説明

部品実装基板の品質管理用の情報表示システムおよび情報表示方法

【課題】基板の品質が低下していないか否かの監視作業や、品質が低下した原因を特定する作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】部品実装基板上の各測定対象部位(パッド)に関係する構成要素(部品種−個片−部品−電極)の識別情報による階層構造データを配列し、この配列に各測定対象部位を対応づけた第1軸と、各基板を処理された順に順序づけ、その順序にあわせて各基板の生産条件を示す情報(ロット、スキージの識別情報)を配列した第2軸とによる2次元エリアを設定し、各基板の各測定対象部位の測定データを、2次元エリア内の対応位置に色彩として配置したカラーマップを生成する。各測定データは、良好な数値範囲が白色で表され、良好な数値範囲より大きい数値は赤色系の色彩で、良好な数値範囲より小さい数値は青色系の色彩で、それぞれ表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板の生産現場において、生産される基板の品質管理を管理するための情報を表示するシステムおよび当該情報の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタル家電などでは、機体の小型化および高機能化が進み、これに伴い部品実装基板の生産現場でも、微小部品が高密度に実装された小型基板を生産することが求められている。
このような構成の基板では、材料の供給や治具の状態などが僅かに変動しただけでも基板の品質が低下するおそれがあるので、各工程における処理の精度が低下していることを速やかに検出して、その低下の原因をつきとめる必要がある。
【0003】
上記の課題に関し、特許文献1には、複数の基板の複数箇所に印刷されたはんだの量を測定し、各測定値の度数分布を表すヒストグラムを表示することが記載されている。また特許文献2には、基板上の印刷はんだの高さ、面積、体積などを計測し、各計測値と基準値との偏差を、複数の階調によりレベル分けして表した基板のレイアウト図を表示することが記載されている。
【0004】
さらに、一般の生産現場で広く採用されている品質管理手法として、層別分析という手法がある。この方法では、基板上の構成要素(個片、部品、電極など)や生産条件(ロット、治具、生産された時間帯など)を複数とおりの条件に分け、条件毎に、測定値の平均やばらつきなどをグラフにし、各条件のグラフを比較するものである。さらに、ある条件分けによるグラフ間の分布に差異を発見すると、その条件分けに用いられた要素が品質の低下に関係していると考えて、具体的な原因を特定するための作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−343152号公報
【特許文献2】特開2006−71416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
部品実装基板の品質の低下は特定の場所や特定の部品に集中して生じる場合もあるが、そうではない場合もある。また、ロットが変更された後や、治具が取り換えられた後など、品質が低下した時期を特定できる場合もあれば、特に時期を特定できない場合もある。このような様々な傾向の中で品質が低下した原因を特定するには、個々の基板における測定値のばらつき(以下、「基板内変動」という。)と、各基板間における測定値のばらつき(以下、「基板間変動」という。)の双方を把握する必要がある。
【0007】
特許文献1に記載された方法では、複数の基板の複数箇所の測定値をまとめ、1つのヒストグラムにして表示しているので、基板内変動、基板間変動とも認識できないと思われる。また特許文献2に記載された方法によれば、基板内変動を認識することはできるが、基板間変動を認識することは困難である。
【0008】
一般に利用されている層別分析では、複数の条件分けを行うことによって、基板内変動および基板間変動を把握することができるが、品質が低下した原因を絞り込むには多数の条件分けを設定する必要があり、原因を特定できるまでの時間が長くなる可能性がある。また、稼働中の生産ラインで生産されている製品の品質が低下していないかどうかを確認する目的には利用しづらく、利用しても、確認作業を効率良く進めるのが困難である。
【0009】
本発明は、生産された基板の品質が低下していないか否かの監視作業や、品質が低下した原因を特定する作業を容易に行うことができるようにすることを課題とする。そのために本発明では、個々の基板の基板内変動と各基板における基板間変動とを同時に確認でき、その中で良好でない測定データがどのような傾向で現れているかを容易に認識できるような表示を行えるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるシステムは、部品実装基板の生産ライン内の少なくとも一工程を処理対象として、この処理対象の工程後の検査で求めた測定データを用いて、生産ラインで生産される基板の品質を管理するための情報を表示するもので、以下の属性記憶手段、属性入力手段、測定データ入力手段、表示用情報記憶手段、マップ画像生成手段、表示制御手段を具備する。
【0011】
属性記憶手段は、一枚の基板に含まれる複数の測定対象部位について、それぞれ部品実装基板上で当該測定対象部位が関係する構成要素の識別情報の組み合わせを、当該測定対象部位の属性として記憶する。
【0012】
属性入力手段は、処理対象の工程で処理された基板毎に、当該基板に対して工程を実行したときの生産条件を表す情報を、当該基板の属性として入力し、測定データ入力手段は、処理対象の工程の検査で各基板の各測定対象部位毎に求めた測定データを入力する。
【0013】
表示用情報記憶手段は、上記の測定データが示す数値が良好な数値範囲と良好でない数値範囲とに分類され、良好でない数値範囲が良好な数値範囲とは異なる色彩または異なる濃度により表されるようにするための表示用情報を記憶する。
この表示用情報としては、たとえば各数値範囲に所定の色彩または濃度を対応づけたテーブルが考えられる。または、測定データを所定の色彩または濃度に変換するための関数やプログラムを表示用情報とすることもできる。
【0014】
マップ画像生成手段は、属性記憶手段に保存された各構成要素の識別情報を構成要素間の関係に基づき階層構造にして配列して、この配列に各測定対象部位を対応づけた第1軸と、表示対象の各基板を処理対象の工程で処理された順に順序づけて、その順序にあわせて各基板に対応する生産条件の識別情報を配列した第2軸とによる2次元エリアを設定する。そして、各基板の各測定対象部位につき入力した測定データに表示用情報を適用して求めた色彩または濃度を2次元エリアの対応位置に設定することにより、測定データの分布を表す2次元マップを生成する。表示制御手段は、生成された2次元マップ画像をモニタ装置に表示する。
【0015】
上記のシステムにおいて、属性記憶手段が記憶する各測定対象部位の属性は、測定対象部位が完成体の基板の構成にどのように関わるかを示すものである。たとえば基板電極(パッド)を測定対象とする場合には、属性記憶手段には、パッド毎に、そのパッドに接続される部品の部品種および部品、ならびに部品内の電極の識別情報による組み合わせを保存することができる。
【0016】
属性入力手段が各基板の属性として入力する情報としては、処理が行われた時間帯、ロット番号、処理対象の工程で使用された治具(はんだ印刷機のスキージ、部品実装機の部品フィーダなど)の識別情報など、基板の生産条件を表し、時間の経過または処理対象の基板に応じて変動する情報を採用することができる。
【0017】
本発明により表示される2次元マップでは、第1軸に各測定対象部位の構成要素の識別情報を階層構造で配列して、その配列に各測定対象部位を対応づけ、第2軸に各基板を処理された順に配列して、その配列にあわせて各基板に対応する生産条件の識別情報を配列し、各基板の各測定対象部位の測定データを、それぞれ測定値に対応する色彩または濃度により表示する。したがって、ユーザは、各測定データに対応する基板上の構成や生産条件を容易に把握することができる。
【0018】
また、良好でない数値範囲の測定データは、良好な数値範囲とは異なる色彩または濃度により表示されるので、ユーザは、この良好でない数値範囲を表す表示の有無や数により基板の品質が低下していないかどうかを容易に判別することができる。さらに、品質が低下していると判断した場合には、良好でない数値範囲を表す表示がマップ内にどのように分布しているかによって、基板上の特定の構成要素に対応する箇所に不備が生じていることや、特定の生産条件により生産された基板に不備が生じていることなど、具体的な品質低下の傾向を容易に特定することができる。
【0019】
上記システムの好ましい一実施態様では、表示用情報記憶手段内の表示用情報は、良好な数値範囲Aと、数値範囲Aより値が大きくなる数値範囲Bと、数値範囲Aより値が小さくなる数値範囲Cとを、それぞれ異なる色相により表すとともに、数値範囲B,Cに属する数値を表示するときは、数値範囲Aに対する表示対象の数値の差が大きくなるにつれて表示する色彩の明度を低くするように定義されている。
【0020】
上記の態様によれば、良好な数値範囲より値の大きい測定データの分布状態と、良好な数値範囲より値の小さい測定データの分布状態とを、それぞれに設定された色相による色彩の分布により確認することができる。また、これらの色彩のうち、特に明度の低い色彩(濃い色)が集中している箇所に着目することによって、品質が大きく低下した基板や構成要素を把握することができる。
【0021】
より好ましい実施態様では、表示制御手段は、各測定対象部位の属性を表す各構成要素と各測定対象部位との関係を表す基板マップ画像を生成し、この基板マップ画像を2次元マップ画像の近傍位置に表示する。このようにすれば、2次元マップ内の各表示と基板の構成との関係を視覚的に認識することができ、対応箇所をより容易に確認することができる。
【0022】
さらに他の好ましい実施態様では、生産ラインに含まれる複数の工程が処理対象に設定されており、マップ画像生成手段は、処理対象の各工程について、第1軸の構成を共通にした2次元マップ画像を個別に生成する。また表示制御手段は、2次元マップ生成手段が生成した各工程の2次元マップ画像を同時に表示する。
【0023】
上記の態様によれば、複数の工程での同一部位に対する2次元マップ画像が同時に表示されるので、担当者は、これらの2次元マップ画像の分布パターンを比較することにより、詳細な分析を行って、基板の品質が低下した原因が発生した工程や、その具体的な原因を速やかに特定することが可能になる。
【0024】
上記のシステムでは、処理対象の工程の製造装置や検査装置から生産条件を表す情報や測定データを入力し(オフライン入力、または他の装置を介した入力でもよい。)、2次元マップ画像を作成し、表示するように構成することができる。また、表示制御手段は、モニタ装置の表示動作を直接制御するものに限らず、他の装置に2次元マップ画像の表示用データを送信して、その装置に表示を行わせるように構成してもよい。
【0025】
この発明による情報表示方法では、あらかじめ、一枚の基板内の複数の測定対象部位について、それぞれ部品実装基板上で当該測定対象部位が関係する構成要素の組み合わせを、当該測定対象部位の属性として設定するステップと、測定処理で得られる測定データが良好な数値範囲と良好でない数値範囲とに分類され、良好でない数値範囲が良好な数値範囲とは異なる色彩または異なる濃度により表されるようにするための表示用情報を設定するステップとを実行する。そして、処理対象の工程で処理された基板毎に、当該基板に対してその工程を実行したときの生産条件を表す情報を、当該基板の属性として入力するステップ、処理対象の工程の検査で各基板の各測定対象部位毎に求めた測定データを入力するステップ、モニタ装置の画面に、各測定対象部位の属性を表す各構成要素の識別情報を構成要素間の関係に基づき階層構造にして配列して、この配列に各測定対象部位を対応づけた第1軸と、表示対象の各基板を処理対象の工程で処理された順に順序づけて、その順序にあわせて各基板に対応する生産条件の識別情報を配列した第2軸とによる2次元エリアを表示し、各基板の各測定対象部位につき入力した測定データに表示用情報を適用して求めた色彩または濃度を2次元エリアの対応位置に表示することにより、モニタ装置の画面に測定データの分布を表す2次元マップ画像を表示するステップとを、実行する。
【発明の効果】
【0026】
上記のとおり、本発明では、基板の各種構成要素による階層構造を配列した第1軸と、各基板の生産条件を表す情報を基板の処理順序に対応づけて配列した第2軸とによる2次元エリア内に、各基板の各測定対象部位の測定データを色彩または濃度により表すとともに、良好でない数値範囲にある測定データを容易に認識できるようにした。よって、この表示を見たユーザは、基板の品質が低下しているか否かや、品質の低下がどのような事象に関連して生じているかを容易に確認することができ、短時間で基板の品質が低下した原因を特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】部品実装基板の生産ラインおよび生産された基板の品質管理システムの構成例を示す図である。
【図2】カラーマップの表示用画面の基本構成を示す図である。
【図3】表示対象の基板の部品実装後および部品実装前の構成を模式化して示す図である。
【図4】はんだ印刷構成の内容を模式化して示す図である。
【図5】カラーマップの分布パターンの他例を示す図である。
【図6】カラーマップの分布パターンの他例を示す図である。
【図7】カラーマップの分布パターンの他例を示す図である。
【図8】サーバに設定される機能を示すブロック図である。
【図9】生産条件記憶部、測定データ記憶部、設計条件記憶部、表示色定義記憶部の各データ構成例を示す図である。
【図10】カラーマップ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】カラーマップの表示画面の他例を示す図である。
【図12】カラーマップの表示画面の他例を示す図である。
【図13】カラーマップの表示画面の他例を示す図である。
【図14】カラーマップの表示画面の他例を示す図である。
【図15】各工程毎のカラーマップを照合する構成の画面を示す図である。
【図16】図15の画面のうち、カラーマップおよび測定データと色彩の対応表示欄を抜き出して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、製造現場に導入される部品実装基板の生産ラインLおよび生産された基板の品質を管理するシステムMの構成例を示す。
基板生産ラインLは、3種類の製造装置2A,2B,2Cと、これらの製造装置2A,2B,2Cの後段にそれぞれ配備される検査装置3A,3B,3Cにより構成される。製造装置のうち、2Aは、はんだ印刷機であり、2Bは部品実装機であり、2Cはリフロー炉である。
【0029】
検査装置3Aは、はんだ印刷機2Aによるはんだ印刷工程が実行された後の基板を対象に、ステレオカメラを用いた3次元計測を行って、基板上の各パッドに印刷されたはんだの体積を測定する。そして、各測定値を事前に登録された基準値と比較することにより、各パッドのはんだ量が適量、過多、過小のいずれであるかをパッド毎に判別する。
【0030】
検査装置3B,3Cは、2次元カメラによる撮像と画像処理とによる外観検査を行うものである。検査装置3Bは、部品実装機2Bによる部品実装工程が実行された後の基板を対象に、各実装部品の正否や位置ずれの有無などを判別する。検査装置3Cは、リフロー炉2Cによるリフロー工程が実行された後の基板を対象に、各実装部品の電極と基板側のパッドとの間に形成されたはんだフィレットの表面状態を検査する。
【0031】
基板の品質管理システムMは、サーバ1と、各部門の担当者が使用する端末装置5(図では、5A,5B,5Cの3台を示すが、数はこれに限定されるものではない。)とをイントラネットを介して接続したコンピュータネットワークシステムとして構成される。さらにサーバ1は、基板生産ラインLの各製造装置2A〜2Cや検査装置3A〜3Cにも、専用回線Zを介して接続されている。
【0032】
各製造装置2A〜2Cでは、あらかじめ設定された動作定義に基づき、1枚の基板の生産が終了する都度、その基板に対する処理を実行したときの条件(以下、「生産条件」という。)を表す情報をサーバ1に送信する。また各検査装置3A〜3Cでは、1枚の基板の検査が終了する都度、検査結果や、この検査のために実行した測定処理により得た測定データをサーバ1に送信する。いずれの装置からの送信情報にも、対応する基板の識別情報(以下、「基板ID」と記載)が添付されている。さらに各検査装置3C〜3Cから送信される測定データには、対応する測定対象部位の識別情報(たとえば後記するパッドID)が添付されている。
【0033】
サーバ1は、各製造装置2A〜2Cや検査装置3A〜3Cから送信される情報を、添付された識別情報に対応づけた状態で内部のメモリ(図示せず。)に保存する。また、所定の端末装置5から、その装置に入力された指定情報を受け付けると、メモリからその指定に応じた情報を読み出して、生産された基板の品質を確認するための情報を生成し、これを端末装置5に返送する。端末装置5では、この送信情報に基き、モニタ装置に確認作業用の画面を立ち上げる。
【0034】
以下、はんだ印刷機2Aで実行されたはんだ印刷処理の精度を確認することを目的とした表示を行う場合を例として、確認画面の構成や、この画面を生成するためにサーバ1で実行される処理について、説明する。
【0035】
図2は、確認作業用の画面の一例であって、検査装置3Aで測定されたはんだの体積を、複数種の色彩が分布する2次元マップ10(以下、「カラーマップ10」と記載する。)として表示したものである。この図2をはじめ、以下のカラーマップ10の図示では、各色彩を網点パターンおよび斜線パターンにより表現する。
【0036】
この画面のカラーマップ10の横手には、各色彩とそれぞれの色彩が表す数値範囲とを対応づけて表した表示欄13が設けられている。
カラーマップ10の上方には、複数の入力ボックスが配備された入力欄12が設けられている。この入力欄12は上記した指定情報の入力に用いられたもので、カラーマップ10の表示後も、指定情報を確認したり、次の指定を行う目的で画面に残されている。
【0037】
この入力欄12において、「品質特性」とは表示する測定データの種類を表すものであり、「機種」は表示対象の製造装置を意味する。
「生産条件」とは、各基板に対してはんだ印刷工程を実行したときに生じた条件を意味するもので、表示対象の基板を絞り込むための条件としても使用される。この実施例では、ロット番号が1から4までの範囲に含まれる基板が表示対象として指定されている。
【0038】
「設計条件」とは、部品実装基板の回路構成や部品の配置に関する条件を意味するが、ここでは測定データを表示する対象部位を絞り込むための条件を入力する意味で使用されている。具体的には、特定の部品種としてトランジスタを表示対象とすることが指定されている。
【0039】
図2の例では、図示を簡単にするため、各ロット内の基板枚数を10枚とし、各基板に基板IDとして、処理された順に1,2,3・・・というように番号を付与している。また、表示対象の各測定対象部位(パッド)にも、1,2,3・・・のように番号を付けている(以下、これらを「パッドID」という。)。
【0040】
図3は、上記のカラーマップ10の表示対象の基板について、部品実装後の基板の構成を示す模式図(1)と、部品実装前の基板の構成を示す模式図(2)とを対比して示す。なお、これらの模式図では、実装部品を設計条件で指定されたトランジスタのみに限定し、各部品やパッドを大きさを誇張して描いている。
【0041】
この実施例の基板は、4つの個片を一体にした構成のものである。各個片は回路構成や実装される部品の種類が同一であり、基板完成後には切り離されて、それぞれ1枚の制御基板として製品に組み込まれる。この実施例の各個片には、指定された部品(トランジスタ)が2つずつ実装されている。
【0042】
この実施例では、各個片にAA,AB,BA,BBの識別コードを付与している。また、いずれの個片でも、左側の部品を「部品a」とし、右側の部品を「部品b」としている。さらに、各部品a,bが具備する3本の電極に、共通の番号1,2,3(以下、「ピン番号」と記載)を付けている。
【0043】
図3(2)の部品実装前基板の模式図では、各個片AA,AB,BA,BCの各部品a,bに設けられる電極に対応する24個のパッドPの配置状態を表している。また各パッドPの近傍位置に、それぞれのパッドIDを表す数字(1〜24)を表している。
【0044】
上記によれば、各パッドPは、それぞれのパッドIDにより特定されるほか、部品実装後の基板における個片、部品、電極の各識別コードの組み合わせによっても特定することができる。たとえば、パッドIDが1番のパッドは、「個片AAの部品aのピン番号が1の電極が接続されるパッド」であり、パッドIDが13番のパッドは、「個片BAの部品aのピン番号が1の電極が接続されるパッド」である。すなわち、個片、部品、電極の各識別情報の組み合わせは、部品実装後の基板上で各パッドPが関係する構成要素を表すものであり、パッドP毎に固有の内容の情報となる。
【0045】
なお、図3では図示を省略しているが、部品実装前基板には、各パッドPに印刷されたはんだが構成として含まれる。また部品実装後基板には、図示されている部品や電極のほかに、パッドP、およびパッドPと部品側の電極間に形成されるフィレットが、構成として含まれる。
【0046】
つぎに、この実施例のはんだ印刷機2Aにより実行されるはんだ印刷工程について、図4を用いて説明する。図中のSは処理対象の基板であり、Pはパッドである。
この実施例のはんだ印刷機2Aでは、基板Sの搬入を受け付けると、その上面に各パッドPに対応する開口部Hを有するマスクMKを載せ、その上にクリームはんだFを供給してスキージG1,G2を動かす。この場合、奇数番目の基板Sに対しては、図中のマスクMKの左端にクリームはんだFを供給し、左側のスキージG1を左から右に向けて動かすことにより、この基板Sに対するはんだ印刷を行う。この処理によりパッドPに搭載されなかったクリームはんだFは、マスクMの右手に移動するので、次の偶数番目の基板Sに対しては、右側のスキージG2を右から左に向けて動かすことでクリームはんだFを左に移動させ、はんだ印刷を行う。
【0047】
この実施例では、スキージG1の移動方向を「往方向」とし、スキージG2の移動方向を「復方向」とし、各スキージG1,G2をそれぞれの移動方向を表す「往」「復」の文字により表すものとする。
【0048】
基板生産ラインLでは、生産される基板をロット単位で管理している。したがって、基板検査ラインLの最初の製造装置であるはんだ印刷機2Aに基板が搬入されると、その基板に対し、対応するロットのロット番号と、そのロットにおける処理順位(ロット内で何番目の基板か)が、生産条件として付与される。
【0049】
さらに、図4に示したように、はんだ印刷機2Aが2枚のスキージG1,G2を交互に使用していることに伴い、各基板にはんだ印刷工程を実行する際には、『「往」「復」いずれのスキージを使用したか』という生産条件が発生する。
【0050】
はんだ印刷機2Aでは、1枚の基板を処理する都度、この基板に対して生じた生産条件を表す情報(ロット番号、処理順位、スキージの種類)を当該基板の基板IDとともにサーバ1に送信する。サーバ1では、この情報を、メモリ内に蓄積し、カラーマップ10を生成する際の属性情報として使用する。
【0051】
ここで図2に戻って、カラーマップ10の表示画面の説明を再開する。
この画面の右端の表示欄13に表されているように、この実施例では、はんだ体積の測定値をパーセント換算し、換算後の測定値を複数の数値範囲に分類して、各範囲に色彩を割り当てるようにしている。ここで100%のはんだ体積は、ユーザの定めたはんだ体積の理想的な値に対応し、90〜110%の範囲は、良好な数値範囲として白色で表される。これに対し、110%以上の範囲は、はんだ量が多い状態を示すものとして赤色系の色彩で表される。また90%以下の範囲は、はんだ量が少ない状態を示すものとして青色系の色彩で表される。また、赤色系、青色系とも5段階に分けられ、良好なレベルから離れるほど明度が低くなるように(赤み、青みが強くなるように)設定されている。
【0052】
なお、上記の良好な数値範囲は、検査装置3Aが良品と判定する範囲とは無関係に、あらかじめ定められた所定のルールに従って定められる。したがって、良好でない数値範囲に属するもの、すなわち、はんだ体積が110%以上になったもの、および90%以下になったものの中にも、検査装置3Aで良と判定されたものが含まれる場合がある。一方で、設定されたルールによっては、良好な数値範囲が検査装置3A側の良品範囲に一致する場合もある。
また、良好な数値範囲と良好でない数値範囲との境界は、技術上、一義的に定まるものではなく、ユーザによってまちまちである。
【0053】
カラーマップ10には、指定された内容に基づき、横軸方向に40個(基板の数)、縦軸方向に24個のセルが配列される。またセルの横軸方向には基板IDが順に対応づけられ、縦軸方向には各パッドIDが順に対応づけられている。
【0054】
さらに横軸方向には、各基板に対してはんだ印刷工程が実行されたときに生じた生産条件を表す属性として、各ロットの識別情報「ロット1」「ロット2」「ロット3」「ロット4」と、使用されたスキージの識別情報「往」「復」が、各基板IDに対応づけて配列されている。また、ロットの識別情報は複数の基板に共通し、また時間の経過に沿って切り替わるので、スキージの情報の上位概念として配列されている。
【0055】
縦軸方向には、各パッドの属性を表す部品種、個片、部品、電極(PIN)の各情報が、実際の基板上の関係に基づく階層構造形式に配列されて表示されている。縦軸方向における24個のパッドの並び順序は、実際にはパッドIDではなく、この基板の構成要素の階層構造の配列に基づいて定められる。
【0056】
カラーマップ10の各セルには、それぞれ対応する基板の対応するパッドについて得た測定データを表す色彩が表示される。したがって、縦軸方向の色彩パターンは、個々の基板のはんだ体積の基板内変動を表すことになり、横軸方向の色彩パターンは、40枚の基板における基板間変動を表すことになる。
【0057】
このカラーマップ10によれば、良好でない測定値を意味する赤色系または青色系のセルの数が少なく、これらが局所的に集中している箇所がない場合には、あまり問題視する必要はない。しかし、赤色系または青色系のセルがマップに広く分布したり、マップ内の所定箇所に集中して現れた場合には、生産条件または基板の設計条件に何らかの不備があるとして、その原因を分析する必要がある。この実施例では、カラーマップ10の横軸方向に基板の生産条件を対応づけ、縦軸方向に各測定対象部位に関係する構成要素の組み合わせを対応づけているので、良好でない測定値を表すセルに対応する各軸の表示を確認することにより、測定値の悪化の原因を容易に推定することができる。
【0058】
図2の例のカラーマップ10では、ロット4の個片ABに対応する領域に、はんだ量が少ない状態を示す青色系のセルが多数出現している。このような場合には、ロット4の生産が実行されている間に個片ABに対応する箇所のはんだ印刷に何らかの不備が生じたと推定することができる。よって、個片ABに対応する箇所の処理内容を確認することで、この箇所の品質低下の原因を特定することができ、以後の品質の低下を防止することができる。
【0059】
このように、この実施例では、マップ内の色彩の分布パターンから、良好でない測定値を表すセルが集中して現れている領域を容易に認識し、その領域に対応する各軸の範囲から、はんだの量が良好でなくなったときの基板の生産条件や、はんだの量が良好でないパッドに接続された構成要素を特定することができる。よって、はんだの量に不備が生じた原因を容易に特定し、さらにはんだの状態が悪くなって多数の不良が生じる前に必要な措置をとることが可能になる。
【0060】
図5〜7は、カラーマップ10の分布パターンの他の例を示す。なお、以下では、赤色系または青色系の色彩のセルを「異常セル」と呼ぶ。
まず図5の例では、ロット3に対応する領域に異常セルが集中して現れている。ロット3内では、縦軸方向における異常セルの分布には規則性を認めにくく、スキージの「往」「復」の違いによる差異も認めにくい。このような場合には、ロット3の処理で各基板に共通に適用された生産条件(たとえば、ロット3で他のロットとは違うマスクを使用したなど)がないかをチェックすることで、はんだの量が良好でないパッドが増えた原因を特定することができる。
【0061】
つぎに図6の例では、ロットや個片の別を問わず、部品bに対応する領域に異常セルが集中して現れている。また図7の例では、ロット、個片、部品の別を問わず、部品a,bのピン番号3の電極に対応する領域に異常セルが集中して現れている。
【0062】
図6,7のように、基板上の特定の構成要素に対応するパッドの測定値が良好でない状態になっている場合には、基板の設計条件に生産条件が適合していなかった可能性がある。たとえば、パッドのサイズが小さくなるとマスクMの開口部Hも微小になるが、開口部Hが小さくなるとクリームはんだの抜け性が悪くなる。したがって、特定の部品または電極用のパッドが、周囲の部品などとの関係などにより小さくなって、良好な量のはんだを転写できない状態になると、図6や図7のような異常セルの分布パターンが現れる可能性があるが、開口部Hを広げたマスクに変更するなど、基板側の構成の特性をふまえて生産条件を見直すことで、はんだ量の不備を解消することができる。
【0063】
単に、測定値の悪化した箇所を各パッドの識別情報(パッドID)により示すだけでは、パッドと基板の構成との関係をすぐには割り出せないため、上記のような原因を推定できるとしても、かなり時間がかかる。これに対し、この実施例では、異常セルが集中する範囲に対応する構成要素を即座に確認することができるので、はんだ量の悪化の原因を容易に判別することができる。
【0064】
図8は、サーバ1に設けられる各種機能を示す。
図中、101〜105は、サーバ1内のメモリに格納される情報群を「記憶部」という名称で表現したものである。これらのうち、生産条件記憶部101、測定データ記憶部102、設計条件記憶部103、表示色定義記憶部104については、図9に、先の図2〜4の具体例に合わせたデータ構成を例示している。
【0065】
上記の各記憶部のほか、サーバ1には、生産条件入力部106、測定データ入力部107、検査結果入力部108、指定受付部109、表示データ生成部100、表示データ出力部110などの機能が設けられる。
【0066】
生産条件入力部106は、各製造装置2A,2B,2Cから基板の生産条件を表す情報の送信を受け付け、受け付けた情報を生産条件記憶部101に保存する。測定データ入力部107は、各検査装置3A,3B,3Cから、各基板に対する検査で求められた測定データの送信を受け付け、受け付けた情報を測定データ記憶部102に保存する。検査結果入力部108は、各検査装置3A,3B,3Cから、検査に用いられた画像の送信を受け付けて、受け付けた画像を検査画像記憶部105に保存する。
【0067】
設計条件記憶部103に格納される情報は、あらかじめ基板の設計情報に基づいて作成され、サーバ1に入力されたものである。表示色定義記憶部104は、図示の各機能用のプログラムとともにサーバ1に導入されたもので、図9に示すデータ構成のほか、各測定データをパーセント換算するための基準値として、100パーセントの測定値(あらかじめユーザにより入力されたもの)が登録される。
【0068】
指定受付部109は、カラーマップ10の生成に関する指定操作を受け付けた端末装置5から、その指定内容を受け付けるためのものである。
表示データ生成部100には、カラーマップ生成部111、統計処理部112、基板マップ生成部113、表示画像抽出部114などが含まれる。これらのうち、カラーマップ生成部111は、指定操作受付部109が受け付けた情報に基づき、生産情報記憶部101、測定データ記憶部102、設計条件記憶部103から必要な情報を読み出し、カラーマップ10の画像データを生成する。このときカラーマップ10の各セルの色彩は、当該セルに対応する基板およびパッドに対応する測定データの値を上記の基準値に基づきパーセント換算したものを、図9に示す表示色定義記憶部104の定義にあてはめることにより導出される。
【0069】
統計処理部112および基板マップ生成部113は、それぞれ後記する実施例2以降の実施例の画面に表示される管理図14および基板マップ15を生成する。表示画像抽出部114は、検査画像記憶部105から、カラーマップ10内の所定のセルに対応する部位の画像を読み出す処理を実行する。
【0070】
表示データ出力部110は、表示データ生成部100により生成された各種情報を端末装置5に送信する。端末装置5では、送信された情報を用いて、図2または図11以下の各例に示すような画面を、自装置のモニタ装置に立ち上げる。
【0071】
図10は、上記の各機能のうち、カラーマップ生成部113により実行される処理の手順を示す。以下、図2に示した構成のカラーマップ10を生成することを前提にして、適宜、図8,9を参照して説明する。
【0072】
最初のステップST1では、指定操作受付部109から、カラーマップ10への表示対象範囲を指定する操作を受け付ける。具体的には、図2の表示欄12に示した各情報を受け付けることになる。
【0073】
つぎにステップST2では、受け付けた情報のうち、「設計条件」として入力された情報(トランジスタ)により設計条件記憶部103を検索することで、この情報の下位にある各構成要素の識別情報(個片ID、部品ID、ピン番号、パッドID)を読み出す。そして、これらのうちパッドIDにより測定対象部位のパッドを特定するとともに、他の4種類の情報により、測定対象部位に対応する構成要素の階層構造データを設定する。
【0074】
つぎにステップST3では、「生産条件」として入力された情報(ロット1〜4)により生産条件記憶部101を検索して、この情報に対応する基板IDおよび下位の生産条件(スキージ方向)を読み出し、基板IDの順序に適合するような生産条件の階層構造データを作成する。
【0075】
ステップST4では、パッドID、基板ID、およびST2,3の各ステップで作成した階層構造データを用いて、カラーマップ10の枠組み情報を生成する。ステップST5では、各基板IDおよびパッドIDの組み合わせにより測定データ記憶部102を検索して、表示対象の測定データを読み出す。そして、測定データ毎に、ステップST6〜10のループを実行する。
【0076】
このループでは、まず、対応する基板IDおよびパッドIDよりカラーマップ10における対応セルを特定する(ST7)。つぎに測定データの値により表示色定義記憶部104を検索することによって、測定データの表示色を決定し(ST8)、その表示色を対応セルに設定する(ST9)
【0077】
上記の手順により生成されたカラーマップ10の画像データは、表示データ出力部110に渡され、表示データ出力部110から端末装置5に送信される。これにより端末装置5のモニタ画面に、図2に示したような画面が表示されることになる。
【0078】
以下、図2に示したカラーマップ10をベースとして、機能をさらに高めた表示画面の実施例(実施例2〜6とする。)を、追加された機能を中心に説明する。また、いずれの実施例でも、共通する構成に同じ符号を付すことにより、前の実施例で説明した構成に関する説明を省略または簡単にする。
【0079】
<実施例2>
この実施例を示す図11の画面では、カラーマップ10に加えて、各測定値のXbar−R管理図14および基板マップ15とを表示する。
【0080】
Xbar−R管理図14は、基板毎に測定データの平均値Xbar、および最大値と最小値との差Rを求め、これらを時系列グラフとして表したものである。このグラフのデータは、図8の統計処理部112により作成されるが、横軸のスケールはカラーマップ10に対応させている。
【0081】
基板マップ15は、部品実装前の基板のレイアウト図(個片および各パッドのレイアウトである。)に、その他の構成要素の識別情報を対応づけた構成のものである。この基板マップ15を表示するためのデータは、図8の基板マップ生成部113により作成される。
【0082】
Xbar−R管理図14では、平均値Xbarのグラフの中央部の基準線16を、100%の測定値に対応づけている。また、最大値と最小値との差Rは、基板内の測定データのばらつきが大きくなったときに上昇する。よって、担当者は、Xbarの値が基準線16から大きく離れた箇所や、Rの値が大きくなった箇所を見て、はんだの印刷精度が悪い処理期間を把握し、その期間内のカラーマップ10の分布を重点的にチェックすることができる。
【0083】
また基板マップ15によれば、実際の各パッドの位置や向きと、部品や電極の識別情報とにより、基板の構成に対する各パッドの関わり状態をより正確に認識することができる。よって、カラーマップ10に異常セルが現れた場合には、そのセルに対応するパッドや当該パッドに対応する構成要素が基板上のどの範囲にあるかを容易に特定することができる。
【0084】
<実施例3>
図12に示す画面には、実施例2の構成に加えて、表示対象のパッドのいずれか1つを、該当する基板IDおよびパッドIDにより指定するための入力ボックス17と、この指定に該当するパッドの画像を示す表示欄18と、当該パッドの測定データを示す表示欄19とが設けられる。また、カラーマップ10、Xbar−R管理図14、および基板マップ15では、入力された各IDに対応する箇所が所定の色彩による枠マークg1〜g4により明示される。なお、表示欄18内の画像は、図8の表示画像抽出部114により読み出されたものである。
【0085】
上記の構成によれば、担当者は、カラーマップ10内の異常セルが集中している領域を確認した後に、この領域に対応するパッドの1つを選択し、そのパッドの実際の画像や測定データを確認することができる。また基板マップ上の枠マークg4により、選択されたパッドの位置や向きを視覚的に認識することができる。
【0086】
なお、画像表示を行うパッドを指定する処理は、カラーマップ10内の該当セルをクリックする操作により行うこともできる。この場合には、クリック操作に応じて、入力欄17の表示も操作されたセルに対応するIDによるものに切り替えられる。
または、画面が立ち上げられたときに異常セルが多い範囲から表示対象のパッドを自動抽出して、その画像や測定データを表示し、その後、適宜、ユーザの選択に応じて表示を切り替えるようにしてもよい。
【0087】
<実施例4>
図13に示す画面では、実施例3の構成に加え、カラーマップ10内で異常セルが集中している範囲を指定するための入力ボックス20が設けられる。この入力ボックス20内の「生産条件」はカラーマップ10の横軸の属性を指定するものであり、「設計条件」はカラーマップ10の縦軸の属性を指定するものである。この例では、横軸方向についてはロット4の基板に対応する範囲が、縦軸方向については個片ABに対応する範囲が、それぞれ指定されている。
【0088】
上記の指定が行われると、カラーマップ10の各軸方向の指定された範囲が、所定の色彩による枠マークM,Mにより明示される。また、Xbar−R管理図14や基板マップ15でも、それぞれ指定された範囲に対応する範囲に枠マークMG1,MY1が設定される。これらの枠画像のうち、生産条件の指定に対応する枠マークM,MG1は緑色で表示され、設計条件の指定に対応する枠マークM,MY1は黄色で表示される。
【0089】
上記によれば、各枠マークにより明示された箇所を見比べることにより、カラーマップ10で認識した異常の範囲とXbar−R管理図14との対応関係や、これらに対応する生産条件や基板の構成要素を容易に把握することができる。
【0090】
なお、この実施例でも、入力欄20への入力に代えて、カラーマップ10に対する範囲指定操作を行うことができる。また、異常セルが集中する範囲を自動抽出して、各枠マークを表示することもできる。
【0091】
<実施例5>
図14に示す画面には、これまでの実施例の基板マップ15や表示欄18,19に代えて、これらを統合した概念の表示欄21が設けられる。また実施例4と同様の入力欄20により、異常セルが集中している範囲の指定を受け付けて、その指定に基づき、指定された範囲の内外から4つのセルを選択し、これらのセルに関する情報を表示欄21に表示する。
【0092】
具体的に、図14に基づき説明する。この実施例では、指定された範囲内から、基板IDが38、パッドIDが11の位置にある異常セルを選択している(選択方法は、クリック操作による指定、または自動選択のいずれでもよい。)。
【0093】
カラーマップ10によれば、選択された異常セルは、ロット4の8番目に処理された基板の個片ABにあり、部品bのピン番号2の電極が接続されるパッドに相当する。そこでこの実施例では、同じ基板IDのセルの中から、選択されたのとは異なる個片BAの部品bのピン番号2の電極に対応するセル(ID17のパッドに対応)を選択する。また、入力欄20で指定された範囲の外にある基板ID28を選択し、この基板IDに対応するセルの中から、基板ID38に対して選択したセルと同一のパッドID(11,17)のセルを選択する。これらの選択も、基板の生産条件、設計情報、測定データに基づき、自動的に行うことができるほか、選択操作に応じて行うことができる。
【0094】
表示欄21には、選択された各セルに対応する実際のパッドの画像およびその測定データ、および各基板の基板マップが表示される。また、各画像や基板マップ中のパッド、カラーマップ10中の選択されたセルは、対応するもの毎に同じ色彩の枠マーク(符号省略)により明示される。
【0095】
ここで、IDが38の基板とIDが28の基板とは、ロット内の8番目に処理される点および「復」のスキージが使用される点で生産条件が一致している。したがって、担当者は、生産条件および構成要素の関係がともに対応するパッド間の画像や測定データを照合して、詳細な分析作業を行うことができる。
【0096】
<実施例6>
図15は、これまでに示したはんだ印刷工程のほか、部品実装工程、リフロー工程について、同様の情報を生成して各情報を1つの画面内に配置した例を示す。図中の符号は、図11〜13に準じたものであるが、共通する内容の表示に関しては、末尾にA,B,Cの符号を付けて区別している。
【0097】
図16は、上記の画面から、各工程のカラーマップ10A,10B,10Cと、マップ上の色彩と数値範囲との対応関係を示す表示欄13A,13B,13Cとを抽出して表したものである(枠マークの表示は省略する。)。実際にも、このようにカラーマップ10に関する表示のみに画面を切り替えたり、2台のモニタ装置を用いて、図15,16の画面を並列表示することが可能である。または、3台のモニタ装置を並べて配置して、これらのモニタ装置により各工程毎の表示を個別に行ってもよい。
【0098】
はんだ印刷工程のカラーマップ10Aは、先の各実施例と同様の構成のものである。他の2つのカラーマップ10B,10Cでは、縦軸方向には、カラーマップ10Aと同様の階層構造による属性情報が対応づけられているが、横軸方向には、それぞれ異なる情報が対応づけられている。
【0099】
具体的にカラーマップ10Bの横軸には、ロット1,2,3,4の下位に、表示対象の部品(トランジスタ)の実装に使用された部品カセットの識別番号(1または2)が設定されている。またカラーマップ10Cの横軸には階層構造データは設定されず、ロット1,2,3,4のみが対応づけられている。
【0100】
また、カラーマップ10Bでは、はんだの体積に代えて、各パッドに対する部品の縦方向の位置ずれ量を色彩に変換したものを各セルに設定する。この位置ずれ量には、位置ずれの方向を示すプラス、マイナスの符号が付されており、位置ずれ量が−20から+20までの範囲が良好な数値範囲に設定され、+20以上の数値範囲が赤色系の色彩により、−20以下の数値範囲が青色系の色彩により、それぞれ複数の範囲に分割して示される。
【0101】
またカラーマップ10Cでは、各パッドにおけるフィレットの面積を色彩に変換したものを各セルに設定する。この面積は、所定の値を基準値としてパーセント換算され、換算後の各数値に、はんだ体積と同様の定義による色彩が割り当てられる。
【0102】
この実施例によれば、各工程について、基板上の同一の構成要素に対する測定データの状態を照合することができるので、ある工程で生じた工程が他の工程に及ぼす影響を容易に確認することができる。たとえば図16によれば、部品実装工程のカラーマップ10Cにも異常セルが存在するが、その分布には規則性が認められない。これに対し、リフロー工程のカラーマップ10では、はんだ印刷工程のカラーマップ10Aと同様の範囲に、異常セルが集中しており、はんだ印刷の際のはんだ量がリフロー工程の処理結果に大きく影響することがわかる。
【0103】
さらに図15によれば、この実施例の画面では、カラーマップ10A,10B,10Cのいずれかに対するセルの選択操作を受け付けると、それぞれの画像の表示欄18A,18B,18Cに選択したセルに対応するパッドの画像を表示し、また表示欄19A,19B,19Cに測定データを表示する。よって、ユーザは、カラーマップ10A〜10Cを照合するとともに、実際に同一の部位の画像を照合して、異常の程度を確認することができる。
【0104】
以下、品質管理用の情報の表示について、考えられ得るその他の実施態様を説明する。
まず、上記の各実施例では、既に処理を終了して各基板の生産条件や測定データがサーバ1に蓄積されたものを対象にカラーマップを作成しているが、これに限らず、1枚の基板に対する処理が終了する都度、その基板につき生じたデータを取り込んで、カラーマップを1行ずつ表示するようにしてもよい。この場合には、表示対象とする基板の構成要素のみを指定しておき、過去所定時間内に処理された基板に関する測定データを表示することもできる。
【0105】
このようにすれば、各部門の担当者は、生産ラインLの処理状態をその進行に合わせてチェックすることができるから、測定データが悪化する傾向が現れたときに、これを速やかにチェックし、本格的な不良が発生する前に必要な措置をとることができる。また、担当者が常時監視をすることができない場合には、ある時間単位毎に異常セルの数を計数し、この計数値が所定の基準値を超えたときに警告を出力するようにしてもよい。
【0106】
またカラーマップで良好でない測定値を表示する場合には、赤色系および青色系の色彩とも、先の各実施例のように数値範囲を分けて示さずに、良好な数値範囲から遠ざかるにつれて徐々に明度が低くなるような方法をとってもよい。また、測定データの大小を判別することはできないが、グレースケールによる2次元マップを生成してもよい。
【0107】
また、図1,8に示した品質管理システムでは、端末装置5からの要求に応じてサーバ1でカラーマップ10等の表示用情報を生成し、端末装置5に送信するようにしたが、これに代えて、各端末装置5がサーバ1から必要な情報の提供を受けて、カラーマップ10を生成し、表示するようにしてもよい。
【0108】
また、上記のサーバ1の機能と端末装置5の機能とを合わせたものを、各工程の検査装置3A,3B,3Cの制御部(検査装置3A,3B,3Cに搭載、または外付けされているコンピュータ)に設定することも可能である。この場合には、検査を実行しながら、適宜、対応する製造装置2A,2B,2Cの処理の精度が低下していないかどうかをチェックし、低下が認められた場合には、速やかな対応をとることができる。
また、上記と同様の目的で、サーバ1の機能と端末装置5の機能とを合わせたものを、各工程の製造装置2A,2B,2Cの制御部(製造装置2A,2B,2Cに搭載、または外付けされているコンピュータ)に設定してもよい。この場合、製造装置2A,2B,2Cでは、後段の検査装置3A,3B,3C、またはサーバ1から、検査が終了した基板にかかる測定データの提供を受けて、カラーマップ等の表示用情報を生成することになる。
【符号の説明】
【0109】
M 品質表示システム
L 部品実装基板の生産ライン
1 サーバ
2A,2B,2C 製造装置
3A,3B,3C 検査装置
5A,5B,5C 端末装置
10、10A,10B,10C カラーマップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装基板の生産ライン内の少なくとも一工程を処理対象として、この処理対象の工程後の検査で求めた測定データを用いて、前記生産ラインで生産される基板の品質を管理するための情報を表示するシステムであって、
一枚の基板に含まれる複数の測定対象部位について、それぞれ部品実装基板上で当該測定対象部位が関係する構成要素の識別情報の組み合わせを、当該測定対象部位の属性として記憶する属性記憶手段と、
前記処理対象の工程で処理された基板毎に、当該基板に対して前記工程を実行したときの生産条件を表す情報を、当該基板の属性として入力する属性入力手段と、
前記処理対象の工程の検査で各基板の各測定対象部位毎に求めた測定データを入力する測定データ入力手段と、
前記測定データが示す数値が良好な数値範囲と良好でない数値範囲とに分類され、良好でない数値範囲が良好な数値範囲とは異なる色彩または異なる濃度により表されるようにするための表示用情報を記憶する表示用情報記憶手段と、
前記属性記憶手段に保存された各構成要素の識別情報を構成要素間の関係に基づき階層構造にして配列して、この配列に各測定対象部位を対応づけた第1軸と、表示対象の各基板を前記処理対象の工程で処理された順に順序づけて、その順序にあわせて各基板に対応する生産条件の識別情報を配列した第2軸とによる2次元エリアを設定し、各基板の各測定対象部位につき入力した測定データに前記表示用情報を適用して求めた色彩または濃度を前記2次元エリアの対応位置に設定することにより、測定データの分布を表す2次元マップ画像を生成するマップ画像生成手段と、
前記マップ画像生成手段が生成した2次元マップ画像をモニタ装置に表示する表示制御手段とを具備する、
ことを特徴とする、部品実装基板の品質管理用の情報表示システム。
【請求項2】
前記表示用情報記憶手段内の表示用情報は、良好な数値範囲Aと、数値範囲Aより値が大きくなる数値範囲Bと、数値範囲Aより値が小さくなる数値範囲Cとを、それぞれ異なる色相により表すとともに、数値範囲B,Cに属する数値を表示するときは、数値範囲Aに対する表示対象の数値の差が大きくなるにつれて表示する色彩の明度を低くするように定義されている、請求項1に記載された部品実装基板の品質管理用の情報表示システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記各測定対象部位の属性を表す各構成要素と各測定対象部位との関係を表す基板マップ画像を生成し、この基板マップ画像を前記2次元マップ画像の近傍位置に表示する、請求項1または2に記載された部品実装基板の品質管理用の情報表示システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたシステムにおいて、
前記生産ラインに含まれる複数の工程が処理対象に設定されており、
前記マップ画像生成手段は、処理対象の各工程について、第1軸の構成を共通にした2次元マップ画像を個別に生成し、前記表示制御手段は、前記マップ画像生成手段が生成した各工程の2次元マップ画像を同時に表示する、部品実装基板の品質管理用の情報表示システム。
【請求項5】
部品実装基板の生産ライン内の少なくとも一工程を処理対象として、この処理対象の工程後の検査で求めた測定データを用いて、前記生産ラインで生産される基板の品質を管理するための情報を表示する方法であって、
一枚の基板内の複数の測定対象部位について、それぞれ部品実装基板上で当該測定対象部位が関係する構成要素の組み合わせを、当該測定対象部位の属性として設定するステップと、前記測定処理で得られる測定データが良好な数値範囲と良好でない数値範囲とに分類され、良好でない数値範囲が良好な数値範囲とは異なる色彩または異なる濃度により表されるようにするための表示用情報を設定するステップとを、あらかじめ実行しておき、
前記処理対象の工程で処理された基板毎に、当該基板に対して前記工程を実行したときの生産条件を表す情報を、当該基板の属性として入力するステップと、
前記処理対象の工程の検査で各基板の各測定対象部位毎に求めた測定データを入力するステップと、
モニタ装置の画面に、各測定対象部位の属性を表す各構成要素の識別情報を構成要素間の関係に基づき階層構造にして配列して、この配列に各測定対象部位を対応づけた第1軸と、表示対象の各基板の識別情報を前記処理対象の工程で処理された順に順序づけて、その順序にあわせて各基板に対応する生産条件の識別情報を配列した第2軸とによる2次元エリアを表示し、各基板の各測定対象部位につき入力した測定データに前記表示用情報を適用して求めた色彩または濃度を前記2次元エリアの対応位置に表示することにより、前記モニタ装置の画面に測定データの分布を表す2次元マップ画像を表示するステップとを、実行することを特徴とする、部品実装基板の品質管理用の情報表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate