとしても、常に押圧凸部40が接触片33に対接しているため、接触片33,33が押圧凸部40,40によって確実に押圧される。このため、接触片33と鉄筋25Aとの間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることができる。なお、図11は説明の便宜上、押圧部材34の撓んだ状態を誇張して描いている。
【0041】
また、一対の締結手段35,35によって一対の押圧部材34,34間の間隔を狭くするときに、上・下のボルト43,43の締め付け力が異なる場合、図12に示すように、押圧部材34がボルト43に対して直交することなく傾く場合がある。この場合、押圧凸部40の一対の締結手段35,35間を結んだ線(矢印C−D方向)における断面が湾曲状に形成されているため、押圧凸部40は押圧部材34がボルト43と直交している場合と同じ状態で接触片33を押圧する。このように、常に押圧凸部40が接触片33を同じ状態で押圧するので、接触片33は鉄筋25Aの平坦部26に対して同じ状態で塑性変形するから、接触片33と平坦部26との間の接触圧が安定する。
【0042】
このように第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続された複数対の継手1と鉄筋25Aとに、図13(A)に示すように、プレキャストコンクリート(PC)工法によってコンクリートを打設して、上端面50aに継手1の一方の開口部3が露呈するように、コンクリート構造体としての下層階のコンクリート柱50を形成する。
【0043】
次に、図3および図13を用いて、コンクリート柱50内に埋設された鉄筋25Aとコンクリート柱53内に埋設された鉄筋25Bとを電気的に接続する方法について説明する。先ず、コンクリート柱50に埋設された継手1の一方の開口部3に、第1の避雷用コネクタ10を取り付ける。
【0044】
次いで、PC工法によって形成された上層階のコンクリート柱53をクレーン等によって吊り上げる。このコンクリート柱53には、下層階のコンクリート柱50に埋設された複数の継手1に対応するように、予め複数本の鉄筋25Bが内部に埋設されており、これら鉄筋25Bの下部25bがコンクリート柱53の下端面53aから突出している。
【0045】
このような構成において、下層階のコンクリート柱50の上方に位置付ける。この状態で、この上層階のコンクリート柱53を下降させ、各鉄筋25Bの下部25bを第1の避雷用コネクタ10のそれぞれの遊挿孔16内に遊挿させ、図13(B)に示すように継手1の一方の開口部3から貫通孔2内に挿入する。
【0046】
上層階のコンクリート柱53の下端面53aと、下層階のコンクリート柱50の上端面50aとの間に、高さHの目地55を設ける。この状態で、第1の避雷用コネクタ10の把持部材23が目地55から、コンクリート柱50,53の外部に露呈する。把持部材23を把持して、図3(A)に示すように、矢印A方向に引っ張ることにより接触部材13が継手1の一方の開口部3から退避した状態から、同図(B)に示すように接触部材13が開口部3に進出して開口部3に臨み、支持部材12,12が塑性変形することにより、挟持部20,20が鉄筋25の各平坦部26,26に接触して挟持する状態が保持される。したがって、第1の避雷用コネクタ10を介して鉄筋25Bと継手1とが電気的に接続されるため、第1の避雷用コネクタ10、継手1および第2の避雷用コネクタ30を介して鉄筋25Bと鉄筋25Aとが電気的に接続される。
【0047】
鉄筋25Bと鉄筋25Aとが電気的に接続されたら、引張部材14の腕部21,21の目地55内に位置する部位21a,21a(図2参照)を切断して把持部材23を除去した後、目地55にモルタル(図示せず)を注入することにより、モルタルが目地55と継手1内とに充填される。このように鉄筋25Aと鉄筋25Bとが継手1を介して電気的に接続されることにより、これら鉄筋25A,25Bを避雷設備における引き下げ導線に適用することができる。
【0048】
次に、図14を用いて、本発明に係る第2の避雷用コネクタを使用して鉄筋どうしを電気的に接続する第2の方法について説明する。この第2の方法においては、下層階のコンクリート柱50と上層階のコンクリート柱(図示せず)とこれらの間に介在する梁60とが交叉する部位に設けられる仕口61とコンクリート柱50とを現場においてコンクリートを打設して形成するものである。この第2の方法が上述した第1の方法と異なる点は、継手1の開口部3に第1の避雷用コネクタ10ではなく第2の避雷用コネクタ30を取り付けた点にある。すなわち、継手1の両開口部3,4に共に第2の避雷用コネクタ30,30を取り付けてある。そして、鉄筋25Aと継手1とは、上述した第1の方法と同様に第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続されている。
【0049】
このような構成において、同図(A)に示すように鉄筋25Bを下降させ、下部25bを第2の避雷用コネクタ30の挿入孔36内に挿入させ、継手1の一方の開口部3から貫通孔2内に挿入することにより、二つの鉄筋25A,25Bに継手1を跨がせる。しかる後、開口部4に取り付けた第2の避雷用コネクタ30のボルト43を締め付け、押圧部材34,34によって、接触片33,33を塑性変形させることにより、第2の避雷用コネクタ30を介して鉄筋25Bと継手1とを電気的に接続する。
【0050】
したがって、既に、鉄筋25Aと継手1とは第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続されているため、鉄筋25Aと鉄筋25Bとが継手1を介して電気的に接続される。しかる後、継手1内にモルタル64を充填し、下層階のコンクリート柱50と仕口61をコンクリートを打設して形成する。この第2の方法においても、鉄筋25Aと鉄筋25Bとが継手1を介して電気的に接続されることにより、これら鉄筋25A,25Bを避雷設備における引き下げ導線に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…モルタル充填機械式継手(継手)、3,4…開口部、10…第1の避雷用コネクタ、25A,25B…鉄筋、26…平坦部、30…第2の避雷用コネクタ、31…ベースプレート、32…係合片、33…接触片、34…押圧部材、35…締結手段、36…挿入孔、37b…第2の係合部、40…押圧凸部、41…係合突起(第1の係合部)43…ボルト、44…ナット、50…下層階のコンクリート柱、53…上層階のコンクリート柱、55…目地。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部雷保護システムの引き下げ導線に適用することと、内部雷保護の等電位ボンディングとして利用することを目的とし、鉄筋と継手とを電気的に接続する避雷用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造りの建物や鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物の避雷針設備においては、JIS A 4201-2003 「建築物等の雷保護」の規格に準じて、2条以上の主鉄骨、主鉄筋をもって引き下げ導線に代行している。一方、鉄筋の継手構造の一つとして、モルタル充填機械式継手を用いるものは、連結すべき各鉄筋の端部を、モルタル充填機械式継手の貫通孔の両端部から差し込み、この貫通孔と各鉄筋との間の隙間にモルタル等の充填材を充填し、これを硬化・固定すること等によって両鉄筋を一連に一体化するものである。このモルタル充填機械式継手自体には金属製のものが多用されるが、このモルタル充填機械式継手を用いた鉄筋の継手構造では、両鉄筋は互いに直接接触せず、また各鉄筋と金属製の継手とも互いに直接接触しないため、このモルタル充填機械式継手を用いた継手箇所で、両鉄筋は電気的に接続されているとはいえない。このため、このモルタル充填機械式継手を採用した鉄筋コンクリート構造では、鉄筋を引き下げ導線の代替えとすることができず、個別の引き下げ導線を設ける必要があった。
【0003】
これに対して、金属製のモルタル充填機械式継手に形成された貫通孔の下端の開口部に貫通孔内にすぼまる金属製電極を固着し、貫通孔の下端の開口部から貫通孔内に挿入した鉄筋を金属製電極に接触させることにより、鉄筋が金属製電極を介してモルタル充填機械式継手と電気的に接続され、モルタル充填機械式継手を用いた継手構造に導電性を付与することで、引き下げ導線として鉄筋を代用したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−280349号公報(段落〔0012〕、図2(a))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の金属製電極においては、鉄筋を金属製電極に電気的に接続させるのに専ら金属製電極のばね性を利用しているため、鉄筋に対する金属製電極による接触圧が充分に得られなかったり、接触圧が安定しないことにより接触圧にばらつきが発生するため、鉄筋と金属製電極との間の電気的な接触抵抗が下がらないという問題があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、避雷用コネクタと鉄筋との間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることを可能にした避雷用コネクタを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、両端に設けた開口のそれぞれから鉄筋が挿入され導電材によって筒状に形成された継手と、この継手に挿入された前記鉄筋とを電気的に接続する避雷用コネクタであって、前記継手の開口に取り付けられ中央部に前記鉄筋が挿入される挿入孔を有し導電材によってリング状に形成されたベースプレートと、このベースプレートの挿入孔の内周縁に互いに対向するように前記ベースプレートに立設され導電材によって塑性変形可能に形成された一対の接触片と、この一対の接触片を互いに近接する方向に押圧し押圧することにより当該接触片を前記鉄筋の周面に電気的に接触させる一対の押圧部材と、この一対の押圧部材のそれぞれの両端部間に設けられた一対の締結手段とによって構成したものである。
【0008】
本発明は、前記発明において、前記押圧部材の中央部に前記接触片を押圧する押圧凸部を設けたものである。
【0009】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記押圧凸部は前記一対の締結手段間を結んだ線における断面が円弧状に形成されているものである。
【0010】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記押圧部材に、前記接触片の両側部のそれぞれに係合する一対の第1の係合部を設けたものである。
【0011】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記接触片の先端部に、前記押圧部材が係合する第2の係合部を設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押圧部材によって押圧される一対の接触片が塑性変形するため、従来のように鉄筋を金属製電極に電気的に接続させるのに専ら金属製電極のばね性を利用していた場合と比較して、鉄筋に対する接触片の接触圧が充分かつ安定して得られるため、鉄筋と避雷用コネクタとの間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることができる。
【0013】
前記発明のうちの一つの発明によれば、押圧部材による接触片に対する押圧力を凸部を介して集中させることができるため、鉄筋に対する接触片の接触圧を容易に上げることができる。
【0014】
前記発明のうちの一つの発明によれば、一対の押圧部材間の間隔を狭くするとき、仮に互いの押圧部材が平行でなく傾いていたとしても、常に押圧凸部が接触片に同じ状態で押圧する。このため、接触片は鉄筋に対して同じ状態で塑性変形するから、接触片と鉄筋との間の接触圧が安定する。
【0015】
前記発明のうちの一つの発明によれば、作業中に避雷用コネクタが鉄筋から脱落するようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して一方の鉄筋をモルタル充填機械式継手内に挿入した状態を示す断面図、同図(B)は第1の避雷用コネクタを介して他方の鉄筋をモルタル充填機械式継手内に挿入した状態を示す断面図である。
【図2】第1の避雷用コネクタをモルタル充填機械式継手の開口部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】第1の避雷用コネクタにおいて、接触部材を鉄筋に電気的に接触させる操作について説明するための平面図であって、同図(A)は接触部材を引っ張る以前の状態を示し、同図(B)は接触部材を引張り支持部材を塑性変形させることにより、接触部材が鉄筋に電気的に接触した状態を示す。
【図4】モルタル充填機械式継手の開口部に取り付けた本発明に係る第2の避雷用コネクタを介してモルタル充填機械式継手と鉄筋とを電気的に接続した状態を示す斜視図である。
【図5】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタを構成するベースプレートを上方から視た斜視図、同図(B)は下方から視た斜視図である。
【図6】本発明に係る第2の避雷用コネクタを構成する押圧部材を締結手段によって連結した状態を示す斜視図である。
【図7】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタの平面図、同図(B)は同図(A)におけるVII(B)-VII(B) 線断面図である。
【図8】本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に挿入する状態を示す正面図である。
【図9】本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に電気的に接続した状態を示し、同図(A)は平面図、同図(B)は同図(A)におけるIX(B)-IX(B) 線断面図である。
【図10】図9(B)におけるX-X 線断面図である。
【図11】同図(A)は本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に電気的に接続するときに押圧部材が撓む状態を示す平断面図、同図(B)は押圧部材に押圧凸部が設けられていない場合を説明するための平断面図である。
【図12】本発明に係る第2の避雷用コネクタを介して鉄筋をモルタル充填機械式継手内に電気的に接続するときに一対の押圧部材が互いに平行にならない場合を説明するための平断面図である。
【図13】本発明に係る避雷用コネクタを使用して鉄筋同士を電気的に接続する方法を説明するための断面図であって、同図(A)は接続する以前の状態を示し、同図(B)は接続した状態を示す。
【図14】本発明に係る避雷用コネクタを使用して鉄筋同士を電気的に接続する第2の方法を説明するための断面図であって、同図(A)は接続する以前の状態を示し、同図(B)は接続した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図14に基づいて説明する。
【0018】
図1に全体を符号1で示すモルタル充填機械式継手(以下、単に継手という)は、導電性を有する金属によって中央部に貫通孔2が設けられ円筒状に形成されており、両端のそれぞれに開口部3,4が設けられている。貫通孔2の中央部には係合突起5が突設されており、下部側の周面には継手1内にモルタルを注入するための注入孔6が設けられ、上部側の周面には注入されたモルタルを排出するための排出孔7が設けられている。
【0019】
次に、図2および図3を用いて、継手1の一方の開口3に取り付けられる第1の避雷用コネクタ10について説明する。図2に示すように、第1の避雷用コネクタ10は、導電性を有する金属によって形成されたベース11と、このベース11に固定され導電性を有する金属によって形成された支持部材12と、この支持部材12に固定され導電性を有する金属によって形成された接触部材13と、この接触部材13を引っ張る引張部材14とによって概ね構成されている。
【0020】
ベース11は平面視リング状に形成されており、中央部に後述する鉄筋を遊挿させる遊挿孔16が設けられており、下面には導電材によって弾性変形可能な係合片17が遊挿孔16の円周方向に等間隔をおいて複数本取り付けられている。18,18はベース2の外周縁の円周方向に互いに180°間隔をおいた部位に、上方に折り曲げ形成されて対向する一対の支持片である。
【0021】
接触部材13は、細長い長方形の弾性変形可能な金属製の板材によって平面視コ字状に形成されており、中央部に設けられた基部19と、この基部19の両端に設けられ互いに対向する一対の挟持部20,20とによって一連に形成されている。一対の挟持部20,20は互いに接離自在となるように弾性変形が可能であり、互いの間隔は後述する鉄筋25A,25Bの平坦部26,26間の間隔よりもわずかに小さく形成され、互いの先端部間の間隔はこれよりもわずかに先細に形成されている。
【0022】
一対の支持部材12,12はCuによって、偏平な直方体に形成された弾性材からなり、一端部がベース2の支持片18にボルトによって固定され、他端側が湾曲状に折り返され、この状態で他端部が接触部材4の挟持部20の先端部にボルトによって固定されることにより、全体が略J字状に弾性変形している。このように、支持部材12,12によって支持された接触部材4は、挟持部20,20が、図3(A)中遊挿孔16の下方側に位置するように、すなわち遊挿孔16に臨むことなく退避した位置に位置付けられている。
【0023】
引張部材14は、互いに対向する一対の腕部21,21とこれら腕部21,21を連結する基部22とからなり鋼線によって平面視コ字状に形成されており、腕部21,21の自由端部が接触部材4の挟持部20,20の先端部に中継端子20a,20aを介して取り付けられている。23は金属によって円筒状に形成された把持部材であって、中空部内に引張部材14の基部22が貫挿されている。
【0024】
この第1の避雷用コネクタ10は、図2に示すように継手1の一方の開口部3の内フランジ(図示せず)に係合片17を弾性変形させながら係合させることにより、遊挿孔16と開口部3とを一致させて開口部3に取り付けられ、係合片17を介してベース11と継手1とが電気的に接続される。この状態で、第1の避雷用コネクタ10の接触部材13は、図3(A)に示すように開口部3に臨まずに開口部3から退避している。
【0025】
図1ないし図3において、25A,25Bは外周部にねじ山が形成された鉄筋であって、外周面の円周方向に互いに180°間隔をおいた部位に平坦部26,26が軸線方向に延在するように設けられている。
【0026】
次に、図4ないし図6および図10を用いて、本発明の特徴である第2の避雷用コネクタ30について説明する。第2の避雷用コネクタ30は、図4に示すように、中央部に鉄筋25Aが挿入される挿入孔36を有し導電材によってリング状に形成されたベースプレート31と、このベースプレート31の挿入孔36の内周縁に互いに対向するようにベースプレート31に立設され導電材によって塑性変形可能に形成された一対の接触片33,33と、この一対の接触片33,33を互いに近接する方向に押圧し押圧することにより接触片33,33を鉄筋25の周面に電気的に接触させる一対の押圧部材34,34と、この一対の押圧部材34,34のそれぞれの両端部間に設けられた一対の締結手段35,35とによって概ね構成されている。
【0027】
ベースプレート31の裏面には、図5(B)に示すように導電材によって弾性変形可能に形成された複数の係合片32が円周方向に等角度の間隔をおいて取り付けられており、この係合片32を介して第2の避雷用コネクタ30が継手1の他方の開口部4に電気的に接続された状態で取り付けられる。
【0028】
接触片33は断面略L字状に形成され、一対の接触片33,33の互いの先端部(第2の係合部37b側の端部)間の間隔が、互いの基部(底部37a側の端部)間の間隔よりもわずかに大きくなるように、略直角に折り曲げられた底部37aがベースプレート31の裏面であって挿入孔36の周縁に取り付けられており、同図(A)に示すように先端部が互いに反対方向に折り曲げられ第2の係合部37bを形成している。
【0029】
押圧部材34は、図6に示すように押圧部38と、押圧部材34の全体の強度を上げるために互いに対向するように折り曲げられた対向部39,39とによって断面コ字状に形成されており、押圧部38の中央部に上記の接触片33を押圧する押圧凸部40が設けられている。押圧部38には、押圧凸部40を挟むように一対の第1の係合部としての係合突起41,41が突設されており、これら係合突起41,41間の間隔W1は、上記した接触片33の幅W2よりもやや大きく形成されている。また、押圧部38の両端部(係合突起41,41の外側)には、後述するボルト43が貫挿される貫挿孔42が設けられている。上記の押圧凸部40は、図6および図10に示すように、一対の貫挿孔42,42間(矢印C−D方向)を結んだ線における断面が円弧状に形成されている。一対の押圧部材34,34が、後述するように締結手段35によって連結されることにより、図6に示すように互いの押圧凸部40,40が向かい合う。
【0030】
締結手段35は、レンチ穴が形成された頭部43aを有するボルト43と、このボルト43のねじ部に螺合されるナット44とによって構成されている。
【0031】
次に、このように構成された第1および第2の避雷用コネクタ1,30を使用して、コンクリート構造体に埋設された鉄筋どうしを電気的に接続する方法について説明する。先ず、図4ないし図13を用いて、第2の避雷用コネクタ30を介して、鉄筋25Aを継手1に電気的に接続した上で、コンクリート構造体に埋設させる方法について説明する。
【0032】
一対のボルト43,43を、図6に示すように一方の押圧部材34の貫挿孔42,42から貫挿し、他方の押圧部材34の貫挿孔42,42内を貫挿させ、ボルト43のねじ部にナット44を螺合させることにより、一対の押圧部材34,34を一対のボルト43,43を介して連結する。ボルト43,43を介して連結された押圧部材34,34を、図5(A)に示すベースプレート31の上方から下降させ、押圧部材34,34間に接触片33,33を位置付けるようにして押圧部材34,34をベースプレート31上に載置する。
【0033】
次いで、ボルト43の頭部43aのレンチ穴に図示を省略したレンチを差し込み、ボルト43を回転させると、押圧部材34の一対の対向部39,39間に入り込んだナット44が対向部39,39によって回転が規制されるため、このナット44とボルト43の頭部43aとに挟持された一対の押圧部材34,34間の間隔が狭くなり、図7(B)に示すように、押圧凸部40,40が接触片33,33に対接する。この状態で、同図(A)に示すように、押圧部材34,34の係合突起41,41間に接触片33が位置付けられるため、各係合突起41が接触片33の両側部のそれぞれに挟まれることにより、押圧部材34,34の矢印C−D方向の移動が規制される。同時に、同図(B)に示すように、各押圧部材34の上方の対向部39が接触片33の第2の係合部37bに対向するため、押圧部材34,34の矢印A−B方向の移動が規制される。したがって、押圧部材34,34のベースプレート31からの脱落が規制される。
【0034】
この状態で、図8に示すように、下層階の鉄筋25Aの平坦部26,26を第2の避雷用コネクタ30の一対の接触片33,33の間を通すようにして、鉄筋25Aの一端側を遊挿孔36内を挿通させた後、継手1の開口部4に嵌合させたパッキン48を通して、鉄筋25Aの一部を継手1の貫通孔2内に挿入する。
【0035】
次いで、図9(B)に示すように、係合片32を弾性変形させながら、この係合片32を継手1の開口部4の外周部に嵌合させることにより、図4に示すように第2の避雷用コネクタ30が開口部4に取り付けられ、この係合片32を介してベースプレート31と継手1とが電気的に接続される。
【0036】
この状態で、ボルト43の頭部43aのレンチ穴にレンチを差し込み、ボルト43を締め付け、一対の押圧部材34,34間の間隔を狭めることにより、接触片33,33が鉄筋25Aの平坦部26,26に対接される。さらに、一対の押圧部材34,34間の間隔を狭めることにより、押圧凸部40,40によって一対の接触片33,33も互いの間隔が狭くなるように塑性変形し、接触片33と鉄筋25Aとが電気的に接続される。したがって、鉄筋25Aと継手1とが、第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続される。
【0037】
このように、押圧部材34,34の押圧によって接触片33,33が塑性変形するため、従来のように鉄筋を金属製電極に電気的に接続させるのに専ら金属製電極のばね性を利用していた場合と比較して、鉄筋25Aに対する接触片33,33の接触圧が充分かつ安定して得られるため、接触片33,33を介して鉄筋25Aとベースプレート31との間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることができる。
【0038】
このとき、接触片33の押圧が押圧凸部40によって行われるため、押圧部材34,34の押圧力が押圧凸部40に集中することになり、小さな押圧力によっても接触片33の塑性変形が充分に得られるから、鉄筋25Aに対する接触片33,33の接触圧をより一層大きくすることができる。
【0039】
ここで、矢印C−D方向の各端部間において二本のボルト43,43によって押圧部材34,34間の締め付けを行うと、図11(B)に示すように、押圧部材34,34の矢印C−D方向の両端部が互いに近接するように撓む。仮に、押圧部材34に押圧凸部40が設けられていない場合は、押圧部材34が撓むことにより、押圧部材34の押圧部38によって接触片33が押圧できない場合がある。
【0040】
これに対して、押圧部材34の矢印C−D方向の中央部に押圧凸部40が設けられていることにより、同図(A)に示すように、押圧部材34,34の矢印C−D方向の両端部が互いに近接するように撓んだとしても、常に押圧凸部40が接触片33に対接しているため、接触片33,33が押圧凸部40,40によって確実に押圧される。このため、接触片33と鉄筋25Aとの間の電気的な接触抵抗を安定的に下げることができる。なお、図11は説明の便宜上、押圧部材34の撓んだ状態を誇張して描いている。
【0041】
また、一対の締結手段35,35によって一対の押圧部材34,34間の間隔を狭くするときに、上・下のボルト43,43の締め付け力が異なる場合、図12に示すように、押圧部材34がボルト43に対して直交することなく傾く場合がある。この場合、押圧凸部40の一対の締結手段35,35間を結んだ線(矢印C−D方向)における断面が湾曲状に形成されているため、押圧凸部40は押圧部材34がボルト43と直交している場合と同じ状態で接触片33を押圧する。このように、常に押圧凸部40が接触片33を同じ状態で押圧するので、接触片33は鉄筋25Aの平坦部26に対して同じ状態で塑性変形するから、接触片33と平坦部26との間の接触圧が安定する。
【0042】
このように第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続された複数対の継手1と鉄筋25Aとに、図13(A)に示すように、プレキャストコンクリート(PC)工法によってコンクリートを打設して、上端面50aに継手1の一方の開口部3が露呈するように、コンクリート構造体としての下層階のコンクリート柱50を形成する。
【0043】
次に、図3および図13を用いて、コンクリート柱50内に埋設された鉄筋25Aとコンクリート柱53内に埋設された鉄筋25Bとを電気的に接続する方法について説明する。先ず、コンクリート柱50に埋設された継手1の一方の開口部3に、第1の避雷用コネクタ10を取り付ける。
【0044】
次いで、PC工法によって形成された上層階のコンクリート柱53をクレーン等によって吊り上げる。このコンクリート柱53には、下層階のコンクリート柱50に埋設された複数の継手1に対応するように、予め複数本の鉄筋25Bが内部に埋設されており、これら鉄筋25Bの下部25bがコンクリート柱53の下端面53aから突出している。
【0045】
このような構成において、下層階のコンクリート柱50の上方に位置付ける。この状態で、この上層階のコンクリート柱53を下降させ、各鉄筋25Bの下部25bを第1の避雷用コネクタ10のそれぞれの遊挿孔16内に遊挿させ、図13(B)に示すように継手1の一方の開口部3から貫通孔2内に挿入する。
【0046】
上層階のコンクリート柱53の下端面53aと、下層階のコンクリート柱50の上端面50aとの間に、高さHの目地55を設ける。この状態で、第1の避雷用コネクタ10の把持部材23が目地55から、コンクリート柱50,53の外部に露呈する。把持部材23を把持して、図3(A)に示すように、矢印A方向に引っ張ることにより接触部材13が継手1の一方の開口部3から退避した状態から、同図(B)に示すように接触部材13が開口部3に進出して開口部3に臨み、支持部材12,12が塑性変形することにより、挟持部20,20が鉄筋25の各平坦部26,26に接触して挟持する状態が保持される。したがって、第1の避雷用コネクタ10を介して鉄筋25Bと継手1とが電気的に接続されるため、第1の避雷用コネクタ10、継手1および第2の避雷用コネクタ30を介して鉄筋25Bと鉄筋25Aとが電気的に接続される。
【0047】
鉄筋25Bと鉄筋25Aとが電気的に接続されたら、引張部材14の腕部21,21の目地55内に位置する部位21a,21a(図2参照)を切断して把持部材23を除去した後、目地55にモルタル(図示せず)を注入することにより、モルタルが目地55と継手1内とに充填される。このように鉄筋25Aと鉄筋25Bとが継手1を介して電気的に接続されることにより、これら鉄筋25A,25Bを避雷設備における引き下げ導線に適用することができる。
【0048】
次に、図14を用いて、本発明に係る第2の避雷用コネクタを使用して鉄筋どうしを電気的に接続する第2の方法について説明する。この第2の方法においては、下層階のコンクリート柱50と上層階のコンクリート柱(図示せず)とこれらの間に介在する梁60とが交叉する部位に設けられる仕口61とコンクリート柱50とを現場においてコンクリートを打設して形成するものである。この第2の方法が上述した第1の方法と異なる点は、継手1の開口部3に第1の避雷用コネクタ10ではなく第2の避雷用コネクタ30を取り付けた点にある。すなわち、継手1の両開口部3,4に共に第2の避雷用コネクタ30,30を取り付けてある。そして、鉄筋25Aと継手1とは、上述した第1の方法と同様に第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続されている。
【0049】
このような構成において、同図(A)に示すように鉄筋25Bを下降させ、下部25bを第2の避雷用コネクタ30の挿入孔36内に挿入させ、継手1の一方の開口部3から貫通孔2内に挿入することにより、二つの鉄筋25A,25Bに継手1を跨がせる。しかる後、開口部4に取り付けた第2の避雷用コネクタ30のボルト43を締め付け、押圧部材34,34によって、接触片33,33を塑性変形させることにより、第2の避雷用コネクタ30を介して鉄筋25Bと継手1とを電気的に接続する。
【0050】
したがって、既に、鉄筋25Aと継手1とは第2の避雷用コネクタ30を介して電気的に接続されているため、鉄筋25Aと鉄筋25Bとが継手1を介して電気的に接続される。しかる後、継手1内にモルタル64を充填し、下層階のコンクリート柱50と仕口61をコンクリートを打設して形成する。この第2の方法においても、鉄筋25Aと鉄筋25Bとが継手1を介して電気的に接続されることにより、これら鉄筋25A,25Bを避雷設備における引き下げ導線に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…モルタル充填機械式継手(継手)、3,4…開口部、10…第1の避雷用コネクタ、25A,25B…鉄筋、26…平坦部、30…第2の避雷用コネクタ、31…ベースプレート、32…係合片、33…接触片、34…押圧部材、35…締結手段、36…挿入孔、37b…第2の係合部、40…押圧凸部、41…係合突起(第1の係合部)43…ボルト、44…ナット、50…下層階のコンクリート柱、53…上層階のコンクリート柱、55…目地。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に設けた開口のそれぞれから鉄筋が挿入され導電材によって筒状に形成された継手と、この継手に挿入された前記鉄筋とを電気的に接続する避雷用コネクタであって、
前記継手の開口に取り付けられ中央部に前記鉄筋が挿入される挿入孔を有し導電材によって形成されたベースプレートと、
このベースプレートの挿入孔の内周縁に互いに対向するように前記ベースプレートに立設され導電材によって塑性変形可能に形成された一対の接触片と、
この一対の接触片を互いに近接する方向に押圧し前記鉄筋の周面に電気的に接触させる一対の押圧部材と、
この一対の押圧部材のそれぞれの両端部間に設けられた一対の締結手段とによって構成したこと特徴とする避雷用コネクタ。
【請求項2】
前記押圧部材の中央部に前記接触片を押圧する押圧凸部を設けたことを特徴とする請求項1記載の避雷用コネクタ。
【請求項3】
前記押圧凸部は前記一対の締結手段間を結んだ線による断面が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の避雷用コネクタ。
【請求項4】
前記押圧部材に、前記接触片の両側部のそれぞれに係合する一対の第1の係合部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項記載の避雷用コネクタ。
【請求項5】
前記接触片の先端部に、前記押圧部材が係合する第2の係合部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項記載の避雷用コネクタ。
【請求項1】
両端に設けた開口のそれぞれから鉄筋が挿入され導電材によって筒状に形成された継手と、この継手に挿入された前記鉄筋とを電気的に接続する避雷用コネクタであって、
前記継手の開口に取り付けられ中央部に前記鉄筋が挿入される挿入孔を有し導電材によって形成されたベースプレートと、
このベースプレートの挿入孔の内周縁に互いに対向するように前記ベースプレートに立設され導電材によって塑性変形可能に形成された一対の接触片と、
この一対の接触片を互いに近接する方向に押圧し前記鉄筋の周面に電気的に接触させる一対の押圧部材と、
この一対の押圧部材のそれぞれの両端部間に設けられた一対の締結手段とによって構成したこと特徴とする避雷用コネクタ。
【請求項2】
前記押圧部材の中央部に前記接触片を押圧する押圧凸部を設けたことを特徴とする請求項1記載の避雷用コネクタ。
【請求項3】
前記押圧凸部は前記一対の締結手段間を結んだ線による断面が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の避雷用コネクタ。
【請求項4】
前記押圧部材に、前記接触片の両側部のそれぞれに係合する一対の第1の係合部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項記載の避雷用コネクタ。
【請求項5】
前記接触片の先端部に、前記押圧部材が係合する第2の係合部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項記載の避雷用コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−84376(P2012−84376A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229358(P2010−229358)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(598167707)橋本精密工業株式会社 (3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(598167707)橋本精密工業株式会社 (3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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