説明

部分DPSK(PDPSK)伝送システム

【課題】光受信器が、帯域幅制限伝送システムから位相変調光信号を受信する光入力を備える遅延干渉計を有する復調器を含み、光信号を最適に受信する。
【解決手段】遅延干渉計は、受信器性能を向上させる量だけ位相変調光信号のシンボルレートよりも大きな自由スペクトル領域を有する。受信器は、第1及び第2の光検出器を有する差動検出器も含む。第1の光検出器は、遅延干渉計の建設的光出力に光学的に結合される。第2の光検出器は、遅延干渉計の相殺的光出力に光学的に結合される。差動検出器は、第1の光検出器によって生成される第1の電気検出信号と第2の光検出器によって生成される第2の電気検出信号とを結合して、電気受信信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において使用されるセクション見出しは、単に編成を目的としたものであり、本願に記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2006年4月26日に出願された「Quasi Differentially Demodulated DPSK and Quasi Differentially Demodulated DQPSK Modulation Formats(QD−PSK/QD−QPSK)」という名称の米国仮特許出願第60/795,121号明細書の優先権を主張するものであり、この出願全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
チャネル速度40Gb/s以上で動作するDWDM光ファイバ伝送システムは、潜在的に大きなファイバ容量を有するとともに、低チャネルレートシステムと比較して1伝送ビット当たりのコストが低いため、非常に望ましい。現在、多くのDWDM光ファイバ伝送システムが、チャネルレート10Gb/sで動作している。こういった40Gb/s伝送システムが現在存在している10Gb/sトランスポートアーキテクチャに適合することが望ましい。
【0004】
40Gb/s DWDM伝送システムの変調フォーマットは、高い光信号対雑音比(OSNR)感度を有するものが選択されなければならない。OSNR感度が高いとは、低いOSNRで十分に伝送の所望のビットエラーレート(BER)が維持されること、すなわちシステムが、高レベルの光学雑音が存在する場合であっても所望のBERで動作可能なことを意味する。さらに、既存のシステムは帯域幅を制限する50GHzチャネル間隔向けの光学マルチプレクサ及び光学デマルチプレクサを含むことがあるため、40Gb/s DWDM伝送システムの変調フォーマットは、光フィルタリングに対して耐性を有するものが選択されなければならない。また、既存のシステムは、多くの縦続接続光学アドドロップマルチプレクサを含むことがある。
【0005】
位相整形バイナリ伝送(PSBT:Phase−Shaped−Binary−Transmission)フォーマットが、そのスペクトルの狭さにより40Gb/s DWDM伝送システムに検討されてきた。しかし、PSBTは比較的よくないOSNR受信感度を有し、これは、低BERを得るために比較的高いOSNRが必要なことを意味する。また、OSNR受信感度は、適用される光フィルタリングのレベルによって左右される。
【0006】
また、差動バイナリ位相偏移変調(DBPSK:Differential Binary Phased Shift Keying)と呼ばれることもある差動位相偏移変調(DPSK)も、40Gb/s DWDM伝送システムに検討されてきた。DPSK伝送システムは優れたOSNR感度を有する。差動受信器と呼ばれることもある平衡直接検出受信器(balanced direct detection receiver)を使用するDPSK伝送システムが、NRZシステム及びPSBTシステム等のオンオフ変調システムと比較してOSNR感度をおよそ3dB向上させることが明らかになっている。しかし、DPSK伝送システムは良好なフィルタリング耐性を有さない。
【0007】
さらに、差動四相位相偏移変調(DQPSK)も40Gb/s DWDM伝送システムに検討されてきた。DQPSKは、データレートの半分のシンボルレートを使用する。例えば、DQPSKシステムでのデータレート43Gb/sは、毎秒21.5ギガシンボルに対応する。したがって、DQPSK伝送システムは、従来のフォーマット及びDPSKと比較して狭いスペクトル帯域幅、高い波長分散耐性、及び偏波モード分散(PMD)に関して高い耐性を有する。しかし、DQPSK伝送システムは、DPSK伝送システムよりもおよそ1.5−2dB低い受信器感度を有する。さらに、送信器及び受信器が両方とも、DPSK送信器/受信器よりもかなり複雑である。
【0008】
DPSK受信器及びDQPSK受信器は、送信された光信号の位相変調を、直接検出受信器で検出することができる振幅変調信号に変換する1つ以上の光復調器を使用する。通常、光復調器は、光信号を2つの部分に分け、一方の部分を他方の部分よりも遅延差Δtだけ遅延させ、最後に2つの部分を再結合して、送信器での光信号に変調された位相に依存する建設的干渉又は相殺的干渉を実現する遅延干渉計として実施される。
【0009】
DPSK信号及びDQPSK信号が、遅延差Δt=nTを有する遅延干渉計によって最適に受信されることが一般通念である。但し、n=1,2,3...であり、T=1/Bはシンボルタイムスロットであり、Bはシンボルレートである。例えば、非特許文献1内の理論的研究を参照のこと。非特許文献2内の実験的研究も参照のこと。
【0010】
シンボルタイムスロットよりも短いか又は長い遅延を有する遅延干渉計を使用すると、DPSK信号及びDQPSK信号を受信する際にいくらかの受信器性能ペナルティが発生することも一般通念である。例えば、非特許文献3内の単一チャネルDPSKシステムの研究を参照のこと。ウィンザー(Winzer)及びキム(Kim)の参照文献によれば、性能ペナルティは、遅延干渉計の遅延差Δtがシンボルタイムスロットから外れるにつれて、すなわち遅延干渉計の自由スペクトル領域(FSR)=1/Δtが信号シンボルレートから外れるにつれて、略放物線の関係で増大する。非特許文献4内の単一チャネルDPSKシステムの研究も参照のこと。この参照文献において、著者は、OSNR感度の低下が通常、1/Δtと異なるFSRによって発生する旨を教示している。しかし、Y.C.シェ(Hsieh)らは、遅延干渉計を積極的に制御する必要なく任意のITU周波数で単一チャネルを動作できるように、性能ペナルティに拘わらず、50GHzのFSRを有する遅延干渉計を使用することを提案している。Y.C.シェ(Hsieh)らもピーター J.ウィンザー(Peter J.Winzer)らも、狭い光バンドパスフィルタリング又はマルチチャネル用途、すなわち高密度波長分割多重方式(DWDM)用途で通常必要な光学フィルタ使用の影響を全く考慮していない。したがって、現在一般的に考えられているのは、DPSK信号及びDQPSK信号が、シンボルタイムスロットに等しい遅延差を有する遅延干渉計で最適に受信されるということである。
【0011】
DPSK変調フォーマット及びDQPSK変調フォーマットの両方が、2つの隣接するシンボル間で光強度が一定であることができる非ゼロ復帰(NRZ)変形及び光強度が各シンボル間で常に0に落ちるか又は戻るゼロ復帰(RZ)変形に使用されている。強度は、データ信号が多くの連続した0又は1を含む場合であっても0に戻る。RZ型変調フォーマットを使用する送信器は、NRZ型変調フォーマットを使用する送信器よりも良好なOSNR受信器感度及びファイバ非線形性に対する耐性を実現することができる。通常、ゼロ復帰変調パルスはパルスカービング(pulse carving)技法を使用して作られる。
【非特許文献1】P.A.Humbletら「On the bit error rate of lightwave systems with optical amplifiers」J.Lightwave Technol.、1576−1582頁、1991年
【非特許文献2】A.H.Gnauckら「2.5Tb/s(64×42.7Gb/s)transmission over 40×100km NXDSF using RZ−DPSK format and all−Raman amplified spans」proceeding of OFC,post deadline paper FC2、2002年2月
【非特許文献3】Peter J.Winzer及びHoon Kim「Degradations in Balanced DPSK Receivers」IEEE Photonics Technology Letters、第15巻、1282、9号、2003年9月
【非特許文献4】Y.C.Hsiehら「Athermal Demodulator for 42.7−Gb/s DPSK Signals」proceeding of ECOC、paper Th1.5.6、2005年9月
【0012】
本発明の態様は、添付図面と併せて以下の説明を参照することによってよりよく理解することができる。これら図中の同一又は同様の要素は、同じ参照番号で示し得る。これら同様の要素についての詳細な説明は繰り返さないことがある。図面は必ずしも一定の縮尺であるとは限らない。当業者は、以下に説明される図面が単に例示のためのものであることを理解するであろう。図面は、本発明の教示の範囲を限定することを決して意図されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本教示を各種実施形態及び例と関連して説明するが、本教示がこのような実施形態に限定されることは意図されない。逆に、本教示は、当業者に理解されるように、各種代替、変更、及び均等物を包含する。
【0014】
例えば、本発明によるPDPSK受信器の多くの変形があることを理解されたい。特に、本発明の方法及び装置がいずれの特定の種類の復調器にも限定されないことを理解されたい。さらに、本発明の方法及び装置が、RZ型変調及びNRZ型変調を含むいかなる種類のマルチレベル位相変調とも併用可能なことも理解されたい。
【0015】
本発明が動作可能である限り、本発明の方法の個々のステップを任意の順及び/又は同時に実行してよいことを理解されたい。さらに、本発明が動作可能である限り、本発明の装置及び方法が説明される実施形態のうちの任意の数又はすべての実施形態を含むことができることを理解されたい。
【0016】
本発明は、部分的には、DPSK信号及びDQPSK信号が、シンボルタイムスロットに等しい遅延差を有する遅延干渉計で最適に受信されるという現在の一般通念が、DPSK信号又はDQPSK信号が狭くフィルタリングされるシステムには当てはまらないことの認識である。逆に、このような狭くフィルタリングされるシステムの場合、DPSK信号及びDQPSK信号がシンボルタイムスロットよりもかなり低い遅延差を有する遅延干渉計で最適に受信されることが発見された。
【0017】
本発明は、改良されたOSNR受信感度性能を有する変更されたDPSK(又はDQPSK)変調フォーマットを送受信する方法及び装置を特徴とする。本明細書では、本発明の変更されたDPSK(又はDQPSK)変調フォーマットは部分差動位相偏移変調(PDPSK:Partial Differential Phased Shift Keying)と呼ばれる。用語「PDPSK」は、本明細書では、従来のDPSK変調フォーマット及びDQPSK変調フォーマットの両方を指すために使用される。用語PDPSKは、米国仮特許出願第60/795,121号明細書では、準差動復調DPSK(Quasi Differentially Demodulated DPSK)変調フォーマット及び準差動復調DQPSK(Quasi Differentially Demodulated DQPSK)変調フォーマットと呼ばれている。これら用語は等価である。
【0018】
特に、本発明のPDPSK復調技法は、本明細書に記載される任意の種類の狭い光フィルタリングを使用する送信器、光学リンク、及び/又は受信器等の低減された送信器帯域幅、光学リンク帯域幅、及び/又は受信器帯域幅を有するシステムを含むスペクトル的に効率のよいな伝送システムの性能を向上させる。さらに、本発明のPDPSK復調技法は、かなりの波長分散を有するシステムの性能を向上させる。一実施形態では、本発明の変更されたシステムは、1つのシンボルタイムスロットよりも小さな遅延差を使用して受信器においてDPSK/DQPSK型遅延干渉計復調を実行することによって実現される。具体的な一実施形態では、本発明の変更されたシステムは、1つのシンボルタイムスロットの0.85未満の遅延差を使用して受信器においてDPSK/DQPSK型遅延干渉計復調を実行することによって実現される。これは、1つのシンボルタイムスロット以上の遅延差を使用する既知のDPSK/DQPSK復調技法とは対照的である。
【0019】
図1は、送信器102及びPDPSK信号を受信する本発明によるPDPSK受信器104を含む本発明によるPDPSK伝送システム100の一実施形態の概略図を示す。PDPSK送信器102は、プレコーダ108の入力に電気的に接続された出力を有するFEC/フレーマ106を含む。プレコーダ108の出力は、マルチプレクサ110の入力に電気的に接続される。マルチプレクサ110の出力は、電子駆動回路112に電気的に接続される。
【0020】
駆動回路112の出力は、NRZマッハ−ツェナー干渉計(MZI)変調器116の変調入力に電気的に接続される。本発明が図1に示されるMZIベースの変調器に限定されないことを理解されたい。
【0021】
レーザ118の出力が、NRZ変調器116の光入力に光学的に接続される。NRZ変調器116の出力は、パルスカービングRZ変調器(pulse carving RZ modulator)120の光入力に光学的に結合される。あるいは、NRZデータをRZに変換する任意の種類のパルスカービングデバイスを使用することができる。正弦波源122の出力が、パルスカービングRZ変調器120の変調入力に電気的に接続される。NRZ型変調信号のみを生成する実施形態は、RZ変調器120及び正弦波源122を含まない。
【0022】
送信器によっては、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)等の光ファイバ増幅器124を使用して、RZ変調器120によって生成された信号を増幅するものがある。このようなEDFAは当該技術分野において周知である。このような送信器では、RZ変調器120の光出力は、ファイバ増幅器124の入力に光学的に結合される。
【0023】
動作に際して、PDPSK送信器102内のFEC/フレーマ106は、フレーム及び送信中のデータに対する順方向誤り訂正を提供する。プレコーダ108は、データの差動位相偏移変調符号化を実行する。いくつかの実施形態では、プレコーダ108は別個の構成要素であり、他の実施形態では、プレコーダ108は他の構成要素の一体部分である。いくつかの実施形態では、差動符号化機能は受信器で実行され、この場合には後符号化(postcoding)と呼ばれる。
【0024】
マルチプレクサ110はデータを多重化する。駆動回路112は、フレーム化され多重化されたデータ信号を順方向誤り訂正と共に、NRZ変調器116を使用しての変調に適したレベルまで増幅する。NRZ変調器116は、レーザ118によって生成される光信号にNRZフォーマットを使用して符号化データを変調する。正弦波源122によって駆動されるRZ変調器120は、変調NRZ信号を変調RZ信号に変換するために必要なパルスカービング(pulse carving)を実行する。NRZ変調フォーマットのみを生成する実施形態では、パルスカービングは実行されない。伝送システムによっては、ファイバ増幅器124が使用されて、変調RZ信号をチャネル又は伝送線(図示せず)を経由しての送信に望ましい信号レベルに増幅する。その結果生成されるRZ変調信号は、DPSK/DQPSK変調データ信号である。
【0025】
PDPSK受信器104は、チャネルを経由して送信されたDPSK/DQPSK変調データ信号を受信する入力を含む。いくつかの受信器は、EDFA等の光ファイバ増幅器126を受信器104の入力に含む。受信器104の入力は、ファイバ増幅器126の光入力に光学的に結合される。いくつかの受信器は、適応分散補償器(ADC)128も含む。このような受信器では、ファイバ増幅器126の光出力が、ADC128の光入力に光学的に結合される。
【0026】
ADC128の光出力が、光復調器130の入力に光学的に結合される。本発明による多くの受信器では、復調器130は、図1に示すように、少なくとも1つのマイケルソン干渉計又は少なくとも1つのMZIを使用して実現される遅延干渉計132である。遅延干渉計132は、固定光遅延を提供することができ、又は可変光遅延134を含むことができる。固定光遅延又は可変差動遅延は、本明細書に記載されるように1ビット期間未満の遅延を提供する。遅延干渉計134は、建設的出力136及び相殺的出力138を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、可変光遅延134は連続可変光遅延である。他の実施形態では、可変光遅延134は、所定数の離散した光遅延を切り替えることが可能である。これら可変光遅延は、多くの方法で構築することができる。例えば、連続可変光遅延は、平行移動可能なミラー又は平行移動可能なコリメータを使用して構築することができる。連続可変光遅延は、遅延干渉計132のアームの1本に可変光学厚さを有する透明材料を使用して構築することもできる。切り替え可能な可変光遅延は、異なる光学厚さを有する透明材料を物理的に導入することによって作ることができる。切り替え可能な可変光遅延は、遅延干渉計132内部に回転ミラーを位置決めして、異なる時間遅延を有する、異なるパスを切り替えることによって作ることもできる。さらに、切り替え可能可変光遅延は、様々な種類のMEMS技術を使用して作ることもできる。
【0028】
平衡又は差動受信器144の第1の入力140及び第2の入力142は、遅延干渉計134の建設的出力136及び相殺的出力138のそれぞれに光学的に結合される。多くのPDPSK受信器では、差動受信器144は、第1の光検出器146及び第2の光検出器148を使用して実現される。差動受信器144の出力が、デマルチプレクサ150の入力に電気的に結合される。いくつかのPDPSK受信器では、電子増幅段(図示せず)が差動受信器144とデマルチプレクサ150との間に使用される。デマルチプレクサ150の出力はFEC/フレーマ152に電気的に接続される。デマルチプレクサ150は、通常、データ及びクロック回復機能を実行する。
【0029】
動作に際して、光学的に変調されたDPSK/DQPSK信号は、PDPSK受信器104の入力で受信され、ファイバ増幅器126によって増幅される。いくつかのPDPSK受信器システムでは、ADC128が分散補償を実行する。光復調器130内の遅延干渉計132は、建設的出力136においてPDPSK位相変調信号を振幅変調光信号に変換する。遅延干渉計132はまた、相殺的出力138において反転振幅変調光信号を生成する。建設的出力136及び相殺的出力138のデータの極性は、遅延干渉計138の2本の干渉計アームの相対位相をおよそπだけ変更することによって反転することができる。
【0030】
2つの遅延干渉計出力及び2つの差動検出器入力の間の差動遅延は、通常、シンボルタイムスロットの30%未満である。いくつかの実施形態では、差動遅延は10%未満である。遅延干渉計132の建設的ポート136及び相殺的ポート138から伝搬する相対光パワーは、遅延干渉計132のFSR及び伝送線での信号の光フィルタリングの程度の関数である。例えば、遅延干渉計132のFSRが増大すると、建設的ポート136内の光パワーは、相殺的ポート138内の光パワーに比べて増大する。
【0031】
復調器130内の遅延干渉計132の建設的出力136及び相殺的出力138からの出力信号は、第1の光検出器146及び第2の光検出器148を含む差動受信器144を使用して検出される。第1の光検出器146は、建設的出力136から伝搬する光信号に比例する電気検出信号を生成する。第2の光検出器148は、相殺的出力138から伝搬する出力信号に比例する電気検出信号を生成する。
【0032】
差動受信器144は、第1及び第2の光検出器146、148によって生成された電気検出信号を互いから電気的に減算して、差動検出信号を作る。本発明によるDPSK受信器及びDQPSK受信器は、配置点間の符号化位相差がπ及びπ/2とはそれぞれ異なる位相変調信号を受信することもできる。本発明の方法及び装置を任意の光学又は電気的等化器と組み合わせて使用することができることを理解されたい。
【0033】
当業者は、既知のDPSK/DQPSK伝送システムの最良のOSNR受信感度性能が、遅延干渉計の2本のアーム間の時間遅延Δtが光DPSK/DQPSKデータ信号の整数のシンボルタイムスロット数に厳密に等しい場合に得られるものと理解している。さらに、当業者は、こういったシステムのOSNR及び受信器感度のペナルティが、Δtがその最適値から外れるにつれて急速に(大半のシステムでは二次的に)増大するものと理解している。例えば、ピーター J.ウィンザー(Peter J.Winzer)及びフーンキム(Hoon Kim)IEEE Photonics Technology Letters、第15巻、9号、1282−1284頁、2003年9月を参照のこと。したがって、当業者は、遅延干渉計132の最適自由スペクトル領域(FSR=1/Δt)が1/nTに等しく、n=1という特殊な場合に、最適自由スペクトル領域が信号のシンボルレートに等しいものと理解している。干渉計の用語「自由スペクトル領域」は、隣接する伝送ピーク間の(周波数空間での)距離として当該技術分野において周知である。
【0034】
本発明は、部分的は、遅延干渉計132によって生成される遅延差を1ビット期間未満に低減すると、高データレート伝送システムにおいて狭い光フィルタリング及び波長分散に対する伝送システムの耐性が大幅に低減するという認識である。周知の式Δt=nT(但し、n=1,2,3...,T=1/Bがシンボルタイムスロットであり、Bがシンボルレートである)が、特定の状況下でのみ最適遅延を表すことが発見された。特に、式Δt=nT(但し、n=1,2,3...)が、大きな光フィルタリングがなく(すなわち、フィルタリングが弱く)、送信器102及び受信器104によって処理されるデータ信号が略理想的な立ち上がり/立ち下がり時間を有する状況下のみ最適遅延を表すことが発見された。本発明は、図2に関連して説明するように、システムの全帯域幅を個々の構成要素帯域幅を結合したものとして見ることによって理解することができる。
【0035】
図2は、各種伝送システム構成要素の個々の帯域幅を示すPDPSK伝送システム200の概略図を示す。図1及び図2の両方を参照すると、伝送システム200の概略図は、送信器102の帯域幅に対応する送信器帯域幅(BTX)202を示す。送信器帯域幅(BTX)202は、あらゆるNRZ変調器116及びRZ変調器120並びにあらゆるデータフォーマット回路及び駆動回路106、108、110、及び112等のあらゆる送信器構成要素の帯域幅を含む。
【0036】
PDPSK伝送システム200の概略図は、光伝送線帯域幅(BTL)204も示す。光伝送線帯域幅(BTL)204は、伝送線システムに沿った任意の光フィルタ、任意の光アドドロップマルチプレクサ(OADM)若しくは再構成可能光アドドロップマルチプレクサ(ROADM)、WDMマルチプレクサ、及びWDMデマルチプレクサ等の各種構成要素の帯域幅を含む。
【0037】
光伝送システムは、信号が送信器から受信器に送信される際に、送信器によって生成された送信スペクトルの中心周波数から最も遠い周波数成分が除去される場合、帯域幅制限されているとみなされる。光伝送線帯域幅(BTL)は、伝送線帯域幅と送信器からの信号の帯域幅との関係に応じて「広い」又は「狭い」とみなされる。ベースバンドデータ信号の帯域幅は、1をそのシンボルタイムスロットで除算した数におよそ等しい。搬送波波長に変調される信号の帯域幅は、そのベースバンド帯域幅の2倍であり、これは、光搬送波波長に変調されるデータ信号の帯域幅がそのシンボルレートのおよそ2倍であることを意味する。したがって、伝送線帯域幅は、送信器のシンボルレートのおよそ2倍よりも小さい場合に「狭い」とみなされる。
【0038】
PDPSK伝送システム200の概略図は、図1に示す実施形態では、遅延干渉計に関連する帯域幅、例えばFSRである復調器帯域幅(BDI)206も示す。さらに、PDPSK伝送システム200の概略図200は、図1に示す実施形態では、差動受信器144の帯域幅及びDemux150の入力段を含む受信器帯域幅(BRX)208も示す。
【0039】
本発明は、部分的には、FEC前のビットエラー統計、OSNR受信器感度、分散耐性等の伝送システム性能メトリックを、少なくとも1つの他のシステム構成要素帯域幅の変化に応答して遅延干渉計帯域幅(BDI)204を変更することによって最適化できるという認識である。すなわち、伝送システム性能メトリックは、送信器帯域幅(BTX)202、伝送線帯域幅(BTL)204、及び受信器帯域幅(BRX)208のうちの少なくとも1つの変化に応答して、遅延干渉計帯域幅(BDI)204を変更することによって最適化することができる。換言すれば、個々の構成要素帯域幅BTX202、BTL204、BDI206、及びBRX208は、伝送システムの全体有効帯域幅の部分帯域幅である。したがって、最適伝送システム性能メトリックを実現するには、伝送システム構成要素の1つの帯域幅の変更を、少なくとも1つの他の構成要素の帯域幅の変更によって補償しなければならない。
【0040】
例えば、FEC前のビットエラー統計、OSNR受信器感度、及び分散耐性等の最適伝送システム性能メトリックを実現するには、伝送システム構成要素帯域幅BTX202、BTL204、BDI206、及びBRX208のうちの少なくとも1つが低減した場合、少なくとも1つの他の伝送システム構成要素帯域幅を増大しなければならない。実際の高データレート伝送システムでは、恐らく、送信器帯域幅(BTX)202、伝送線帯域幅(BTL)204、及び受信器帯域幅(BRX)208のうちの少なくとも1つが低減される。したがって、少なくとも1つの最適伝送システム性能メトリックを実現するには、遅延干渉計帯域幅(BDI)206を増大させなければならない。遅延干渉計帯域幅、例えばFSR(BDI)206は、T未満の遅延干渉計の遅延(Δt)を選択することによって増大させることができる。但し、T=1/Bはシンボルタイムスロットであり、Bはシンボルレートである。シミュレーション及び実験の両方により、T未満の遅延干渉計の遅延を選択することで、伝送システムでのFEC前のビットエラー統計、OSNR受信器感度、及び分散耐性を向上できることが確認されている。
【0041】
本発明によるFEC前のビットエラー統計、OSNR受信器感度、及び分散耐性等の最適伝送性能メトリックの実現は、遅延干渉計132の自由スペクトル領域(FSR)に関して説明することもできる。遅延干渉計132の最適FSRは、伝送システム全体で実行される光フィルタリング及び波長分散の程度に依存する。伝送信号の狭いスペクトルフィルタリングを使用する伝送システム等のスペクトル的に効率のよい伝送システムでは、多くの伝送システム性能メトリックを最適化する遅延干渉計132の最適FSRは、信号のシンボルレートよりも大きい。すなわち、再構成可能な光アドドロップマルチプレクサ(ROADM)、光マルチプレクサ/デマルチプレクサインタリーバ、並びに送信器電子回路、光変調器、受信器電子回路、及び検出器内の帯域幅制限装置等の帯域幅制限装置を有する伝送システムでは、多くの伝送システム性能メトリックを最適化する遅延干渉計132の最適FSRは、信号のシンボルレートよりも大きい。
【0042】
本発明の遅延干渉計132が、特定の光受信器性能に向けて選択された固定光遅延を有する遅延干渉計132として具現化可能なことを理解されたい。あるいは、本発明の遅延干渉計132が、光受信器の性能を変更させる光遅延を調整する手段又はシステムが変化するチャネル条件又は変化する送受信条件に適応する手段を提供する可変遅延134を有する遅延干渉計132として具現化可能であることを理解されたい。
【0043】
さらに、本発明による光受信器の性能は、遅延干渉計132の建設的ポート136から伝搬される光信号の光パワーと相殺的ポート138から伝搬する光信号の光パワーとの比を変更することによって最適化することができる。建設的ポート136から伝搬される光信号の光パワーと相殺的ポート138から伝搬する光信号の光パワーとの比は、図3A−図3Cに説明するように、固定若しくは可変減衰器及び/又は可変増幅器のうちの少なくとも1つを使用することによって変更することができる。したがって、本発明の一態様では、本発明のPDPSK受信器は、変化する伝送システム条件に応答して、遅延干渉計132内の光遅延並びに差動受信器144の少なくとも1本のアームの利得及び/又は減衰のうちの少なくとも1つを変更する適応受信器である。本明細書において説明する適応方式は、インストール時に実行し、その後、システムの動作中に連続して調整することもでき、又は工場で事前設定することもできる。
【0044】
図3A−図3Cは、本発明による適応PDPSK受信器300、340、380の概略図を示す。用語「適応受信器(adaptive receiver)」は、本明細書では、チャネルの変化あるいは送信器及び/又は受信器の変化に応答して適応又は変更する受信器を意味するものとして定義される。本発明のこの態様では、PDPSK受信器300、340、380はすべて、遅延干渉計302のFSRを変更又は調整するように調整可能な可変光遅延304を有する遅延干渉計302を含む。遅延干渉計302のFSRは、伝送路に沿ったどこかの場所でのフィルタリングの変化等のチャネル若しくは伝送線の各種変化及び/又は送信器及び受信器の変化に応答して変更又は調整される。可変光遅延304は、光遅延のレベルを制御する制御入力306を含む。制御入力306は、送信器帯域幅(BTX)202、伝送線帯域幅(BTL)204、及び受信器帯域幅(BRX)208等の現在の伝送システム条件に関連する制御信号を生成する制御回路又はプロセッサ308の出力に電気的に接続される(図2参照)。
【0045】
図3A−図3Cに示される適応PDPSK受信器300、340、380は、差動受信器の各アームに信号レベルを調整する手段も備える。図3Aの300は、差動受信器310であって、差動受信器の第1及び第2のアームのそれぞれに第1及び第2の光検出器312、314を有する平衡検出器を含む差動受信器310を示す。第1及び第2の減衰器316、318が、第1及び第2の光検出器312、314のそれぞれの出力に電気的に結合される。第1及び第2の減衰器316、318は、電気的減衰を追加することによって第1及び第2のフォトダイオード312、314からの信号寄与分を変更するように調整可能である。いくつかの実施形態では、プロセッサ308は、第1及び第2の減衰器316、318によって提供される減衰レベルを制御する、現在の伝送システムの条件に関連する制御信号を生成する。
【0046】
図3Bは、差動検出器342を含む適応PDPSK受信器340を示す。第1及び第2の光減衰器344、346が、遅延干渉計302と遅延干渉計342内の第1及び第2の光検出器348、350のそれぞれとの間に光学的に結合される。第1及び第2の光減衰器344、346は、差動受信器340の1本のアームの光減衰を追加することによって第1及び第2のフォトダイオード348、350からの信号寄与分を変更するように調整可能である。
【0047】
図3Cは、差動受信器382であって、第1及び第2のアームのそれぞれに第1及び第2のフォトダイオード384、386を有する差動受信器382を含む適応PDPSK受信器380を示す。第1及び第2の電子増幅器388、390が、第1及び第2のフォトダイオード384、386のそれぞれの出力に電気的に結合される。第1及び第2の電子増幅器388、390は、電気利得を追加することによって第1及び第2のフォトダイオード386からの信号寄与分を変更するように調整可能である。
【0048】
動作に際して、制御信号がプロセッサ308により伝送システムパラメータ及びメトリックの測定から生成される。これら伝送システムパラメータ及びメトリックは、各種伝送システム構成要素の帯域幅又は伝送システムの分散レベルに関連することができる。制御信号は、可変光遅延302の制御入力306に適用される。次に、適応PDPSK受信器300、340、380は、制御入力306に適用される制御信号に応答して、遅延干渉計302の可変光遅延306のFSRを調整する。いくつかの実施形態では、FEC前のビットエラー統計、OSNR受信器感度、及び/又は分散耐性等の特定の性能メトリックを最適化するように可変光遅延306のFSRを自動的に変更する制御信号が生成される。いくつかの実施形態では、制御信号は、連続調整可能なように可変光遅延306のFSRを変更する。他の実施形態では、制御信号は、可変光遅延306のFSRを複数の所定のFSR値のいずれかに変更する。
【0049】
本発明の方法及び装置が、DXPSK伝送システム(但し、X=2,4,8,16...)を含むDPSK/DQPSK伝送システム等のあらゆる種類の位相変調システムに適用可能なことを理解されたい。さらに、本発明の方法及び装置は、NRZ型変調フォーマット又はRZ型変調フォーマットのいずれをも使用することができる。本発明の方法及び装置が、あらゆる種類の伝送システムに適用可能なことも理解されたい。
【0050】
本発明によるPDPSK伝送システムは、既知のDPSK/DQPSK伝送システムよりも向上したOSNR受信器感度を有することが明らかになっている。向上は、RZ型伝送フォーマット及びNRZ型伝送フォーマットの両方で実証されている。本明細書に提示されるシミュレーション結果及び実験結果は、シンボルレート43Gb/sの場合である。しかし、本発明の方法及び装置が任意のシンボルレートで実施可能なことが理解される。しかし、本発明の方法及び装置は、43Gb/sデータレート以上において、既知のシステムと比較して受信性能メトリックを大幅に向上させることができる。
【0051】
図4Aは、本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のNRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データ400を提示する。図4Bは、本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データ450を提示する。二次超ガウス光フィルタ伝達関数(second order super−Gaussian optical filter transfer function)がシミュレーションに使用された。
【0052】
図4A及び図4Bに提示されるアイパターン図400、450は、受信器の遅延干渉計132(図1)のFSRが43GHzシンボルレートに等しいとき、伝送システム内の光フィルタリングが弱い(強いフィルタリングではない)ほど、広く開かれたアイパターン図が得られることを示す。広く開かれたアイパターン図は、このような伝送システムに望ましい低ビットエラーレート及び高OSNR受信器感度を示す。当該技術分野において「厳しいフィルタリング」としても知られている用語「強いフィルタリング」は、本明細書では狭通過帯域フィルタリングとして定義される。図4に示される28GHz帯域幅フィルタリングは40GHz帯域幅フィルタリングよりも強いフィルタリングであり、40GHz帯域幅フィルタリングは80GHzフィルタリングよりも強いフィルタリングである。逆に、図4A及び図4Bに提示されるデータ400、450は、遅延干渉計132のFSRが43GHzシンボルレートに等しいとき、光フィルタリングが強いほど、より閉じられたアイパターン図が得られることを示す。より閉じられたアイパターン図は、開かれたアイパターン図と比較して固定信号対雑音比に対して高いビットエラーレートであることを示す。
【0053】
図4A及び図4Bに提示されるデータ400、450は、受信器の遅延干渉計132(図1)のFSRがシンボルレートよりも大きい(すなわち、FSRDIが50GHz及び66.7GHzに等しい)場合、遅延干渉計132のFSRが43GHzシンボルレートに等しい受信器と比較して、フィルタリングが弱い(すなわち、フィルタBW=80GHz)ときに存在するアイパターン図の歪みが大きくなることも示す。歪みの増大は、固定信号対雑音比に対してビットエラーレートが増大したことを示す。
【0054】
さらに、図4A及び図4Bに提示されるデータ400、450は、受信器の遅延干渉計132(図1)のFSRがシンボルレートよりも大きく(すなわち、FSRDIが50GHz及び66.7GHzに等しく)、光フィルタリングが強い場合、遅延干渉計132のFSRが43GHzシンボルレートに等しい受信器と比較して、アイパターン図がより開かれ、歪みが少ないことを示す。歪みが少ないことは、固定信号対雑音比でビットエラーレートがより低いことを示す。これらデータは、強いフィルタリングを使用する伝送システムにおいて本発明の方法及び装置を使用することによって達成できる性能の利益を視覚的に示す。ビットエラーレートは、このようなシステムにおいて、1ビット期間未満の遅延差、すなわちシンボルレートよりも大きなFSRを使用する遅延干渉計132を使用することによって向上させることができる。
【0055】
図5は、本発明による伝送システムのアイパターン図及びOSNR感度データを測定するために使用された実験用伝送システムの概略図を示す。伝送システム500は、電気光学変調器504を備えたDPSK送信器502を含む。複数の変調器を使用して、データを異なる波長で送信することができる。ドライバ506が変調器504の変調入力に結合される。ドライバ506は、疑似ランダムビットシーケンス(PRBS)を受け取り、それから信号のレベルを変調に適したレベルに調整する。次に、ドライバ506はPRBSを変調器504に加える。
【0056】
マルチプレクサ508が、変調器504の出力に光学的に結合される。マルチプレクサ508は、複数の光学変調信号を多重化して単一の出力光学信号にすることができる。マルチプレクサ508の出力は、第1のインタリーブ装置510に光学的に結合される。第1のインタリーブ装置510は狭帯域フィルタである。本明細書において説明する実験では、インタリーブ装置は超ガウス形(super−Gaussian shape)を有するフィルタである。こういった超ガウス形フィルタのFWHM帯域幅は約42GHzである。こういった超ガウス形フィルタを2つ縦続接続すると、約35GHz帯域幅になり、これらを4つ縦続接続すると約28GHz帯域幅になる。
【0057】
調整可能雑音負荷514が、第1のインタリーブ装置510の出力に結合される。調整可能雑音負荷514の出力は、第2のインタリーブ装置516に結合される。第2のインタリーブ装置516も狭帯域フィルタである。伝送線512の出力は、デマルチプレクサ518の入力に光学的に結合される。デマルチプレクサ518は、光信号を多重分離して、異なる波長をそれぞれ有する複数の光信号にする。
【0058】
伝送システム500は、復調器522を備えたDPSK受信器520も含む。復調器522は、図1に関連して説明した遅延干渉計523を含む。復調器522の差動出力は、差動検出器524の差動入力に光学的に結合される。差動検出器524は、出力に受信信号を生成する。測定機器526が、差動検出器524の出力に電気的に接続される。測定機器は、続く図に提示されるアイパターン図及びOSNRデータ等の実験結果を測定するために使用される。
【0059】
図6は、4つの光フィルタを縦続接続して結合FWHM28GHzを提供する強い光フィルタリングが信号に適用される伝送システムでの4つの異なる遅延干渉計FSR値のNRZ信号及びRZ信号の電気アイパターン図600の実験データを提示する。シンボルレートに等しいFSRを有する遅延干渉計を有する従来のDPSK受信器により受信されるNRZ信号及びRZ信号の電気アイパターン図を示すとともに、本発明に記載されるようにシンボルレートよりも大きなFSRを有する遅延干渉計を有する本発明によるPDPSK受信器によって受信されるNRZ信号及びRZ信号の電気アイパターン図も示す。
【0060】
電気アイパターン図600は、従来のDPSK受信器が、本発明によるPDPSK受信器と比較してNRZ信号及びRZ信号の両方に対してより多くのシンボル間干渉を有することを視覚的に示す。本発明によるPDPSK受信器の電気アイパターン図は、はるかに開かれたアイパターン図を示す。電気アイパターン図は、伝送システム500(図5)の復調器522内の遅延干渉計523に最適なFSRがあるはずであることも視覚的に示す。遅延干渉計FSRが57GHzに等しいPDPSK受信器は、遅延干渉計FSRが67GHzに等しいPDPSK受信器よりもNRZ信号及びRZ信号の両方でより少ない歪みを有することが見て取れる。
【0061】
したがって、電気アイパターン図600は、特定数のフィルタを有する伝送システム、すなわち特定の有効フィルタリングを有する伝送システムに、最適な受信器性能に対応するPDPSK受信器内の遅延干渉計FSRの最適な値が存在し得ることを示す。当業者は、シミュレーション及び実験の両方を実行して、任意の特定の範囲の有効伝送システムフィルタリングでの最適受信器性能に対応する、本発明による復調器に最適な遅延干渉計FSRを判断できることを理解するであろう。
【0062】
図7Aは、従来のDPSK受信器で受信されるNRZ DPSK信号及び本発明によるPDPSK受信器で受信されるNRZ DPSK信号の実験OSNR感度データ700を提示する。図7Aは、50GHzインタリーバ数の関数として特定の固定ビットエラーレートを達成するために必要な受信器OSNRを示す。インタリーバは、図5に関連して説明した狭帯域フィルタである。グラフ702は、50GHzインタリーバ数の関数として2×10−3ビットエラーレートの場合のOSNRデータをdB単位で提示する。2×10−3のBERは、通常、順方向誤り訂正後、1×10−15未満のBERに変換される。グラフ702は、PDPSK受信器が、特定のBERを達成するために従来のDPSK受信器ほど高いOSNRを必要としないことを示す。
【0063】
グラフ704は、50GHzインタリーバ数の関数として10−5ビットエラーレートでの実験OSNRデータをdB単位で提示する。4つの50GHzインタリーバを使用する従来のDPSK受信器を使用して受信される信号のアイパターン図706が提示される。比較として、4つの50GHzインタリーバを有し、FSRが67GHzに等しい本発明によるPDPSK受信器を使用して受信される信号のアイパターン図708が提示される。本発明によるPDPSK受信器を使用して受信された信号のアイパターン図708は、従来のDPSK受信器を使用して受信された信号のアイパターン図706よりも開かれて見え、これは、本発明によるPDPSK受信器によって受信される信号のほうが歪みが少ないことを示す。グラフ704は、PDPSK受信器が、特定のBERを達成するために従来のDPSK受信器ほど高いOSNRを必要としないことを示す。
【0064】
図7Bは、従来のDPSK受信器で受信されるRZ DPSK信号及び本発明によるPDPSK受信器で受信されるRZ DPSK信号の実験OSNR感度データを提示する。グラフ750は、50GHzインタリーバ数の関数としてFEC閾値エラーレートの実験OSNRをdB単位で提示する。FEC閾値は、順方向誤り訂正回路が誤りを除去することができる最大ビットエラーレートレベルである(すなわち、訂正後BERは10−15未満)。グラフ750は、PDPSK受信器が、特定のBERを達成するために従来のDPSK受信器ほど高いOSNRを必要としないことを示す。
【0065】
したがって、図4A、図4B、図6、図7A、及び図7Bに提示されるシミュレーション及び実験データは、本発明の方法及び装置が、シンボルレートよりも大きなFSRを有する遅延干渉計を有する本発明によるPDPSK受信器を使用することにより、狭い光フィルタリングを使用する伝送システムにおいて向上した受信器性能を達成できることを示す。
【0066】
図8Aは、伝送線システムの様々な分散レベルでの従来のDPSK受信器で受信されるDPSK信号と本発明によるPDPSK受信器で受信されるDPSK信号との計算アイパターン図の比較を提示する。計算アイパターン図802は、有効送信器帯域幅(Be)がシンボルレートの0.4倍であり、2つの光フィルタが伝送パスに挿入され、各光フィルタが帯域幅60GHzを有する従来のDPSK受信器を使用して受信されたDPSK信号のアイパターン図である。アイパターン図802は、分散なし、分散75ps/nm、及び分散100ps/nmの場合について提示される。計算アイパターン図800は、分散が75ps/nm及び100ps/nmの場合に受信信号にはるかに多くの歪みが存在することを示す。
【0067】
計算アイパターン図804は、有効送信器帯域幅(Be)がシンボルレートの0.4倍に等しく、2つの光フィルタが伝送パスに挿入され、各光フィルタが帯域幅60GHzを有する本発明によるPDPSK受信器を使用して受信されたDPSK信号のアイパターン図である。計算アイパターン図804は、分散なし、分散75ps/nm、及び分散100ps/nmの場合についても提示される。計算アイパターン図804は、本発明による受信器の分散耐性が、遅延干渉計のFSRがシンボルレート43Gb/sよりも大きい場合に、いくつかの条件下で増大することを示す。
【0068】
図8Bは、伝送線システムの様々な分散レベルでの従来のDPSK受信器で受信されるDPSK信号と本発明によるPDPSK受信器で受信されるDPSK信号との測定OSNRペナルティデータ850をdB単位で提示する。OSNRペナルティデータ850はdB単位で提示される。OSNRペナルティデータ850は、本発明による受信器の分散耐性が、遅延干渉計のFSRがシンボルレートよりも大きい場合にいくつかの条件下で増大することを示す。
【0069】
したがって、計算アイパターン図804及び測定アイパターン図850は、有効送信器帯域幅B、光フィルタ帯域幅B、及び遅延干渉計FSRを適宜選択することにより、分散耐性±100ps/nmが可能なことを示す。計算アイパターン図804及び測定OSNRペナルティデータは、分散耐性が、一般に、遅延干渉計FSRがシンボルレートよりも大きなPDPSK受信器の場合に高いことも示す。さらに、計算アイパターン図804及び測定OSNRペナルティデータは、所与の分散レベル、有効送信器帯域幅(B)、BTLに等しい光フィルタ帯域幅(B)、及び受信器帯域幅(BRX)に対して最適な遅延干渉計FSRが存在することを示す。同様の結果が、NRZ型変調データ及びRZ型変調データの両方で得られた。同様の結果が、正の歪み及び負の歪みに対しても得られた。
【0070】
均等物
本教示を各種実施形態及び例に関連して説明したが、本教示がこのような実施形態に限定されることは意図されない。逆に、本教示は、当業者に理解されるように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行い得る各種代替、変更、及び均等物を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】送信器、及び本発明によるPDPSK信号を受信するPDPSK受信器を含む本発明によるPDPSK伝送システムの一実施形態の概略図を示す。
【図2】伝送システムの各種構成要素の個々の帯域幅を示すPDPSK伝送システムの概略図を示す。
【図3A】本発明による適応PDPSK受信器の概略図を示す。
【図3B】本発明による適応PDPSK受信器の概略図を示す。
【図3C】本発明による適応PDPSK受信器の概略図を示す。
【図4A】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のNRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図4A−1】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のNRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図4A−2】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のNRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図4A−3】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のNRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図4B】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図4B−1】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図4B−2】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図4B−3】本発明による伝送システムでの3つの異なる光フィルタリングレベル及び3つの異なる遅延干渉計FSR値の場合のRZ PDPSK信号の電気アイパターン図の計算データを提示する。
【図5】本発明による伝送システムのアイパターン図及びOSNR感度データを測定するために使用された実験用伝送システムの概略図を示す。
【図6】本発明による伝送システムでの4つの異なる遅延干渉計FSR値のNRZ信号及びRZ信号の電気アイパターン図の実験データを提示する。
【図7A】従来のDPSK受信器で受信されるNRZ DPSK信号及び本発明によるPDPSK受信器で受信されるNRZ DPSK信号の実験OSNR感度データを提示する。
【図7B】従来のDPSK受信器で受信されるRZ DPSK信号及び本発明によるPDPSK受信器で受信されるRZ DPSK信号の実験OSNR感度データを提示する。
【図8A】伝送線システムの様々な分散レベルでの従来のDPSK受信器で受信されるDPSK信号と本発明によるPDPSK受信器で受信されるDPSK信号との計算アイパターン図の比較を提示する。
【図8A−1】伝送線システムの様々な分散レベルでの従来のDPSK受信器で受信されるDPSK信号と本発明によるPDPSK受信器で受信されるDPSK信号との計算アイパターン図の比較を提示する。
【図8A−2】伝送線システムの様々な分散レベルでの従来のDPSK受信器で受信されるDPSK信号と本発明によるPDPSK受信器で受信されるDPSK信号との計算アイパターン図の比較を提示する。
【図8B】伝送線システムの様々な分散レベルでの従来のDPSK受信器で受信されるDPSK信号と本発明によるPDPSK受信器で受信されるDPSK信号との実験OSNRペナルティデータをdB単位で提示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.出力において位相変調光信号を生成し、送信器帯域幅を有する送信器と、
b.前記送信器の前記出力に結合され、伝送線帯域幅を有する光伝送線と、
c.前記光伝送線の光出力に結合される光入力を有すると共に自由スペクトル領域を有する遅延干渉計であって、建設的出力及び相殺的出力のそれぞれに建設的光信号及び相殺的光信号を生成する遅延干渉計、を備える復調器と、
d.前記遅延干渉計の前記建設的出力及び前記相殺的出力のそれぞれに光学的に結合される建設的信号入力及び相殺的信号入力を有する受信器であって、前記建設的光信号及び前記相殺的光信号を検出して電気受信信号を生成する差動検出器を備え、受信器帯域幅を有する受信器と
を備え、
前記遅延干渉計の前記自由スペクトル領域は、前記送信器帯域幅、前記伝送線帯域幅、及び前記受信器帯域幅のうちの少なくとも1つに比例する量だけ、前記位相変調光信号のシンボルレートよりも大きくなるように構成され、
前記送信器の出力から前記復調器の光入力までに見られる強度伝達関数のFWHM帯域幅が、前記シンボルレートの2倍未満である、光伝送システム。
【請求項2】
前記強度伝達関数が、前記伝送される位相変調光信号の信号スペクトルの95%未満を伝達する、請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記遅延干渉計の前記自由スペクトル領域がシンボルレートよりも大きい量は、前記建設的光信号及び前記相殺的光信号の光信号対雑音比、受信器感度、前記電気受信信号のビットエラーレートのうちの少なくとも1つを向上させるように選択される、請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項4】
前記遅延干渉計の前記自由スペクトル領域がシンボルレートよりも大きい量は、前記送信器帯域幅、前記伝送線帯域幅、及び前記受信器帯域幅のうちの少なくとも1つの変化に応答して可変である、請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項5】
a.帯域幅制限伝送システムから位相変調光信号を受信する光入力、建設的光出力、及び相殺的光出力を備える遅延干渉計であって、受信器性能を向上させる量だけ前記位相変調光信号のシンボルレートよりも大きい自由スペクトル領域を有する遅延干渉計、を有する復調器と、
b.第1の光検出器及び第2の光検出器を備える差動検出器であって、前記第1の光検出器は前記遅延干渉計の前記建設的光出力に光学的に結合され、前記第2の光検出器は前記遅延干渉計の前記相殺的光出力に光学的に結合され、前記第1の光検出器によって生成される第1の電気検出信号と前記第2の光検出器によって生成される第2の電気検出信号とを結合して、電気受信信号を生成する差動検出器と
を備える光受信器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4A−1】
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【図4A−2】
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【図4A−3】
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【図4B】
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【図4B−1】
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【図4B−2】
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【図4B−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8A−1】
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【図8A−2】
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【図8B】
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【公開番号】特開2012−75133(P2012−75133A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−240326(P2011−240326)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【分割の表示】特願2009−507763(P2009−507763)の分割
【原出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(508317365)ミンテラ・コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】MINTERA CORPORATION
【Fターム(参考)】