説明

部材接合構造

【課題】厚み寸法が小さい部材の相互の接合や、素材が異なる部材の相互の接合に適した部材接合構造を提供する。
【解決手段】ナット1と、予め穿設してある孔2がねじ孔に連なるようにナット1に重ねた第1の部材3と、孔2に被さるように第1の部材3に重ねた第2の部材4とを備える。
接合ツール5を用いて、第2の部材4に由来する材料を摩擦熱と塑性流動により、第1の部材3の孔2、並びにナット1のねじ孔に入り込むように形作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接合すべき部材を溶融させずに相互に接続する方法として摩擦撹拌接合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この技法では、被接合部材を重ね合わせた被接合物を、裏当て部材である支持ツールに載せたうえ、被接合物に接合ツールを回転させながら押し付け、摩擦熱と塑性流動により軟化した材料を撹拌して同化させる。
【0004】
次いで、接合ツールを被接合物から離して材料が同化した部位を硬化させ、被接合部材を相互に接合する。
【0005】
接合ツールは、円柱状のショルダ部と、当該ショルダ部に同軸に連なり且つツール先端へ向けて突出する短円筒状でショルダ部よりも外径が小さいピン部とを備えている。
【特許文献1】特開2004−136365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示してある手法は、厚み寸法が小さい部材を相互に接合することは考慮していないし、素材が異なる部材を相互に接合することはできない。
【0007】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、厚み寸法が小さい部材の相互の接合や、素材が異なる部材の相互の接合に適した部材接合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一端に開口を有し且つ当該開口の壁面に周方向に延びる溝が設けてある被嵌合部材と、予め穿設してある孔が前記開口に連なるように被嵌合部材に重ねた第1の部材と、前記孔に被さるように第1の部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第2の部材に由来する材料を、第1の部材の孔、並びに被嵌合部材の開口に入り込むように形作った構成を採る。
【0009】
請求項2に記載の発明では、一端に開口を有し且つ当該開口の壁面に周方向に延びる溝が設けてある被嵌合部材と、前記開口に被さるように被嵌合部材に重ねた第1の部材と、当該第1の部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第1、第2の部材に由来する材料を、被嵌合部材の開口に入り込むように形作った構成を採る。
【0010】
請求項3に記載の発明では、一端に開口を有する被同化部材と、前記開口に被さるように被同化部材に重ねた第1の部材と、当該第1の部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第1、第2の部材に由来する材料を、被同化部材の開口の周囲に同化させた構成を採る。
【0011】
請求項4に記載の発明では、開口を有する第1の部材と、壁面に周方向に延びる溝を設けてある孔が前記開口に連なるように第1の部材に重ねた被嵌合部材と、前記孔に被さるように被嵌合部材に重ねた第2の部材とを備え、被嵌合部材を第1の部材に固着しておき、摩擦熱と塑性流動により第2の部材を、被嵌合部材の開口に入り込むように形作った構成を採る。
【0012】
請求項5に記載の発明では、第1の部材と、孔を有し且つ前記第1の部材に重ねた被同化部材と、前記孔に被さるように被同化部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第2の部材を、被同化部材の開口の周囲、及び第1の部材に同化させた構成を採る。
【0013】
請求項6に記載の発明では、第1の部材と、壁面に周方向に延びる溝が設けてある孔を有し且つ前記第1の部材に重ねた被嵌合部材と、前記孔に被さるように被嵌合部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第2の部材、及び第1の部材を、被嵌合部材の開口に入り込むように形作った構成を採る。
【0014】
請求項7に記載の発明では、被嵌合部材にナットを用い、請求項8に記載の発明では、被同化部材にナットを用いる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の部材接合構造によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0016】
(1)請求項1に記載の発明では、第2の部材と被嵌合部材とで第1の部材を挾持し、摩擦熱と塑性流動により第2の部材に由来する材料を被嵌合部材の溝に係合させるので、第1、第2の部材の厚み寸法が小さい場合でも、あるいは第1、第2の部材の素材が異なっていたとしても、双方を効率よく確実に接合することができる。
【0017】
(2)請求項2に記載の発明では、第2の部材と被同化部材とで第1の部材を挾持し、摩擦熱と塑性流動により第1、第2の部材に由来する材料を被嵌合部材の溝に係合させるので、第1、第2の部材の厚み寸法が小さい場合でも、双方を効率よく確実に接合することができる。
【0018】
(3)請求項3に記載の発明では、第2の部材と被同化部材とで第1の部材を挾持し、摩擦熱と塑性流動により第1、第2の部材に由来する材料を被同化部材に同化させるので、第1、第2の部材の厚み寸法が小さい場合でも、双方を効率よく確実に接合することができる。
【0019】
(4)請求項4に記載の発明では、第1の部材に固着してある被嵌合部材に第2の部材を重ね、摩擦熱と塑性流動により第2の部材に由来する材料を被嵌合部材の溝に係合させるので、第1、第2の部材の厚み寸法が小さい場合でも、あるいは第1、第2の部材の素材が異なっていたとしても、双方を効率よく確実に接合することができる。
【0020】
(5)請求項5に記載の発明では、第1、第2の部材で被同化部材を挾持し、摩擦熱と塑性流動により第2の部材に由来する材料を被同化部材と第1の部材に同化させるので、第1、第2の部材の厚み寸法が小さい場合でも、双方を効率よく確実に接合することができる。
【0021】
(6)請求項6に記載の発明では、第1、第2の部材で被嵌合部材を挾持し、摩擦熱と塑性流動により第1、第2の部材に由来する材料を被嵌合部材の溝に係合させるので、第1、第2の部材の厚み寸法が小さい場合でも、あるいは第1、第2の部材の素材が異なっていたとしても、双方を効率よく確実に接合することができる。
【0022】
(7)請求項7、請求項8に記載の発明では、被嵌合部材、または被同化部材に規格品のナットを用いることで、コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0024】
図1は本発明の部材接合構造の第1の例であり、請求項1、7に対応している。
【0025】
この部材接合構造は、ナット1と、予め穿設してある孔2がねじ孔に連なるようにナット1に重ねた第1の部材3と、前記孔2に被さるように第1の部材3に重ねた第2の部材4とを備え、第1の部材3は第2の部材4に比べて薄い。
【0026】
第2の部材4はアルミニウム合金を素材としているが、ナット1、第1の部材3は特に素材を限定せず、例えば、アルミニウム合金、鋼のいずれであってもよい。
【0027】
図1(c)に示すように、第2の部材4に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、第1の部材3の孔2、並びにナット1のねじ孔に入り込むように形作られ、第2の部材4とナット1とで第1の部材3を挾持している。
【0028】
第2の部材4を上述したような形状とする際には、例えば、図1(a)、図1(b)に示すような接合ツール5を用いる。
【0029】
接合ツール5は、ナット1のねじ孔や第1の部材3の孔2に対して外径が小さい円柱状のピン部6を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部7の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部6の全長は、第1、第2の部材3,4の厚みの合計に対して若干短い。
【0030】
接合ツール5の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0031】
まず、裏当て部材8にナット1を載せ、第1の部材3と第2の部材4を重ね合わせる。
【0032】
ナット1、第1の部材3の素材が同じである場合には、双方を溶接で固着しておいてもよい。
【0033】
次いで、接合ツール5を回転させながら、そのピン部6を第2の部材4に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部6が徐々にめり込む。
【0034】
やがて、摩擦熱と塑性流動により軟化した第2の部材4に由来する材料が、第1の部材3の孔2からナット1のねじ孔へと押し込まれるとともに当該ねじ孔の内周面に圧着され、最終的には、接合ツール5のショルダ部7端面が第2の部材4に押し付けられた状態となる。
【0035】
更に、接合ツール5を第2の部材4から引き離し、当該第2の部材4の塑性流動部位と、塑性流動を呈してナット1のねじ孔に押し込まれた第2の部材4に由来する材料とを硬化させると、当該材料がねじ溝に嵌合し、ナット1から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材3,4の接合が完了する。
【0036】
接合ツール5のピン部6が抜け出た後の第2の部材4の穴9は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0037】
また、ナット1に代えて、開口の壁面に平行溝を有する被嵌合部材、もしくは袋ナットなどを用いてもよい。
【0038】
図2は本発明の部材接合構造の第2の例であり、請求項1、7に対応している。
【0039】
この部材接合構造は、ナット1と、予め穿設してある孔10がねじ孔に連なるようにナット1に重ねた第1の部材11と、前記孔10に被さるように第1の部材11に重ねた第2の部材12とを備え、第1、第2の部材11,12は厚みが等しい。
【0040】
第2の部材12はアルミニウム合金を素材としているが、ナット1、第1の部材11は特に素材を限定せず、例えば、アルミニウム合金、鋼のいずれであってもよい。
【0041】
図2(c)に示すように、第2の部材12に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、第1の部材11の孔10、並びにナット1のねじ孔に入り込むように形作られ、第2の部材12とナット1とで第1の部材11を挾持している。
【0042】
第2の部材12を上述したような形状とする際には、例えば、図2(a)、図2(b)に示すような接合ツール13を用いる。
【0043】
接合ツール13は、ナット1のねじ孔や第1の部材11の孔10に対して外径が小さい円柱状のピン部14を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部15の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部14の全長は、ナット1、第1、第2の部材11,12の厚みの合計に対して若干短い。
【0044】
接合ツール13の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0045】
まず、裏当て部材8にナット1を載せ、第1の部材11と第2の部材12を重ね合わせる。
【0046】
ナット1、第1の部材11の素材が同じである場合には、双方を溶接で固着しておいてもよい。
【0047】
次いで、接合ツール13を回転させながら、そのピン部14を第2の部材12に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部14が徐々にめり込む。
【0048】
やがて、摩擦熱と塑性流動により軟化した第2の部材12に由来する材料が、第1の部材11の孔10からナット1のねじ孔へと押し込まれるとともに当該ねじ孔の内周面に圧着され、最終的には、接合ツール13のショルダ部15端面が第2の部材12に押し付けられた状態となる。
【0049】
更に、接合ツール13を第2の部材12から引き離し、当該第2の部材12の塑性流動部位と、塑性流動を呈してナット1のねじ孔に押し込まれた第2の部材12に由来する材料とを硬化させると、当該材料がねじ溝に嵌合し、ナット1から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材11,12の接合が完了する。
【0050】
接合ツール13のピン部14が抜け出た後の第2の部材12の穴16は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0051】
また、ナット1に代えて、開口の壁面に平行溝を有する被嵌合部材、もしくは袋ナットなどを用いてもよい。
【0052】
図3は本発明の部材接合構造の第3の例であり、請求項2、7に対応している。
【0053】
この部材接合構造は、ナット1と、ねじ孔に被さるようにナット1に重ねた第1の部材17と、当該第1の部材17に重ねた第2の部材18とを備え、第1、第2の部材17,18は厚みが等しい。
【0054】
第1、第2の部材17,18はアルミニウム合金を素材としているが、ナット1は特に素材を限定せず、例えば、アルミニウム合金、鋼のいずれであってもよい。
【0055】
図3(c)に示すように、第1、第2の部材17,18に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、ナット1のねじ孔に入り込むように形作られ、第2の部材18とナット1とで第1の部材17を挾持している。
【0056】
第1、第2の部材17,18を上述したような形状とする際には、例えば、図3(a)、図3(b)に示すような接合ツール5を用いる。
【0057】
接合ツール5は、ナット1のねじ孔に対して外径が小さい円柱状のピン部6を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部7の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部6の全長は、第1、第2の部材17,18の厚みの合計に対して若干短い。
【0058】
接合ツール5の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0059】
まず、裏当て部材8にナット1を載せ、第1の部材17と第2の部材18を重ね合わせる。
【0060】
ナット1、第1の部材17の素材が同じである場合には、双方を溶接で固着しておいてもよい。
【0061】
次いで、接合ツール5を回転させながら、そのピン部6を第2の部材18に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部6が徐々にめり込む。
【0062】
やがて、接合ツール5のピン部6は第2の部材18を突き抜けて第1の部材17に押し付けられ、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部6が徐々にめり込み、接合ツール5のピン部6の周囲に、第1、第2の部材17,18に由来する材料の同化層19が軟化した状態で生じる。
【0063】
この同化層19が、ナット1のねじ孔へと押し込まれるとともに当該ねじ孔の内周面に圧着され、最終的には、接合ツール5のショルダ部7端面が第2の部材18に押し付けられた状態となる。
【0064】
更に、接合ツール5を第2の部材18から引き離し、同化層19を硬化させると、当該同化層19がねじ溝に嵌合し、ナット1から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材17,18の接合が完了する。
【0065】
接合ツール5のピン部6が抜け出た後の第2の部材18の穴20は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0066】
また、ナット1に代えて、開口の壁面に平行溝を有する被嵌合部材、もしくは袋ナットなどを用いてもよい。
【0067】
図4は本発明の部材接合構造の第4の例であり、請求項3、8に対応している。
【0068】
この部材接合構造は、ナット1と、ねじ孔に被さるようにナット1に重ねた第1の部材17と、当該第1の部材17に重ねた第2の部材18とを備え、第1、第2の部材17,18は厚みが等しい。
【0069】
ナット1、第1、第2の部材17,18はいずれもアルミニウム合金を素材としている。
【0070】
図4(c)に示すように、第1、第2の部材17,18に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、ナット1に由来する材料とともに同化層21を形作り、ナット1、及び第1、第2の部材17,18の一体化を図っている。
【0071】
第1、第2の部材17,18を上述したような形状とする際には、例えば、図4(a)、図4(b)に示すような接合ツール13を用いる。
【0072】
接合ツール13は、ナット1のねじ孔に対して外径が小さい円柱状のピン部14を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部15の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部14の全長は、ナット1、第1、第2の部材17,18の厚みの合計に対して若干短い。
【0073】
接合ツール13の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0074】
まず、裏当て部材8にナット1を載せ、第1の部材17と第2の部材18を重ね合わせる。
【0075】
次いで、接合ツール13を回転させながら、そのピン部14を第2の部材18に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部14が徐々にめり込む。
【0076】
やがて、接合ツール13のピン部14は第2の部材18を突き抜けて第1の部材17に押し付けられ、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部14が徐々にめり込み、接合ツール13のピン部14の周囲に第1、第2の部材17,18に由来する材料の同化層21が軟化した状態で生じる。
【0077】
この同化層21は、ナット1のねじ孔の周囲に由来する材料をも巻き込み、最終的には、接合ツール13のショルダ部15端面が第2の部材18に押し付けられた状態となる。
【0078】
更に、接合ツール13を第2の部材18から引き離して同化層21を硬化させ、ナット1から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材17,18の接合が完了する。
【0079】
接合ツール13のピン部14が抜け出た後の第2の部材18の穴22は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0080】
また、ナット1の代わりに、開口の壁面に平行溝を有する被同化部材、袋ナット、あるいは、ナット1のねじ孔の周囲に由来する材料が同化層21に巻き込まれることに基づき、開口の内壁に溝がない部材を用いるようにしてもよい。
【0081】
図5は本発明の部材接合構造の第5の例であり、請求項4、7に対応している。
【0082】
この部材接合構造は、予め孔10が穿設してある第1の部材11と、ねじ孔が当該孔10に連なるように第1の部材11に重ねたナット1と、ねじ孔に被さるようにナット1に重ねた第2の部材12とを備えている。
【0083】
第2の部材12はアルミニウム合金を素材としているが、ナット1、第1の部材11は、アルミニウム合金以外の互いに共通する素材とし、ナット1は第1の部材11に溶接などの手法で固着してある。
【0084】
図5(c)に示すように、第2の部材12に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、ナット1のねじ孔、並びに第1の部材11の孔10に入り込むように形作られている。
【0085】
第2の部材12を上述したような形状とする際には、例えば、図5(a)、図5(b)に示すような接合ツール13を用いる。
【0086】
接合ツール13は、ナット1のねじ孔や第1の部材11の孔10に対して外径が小さい円柱状のピン部14を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部15の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部14の全長は、ナット1、第1、第2の部材11,12の厚みの合計に対して若干短い。
【0087】
接合ツール13の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0088】
まず、裏当て部材8に第1の部材11を載せ、既に第1の部材11に固着してあるナット1に第2の部材12を重ね合わせる。
【0089】
次いで、接合ツール13を回転させながら、そのピン部14を第2の部材12に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部14が徐々にめり込む。
【0090】
やがて、摩擦熱と塑性流動により軟化した第2の部材12に由来する材料が、ナット1のねじ孔から第1の部材11の孔10へと押し込まれるとともに当該ねじ孔の内周面に圧着され、最終的には、接合ツール13のショルダ部15端面が第2の部材12に押し付けられた状態となる。
【0091】
更に、接合ツール13を第2の部材12から引き離し、当該第2の部材12の塑性流動部位と、塑性流動を呈してナット1のねじ孔に押し込まれた第2の部材12に由来する材料とを硬化させると、当該材料がねじ溝に嵌合し、第1の部材11から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材11,12の接合が完了する。
【0092】
接合ツール13のピン部14が抜け出た後の第2の部材12の穴23は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0093】
また、ナット1の代わりに、開口の壁面に平行溝を有する被嵌合部材を用いるようにしてもよい。
【0094】
図6は本発明の部材接合構造の第6の例であり、請求項5、8に対応している。
【0095】
この部材接合構造は、予め孔10が穿設してある第1の部材11と、ねじ孔が当該孔10に連なるように第1の部材11に重ねたナット1と、ねじ孔に被さるようにナット1に重ねた第2の部材12とを備えている。
【0096】
ナット1、第1、第2の部材11,12はいずれもアルミニウム合金を素材としている。
【0097】
図6(c)に示すように、第2の部材12に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、ナット1に由来する材料、並びに第1の部材11に由来する材料とともに同化層24を形作り、ナット1、及び第1、第2の部材11,12の一体化を図っている。
【0098】
第2の部材12を上述したような形状とする際には、例えば、図6(a)、図6(b)に示すような接合ツール13を用いる。
【0099】
接合ツール13は、ナット1のねじ孔や第1の部材11の孔10に対して外径が小さい円柱状のピン部14を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部15の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部14の全長は、ナット1、第1、第2の部材11,12の厚みの合計に対して若干短い。
【0100】
接合ツール13の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0101】
まず、裏当て部材8に第1の部材11を載せ、既に第1の部材11に固着してあるナット1に第2の部材12を重ね合わせる。
【0102】
次いで、接合ツール13を回転させながら、そのピン部14を第2の部材12に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部14が徐々にめり込む。
【0103】
やがて、摩擦熱と塑性流動により軟化した第2の部材12に由来する材料が、ナット1のねじ孔から第1の部材11の孔10へと押し込まれるとともに、接合ツール13のピン部14の周囲に第2の部材12に由来する材料とナット1のねじ孔の周囲に由来する材料の同化層24が軟化した状態で生じる。
【0104】
この同化層24は、第1の部材11の孔10の周囲に由来する材料をも巻き込み、最終的には、接合ツール13のショルダ部15端面が第2の部材12に押し付けられた状態となる。
【0105】
更に、接合ツール13を第2の部材12から引き離して同化層24を硬化させ、第1の部材11から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材11,12の接合が完了する。
【0106】
接合ツール13のピン部14が抜け出た後の第2の部材12の穴25は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0107】
また、ナット1の代わりに、開口の壁面に平行溝を有する被同化部材、あるいは、ナット1のねじ孔の周囲に由来する材料が同化層24に巻き込まれることに基づき、開口の内壁に溝がない部材を用いるようにしてもよい。
【0108】
図7は本発明の部材接合構造の第7の例であり、請求項6、7に対応している。
【0109】
この部材接合構造は、第1の部材17と、当該第1の部材17に重ねたナット1と、ねじ孔に被さるようにナット1に重ねた第2の部材18とを備えている。
【0110】
第1、第2の部材17,18はアルミニウム合金を素材とし、ナット1、第1の部材17は特に素材を限定せず、例えば、アルミニウム合金、鋼のいずれであってもよい。
【0111】
図7(c)に示すように、第2の部材18、及び第1の部材17に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、ナット1のねじ孔に入り込むように形作られている。
【0112】
第1、第2の部材17,18を上述したような形状とする際には、例えば、図7(a)、図7(b)に示すような接合ツール13を用いる。
【0113】
接合ツール13は、ナット1のねじ孔に対して外径が小さい円柱状のピン部14を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部15の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部14の全長は、ナット1、第1、第2の部材17,18の厚みの合計に対して若干短い。
【0114】
接合ツール13の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0115】
まず、裏当て部材8に第1の部材17とナット1を順に載せ、当該ナット1に第2の部材18を重ね合わせる。
【0116】
次いで、接合ツール13を回転させながら、そのピン部14を第2の部材18に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部14が徐々にめり込む。
【0117】
やがて、摩擦熱と塑性流動により軟化した第2の部材18に由来する材料が、ナット1のねじ孔の内周面に圧着されるとともに、ピン部14が第1の部材17に到達し、摩擦熱と塑性流動により軟化した第1の部材17に由来する材料も、ナット1のねじ孔の内周面に圧着され、最終的には、接合ツール13のショルダ部15端面が第2の部材12に押し付けられた状態となる。
【0118】
更に、接合ツール13を第2の部材18から引き離し、第1の部材17、及び第2の部材18の塑性流動部位と、塑性流動を呈してナット1のねじ孔に押し込まれた第1、第2の部材17,18に由来する材料を硬化させると、当該材料がねじ溝に嵌合し、第1の部材17から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材17,18の接合が完了する。
【0119】
接合ツール13のピン部14が抜け出た後の第2の部材18の穴26は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0120】
また、ナット1の代わりに、開口の壁面に平行溝を有する被嵌合部材を用いるようにしてもよい。
【0121】
図8は本発明の部材接合構造の第8の例であり、請求項5、8に対応している。
【0122】
この部材接合構造は、第1の部材17と、当該第1の部材17に重ねたナット1と、ねじ孔に被さるようにナット1に重ねた第2の部材18とを備えている。
【0123】
ナット1、第1、第2の部材17,18はいずれもアルミニウム合金を素材としている。
【0124】
図8(c)に示すように、第2の部材18に由来する材料は摩擦熱と塑性流動により、ナット1に由来する材料、並びに第1の部材17に由来する材料とともに同化層27を形作り、ナット1、及び第1、第2の部材17,18の一体化を図っている。
【0125】
第1、第2の部材17,18を上述したような形状とする際には、例えば、図8(a)、図8(b)に示すような接合ツール13を用いる。
【0126】
接合ツール13は、ナット1のねじ孔に対して外径が小さい円柱状のピン部14を、それよりも外径が大きい円柱状のショルダ部15の先端面に同軸に連ねた形をしており、ピン部14の全長は、ナット1、第1、第2の部材17,18の厚みの合計に対して若干短い。
【0127】
接合ツール13の素材には、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を用いている。
【0128】
まず、裏当て部材8に第1の部材17とナット1を順に載せ、当該ナット1に第2の部材18を重ね合わせる。
【0129】
次いで、接合ツール13を回転させながら、そのピン部14を第2の部材18に押し付けると、摩擦熱と塑性流動により軟化したこの部位にピン部14が徐々にめり込む。
【0130】
やがて、摩擦熱と塑性流動により軟化した第2の部材18に由来する材料が、ナット1のねじ孔へと押し込まれるとともに、ピン部14が第1の部材17に到達し、接合ツール13のピン部14の周囲に第1、第2の部材17,18に由来する材料の同化層27が軟化した状態で生じる。
【0131】
この同化層27は、ナット1のねじ孔の周囲に由来する材料をも巻き込み、最終的には、接合ツール13のショルダ部15端面が第2の部材18に押し付けられた状態となる。
【0132】
更に、接合ツール13を第2の部材18から引き離して同化層27を硬化させ、第1の部材17から裏当て部材8を引き離すことにより、第1、第2の部材17,18の接合が完了する。
【0133】
接合ツール13のピン部14が抜け出た後の第2の部材18の穴28は、雌ねじ加工を施せば別部材のボルト締結に利用できる。
【0134】
また、ナット1の代わりに、開口の壁面に平行溝を有する被同化部材、あるいは、ナット1のねじ孔の周囲に由来する材料が同化層27に巻き込まれることに基づき、開口の内壁に溝がない部材を用いるようにしてもよい。
【0135】
なお、本発明の部材接合構造は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の部材接合構造は、様々な部品の接合組付工程に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の部材接合構造の第1の例の施工手順を示す概念図である。
【図2】本発明の部材接合構造の第2の例の施工手順を示す概念図である。
【図3】本発明の部材接合構造の第3の例の施工手順を示す概念図である。
【図4】本発明の部材接合構造の第4の例の施工手順を示す概念図である。
【図5】本発明の部材接合構造の第5の例の施工手順を示す概念図である。
【図6】本発明の部材接合構造の第6の例の施工手順を示す概念図である。
【図7】本発明の部材接合構造の第7の例の施工手順を示す概念図である。
【図8】本発明の部材接合構造の第8の例の施工手順を示す概念図である。
【符号の説明】
【0138】
1 ナット(被嵌合部材/被同化部材)
2 孔
3 第1の部材
4 第2の部材
10 孔
11 第1の部材
12 第2の部材
17 第1の部材
18 第2の部材
19 同化層
21 同化層
24 同化層
27 同化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口を有し且つ当該開口の壁面に周方向に延びる溝が設けてある被嵌合部材と、予め穿設してある孔が前記開口に連なるように被嵌合部材に重ねた第1の部材と、前記孔に被さるように第1の部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第2の部材に由来する材料を、第1の部材の孔、並びに被嵌合部材の開口に入り込むように形作ったことを特徴とする部材接合構造。
【請求項2】
一端に開口を有し且つ当該開口の壁面に周方向に延びる溝が設けてある被嵌合部材と、前記開口に被さるように被嵌合部材に重ねた第1の部材と、当該第1の部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第1、第2の部材に由来する材料を、被嵌合部材の開口に入り込むように形作ったことを特徴とする部材接合構造。
【請求項3】
一端に開口を有する被同化部材と、前記開口に被さるように被同化部材に重ねた第1の部材と、当該第1の部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第1、第2の部材に由来する材料を、被同化部材の開口の周囲に同化させたことを特徴とする部材接合構造。
【請求項4】
開口を有する第1の部材と、壁面に周方向に延びる溝を設けてある孔が前記開口に連なるように第1の部材に重ねた被嵌合部材と、前記孔に被さるように被嵌合部材に重ねた第2の部材とを備え、被嵌合部材を第1の部材に固着しておき、摩擦熱と塑性流動により第2の部材を、被嵌合部材の開口に入り込むように形作ったことを特徴とする部材接合構造。
【請求項5】
第1の部材と、孔を有し且つ前記第1の部材に重ねた被同化部材と、前記孔に被さるように被同化部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第2の部材を、被同化部材の開口の周囲、及び第1の部材に同化させたことを特徴とする部材接合構造。
【請求項6】
第1の部材と、壁面に周方向に延びる溝が設けてある孔を有し且つ前記第1の部材に重ねた被嵌合部材と、前記孔に被さるように被嵌合部材に重ねた第2の部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により第2の部材、及び第1の部材を、被嵌合部材の開口に入り込むように形作ったことを特徴とする部材接合構造。
【請求項7】
被嵌合部材にナットを用いた請求項1、2、4のいずれかに記載の部材接合構造。
【請求項8】
被同化部材にナットを用いた請求項3、5のいずれかに記載の部材接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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