説明

還元型補酵素Q10を安定化するための方法並びに組成物

【課題】本発明は、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な還元型補酵素Q10を安定化するための方法並びに組成物を提供する。
【解決手段】還元型補酵素Q10、油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールを含有してなり、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない組成物とする。また、還元型補酵素Q10、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、油脂及び/又はポリオールを含有する還元型補酵素Q10含有組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型補酵素Q10の安定化方法、並びに、還元型補酵素Q10を安定に保持することができる組成物に関する。還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10と比較して高い経口吸収性を示し、優れた食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により補酵素Q10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型補酵素Q10区分を濃縮する方法等により得られることが知られている(特許文献1参照)。この場合には、上記還元型補酵素Q10中に含まれる酸化型補酵素Q10を、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)等の一般的な還元剤を用いて還元した後、クロマトグラフィーによる濃縮を行っても良いこと、また、還元型補酵素Q10は、既存の高純度補酵素Q10に上記還元剤を作用させる方法によっても得られることが、該公報中に記載されている。
しかしながら、このようにして得られる還元型補酵素Q10は、必ずしも純度が高い状態では取得できず、例えば、酸化型補酵素Q10をはじめとする不純物を含有する低純度結晶や油状物、半固体状として得られやすい。
【0003】
本発明者らは、鋭意検討の結果、高品質の還元型補酵素Q10を得るための製法を確立し特許出願した(特許文献2〜11参照)。
しかしながら、還元型補酵素Q10は、分子酸素によって酸化型補酵素Q10に酸化されやすく、上記特許出願のような方法により高品質の還元型補酵素Q10を製造した場合でも、還元型補酵素Q10を食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等或いはそれらの素材や組成物に加工する際、及び/又は、加工後保存する際、の安定化が重要な課題として残されている。上記の加工や保存に際して、完全な酸素の除去或いは遮断は極めて難しく、特に加工時の加温や長期にわたる保存において、残存する或いは混入する酸素が大きな悪影響を及ぼす。上記酸化は、酸化型補酵素Q10の副生といった品質面の問題に直結する。
【0004】
このように還元型補酵素Q10を安定化する(酸化から防護する)ことは非常に重要な課題であるが、現在まで還元型補酵素Q10が市販されていないために、還元型補酵素Q10を安定に保持するための方法及び組成物に関する研究はほとんどなされていない。わずかに、還元剤を共存させた組成物並びにその製造法について記述した例(特許文献12参照)を認めるのみである。当該文献には、
1)還元型補酵素Q10、還元型補酵素Q10が酸化型補酵素Q10に酸化されるのを抑制するために有効な量の還元剤、及び、上記還元型補酵素Q10と上記還元剤を溶解するために有効な量の界面活性剤又は植物油又はこれらの混合物、そして必要に応じて溶媒からなる組成物、
2)上記組成物をゼラチンカプセル又はタブレットに製剤化した経口投与のための組成物、さらに、
3)酸化型補酵素Q10並びに還元剤を用いてin situで還元型補酵素Q10を含有する上記組成物を調製する方法
が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献12には、組成物中に含まれる還元型補酵素Q10の品質や安定化効果等に関する詳細な記述はない。また、上記の組成物やその調製方法は、組成物に複数の役割(すなわち、第一に酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に還元する反応の場としての役割、第二に還元型補酵素Q10を安定に保持する役割)を持たせるため、非常に複雑・煩雑なものとなっている。
【0006】
さらに、上記組成物やその調製方法においては、反応混合物がそのまま用いられているために、必ずしも安全であるとは言い難い点に注目すべきである。具体的には、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に還元する際に還元剤としてアスコルビン酸類を用いているが、このアスコルビン酸類が酸化されて相当量のデヒドロアスコルビン酸、2,3−ジケトグロン酸、スレオン酸、シュウ酸等を生じ、それが上記組成物中に混入する点である。デヒドロアスコルビン酸類や分解により生成したシュウ酸は、アスコルビン酸類とは異なり、有害性が高い。例えば、肝臓や腎臓中の過酸化脂質量の増加と抗酸化物質の減少や腎臓中のシュウ酸量の増加が報告されており、酸化ストレスに対する抵抗力の低下や尿管結石を発症し易い(非特許文献1参照)等の副作用が懸念される。
【0007】
また、還元型補酵素Q10を含有する組成物としては、前記特許文献1には、補酵素Q10(酸化型:還元型=5:95)0.3gとオリーブ油6.0ml(5.45g)からなる組成物(組成物中の還元型補酵素Q10の含有率:4.96重量%)、並びに、補酵素Q10(酸化型:還元型=15:85)20重量部、ビタミンE15重量部及び大豆油350重量部からなる組成物(組成物中の還元型補酵素Q10の含有率:4.42重量%、補酵素Q10を除いた系を基準とするビタミンE含有率:4.11重量%)が開示されている。
しかしながら、前記特許文献1には、還元型補酵素Q10の安定性等に関する記述は全くなく、また、本発明者らが検討した結果、上記組成物は還元型補酵素Q10を安定に保持するための組成物としては必ずしも好ましいものではないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−109933号公報
【特許文献2】特願2002−114854
【特許文献3】特願2002−114871
【特許文献4】特願2002−114872
【特許文献5】特願2002−114873
【特許文献6】特願2002−114874
【特許文献7】特願2002−114875
【特許文献8】特願2002−114876
【特許文献9】特願2002−114877
【特許文献10】特願2002−114878
【特許文献11】特願2002−114879
【特許文献12】WO01/52822号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ニュートリション リサーチ(Nutriton Research)13巻、667−676項、1993年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑み、還元型補酵素Q10を含有する食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等或いはそれらの素材や組成物に加工するに際して、及び/又は、加工後保存するに際して、還元型補酵素Q10を酸化から防護して安定に保持するための簡便且つ好適な方法、並びに組成物や経口投与形態を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等或いはそれらの素材や組成物の調製にこれまで一般的に使用されてきた成分が、還元型補酵素Q10の安定化(すなわち、酸化からの防護)に対して必ずしも好適に作用しないこと、さらには、複雑・煩雑な組成物を調製しなくとも、還元型補酵素Q10が油脂及び/又はポリオールの存在下では、分子酸素による酸化から驚くほど好適に防護されることを見出した。
【0012】
さらに、生体内での吸収性向上を目的として幅広く用いられるTweenやSpan(いずれも界面活性剤(乳化剤))の共存・添加が、油脂及び/又はポリオールによる上記の還元型補酵素Q10の安定化効果を著しく阻害するのに対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、驚くべきことに、その共存・添加により油脂及び/又はポリオールの安定化効果を阻害しにくく、極めて好適な界面活性剤(乳化剤)であることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明の第一は、還元型補酵素Q10を、主成分としての油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールと混合して、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない組成物とし、還元型補酵素Q10を酸化から防護することを特徴とする、還元型補酵素Q10の安定化方法に関する。
また、本発明の第二は、還元型補酵素Q10、油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールを含有してなり、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しないものであることを特徴とする組成物に関する。
さらに、本発明の第三は、還元型補酵素Q10、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、油脂及び/又はポリオールを含有することを特徴とする還元型補酵素Q10含有組成物に関する。
【0014】
本発明によれば、ことさらに複数の成分を添加することなく、安定で且つ好適な還元型補酵素Q10の組成物を提供することができる。また、近年の天然志向に適する組成物、すなわち、還元型補酵素Q10を天然の基材を用いて調製(加工)した組成物を提供することもできる。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、補酵素Q10とのみ記載した場合は、酸化型、還元型を問わず、両者が混在する場合には混合物全体を表すものである。
【0016】
まず、本発明の第一及び第二について説明する。
本発明の第一は、還元型補酵素Q10を、主成分としての油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールと混合して、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない組成物とし、還元型補酵素Q10を酸化から防護する、還元型補酵素Q10の安定化方法である。
また、本発明の第二は、還元型補酵素Q10、油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールを含有してなり、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない組成物である。
このように、本発明の第一及び第二においては、分子酸素による還元型補酵素Q10の酸化型補酵素Q10への酸化を抑制する為に、油脂及び/又はポリオールを用いる。
【0017】
本発明において、還元型補酵素Q10は、還元型補酵素Q10単独でも良く、また、酸化型補酵素Q10との混合物であっても良い。上記混合物の場合、還元型補酵素Q10の、補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の総量)に占める割合は、特に制限されないが、例えば20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは96重量%以上である。上限は100重量%であり、特に限定されないが、通常99.9重量%以下である。
【0018】
上記油脂及び/又はポリオールとしては、食用又は医薬用に許容されるものであるのが好ましい。
上記油脂としては、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、アボガド油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、さらに、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、脂肪酸の部分グリセリド、リン脂質等も使用しうる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリド等を挙げることができる。また、脂肪酸の部分グリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリド等を挙げることができる。さらに、リン脂質としては、例えば、レシチン等が挙げられる。
【0019】
上記油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から、植物油脂、合成油脂や加工油脂が好ましい。これらは油脂の価格、還元型補酵素Q10の安定性や、補酵素Q10の溶解性等を考慮して選定するのが好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、MCT等が好ましく、米油、大豆油、菜種油、MCT等がより好ましい。なお、補酵素Q10の溶解性や生体での吸収性の観点からは、MCTを特に好適に使用することができる。
なお、還元型補酵素Q10の安定化効果(酸化防護効果)の点で、オリーブ油は他の油脂に比べて若干劣る。
【0020】
上記ポリオールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量300〜1000のポリエチレングリコール)等の、食用又は医薬用に有用で安全なポリオールを使用するのが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。特にグリセリンを好ましく使用しうる。
【0021】
上記油脂、上記ポリオールは、それぞれ単独でも使用できるし、上記油脂同士の混合物、上記ポリオール同士の混合物、或いは、油脂及びポリオールの混合物としても使用しうる。
上記組成物においては、上記の油脂とポリオールの量比は、特に制限されないが、補酵素Q10の溶解性も考慮して、油脂/(油脂+ポリオール)の重量比として、通常1/10以上、好ましくは1/5以上、より好ましくは1/2以上、さらに好ましくは2/3以上である。言うまでもなく、ポリオールを含まない場合も好適である。
【0022】
また、上記組成物は、還元型補酵素Q10を含有し、上記の油脂及び/又はポリオールを主成分とするものであるが、当該油脂及び/又はポリオールの含有率が高いものが好ましく用いられうる。当該含有率としては、特に制限されないが、補酵素Q10を除いた系を基準として、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは85重量%以上である。
なお、本明細書においては、「補酵素Q10を除いた系を基準として」とは、組成物の全重量から補酵素Q10の重量を差し引いた重量を基準とすることを意味する。
【0023】
上記組成物においては、還元型補酵素Q10は一般に溶解又は懸濁されているが、使用する油脂やポリオールの種類により、組成物は液体又は固体又はスラリーの形態を取り得る。
さらに、上記組成物は、還元型補酵素Q10、油脂及び/又はポリオールのみからなるものでもよいし、さらに他の成分を含有するものであってもよい。さらに他の成分を含有する場合には、油脂及び/又はポリオールによる還元型補酵素Q10の安定化を、実質的に阻害しない組成物とすることが好ましい。
【0024】
例えば、ビタミンEは、安定化剤や酸化防止剤として一般によく使用される成分であるが、前記特開平10−109933号公報に記載の組成物のように、多量(補酵素Q10を除いた系を基準として4.11重量%)に含まれると、還元型補酵素Q10の安定化を阻害することが確認された。従って、ビタミンEは、本発明における必須成分ではなく、組成物の用途によりビタミンEを使用する場合は、補酵素Q10を除いた系を基準として4重量%未満に最小化すべきである。
【0025】
また、例えば、先述の如く、界面活性剤(乳化剤)としてのTweenやSpanの共存が、還元型補酵素Q10の安定化を阻害することも確認された。従って、これらも本発明における必須成分ではない。組成物の用途により、これらを使用する場合は、必要最小量、例えば、補酵素Q10を除いた系を基準として、Tween及びSpanの合計量として、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下に制限するのが好ましい。
【0026】
言うまでもなく、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない成分や、実質的に阻害しない量の添加は許容されうるし、また、そのような成分は数多く存在するであろう。この観点から、上記の本発明は、還元型補酵素Q10を含有し、主成分が油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールからなり、且つ、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しないような組成物とすることを、発明の本質として規定するものである。上記の本発明の最も単純な構成は、言うまでもなく、還元型補酵素Q10と油脂及び/又はポリオールのみからなる組成物、並びに、当該構成とすることにより還元型補酵素Q10を安定化する方法である。
【0027】
ここで、「還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない」とは、油脂及び/又はポリオール以外の成分が、油脂及び/又はポリオールが本来有する酸化防護効果を5%より多く損なわないことを意味する。すなわち、還元型補酵素Q10と油脂及び/又はポリオールのみからなる組成物を、空気中、40℃、遮光条件下に3日保存した後の還元型補酵素Q10保持率を100%として、油脂及び/又はポリオール以外の成分をさらに添加した組成物を同条件で保存した場合に、95%以上、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上の保持率を示すことを表す。
【0028】
なお、本発明の第一、第二においては、目的に応じて還元作用のある成分を添加してもよいが、従来の組成物とは異なり、還元剤を除いた組成でも還元型補酵素Q10を安定に保持することができる。
【0029】
次に、本発明の第三について説明する。本発明の第三は、還元型補酵素Q10、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、油脂及び/又はポリオールを含有することを特徴とする還元型補酵素Q10含有組成物である。
本発明の第三においては、分子酸素による還元型補酵素Q10から酸化型補酵素Q10への酸化を抑制する為に、油脂及び/又はポリオールを用い、さらに、上記油脂及び/又はポリオールによる安定化効果(酸化防護効果)を充分に保持しうる界面活性剤(乳化剤)として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸エステルの1種であるが、モノグリセリン脂肪酸エステル(有機酸モノグリセリドを含む)やポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等の他のグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合とは異なり、還元型補酵素Q10の安定化と生体での高吸収性を両立することが可能となる。
【0030】
本発明において、還元型補酵素Q10は、還元型補酵素Q10単独でも良く、また、酸化型補酵素Q10との混合物であっても良い。上記混合物の場合、還元型補酵素Q10の、補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の総量)に占める割合は、特に制限されないが、例えば20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは96重量%以上である。上限は100重量%であり、特に限定されないが、通常99.9重量%以下である。
【0031】
本発明において使用しうるポリグリセリン脂肪酸エステルは、式(1)
【0032】
【化1】

【0033】
で表される。上記式(1)において、nは1〜29の整数を表す。Rはそれぞれ独立して炭素数2〜22の脂肪酸残基又は水素原子を表すが、全てのRが水素原子となることはない。すなわち、上記式(1)で表されるポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、脂肪酸残基の数は1以上であれば特に制限されない。
【0034】
好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル中の脂肪酸残基の数/グリセリンの重合度との比が約1/4〜約1/2である。ここで、グリセリンの重合度とは、重合したグリセリンの分子数を表す。例えば、ジグリセリンモノカプリレートの場合、脂肪酸残基の数は1(モノ)、グリセリンの重合度は2(ジ)であるので、上記比率は1/2となる。なお、式(1)中に脂肪酸残基が2つ以上存在する場合は、それぞれの脂肪酸残基は同一であっても良く、異なっていても良いが、一般に同一であるものが入手の容易さ等の観点から好ましい。
【0035】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に制限されないが、還元型補酵素Q10の安定性や吸収性を考慮して、HLBが、下限として、通常4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、特に好ましくは8以上であり、また、上限として、通常12以下、好ましくは11以下、より好ましくは10以下であるものが好適である。
【0036】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンジカプリレート、ジグリセリントリカプリレート、ジグリセリンテトラカプリレート、トリグリセリンモノカプリレート、トリグリセリンジカプリレート、トリグリセリントリカプリレート、トリグリセリンテトラカプリレート、トリグリセリンペンタカプリレート、テトラグリセリンモノカプリレート、テトラグリセリンジカプリレート、テトラグリセリントリカプリレート、テトラグリセリンテトラカプリレート、テトラグリセリンペンタカプリレート、テトラグリセリンヘキサカプリレート、ペンタグリセリンモノカプリレート、ペンタグリセリンジカプリレート、ペンタグリセリントリカプリレート、ペンタグリセリンテトラカプリレート、ペンタグリセリンペンタカプリレート、ペンタグリセリンヘキサカプリレート、ペンタグリセリンヘプタカプリレート、ヘキサグリセリンモノカプリレート、ヘキサグリセリンジカプリレート、ヘキサグリセリントリカプリレート、ヘキサグリセリンテトラカプリレート、ヘキサグリセリンペンタカプリレート、ヘキサグリセリンヘキサカプリレート、ヘキサグリセリンヘプタカプリレート、ヘキサグリセリンオクタカプリレート、ヘプタグリセリンモノカプリレート、ヘプタグリセリンジカプリレート、ヘプタグリセリントリカプリレート、ヘプタグリセリンテトラカプリレート、ヘプタグリセリンペンタカプリレート、ヘプタグリセリンヘキサカプリレート、ヘプタグリセリンへプタカプリレート、ヘプタグリセリンオクタカプリレート、ヘプタグリセリンノナカプリレート、オクタグリセリンモノカプリレート、オクタグリセリンジカプリレート、オクタグリセリントリカプリレート、オクタグリセリンテトラカプリレート、オクタグリセリンペンタカプリレート、オクタグリセリンヘキサカプリレート、オクタグリセリンヘプタカプリレート、オクタグリセリンオクタカプリレート、オクタグリセリンノナカプリレート、オクタグリセリンデカカプリレート、ノナグリセリンモノカプリレート、ノナグリセリンジカプリレート、ノナグリセリントリカプリレート、ノナグリセリンテトラカプリレート、ノナグリセリンペンタカプリレート、ノナグリセリンヘキサカプリレート、ノナグリセリンヘプタカプリレート、ノナグリセリンオクタカプリレート、ノナグリセリンノナカプリレート、ノナグリセリンデカカプリレート、ノナグリセリンウンデカカプリレート、デカグリセリンモノカプリレート、デカグリセリンジカプリレート、デカグリセリントリカプリレート、デカグリセリンテトラカプリレート、デカグリセリンペンタカプリレート、デカグリセリンヘキサカプリレート、デカグリセリンヘプタカプリレート、デカグリセリンオクタカプリレート、デカグリセリンノナカプリレート、デカグリセリンデカカプリレート、デカグリセリンウンデカカプリレート、デカグリセリンドデカカプリレート、ジグリセリンモノカプレート、ジグリセリンジカプレート、ジグリセリントリカプレート、ジグリセリンテトラカプレート、トリグリセリンモノカプレート、トリグリセリンジカプレート、トリグリセリントリカプレート、トリグリセリンテトラカプレート、トリグリセリントリカプレート、トリグリセリンテトラカプレート、トリグリセリンペンタカプレート、テトラグリセリンモノカプレート、テトラグリセリンジカプレート、テトラグリセリントリカプレート、テトラグリセリンテトラカプレート、テトラグリセリンペンタカプレート、テトラグリセリンヘキサカプレート、ペンタグリセリンモノカプレート、ペンタグリセリンジカプレート、ペンタグリセリントリカプレート、ペンタグリセリンテトラカプレート、ペンタグリセリンペンタカプレート、ペンタグリセリンヘキサカプレート、ペンタグリセリンヘプタカプレート、ヘキサグリセリンモノカプレート、ヘキサグリセリンジカプレート、ヘキサグリセリントリカプレート、ヘキサグリセリンテトラカプレート、ヘキサグリセリンペンタカプレート、ヘキサグリセリンヘキサカプレート、ヘキサグリセリンヘプタカプレート、ヘキサグリセリンオクタカプレート、ヘプタグリセリンモノカプレート、ヘプタグリセリンジカプレート、ヘプタグリセリントリカプレート、ヘプタグリセリンテトラカプレート、ヘプタグリセリンペンタカプレート、ヘプタグリセリンヘキサカプレート、ヘプタグリセリンへプタカプレート、ヘプタグリセリンオクタカプレート、ヘプタグリセリンノナカプレート、オクタグリセリンモノカプレート、オクタグリセリンジカプレート、オクタグリセリントリカプレート、オクタグリセリンテトラカプレート、オクタグリセリンペンタカプレート、オクタグリセリンヘキサカプレート、オクタグリセリンヘプタカプレート、オクタグリセリンオクタカプレート、オクタグリセリンノナカプレート、オクタグリセリンデカカプレート、ノナグリセリンモノカプレート、ノナグリセリンジカプレート、ノナグリセリントリカプレート、ノナグリセリンテトラカプレート、ノナグリセリンペンタカプレート、ノナグリセリンヘキサカプレート、ノナグリセリンヘプタカプレート、ノナグリセリンオクタカプレート、ノナグリセリンノナカプレート、ノナグリセリンデカカプレート、ノナグリセリンウンデカカプレート、デカグリセリンモノカプレート、デカグリセリンジカプレート、デカグリセリントリカプレート、デカグリセリンテトラカプレート、デカグリセリンペンタカプレート、デカグリセリンヘキサカプレート、デカグリセリンヘプタカプレート、デカグリセリンオクタカプレート、デカグリセリンノナカプレート、デカグリセリンデカカプレート、デカグリセリンウンデカカプレート、デカグリセリンドデカカプレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリントリラウレート、ジグリセリンテトララウレート、トリグリセリンモノラウレート、トリグリセリンジラウレート、トリグリセリントリラウレート、トリグリセリンテトララウレート、トリグリセリントリラウレート、トリグリセリンテトララウレート、トリグリセリンペンタラウレート、テトラグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンジラウレート、テトラグリセリントリラウレート、テトラグリセリンテトララウレート、テトラグリセリンペンタラウレート、テトラグリセリンヘキサラウレート、ペンタグリセリンモノラウレート、ペンタグリセリンジラウレート、ペンタグリセリントリラウレート、ペンタグリセリンテトララウレート、ペンタグリセリンペンタラウレート、ペンタグリセリンヘキサラウレート、ペンタグリセリンヘプタラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンジラウレート、ヘキサグリセリントリラウレート、ヘキサグリセリンテトララウレート、ヘキサグリセリンペンタラウレート、ヘキサグリセリンヘキサラウレート、ヘキサグリセリンヘプタラウレート、ヘキサグリセリンオクタラウレート、ヘプタグリセリンモノラウレート、ヘプタグリセリンジラウレート、ヘプタグリセリントリラウレート、ヘプタグリセリンテトララウレート、ヘプタグリセリンペンタラウレート、ヘプタグリセリンヘキサラウレート、ヘプタグリセリンへプタラウレート、ヘプタグリセリンオクタラウレート、ヘプタグリセリンノナラウレート、オクタグリセリンモノラウレート、オクタグリセリンジラウレート、オクタグリセリントリラウレート、オクタグリセリンテトララウレート、オクタグリセリンペンタラウレート、オクタグリセリンヘキサラウレート、オクタグリセリンヘプタラウレート、オクタグリセリンオクタラウレート、オクタグリセリンノナラウレート、オクタグリセリンデカラウレート、ノナグリセリンモノラウレート、ノナグリセリンジラウレート、ノナグリセリントリラウレート、ノナグリセリンテトララウレート、ノナグリセリンペンタラウレート、ノナグリセリンヘキサラウレート、ノナグリセリンヘプタラウレート、ノナグリセリンオクタラウレート、ノナグリセリンノナラウレート、ノナグリセリンデカラウレート、ノナグリセリンウンデカラウレート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンジラウレート、デカグリセリントリラウレート、デカグリセリンテトララウレート、デカグリセリンペンタラウレート、デカグリセリンヘキサラウレート、デカグリセリンヘプタラウレート、デカグリセリンオクタラウレート、デカグリセリンノナラウレート、デカグリセリンデカラウレート、デカグリセリンウンデカラウレート、デカグリセリンドデカラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンジミリステート、ジグリセリントリミリステート、ジグリセリンテトラミリステート、トリグリセリンモノミリステート、トリグリセリンジミリステート、トリグリセリントリミリステート、トリグリセリンテトラミリステート、トリグリセリントリミリステート、トリグリセリンテトラミリステート、トリグリセリンペンタミリステート、テトラグリセリンモノミリステート、テトラグリセリンジミリステート、テトラグリセリントリミリステート、テトラグリセリンテトラミリステート、テトラグリセリンペンタミリステート、テトラグリセリンヘキサミリステート、ペンタグリセリンモノミリステート、ペンタグリセリンジミリステート、ペンタグリセリントリミリステート、ペンタグリセリンテトラミリステート、ペンタグリセリンペンタミリステート、ペンタグリセリンヘキサミリステート、ペンタグリセリンヘプタミリステート、ヘキサグリセリンモノミリステート、ヘキサグリセリンジミリステート、ヘキサグリセリントリミリステート、ヘキサグリセリンテトラミリステート、ヘキサグリセリンペンタミリステート、ヘキサグリセリンヘキサミリステート、ヘキサグリセリンヘプタミリステート、ヘキサグリセリンオクタミリステート、ヘプタグリセリンモノミリステート、ヘプタグリセリンジミリステート、ヘプタグリセリントリミリステート、ヘプタグリセリンテトラミリステート、ヘプタグリセリンペンタミリステート、ヘプタグリセリンヘキサミリステート、ヘプタグリセリンへプタミリステート、ヘプタグリセリンオクタミリステート、ヘプタグリセリンノナミリステート、オクタグリセリンモノミリステート、オクタグリセリンジミリステート、オクタグリセリントリミリステート、オクタグリセリンテトラミリステート、オクタグリセリンペンタミリステート、オクタグリセリンヘキサミリステート、オクタグリセリンヘプタミリステート、オクタグリセリンオクタミリステート、オクタグリセリンノナミリステート、オクタグリセリンデカミリステート、ノナグリセリンモノミリステート、ノナグリセリンジミリステート、ノナグリセリントリミリステート、ノナグリセリンテトラミリステート、ノナグリセリンペンタミリステート、ノナグリセリンヘキサミリステート、ノナグリセリンヘプタミリステート、ノナグリセリンオクタミリステート、ノナグリセリンノナミリステート、ノナグリセリンデカミリステート、ノナグリセリンウンデカミリステート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンジミリステート、デカグリセリントリミリステート、デカグリセリンテトラミリステート、デカグリセリンペンタミリステート、デカグリセリンヘキサミリステート、デカグリセリンヘプタミリステート、デカグリセリンオクタミリステート、デカグリセリンノナミリステート、デカグリセリンデカミリステート、デカグリセリンウンデカミリステート、デカグリセリンドデカミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリントリパルミテート、ジグリセリンテトラパルミテート、トリグリセリンモノパルミテート、トリグリセリンジパルミテート、トリグリセリントリパルミテート、トリグリセリンテトラパルミテート、トリグリセリントリパルミテート、トリグリセリンテトラパルミテート、トリグリセリンペンタパルミテート、テトラグリセリンモノパルミテート、テトラグリセリンジパルミテート、テトラグリセリントリパルミテート、テトラグリセリンテトラパルミテート、テトラグリセリンペンタパルミテート、テトラグリセ
リンヘキサパルミテート、ペンタグリセリンモノパルミテート、ペンタグリセリンジパルミテート、ペンタグリセリントリパルミテート、ペンタグリセリンテトラパルミテート、ペンタグリセリンペンタパルミテート、ペンタグリセリンヘキサパルミテート、ペンタグリセリンヘプタパルミテート、ヘキサグリセリンモノパルミテート、ヘキサグリセリンジパルミテート、ヘキサグリセリントリパルミテート、ヘキサグリセリンテトラパルミテート、ヘキサグリセリンペンタパルミテート、ヘキサグリセリンヘキサパルミテート、ヘキサグリセリンヘプタパルミテート、ヘキサグリセリンオクタパルミテート、ヘプタグリセリンモノパルミテート、ヘプタグリセリンジパルミテート、ヘプタグリセリントリパルミテート、ヘプタグリセリンテトラパルミテート、ヘプタグリセリンペンタパルミテート、ヘプタグリセリンヘキサパルミテート、ヘプタグリセリンへプタパルミテート、ヘプタグリセリンオクタパルミテート、ヘプタグリセリンノナパルミテート、オクタグリセリンモノパルミテート、オクタグリセリンジパルミテート、オクタグリセリントリパルミテート、オクタグリセリンテトラパルミテート、オクタグリセリンペンタパルミテート、オクタグリセリンヘキサパルミテート、オクタグリセリンヘプタパルミテート、オクタグリセリンオクタパルミテート、オクタグリセリンノナパルミテート、オクタグリセリンデカパルミテート、ノナグリセリンモノパルミテート、ノナグリセリンジパルミテート、ノナグリセリントリパルミテート、ノナグリセリンテトラパルミテート、ノナグリセリンペンタパルミテート、ノナグリセリンヘキサパルミテート、ノナグリセリンヘプタパルミテート、ノナグリセリンオクタパルミテート、ノナグリセリンノナパルミテート、ノナグリセリンデカパルミテート、ノナグリセリンウンデカパルミテート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンジパルミテート、デカグリセリントリパルミテート、デカグリセリンテトラパルミテート、デカグリセリンペンタパルミテート、デカグリセリンヘキサパルミテート、デカグリセリンヘプタパルミテート、デカグリセリンオクタパルミテート、デカグリセリンノナパルミテート、デカグリセリンデカパルミテート、デカグリセリンウンデカパルミテート、デカグリセリンドデカパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリントリステアレート、ジグリセリンテトラステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレート、トリグリセリントリステアレート、トリグリセリンテトラステアレート、トリグリセリントリステアレート、トリグリセリンテトラステアレート、トリグリセリンペンタステアレート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンジステアレート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリンテトラステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート、テトラグリセリンヘキサステアレート、ペンタグリセリンモノステアレート、ペンタグリセリンジステアレート、ペンタグリセリントリステアレート、ペンタグリセリンテトラステアレート、ペンタグリセリンペンタステアレート、ペンタグリセリンヘキサステアレート、ペンタグリセリンヘプタステアレート、ヘキサグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンジステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリンテトラステアレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンヘキサステアレート、ヘキサグリセリンヘプタステアレート、ヘキサグリセリンオクタステアレート、ヘプタグリセリンモノステアレート、ヘプタグリセリンジステアレート、ヘプタグリセリントリステアレート、ヘプタグリセリンテトラステアレート、ヘプタグリセリンペンタステアレート、ヘプタグリセリンヘキサステアレート、ヘプタグリセリンへプタステアレート、ヘプタグリセリンオクタステアレート、ヘプタグリセリンノナステアレート、オクタグリセリンモノステアレート、オクタグリセリンジステアレート、オクタグリセリントリステアレート、オクタグリセリンテトラステアレート、オクタグリセリンペンタステアレート、オクタグリセリンヘキサステアレート、オクタグリセリンヘプタステアレート、オクタグリセリンオクタステアレート、オクタグリセリンノナステアレート、オクタグリセリンデカステアレート、ノナグリセリンモノステアレート、ノナグリセリンジステアレート、ノナグリセリントリステアレート、ノナグリセリンテトラステアレート、ノナグリセリンペンタステアレート、ノナグリセリンヘキサステアレート、ノナグリセリンヘプタステアレート、ノナグリセリンオクタステアレート、ノナグリセリンノナステアレート、ノナグリセリンデカステアレート、ノナグリセリンウンデカステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、デカグリセリントリステアレート、デカグリセリンテトラステアレート、デカグリセリンペンタステアレート、デカグリセリンヘキサステアレート、デカグリセリンヘプタステアレート、デカグリセリンオクタステアレート、デカグリセリンノナステアレート、デカグリセリンデカステアレート、デカグリセリンウンデカステアレート、デカグリセリンドデカステアレート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンジオレエート、ジグリセリントリオレエート、ジグリセリンテトラオレエート、トリグリセリンモノオレエート、トリグリセリンジオレエート、トリグリセリントリオレエート、トリグリセリンテトラオレエート、トリグリセリントリオレエート、トリグリセリンテトラオレエート、トリグリセリンペンタオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、テトラグリセリンジオレエート、テトラグリセリントリオレエート、テトラグリセリンテトラオレエート、テトラグリセリンペンタオレエート、テトラグリセリンヘキサオレエート、ペンタグリセリンモノオレエート、ペンタグリセリンジオレエート、ペンタグリセリントリオレエート、ペンタグリセリンテトラオレエート、ペンタグリセリンペンタオレエート、ペンタグリセリンヘキサオレエート、ペンタグリセリンヘプタオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンジオレエート、ヘキサグリセリントリオレエート、ヘキサグリセリンテトラオレエート、ヘキサグリセリンペンタオレエート、ヘキサグリセリンヘキサオレエート、ヘキサグリセリンヘプタオレエート、ヘキサグリセリンオクタオレエート、ヘプタグリセリンモノオレエート、ヘプタグリセリンジオレエート、ヘプタグリセリントリオレエート、ヘプタグリセリンテトラオレエート、ヘプタグリセリンペンタオレエート、ヘプタグリセリンヘキサオレエート、ヘプタグリセリンへプタオレエート、ヘプタグリセリンオクタオレエート、ヘプタグリセリンノナオレエート、オクタグリセリンモノオレエート、オクタグリセリンジオレエート、オクタグリセリントリオレエート、オクタグリセリンテトラオレエート、オクタグリセリンペンタオレエート、オクタグリセリンヘキサオレエート、オクタグリセリンヘプタオレエート、オクタグリセリンオクタオレエート、オクタグリセリンノナオレエート、オクタグリセリンデカオレエート、ノナグリセリンモノオレエート、ノナグリセリンジオレエート、ノナグリセリントリオレエート、ノナグリセリンテトラオレエート、ノナグリセリンペンタオレエート、ノナグリセリンヘキサオレエート、ノナグリセリンヘプタオレエート、ノナグリセリンオクタオレエート、ノナグリセリンノナオレエート、ノナグリセリンデカオレエート、ノナグリセリンウンデカオレエート、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンジオレエート、デカグリセリントリオレエート、デカグリセリンテトラオレエート、デカグリセリンペンタオレエート、デカグリセリンヘキサオレエート、デカグリセリンヘプタオレエート、デカグリセリンオクタオレエート、デカグリセリンノナオレエート、デカグリセリンデカオレエート、デカグリセリンウンデカオレエート、デカグリセリンドデカオレエート等を挙げることができる。
【0037】
なかでも、ジグリセリンモノカプレート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノラウレート、ペンタグリセリンモノミリステート、ペンタグリセリントリミリステート、ジグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンジステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、デカグリセリンジステアレート、デカグリセリントリステアレート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンジオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンペンタオレエート、デカグリセリントリオレエート、デカグリセリンペンタオレエートが好ましい。より好ましくは、ジグリセリンモノカプレート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンジオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、デカグリセリンペンタオレエートである。さらに好ましくは、ジグリセリンモノカプレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノオレエートであり、最も好ましくはジグリセリンモノオレエートである。
【0038】
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合には、上述したように、モノグリセリン脂肪酸エステル(有機酸モノグリセリドを含む)やポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等を用いた場合とは異なり、還元型補酵素Q10を油脂及び/又はポリオールの存在下、安定に保持することができる。
【0039】
なお、本発明の組成物を食品用途に用いる場合には、上記のポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、ポリグリセリン脂肪酸エステル中の脂肪酸残基が炭素数8以上、つまりカプリル酸もしくはカプリル酸よりも長鎖の脂肪酸であるのが好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステル中のグリセリンの重合度は10以下であるのが好ましく、重合度が2のジグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
【0040】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、その共存・添加により、油脂及び/又はポリオールの安定化効果を阻害しにくいため、その含有量は特に制限されないが、例えば、補酵素Q10を除いた系を基準として、下限は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、上限は、経済性等も考慮して、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。言うまでもなく、必要に応じて、上記以外の量も含有しうる。
【0041】
上記本発明において使用する油脂及び/又はポリオールとしては、食用又は医薬用に許容されるものであるのが好ましい。
上記油脂としては、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、アボガド油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、さらに、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、脂肪酸の部分グリセリド、リン脂質等も使用しうる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリド等を挙げることができる。また、脂肪酸の部分グリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリド等を挙げることができる。さらに、リン脂質としては、例えば、レシチン等が挙げられる。
【0042】
上記油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から、植物油脂、合成油脂や加工油脂が好ましい。これらは油脂の価格、還元型補酵素Q10の安定性や、補酵素Q10の溶解性等を考慮して選定するのが好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、MCT等が好ましく、米油、大豆油、菜種油、MCT等がより好ましい。なお、補酵素Q10の溶解性や生体での吸収性の観点からは、MCTを特に好適に使用することができる。
【0043】
なお、本発明の第一及び第二で前述したように、オリーブ油による還元型補酵素Q10の安定化効果は、他の油脂による安定化効果に比べて若干劣ってはいるが、ポリグリセリン脂肪酸エステルによる還元型補酵素Q10の生体での吸収性向上効果が、TweenやSpanによるそれと比べて著しく高く、且つポリグリセリン脂肪酸エステルによる還元型補酵素Q10の安定化阻害が、TweenやSpanによる安定化阻害に比べて極めて小さい。このことから、油脂としてオリーブ油を用いた場合においても、上記オリーブ油の若干の難点を相殺して余りある還元型補酵素Q10の生体での吸収性の改善効果が得られる。この観点から、本発明の第三においては、オリーブ油も好適な油脂として充分に使用しうる。
【0044】
上記ポリオールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量300〜1000のポリエチレングリコール)等の、食用又は医薬用に有用で安全なポリオールを使用するのが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。特にグリセリンを好ましく使用しうる。
【0045】
上記油脂、上記ポリオールは、それぞれ単独でも使用できるし、上記油脂同士の混合物、上記ポリオール同士の混合物、或いは、油脂及びポリオールの混合物としても使用しうる。
上記組成物においては、上記の油脂とポリオールの量比は、特に制限されないが、補酵素Q10の溶解性も考慮して、油脂/(油脂+ポリオール)の重量比として、通常1/10以上、好ましくは1/5以上、より好ましくは1/2以上、さらに好ましくは2/3以上である。言うまでもなく、ポリオールを含まない場合も好適である。
【0046】
さらに、用途により、例えば栄養成分等として、アスコルビン酸類や、アスコルビン酸類を含有したレモンやオレンジ、グレープフルーツ等の果汁濃縮物(エキス、パウダー等)をさらに添加することもできる。この場合には、還元型補酵素Q10の安定性向上の観点より、油脂としてリン脂質又はリン脂質を含有した油脂を用いることが好適であり、リン脂質は液状であることが好ましい。
【0047】
アスコルビン酸類としては、特に制限されないが、例えば、アスコルビン酸、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸に類するものを含み、さらに、それらのエステル体や塩であっても良い。これらは、L体、D体、或いは、ラセミ体であっても良い。また、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0048】
具体的には、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、D−arabo−アスコルビン酸等を挙げることができる。油脂及び/又はポリオールへの溶解性を考慮すると、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2パルミチン酸エステルが好ましい。
【0049】
上記アスコルビン酸類の含有量は特に制限されないが、経済性も考慮し、還元型補酵素Q10を除いた系を基準として、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0050】
また、アスコルビン酸類やアスコルビン酸類を含有した果汁濃縮物を添加する場合は、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤(乳化剤)として、さらにTweenやSpanを添加しても、前述したTweenやSpanの共存による還元型補酵素Q10の安定化阻害が緩和されるため、還元型補酵素Q10の安定化と生体での高吸収性を両立した組成物とすることができる。
この場合、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤(乳化剤)としてのTweenやSpan等の含有量も特に制限されないが、還元型補酵素Q10を除いた系を基準として、通常90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0051】
本発明の組成物における油脂及び/又はポリオールの含有率は、上記のようにアスコルビン酸を添加する場合、還元型補酵素Q10を除いた系を基準として、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。アスコルビン酸類を添加しない場合は、油脂及び/又はポリオールの含有率が高いものが好ましく用いられうる。当該含有率としては、特に制限されないが、補酵素Q10を除いた系を基準として、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは85重量%以上である。
【0052】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する組成物は、当該組成物を水と混合した場合(例えば、上記組成物50gと水50gとを混合した場合)、強撹拌することなしに(例えば、ガラス棒でかき混ぜる程度で)、乳化状態を呈する自己乳化型の組成であることが好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類と、油脂類等の他の内容物の種類や量比を選択することにより、上記目的(還元型補酵素Q10の安定化と、生体での高吸収性)を達成することができる。
【0053】
本発明の第三における還元型補酵素Q10の安定化の程度は、特に制限されないが、例えば、還元型補酵素Q10と油脂及び/又はポリオールのみからなる組成物を、空気中、40℃、遮光条件下に3日間保存した後の還元型補酵素Q10保持率を100%として、ポリグリセリン脂肪酸エステルをさらに含有する組成物を同条件で保存した場合に、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の保持率を示すものであるのが好ましい。又、前述のごとく、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない組成物が望ましいことは言うまでもない。
【0054】
以上のようにして、本発明の第三では、還元型補酵素Q10の安定化と、生体での高吸収性を両立することができる。
なお、本発明の第三におけるその他の好適な要件として、前述の本発明の第一及び第二の要件を適用しても良い。
【0055】
ここで本発明の第一、第二及び第三において、還元型補酵素Q10の含有量は特に制限されないが、還元型補酵素Q10の安定性や使用の容易さ・便利さ等を考慮して、組成物全量に対して、例えば、通常3重量%超、好ましくは5重量%超、より好ましくは6重量%超、さらに好ましくは7重量%超、特に好ましくは8重量%超である。上限は特に制限されないが、液性状等を考慮して、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0056】
なお、本発明の組成物は、外部添加した還元型補酵素Q10を含有する組成物であっても良い。また、上記の油脂及び/又はポリオール中で、或いは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する油脂及び/又はポリオール中で、亜ジチオン酸ナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)、アスコルビン酸類等の還元剤を用いて、酸化型補酵素Q10を還元することにより得られた還元型補酵素Q10を含有する組成物であっても良いが、実質的に、酸化型補酵素Q10の還元に用いた還元剤の酸化物が共存しないことが好ましい。
通常は、組成物の成分が単純化でき、調製も容易であることから、還元型補酵素Q10が外部添加された組成物、即ち、別途製造された還元型補酵素Q10を用いて製造された組成物が好ましい。
【0057】
また、本発明の組成物は、下記経口投与形態に加工する場合、常温或いはそれ以上の温度で液状(溶液のみならず、懸濁状或いはスラリーの形態も含む)であるのがより好ましい。
本発明の上記組成物は、そのまま使用することもできるが、それをカプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル)、錠剤、シロップ、飲料等の経口投与形態に加工して好ましく使用しうるし、クリーム、坐薬、練り歯磨き等のための形態に加工しても使用しうる。特に好ましくは、カプセル剤であり、とりわけ、ソフトカプセルである。カプセル基材としては特に制限されず、牛骨、牛皮、豚皮、魚皮等を由来とするゼラチンをはじめとして、他の基材(例えば、食品添加物として使用しうるカラギーナン、アルギン酸等の海藻由来品やローカストビーンガムやグアーガム等の植物種子由来品等の増粘安定剤やセルロース類を含む製造用剤)も使用しうる。
【0058】
また、カプセルは、ビン、ボトル、プラスチック袋、アルミラミネート袋等に入れて包装することができ、PTP包装、3方シール包装、4方シール包装、ストリップ包装、アルミ成形包装、スティック包装等とすることができる。
【0059】
本発明の効果を最大限に発揮するためには、例えば、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気等の脱酸素雰囲気において、本発明の方法を実施するのが好ましく、また、本発明の組成物を調製及び/又は保存するのが好ましい。上記の加工や加工後の保存も、上記の不活性ガス雰囲気等の脱酸素雰囲気に行うのが好ましい。
【0060】
以上の組成、調製方法を採用することにより、油脂及び/又はポリオールが有する酸化防護効果は実質的に阻害されず、油脂及び/又はポリオール以外の成分を含まない組成物に比して、本発明の第一及び第二においては、還元型補酵素Q10の保持率が95%以上、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上の組成物を得ることが期待でき、また、本発明の第三においては、還元型補酵素Q10の保持率が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の組成物を得ることが期待できる。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、還元型補酵素Q10を酸化から好適に防護することができ、また、デヒドロアスコルビン酸類等の還元剤の酸化物が共存しない組成物を提供することができる。さらに、還元型補酵素Q10の高い生体吸収性を有する組成物を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0062】
以下に製造例、実施例、比較例、参考例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、純度及び還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の比率(重量比)は下記HPLC分析により求めた。
【0063】
(HPLC分析条件)
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;COH:CHOH=4:3(v:v)、検出波長;210nm、流速;1ml/min、還元型補酵素Q10の保持時間;9.1min、酸化型補酵素Q10の保持時間;13.3min。
【0064】
(製造例1)
100gの酸化型補酵素Q10を25℃で1000gのヘプタンに溶解させた。攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン相を6回水洗した。このヘプタン相を攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷ヘプタン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘプタンで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶93gを得た(収率92.8モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4であった。
【0065】
(製造例2)
1000gのエタノール中に、100gの酸化型補酵素Q10、60gのアスコルビン酸を加え、78℃にて撹拌し、還元反応を行った。30時間後、50℃まで冷却し、同温を保持しながらエタノール330gと水70gを添加した。このエタノール溶液を撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、10℃/時間の冷却速度で2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。スラリーは非常に良好な流動性を示し、容易に晶析容器より払い出しが可能であった。得られたスラリーを減圧濾過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶97gを得た(有姿収率97モル%)。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.5/0.5であった。
【0066】
(実施例1〜3、比較例1)
製造例1で得られた結晶を6重量%となるように大豆油、グリセリン及びそれらの混合物にそれぞれ添加し、40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果と、比較のため、上記と同条件下で結晶のみを保存した場合の同比率を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
(実施例4〜17)
製造例1で得られた結晶を6重量%となるように表2に示す各種油脂に添加し、40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表2に示す。なお、中鎖脂肪酸トリグリセリドは炭素数8の比率が6割、炭素数10の比率が4割のものを用いた。
【0069】
【表2】

【0070】
(比較例2)
製造例1で得られた結晶をオリーブ油に6重量%となるように添加し、40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存した。保存後の液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は92.3/7.7であった。
【0071】
(実施例18〜19、比較例3)
製造例1で得られた結晶、大豆油及びビタミンEの以下に示す組成の組成物を調製した。これらを、40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表3に示す。
a)組成物中の還元型補酵素Q10の含有率4.42重量%
補酵素Q10を除いた系を基準とするビタミンE含有率0.00重量%
b)組成物中の還元型補酵素Q10の含有率4.42重量%
補酵素Q10を除いた系を基準とするビタミンE含有率1.00重量%
c)組成物中の還元型補酵素Q10の含有率4.42重量%
補酵素Q10を除いた系を基準とするビタミンE含有率4.11重量%
【0072】
【表3】

【0073】
(比較例4)
製造例1で得られた結晶、大豆油及びビタミンEの以下に示す組成の組成物を調製し、40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存した。
組成物中の還元型補酵素Q10の含有率5.19重量%
補酵素Q10を除いた系を基準とするビタミンE含有率4.11重量%
保存後の液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は、92.9/7.1であった。
【0074】
(実施例20〜22、比較例5〜8)
製造例1で得られた結晶を、表4に示す油脂及び/又は界面活性剤に、6重量%となるように添加し、40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表4に示す。なお、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は炭素数8:炭素数10=6:4のものを用い、界面活性剤としてのTween80、Span80はともにナカライテスク製のものを用いた。
【0075】
【表4】

【0076】
(実施例23〜24、比較例9〜10)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)90重量部と、表5に記載の界面活性剤(ジグリセリンモノオレエート:理研ビタミン製ポエムDO−100V、ジグリセリンモノラウレート:太陽化学製サンソフトQ−12D)10重量部を、それぞれ撹拌混合し、製造例2で得られた結晶を3%(w/v)となるように40℃で溶解した。空気中、遮光下、40℃で3日間保存後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表5に示す。
【0077】
【表5】

【0078】
(実施例25、比較例11〜12)
米油80重量部と表6に記載の界面活性剤(ジグリセリンモノオレエート:理研ビタミン製ポエムDO−100V、モノグリセリンモノオレエート:太陽化学サンソフトNo.0−30、縮合リシノール酸テトラグリセリン:サンソフトNo.818)20重量部をそれぞれ撹拌混合し、製造例2で得られた結晶を3%(w/v)となるように40℃で溶解した。空気中、遮光下、40℃で3日間保存後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表6に示す。
【0079】
【表6】

【0080】
(実施例26)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)80重量部、Span80が10重量部、ジグリセリンモノオレエート(理研ビタミン製ポエムDO−100V)が10重量部からなる組成物に、製造例1で得られた結晶及びアスコルビン酸パルミチン酸エステルをそれぞれ4重量%となるように添加した。40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4であった。
【0081】
(参考例1)
表7記載の油脂を添加、又は、表7記載の油脂90重量部に表7記載のポリグリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリンモノオレエート:理研ビタミン製ポエムDO−100V、ジグリセリンモノラウレート:太陽化学製サンソフトQ−12D)10重量部を添加し混合して、それぞれ基材を調製した。この基材に製造例2で得られた結晶を3%(w/v)となるように窒素雰囲気下、40℃で溶解した。得られた溶液をラットに経口で投与し、血漿中の還元型補酵素Q10量を定量して、投与後4時間目までのAUC(血中濃度曲線下面積)を算出した。この結果を表7に示すが、この結果から、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより、生体での吸収性が向上することがわかる。
【0082】
【表7】

【0083】
(参考例2)
Tween80に製造例2で得られた結晶を3%(w/v)となるように窒素雰囲気下、40℃で溶解した。得られた溶液をラットに経口で投与し、血漿中の還元型補酵素Q10量を定量して、投与後4時間目までのAUC(血中濃度曲線下面積)を算出したところ、2.26μg/ml*hであった。
【0084】
(参考例3)
製造例1で得られた結晶の、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)、大豆油、サフラワー油、米油に対する30℃での溶解度を表8に示す。
【0085】
【表8】

【0086】
(実施例27)
製造例1で得られた結晶を6重量%になるように大豆油に添加し、常法によりゼラチンのソフトカプセル剤を得た。
【0087】
(実施例28)
製造例1で得られた結晶を6重量%になるようにエゴマ油に添加し、常法によりゼラチンのソフトカプセル剤を得た。
【0088】
(実施例29)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)及び、ジグリセリンモノオレエートの混合物に製造例2で得られた結晶を50℃にて添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 60重量部
ジグリセリンモノオレエート 100重量部
中鎖脂肪酸トリグリセリド 840重量部
【0089】
(実施例30)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)及び、ジグリセリンモノオレエート(理研ビタミン製ポエムDO−100V)、Span80、アスコルビン酸パルミチン酸エステルの混合物に製造例2で得られた結晶を50℃にて添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 60重量部
ジグリセリンモノオレエート 100重量部
Span80 100重量部
アスコルビン酸パルミチン酸エステル 60重量部
中鎖脂肪酸トリグリセリド 680重量部
【0090】
(実施例31)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)及び、レシチン、アスコルビン酸パルミチン酸エステルの混合物に製造例1で得られた結晶を50℃にて添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 40重量部
レシチン 180重量部
アスコルビン酸パルミチン酸エステル 40重量部
中鎖脂肪酸トリグリセリド 740重量部
【0091】
(実施例32)
米油、硬化油、蜜蝋(粘度調整剤)、レシチンの混合物に製造例2で得られた結晶を添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 60重量部
米油 690重量部
硬化油 170重量部
蜜蝋 60重量部
レシチン 20重量部
【0092】
(実施例33)
米油及び、ジグリセリンモノオレエート(理研ビタミン製ポエムDO−100V)、硬化油、蜜蝋、レシチンの混合物に製造例2で得られた結晶を添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 100重量部
ジグリセリンモノオレエート 70重量部
米油 580重量部
硬化油 170重量部
蜜蝋 60重量部
レシチン 20重量部
【0093】
(実施例34)
菜種油及び、ジグリセリンモノオレエート(理研ビタミン製ポエムDO−100V)、硬化油、蜜蝋、レシチンの混合物に製造例2で得られた結晶を添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 100重量部
ジグリセリンモノオレエート 320重量部
菜種油 330重量部
硬化油 170重量部
蜜蝋 60重量部
レシチン 20重量部
【0094】
(実施例35)
エマテック(理研ビタミン製ジグリセリンモノオレエート含有油脂)及び、硬化油、蜜蝋、レシチンの混合物に製造例2で得られた結晶を添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 100重量部
エマテック 650重量部
硬化油 170重量部
蜜蝋 60重量部
レシチン 20重量部
【0095】
(実施例36)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)及び、ジグリセリンモノオレエート(理研ビタミン製ポエムDO−100V)、Span80、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、硬化油、蜜蝋、レシチンの混合物に製造例2で得られた結晶を添加し、常法により下記成分よりなるゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
還元型補酵素Q10 100重量部
ジグリセリンモノオレエート 100重量部
Span80 100重量部
アスコルビン酸パルミチン酸エステル 100重量部
中鎖脂肪酸トリグリセリド 350重量部
硬化油 170重量部
蜜蝋 60重量部
レシチン 20重量部
【0096】
(実施例37)
実施例30、実施例32、実施例34で得られたゼラチンのソフトカプセルをガラス瓶に空気存在下で密封し、遮光下、25℃で保存した(保存開始時、ゼラチンのソフトカプセル中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比はすべて98.5/1.5)。6ヶ月後、ゼラチンのソフトカプセル中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を調べた結果を表9に示す。
【0097】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、上述の構成よりなるので、還元型補酵素Q10を酸化から防護して安定に保持するための簡便且つ好適な方法並びに組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型補酵素Q10を、主成分としての油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールと混合して、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しない組成物とし、還元型補酵素Q10を酸化から防護し、かつ、還元型補酵素Q10は外部添加したものであり、組成物中にさらにTween及び/又はSpanを含有する場合のその含有量が、補酵素Q10を除いた系を基準として、30重量%以下であることを特徴とする、還元型補酵素Q10の安定化方法。
【請求項2】
組成物中にさらにビタミンEを含有する場合のその含有量が、補酵素Q10を除いた系を基準として、4重量%未満である請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物中の油脂及び/又はポリオールの含有率は、補酵素Q10を除いた系を基準として、50重量%以上である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
組成物中の還元型補酵素Q10の含有量は、5重量%超である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
脱酸素雰囲気下に行われる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存後の還元型補酵素Q10保持率が、還元型補酵素Q10と油脂及び/又はポリオールのみからなる組成物を同条件で保存後の保持率を100%として、95%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
還元型補酵素Q10、油脂(但し、オリーブ油を除く)及び/又はポリオールを含有してなり、還元型補酵素Q10の安定化を実質的に阻害しないものであり、かつ、還元型補酵素Q10は外部添加したものであり、組成物中にさらにTween及び/又はSpanを含有する場合のその含有量が、補酵素Q10を除いた系を基準として、30重量%以下であることを特徴とする組成物。
【請求項8】
組成物中にさらにビタミンEを含有する場合のその含有量は、補酵素Q10を除いた系を基準として、4重量%未満である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
組成物中の油脂及び/又はポリオールの含有率は、補酵素Q10を除いた系を基準として、50重量%以上である請求項7又は8記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の還元型補酵素Q10の含有量は、5重量%超である請求項7〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
実質的に、酸化型補酵素Q10の還元に用いた還元剤の酸化物が共存しない請求項7〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
経口投与形態に加工された請求項7〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
40℃、空気中、遮光条件下に3日間保存後の還元型補酵素Q10保持率が、還元型補酵素Q10と油脂及び/又はポリオールのみからなる組成物を同条件で保存後の該保持率を100%として、95%以上である請求項7〜12のいずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2010−189437(P2010−189437A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111359(P2010−111359)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【分割の表示】特願2003−562066(P2003−562066)の分割
【原出願日】平成15年1月20日(2003.1.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】