説明

部材搬送装置

【目的】高速且つ安定な部材の搬送を可能とする部材搬送装置を提供する。
【構成】固定子1に相対して直線移動する移動テーブル2上に取り付けられた、部材を保持する保持手段71〜78を周方向に複数個配設し、外部コントローラから無線回線を介して受信した制御信号に基づいて上記移動テーブル2の移動、上記部材の保持動作を行うことにより、リードワイヤを不要とし、構成を簡略化するとともに、移動範囲を拡張している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は部材搬送装置に関し、特に部材の取り出し、装着を高速且つ高精度で行う部材搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば抵抗、コンデンサ、IC素子等のチップを基板上に搭載するチップマウンタにおいては、直線移動する移動テーブル上に、チップを吸着し、該基板上に装着させる機構が設置されている。通常、この移動テーブルは、リニアガイド上に載置され、ラックとピニオンで減速機を介してモータにより直線移動駆動される。また、移動テーブルが結合されたボールネジを直流モータやステッピングモータで駆動することにより、移動テーブルを直線移動させるものもある。上記チップ搭載動作は、チップ位置への移動、チップの吸着、基板位置への移動、チップ装着等の動作を含み、これら動作は高速且つ多数回繰り返し行われる。そのため、移動テーブルの駆動は、リニアACサーボモータにより行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、従来のチップマウンタ装置のような部材搬送装置は、テーブルの直線移動手段、チップ取り出し(吸着)及びチップ装着のための回転及び直線移動手段を有し、各手段には外部電源や外部コントロール装置に接続されたリード線やトロリー線を用いて電源や制御信号が供給されている。しかしながら、かかるリード線やトロリー線による給電方式は、移動テーブルの移動範囲に制約を与えるだけでなく、装置構成を複雑化してしまう。また、装置の動作時、リード線等は伸縮、屈曲が多数回繰り返されることになり、断線の恐れも生じ、安定動作面で問題があった。
【0004】そこで、本発明の目的は、高速且つ安定な部材の搬送を可能とする部材搬送装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するため、本発明による部材搬送装置は、固定子に相対して直線移動可能な移動テーブルと、該移動テーブルに取り付けられ、外部コントローラからの指令信号を無線回線を介して受信する受信手段と、前記移動テーブルに取り付けられ、部材を保持する保持手段が周方向に所定角度間隔で複数個配設されたディスクと、前記移動テーブルに取り付けられ、前記ディスクを回転駆動するディスク回転手段と、前記受信手段で受信された指令信号に基づいて前記移動テーブルを所定の部材位置まで移動させ、前記ディスク回転手段を駆動することにより前記ディスクを回転させて前記保持手段に所定の部材を保持する動作を行わせ、前記移動テーブルを所定位置まで移動させる制御手段と、前記移動テーブルに取り付けられ、前記各手段に電源を供給するバッテリ手段と、を備えて構成される。
【0006】
【作用】本発明では、固定子に相対して直線移動する移動テーブル上に取り付けられた、部材を保持する保持手段を周方向に複数個配設し、外部コントローラから無線回線を介して受信した制御信号に基づいて上記移動テーブルの移動、上記部材の保持動作を行うことにより、リードワイヤを不要とし、構成を簡略化するとともに、移動範囲を拡張している。
【0007】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による部材搬送装置の一実施例を示す簡略化された側面図である。固定子1には移動テーブル2が直線移動可能に載置され、固定子1側に設けられた磁極11と移動テーブルのマグネット21との磁気的作用により直線移動が可能とされている。該移動テーブル2にはACサーボモータ3が固定され、ACサーボモータ3の回転軸51には円盤ディスク6が固定されている。円盤ディスク6の周方向には所望の数の上下動ピン部71〜78が所定角度間隔で固定されている(本実施例では、45度角度間隔で8個)。上下動ピン部71〜78内のそれぞれにはピン71A〜78Aが軸方向移動可能に収納されている。上下動ピン部71〜78の上部には開口部が形成されている。一方、ACサーボモータ3のケース側にも円盤ディスク6と同様形状の円盤部5が固定されており、円盤ディスク6に設置された上下動ピン部71〜78との対応位置にリニアアクチュエータ41〜48が取り付けられ、その取付位置は開口端となっている。リニアアクチュエータ41〜48のそれぞれにはピン41A〜48Aが軸方向移動可能に収納されており、リニアアクチュエータ41〜48の動作によりピン41A〜48Aが上下動移動される。また、ピン71A〜78Aの先端部には、上記チップ部材を吸着したり、保持するための手段が内蔵されている。
【0008】上記円盤ディスク6の上下動ピン71〜78の配設状況が図2に示されている。図2は、図1のA方向から見た図であり、45度の角度間隔で8個の上下移動ピン部71〜78が配設され、それぞれにはピン71A〜78Aが軸方向移動可能に収納されている。
【0009】さて、移動テーブル2には制御部ラック4が取り付けられ、上記各駆動部(ACサーボモータ3、リニアアクチュエータ41〜48等)の駆動制御を行うCPU等の信号処理回路や制御回路が内蔵されている。また、移動テーブル2には、無線通信機8が取り付けられ、外部コントロール装置(図示せず)との間での通信が無線信号でアンテナ5を介して行われる。
【0010】上記構成において、外部コントロール装置からの電波指令信号を無線通信機8のアンテナ5で受信すると、受信信号は制御部ラック4の信号処理回路で解析され、解析結果に基づいて所望のチップフィーダの所定チップ位置への移動テーブルの移動、チップフィーダの所定チップ位置への回転ディスク6の回転及びチップ吸着、保持のためのリニアアクチュエータ41〜48の駆動制御が行われる。すなわち、リニアACサーボモータにより移動テーブル2をチップフィーダ位置まで直線移動させた後、ACサーボモータ3を回転駆動して上下動ピン部(例えば71)を所望のチップ位置に位置決めし、対応するリニアアクチュエータ41を駆動する。この駆動により、例えばピン41Aを下方向に移動させ、リニアアクチュエータ41の底部の開口部、円盤部5の開口部を通して、上下動ピン部71のピン71Aを下方向に押下して突出させ、その先端部によりチップを吸着、保持する。リニアアクチュエータの駆動をOFFすると、内蔵スプリングによりピンはチップを吸着したまま元の位置に戻る。ここで、移動テーブル2の移動位置情報は、固定子1及び移動テーブル2に設けたリニアエンコーダから得られ、ACサーボモータ3による円盤ディスク6の回転位置情報は、ACサーボモータに内蔵された角度検出用のエンコーダから得られる。
【0011】次に、こうしてチップを吸着、保持したまま、移動テーブル2は、外部コントロール部から送出される指令信号に基づいてチップを搭載すべき基板位置まで移動制御する。基板位置まで移動テーブル2が移動されると、リニアアクチュエータ41〜48の所望のリニアアクチュエータ41〜48を駆動して対応ピン41A〜48Aを下方向に駆動し、円盤ディスク6の開口部を通して上下動ピン部71〜78のピン71A〜78Aの所定ピンを押下し、その先端部に取り付けられたチップを基板上に装着する。
【0012】本実施例では、円盤ディスク6の周方向には、図2に示す如く、45度角度間隔で上下動ピン部71〜78が配設されているので、チップの装着角度も45度を単位として8通りの角度方向に行えることになる。図3には、上記上下動ピン部71〜78とチップの装着角度との関係が図示されている。
【0013】図4は、上記実施例による部材搬送装置の全体構成図を示す。外部コントロール部のメインコントローラ20からの指令信号は、先ず、リニアACサーボドライバ9に供給されて、リニアACサーボモータ10を駆動して移動テーブル2の位置決め制御が行われる。また、RS232C等のケーブル(ワイヤ)を介して上記指示信号は無線通信機21に供給され、無線通信機21は上記指示信号を無線信号の形でアンテナ22から部材搬送装置(移動テーブル)側のアンテナ5に向けて送出される。アンテナ5を介して受信された無線信号は、無線通信機8で所定の無線信号処理が施され、RS232Cのようなケーブルを介して制御部ラック4に供給される。制御部ラック4内のCPU回路401は、無線通信機8からの信号について、解析等の処理を施し、位置制御回路403に出力する。位置制御回路403からの出力によりACサーボモータ3を回転させて回転位置を制御するための信号が出力される。位置制御回路403からの信号は、パワードライブ回路404で増幅され、ACサーボモータ3に供給される。ACサーボモータ3の回転位置は、エンコーダ31で検出され、位置フィードバック信号として位置制御回路403に供給され、高精度な位置決めが行われる。CPU回路401からの制御信号は、リニアアクチュエータ駆動回路402に送出され、リニアアクチュエータ41〜48を駆動制御する。
【0014】図5には、上述実施例動作の処理手順フローチャートが示されている。先ず、移動テーブル2を直線移動するリニアACサーボモータ(リニアモータ)、円盤ディスク6を回転するACサーボモータ(ピンサークルモータ)3の原点復帰が行われる(ステップS1)。ここで、リニアモータは機械原点と電気原点とにより原点位置を定めて復帰させ、ACサーボモータ3は、機械原点をもたず、電気原点位置まで復帰させる。このACサーボモータ3は、電気原点だけではピン上下駆動用にリニアアクチュエータ41〜48と、チップ吸着、装着用上下動作ピンとの位置出しが行えないので、原点オフセット動作機能をもち、電気原点検出後、リニアアクチュエータとピンとが一直線上になる位置までACサーボモータ3を制御させる。この原点オフセット動作機能によりリニアアクチュエータを上下に駆動したとき、正確にピンを押下してチップの吸着、装着することができる。
【0015】次に、外部コントロール部のメインコントローラ20からの指令信号に基づいて移動テーブルをチップフィーダ位置(チップ吸着ステーション位置)に移動させ(ステップS2)、チップフィーダの所定チップ位置まで移動テーブル2を移動させる(ステップS3)。その後、ACサーボモータ3を駆動して円盤ディスク6を回転させて上下動ピン部71〜78のうち所定の上下動ピン部を所望のチップ上位置に位置決めし(ステップS4)、対応するリニアアクチュエータを駆動してピンを押し下げてチップを吸着させる(ステップS5)。ここで、前述の如く、リニアアクチュエータの駆動をOFFすると、ピンはチップを吸着したまま内蔵バネの復元力によって元の位置に戻り、チップ吸着動作が完了する。同様にして次のピンにチップを吸着させる。上述実施例では8個までのチップ吸着が可能であるが、ピンの放置数を増加させれば吸着チップ数も増加する。
【0016】このチップ吸着動作が完了すると、無線通信機8のアンテナ5からは完了信号ENDを外部コントロール部のアンテナ22、無線通信機21を介してメインコントローラ20に送出する。該完了信号ENDを受信したか否かにより、吸着動作が完了したか否かが判断され(ステップS6)、完了していなければステップS3の処理に戻り、完了していれば、移動テーブルをセンタリングステーション位置まで移動し、チップセンタリングを行う(ステップS8)。例えば、8個のピンを一斉に上下させ、一旦8個のピンをセンタリングステーションに載置してチップのセンタリングを行う。このセンタリング完了後、8個のピンを再度移動させて再吸着を行いセンタリングを完了させる。センタリング完了は、メインコントローラ20に完了信号ENDを送出することにより知らせる。
【0017】チップセンタリングが完了すると、移動テーブル2をチップ装着ステーション位置に移動させる(ステップS9)。その後、メインコントローラ20からの、どのピンに吸着されているチップかを示す装着チップと、どのリニアアクチュエータを用いて装着するかを示す装着方向(図3に示されている)についての指令を受け、この指令に基づいてACサーボモータ3を駆動して円盤ディスク6を回転させて(ステップS10)、所定位置への位置付けを行い、リニアアクチュエータを駆動して指定チップを指定方向に吸着時と同様な動作により装着する(ステップS11)。装着完了を示す完了信号ENDが送出されると、次のチップについての同様な装着動作を行わせ、各チップ装着完了の判断が行われ(ステップS12)、完了していなければステップS2の処理に戻り、完了していれば全部のチップの装着が完了したか否かが判断され(ステップS13)、完了していなければステップS2の処理に戻り、再度、吸着、センタリング、装着動作が繰り返され、必要なチップ全ての装着を行う。完了すれば、動作を終了する。
【0018】以上の実施例の説明では、外部コントロール部から移動テーブル側への制御信号等の送信は、上述無線周波数伝送の他に、光信号を用いて行うこともできる。また、移動テーブル側に必要な電源としては、二次電池や大容量コンデンサ等を用いることができる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による部材搬送装置は、固定子に相対して直線移動する移動テーブル上に取り付けられた、部材を保持する保持手段が周方向に複数個配設され、外部コントローラから無線回線を介して受信した制御信号に基づいて、移動テーブルの移動、上記部材の保持動作を行うように構成されているので、従来のようなリードワイヤが不要となり、装置構成が著しく簡略化されるだけでなく、移動範囲が拡張され、安定な動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による部材搬送装置の一実施例を示す簡略化した側面図である。
【図2】図1の実施例におけるチップ吸着、装着を行う上下動ピン部の配設例を示す図である。
【図3】図1の実施例におけるチップ装着角度の態様を示す図である。
【図4】本発明による部材搬送装置の一実施例の電気系統の構成ブロック図である。
【図5】本発明による部材搬送装置の一実施例の動作処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 固定子 2 移動テーブル
3 ACサーボモータ 4 制御部ラック
5,22 アンテナ 6 円盤ディスク
8,21 無線通信機 9 リニアACサーボドライバ
10 リニアACサーボモータ
41〜48 リニアアクチュエータ
71〜78 上下動ピン部
41A〜48A,71A〜78A ピン

【特許請求の範囲】
固定子に相対して直線移動可能な移動テーブルと、該移動テーブルに取り付けられ、外部コントローラからの指令信号を無線回線を介して受信する受信手段と、前記移動テーブルに取り付けられ、部材を保持する保持手段が周方向に所定角度間隔で複数個配設されたディスクと、前記移動テーブルに取り付けられ、前記ディスクを回転駆動するディスク回転手段と、前記受信手段で受信された指令信号に基づいて前記移動テーブルを所定の部材位置まで移動させ、前記ディスク回転手段を駆動することにより前記ディスクを回転させて前記保持手段に所定の部材を保持する動作を行わせ、前記移動テーブルを所定位置まで移動させる制御手段と、前記移動テーブルに取り付けられ、前記各手段に電源を供給するバッテリ手段と、を備えて成ることを特徴とする部材搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−301127
【公開日】平成5年(1993)11月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−135854
【出願日】平成4年(1992)4月28日
【出願人】(000229645)日本パルスモーター株式会社 (46)