説明

部品挿入装置および部品挿入検出方法

【課題】小型部品を対象とする場合にあっても、リード挿入作業の成否の判定を正しく行うことができる部品挿入装置および部品挿入検出方法を提供する。
【解決手段】基板3の裏面側に突出した複数のリード21を複数のクリンチ爪によってそれぞれ折曲げて切断するクリンチ機構30において、可動クリンチ爪42に作用する外力を圧電素子37によって個別に検出して出力される検出信号が予め設定された検出レベルを超えて継続する継続時間を検出し、この継続時間が所定のしきい値を超える場合にのみ当該継続時間に対応する検出信号を有効信号としてクリンチ作業の成否の判定に適用する。これにより複数のクリンチ爪が挟隣接配置されている場合にあっても、一のクリンチ爪に対応する圧電素子37が隣接する他のクリンチ爪によるクリンチ動作時に発生するノイズに起因する誤判定を排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード付き部品のリードを基板に形成された貫通孔に挿入する部品挿入装置および部品挿入装置におけるリード挿入作業の成否を検出する部品挿入検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に実装される電子部品のうち、コンデンサやトランジスタなど接続用のリードを備えたリード付き部品は、部品挿入装置によりリードを基板に形成された貫通孔に挿入することによって基板に実装される(例えば特許文献1参照)。部品挿入装置では、基板を貫通して挿入され裏面側に突出したリードを、クリンチ爪によって折り曲げて残余部をカットするクリンチ処理により部品を基板に固定する。この種の部品挿入装置には、リード挿入およびクリンチ処理が正常に行われたか否かを検出する挿入検出機能が設けられている(例えば特許文献2参照)。この特許文献例に示す先行技術では、クリンチ爪に装着された歪み計によってクリンチ動作の際にクリンチ爪に発生する歪み量を検出した波形により、クリンチの良否を判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−114792号公報
【特許文献2】特開平7−288397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の特許文献を含め、従来技術においては実装対象となる部品のリードのサイズや材質に起因して、正しい良否判定結果が得られない場合があった。すなわちリードの線径が小さい場合やリードが柔らかい材質で形成されている場合には、クリンチ動作においてクリンチ爪に作用する外力は小さく、検出される波形において本来のクリンチ動作に由来する波形と、周囲から伝えられる外乱に起因する波形とを識別することが困難になる。この困難の度合いは、対象とする部品のリード間隔が小さく、クリンチ爪が挟間隔で隣接配置される小型部品を対象とする場合において顕著となる。
【0005】
すなわちこのような構成においては、1つのクリンチ爪によるクリンチ動作時に発生する衝撃が隣接するクリンチ爪に伝播される結果、何らかの不具合によりリードが正常に挿入されずにクリンチの対象が存在しないクリンチ爪の歪み計からも検出波形が出力される現象が生じる。このため、本来はリード挿入エラーと判定されるべき対象について、OK判定が出力される誤判定を生じるという不具合があった。このように、リード付き部品を対象とする従来の部品挿入装置および部品挿入検出方法には、小型部品を対象とする場合にリード挿入作業の成否の判定において誤判定を生じやすいという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、小型部品を対象とする場合にあっても、リード挿入作業の成否の判定を正しく行うことができる部品挿入装置および部品挿入検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部品挿入装置は、リード付き部品のリードを挿入ヘッドによって基板に形成された貫通孔に挿入する部品挿入装置であって、前記基板を搬送して位置決め保持する基板搬送機構と、前記リード付き部品を供給する部品供給機構と、前記部品供給機構から受け取ったリード付き部品のリードを前記挿入ヘッドによって前記貫通孔に基板の表面側から挿入する部品挿入機構と、前記挿入され基板の裏面側に突出した複数の前記リードを複数のクリンチ爪によってそれぞれ折曲げるとともに残余部を切断するクリンチ動作を行うクリンチ機構と、前記複数のクリンチ爪にそれぞれ対応して備えられ、前記クリンチ動作においてクリンチ爪に作用する外力を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出手段と、前記検出信号の検出結果に基づいて当該検出手段に対応するクリンチ爪によるクリンチ作業の成否を判定する判定手段とを備え、前記複数のクリンチ爪は、一のクリンチ爪に対応する検出手段が隣接する他のクリンチ爪のクリンチ動作に起因する外力を検出する範囲内に配設されており、前記判定手段は、前記検出信号が予め設定された検出レベルを超えて継続して出力される継続時間が所定のしきい値を超える場合にのみ、当該継続時間に対応する検出信号を有効信号として前記成否の判定に適用する。
【0008】
本発明の部品挿入検出方法は、リード付き部品のリードを挿入ヘッドによって基板に形成された貫通孔に挿入する部品挿入装置において、リード挿入作業の成否を検出する部品挿入検出方法であって、前記部品挿入方法は、前記基板を搬送して位置決め保持する基板搬送機構と、前記リード付き部品を供給する部品供給機構と、前記部品供給機構から受け取ったリード付き部品のリードを前記挿入ヘッドによって前記貫通孔に基板の表面側から挿入する部品挿入機構と、前記挿入され基板の裏面側に突出した複数の前記リードを複数のクリンチ爪によってそれぞれ折曲げるとともに残余部を切断するクリンチ動作を行うクリンチ機構と、前記複数のクリンチ爪にそれぞれ対応して備えられ、前記クリンチ動作においてクリンチ爪に作用する外力を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出手段と、前記検出信号の検出結果に基づいて当該検出手段に対応するクリンチ爪によるクリンチ作業の成否を判定する判定手段とを備え、前記複数のクリンチ爪は、一のクリンチ爪に対応する検出手段が隣接する他のクリンチ爪のクリンチ動作に起因する外力を検出する範囲内に配設されており、前記判定手段は、前記検出信号が予め設定された検出レベルを超えて継続して出力される継続時間が所定のしきい値を超える場合にのみ、当該継続時間に対応する検出信号を有効信号として前記成否の判定に適用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の裏面側に突出した複数のリードを複数のクリンチ爪によってそれぞれ折曲げて切断するクリンチ動作を行うクリンチ機構において、クリンチ動作においてクリンチ爪に作用する外力を個別に検出して出力される検出信号が予め設定された検出レベルを超えて継続する継続時間を検出し、継続時間が所定のしきい値を超える場合にのみ当該継続時間に対応する検出信号を有効信号としてクリンチ作業の成否の判定に適用することにより、複数のクリンチ爪のうち一のクリンチ爪に対応する検出手段が隣接する他のクリンチ爪のクリンチ動作に起因する外力を検出する範囲内に配設されていて他のクリンチ爪によるクリンチ動作時に発生するノイズを検出することに起因して生じる誤判定を排除することができ、小型部品を対象とする場合にあってもリード挿入作業の成否の判定を正しく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の部品挿入装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態の部品挿入装置の機能説明図
【図3】本発明の一実施の形態の部品挿入装置の機能説明図
【図4】本発明の一実施の形態の部品挿入装置におけるクリンチ機構の構成を示す断面図
【図5】本発明の一実施の形態の部品挿入装置におけるクリンチ機構の機能説明図
【図6】本発明の一実施の形態の部品挿入装置におけるクリンチ機構の動作説明図
【図7】本発明の一実施の形態の部品挿入装置におけるクリンチ機構の動作説明図
【図8】本発明の一実施の形態の部品挿入装置におけるクリンチ機構の制御系の構成を示すブロック図
【図9】本発明の一実施の形態の部品挿入装置における挿入検出部の構成を示すブロック図
【図10】本発明の一実施の形態の部品挿入装置における挿入検出部のリード挿入作業の成否判定の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず、図1、図2,図3を参照して、部品挿入装置1の全体構成および部品挿入機能を説明する。部品挿入装置1は、リード付き部品のリードを挿入ヘッドによって基板に形成された貫通孔に挿入する機能を有するものである。図1において基台1aの手前側には、上流側(図1において左側)より、搬入コンベア2A、位置決めコンベア2B、搬出コンベア2Cが、X方向(基板搬送方向)に直列に配設されている。搬入コンベア2Aは上流側装置から供給された部品挿入対象の基板3を受け取って下流側へ搬送する。位置決めコンベア2Bは搬入コンベア2Aから受け取った基板3を部品挿入作業位置まで搬送し、XYテーブル機構(図示省略)によりXY方向に位置決めして(矢印a)保持する。搬出コンベア2Cは部品挿入作業後の基板3を位置決めコンベア2Bから受け取って下流側装置へ受け渡す。搬入コンベア2A、位置決めコンベア2B、搬出コンベア2Cは、部品挿入対象の基板3を搬送して位置決め保持する基板搬送機構2を構成する。
【0012】
基板搬送機構2の側方には、挿入対象のリード付き部品20(図2参照)(以下、単に「部品20」と略記する。)を供給する部品供給機構4および部品搬送機構6が配設されている。部品供給機構4は複数の部品フィーダ5をX方向に並列した構成となっており、それぞれの部品フィーダ5は部品搬送機構6を構成する部品搬送ベルト7に、テーピングされた状態の部品20を供給する。部品搬送ベルト7は、保持プレート10に複数の部品搬送チャック11が設けられた構成の複数のチャックユニット9を、水平方向に展張されたベルト8の外側に並設して構成されている。
【0013】
ベルト8は部品供給機構4の両端部に配置された第1プーリ12A、第3プーリ12Cおよび位置決めコンベア2Bに保持された基板3の上方に位置する第2プーリ12Bの3つのプーリに調帯されており、駆動プーリである第1プーリ12Aを回転駆動することにより(矢印b)、部品搬送ベルト7はこれらのプーリの廻りに循環移動する(矢印c)。すなわち、部品搬送ベルト7に並設されたチャックユニット9は、部品供給機構4の部品フィーダ5から部品20を受け取った後に第1プーリ12Aの廻りを周回し、さらにテープカットユニット13の側方を経由して、位置決めコンベア2Bに保持された基板3の上方に移動する。
【0014】
この過程の作業動作について、図2を参照して説明する。図2(a)に示すように、部品フィーダ5は部品20のリード21を保持した部品保持テープ22をチャックユニット9に対してピッチ送り(矢印d)する機能を有しており、チャックユニット9の保持プレート10に装着された部品搬送チャック11にリード21を保持させた後、切断刃18によって部品保持テープ22をカットする。これにより、連続した部品保持テープ22に保持された複数の部品20のうち、先端の部品20のみが部品搬送チャック11に受け渡される。
【0015】
この状態では、部品搬送チャック11に保持された部品20のリード21の下端部には不要なテープ片22aが付着したままとなっており、当該チャックユニット9が図1に示すテープカットユニット13の側方を通過することにより、テープ片22aが除去される。すなわち図2(b)に示すように、テープカットユニット13に備えられた切断刃13aを進出させて、テープ片22aの上端部近傍にてリード21をカットする。これにより、不要なテープ片22aはリード21から分離されて下方に落下する(矢印e)。
【0016】
図1に示すように、位置決めコンベア2Bに保持された基板3の上方には、受渡しチャック15を備えた受渡しユニット14および挿入チャック17を備えた挿入ヘッド16が配設されている。受渡しユニット14は、基板3の上方に移動したチャックユニット9の部品搬送チャック11から部品20を受渡しチャック15によって受け取り可能であって、受け取った部品20を挿入ヘッド16の挿入チャック17に受け渡すことが可能な位置に配置されている。
【0017】
挿入ヘッド16には、部品20のリード21を基板3に設けられた貫通孔3a(図4参照)に挿入するための挿入位置が設定されており、基板3を位置決めコンベア2Bによって水平移動させて、この挿入位置に貫通孔3aを位置合わせした後に挿入ヘッド16によって部品20を基板3に実装する。これにより挿入チャック17に保持されたリード21は基板3の貫通孔3aに上面側から挿入される。挿入されたリード21には、裏面から突出した部分を折り曲げて不要な残余部を切断するクリンチ動作が、クリンチ機構30(図4)によって行われる。
【0018】
図3を参照して、受渡しユニット14の機能について説明する。図3(a)に示すように、受渡しユニット14は、部品20を着脱自在に保持する受渡しチャック15を進退機構14bによって進退させ(矢印f)、さらに進退機構14bを回動機構14aによって回動させる(矢印e)構成となっている。図3(a)は、部品供給機構4において部品フィーダ5から部品20を供給されたチャックユニット9が部品搬送機構6によって移動して、受渡しユニット14への部品受け渡し位置に到達した状態を示している。ここでは、チャックユニット9の部品搬送チャック11に保持された部品20に対して受渡しチャック15を矢印f方向に進退させて、部品搬送チャック11から受渡しチャック15への部品20の受け渡しを行う。
【0019】
この後、受渡しユニット14に渡された部品20を挿入ヘッド16に保持させる受け渡し動作が実行される。すなわち図3(b)に示すように、回動機構14aによって受渡しチャック15が挿入ヘッド16に相対向するように進退機構14bを回動させ(矢印g)、次いで図3(c)に示すように、部品20を保持した受渡しチャック15を挿入チャック17に対して進退させる(矢印h)ことにより、受渡しチャック15から挿入チャック17への部品20の受け渡しを行う。これにより、図3(d)に示すように、挿入チャック17がリード21を挟持することにより、挿入ヘッド16には垂直姿勢の部品20が保持される。
【0020】
次に、図4,図5を参照して、挿入ヘッド16による部品挿入位置において基板3の下方に配設されたクリンチ機構30の構造および機能を説明する。図4に示すように、挿入ヘッド16は、部品20の下部から延出した3つのリード21a、21b、21cを挟持して保持する挿入チャック17および部品20を下方に押し下げる機能を有するプッシャ19を備えている。
【0021】
挿入チャック17は図外の駆動機構により基板3に対して昇降する(矢印i)とともに、横方向に旋回移動する(矢印j)。これにより、受渡しユニット14から受け渡された部品20のリード21を基板3の貫通孔3aに差し込んで挿入する部品挿入動作が実行される。したがって、複数のチャックユニット9が装着された部品搬送機構6、受渡しユニット14および挿入ヘッド16は、部品供給機構4から受け取った部品20のリード21を挿入ヘッド16によって貫通孔3aに基板3の表面側から挿入する部品挿入機構51(図8参照)を構成する。
【0022】
基板3の下面側において挿入ヘッド16による部品挿入位置には、クリンチ機構30が配設されている。クリンチ機構30は、貫通孔3aに挿入されて基板3の下面側に突出したリード21の残余部をカットするとともに折り曲げて基板3に固定するクリンチ動作を行う機能を有するものである。クリンチ機構30は、保持ブロック31にクリンチ動作のための機構部品を組み込んだ構成となっており、保持ブロック31には、上部部材31a、下部部材31b、上部部材31aと下部部材31bとの間に形成された空隙部31cおよび下部部材31bから下方に延出する筒状部31dが設けられている。
【0023】
上部部材31aには、リード21を折り曲げて切断するクリンチ爪および貫通孔3aから挿入されたリード21の下端部を下受けするためのリード下受部43が組み込まれている。クリンチ爪は、上部部材31aの一方側(図4において左側)内に中高方向に傾斜して設けられた装着孔38に固定部材41によって固定された固定クリンチ爪40と、上部部材31aの他方側(図4において右側)内に中高方向に傾斜して設けられたスライド孔39に、斜面方向にスライド自在に装着された可動クリンチ爪42より構成される。
【0024】
可動クリンチ爪42の上端部には、リード21を折り曲げて切断する切断刃42aが設けられており、切断刃42aは、固定クリンチ爪40の上端面に設けられた摺動面40aに沿ってスライドする。可動クリンチ爪42の下端部には嵌合凹部42bが設けられており、固定クリンチ爪40の下端部には切り欠き部40bが設けられている。
【0025】
空隙部31cの左側、右側には、それぞれレバー部材33、34が軸支部35、36廻りに回動自在に保持されている。レバー部材33、34はそれぞれ斜め外側上方に延出した第1係合部33a、34aおよび横方向内側向きに延出した第2係合部33b、34bが形成されている。ここで、第1係合部34aは嵌合凹部42bに嵌合しており、レバー部材34が軸支部36廻りに回動することにより、可動クリンチ爪42はスライド孔39に沿ってスライドする。これに対し、固定クリンチ爪40には切り欠き部40bが設けられていることから、レバー部材33が軸支部35廻りに回動しても第1係合部33aは固定クリンチ爪40とは干渉せず固定位置を保つ。なお、レバー部材33、34を対称配置した例を示しているが、固定クリンチ爪40は固定配置であることから、レバー部材33を省いた構成としてもよい。
【0026】
筒状部31dには、駆動操作桿32が上下方向に貫通しており、駆動操作桿32の上部において側方に延出して設けられた上下1対の鍔状部32aは、空隙部31c内に位置している。これらの1対の鍔状部32aの間には、左側から第2係合部33bが、また右側からは第2係合部34bが嵌合している。保持ブロック31および駆動操作桿32は個別に上下動自在となっており、保持ブロック31を昇降させる(矢印l)ことにより、クリンチ機構30全体を基板3に対して接離させることができる。また保持ブロック31に対して駆動操作桿32を相対的に昇降させる(矢印m)ことにより、鍔状部32aに挟まれた第2係合部33b、34bを介してレバー部材33、レバー部材34がそれぞれ軸支部35、36廻りに回動する。
【0027】
上記構成において、駆動操作桿32を保持ブロック31に対して下降させることにより可動クリンチ爪42は斜め上方に駆動され、切断刃42aは摺動面40aに沿って上方に摺動する。そして部品20のリード21を貫通孔3aに挿入して基板3の下面に突出させ、下端部をリード下受部43によって下受けした状態で、上述の可動クリンチ爪42の駆動を行うことにより、リード21は切断刃42aによって折り曲げられるとともに不要な残余部が切断される。このクリンチ動作においては、可動クリンチ爪42にはリード21の折り曲げや切断に伴う外力が作用する。この外力の作用状態を検出するため、レバー部材34には、第1係合部34aの基部に近接した部位に圧電素子37が装着されている。
【0028】
すなわち可動クリンチ爪42をスライド孔39に沿って駆動する動作において、切断刃42aがリード21に当接して折り曲げや切断を行う際には、駆動操作桿32の昇降動作を可動クリンチ爪42に伝達するレバー部材34には、可動クリンチ爪42に作用する外力に応じた歪みが生じる。そしてこの歪みの変動は圧電素子37によって電圧値の変化として検出され、この検出信号を挿入検出部52(図8、図9参照)が受信することにより、リード21が貫通孔3aに実際に挿入されて、挿入されたリード21を対象とするクリンチ動作が正常に実行されたか否かを検出する。
【0029】
なお図4では、説明上の便宜から固定クリンチ爪40、可動クリンチ爪42より成る1対のクリンチ爪の構成例を示しているが、実際のクリンチ機構30においては、図5(a)に示すように、部品20から延出した複数(ここでは3本)のリード21a、21b、21cを対象として同時にクリンチ動作を行えるよう、それぞれのリードに対応して可動クリンチ爪42A、42B、42Cが設けられ、それぞれに対応してレバー部材34が設けられている。そして可動クリンチ爪42A、42Bに対応して共通の固定クリンチ爪40Aが、可動クリンチ爪42Cに対応して固定クリンチ爪40Cがそれぞれ設けられている。
【0030】
ここで、これらのクリンチ爪の全てが実際のクリンチ動作において常に用いられる訳ではなく、例えばリードが2本のみの部品20を対象とする場合には、これら3つのクリンチ爪のうち2つのみが実際にリードを対象としてクリンチ動作を行う。このとき、可動クリンチ爪42Aはどの部品種を対象とする場合にも必ず用いられる基準爪であり、可動クリンチ爪42B、42Cは対象となる部品種によっては、クリンチ動作に用いられない場合がある。
【0031】
図5(b)はこれらのクリンチ爪の平面配置を模式的に示したものであり、可動クリンチ爪42A,42B、42Cがそれぞれ前進することにより(矢印n,o,p)、リード21a、21b、21cを対象としたクリンチ動作が行われる。すなわち、本実施の形態に示す部品挿入装置1に備えられたクリンチ機構30は、貫通孔3aに挿入され基板3の裏面側に突出した複数のリード21aを複数のクリンチ爪によってそれぞれ折曲げるとともに残余部を切断するクリンチ動作を行うようになっている。そして可動クリンチ爪42A,42B、42Cに対応する各レバー部材34に装着された圧電素子37は、複数のクリンチ爪にそれぞれ対応して備えられ、クリンチ動作においてクリンチ爪に作用する外力を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出手段となっている。なおこのような機能を有する検出手段として、圧電素子37の替わりに歪みゲージを用いてもよい。
【0032】
本実施の形態に示す部品挿入装置1では、リード間隔が小さい小型部品を対象とすることから、図5に示すクリンチ爪の配置において隣接するクリンチ爪は狭間隔配置となる。このため、1つのクリンチ爪にクリンチ動作時の外力が作用している場合において、この外力に起因して保持ブロック31に作用する衝撃力が他の隣接するクリンチ爪に対応するレバー部材34に伝播する結果、このレバー部材34に装着された圧電素子37から検出信号が出力される場合が生じる。すなわち本実施の形態においては、クリンチ機構30に配設された複数のクリンチ爪は、一のクリンチ爪に対応する検出手段が隣接する他のクリンチ爪のクリンチ動作に起因する外力を検出する範囲内に配設された形態となっている。
【0033】
次に、図6,図7を参照して、クリンチ機構30によるクリンチ動作を説明する。図6(a)は、受渡しユニット14によって部品20を挿入ヘッド16に受け渡す部品受け渡し動作を示している。このとき、基板3の下方のクリンチ機構30は下降状態にある。次いで図6(b)に示すように、部品20を挿入ヘッド16によって保持する。すなわちリード21を挿入チャック17によって挟持するとともに、プッシャ19を下降させて(矢印r)部品20の上面に当接させる。これとともに、クリンチ機構30をクリンチ動作位置まで上昇させる(矢印s)。
【0034】
この後リード挿入動作が開始され、図6(c)に示すように、挿入ヘッド16を下降させてリード21の下端部を基板3の上面から貫通孔3a内に挿入する。これにより、リード21は基板3の裏面から突出する。そして図6(d)は、リード21の挿入が完了し挿入チャック17を回動させて(矢印u)リード21の挟持を解除した状態を示している。この状態では部品20は、上面をプッシャ19によって押圧され、リード21の下端部がクリンチ機構30のリード下受部43によって下受けされることにより、位置が保持される。
【0035】
次に図7(a)に示すように、挿入ヘッド16を上昇させる(矢印w)。このとき、プッシャ19はクリンチ動作時の部品20の浮き上がりを防止するため、下降位置に留まって部品20を上面から押さえつける。そしてクリンチ動作完了後、プッシャ19は部品20から離れて上昇する(図7(d)参照)。次いでクリンチ機構30において駆動操作桿32を下降させる(矢印v)ことにより、レバー部材34が回動して可動クリンチ爪42を前進させる。図7(b)、(c)は、図7(a)におけるA部の詳細を示している。すなわち可動クリンチ爪42が前進することにより切断刃42aがリード21に当接してリード21を前進方向へ折り曲げる。
【0036】
これとともに、切断刃42aがある位置まで前進した段階で、図7(b)に示すように、リード21は下端の残余部21*が切断されて下方に落下する(矢印x)。そして可動クリンチ爪42がさらに前進することにより、図7(c)に示すように、残余部21*が切断された状態のリード21は、可動クリンチ爪42によって曲げられて基板3の裏面に対して押し付けられる。この後、クリンチ機構30下降させる(矢印y)とともに、図7(d)に示すように、駆動操作桿32を上昇させる(矢印z)ことにより、レバー部材34が回動して可動クリンチ爪42を原位置に後退させる。これにより、1つの部品20を対象としたクリンチ作業の1サイクルが完了する。このクリンチ動作においては、各クリンチ爪に対応するレバー部材34に装着された圧電素子37によって可動クリンチ爪42に作用する外力が検出され、これによりリード挿入、クリンチ動作の成否が判定される。
【0037】
次に図8を参照して制御系の構成を説明する。図8において、制御装置50は部品供給機構4、部品搬送機構6、受渡しユニット14および挿入ヘッド16より成る部品挿入機構51、クリンチ機構30および基板搬送機構2の動作を制御する。これにより、挿入対象の部品20が部品搬送機構6に装着されたチャックユニット9に供給され、受渡しユニット14によって挿入ヘッド16に渡された部品20が基板3に実装され、リード21が貫通孔3a内に挿入される。このとき、制御装置50が基板搬送機構2を制御することにより、基板3の搬入・搬出および部品実装時の基板3の位置決め動作が実行される。
【0038】
また制御装置50は、挿入検出部52、記憶部53、表示部54、入出力部55と接続されている。挿入検出部52は、クリンチ動作において圧電素子37による検出結果に基づいて、当該圧電素子37に対応するクリンチ爪によるクリンチ作業の成否を判定する処理を行う。記憶部53は、挿入検出部52によって判定処理を行うための判定用データ(図9に示す部品種別基準電圧データ53a、継続時間しきい値データ53b参照)を記憶する。表示部54は液晶パネルなどの表示装置であり、挿入検出部52による判定結果、データや操作コマンドの入力時の操作画面を表示する。入出力部55はキーボードやタッチパネルなどの入力装置であり、操作指示や判定用データなどの入力操作を行う。
【0039】
次に挿入検出部52の構成および機能を、図9、図10を参照して説明する。実際のクリンチ機構30には、前述のように、可動クリンチ爪42A,42B、42Cに対応する各レバー部材34にそれぞれ装着された3つの圧電素子37が存在するが、ここでは、1つの圧電素子37による検出信号を処理してクリンチ作業の成否を判定するための構成を示しており、他の圧電素子37についても同様の処理が実行される。
【0040】
圧電素子37から出力された検出信号は、アンプ60によって増幅されて、コンパレータ62a、62b、62cに検出電圧Vin(+)として印加される。図10(a)は、このようにして印加される検出電圧Vin(+)の検出波形を、3つのクリンチ爪のそれぞれについて示している。ここでは、クリンチ爪A(可動クリンチ爪42A),クリンチ爪C(可動クリンチ爪42C)にはクリンチ動作の対象となるリード21が存在するものの、中間のクリンチ爪B(可動クリンチ爪42B)には対象となるリード21が存在しない(あるいはリード挿入時のミスによりクリンチ機構30には到達していない)場合の波形を例示している。このとき、クリンチ爪にはリード21は存在しないものの、隣接するクリンチ爪A,Cとの配置間隔が狭い場合には、クリンチ爪A,Cがそれぞれリード21をクリンチする際の機械的衝撃が保持ブロック31を介してクリンチ爪Bに対応する圧電素子37に作用する。そしてこの機械的衝撃に起因するノイズが検出電圧Vin(+)の波形にパルスとして現れる場合がある。
【0041】
またコンパレータ62a、62b、62cには、予め基準電圧供給回路61a、61b、61cに設定された基準電圧Vin(−)a、Vin(−)b、Vin(−)cがそれぞれ印加される。ここで、基準電圧供給回路61a、61b、61cに設定されるこれらの基準電圧は、クリンチ動作の対象となるリード21の線径や材質など、クリンチ動作時にクリンチ爪に作用する外力の大きさに応じてそれぞれ異なる電圧値に設定されている。すなわち、線径が小さいリードや材質的に柔らかいリードを対象とする場合には、クリンチ爪に作用する外力は小さく、逆に線径が大きいリードや材質的に硬いリードを対象とする場合には、クリンチ爪に作用する外力は大きくなる。
【0042】
したがって、クリンチ爪に実際に作用する外力を検出することによりクリンチ動作の成否を判定する方法においては、検出された外力が対象となるリードをクリンチするのに十分な判定レベルに到達しているか否かを判断するための複数種類の基準電圧を予め設定しておく必要がある。本実施の形態においては、前述のようにこれらの複数種類の基準電圧を記憶部53に部品種別基準電圧データ53aとして記憶させておくようにしている。そして図10(a)に示す例では、対象となる部品種のリード21の線径や材質に適合した基準電圧Vin(−)が、部品種別基準電圧データ53aの基準電圧Vin(−)a、Vin(−)b、Vin(−)cから選択される。
【0043】
コンパレータ62a、62b、62cは、検出電圧Vin(+)と基準電圧Vin(−)との高低を比較し、比較結果に応じてオンオフ信号または2値電圧信号として選択回路63に出力する。このとき、図10(a)に示す可動クリンチ爪42Bにおいて、機械的衝撃に起因するパルスが基準電圧Vin(−)を超える場合には、選択回路63には検出電圧Vin(+)が基準電圧Vin(−)を超えた旨の信号が伝達される。
【0044】
図10(b)は、図10(a)に示す検出電圧Vin(+)に対応してコンパレータ(コンパレータ62a、62b、62c)のいずれかから出力される信号を示している。ここではいずれのクリンチ爪においても、検出電圧Vin(+)が基準電圧Vin(−)を超えた時間幅がステップ状のパルスとして現れている。そして選択回路63がコンパレータ62a、62b、62cからの出力を受信する際には、選択回路63は記憶部53に記憶された部品種別基準電圧データ53aを参照して、制御装置50から指示される部品種に対応した基準電圧Vin(−)との比較結果を選択的に受信し、判定手段64に伝達するようになっている。
【0045】
判定手段64の構成および機能について説明する。判定手段64は、圧電素子37の検出信号の検出結果に基づいて当該圧電素子37に対応するクリンチ爪によるクリンチ作業の成否を判定する機能を有しており、継続時間検出回路65、信号成形回路66、判定部67より構成されている。継続時間検出回路65は、検出信号である検出電圧Vin(+)が予め設定された検出レベル、すなわち基準電圧Vin(−)を超えて継続して検出される継続時間を検出し、さらに検出した継続時間が記憶部53に記憶された継続時間しきい値データ53bにて与えられるしきい値Tthを超える場合にのみ、当該継続時間に対応する検出信号を有効信号として信号成形回路66に対して出力する。
【0046】
すなわち、図10(b)に示す例では、クリンチ爪A、Cについて検出電圧Vin(+)が基準電圧Vin(−)を継続して超えた継続時間Ta,Tcは、しきい値Tthを超えるものとなっている。これに対し、クリンチ対象のリード21が存在しないクリンチ爪Bについては、隣接するクリンチ爪A、Cにおけるクリンチ動作に起因するノイズが検出電圧Vin(+)の波形にパルスとして現れているものの、継続時間検出回路65によって検出された継続時間Tbはごく短時間であり、しきい値Tth以下であることが判定される。すなわちここに示す例では、クリンチ爪A、Cについての検出信号である検出電圧Vin(+)のみが有効信号とされ、クリンチ爪Bについての検出信号はノイズとして棄却される。
【0047】
信号成形回路66は、選択回路63によって選択されさらに継続時間検出回路65によって有効信号とされた検出信号を、一定時間のパルス信号に成形する。判定部67は、信号成形回路66によって成形された判定用のパルス信号に基づき、クリンチ作業の成否を判定する。すなわち本実施の形態に示す判定手段64は、圧電素子37から出力された検出信号が予め設定された検出レベルを超えており、さらにこの検出信号が検出レベルを超えて継続して検出される継続時間が所定のしきい値Tthを超える場合にのみ、当該継続時間に対応する検出信号を有効信号としてクリンチ作業の成否の判定に適用するようにしている。
【0048】
これにより、小型部品を作業対象として複数のクリンチ爪が挟隣接配置され、複数のクリンチ爪のうち一のクリンチ爪に対応する検出手段である圧電素子37が、隣接する他のクリンチ爪のクリンチ動作に起因する外力を検出する範囲内に配設されている場合にあっても、他のクリンチ爪によるクリンチ動作時に発生するノイズに起因する誤判定を排除することができ、リード挿入作業の成否の判定を正しく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の部品挿入検出装置および部品挿入検出方法は、小型部品を対象とする場合にあってもリード挿入作業の成否の判定を正しく行うことができるという効果を有し、リード付き部品のリードを挿入ヘッドによって貫通孔に挿入することにより基板に実装する部品実装分野において有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 部品挿入装置
2 基板搬送機構
3 基板
3a 貫通孔
4 部品供給機構
5 部品フィーダ
6 部品搬送機構
7 部品搬送ベルト
8 ベルト
9 チャックユニット
11 部品搬送チャック
13 テープカットユニット
14 受渡しユニット
15 受渡しチャック
16 挿入ヘッド
17 挿入チャック
19 プッシャ
20 部品(リード付き部品)
21,21a、21b、21c リード
30 クリンチ機構
34 レバー部材
37 圧電素子
40 40A、40C 固定クリンチ爪
42、42A、42B、42C 可動クリンチ爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード付き部品のリードを挿入ヘッドによって基板に形成された貫通孔に挿入する部品挿入装置であって、
前記基板を搬送して位置決め保持する基板搬送機構と、
前記リード付き部品を供給する部品供給機構と、
前記部品供給機構から受け取ったリード付き部品のリードを前記挿入ヘッドによって前記貫通孔に基板の表面側から挿入する部品挿入機構と、
前記挿入され基板の裏面側に突出した複数の前記リードを複数のクリンチ爪によってそれぞれ折曲げるとともに残余部を切断するクリンチ動作を行うクリンチ機構と、
前記複数のクリンチ爪にそれぞれ対応して備えられ、前記クリンチ動作においてクリンチ爪に作用する外力を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出手段と、
前記検出信号の検出結果に基づいて当該検出手段に対応するクリンチ爪によるクリンチ作業の成否を判定する判定手段とを備え、
前記複数のクリンチ爪は、一のクリンチ爪に対応する検出手段が隣接する他のクリンチ爪のクリンチ動作に起因する外力を検出する範囲内に配設されており、
前記判定手段は、前記検出信号が予め設定された検出レベルを超えて継続して出力される継続時間が所定のしきい値を超える場合にのみ、当該継続時間に対応する検出信号を有効信号として前記成否の判定に適用することを特徴とする部品挿入装置。
【請求項2】
リード付き部品のリードを挿入ヘッドによって基板に形成された貫通孔に挿入する部品挿入装置において、リード挿入作業の成否を検出する部品挿入検出方法であって、
前記部品挿入装置は、前記基板を搬送して位置決め保持する基板搬送機構と、前記リード付き部品を供給する部品供給機構と、前記部品供給機構から受け取ったリード付き部品のリードを前記挿入ヘッドによって前記貫通孔に基板の表面側から挿入する部品挿入機構と、前記挿入され基板の裏面側に突出した複数の前記リードを複数のクリンチ爪によってそれぞれ折曲げるとともに残余部を切断するクリンチ動作を行うクリンチ機構と、前記複数のクリンチ爪にそれぞれ対応して備えられ、前記クリンチ動作においてクリンチ爪に作用する外力を個別に検出して検出信号を出力する複数の検出手段と、前記検出信号の検出結果に基づいて当該検出手段に対応するクリンチ爪によるクリンチ作業の成否を判定する判定手段とを備え、
前記複数のクリンチ爪は、一のクリンチ爪に対応する検出手段が隣接する他のクリンチ爪のクリンチ動作に起因する外力を検出する範囲内に配設されており、
前記判定手段は、前記検出信号が予め設定された検出レベルを超えて継続して出力される継続時間が所定のしきい値を超える場合にのみ、当該継続時間に対応する検出信号を有効信号として前記成否の判定に適用することを特徴とする部品挿入検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115293(P2013−115293A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261417(P2011−261417)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】