説明

還元剤の携行用容器収納装置

【課題】還元剤を車室内の未利用部分に収納することにより、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等を防止すると共に、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして音の発生を防止して、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させることを目的とする。
【解決手段】ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる公害物質を選択還元触媒の利用にて無害化する還元剤の携行用容器3収納装置において、水平方向の断面が略長方形で、上下方向に長い直方体をなし、上面の一端に還元剤の注入口311を設け、他端の上下方向中間部に上下方向に長い貫通孔35が形成された携行用容器3と、貫通孔35を巻回し、両端部に配設した第1及び第2面ファスナー52,53の係合により輪状に形成される帯状保持部材5と、該保持部材5を車室内のシートバックパネル2に係止するクリップ54とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる公害物質を選択還元触媒の利用にて無害化する還元剤の携行用容器収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン(以後「エンジン」と称す)の排気系には、エンジンから排出される排ガスに含まれ、有害物質とされるディーゼル排気微粒子〔以後「PM(Particulate Matter)」と称す〕及びNOx(窒素酸化物)が含まれており、PMはディーゼルパティキュレートフィルタ〔以後「DPF(DieselParticulate Filter)」と称す〕にて補足されるが、NOxは気体のため、尿素水を加水分解してNH(アンモニア)を発生させて、酸化触媒〔DOC(Diesel 0xidation Catalyst)〕で、NHを還元剤として排気ガス中に添加して、NOxをN(窒素)と、HO(水)に還元して、無害化する排ガス浄化装置を搭載して、エンジンを運転している。
【0003】
ところが、エンジンの燃料となる軽油は全国の給油サービスステーションにて容易に購入できるが、尿素水はエンジン(ディーゼル)を使用した車両、建設機械及び汎用機械に限定されるので、エンジン(ディーゼル)を使用した機器の販売店以外では購入し難いのが現状である。
その結果、車両の場合、目的地に向かう途中で排ガス中に添加する尿素水がなくなると法律的に車両を動かすことができなくなり、業務に与える影響が大きい。
その対応策として、数リットルの尿素水を入れた緊急用の補給容器を携行することが考えられている。
ところが、尿素水は尿素の規定濃度の維持および、異物混入等の防止管理を適切に行う必要があるが、適正な保管場所が特定できていないのが現状である。
【0004】
先行技術として、特開平7−304501号公報(特許文献1)が開示されている。
この特許文献1の技術の場合、本願添付の図6に示すもので、ゴミ袋等の袋の支持装置010はバス内などに設置される座席の背凭れ部012の背面012a等に取付けられ、合成樹脂製のゴミ袋014をその上部開口014aを開いた状態で、吊り下げ支持する枠体016と、この枠体016を保持する保持部018とを備える。
支持装置010は、座席の背凭れ部012の背面側12aに設けられた手掛け015に、保持部018の係止部022を介して取付けられる。保持部018は手掛け015に取付けた状態で枠体016にゴミ袋014を取付けると上部開口014aが開いた状態で、座席の背凭れ部012の背面側12aに吊り下げられる。
【0005】
そして、リング部016aの大きさはゴミ袋014の上部開口014aの大きさと略同じになっており、ゴミ袋014の上部をリング部016aの内側に下側から挿入して、外側へ折返し、ゴミ袋014に設けられた係合孔をリング部016aの外周部に設けられた突起部016eに係合させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−304501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゴミ袋014のように軽い物の場合は、手掛け015に保持部018を介してゴミ袋014を吊り下げ支持することはできるが、数リットルの尿素水を特許文献1のように吊り下げると車両の横揺れ等で支持部が手掛け015の幅に沿って前後左右にゆれ、内部の尿素水に不要な揺れを与え、尿素水容器とシートバックが当接するため音の発生が大きくなり、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を与える不具合が生ずる。
そこで、本発明はこのような不具合に鑑み成されたもので、還元剤を車室内の未利用部分に収納することにより、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等を防止すると共に、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして、音の発生を防止して音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)を選択還元触媒を利用にて無害化する排ガス浄化装置に用いる液体還元剤を収納して携行できるようにした還元剤携行用容器装置において、
水平方向の断面が略長方形で、上下方向に長い略扁平状直方体をなし、上部に上面部に沿った貫通孔によって形成された把持部と、前記上面の長手方向端縁と直交する面の前記容器の下面側に注入出を備えた前記容器を備え、
一端に前記還元剤の注入口を設け、他端の上下方向中間部に上下方向に長い貫通孔が形成された容器と、前記貫通孔を巻回し、両端部に配設した係合部材の係合により輪状に形成される帯状保持部材と、該保持部材を車室内の未利用部分に係止する係止部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる発明において、還元剤を車室内の未利用部分に収納することにより、車室内を有効利用できる。
また、還元剤を車室内に収納するので、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等が防止できる。
【0010】
また、本願発明において好ましくは、前記帯状の保持部材の幅は、前記貫通孔の前記上下方向の長さと略同等にするとよい。
【0011】
このような構成にすることにより、車両が左右に揺れた時に、保持部材と容器との間で帯状部材の幅方向に相対移動が発生するのを防止して、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして、音の発生を防止すると共に、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させる。
【0012】
また、本願発明において好ましくは、前記未利用部分はシートの背凭れ裏側であるよい。
【0013】
このような構成にすることにより、シートの背凭れ裏側部分は、特にディーゼルエンジンが主流のトラック等においては、未利用空間部分なので容器の配設は搭乗者の邪魔にならない。
また、シートの背凭れ裏側部分に容器を配設すると、還元剤を補給する際に、容易に取外すことができ、商品性の向上につながる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、還元剤を車室内の未利用部分に収納することにより、車室内を有効利用できると共に、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等が防止できる。
また、車両が左右に揺れた時に、保持部材と容器との間で帯状部材の幅方向に相対移動が発生するのを防止して、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして、音の発生を防止すると共に、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は本発明の第1実施形態にかかる還元剤の携行用容器収納装置の取付状態図を示す。
【図2】は本発明の第1実施形態にかかる携行用容器の縦断面概略図を示す。
【図3】は本発明の第1実施形態にかかる帯状保持部材の展開図を示す。
【図4】は本発明の第1実施形態にかかる図1のA−A断面図を示す。
【図5】は本発明の第2実施形態にかかる還元剤の携行用容器収納装置の取付状態図を示す。
【図6】は従来技術における、取付部概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
(第1実施形態)
【0017】
図1は本発明の携行用容器収納装置を運転席の背凭れ背面に装着した車両後方視の鳥瞰図である。1はドライバーシートで、ドライバーシート1の背凭れ2の背面側には帯状保持部材5によって還元剤の携行用容器3が装着されている。
【0018】
図2にその縦断面図を示すように、携行用容器3は、尿素水が貯溜される尿素水貯溜空間部312を有するタンク部31と、尿素水を車両側の尿素水タンクに補給する際に使用するノズル34を収納するノズル収納空間部321を有するノズル収納部32が一体的に形成されている。
また、携行用容器3は、水平方向の断面が略長方形で、上下方向に長い略扁平状直方体をなし、上部に上面部に沿った貫通孔35によって形成された把持部33と、上面の長手方向端縁と直交する面の前記容器の下面側に注入出口311を備えている。
注入出口311が設けられている同じ面で、注入出口311の反対側にはノズル34を収納するノズル収納空間部321(把持部33の内部空間部)を有するノズル収納部32が配置され、携行用容器3の上部にノズル収納空間部321が、下部に尿素水貯溜空間部312が配置された構造である。
【0019】
タンク部31の尿素水の注入出口311には外周部にネジ部が形成されている。該ネジ部に螺合して内部の尿素水の漏出を防止する第1キャップ36が備えられている。
また、ノズル34は、注入出口311の外周部のネジ部に螺合する基部341と、先端が細くなり、車両側の尿素水タンク(図示省略)の注入口に挿入される挿入口342と、基部341および挿入口342間を連結した蛇腹状のチューブ343で構成されている。
【0020】
ノズル収納空間部321にはノズル34の基部341がノズル収納空間部321内に入り込んで、ノズル34の取出しが不便にならないように、入り込み防止のストッパ323と、ノズル34をノズル収納空間部321に保持するための第2キャップ37と、第2キャップ37が螺合するネジ部322が形成されている。
【0021】
また、尿素水貯溜空間部312とノズル収納空間部321を仕切る中間壁313と、尿素水貯溜空間部312との間に、尿素水の注入口311の軸線L1に沿って長い貫通孔35が設けられている。
そして、貫通孔35の内周部のノズル収納空間部321部分は略直線状の円筒形状になっており、車両側の尿素水タンクに尿素水を注入する際のタンク把持部33となる。
【0022】
そして、尿素水貯溜空間部312に貯留されている尿素水を車両側の尿素水タンクに注入する時は、携行用容器3の注入口311にノズル34の基部341を螺合させて、車両側の尿素水タンクの注入口にノズル34の挿入口342を挿入して、尿素水がこぼれないようになっている。
【0023】
図3は帯状保持部材5の展開図を示し、帯状保持部材5は、全体が帯状をなし、幅方向の長さが携行用容器3の把持部33の長さと略同じか、若干短い程度の幅を有した柔軟部材(厚手の織布、又は、軟質樹脂を含浸させたベルト)でできた帯本体51と、帯本体51の片面側長手方向端部の一方側に固着され、帯本体51の幅と略同じ幅を有し、帯本体51の長手方向に沿った幅は携行用容器3を保持するのに十分な幅を有した第1面ファスナー52と、他方側に第1面ファスナー52とほぼ同形状を有し、第1面ファスナー52係合する第2面ファスナー53とで構成されている。
尚、第1面ファスナー52の帯本体51の長手方向両側部近傍で、且つ帯本体51の幅方向に沿って複数個(本実施形態では6個)配設された係止部材であるクリップ54とで構成されている。
また、第1及び第2面ファスナー52、53は帯本体51の長手方向の幅は、クリップ54間に若干の隙間を有した大きさとなっている。
【0024】
図4に示すように、帯状保持部材5は未利用部分であるドライバーシート1のシートバックパネル2に穿設された取付用孔(図示省略)にクリップ54を介して固定される。
そして、携行用容器3の貫通孔35に帯状保持部材5の第2面ファスナー53が固着されている端部を貫通させ、第1面ファスナー52と係合させて輪状に形成させて、携行用容器3をシートバックパネル2に保持させる。
尚、本実施形態では、帯本体51の係合部材として第1、第2面ファスナー52,53を、帯本体51とシートバックパネル2との係止部材としてクリップ54を利用したが、夫々を複数のホック又は複数のフックを使用しても同様の効果を得ることができる。
【0025】
このように、携行用容器3は、水平方向の断面が略長方形で、上下方向に長い直方体をなしているので、携行用容器3全体形状がブック型になっており、背凭れの裏側(シートバック背面側)の未利用部分に配置しても邪魔になり難い効果を有している。
また、上面の一端に前記還元剤の注入口311を設け、上面の他端の上下方向側面に把持部33を形成したので、車両側の尿素水タンクに尿素水を注入する際に携行用容器3が把持し易い構造となっている。
【0026】
さらに、帯本体51の幅を、把持部33の長さと略同じか、又は若干少なめにすることにより、車両が左右に揺れた際に、帯本体51と把持部33との相対移動が無くなり、携行用容器3自体の揺れが規制されると共に、揺れが規制されることにより内部の尿素水の揺れも少なくなり、尿素水の揺れにより発生する音も抑制でき、ドライバーに不安感を与えることも抑制できる効果を有している。
また、第1、第2面ファスナー52,53の大きさが、帯本体51の幅と略同じで、
帯本体51の長手方向の幅もクリップ54間に若干の隙間を有した程度の大きさにしたので、第1、第2面ファスナー52,53部に携行用容器3の揺れに対する捩れ(面上での捩れ)に対しても確実な保持力を発揮できる。
(第2実施形態)
【0027】
第1実施形態と同じものは同じ符号を付して内容の説明を省略する。
第2実施形態の携行用容器3の配置場所に係る図を示す。
図5は、中又は大型キャブオーバ型トラックのキャビン6の前方上方からを示した図で、車幅方向両側部にシート61,61が配設され、シート61,61の間にコンソールボックス62が配置されている。66はドア(図示省略)開口部を示す。
そして、シート61,61の後方に乗員が仮眠をとるベッド63が配置されている。ベッド63の後方はキャビン6の後面で、リヤウィンド64が配設されている。
キャビン6の後面から車両前方へ屈曲したコーナパネル部には補助ウィンドウ66が配設され、補助ウィンドウ66の下方に帯状保持部材5によって携行用容器3がキャビン6の内壁にクリップ54にて保持されている。
尚、取付構造は第1実施形態(図4参照)と同様なので省略する。
【0028】
このように、中大型キャブオーバトラックの場合、キャビン6は車幅方向の長さが2m以上あるので、ブック型の携行用容器3をキャビン6の内壁に沿わせて保持すれば、乗員が仮眠するのに邪魔にならない未利用部分に相当し、キャビン6内を有効に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
ディーゼルエンジンを搭載する機械の排気系に配設され、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス浄化を図る汎用機械、建設機械および、車両等に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 シート
2 シートバックパネル(未利用部分)
3 携行用容器
5 帯状保持部材
6 キャビン
31 タンク部
32 ノズル収納部
33 把持部
34 ノズル
35 貫通孔
51 帯本体
52 第1面ファスナー(係合部材)
53 第2面ファスナー(係合部材)
54 クリップ(係止部材)
312 尿素水貯溜空間部
321 ノズル収納空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)を選択還元触媒を利用にて無害化する排ガス浄化装置に用いる液体還元剤を収納して携行できるようにした還元剤携行用容器装置において、
水平方向の断面が略長方形で、上下方向に長い略扁平状直方体をなし、上部に上面部に沿った貫通孔によって形成された把持部と、前記上面の長手方向端縁と直交する面の前記容器の下面側に注入出を備えた前記容器を備え、
一端に前記還元剤の注入口を設け、他端の上下方向中間部に上下方向に長い貫通孔が形成された容器と、前記貫通孔を巻回し、両端部に配設した係合部材の係合により輪状に形成される帯状保持部材と、該保持部材を車室内の未利用部分に係止する係止部材とを備えたことを特徴とする還元剤の携行用容器収納装置。
【請求項2】
前記帯状の保持部材の幅は、前記貫通孔の前記上下方向の長さと略同等にしたことを特徴とする請求項1記載の還元剤の携行用容器収納装置。
【請求項3】
前記未利用部分はシートの背凭れ裏側であることを特徴とする請求項1記載の還元剤の携行用容器収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−121513(P2012−121513A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275568(P2010−275568)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】