説明

部材の接合構造

【課題】 接合強度を維持したまま、生産コストの上昇を抑制出来る部材の接合構造を提供する。
【解決手段】 フロントルーフレール部材4の車幅方向両端部4a,4aに設けられた取付面部4b,4b及びルーフボウ部材5の車幅方向両端部5a,5aに設けられた取付面部5b,5bが、前記サイドルーフレール部材3,3に設けられた被取付面部3a,3a及び3b,3bに結合されて、屋根部2の骨格相当部分6が形成されている。
第一の溶接面部14と、第三の溶接面部16との間には、ビード状の第一ビード部17が設けられると共に、第二の溶接面部15と、第三の溶接面部16との間に、ビード状の第二ビード部18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の部材間を接合する部材の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の部材の接合構造としては、車両の屋根部で、車両前後方向に長手方向を沿わせて、一対延設されるサイドルーフレール部材間に、車幅方向に沿って長手方向を延設するフロントルーフレール部材の両端部及び、ルーフボウ部材の両端部等が結合されて、屋根部骨格相当部分が構成され、これらの骨格相当部分の上方から板状のルーフパネル部材が載置されて、固定されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−153650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の部材の接合構造においては、前記サイドルーフレール部材と、前記フロントルーフレール部材との結合部では、一般的に、サイドルーフレール部材に湾曲が存在する。
【0004】
また、前記フロントルーフレール部材の取付面にも、湾曲が存在する。
【0005】
このため、フロントルーフレール部材の取付面を、三次元的な絞り成形で、プレス加工しなければならず、生産コストの上昇を招いてしまうといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、接合強度を維持したまま、生産コストの上昇を抑制出来る部材の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されたものは、取付部材に設けられた取付面部を、被取付部材に設けられた被取付面部に固定する部材の接合構造であって、前記取付面部には、平面若しくは二次元曲面を有する複数の溶接面部を設けて、各溶接面部間に、前記被取付面部に接触しない非溶接面部を設けた部材の接合構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取付面部に設けられた複数の溶接面部が、平面若しくは二次元曲面を有しているので、前記被取付部材の被取付面部が、湾曲していても、各々の溶接面部が、適切な角度で、被取付面部に面接触されて、確実に溶接を行うことが出来る。
【0009】
このため、従来の様に、前記取付部材の取付面部を三次元的な絞り成型でプレス加工する必要が無い為、プレス加工が容易になり、生産コストの上昇が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施の形態の部材の接合構造を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1乃至図3は、この発明の実施の形態の部材の接合構造を示すものである。
【0012】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の部材の接合構造では、図2に示すような自動車1の屋根部2には、車幅方向左,右両側縁部に車両前後方向に長手方向を沿わせて、被取付部材としてのサイドルーフレール部材3,3が、左,右一対各々延設されている。
【0013】
これらのサイドルーフレール部材3,3は、各々車両前後方向に渡り、車両上方に向けて、凸となるように湾曲する形状を呈していて、これらのサイドルーフレール部材3,3間には、車幅方向に沿って長手方向を延設する取付部材としてのフロントルーフレール部材4及びルーフボウ部材5が、掛け渡されている。
【0014】
このうち、図1及び図3に示すように、前記フロントルーフレール部材4には、一端縁である前端縁4cにフランジ部4dを有する第一の側壁4eが設けられている。
【0015】
また、このフロントルーフレール部材4では、この第一の側壁4eに対向して配置され、前記前端縁4cの反対側に位置する他端縁としての後端縁4fに、フランジ部4gを有する第二の側壁4hが一体に形成されている。
【0016】
これらの第一の側壁4eと第二の側壁4hとの間で、対向端縁4j,4k同士を接続する底壁4mとを有して、車両前後方向に沿う断面形状を、上方を開放する断面ハット型とするように構成されている。
【0017】
そして、これらのフロントルーフレール部材4の車幅方向両端部4a,4aに設けられた取付面部4b,4b及びルーフボウ部材5の車幅方向両端部5a,5aに設けられた取付面部5b,5bが、前記サイドルーフレール部材3,3に設けられた被取付面部3a,3a及び3b,3bに結合されて、屋根部2の骨格相当部分6が形成されている。
【0018】
すなわち、この実施の形態では、フロントルーフレール部材4に設けられた取付面部4b,4b及びルーフボウ部材5に設けられた取付面部5b,5bが、前記サイドルーフレール部材3,3に設けられた被取付面部3a,3a及び3b,3bに溶接されて、固定されるように構成されている。
【0019】
更に、この実施の形態では、これらの骨格相当部分6の上方から板状のルーフパネル部材7が載置されて、固定されるように構成されている。
【0020】
そして、この実施の形態の前記取付面部4b,4b及び5b,5bは、代表して図1及び図3に示す、フロントルーフレール部材4の取付面部4bの様に、前記サイドルーフレール部材3の被取付面部3aの傾斜角度に合わせて、車両下方に向けて所定の角度で屈曲された傾斜面部に設けられていて、平面若しくは二次元曲面を有する3つの溶接面部である第一の溶接面部14,第二の溶接面部15及び第三の溶接面部16を、各々有している。
【0021】
なお、取付面部5b,5b及び被取付面部3b,3bとの接合部については、この取付面部4b,4bと、被取付面部3a,3aとの接合部の構造に準ずるので、説明を省略する。
【0022】
また、この実施の形態では、これらの前記第一の溶接面部14と、第三の溶接面部16との間には、非溶接面部としてのビード状の第一ビード部17が設けられると共に、前記第二の溶接面部15と、第三の溶接面部16との間に、非溶接面部としてのビード状の第二ビード部18が設けられている。
【0023】
これらの第一ビード部17及び第二ビード部18は、前記被取付面部3aに接触しない非溶接面部として、前記被取付面部3aの湾曲方向に交差する長手方向を有して、上方が開放された凹溝で、下面側が凸状を呈するように突設形成されている。
【0024】
そして、この実施の形態では、図3に示される様に、前記第一の側壁4eのフランジ部4dから連続して、第一の溶接面部14が、一体となるように形成されている。
【0025】
また、前記第二の側壁4hのフランジ部4gから連続して、第二の溶接面部15が、一体となるように形成されている。
【0026】
そして、前記非溶接面部としての第一ビード部17及び第二ビード部18の各底面部17a及び18aは、前記底壁4mから連続して、形成される傾斜面部4nに設けられて、前記第一の溶接面部14と、第二の溶接面部15との間であると共に、各々、前記第一の溶接面部14と、第三の溶接面部16との間及び、前記第二の溶接面部15と、第三の溶接面部16との間に、配置されている。
【0027】
更に、この実施の形態では、図1に示す様に、前記サイドルーフレール部材3の被取付面部3aには、前記第一の溶接面部14に対応する位置に、第一エンボス部21が、前記第二の溶接面部15に対応する位置に、第二エンボス部22が、そして、前記第三の溶接面部16に対応する位置に、第三エンボス部23が、各々形成されている。
【0028】
これらの第一エンボス部21,第二エンボス部22及び第三エンボス部23は、前記各第一の溶接面部14,第二の溶接面部15及び第三の溶接面部16に向けて、下方に凸状になるように形成されていて、各接続底面21a,22a,及び23aが、平面状若しくは二次元の曲線状を呈するように構成されている。
【0029】
そして、これらの各接続底面21a,22a,及び23aが、前記第一の溶接面部14,第二の溶接面部15,及び第三の溶接面部16に対して、各々複数若しくは単独の溶接スポット24…によって、溶接固定されるように構成されている。
【0030】
次に、この実施の形態の部材の接合構造の作用効果について説明する。
【0031】
このように構成された実施の形態の部材の接合構造では、前記フロントルーフレール部材4の各取付面部4b,4bに設けられた複数の第一溶接面部14,第二溶接面部15及び第3溶接面部16が、平面若しくは、二次元曲面を有している。
【0032】
このため、前記サイドルーフレール部材3の被取付面部3a,3aが、湾曲していても、各々の第一の溶接面部14,第二の溶接面部15及び第三の溶接面部16が、適切な角度で、被取付面部3aに面接触されて、確実に溶接を行うことが出来る。
【0033】
従って、従来の様に、前記取付部材の取付面部を三次元的な絞り成型でプレス加工する必要が無い為、プレス加工が容易になり、生産コストの上昇が抑制される。
【0034】
また、図1に示す様に、前記フロントルーフレール部材4は、上方を開放する断面ハット型を呈していて、車両上下方向に加わる荷重入力に対して、所望の剛性を発揮出来る。
【0035】
しかも、図1及び図3に示すように、このフロントルーフレール部材4の前記第一の側壁4eのフランジ部4dから連続して形成される第一の溶接面部14と、前記第二の側壁4hのフランジ部4gから連続して形成される第二の溶接面部15との間に配置された前記第一ビード部17及び第二ビード部18が、前記底壁4mから連続して、一体に形成される傾斜面部4nに設けられていて、前記サイドルーフレール部材3の被取付面部3a裏面と、一定の間隔を有して、通路が形成されている。
【0036】
このため、車体塗装時の塗料が、前記フロントルーフレール部材4の第一の側壁4eと第二の側壁4hに囲まれた底壁4mから、前記傾斜面部4nに通過して、これらの第一ビード部17及び第二ビード部18の各底面部17a及び底面部18aに沿って、断面外に流下する。
【0037】
従って、別途設けられる塗料抜きの孔の数量を減少若しくは廃止出来、前記フロントルーフレール部材4の剛性を更に、向上させることが出来る。
【0038】
更に、この実施の形態では、各々、前記第一の溶接面部14と、第三の溶接面部16との間及び、前記第二の溶接面部15と、第三の溶接面部16との間に、配置されている第一ビード部17及び第二ビード部18が、前記第一の溶接面部14と、第二の溶接面部15との間に位置して、前記底壁4mから連続する傾斜面部4nから流下する塗料を、分流して、円滑に断面外に排出する。
【0039】
このため、塗料抜き性能を維持しつつ、前記第三の溶接面部16による溶接面積の増大を行わせることが出来、前記サイドルーフレール部材3と、フロントルーフレール部材4との間の結合強度を増大させることが出来る。
【0040】
そして、この実施の形態では、前記第一の溶接面部14に対応する第一エンボス部21、前記第二の溶接面部15に対応する第二エンボス部22及び、第三の溶接面部16に対応する第三エンボス部23が、これらの各第一の溶接面部14,第二の溶接面部15及び第三の溶接面部16に向けて、下方に凸状になるように形成されていて、各接続底面21a,22a,及び23aが、平面状若しくは二次元の曲線状を呈するように構成されている。
【0041】
このため、第一の溶接面部14乃至第三の溶接面部16の形状及び角度に合わせて、各接続底面21a,22a,及び23aの形状を設定することにより、更に、接合精度が向上して、接合強度を増大させることができる。
【0042】
また、第一の溶接面部14乃至第三の溶接面部16の形状及び角度に合わせて、各接続底面21a,22a,及び23aの形状が設定されることにより、アッセンブリ時の位置合わせが、容易に行える。
【0043】
更に、この実施の形態では、前記サイドルーフレール部材3の被取付面部3a,3aが、湾曲していても、第一の溶接面部14と、前記第二の側壁4hのフランジ部4gから連続して形成される第二の溶接面部15との間に配置された前記第一ビード部17及び第二ビード部18が、各底面部17a及び18aの延設方向を、前記底壁4mから連続形成される傾斜面部4nに、車幅方向に沿って設けられている。
【0044】
このため、前記被取付面部3a,3aの形状に、フロントルーフレール部材4の取付面部4bの形状が馴染んで、容易に湾曲されて、スプリングバックが抑制される。
【0045】
従って、組み付けアッセンブリ時の位置合わせが、更に容易に行えて、生産性を向上させることができる。
【0046】
しかも、これらの第一ビード部17及び第二ビード部18は、前記被取付面部3aに接触しない非溶接面部として、前記被取付面部3aの湾曲方向に交差する長手方向を有して、上方が開放された凹溝で、下面側が凸状を呈するように突設形成されている。
【0047】
このため、更に、車両上下方向に加わる荷重入力に対して、所望の剛性を発揮出来る。
【0048】
なお、前記サイドルーフレール部材3の被取付面部3b,3bに、前記ルーフボウ部材5の取付面部5b,5bが、各々接合される部分については、前記サイドルーフレール部材3の被取付面部3a,3aに、前記フロントルーフレール部材4の各取付面部4b,4bが接合される部分と同一乃至均等であるので、構成及び作用効果の説明を省略する。
【0049】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0050】
即ち、前記実施の形態では、前記第一の溶接面部14と、第三の溶接面部16との間には、非溶接面部としてのビード状の第一ビード部17が設けられると共に、前記第二の溶接面部15と、第三の溶接面部16との間に、非溶接面部としてのビード状の第二ビード部18が設けられていて、三箇所の第一の溶接面部14乃至第三の溶接面部16によって、フロントルーフレール部材4の取付面部4bが、サイドルーフレール部材3の被取付面部3aに、接合されたものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、二箇所若しくは四箇所以上の複数の溶接面部を設けてもよく、各溶接面部間に、被取付面部に接触しない非溶接面部を設けたものであれば、溶接面部及び非溶接面部の形状、数量及び間隔や配置が、特に限定されるものではない。
【0051】
また、前記実施の形態では、前記取付部材としてのフロントルーフレール部材4及びルーフボウ部材5を、被取付部材としてのサイドルーフレール部材3に接合するものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、取付部材としてのリヤルーフレール部材を、被取付部材としてのサイドルーフレール部材3に接合するもの等、どのような被取付部材に取付部材を取り付けるものであっても良く、被取付部材及び取付部材の形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態の部材の接合構造で、要部の拡大斜視図である。
【図2】実施の形態の部材の接合構造で、自動車の全体の構成を説明し、図中上は、分解斜視図及び,図中下は、組立後の模式的な斜視図である。
【図3】実施の形態の部材の接合構造で、フロントルーフレール部材の取付面部の構成を説明する車幅方向端部の一部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
3 サイドルーフレール部材(被取付部材)
3a,3b 被取付面部
4 フロントルーフレール部材(取付部材)
4b,5b 取付面部
4c 前端縁(一端縁)
4d,4g フランジ部
4e 第一の側壁
4f 後端縁(他端縁)
4h 第二の側壁
4j,4k 対向端縁
4m 底壁
5 ルーフボウ部材(取付部材)
14 第一の溶接面部(溶接面部)
15 第二の溶接面部(溶接面部)
16 第三の溶接面部(溶接面部)
17 第一ビード部(非溶接面部)
18 第二ビード部(非溶接面部)
21 第一エンボス部
22 第二エンボス部
23 第三エンボス部
21a〜23a 接続底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材に設けられた取付面部を、被取付部材に設けられた被取付面部に固定する部材の接合構造であって、前記取付面部には、平面若しくは二次元曲面を有する複数の溶接面部を設けて、各溶接面部間に、前記被取付面部に接触しない非溶接面部を設けたことを特徴とする部材の接合構造。
【請求項2】
前記取付部材は、一端縁にフランジ部を有する第一の側壁と、該第一の側壁に対向して配置され、前記一端縁の反対側に位置する他端縁にフランジ部を有する第二の側壁と、該第一の側壁と第二の側壁との間で、対向端縁同士を接続する底壁とを有して、断面形状を、上方を開放する断面ハット型とすると共に、前記溶接面部は、前記第一の側壁のフランジ部から連続して形成される第一の溶接面部と、前記第二の側壁のフランジ部から連続して形成される第二の溶接面部とを有し、前記非溶接面部は、前記底壁から連続して、前記第一の溶接面部と、第二の溶接面部との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の部材の接合構造。
【請求項3】
前記第一の溶接面部と、第二の溶接面部との間に、第三の溶接面部を有して、前記非溶接面部は、前記第一の溶接面部と、第三の溶接面部との間、及び、前記第二の溶接面部と、第三の溶接面部との間に設けられていることを特徴とする請求項2記載の部材の接合構造。
【請求項4】
前記非溶接部は、前記被取付面部の湾曲方向に交差する長手方向を有するビード状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の部材の接合構造。
【請求項5】
前記溶接面部のうち、少なくとも何れか一つに対応する前記被取付部材の被取付面部には、該溶接面部に向けて、凸状に形成されて、接続底面が、平面状若しくは二次元の曲線状を呈するエンボス部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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