説明

還元難消化性デキストリンの定性方法

【課題】本発明の目的は、食品などの試料中に含まれている難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであるか否かを高い精度で判定することのできる方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の方法は(a)試料から3糖以上の食物繊維を分取する工程と、(b)前記工程(a)で分取した3糖以上の食物繊維を加水分解する工程と、(c)前記工程(b)で得られた加水分解物中のグルコース量とソルビトール量との比率を求め、前記比率に基づいて試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであるかどうかを判定する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性デキストリン含有試料中における還元難消化性デキストリンの定性方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性食物繊維の一つである還元難消化性デキストリンの一例としては、焙焼デキストリンを酵素消化し、次いで水素添加して得られる還元難消化性デキストリンがある。この還元難消化性デキストリンは、特許文献1に示されるように、食品に添加した際に色を付与せず、経時的にも褐変することがないことから、例えば、水、透明な清涼飲料水、米飯など着色が問題となる食品に添加するのに有効とされている。特許文献1には、これを有効成分として含有する、保健機能を付与又は強化した飲食品が開示されており、この飲食品は、保健機能として整腸作用、血糖値調整作用、耐糖能維持改善作用、体脂肪調整作用、血清脂質調整作用があるため、特定保健用食品をはじめとする健康食品に利用され得る。
【0003】
ここで、特定保健用食品は、食品機能を有する食品の成分全般を広く関与成分の対象として、ある一定の科学的根拠を有することが認められたものについて、厚生労働大臣の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示した食品であり、有効性及び安全性について、基本的に厚生労働省及び食品安全委員会の審査を得ることとされている。従って、還元難消化性デキストリンを関与成分とする食品について特定保健用食品として許可を得る場合、その食品に含有される関与成分が還元難消化性デキストリンであることを判定する試験(定性試験)が求められる。
【0004】
一般に、食物繊維の定性試験法としては、分子量や極性等の違いによりHPLCの溶出時間から判別するもの、粘性から判別するもの、電気泳動のスポットの発色から判別するもの、構成糖の比から判別するもの等がある。しかし、還元難消化性デキストリンは分子量、極性などの性質が還元前の難消化性デキストリンとほとんど変わらず、構造上、末端グルコースがソルビトールに変化しただけのものである。両者を識別できる方法としては、上記の定性試験法の中では、構成糖の比からの判別する方法のみが適用できると考えられるが、そのまま適用するには問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−287454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、食品などの試料中に含まれている難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであるか否かを高い精度で判定することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は以下の発明を包含する。
(1)難消化性デキストリン含有試料中における還元難消化性デキストリンの定性方法であって、
(a)試料から3糖以上の食物繊維を分取する工程と、
(b)前記工程(a)で分取した3糖以上の食物繊維を加水分解する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた加水分解物中のグルコース量とソルビトール量との比率を求め、前記比率に基づいて試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであるかどうかを判定する工程とを含むことを特徴とする還元難消化性デキストリンの定性方法。
(2)前記工程(b)で、前記工程(a)で分取した3糖以上の食物繊維の97重量%以上を単糖に加水分解する、(1)に記載の定性方法。
(3)前記工程(c)で、次の計算式により(y)が所定の範囲の値であるときに、試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであると判定する、(1)又は(2)に記載の定性方法。
(y)=[加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)/{加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)+加水分解物中のグルコース濃度(w/v)}]×100
(4)試料中の難消化性デキストリンが平均分子量1000〜3000のものである場合において、前記工程(c)で、次の計算式により(y)が5.5〜16.7であるときに、試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであると判定する、(1)〜(3)の何れかに記載の定性方法。
(y)=[加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)/{加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)+加水分解物中のグルコース濃度(w/v)}]×100
(5)前記工程(a)の前に、1種以上の消化酵素を用いて試料を消化する工程を含む、(1)〜(4)の何れかに記載の定性方法。
(6)前記1種以上の消化酵素が熱安定性α‐アミラーゼ、プロテアーゼ、及びアミログルコシターゼである、(5)に記載の定性方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の定性方法により、試料中に含まれる難消化性デキストリンが、還元難消化性デキストリンであることを精度良く判定することができる。また、本発明の定性方法は、グルコース、ソルビトールや、これらを構成糖とする消化性の多糖を含んだ食品を試料とする場合においても適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において「難消化性デキストリン」とは、ヒトの消化酵素で加水分解されない難消化性、難吸収性のデキストリンの総称である。「難消化性デキストリン」という用語は、還元難消化性デキストリンと、還元難消化性デキストリンではない難消化性デキストリンとの両方を包含する用語である。
【0010】
本発明において「還元難消化性デキストリン」とは、焙焼デキストリンを酵素消化し、次いで水素添加して還元末端のカルボニル基を還元して得られる難消化性デキストリンである。本発明は、3糖以上の還元難消化性デキストリンの定性に適用し得るが、例えば平均分子量が1000〜3000、より好ましくは1300〜2500の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであるか否かを判定する場合に適用することができる。このような還元難消化性デキストリンとして具体的には、松谷化学工業株式会社から販売されている粉末タイプのファイバーソル2H(商品名)等がある。
【0011】
上記の「還元難消化性デキストリンではない難消化性デキストリン」とは、還元末端のカルボニル基が還元されていない難消化性デキストリンであり、例えば、焙焼デキストリンを酵素消化して得ることができる。このような難消化性デキストリンとして具体的には、松谷化学工業株式会社から販売されているパインファイバーC(商品名)や、パインファイバー(商品名)、ファイバーソル2(商品名)等がある。
【0012】
本発明において「試料」とは、還元難消化性デキストリンが含まれている可能性のある試料であれば特に限定されないが、典型的には、水、清涼飲料水、ゼリーなどの食品が挙げられる。本発明の方法はグルコース又はソルビトール、或いはこれらを構成糖とする消化性の多糖を含む食品を試料とする場合においても好適に適用可能である。
【0013】
本発明の方法は、
(a)試料から3糖以上の食物繊維を分取する工程と、
(b)前記工程(a)で分取した3糖以上の食物繊維を加水分解する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた加水分解物中のグルコース量とソルビトール量との比率を求め、前記比率に基づいて試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであるかどうかを判定する工程とを含む。
【0014】
工程(a)では、具体的には、試料の中から遊離の単糖、二糖を分離するために、液体クロマトグラフィー等で試料から3糖以上の食物繊維画分を分取する。これにより、遊離の単糖、二糖を含めることなく3糖以上の食物繊維の糖組成に基づき還元難消化性デキストリンであるかどうかを判定することができる。液体クロマトグラフィーで分取する場合に使用するカラムはゲルろ過カラム、サイズ排除+配位子交換カラム等が好ましい。液体クロマトグラフィーの条件例としては次のものが挙げられる。カラム:三菱化学社製MCl(登録商標)GEL CK08EC(φ8.0mm×300mm)、カラム温度:80℃、移動相:蒸留水、流速:0.3ml/min、0〜23分の溶出液を食物繊維画分として分取。
【0015】
工程(b)では、還元難消化性デキストリンの構成糖を測定する目的で、前記工程(a)で分取した3糖以上の食物繊維を単糖に加水分解する。分解率が低いと構成糖の比に影響を与えるので、3糖以上の食物繊維の97重量%以上が単糖に分解されることが望ましい。また、加水分解は1〜2Nの塩酸、硫酸又はトリフルオロ酢酸を用いた酸加水分解が好ましい。酸加水分解は、90〜110℃の温度で行う場合が好ましく、加熱時間は2〜6時間が好ましい。
【0016】
工程(c)では、前記工程(b)で得られた加水分解物中のグルコース量とソルビトール量との比率を求める。具体的には、加水分解後の食物繊維画分中のグルコース濃度とソルビトール濃度を測定し、その比率を求める。各濃度は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。液体クロマトグラフィーに用いるカラムとしては、アミノ基結合カラム、サイズ排除+配位子交換カラム等が適している。
【0017】
加水分解後の食物繊維画分中のグルコース濃度とソルビトール濃度の比率に基づく還元難消化性デキストリンの定性は、次のように行うことができる。例えば、試料が特許文献1に記載の平均分子量1000〜3000の難消化性デキストリンを添加したものである場合には、次の計算式により(y)が5.5〜16.7であるときには、試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであると判定することができる。また、試料が平均分子量1300〜2500の難消化性デキストリンを添加したものである場合には、次の計算式により(y)が6.6〜12.8であるときには、試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであると判定することができる。
(y)=[加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)/{加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)+加水分解物中のグルコース濃度(w/v)}]×100
ここで、平均分子量と(y)値との関係について説明する。(y)値は還元難消化性デキストリンの「全構成糖に対するソルビトールの割合」(%)を意味し、式1.1が成り立つ。
【0018】
(式1.1)
(y)=「全構成糖に対するソルビトールの割合」(%)
=[ソルビトール重量/(ソルビトール重量+グルコース重量)]×100
=[{182×(ソルビトールmol数)}/{182×(ソルビトールmol数)+180×(グルコースmol数)}]×100
式1.1ではグルコースの分子量を180、ソルビトールの分子量を182とした。
【0019】
還元難消化性デキストリンは末端のみがソルビトールであり、その他の構成糖はグルコースである。よって、式1.1におけるグルコースmol数、ソルビトールmol数は、ソルビトールmol数:グルコースmol数=1:平均重合度−1という関係式で表すことができる。
【0020】
平均重合度(Dp)は、下記の計算式で表される。
(式1.2)
平均重合度(Dp)={平均分子量(Mn)−182}/162+1
式1.2では水が1分子脱水されたグルコースの分子量を162、ソルビトールの分子量を182とした。
【0021】
本明細書では、還元性難消化性デキストリンが、平均分子量1000〜3000、1300〜2500の時の「全構成糖に対するソルビトールの割合」(y)を以下のような手順で計算した。
【0022】
(I)式1.2により、還元性難消化性デキストリンが、平均分子量1000〜3000、1300〜2500の時の平均重合度を計算する。
(II)式1.1において、ソルビトールmol数=1、グルコースmol数=平均重合度−1を代入して、「全構成糖に対するソルビトールの割合(%)」(y)の計算を行う。
計算結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
よって、還元性難消化性デキストリンの分子量が1000〜3000の時、(y)(「全構成糖に対するソルビトールの割合(%)」)は、5.5〜16.7と計算される。
【0025】
また、還元性難消化性デキストリンの分子量が1300〜2500の時、(y)(「全構成糖に対するソルビトールの割合(%)」)は、6.6〜12.8と計算される。
【0026】
なお試料中の難消化性デキストリンの平均分子量は、例えば特許文献1の段落0016に記載の方法により測定することができる。すなわち、以下の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、数平均分子量を測定することができる。
【0027】
カラム:TSKgel G2500PWXL,G3000PWXL,G6000PWXL(東ソー社製)
検出器:示差屈折率計
カラム温度:80℃
流速:0.5ml/min
移動相:蒸留水
サンプル量:1重量%、100μl
【0028】
分子量計算はマルチステーションGPC−8020(東ソー社製)を用いて、プルラン標準品(分子量既知)、およびマルトトリオース、グルコースより求めた検量線から、次式Mn=ΣHi/Σ(Hi/Mi)×QF(Mn:数平均分子量、Hi:ピーク高さ、Mi:プルランの分子量、QF:Qファクター(Mark−Houwink係数))により数平均分子量を求める。
【0029】
本発明の方法は、工程(a)の前に、1種以上の消化酵素を用いて試料を消化する工程を更に含むことができる。この工程は、判別しようとする試料の、消化酵素で消化されない食物繊維からなる部分と、消化されて二糖、単糖に分解される部分とを分離することを目的とする。この工程では、消化酵素として、食物繊維の定量法として一般的である「プロスキー法」で用いられる酵素である熱安定性α‐アミラーゼ、プロテアーゼ及びアミログルコシターゼを組み合せて用いることが好ましい。
【0030】
以下実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲には限定されない。
【実施例1】
【0031】
1.試料
「食物せんいのおいしい水」(商品名、ハウス食品株式会社製)
還元難消化性デキストリンであるファイバーソル2H(商品名、松谷化学工業株式会社製)が添加されている。
【0032】
2.分析方法
「食物せんいのおいしい水」より食物繊維画分を分離後、塩酸分解した試料で測定された、全構成糖(グルコース+ソルビトール)に対するソルビトール(還元末端)の割合をもとに、還元難消化性デキストリンであることを確認した。消化酵素の反応条件等は、低分子水溶性食物繊維を含む食品に適用される酵素−HPLC法(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」、平成11年4月26日衛新第13号、8食物繊維)を準用して行った。
【0033】
(1)機器
ロータリーエバポレータ−、オイルバス、
HPLC分析装置(高圧定量ポンプ、カラムオーブン、屈折率検出器)、
食物繊維画分分離用カラム(三菱化学社製 MCl(登録商標)GEL CK08EC φ8.0mm×300mm(サイズ排除+配位子交換カラム))
糖測定用カラム(三菱化学社製 MCl(登録商標) GEL CK08EC φ8.0mm×300mm(サイズ排除+配位子交換カラム))、
充填イオン交換樹脂(オルガノ社製:アンバーライトIRA−67、アンバーライト200C)
【0034】
(2)試薬
塩酸、水酸化ナトリウム、ソルビトール、グルコース、熱安定性αアミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ。
【0035】
(3)試験溶液等の調製
(a)検量線用標準液の作製
グルコース2.35%、ソルビトール0.235%それぞれを含む溶液を作成し、3.3倍、2倍、1.25倍に希釈した。原液、希釈液合わせて4種の濃度の標準液を調整した。
(b)脱塩カラムの準備
イオン交換樹脂、アンバーライトIRA67とアンバーライト200Cを1:1で混合したもの50mlをカラム(φ20mm×300mmガラス管)に充填した。
【0036】
(4)試験試料
「食物せんいのおいしい水」10gを秤量した。
【0037】
(5)「食物せんいのおいしい水」酵素処理液の作製
試料をビーカーに入れ0.08mol/Lリン酸緩衝液50mlを加えた。酵素−HPLC法に従って、熱安定性α−アミラーゼによる消化、プロテアーゼによる消化、アミログルコシダーゼによる消化を行った。アミログルコシダーゼによる消化を終了した溶液を沸騰水浴中で10分間加熱した後、蒸留水で100mlへ定容した。
【0038】
次いで、このうちの50mlを脱塩カラムに50ml/hrの速度で通液した。さらに蒸留水を通液してカラム内を洗浄し、洗液と併せて200mlとした。この脱塩カラム処理により無機塩類、蛋白質、有機酸などの電荷をもった不純物が除かれた。
脱塩カラム処理した試験溶液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、0.5mlの蒸留水に溶解させ、食物繊維分取前酵素処理液とした。
【0039】
(6)食物繊維画分のHPLCによる分取
上記食物繊維分取前酵素処理液を下記の条件でHPLCに供し、食物繊維画分を分取した。
HPLCへの一回の注入量は30μlとし、0〜23分の溶出液を3糖以上の食物繊維画分として分取した。
これを5回繰り返し、各々の溶出液を合わせロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、5mlの蒸留水に溶解させた。これを食物繊維分取後酵素処理液とした。
<HPLC分取操作条件>
カラム :三菱化学社製 MCl(登録商標)GEL CK08EC(φ8.0mm×300mm)
カラム温度 :80℃
移動相 :蒸留水
流速 :0.3ml/min
注入量 :30μl
検出器 :示差屈折計
【0040】
(7)食物繊維画分の塩酸分解
食物繊維分取後酵素処理液を試験管に入れ、塩酸を0.5ml加えた。100℃のオイルバスで3時間加熱し、室温に冷却後、2N水酸化ナトリウム溶液で中和した。イオン交換樹脂(50ml)を詰めたカラムに50ml/hrで通液した後、蒸留水100mlを通液し脱塩した。カラム溶出液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、0.5mlの蒸留水に溶解させた。これを塩酸分解食物繊維画分溶液とした。
【0041】
(8)食物繊維画分の構成糖の測定
塩酸分解食物繊維画分溶液と検量線用標準を下記条件でHPLCにより測定した。グルコースとソルビトールそれぞれにおいて、横軸に濃度、縦軸に面積をとり検量線を作成し、塩酸分解食物繊維画分溶液のグルコース濃度とソルビトール濃度を求めた。
<HPLC分析操作条件>
カラム :三菱化学社製 MCl(登録商標)GEL CK08EC(φ8.0mm×300mm)
カラム温度 :80℃
移動相 :蒸留水
流速 :0.3ml/min
注入量 :10μl
検出器 :示差屈折計
【0042】
(9)全構成糖に対するソルビトールの割合(重量%)
HPLC分析で測定された糖濃度をもとに、下記計算式により求めた。
全構成糖に対するソルビトールの割合(重量%)=[ソルビトール濃度(mg/ml)/{ソルビトール濃度(mg/ml)+グルコース濃度(mg/ml)}]×100
【0043】
(10)同定
全構成糖に対するソルビトールの割合が6.6〜12.8重量%の場合、還元難消化性デキストリンであると判断した。
【0044】
3.結果
食物繊維分取前酵素処理液(上記(5)終了後の段階)のHPLC分析チャートを図1aに示す。食物繊維分取後酵素処理液(上記(6)終了後の段階)のHPLC分析チャートを図1bに示す。
【0045】
塩酸分解食物繊維画分溶液の糖分析チャートを図2に示す。
図2のチャート上において、グルコースピーク面積(相対値)は6519.05であり、ソルビトールピーク面積(相対値)は464.449であった。
【0046】
グルコース濃度とピーク面積値の関係を表2に、表2のデータに基く検量線を図3aにそれぞれ示す。図3aに示す検量線から、塩酸分解食物繊維画分溶液中のグルコース濃度は12.04mg/mlと算出された。
【0047】
【表2】

【0048】
ソルビトール濃度とピーク面積値の関係を表3に、表3のデータに基く検量線を図3bにそれぞれ示す。図3bに示す検量線から、塩酸分解食物繊維画分溶液中のソルビトール濃度は0.9075mg/mlと算出された。
【0049】
【表3】

【0050】
よって、上記(9)に示す式から、全構成糖に対するソルビトールの割合は7.01重量%と算出された。
【0051】
全構成糖に対するソルビトールの割合が6.6〜12.8重量%の範囲内である。よって、試験検体中の食物繊維(難消化性デキストリン)画分は還元難消化性デキストリンと判断した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1a】実施例1における食物繊維分取前酵素処理液のHPLC分析チャートを示す。
【図1b】実施例1における食物繊維分取後酵素処理液のHPLC分析チャートを示す。
【図2】実施例1における塩酸分解食物繊維画分溶液の糖分析チャートを示す。
【図3a】グルコース濃度とピーク面積値との関係から導かれる検量線を示す。
【図3b】ソルビトール濃度とピーク面積値との関係から導かれる検量線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性デキストリン含有試料中における還元難消化性デキストリンの定性方法であって、
(a)試料から3糖以上の食物繊維を分取する工程と、
(b)前記工程(a)で分取した3糖以上の食物繊維を加水分解する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた加水分解物中のグルコース量とソルビトール量との比率を求め、前記比率に基づいて試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであるかどうかを判定する工程とを含むことを特徴とする還元難消化性デキストリンの定性方法。
【請求項2】
前記工程(b)で、前記工程(a)で分取した3糖以上の食物繊維の97重量%以上を単糖に加水分解する、請求項1に記載の定性方法。
【請求項3】
前記工程(c)で、次の計算式により(y)が所定の範囲の値であるときに、試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであると判定する、請求項1又は2に記載の定性方法。
(y)=[加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)/{加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)+加水分解物中のグルコース濃度(w/v)}]×100
【請求項4】
試料中の難消化性デキストリンが平均分子量1000〜3000のものである場合において、前記工程(c)で、次の計算式により(y)が5.5〜16.7であるときに、試料中の難消化性デキストリンが還元難消化性デキストリンであると判定する、請求項1〜3の何れか1項に記載の定性方法。
(y)=[加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)/{加水分解物中のソルビトール濃度(w/v)+加水分解物中のグルコース濃度(w/v)}]×100
【請求項5】
前記工程(a)の前に、1種以上の消化酵素を用いて試料を消化する工程を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の定性方法。
【請求項6】
前記1種以上の消化酵素が熱安定性α‐アミラーゼ、プロテアーゼ、及びアミログルコシターゼである、請求項5に記載の定性方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公開番号】特開2007−205782(P2007−205782A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23119(P2006−23119)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】