説明

部品劣化度評価装置及び部品劣化度評価方法

【課題】 車両に搭載された個々の部品の劣化度合いを把握することができ、好ましくは、車両から取り外した中古部品の信頼性を向上させる。
【解決手段】 本発明の部品劣化度評価装置では、部品61,62のそれぞれが自己の劣化評価情報を不揮発性メモリ63,64に記憶し、エンジンECU1がその劣化評価情報に基づいて各部品の劣化度合いを判定する。そして、その劣化度合いが基準値に達したときに該当する部品の劣化情報を、警告灯,ナビゲーション装置の表示装置,外部ツールなどを介してユーザ又は作業員に報知する。このため、個々の部品毎に劣化度合いを把握し、これを管理することができる。特に、各部品が自己の劣化評価情報を記憶するため、仮にその部品が中古部品として流通したとしても、その出力信号から当該部品の劣化情報を読み取ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された部品の劣化を評価する部品劣化度評価装置及び部品劣化度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中古車の価格を正当に評価したり、車両のメンテナンス時期を判断するために、車両の劣化状態を評価する車両劣化評価装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両劣化評価装置では、車両に搭載された電子制御装置により、エンジンやトランスミッションを非常に劣化させる状態が発生すればこれを検知し、その劣化要因の発生時間や発生回数を算出して、これらのデータを車両の劣化情報として記憶していく。これらの劣化情報に基づいてエンジンやトランスミッションの状態を定量的に判断することにより、車両全体の劣化状態を評価することができる。
【特許文献1】特開2004−243924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に設置されている個々の部品自体の劣化状態が評価されることは少なく、故障して初めて部品交換が行われることが多いのが実情であった。また、車両から一旦取り外した部品については劣化度合いの評価が困難であるため、中古部品に対する市場での信頼性が低いといった問題があった。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、車両に搭載された個々の部品の劣化度合いを把握することができ、好ましくは、車両から取り外した中古部品の信頼性を向上させることができる部品劣化度評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記問題を解決するために、車両の部品の劣化を評価するために予め設定した劣化評価情報を各部品毎に記憶し、前記劣化評価情報に基づいて前記部品の劣化度合いを判定し、前記劣化度合いが所定の基準値に達したときに、該当する部品の劣化情報を出力可能に構成されたことを特徴とする部品劣化度評価装置が提供される。
【0007】
このような部品劣化度評価装置においては、車両に搭載された各部品について劣化評価情報が記憶され、その劣化度合いが判定される。そして、その劣化度合いが基準値に達したときに、その劣化情報が出力できるようになっている。
【0008】
この場合、例えば各部品が自己の劣化評価情報を記憶して劣化度合いを判定し、その劣化度合いが上記基準値に達したときに、自己の劣化情報を報知するための信号を出力可能に構成されていると、劣化情報を部品毎に管理することができる。
【0009】
あるいは、このように各部品が自己の劣化情報を報知するまでの機能を有していなくても、自己の劣化評価情報を記憶するように構成され、記憶した劣化評価情報を車両に搭載された電子制御装置に送信可能に構成されていれば、電子制御装置において部品毎の劣化情報を管理することができる。
【0010】
このようにすれば、仮にその部品が中古部品として流通したとしても、その出力信号か
ら当該部品の劣化情報を取得することが可能になる。
また、本発明では、車両の部品の劣化を評価するために予め設定した劣化評価情報を各部品毎に記憶し、前記劣化評価情報に基づいて前記部品の劣化度合いを判定し、前記劣化度合いが所定の基準値に達したときに、該当する部品の劣化情報を出力可能にすることを特徴とする部品劣化度評価方法が提供される。
【0011】
このような部品劣化度評価方法においては、車両に搭載された各部品について劣化評価情報が記憶され、その劣化度合いが判定される。そして、その劣化度合いが基準値に達したときに、その劣化情報が出力できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の部品劣化度評価装置及び部品劣化度評価方法によれば、車両に搭載された各部品毎にその劣化情報が出力可能に構成されているため、その劣化情報を外部に報知することが可能になる。その結果、車両のユーザ又は作業員が個々の部品の劣化度合いを把握することができる。
【0013】
特に、各部品が少なくとも自己の劣化評価情報を記憶するように構成されていれば、当該部品が車両から取り外されても、後にその劣化情報を取得することができるため、中古部品の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
本実施の形態は、本発明の部品劣化度評価装置を、エンジン,自動変速機,ブレーキ装置,ナビゲーション装置その他の装置を含む車両制御システムに適用したものである。図1は、当該車両制御システムの概略構成を表すブロック図である。
【0015】
この車両制御システムは、車両の各部を制御する複数の電子制御装置(Electronic Control Unit:以下「ECU」という)として、エンジンを制御するエンジンECU1,自動変速機を制御するトランスミッションECU2,ブレーキ装置を制御するブレーキECU3,ナビゲーション装置を制御するナビゲーションECU4,走行距離等の各種メータを制御するメータECU5等の各種ECUを備えている。本実施の形態においては、エンジンECU1が部品劣化度評価装置の一部として機能する。
【0016】
各ECUは、マイクロコンピュータを中心に構成された独立した電子制御ユニットであり、その各々が通信部を内蔵し、通信ラインLを介して互いに通信可能に接続されている。各ECUは、必要に応じて他のECUとの間でデータ伝送を行い、センサ出力等のデータを取得して自己の制御対象を制御する。また、この通信ラインLには、所定のコネクタを介して外部ツール6が接続可能となっている。
【0017】
各ECUは、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種の制御演算プログラムやデータを格納したROM(Read Only Memory)、演算過程の数値やフラグが所定領域に格納されるRAM(Random Access Memory)、演算処理の結果などが格納される不揮発性メモリであるEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read
Only Memory)、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)コンバータ、各種デジタル信号が入出力される入出力インタフェース、及びこれら各機器がそれぞれ接続されるバスラインなどを備えている。
【0018】
エンジンECU1には、クランク軸の回転角度やエンジン回転数を検出するためのクランク角センサ7、吸入空気の流量を検出するエアフローメータ8、スロットルバルブの開
度を検出するスロットルセンサ9、冷却水温を検出する水温センサ10、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ11、イグニッションスイッチ12等のセンサ・スイッチ類が接続されている。また、エンジンECU1には、エンジンの気筒毎に設けられたインジェクタ13、点火用高電圧を発生するイグナイタ14、燃料タンクから燃料を汲み上げインジェクタに供給する燃料ポンプ15、エンジンの吸気管に設けられたスロットルバルブを開閉するためのスロットル駆動モータ16、エンジンをクランキングさせるスタータモータ17等の各種アクチュエータが接続されている。さらに、エンジンECU1には、各センサ・スイッチ類、各種アクチュエータのダイアグノーシス情報や、他のECUからのダイアグノーシス信号を受け取った場合に、ユーザにその故障情報などを報知するための警告灯18が接続されている。
【0019】
トランスミッションECU2には、トルクコンバータから自動変速機への入力軸の回転数を検出する回転数センサ21、自動変速機の出力軸に連結された車両駆動軸の回転から車速を検出する車速センサ22、自動変速機内の作動油の温度を検出する油温センサ23、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションスイッチ24等のセンサ・スイッチ類が接続されている。また、トランスミッションECU2には、変速段を切り替えるためのシフトソレノイド25、元圧となるライン圧を調整するためのライン圧ソレノイド26、トルクコンバータのロックアップクラッチの締結力を操作するためのロックアップ圧ソレノイド27等の各種アクチュエータが接続されている。
【0020】
ブレーキECU3には、ブレーキ装置のマスタシリンダの油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ31、車両の操舵角を検出するステアリングセンサ32、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ33等のセンサ・スイッチ類が接続されている。また、ブレーキECU3には、制御対象となるアクチュエータにかかる部品として、マスタシリンダの油圧を発生してブレーキ制御を行うためのブレーキアクチュエータ34等の各種アクチュエータが接続されている。
【0021】
ナビゲーションECU4には、GPS(Global Positioning System)受信機等を備えた位置検出装置41、位置情報を検出するための各種センサ、各種操作スイッチ等が接続されるとともに、車両の現在位置などを表示する表示装置42等が接続されている。
【0022】
メータECU5には、車両の走行距離を算出するために車輪の回転数を検出する車輪速センサ51、走行距離を表示するための表示装置52等が接続されている。
外部ツール6は、いわゆる故障診断装置として構成されたものであるが、後述する部品劣化度評価装置にも関わるものである。この外部ツール6は、内蔵するマイクロコンピュータを中心に構成されており、図示しない通信部、記憶装置、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置、キーボードなどの入力装置などを備えている。そして、図示しないコネクタを介して通信ラインLに接続され、各ECUからダイアグノーシス情報等を取得して表示装置に表示できるようになっている。
【0023】
次に、本実施の形態の部品劣化度評価方法について説明する。図2は、部品劣化度評価方法を概念的に表す説明図である。
本実施の形態では、エンジンECU1に接続されたセンサ・スイッチ類や各種アクチュエータ、他のECU、及び他のECUに接続されたセンサ・スイッチ類や各種アクチュエータ(以下、これらを総称して「部品」という)が、それぞれ自己の劣化評価情報を管理している。そして、エンジンECU1が、各部品からその劣化評価情報を取得して各部品の劣化度合いを判定する。
【0024】
ここでいう「劣化評価情報」とは、車両の部品の劣化を評価するために予め設定された情報であり、種々の劣化要因とその劣化要因の発生の程度や頻度などから、部品の劣化度
合いを判定できる情報を意味する。例えば、各部品の実際の使用時間から部品の劣化につながる使用頻度を直接的に求めることができる。また、各部品の使用開始からの経過時間や車両の走行距離から、車両に搭載された部品の劣化につながる使用頻度を間接的に類推することができる。したがって、これら各部品の実際の使用時間、使用開始からの経過時間、車両の走行距離などを劣化要因として設定し、これらの累積値を劣化評価情報として各部品の劣化度合いを判定するようにしてもよい。
【0025】
なお、部品劣化度評価装置の構成については種々のパターンが考えられるため、ここでは、理解を容易にするため、図示のエンジンECU1に接続された部品61及び部品62が上述したセンサ・スイッチ類7〜12やアクチュエータ13〜17のいずれかであると仮定し、各部品が、それぞれ自己の劣化評価情報として車両の走行距離を管理しているものとして説明する。
【0026】
部品61,62は、それぞれ内蔵するEEPROM等の不揮発性メモリ63,64に、自己の劣化評価を行うための車両の走行距離情報を記憶している。各不揮発性メモリ63,64は、エンジンECU1内のマイクロコンピュータにシリアル回線にて接続されており、エンジンECU1にて劣化評価情報として演算された車両の走行距離情報が書き込まれるように構成されている。また、エンジンECU1においては、各部品が接続されたポートを管理しており、必要に応じて各部品に記憶された劣化評価情報を読み出すことができるようになっている。
【0027】
エンジンECU1は、各部品の劣化評価情報に基づいて各部品の劣化度合いを判定する。なお、この場合、基本的には走行距離が長いほど劣化度合いが大きくなっていると判定されるが、部品の種類によってその劣化の進行状態も異なると考えられるため、劣化度合いの判定に用いる基準値も、部品61と部品62とで異なる値が設定されている。また、各部品の劣化度合いは、基本的にはその使用開始時となる工場出荷時からの車両の走行距離に基づいて判定されるが、例えば車検などの際にいずれかの部品が取り替えられた場合には、その取り替え時からの車両の走行距離を劣化評価情報として劣化度合いを判定することになる。
【0028】
そして、エンジンECU1は、いずれかの部品について劣化度合いが所定の基準値に達したときに、当該部品が劣化状態にあると判定し、該当する部品の劣化情報をユーザに報知してそのメンテナンスや取り替えを促す。
【0029】
この部品の劣化情報の報知態様としては、例えば警告灯18を介して可視表示するようにしてもよい。その場合、警告灯18を故障時などの通常の異常状態を表示する態様とは異なる態様で表示することが考えられる。例えば、警告灯18の通常の異常状態の表示が点灯状態である場合には、劣化情報の表示態様として点滅状態にしたり、劣化情報にかかる部品の種類に応じてその点滅状態を変化させるようにしてもよい。このように警告灯18という既存の構成を利用すれば部品劣化度評価装置を低コストに実現することができるが、各部品の劣化度合いをそれぞれ可視表示又は音声により報知するための装置を別途設けることもできる。
【0030】
あるいは、エンジンECU1から各部品の劣化情報を通信ラインLを介して出力し、ナビゲーション装置の表示装置42や外部ツール6などにより劣化状態にある部品を特定するための情報(部品の種類やその取付位置など)を可視表示又は音声により報知させるようにしてもよい。外部ツール6を介して表示するパターンとしては、例えば車両に劣化した部品があることのみを警告灯18を介してユーザに報知し、劣化状態にある部品を特定するための詳細な情報を、外部ツール6を介してディーラ等の作業員にのみ通知するようにすることもできる。
【0031】
次に、上述した部品劣化度評価処理の流れについて説明する。図3及び図4は、エンジンECUが実行する部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。図3はエンジン始動時の処理を表し、図4はエンジン停止時の処理を表している。以下、この処理の流れを、ステップ番号(以下「S」で表記する)を用いて説明する。
【0032】
図3に示すように、エンジンECU1は、エンジン始動時においてイグニッションスイッチ12がオフからオンにされると(S1:YES)、通信ラインLを介してメータECU5から現在の走行距離データを取得する(S2)。そして、この走行距離データを、今回の車両走行(本トリップ)において部品劣化度評価に用いる走行距離の初期値として、内蔵するEEPROMに記憶しておく(S3)。
【0033】
そして、図4に示すように、エンジン停止時においてイグニッションスイッチ12がオンからオフにされると(S11:YES)、エンジンECU1は、バックアップ電源により動作を継続し、通信ラインLを介してメータECU5から現在の走行距離データを取得する(S12)。そして、この停止時の走行距離データと前述の始動時の走行距離データに基づき、両走行距離の差分から本トリップでの走行距離を算出する(S13)。そして、部品61,62からそれまでに累積された劣化評価情報としての累積走行距離を読み込み(S14)、本トリップでの走行距離を加算して新たな劣化評価情報とし、各部品の不揮発性メモリ63,64に記憶させる(S15)。
【0034】
そして、累積走行距離がいずれかの部品について設定した基準値に達しているか否かを判定する(S16)。このとき、いずれかの部品について累積走行距離が基準値に達していると判定されると(S16:YES)、上述のように警告灯18、ナビゲーション装置の表示装置42、外部ツール6などを介して当該部品が劣化していることをユーザに報知する(S17)。
【0035】
以上に説明したように、本実施の形態の部品劣化度評価装置によれば、部品61,62のそれぞれが自己の劣化評価情報を記憶し、エンジンECU1がその劣化評価情報に基づいて各部品の劣化度合いを判定する。そして、その劣化度合いが基準値に達したときに該当する部品の劣化情報を、警告灯18、ナビゲーション装置の表示装置42、外部ツール6などを介してユーザ又は作業員に報知できるようにした。このため、個々の部品毎に劣化度合いを把握し、これを管理することができる。特に、各部品が自己の劣化評価情報を記憶するため、仮にその部品が中古部品として流通したとしても、その出力信号から当該部品の劣化情報を読み取ることが可能になる。このため、著しく劣化した部品を誤って再利用することを防止でき、中古部品の信頼性を向上させることができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、車両の累積走行距離に基づいて部品の劣化度合いを判定する例を示したが、各部品の実際の使用時間、使用開始からの経過時間その他の劣化要因に基づいて劣化度合いを判定してもよい。
【0037】
例えば、部品使用開始時からの自動変速機の変速回数の累積値を劣化評価情報として、自動変速機関連の部品の劣化度合いを判定するようにしてもよい。
また、部品使用開始時からのエンジンの始動回数の累積値を劣化評価情報として、エンジン周りの部品の劣化度合いを判定するようにしてもよい。
【0038】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、部品劣化評価処理部分が異なる以外は、上記第1の実施の形態と同様である。このため、第1の実施の形態と同様の部分についてはその説明を省略する。図5は、第2の実施の形態にかか
る部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。
【0039】
本実施の形態は、エンジン回転数が所定の高回転になった状態を劣化要因とし、その劣化要因の発生回数から部品の劣化度合いを判定するものである。劣化評価の対象部品としては、例えばインジェクタ13やイグナイタ14等のエンジン周りの部品など、種々のものが考えられる。
【0040】
図5に示すように、エンジンECU1は、クランク角センサ7の出力に基づいてエンジン回転数を算出し(S21)、そのエンジン回転数が予め設定した閾値以下であるか否かを判定する(S22)。この閾値は、エンジン回転数がこれを超えると部品の劣化を進行させやすいものとして予め設定した評価基準である。このとき、エンジン回転数が閾値以下であると判定されると(S22:YES)、RAM上の所定領域に低回転履歴フラグをセットして(S23)、S24へ移行する。一方、S22にてエンジン回転数が閾値より大きいと判定された場合には(S22:NO)、そのままS24へ移行する。
【0041】
続いて、低回転履歴フラグがセットされているか否かを判断する(S24)。このとき、低回転履歴フラグがセットされていないと判断されると(S24:NO)、一連の処理を終了する。
【0042】
一方、S24において、低回転履歴フラグがセットされていると判断されると(S24:YES)、続いて、エンジン回転数が閾値よりも大きいか否かを判定する(S25)。すなわち、エンジン回転数が閾値を再度超えたか否かを判断する。このとき、エンジン回転数が閾値よりも大きくないと判定されると(S25:NO)、一連の処理を終了する。
【0043】
一方、S25において、エンジン回転数が閾値よりも大きいと判定されると(S25:YES)、低回転履歴フラグをクリアするとともに(S26)、該当する部品の不揮発性メモリに設定した累積回数カウンタを1インクリメントする(S27)。すなわち、各部品には、エンジン回転数が閾値を超えた累積回数が記憶され、更新される。
【0044】
そして、閾値を超えた累積回数が、いずれかの部品について設定した基準値に達しているか否かを判定する(S28)。このとき、いずれかの部品について累積回数が基準値に達していると判定されると(S28:YES)、第1の実施の形態と同様に、警告灯18、ナビゲーション装置の表示装置42、外部ツール6などを介して当該部品が劣化していることをユーザに報知する(S29)。
【0045】
以上に説明したように、本実施の形態の部品劣化度評価装置においても、各部品のそれぞれが自己の劣化評価情報を記憶し、その劣化度合いが基準値に達したときに該当する部品の劣化情報を報知できるようにした。このため、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、エンジン回転数に基づいて部品の劣化度合いを判定する例を示したが、例えば、車両速度がある閾値より高くなった累積回数を劣化評価情報として、車両の足まわりの部品の劣化度合いを判定するようにしてもよい。
【0047】
あるいは、各種スイッチ等の操作回数の累積回数を劣化評価情報として、各種スイッチ等の劣化度合いを判定するようにしてもよい。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、部品劣化評価処理部分が異なる以外は、上記第1の実施の形態と同様である。このため、第1の実施の形態と同様の部分についてはその説明を省略する。図6及び図7は、第3の実施の形
態にかかる部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。
【0048】
本実施の形態は、水温センサ10を例に部品劣化度評価方法を具体的に示すものである。ここでは、水温センサ10の使用開始からの経過時間、異常に近い状態の検出回数である異常近似回数、水温がある高温値よりも高くなった高温回数を劣化要因とし、各劣化要因の累積値を劣化評価情報としてその劣化度合いを判定する。
【0049】
すなわち、累積経過時間によりカプラやハーネス等の経年劣化を監視する。この累積経過時間は、車両に搭載された時計の時間情報や、ナビゲーション装置等が内蔵する時計の時間情報などから取得することができる。
【0050】
また、累積異常近似回数によりセンサ内部の接触不良やセンサの特性不良等を監視する。この異常近似回数は、水温センサ10が通常の車両走行では取り得ない高温値を示した回数であり、予め設定した劣化判定温度を超えた回数をカウントしていくことにより取得することができる。
【0051】
さらに、水温がある高温値よりも高くなった累積高温回数により冷却水量不足やオーバーヒート等による高熱状態の影響を監視する。この高温値は、水温センサ10が通常の車両走行で取り得ないわけではないが、部品の熱劣化を生じさせると考えられる温度として設定され、予め設定した高温判定温度を超えた回数をカウントしていくことにより取得することができる。したがって、高温判定温度は、上記劣化判定温度よりは低い値が設定されている。
【0052】
そして、各劣化評価情報について判定基準となる時間又は回数には、それぞれ水温センサ10の劣化を進行させやすいものとして予め設定した閾値が設定されている。この場合、累積高温回数の閾値は、累積異常近似回数の閾値よりも高くなる(つまり、判定が緩やかになる)。
【0053】
エンジンECU1は、所定のタイミングで水温センサ10の出力値を監視し、累積異常近似回数及び累積高温回数を算出する。
すなわち、図6に示すように、エンジンECU1は、水温センサ10の出力値に基づいて水温を取得し(S31)、その水温が劣化判定温度以下であるか否かを判定する(S32)。このとき、水温が劣化判定温度より高いと判定されると(S32:NO)、S36へ移行する。
【0054】
一方、S32にて水温が劣化判定温度以下であると判定されると(S32:YES)、RAM上に設定した正常温履歴フラグをセットする(S33)。
続いて、水温が高温判定温度以下であるか否かを判定する(S34)。このとき、水温が高温判定温度よりも高いと判定されると(S34:NO)、S36へ移行する。
【0055】
一方、S34にて水温が高温判定温度以下であると判定されると(S34:YES)、RAM上に設定した通常温履歴フラグをセットする(S35)。
続いて、通常温履歴フラグがセットされているか否かを判断する(S36)。このとき、通常温履歴フラグがセットされていなければ(S36:NO)、一連の処理を終了する。
【0056】
一方、S36にて通常温履歴フラグがセットされていると判断されると(S36:YES)、続いて、水温が高温判定温度よりも高いか否かを判断する(S37)。このとき、水温が高温判定温度以下であると判断されると(S37:NO)、一連の処理を終了する。
【0057】
一方、S37にて水温が高温判定温度よりも高いと判断されると(S37:YES)、通常温履歴フラグをクリアするとともに(S38)、水温センサ10の不揮発性メモリに設定した累積高温回数カウンタを1インクリメントする(S39)。すなわち、水温センサ10には、水温が高温判定温度を超えた累積回数が記憶され、更新されている。
【0058】
続いて、正常温履歴フラグがセットされているか否かを判断する(S40)。このとき、正常温履歴フラグがセットされていなければ(S40:NO)、一連の処理を終了する。
【0059】
一方、S40にて正常温履歴フラグがセットされていると判断されると(S40:YES)、続いて、水温が劣化判定温度よりも高いか否かを判断する(S41)。このとき、水温が劣化判定温度以下であると判断されると(S41:NO)、一連の処理を終了する。
【0060】
一方、S41にて水温が劣化判定温度よりも高いと判断されると(S41:YES)、正常温履歴フラグをクリアするとともに(S42)、水温センサ10の不揮発性メモリに設定した累積異常近似回数カウンタを1インクリメントする(S43)。すなわち、水温センサ10には、水温が劣化判定温度を超えた累積回数が記憶され、更新されている。
【0061】
そして、エンジンECU1は、このように累積異常近似回数及び累積高温回数を算出しつつ、所定のタイミングで部品劣化度評価処理を実行する。
すなわち、図7に示すように、エンジンECU1は、上述のように時間情報を取得し(S51)、水温センサ10の使用開始時からの累積経過時間が予め設定した閾値を超えたか否かを判断する(S52)。なお、この閾値には、水温センサ10の劣化が進行していると想定される値が予め設定されている。このとき、累積経過時間が当該閾値を超えたと判断されると(S52:YES)、第1の実施の形態と同様に、警告灯18、ナビゲーション装置の表示装置42、外部ツール6などを介して当該部品が劣化していることをユーザに報知する(S53)。
【0062】
一方、S52において、累積経過時間が当該閾値に達していないと判断されると(S52:NO)、続いて、水温センサ10の累積異常近似回数カウンタから累積異常近似回数を取得し(S54)、その累積異常近似回数が予め設定した閾値を超えたか否かを判断する(S55)。なお、この閾値には、水温センサ10の劣化が進行していると想定される値が予め設定されている。このとき、累積異常近似回数が当該閾値を超えたと判断されると(S55:YES)、警告灯18、ナビゲーション装置の表示装置42、外部ツール6などを介して当該部品が劣化していることをユーザに報知する(S53)。
【0063】
一方、S55において、累積異常近似回数が当該閾値に達していないと判断されると(S55:NO)、続いて、水温センサ10の累積高温回数カウンタから累積高温回数を取得し(S56)、その累積高温回数が予め設定した閾値を超えたか否かを判断する(S57)。なお、この閾値には、水温センサ10の劣化が進行していると想定される値が予め設定されている。このとき、累積高温回数が当該閾値を超えたと判断されると(S57:YES)、警告灯18、ナビゲーション装置の表示装置42、外部ツール6などを介して当該部品が劣化していることをユーザに報知する(S53)。
【0064】
一方、S57において、累積高温回数が当該閾値に達していないと判断されると(S57:NO)、一連の処理を終了する。
以上に説明したように、本実施の形態の部品劣化度評価装置においては、水温センサ10の使用開始からの累積経過時間、累積異常近似回数、水温がある高温値よりも高くなっ
た累積高温回数という複数の劣化評価情報を設定して、水温センサ10の劣化度合いを段階的判定するようにした。このように一つ部品についての劣化評価情報を複数設定することにより、より信頼性のある劣化度合いの評価を行うことができる。また、本実施の形態においても、水温センサ10に設けた不揮発性メモリにその複数の劣化評価情報を記憶させるようにしたため、仮にその水温センサ10が中古部品として流通したとしても、後にその劣化情報を読み取ることが可能になる。
【0065】
なお、本実施の形態では、水温センサ10が高温側で異常値を示した場合を例に説明したが、低温側で異常値を示したときの累積異常近似回数、累積低温回数などを劣化評価情報としてその劣化度合いを判定するようにしてもよい。
【0066】
また、上記各実施の形態においては、部品側では単に劣化評価情報の記憶のみを行い、エンジンECU1にてその劣化評価情報に基づいた劣化度合いの判定を行うようにしたが、その劣化度合い評価をも部品側で行うようにしてもよい。
【0067】
例えば、部品がトランスミッションECU2やブレーキECU3などの他のECUである場合や、これら他のECUに接続された個々のセンサ・スイッチ類21〜24,31〜33,41,51やアクチュエータ25〜27,34等である場合には、各ECUにて劣化評価情報の記憶及び劣化度合いの判定を行うことができる。その場合、各ECUでの判定結果をエンジンECU1で取りまとめるなどして、ユーザへの報知等を行うようにしてもよい。また、エンジンECU1ではなく、その他のECUが通信ラインLを介して劣化情報の報知を実行させるようにしてもよい。
【0068】
あるいは、センサ・スイッチ類やアクチュエータ等の個々の部品に、演算部、通信部、記憶部が実装されたマイクロコンピュータを設け、各部品によって自己の劣化評価情報の記憶及び劣化度合いの判定を行うようにしてもよい。その場合、各部品がその劣化情報をいずれかのECUに送信し、その劣化情報を受信したECUが、その劣化情報を警告灯18、表示装置42、外部ツール6などの報知手段に出力するようにしてもよいし、各部品が報知手段に直接出力するようにしてもよい。この場合、各部品は通信ラインLに対してECUを介して接続されていてもよいし、直接接続されていてもよい。
【0069】
また、その場合の部品からの劣化情報の通知方法としては、劣化度合いが所定の基準値に達したときに、故障等の異常状態と区別するため、通常の異常情報とは異なる態様の擬似的異常情報を出力するようにしてもよい。例えば、通常の異常情報の報知態様が警告灯18を点灯させるものである場合には、警告灯18を断続的(間欠的)に点灯又は点滅させるようにしてもよい。
【0070】
また、部品がセンサである場合には、その擬似的異常情報として、異常値を通常とは異なる態様で出力することにより、ECUに劣化状態であることを通知するようにしてもよい。例えば、水温センサ10が劣化状態にある場合に、通常取り得ない200℃という検出値を断続的に出力するといった具合である。この場合、故障等の異常状態であれば200℃という検出値が連続的に出力されるため、ECU側では、これを異常状態ではなく劣化状態であると判別することができる。
【0071】
さらに、個々の部品毎の劣化情報を管理するという観点からは、ECU側で各部品の劣化評価情報の記憶、劣化度合いの判定等の全てを行うようにしてもよい。図8は、変形例にかかる部品劣化度評価方法を概念的に表す説明図である。
【0072】
この場合、エンジンECU1におけるEEPROM等の不揮発性メモリ71に、各部品72,73に対応した劣化評価情報が記憶される。部品72,73は、エンジンECU1
に接続された個々のセンサ・スイッチ類であってもよいし、他のECUであってもよいし、他のECUに接続された個々のセンサ・スイッチ類であってもよい。
【0073】
エンジンECU1は、各部品の劣化評価情報に基づいて各部品の劣化度合いを判定し、いずれかの部品について劣化度合いが所定の基準値に達したときに、当該部品が劣化状態にあると判定し、該当する部品の劣化情報をユーザに報知してそのメンテナンスや取り替えを促す。部品交換時には、外部ツール6等により該当する部品の劣化評価情報を一旦クリアすることなどが考えられる。
【0074】
なお、この場合の劣化評価情報の内容や劣化度合いの判定基準等については、上述した各実施の形態の場合と同様であるため、その説明については省略する。
このような構成を採用した場合、劣化評価情報がエンジンECU1内のメモリに記憶されるため、既存のハード構成を流用することができ、容易かつ低コストに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1の実施の形態にかかる車両制御システムの概略構成を表すブロック図である。
【図2】部品劣化度評価方法を概念的に表す説明図である。
【図3】エンジンECUが実行する部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。
【図4】エンジンECUが実行する部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態にかかる部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態にかかる部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態にかかる部品劣化度評価処理の流れを表すフローチャートである。
【図8】変形例にかかる部品劣化度評価方法を概念的に表す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 エンジンECU
2 トランスミッションECU
3 ブレーキECU
4 ナビゲーションECU
5 メータECU
6 外部ツール
18 警告灯
42 表示装置
61,62,72,73 部品
63,64,71 不揮発性メモリ
L 通信ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の部品の劣化を評価するために予め設定した劣化評価情報を各部品毎に記憶し、前記劣化評価情報に基づいて前記部品の劣化度合いを判定し、前記劣化度合いが所定の基準値に達したときに、該当する部品の劣化情報を出力可能に構成されたことを特徴とする部品劣化度評価装置。
【請求項2】
前記部品の使用開始時からの所定の劣化要因を累積し、その累積値を前記劣化評価情報として記憶することを特徴とする請求項1記載の部品劣化度評価装置。
【請求項3】
前記劣化要因が、前記部品が劣化する状態におかれた時間又は回数であることを特徴とする請求項2記載の部品劣化度評価装置。
【請求項4】
前記劣化要因が、前記部品が異常状態に近い状態となる予め定める異常近似情報であることを特徴とする請求項2記載の部品劣化度評価装置。
【請求項5】
前記部品がセンサである場合に、その検出値が予め設定した閾値を超えた累積時間又は累積回数を、前記劣化評価情報として記憶することを特徴とする請求項1記載の部品劣化度評価装置。
【請求項6】
前記部品が、前記車両に搭載された電子制御装置に通信可能に接続される一方、自己の前記劣化評価情報を記憶するように構成され、記憶した前記劣化評価情報を前記電子制御装置に送信可能に構成され、
前記電子制御装置が、前記劣化度合いの判定を行い、前記部品の劣化情報を報知するための信号を出力可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の部品劣化度評価装置。
【請求項7】
前記部品が、自己の前記劣化評価情報を記憶し、劣化度合いを判定し、前記劣化度合いが前記基準値に達したときに、自己の劣化情報を報知するための信号を出力可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の部品劣化度評価装置。
【請求項8】
前記部品が、前記車両に搭載された電子制御装置に通信可能に接続される一方、自己の前記劣化評価情報を記憶し、劣化度合いを判定し、前記劣化度合いが所定の基準値に達したときに、自己の劣化情報を報知するための信号を前記電子制御装置に送信するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の部品劣化度評価装置。
【請求項9】
前記部品は、前記劣化度合いが所定の基準値に達したときに、前記電子制御装置に対して異常情報とは異なる態様で擬似的異常情報を出力することを特徴とする請求項8記載の部品劣化度評価装置。
【請求項10】
前記部品は、前記擬似的異常情報として、異常情報を間欠的に出力することを特徴とする請求項9記載の部品劣化度評価装置。
【請求項11】
前記部品がセンサである場合に、前記擬似的異常情報として、異常値を通常とは異なる態様で出力することを特徴とする請求項9記載の部品劣化度評価装置。
【請求項12】
前記車両に搭載された電子制御装置からなり、各部品毎に前記劣化評価情報の記憶と前記劣化度合いの判定をそれぞれ行い、該当する部品の劣化情報を報知するための信号を出力可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の部品劣化度評価装置。
【請求項13】
前記電子制御装置が、前記車両に搭載された報知手段に、該当する部品の劣化情報を報
知させる報知指令信号を出力するように構成されたことを特徴とする請求項12記載の部品劣化度評価装置。
【請求項14】
前記電子制御装置は、前記報知指令信号を前記車両に設けられた既存の表示手段に対して出力し、前記部品の劣化情報を、前記車両の異常を表す異常情報とは異なる態様で可視表示させることを特徴とする請求項13記載の部品劣化度評価装置。
【請求項15】
車両の部品であって、前記車両に搭載されてからの予め設定された自己の劣化評価情報を記憶し、記憶した前記劣化評価情報を出力可能に構成されたことを特徴とする部品。
【請求項16】
前記劣化評価情報に基づいて自己の劣化度合いを判定し、前記劣化度合いが所定の基準値に達したときに、異常情報とは異なる態様で擬似的異常情報を出力することを特徴とする請求項15記載の部品。
【請求項17】
車両の部品の劣化を評価するために予め設定した劣化評価情報を各部品毎に記憶し、前記劣化評価情報に基づいて前記部品の劣化度合いを判定し、前記劣化度合いが所定の基準値に達したときに、該当する部品の劣化情報を出力可能にすることを特徴とする部品劣化度評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−275929(P2006−275929A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98609(P2005−98609)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】