説明

部品ライブラリデータの作成方法

【課題】電子部品の厚さに係るデータを作成すべく電子部品を撮像するに際し、自動的に明るさを設定するようにして、明るさ設定作業効率の向上を図ること。
【解決手段】光源の明るさを変えて調整台上の電子部品を部品認識カメラが複数回撮像し、この各撮像画像の評価エリアを設定して、各撮像画像の前記評価エリア内の各画素の輝度の平均値、標準偏差σ、最大値を算出し、全ての前記撮像画像において、適切な高さ画像を得るための明るさに関する判定式を満足するかを判定する。満足しないと判定した場合に、評価エリア全体が輝度の飽和状態の明るさに設定して、この明るさの第1の所定の割合の明るさで第1の画像を取得し、飽和に達した直前の明るさの第2の所定割合の明るさで第2の画像を取得し、前記第1の画像及び前記第2の画像を合成した画像を取得し、この合成画像を認識処理装置が認識処理して、前記電子部品の厚さに係るデータを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の特徴である部品ライブラリデータを構成する電子部品の厚さに係るデータを作成する部品ライブラリデータの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品ライブラリデータ作成装置は、例えば特許文献1などに開示されている。そして、電子部品は、その材質(金属、合成樹脂など)や色目の違いのため、反射率が電子部品の場所によって異なる。電子部品の高さ画像取得方法として合焦点法を採用した場合に、投影されたパターンのコントラストが反射率により異なると、正確な高さ測定ができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−294622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、電子部品を撮像するに際し、作業管理者が目視により電子部品毎に明るさを設定していた。また、同一の電子部品であっても、暗すぎる箇所や画素の輝度が飽和レベルにある箇所が点在すると、コントラストの低下を招き、電子部品の高さ測定ができないという問題が発生する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、電子部品の特徴を表す部品ライブラリデータを構成する前記電子部品の厚さに係るデータを作成すべく電子部品を撮像するに際し、作業管理者が目視することにより明るさを設定することなく、自動的に明るさを設定するようにして、明るさ設定作業効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、電子部品を載置するもので該電子部品の厚さに対応して高さが調整可能な調整台と、前記電子部品に光を照射するための光源と、前記調整台上の前記電子部品に前記光源からの光を照射して該電子部品を撮像する部品認識カメラとを備え、前記部品認識カメラにより撮像された画像を認識処理装置が認識処理して、電子部品の特徴を表す部品ライブラリデータを構成する前記電子部品の厚さに係るデータを作成する部品ライブラリデータの作成方法において、
前記光源の明るさを変えて前記調整台上の前記電子部品を前記部品認識カメラが複数回撮像し、
この各撮像画像の評価エリアを設定して、各撮像画像の前記評価エリア内の各画素の輝度の平均値、標準偏差σ、最大値を算出し、
全ての前記撮像画像において、適切な高さ画像を得るための明るさに関する判定式を満足するかを判定し、
満足しないと判定した場合に、前記評価エリア全体が輝度の飽和状態又は飽和に近い状態の明るさに設定して、この明るさの第1の所定の割合の明るさで第1の画像を取得し、
飽和に達した直前の明るさの第2の所定割合の明るさで第2の画像を取得し、
前記第1の画像及び前記第2の画像を合成した画像を取得し、
この合成画像を前記認識処理装置が認識処理して、前記電子部品の厚さに係るデータを作成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、電子部品の特徴を表す部品ライブラリデータを構成する前記電子部品の厚さに係るデータを作成すべく電子部品を撮像するに際し、作業管理者が目視することにより明るさを設定することなく、自動的に明るさを設定するようにして、明るさ設定作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】部品ライブラリデータ作成装置を簡略化した図である。
【図2】部品ライブラリデータ作成装置の制御ブロック図である。
【図3】電子部品の高さ画像取得に係るフローチャートを示す図である。
【図4】全ての画像において、画素の輝度の平均値+3σ<しきい値(最大値×0.8)が成立した場合の撮像した明るさと輝度との関係図である。
【図5】画素の輝度の平均値+3σ≧しきい値(最大値×0.8)となる明るさがある場合の撮像した明るさと輝度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の実施形態につき説明する。図1は電子部品装着装置の電子部品の装着運転中でもオフラインで部品ライブラリデータを作成できる簡略化した部品ライブラリデータ作成装置1を示し、2はステッピングモータ10により上下動可能な高さ調整台であるZ軸テーブルで、このZ軸テーブル2の試料台2A上に部品ライブラリデータを作成するための電子部品Dが位置決め固定された状態で載置される。
【0010】
3は前記試料台2A上の前記電子部品Dを撮像するための部品認識カメラ、4は複数個のリング状の反射照明灯を備えたリング照明装置、5は2D用の同軸照明装置、6は投影パターン6Aを備えるパターン投影部、7はハーフミラー7Aを備える光学系、8は3D用の同軸照明装置である。
【0011】
9は前記投影パターン6AをON/OFFするソレノイド、11はインターロック、12は前記ステッピングモータ10、前記ソレノイド9及び前記インターロック11の駆動を制御する駆動系コントローラ、14は前記リング照明装置4、2D用の同軸照明装置5、3D用の同軸照明装置8の明るさを制御する照明系コントローラである。
【0012】
16はAC電源用コネクタ、17はパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という。)である。18はカメラ―PC通信ケーブル、19はコントローラ−PC通信ケーブル、20は駆動−照明通信ケーブル、21は同軸照明用ケーブル、22はリング照明用ケーブル、23はインターロック用ケーブル、24はソレノイド用ケーブル、25は上下移動軸用ケーブル、26は電源ケーブル、27は同軸照明用ケーブルである。
【0013】
次に、図2の本ライブラリデータ作成装置1の制御ブロック図に基づいて説明するが、図1で説明した各ケーブル18から27の代わりに、インターフェース30を介してライブラリデータ作成装置1内の各構成要素間で相互に送受信するようにしている。
【0014】
前記パソコン17内には、制御手段、判定手段、命令手段等としてのCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)31、各種データを格納する記憶手段としてのRAM(ランダム・アクセス・メモリ)32、プログラムを格納するROM(リ−ド・オンリー・メモリ)33、タッチパネルスイッチが設けられた表示手段としてのモニタ35、入力手段としてのキーボード36、指示手段としてのマウス37などを備えている。
【0015】
そして、CPU30は前記RAM31に記憶されたデータに基づき、前記ROM32に格納されたプログラムに従い、本ライブラリデータ作成装置1を統括制御する。即ち、CPU31は、前記インターフェース30及び照明系コントローラ14を介して前記リング照明装置4、2D用の同軸照明装置5、3D用の同軸照明装置8を制御し、また前記インターフェース30及び駆動系コントローラ12を介して前記ステッピングモータ10を制御する。更に、CPU31は前記インターフェース30及び駆動系コントローラ12を介してその他の前記ソレノイド9や前記インターロック11の駆動も制御する。
【0016】
34は認識処理装置で、前記インターフェース30を介して前記CPU31に接続され、部品認識カメラ3により撮像された画像を認識処理し、CPU31に処理結果を出力する。
【0017】
次に、図3に基づいて、電子部品Dの高さ画像取得に係るフローチャートに基づいて説明する。先ず、作業管理者が前記キーボード36やマウス37を操作して、前記モニタ35に高さ測定のための画面を表示させる共にこの高さ測定をするように指示する(ステップS01)。
【0018】
すると、前記CPU31は前記部品認識カメラ3のピントを合わせるように指示する(ステップS02)。即ち、前記電子部品Dと背景とのコントラストとの差が最大となるように、前記駆動系コントローラ12を介して前記ステッピングモータ10により前記Z軸テーブル2を駆動させて、前記試料台2Aを上下動させて電子部品Dの高さレベルを調整して、電子部品Dが前記部品認識カメラ3のピントが合う被写界深度内に収まるように指示する。
【0019】
次に、CPU31は異なる、例えば4種類の明るさA、B、C、Dで前記3D用の同軸照明装置8を点灯させるように前記照明系コントローラ14を介して制御して、前記部品認識カメラ3が電子部品Dを撮像する(ステップS03)。この撮像は、前記3D用の同軸照明装置8を点灯させた光を投影パターン6Aに照射して投影し、ハーフミラー7Aを介して試料台2A上の電子部品Dに照射する。そして、電子部品Dからの反射光が前記ハーフミラー7Aを介して前記部品認識カメラ3に入射されることにより行われる。
【0020】
そして、前記モニタ35に前記部品認識カメラ3により撮像された電子部品Dの画像が表示されるので、この表示画像を見て、作業管理者はマウス37を使用して、画像における評価エリアを設定して切出す(ステップS04)。この場合、可能な限り、電子部品Dを最少面積で囲むように切出すこととなる。
【0021】
そして、切出された4つの画像に基づいて、前記認識処理装置34が認識処理して、その認識結果を受けたCPU31が明るさが異なって撮像された各画像における各画素の階調値(輝度)の平均値、標準偏差σ、最大値、最小値を算出する(ステップS05)。この算出した場合の明るさA、B、C、Dにおける各階調値の平均値+3σ、最大値、最小値を図4に示す。この場合、階調値が255で、受光量の増加に対して出力(電流値)が比例せずに、輝度がピークに達した飽和状態である。
【0022】
次に、4つの各画像において、全ての画像について、階調値の平均値+3σがしきい値(最大値×0.8)より小さいか(明るさに関する判定式)をCPU31がそれぞれ判定する(ステップS06)。この場合、全ての画像が小さいと判定すると、平均値+3σが最大となる明るさを最適値とする(ステップS07)。即ち、図4に示すように、平均値+3σが最大となる明るさは、明るさDであり、最適値であるこの明るさDの電子部品Dの高さ画像を取得する(ステップS08)。
【0023】
即ち、平均値+3σが最大となる明るさは、明るさDであるので、4つの画像のうち、明るさDで撮像した画像が最も鮮明な画像であると判断して、平均値+3σが最大となる明るさDを最適値とする。そして、この最適値の明るさで、前記駆動系コントローラ12を介して前記ステッピングモータ10により前記Z軸テーブル2を駆動させ、前記試料台2Aを上下動させて電子部品Dの高さレベルを調整して、複数の高さレベルにおいて、電子部品Dを前記部品認識カメラ3が撮像し、CPU31がこの複数の撮像画像を合成して1枚の高さ画像を取得する。
【0024】
以上のように、最適値の明るさDで撮像して電子部品Dの高さ画像を取得したこの高さ画像を、前記認識処理装置34が認識処理し、この認識結果に基づいて、CPU31は、この電子部品Dの厚さを算出し、RAM22に格納し、この算出結果をこの電子部品Dの部品ライブラリデータを構成する厚さデータとする。
【0025】
また、前述したステップS06において、4つの各画像において、全ての画像における画素の輝度の平均値+3σがしきい値(最大値×0.8)より小さいかをCPU31がそれぞれ判定して、全てが小さいわけではないと判定した場合には、即ち1画像でも平均値+3σが前記しきい値以上である場合(図5参照)には、次にCPU31は評価エリア全体が飽和状態(若しくは、飽和に近い状態)の明るさXに設定し(ステップS09)、この明るさXをRAM32に格納する。
【0026】
なお、この設定された飽和状態(若しくは、飽和に近い状態)の明るさXで電子部品Dを撮像した場合には、輝度が飽和状態の画素(真っ白)や、飽和に近い画素(薄い灰色)が点在することとなって、適切な高さ情報が得られない。従って、飽和状態の明るさでも、若しくは飽和に近い状態の明るさでも、電子部品Dの適切な高さ情報が得られず、CPU31はこの電子部品Dの高さを計測することができない。
【0027】
次に、CPU31は、前記明るさXの80%の明るさYで電子部品Dを撮像する(ステップS10)。この明るさXの80%の明るさYで撮像した場合には、輝度が飽和に近い画素(薄い灰色)や飽和していない画素(灰色)が点在することとなって、飽和していない画素(灰色)では電子部品Dの適切な高さ画像を得ることができ、適切な高さ情報が得られるが、飽和に近い画素(薄い灰色)では電子部品Dの適切な高さ画像を得ることができなく、適切な高さ情報が得られないので、電子部品D全体の高さ情報としては不十分である。
【0028】
次に、CPU31は、飽和に達した直前の明るさの80%の明るさZ(明るさYの80%)で電子部品Dを撮像する(ステップS11)。この明るさZで撮像した場合には、前回において明るさXで撮像したとき輝度が飽和状態や、飽和に近い画素であったが、今回の撮像では輝度が飽和していない画素(灰色)や黒色の画素が点在することとなって、飽和していない画素(灰色)では電子部品Dの適切な高さ情報が得られるが、黒色の画素では高さ情報が得られないので、全体としては不十分である。
【0029】
そして、次にCPU31はステップS10で取得した高さ画像と、ステップS11で取得した高さ画像とを合成し、電子部品D全体の高さ画像を取得する(ステップS12)。この場合には、取得した全体の高さ画像から適切な高さ情報を取得できる。
【0030】
以上のように、ステップS12で取得した電子部品の高さ画像を、前記認識処理装置34が認識処理し、この認識結果に基づいて、CPU31は、この電子部品Dの厚さを算出し、RAM22に格納し、この算出結果をこの電子部品Dの部品ライブラリデータを構成する厚さデータとする。
【0031】
従って、電子部品の特徴を表す部品ライブラリデータを構成する前記電子部品の厚さに係るデータを作成すべく電子部品を撮像するに際し、作業管理者が目視することにより明るさを設定することなく、自動的に明るさを設定するようにして、明るさ設定作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0033】
1 部品ライブラリデータ作成装置
2 Z軸テーブル
2A 試料台
8 3D用の同軸照明装置
10 ステッピングモータ
30 CPU
31 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を載置するもので該電子部品の厚さに対応して高さが調整可能な調整台と、前記電子部品に光を照射するための光源と、前記調整台上の前記電子部品に前記光源からの光を照射して該電子部品を撮像する部品認識カメラとを備え、前記部品認識カメラにより撮像された画像を認識処理装置が認識処理して、電子部品の特徴を表す部品ライブラリデータを構成する前記電子部品の厚さに係るデータを作成する部品ライブラリデータの作成方法において、
前記光源の明るさを変えて前記調整台上の前記電子部品を前記部品認識カメラが複数回撮像し、
この各撮像画像の評価エリアを設定して、各撮像画像の前記評価エリア内の各画素の輝度の平均値、標準偏差σ、最大値を算出し、
全ての前記撮像画像において、適切な高さ画像を得るための明るさに関する判定式を満足するかを判定し、
満足しないと判定した場合に、前記評価エリア全体が輝度の飽和状態又は飽和に近い状態の明るさに設定して、この明るさの第1の所定の割合の明るさで第1の画像を取得し、
飽和に達した直前の明るさの第2の所定割合の明るさで第2の画像を取得し、
前記第1の画像及び前記第2の画像を合成した画像を取得し、
この合成画像を前記認識処理装置が認識処理して、前記電子部品の厚さに係るデータを作成する
ことを特徴とする部品ライブラリデータの作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77649(P2013−77649A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215558(P2011−215558)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】