説明

部品実装機

【課題】ダイシングシートからダイを剥離してピックアップする工程とダイを回路基板に実装する工程とを1台の部品実装機で実行するものにおいて、生産性を高める。
【解決手段】部品実装機のベース台11上に、回路基板12をX方向に搬送するコンベア13と、ウエハパレットを取替え可能にセットするためのウエハパレットセット台15と、ウエハパレットのダイシングシートから剥離したダイを複数個載置可能なダイ移載ステージ32と、2台のX−Yロボット22,23を設ける。2台のX−Yロボット22,23にそれぞれ作業ヘッド28,29を取り付け、一方の作業ヘッド28でウエハパレットのダイシングシート上のダイをピックアップしてダイ移載ステージ32に載置する動作を繰り返すと共に、他方の作業ヘッド29でダイ移載ステージ32上のダイをピックアップして回路基板12に実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハパレットで供給されるダイをピックアップして回路基板に実装する部品実装機に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ウエハパレットで供給されるダイは、ウエハを碁盤目状にダイシングして形成され、ダイシングシートに貼着されているため、ダイシングシートからダイをピックアップする際に、ダイシングシートからダイを剥離する必要がある。ダイの剥離方式には、突き上げ剥離方式とスライド剥離方式とがある。突き上げ剥離方式では、特許文献1(特開2010−129949号公報)に記載されているように、碁盤目状にダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシート上のウエハから分割したダイを吸着ノズルで吸着してピックアップする際に、ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分をその真下から突き上げポットで突き上げて該ダイの貼着部分をダイシングシートから部分的に剥離させながら、吸着ノズルで該ダイを吸着してダイシングシートからピックアップするようにしている。
【0003】
しかし、ダイが薄くて割れやすいダイの場合は、上記突き上げ剥離方式ではダイが割れてしまう可能性があるため、スライド剥離方式が用いられる。スライド剥離方式では、特許文献2(特許第3209736号公報)に記載されているように、多数のダイが貼着されたダイシングシート上のダイをピックアップする吸着ノズル(コレット)と、シート吸引孔を有する剥離ステージとを備え、吸着ノズルのパッドでダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から剥離ステージのシート吸引孔を該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで、該ダイの貼着部分を徐々にシート剥離するようにしている。
【0004】
また、特許文献3(特開平11−97489号公報)では、1台の装置に2つのヘッドを搭載し、一方のヘッドでダイシングシート上のダイをピックアップして位置決めテーブルに載せ、他方のヘッドで位置決めテーブル上のダイをピックアップして回路基板に実装するようにしている。
【0005】
また、特許文献4(特開2008−4810号公報)では、部品実装ラインにダイピックアップ装置と実装装置等の複数の工程装置を配列すると共に、ダイピックアップ装置と実装装置との間をシャトルで繋ぎ、ダイピックアップ装置でダイシングシート上のダイをピックアップしてシャトルに載せ、該シャトルによりダイを実装装置へ移送し、実装装置でシャトルからダイをピックアップして回路基板に実装するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−129949号公報
【特許文献2】特許第3209736号公報
【特許文献3】特開平11−97489号公報
【特許文献4】特開2008−4810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ダイシングシートからダイを剥離してピックアップする工程は、ダイを回路基板に実装する工程と比べて時間がかかる。ダイピックアップ工程のタクトタイムを短縮するには、シート剥離速度を速くしてシート剥離に要する時間を短くすることが効果的であるが、特に、特許文献2のようなスライド剥離方式では、薄くて割れやすいダイをシート剥離するため、剥離ステージのスライド速度を速くすると、薄いダイが割れてしまったり、シート剥離に失敗する可能性がある。このため、剥離ステージを緩やかにスライドさせる必要があり、シート剥離に要する時間が長くなってダイピックアップ工程のタクトタイムが長くなり、その結果、ダイ実装工程のタクトタイムも延びてしまい、高生産性の要求を満たすことができない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ダイシングシートからダイを剥離してピックアップする工程とダイを回路基板に実装する工程とを1台の部品実装機で実行するものにおいて、高生産性の要求を満たすことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ウエハをダイシングして形成した多数のダイが貼着されたダイシングシートを装着したウエハパレットと、複数の作業ヘッドと、回路基板を搬送するコンベアとを備えた部品実装機において、前記ダイシングシートから剥離したダイを複数個載置可能なダイ移載ステージを備え、前記複数の作業ヘッドのいずれかの作業ヘッドで前記ダイシングシート上のダイをピックアップして前記ダイ移載ステージに載置すると共に、他の作業ヘッドで前記ダイ移載ステージ上のダイをピックアップして回路基板に実装するようにしたものである。
【0010】
本発明では、ダイシングシートから剥離したダイを複数個載置可能なダイ移載ステージを備えているため、ダイを回路基板に実装する工程の待ち時間中に、ダイシングシートからダイを剥離してダイ移載ステージにストックしておくことができる。これにより、ダイ実装工程では、ダイ移載ステージ上にストックされたダイを回路基板に能率良く実装することができて、ダイ実装工程のタクトタイムがダイピックアップ工程によって延ばされることを極力防止でき、高生産性の要求を満たすことができる。
【0011】
この場合、請求項2のように、複数の作業ヘッドは、それぞれ、ダイシングシート上のダイをピックアップしてダイ移載ステージに載置する動作(ダイピックアップ工程)と、ダイ移載ステージ上のダイをピックアップして回路基板に実装する動作(ダイ実装工程)のどちらも実行可能としても良い。このようにすれば、複数の作業ヘッドを能率良く稼働させて生産性を向上させることができる。
【0012】
本発明は、ダイピックアップ工程で、特許文献1等に記載されているような突き上げ剥離方式によってダイシングシートからダイを剥離するようにしても良いし、請求項3のように、作業ヘッドでピックアップするダイの貼着部分をダイシングシートの下面側から吸引して該ダイの貼着部分をシート剥離する剥離ステージを備え、作業ヘッドでダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイの貼着部分をシート剥離するようにしても良い。このようなスライド剥離方式では、薄いダイの割れ等を防ぐために剥離ステージを緩やかにスライドさせる必要があり、シート剥離に要する時間が長くなるため、ダイピックアップ工程のタクトタイムが長くなるが、ダイ実装工程の待ち時間中に、ダイシングシートからダイを剥離してダイ移載ステージにストックしておくことができるため、ダイ実装工程のタクトタイムがダイピックアップ工程によって延ばされることを極力防止でき、高生産性の要求を満たすことができる。
【0013】
また、請求項4のように、ウエハパレットと他の部品供給ユニット(テープフィーダ、トレイフィーダ等)とを着脱可能にセットし、複数の作業ヘッドのいずれかの作業ヘッドで他の部品供給ユニットから供給される部品をピックアップして回路基板に実装するようにしても良い。このようにすれば、多様な実装プロセスに対応できる。
【0014】
また、請求項5のように、複数の作業ヘッドを移動させる複数のロボットは、コンベアの搬送方向に移動するX軸を共通化した構成としても良い。このようにすれば、複数の作業ヘッドを移動させる複数のロボットの構成を簡素化することができ、装置コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の一実施例を示す部品実装機の外観斜視図である。
【図2】図2は部品実装機の平面図である。
【図3】図3はウエハパレットの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を図1乃至図3を用いて説明する。
部品実装機のベース台11上には、回路基板12をX方向に搬送するコンベア13と、ウエハパレット14(図3参照)を取替え可能にセットするためのウエハパレットセット台15と、他の部品供給ユニット(テープフィーダ、トレイフィーダ等)を取替え可能にセットするためのフィーダセット台16等が設けられている。
【0017】
図3に示すように、ウエハパレット14は、碁盤目状にダイシングされたウエハ(多数のダイ17)を貼着した伸縮可能なダイシングシート18を、円形の開口部を有するウエハ装着板19にエキスパンドした状態で装着し、該ウエハ装着板19をパレット本体20にねじ21等により取り付けた構成となっている。
【0018】
図1及び図2に示すように、部品実装機のベース台11には、2台のX−Yロボット22,23が設けられている。各X−Yロボット22,23は、コンベア13の搬送方向(X方向)に延びる2本のXスライドガイド24,25(X軸)を共有し、該Xスライドガイド24,25にXスライド26,27がX方向にスライド可能に支持され、各Xスライド26,27にそれぞれYスライド26a,27aがY方向にスライド可能に支持され、各Yスライド26a,27aにそれぞれ作業ヘッド28,29が着脱可能に取り付けられている。各作業ヘッド28,29は、様々なヘッド(例えば、1本の吸着ノズルのみを保持するヘッド、複数本の吸着ノズルを保持するロータリヘッド、ディスペンス用のヘッド、熱圧着/超音波用の装着ヘッド等)と取替え可能となっている。各作業ヘッド28,29には、ダイ17等の部品を撮像するカメラ(図示せず)を搭載しても良い。
【0019】
ウエハパレットセット台15には、突き上げユニット31(図1参照)が設けられ、該ウエハパレットセット台15にセットしたウエハパレット14のダイシングシート18上のダイ21を作業ヘッド28で吸着してピックアップする際に、ダイシングシート18のうちの吸着しようとするダイ17の貼着部分をその真下から突き上げユニット31の突き上げポットで突き上げて該ダイ17の貼着部分をダイシングシート18から部分的に剥離させながら、作業ヘッド28で該ダイ21を吸着してダイシングシート18からピックアップするようにしている。
【0020】
尚、突き上げユニット31に代えて、スライド剥離方式でダイシングシート18からダイ17を剥離する剥離ステージを設けた構成としても良い。ここで、剥離ステージは、作業ヘッド28でピックアップするダイ17の貼着部分をダイシングシート18の下面側から吸引して該ダイ17の貼着部分をシート剥離するものである。スライド剥離方式では、ウエハパレット14のダイシングシート18上のダイ21を作業ヘッド28で吸着してピックアップする際に、該作業ヘッド28でダイシングシート18上のダイ17を吸着保持しながら、該ダイ17の貼着部分の手前側から剥離ステージを該ダイ17の貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイ17の貼着部分を徐々にシート剥離した後、該ダイ17を該作業ヘッド28でピックアップする。
【0021】
部品実装機のベース台11上の空きスペースには、ダイシングシート18から剥離したダイ17を複数個載置可能なダイ移載ステージ32が設けられている。部品実装機の稼働中は、生産プログラムに従って、一方の作業ヘッド28でダイシングシート18上のダイ17をピックアップしてダイ移載ステージ32に載置する動作を繰り返すと共に、他方の作業ヘッド29でダイ移載ステージ32上のダイ17をピックアップして回路基板12に実装する。
【0022】
ダイ移載ステージ32上に載置したダイ17の数が所定数以上になった場合は、それまでシート剥離用ヘッドとして使用していた作業ヘッド28も、装着ヘッドとして使用でき、該作業ヘッド28でダイ移載ステージ32上のダイ17をピックアップして回路基板12に実装できるようになっている。また、装着ヘッドとして使用する作業ヘッド29も、シート剥離用ヘッドとして使用できるようになっている。
【0023】
また、フィーダセット台16にテープフィーダ、トレイフィーダ等の部品供給ユニットがセットされている場合は、生産プログラムに従って、2つの作業ヘッド28,29のうちの空いている方の作業ヘッドが部品供給ユニットから供給される部品をピックアップして回路基板12に実装できるようになっている。
【0024】
以上説明した本実施例では、ダイシングシート18から剥離したダイ17を複数個載置可能なダイ移載ステージ32を備えているため、ダイ17を回路基板12に実装する工程の待ち時間中に、ダイシングシート18からダイ17を剥離してダイ移載ステージ32にストックしておくことができる。これにより、ダイ実装工程では、ダイ移載ステージ32上にストックされたダイ17を回路基板12に能率良く実装することができて、ダイ実装工程のタクトタイムがダイピックアップ工程によって延ばされることを極力防止でき、高生産性の要求を満たすことができる。
【0025】
しかも、本実施例では、2つの作業ヘッド28,29は、それぞれ、ダイシングシート18上のダイ17をピックアップしてダイ移載ステージ32に載置する動作(ダイピックアップ工程)と、ダイ移載ステージ32上のダイ17をピックアップして回路基板12に実装する動作(ダイ実装工程)のどちらも実行可能としているため、2つの作業ヘッド28,29を能率良く稼働させて生産性を向上させることができる。
【0026】
更に、本実施例では、ウエハパレット14と他の部品供給ユニット(テープフィーダ、トレイフィーダ等)とをセット可能とし、2つの作業ヘッド28,29のいずれかで他の部品供給ユニットから供給される部品をピックアップして回路基板12に実装するようにしたので、多様な実装プロセスに対応できる。
【0027】
また、本実施例では、2つの作業ヘッド28,29を移動させる2台のX−Yロボット22,23は、コンベア13の搬送方向に移動するXスライドガイド24,25(X軸)を共通化しているため、2つの作業ヘッド28,29を移動させる2台のX−Yロボット22,23の構成を簡素化することができ、装置コストを低減することができる。
【0028】
ところで、ダイ17のシート剥離方式としてスライド剥離方式を用いた場合、薄いダイ17の割れ等を防ぐために剥離ステージを緩やかにスライドさせる必要があり、シート剥離に要する時間が長くなるため、ダイピックアップ工程のタクトタイムが長くなるが、本実施例では、ダイ実装工程の待ち時間中に、ダイシングシート18からダイ17を剥離してダイ移載ステージ32にストックしておくことができるため、ダイ実装工程のタクトタイムがダイピックアップ工程によって延ばされることを極力防止でき、高生産性の要求を満たすことができる。
【0029】
尚、本発明は、上記実施例に限定されず、例えば、シート剥離用ヘッドとして使用する一方の作業ヘッドを上下反転可能とし、当該一方の作業ヘッドを、ダイシングシート18から剥離したダイ17を吸着した状態で上下反転させ、そのダイ17を他方の作業ヘッドで吸着して回路基板12に実装するようにしても良い。
【0030】
その他、本発明は、作業ヘッドの数(ロボットの数)は2つに限定されず、3つ以上としても良く、また、コンベア13、ウエハパレットセット台15、フィーダセット台16、ダイ移載ステージ32の位置を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
11…ベース台、12…回路基板、13…コンベア、14…ウエハパレット、15…ウエハパレットセット台、16…フィーダセット台、17…ダイ、18…ダイシングシート、22,23…X−Yロボット、24,25…Xスライドガイド(X軸)、26,27…Xスライド、26a,27a…Yスライド、28,29…作業ヘッド、31…突き上げユニット、32…ダイ移載ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハをダイシングして形成した多数のダイが貼着されたダイシングシートを装着したウエハパレットと、複数の作業ヘッドと、回路基板を搬送するコンベアとを備えた部品実装機において、
前記ダイシングシートから剥離したダイを複数個載置可能なダイ移載ステージを備え、 前記複数の作業ヘッドのいずれかの作業ヘッドで前記ダイシングシート上のダイをピックアップして前記ダイ移載ステージに載置すると共に、他の作業ヘッドで前記ダイ移載ステージ上のダイをピックアップして回路基板に実装することを特徴とする部品実装機。
【請求項2】
前記複数の作業ヘッドは、それぞれ、前記ダイシングシート上のダイをピックアップして前記ダイ移載ステージに載置する動作と、前記ダイ移載ステージ上のダイをピックアップして回路基板に実装する動作のどちらも実行可能であることを特徴とする請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記作業ヘッドでピックアップするダイの貼着部分を前記ダイシングシートの下面側から吸引して該ダイの貼着部分をシート剥離する剥離ステージを備え、前記作業ヘッドで前記ダイシングシート上のダイを吸着保持しながら、該ダイの貼着部分の手前側から前記剥離ステージを該ダイの貼着部分の真下へスライドさせることで該ダイの貼着部分をシート剥離することを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記ウエハパレットと他の部品供給ユニットとが着脱可能にセットされ、
前記複数の作業ヘッドのいずれかの作業ヘッドで前記他の部品供給ユニットから供給される部品をピックアップして回路基板に実装することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の部品実装機。
【請求項5】
前記複数の作業ヘッドを移動させる複数のロボットは、前記コンベアの搬送方向に移動するX軸が共通化されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の部品実装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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