説明

部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とする、片側エンボス加工されたシートを有する多層積層物

【課題】部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とするシートの両側エンボス加工のための方法であって、前記の欠点を有さない方法を提供する。
【解決手段】部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とし、両側の粗度Rz=1〜30μmを有するシートaを提供する工程、及びシートの一方の側を、相応して粗面処理された80〜170℃の温度のエンボスローラbと、0〜60℃の温度の加圧ローラcとの間でエンボス処理して、エンボス加工された表面の粗度Rz=20〜100μmを有するシートを得る工程によって製造する方法において、該加圧ローラが50〜80のショアA硬度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とし、一方に平滑側を有し、かつエンボス加工によって粗度が調整されたもう一方の側とを有するシートの製造方法並びに該シートを多層積層物の製造のために用いる使用に関する。
【0002】
通常の複合ガラス板は、ガラス/ポリビニルブチラール(PVB)/ガラスの積層物からなり、かつ長い間、建築分野において又は自動車用のフロントガラスとして使用されている。この複合ガラスの反射特性と放射線吸収特性との改善のために、例えばWO97/03763号によれば、唯一のPVBシートの代わりに、2枚のPVBシートとその間の機能層とからなる積層物を使用することができる。その中間層シートのガラスに対する付着性は、ここでもPVBの公知の良好な付着特性によって決まり、追加機能(例えば反射)は、機能層(例えば金属が蒸着されたPETシート)によって果たされる。
【0003】
係る積層物において使用されるPVBシートは、シート両側に異なる表面を有さねばならない。ガラスに面した側は、積層プロセスを気泡なくかつ混濁なく可能とするためには、所定の粗度又は構造を有さねばならない。機能層に面した側は、それに対してできる限り平滑でなければならない。
【0004】
予め規定された粗度又は表面構造のPVBシートを製造するためには、一連の方法が知られている。
【背景技術】
【0005】
粗面仕上げされた表面を有するシートの製造のための典型的な方法は、EP0185863号B1から溶融破壊法として知られている。溶融破壊法は、不規則に(確率論的に)粗面仕上げされた表面をもたらす。
【0006】
中間層シートの粗面仕上げされた表面を製造するための先行技術に記載される他の方法は、エンボス加工法である。エンボス加工法により製造される全てのシート表面の共通の特徴は、規則的な(非確率論的な)表面構造であり、該構造は、とりわけ真空バッグ成形法によるガラス積層物の製造方法において良好な脱気挙動を示し、従って短い工程時間と広範なプロセスウインドウを可能にする。
【0007】
EP0741640号B1は、両側にエンボス加工された表面を、シートに規則的な鋸歯様の線状構造を施す2つのエンボスローラを用いて製造するためのエンボス加工法を記載している。シートのそれぞれの側でエンボス加工された線は、25゜より大きい角度で交叉するので、複合ガラス中の、いわゆるモアレパターンが妨げられる。
【0008】
EP1233007号A1は、モアレ効果の回避のために、規則的な線形のエンボス構造をシートのそれぞれの側に作製するエンボス加工法を開示している。干渉を避けるために、シート両側の線状構造は、種々の反復周期数を有する。
【0009】
US5,972,280号に記載される別の方法は、表面構造のエンボス加工のために、2つのエンボスローラの代わりに、1つのローラと、該ローラ上に回転及び圧縮空気を介して接するパターン形成されたスチールバンドとを使用し、その際、シートは、エンボス加工工程の間に、エンボスローラとスチールバンドとの間のギャップを通じて案内される。
【0010】
US4,671,913号は、PVBシートのエンボス加工のための方法を開示しており、その際、シートは、単独の作業工程でパターン形成された2つのローラの間でエンボス加工される。該ローラは、従ってエンボス加工されたシートも、10〜60μmの粗度Rzを有する。
【0011】
前記の両側エンボス加工法は、ローラギャップにおいてシートの短い滞在時間のみが達成されるに過ぎないという欠点を有する。それによって、エンボス加工は、エンボス加工速度が高まると大きく低下し、このことは工業的な仕上げプロセスのためには望ましくない。加えて、両側にエンボス加工されたシートは、例えばWO97/03763号による機能シートのような更なる中間層シートと一緒に積層するのに不適であり、それは、機能シートに対してエンボス構造が押圧されるからである。
【0012】
片側エンボス加工法では、前記の効果は生じないか、あるいはローラ表面とエンボス加工圧の相応の選択によって抑えることができる。このように、US2003/0022015号、WO01/72509号、US6,077,374号及びUS6,093,471号は、PVBシート用の一工程及び二工程のエンボス加工法を、スチールからなるエンボスローラとゴム被覆を有する加圧ローラとを用いて行うことを記載している。ゴム被覆あるいはローラの間でシートに加わる力は、詳細に記載されていない。ローラ表面が硬質すぎる場合に、小さなエンボス領域が生じ、その領域は実質的に線にまで低減される。これは、エンボス領域におけるシートの短い滞在時間をもたらし、それにより低いエンボス加工速度をもたらす。それに対して、軟質すぎるローラ表面が使用される場合に、不十分な力のみがシート上に加わるだけなので、エンボス品質は低下する。
【0013】
現存の方法は、エンボス性能に関して改善の必要性がある。
【特許文献1】EP0185863号B1
【特許文献2】EP0741640号B1
【特許文献3】EP1233007号A1
【特許文献4】US5,972,280号
【特許文献5】US4,671,913号
【特許文献6】WO97/03763号
【特許文献7】US2003/0022015号
【特許文献8】WO01/72509号
【特許文献9】US6,077,374号
【特許文献10】US6,093,471号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の課題は、部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とするシートの両側エンボス加工のための方法であって、前記の欠点を有さない方法を開発することであった。
【0015】
驚くべきことに、部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とするシートを、十分な品質及び速度で、エンボスローラと所定のショアA硬度の加圧ローラとの間でエンボス加工することが可能であることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の対象は、部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とし、第一の側の粗度Rz=1〜30μmと第二の側の粗度Rz=20〜100μmを有するシートを製造するにあたり、以下の方法工程:
a. 部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とし、両側の粗度Rz=1〜30μmを有するシートを提供する工程、及び
b. シートのもう一方の側を、相応して粗面処理された80〜170℃の温度のエンボスローラと、0〜60℃の温度の加圧ローラとの間でエンボス加工し、その際、該加圧ローラは50〜80のショアA硬度を有し、そしてエンボス加工された表面の粗度Rz=20〜100μmを有するシートを得る工程
によって製造する方法である。
【0017】
本発明による方法は、有利にはシートのエンボス加工された側の非確率論的な粗度をもたらす。
【0018】
粗度値Rzを有するシートの表面粗度の測定は、DIN EN ISO 4287及びDIN ISO 4288によって行われる。表面粗度の測定に使用される測定装置は、EN ISO 3274に沿うものでなければならない。使用されるプロファイルフィルタは、DIN EN ISO 11562に相応するものでなければならない。
【0019】
工程a)によるシートの表面構造あるいは粗度は、例えばいわゆる流動破壊法又は溶融破壊法によって、EP0185863号B1(その内容は本願では明確に指摘される)に相応して施すことができる。異なる粗度レベルは、出口ギャップの幅とダイリップ温度の変更によってダイ出口で直接、意図して生じさせることができる。
【0020】
また、シートを、溶融破壊によらず押出によって製造することも可能である。選択的に、シートは、押出しと冷却されたローラ上での平滑化とによってUS4,671,913号に従って製造することができる。できる限り低い粗度を両側に有するシートを使用することは、本発明による方法では好ましく、それは、粗い構造は、より多大なエンボス加工の労力をもってのみ上からエンボス加工できるに過ぎないからである。更に、当初の粗度が予備複合物の製造に際して再び現れることがあるので、エンボス加工されたシートが有する溶融破壊により粗面仕上げされた表面に対する利点は低減される。
【0021】
工程b)による引き続いてのエンボス加工法において、該シートの片側に、粗面深さRz=20〜100μm、有利にはRz=20〜80μm、特にRz=30μm〜50μmの表面構造が施される。
【0022】
シートのもう一方のエンボス加工されていない側は、有利には粗面深さRz=1〜30、有利にはRz=1〜20、特にRz=1〜10を有する。この粗度は、工程a)によるシートの粗度と同じであってよいが、工程b)によるエンボス加工法において更に影響されてもよい。このように、相応の加圧ローラを使用することによって、当初の粗度を低める又は高めることが可能である。
【0023】
エンボス加工過程b)の前及び/又は後に、該シートを−10〜+20℃に冷却し、そうしてシートの表面構造を固定することができる。その冷却は、有利には相応して温度調節された冷却ローラ上で行われる。ここで、いわゆる前面冷却が可能である、すなわちシートのエンボス加工された側が冷却される。選択的に、いわゆる背面冷却がなされ、その際には、シートのエンボス加工されていない側が冷却される。
【0024】
シートの冷却は、その表面に制限されるものであってもよい。このように、シートのエンボス加工されるべき側の表面温度を、−10〜+20℃に調整することができる。選択的に、シートのエンボス加工されていない表面を前記温度に調整することができる。
【0025】
エンボスローラは、金属から製造されていることが好ましく、かつ後にシート表面に存在することとなる構造のネガ型のプロファイルを有する表面を有する。本発明による方法で使用されるエンボスローラは、得ようと努めるシートの粗度に相応した粗度を有さねばならない。一変法において、エンボス加工されたシートとエンボスローラとは、同じ粗度又はほぼ同じ粗度を有する。プロセスパラメータ、つまりシート温度、線圧、ローラ温度、ローラ速度又はシート速度に応じて、エンボス加工されたシートの粗度は、エンボスローラよりかなり低いものであってもよい。このように、エンボスローラの粗度Rzは、このローラでエンボス加工されたシート表面の粗度Rzを400%、有利には300%、特に100%上回ってよい。エンボスローラの温度は、80〜170℃、有利には100〜150℃、特に110〜140℃である。特に有利には、エンボスローラは、シートの接着を低減させるために、被覆されたスチール表面(例えばPTFE)を有する。
【0026】
本発明による方法では、該シートは、エンボスローラと、反対に回転する加圧ローラとの間に案内される。有利には、シートに、エンボスローラと加圧ローラとの間で、線圧20〜80N/mm、特に40〜65N/mmが加えられる。線圧とは、シート幅に対するローラ対の加圧力を表す。
【0027】
加圧ローラは、0〜60℃、有利には10〜40℃の温度を有する、すなわち該ローラは、エンボスローラに対して能動的に冷却される。加圧ローラは、粗度を有さないか、又は低い粗度(Rzは最大で10μm)を有するに過ぎず、有利にはゴム又はEPDMからなる表面を有する金属コアからなる。加圧ローラの表面は、特に60〜75のショアA硬度を有する。加圧ローラは、シートをエンボスローラのパターン化された表面中に押圧し、その際にエンボスローラに対して軽く密着する。線圧の変更によって、エンボス領域の表面とそれとともに滞在時間を変化させてよい。これは、図1に図示されており、その際、a)としてエンボス加工されるべきシートが、b)としてエンボスローラが、そしてc)として加圧ローラが示されている。ここで示されるローラ周りでのシートの案内の他に、ローラに巻き付けることなく、ローラギャップを通じてシートを簡単に案内することも可能である。
【0028】
プロセスパラメータ、つまり線圧、シート温度及び/又はローラ温度、ローラ速度及びシートのローラへの巻き付き角度の選択によって、エンボスローラの粗度深さが予め与えられた場合に、シートエンボス加工に影響を及ぼすことができる。
【0029】
エンボス過程の質は、シートの温度定数及び従って、冷却ローラ、加圧ローラ及びエンボスローラの温度定数にも左右される。従って有利には、エンボスローラ及び/又は加圧ローラのそれらの幅と周長とにわたる温度差は、2℃未満、特に1℃未満に調整される。
【0030】
図2は、本発明による方法の一変法を図示している。シートの移動方向は、双方の矢印で示している。低い粗度が施されたシート(a)は、場合によりローラ対(d)において温度調節され、そしてエンボスローラ(e)と加圧ローラ(f)との間で片側エンボス加工される。(e)と(f)は、前記のように温度調節されている。引き続き、こうして片側エンボス加工されたシートの温度をローラ対(g)において調整し、こうすることでエンボスが固定される。図2に呼称されていないローラは、シートの案内に用いられる。より良好な温度調整のために、ローラ対d)とg)が、シートによって巻き付かれてもよく、そうすることでシートのローラ上での滞在時間は高められる。
【0031】
選択的に、シートのエンボスギャップを通じた直接的な案内は、エンボスローラ又は加圧ローラに巻き付けることなく可能である。本発明による前記の変法を、図3に示している。ここでは、d′とg′は、シートの温度調節のためのローラ対を表し、そしてe′とf′は、加圧ローラあるいはエンボスローラを表す。第一のローラ対d′をエンボス加工前のシートの温度調節のために使用することは、随意である。
【0032】
ここでも、該シートは、温度調節ローラのローラギャップを通じて直接、すなわち巻き付けることなく案内することができる。
【0033】
部分アセタール化ポリビニルアルコールとしては、特にポリビニルブチラール(PVB)を使用でき、その架橋された形又は未架橋の形、それぞれ少なくとも1種の可塑剤、着色剤、顔料、付着性調節のための金属塩、有機添加剤及び/又は無機充填剤との混合物であってよい。
【0034】
部分アセタール化ポリビニルアルコール用の可塑剤としては、一方で、この目的のために先行技術により公知の全ての可塑剤、特に多価の酸、多価アルコール又はオリゴエーテルグリコールのエステル、例えばアジピン酸エステル、セバシン酸エステル又はフタル酸エステル、特にジ−n−ヘキシルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルフタレート、ジグリコール、トリグリコールもしくはテトラグリコールと直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族カルボン酸とのエステル並びにこれらのエステルの混合物が適している。部分アセタール化ポリビニルアルコール、特にポリビニルブチラールのための標準的な可塑剤としては、有利には、脂肪族ジオールと直鎖状の脂肪族カルボン酸とのエステル、特にトリエチレングリコールと6〜10個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸、例えば2−エチル酪酸又はn−ヘプタン酸とのエステルが使用される。特に、ジ−n−ヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジグリコール、トリグリコールもしくはテトラグリコールと直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族カルボン酸とのエステル、特にトリエチレングリコール−ビス−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(3G7)、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート(3G8)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(4G7)からなる群からの1種又は複数種の可塑剤が好ましい。
【0035】
本発明の特定の一実施態様では、シートのエンボス工具への付着性は更に、シート材料に付着力を下げる物質を添加することで低減させることができる。
【0036】
付着性を低下させる有機添加剤としては、例えば全混合物に対して0.01〜2質量%の、式I
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ同一又は異なって、−CH2OH、−CH2OR5、−CH2OCOR5又は−CH2OCO−R6−COOR5の群の基を表し、かつR5、R6は、飽和又は不飽和の、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、1〜26個の炭素原子を有する炭化水素基を表す]で示されるペンタエリトリットを添加してよい。
【0037】
随意の添加剤として使用されるペンタエリトリットあるいはそのエステルは、部分アセタール化ポリビニルアルコールをポリマー材料として使用する場合にも、特殊な可塑剤、例えばシートの改善された防音性をもたらす可塑剤の使用も軽減する(それはDE19938159号A1を参照、これをもってその全内容が開示されたものとする)。特殊な可塑剤には、特に
・ 一般式HO−(R−O)n−Hで示され、Rがアルキレンであり、かつnが5より大きいポリアルキレングリコール、
・ 一般式HO−(CH2−CH2−O)n−(CH2−CH(CH3)−O)m−Hで示され、nが2より大きく、mが3より大きく、かつ(n+m)が25より小さい、エチレングリコールとプロピレングリコールとからなるブロックコポリマー、
・ 一般式R1O−(CH2−CH2−O)n−(CH2−CH(CH3)−O)m−HあるいはHO−(CH2−CH2−O)n−(CH2−CH(CH3)−O)m−R1で示され、nが2より大きく、mが3より大きく、かつ(n+m)が25より小さく、R1が有機基である、エチレングリコールとプロピレングリコールとからなるブロックコポリマーの誘導体、
・ 一般式R1−O−(R2−O)n−Hで示され、R2がアルキレンであり、かつnが2以上であり、ポリアルキレングリコールの両方の末端ヒドロキシ基の一方の水素が有機基R1によって置換されているポリアルキレングリコールの誘導体、
・ 一般式R1−O−(R2−O)n−R3で示され、R2がアルキレンであり、かつnが5より大きく、ポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシ基で水素が有機基R1あるいはR3によって置換されているポリアルキレングリコールの誘導体
からなる可塑剤の群が該当する。
【0038】
前記の特殊な可塑剤は、有利には部分アセタール化ポリビニルアルコールの場合に、本願では特にPVBの場合に、1種又は複数種の標準的な可塑剤と組み合わせて、可塑剤の全混合物に対して0.1〜15質量%の割合で使用される。
【0039】
可塑化された部分アセタール化ポリビニルアルコール樹脂は、100質量部の樹脂に対して、25〜45質量部、特に有利には30〜40質量部の可塑剤を含有する。
【0040】
部分アセタール化ポリビニルアルコールは、公知のようにして、加水分解されたポリビニルエステルのアセタール化によって製造される。アルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなど、有利にはブチルアルデヒドを使用することができる。
【0041】
有利なポリビニルブチラール樹脂は、10〜25質量%、有利には17〜23質量%、特に有利には19〜21質量%のビニルアルコール基あるいは0〜20質量%、有利には0.5〜2.5質量%のアセテート基を有する。
【0042】
更なる一変法においては、ポリマーとして、WO2004/063231号A1による、ポリアルデヒド(特にグルタルアルデヒド)及びオキソカルボン酸(特にグリオキシル酸)と架橋されたPVBが使用される。かかる架橋されたPVBは、類似の架橋されていないPVBに対して10〜50%だけ高い粘度を有する。
【0043】
該シートの含水量は、有利には、0.15〜0.8質量%に、特に0.3〜0.5質量%に調整される。
【0044】
本発明により製造されるシートは、特に1又は複数のプラスチック板と少なくとも1つの本発明により製造されたパターン形成されたシートとからなる積層物を製造する場合に使用することができ、その際に、プラスチックシート(機能シート)は、本発明により製造されるシートのエンボス加工されていない側の間に配置されている。
【0045】
最も簡単な場合には、かかる積層物は、5つの層、すなわちガラス/シート/機能シート/シート/ガラスからなり、その際、シートのエンボス加工された側がガラスに面しており、かつシートのエンボス加工されていない側が機能シートに面している。
【0046】
機能シートとしては、有利には、金属被覆されていてよい、10〜100μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレートシート(PET)が使用される。この種のシートは、例えばWO97/03763号から公知である。こうして製造された積層物は、建築分野での複合ガラスとして、又は自動車又は航空機用のガラスとして使用することができる。
【0047】
前記の積層物の製造に際して、まずガラス/プラスチック板と該シートから、圧縮、真空バッグ又は真空リップによって予備複合物を製造する。予備複合積層物は、一般になおも空気を含むことによって軽く混濁している。積層物の最終的な製造は、オートクレーブ中で、例えばWO03/033583号に従って行われる。
【実施例】
【0048】
72.5質量%のPVB、25.0質量%の3G8からなり、付着防止剤としてカリウム塩とマグネシウム塩とを有し、両側の粗度Rzが5μm以下である、可塑剤を含有するPVBシートを、図3による装置でエンボス加工した。
【0049】
装置パラメータ:
エンボスローラ直径: 245mm
硬質ゴムローラ 70±5のショアA
ゴムローラ直径: 255mm
エンボスローラの粗度: 約80μm
表面被覆: PTFE
以下のエンボス特性を有するシートが得られた:
【表1】

【0050】
こうして得られたシートの2つを、エンボス加工されていない側上で、厚さ50μmを有するPETシートと一緒にした。
【0051】
このシート積層体を、引き続き2つのガラス板の間に配置し、そして95℃で真空チャンバにおいて200ミリバール(絶対圧)で25分間処理して、ほぼ透明な予備複合物を得た。この予備複合物を、オートクレーブ中で125℃、12バールで90分の時間にわたり処理して、複合ガラスを得た。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明による方法の一変法を図示している。
【図2】図2は、本発明による方法の一変法を図示している。
【図3】図3は、本発明による方法の一変法を図示している。
【符号の説明】
【0053】
a エンボス加工されるべきシート、 b エンボスローラ、 c 加圧ローラ、 d ローラ対、 e エンボスローラ、 f 加圧ローラ、 g ローラ対、 d′ 温度調節ローラ対、 e′ 加圧ローラ、 f′ エンボスローラ、 g′ 温度調節ローラ対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とし、第一の側の粗度Rz=1〜30μmと第二の側の粗度Rz=20〜100μmを有するシートを製造するにあたり、以下の方法工程:
a. 部分アセタール化ポリビニルアルコールを基礎とし、両側の粗度Rz=1〜30μmを有するシートを提供する工程、及び
b. シートの一方の側を、相応して粗面処理された80〜170℃の温度のエンボスローラと、0〜60℃の温度の加圧ローラとの間でエンボス処理して、エンボス加工された表面の粗度Rz=20〜100μmを有するシートを得る工程
によって製造する方法において、該加圧ローラが50〜80のショアA硬度を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、シートに、エンボスローラと加圧ローラとの間で、線圧20〜80N/mmを加えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、加圧ローラの表面が、ゴム又はEPDMからなることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法において、エンボスローラの温度差がローラの幅と周長とにわたって2℃未満であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法において、加圧ローラの温度差がローラの幅と周長とにわたって2℃未満であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法において、シートのエンボス加工された側の表面が、粗度Rz20〜80μmを有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法において、シートの温度を、方法工程b)の前及び/又は後に、−10〜+20℃に調整することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法において、シートのエンボス加工された側を冷却することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法において、シートのエンボス加工されていない側を冷却することを特徴とする方法。
【請求項10】
1又は複数のプラスチックシートと、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により製造された少なくとも2つのシートとからなり、プラスチックシートがシートのエンボス加工されていない側の間に配置されている積層物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−276474(P2007−276474A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97291(P2007−97291)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】