説明

配向可能なポリマーブレンドを備えた拡散反射型偏光フィルム

偏光フィルム(4)は、少なくとも0.05の複屈折性を有する第1ポリマーから成る第1相(6)と、第1相(6)内に配置される第2ポリマーから成る第2相(8)とを含む。第1相(6)と第2相(8)との間の屈折率の差は、第1軸に沿って約0.05より大きく、第1軸に直交する少なくとも1つの軸に沿って約0.05より小さい。電磁放射線の少なくとも1つの偏光状態について少なくとも1つの軸に沿ってまとめられる第1相(6)と第2相(8)の拡散反射率は、少なくとも約30%であってもよい。いくつかの代表的な実施形態において、第2相(8)は、約1.53〜約1.59の屈折率を有する。いくつかの代表的な実施形態において、第2ポリマーは、複屈折性第1ポリマーのTgより高いグラス転移温度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年4月6日出願の発明の名称を「配向可能なポリマーブレンドを備えた拡散反射型偏光フィルム(Diffuse Reflective Polarizing Films with Orientable Polymer Blends)」とした米国仮出願第60/668,944号より優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、反射光又は透過光の特定偏光のような光学特性を制御するのに好適な構造を含有する光学フィルム、及びそのような光学フィルムを製造する方法に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より具体的には、本発明は、反射型偏光フィルム構造に使用するためのポリマーブレンド及びそのような構造を処理する方法、特に実質的一軸配向プロセスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、第1ポリマーから成る第1相と、第1相内に配置された第2ポリマーから成る第2相とを含む偏光フィルムであって、前記第1相と前記第2相との間の屈折率差が第1軸に沿って約0.05より大きく、前記第1軸に直交する少なくとも1軸に沿って約0.05より小さい、偏光フィルムを対象とする。電磁放射線の少なくとも1偏光状態について、少なくとも1軸に沿ってまとめられる前記第1相及び第2軸相の拡散反射率は、少なくとも約30%である。前記第2相は、約1.53〜約1.59の屈折率を有してもよい。
【0005】
別の態様において、本発明は、光学フィルムを形成する方法であって、第1ポリマーから成る第1相と、前記第1相内で分散された第2ポリマーから成る第2相とを含むフィルムを形成する工程で、前記第2ポリマーは、約1.53〜約1.59の屈折率を有する工程と、前記フィルムの対向する縁部を保持しながら、前記フィルムを機械方向に沿ってストレッチャー内を搬送する工程と、(c)末広がりの経路に沿って前記フィルムの対向する縁部を移動させることによって前記ストレッチャー内で前記フィルムを実質的に一軸延伸する工程で、延伸後、第1相と第2相との間の屈折率の差が前記フィルムの表面に平行な平面内の第1軸に沿って約0.05より大きく、第1軸に直交する少なくとも1つの軸に沿って約0.05より小さい、工程とを含む方法を対象とする。
【0006】
さらに別の態様において、本発明は、第1ポリマーから成る連続相と、前記第1ポリマーと異なる第2ポリマーから成る分散相とを含む偏光フィルムであって、前記連続相と前記分散相との間の屈折率の差は、前記フィルムの表面に平行した平面内の第1軸に沿って約0.05より大きく、第1軸に直交する第2軸に沿って約0.05より小さく、偏光フィルムを対象とする。前記第2ポリマーは、前記複屈折性第1ポリマーより高いガラス転移温度(Tg)を有する。
【0007】
本発明の1つ以上の代表的な実施形態について、添付図面及び以下の記載において、さらに詳細に説明する。本発明のほかの特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面、並びに請求項から明らかになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
望ましい光学特性を有する高分子フィルムは、別のポリマーの連続マトリックス内に分散されたポリマーから成る含有物から作製することが可能である。含有物を形成するポリマーは、ある範囲の反射及び透過特性をフィルムに与えるよう選択されてもよい。これらの特性として、フィルム内の幅に対する含有物のサイズ、含有物の形状および配列、並びにフィルムの3つの直交する軸に沿った分散相と連続マトリックス間の屈折率の一致及びまたは不一致度などが挙げられる。
【0009】
あるいは、粘度がほぼ等しい、ハイポリマーから成る二成分ブレンドについて体積分率が比較可能な場合、例えば、各々が約40%より大きく50%に近い場合、分散相と連続相の区別は、各相が空間的に連続的になるので、困難になる。選択する材料によっては、第1相が第2相内で分散されるように及び逆もまた同様である領域があってもよい。これらの材料は共連続相と呼ばれてもよく、以下にさらに詳細に論じる。
【0010】
図1〜2を参照すると、例えば、米国特許第5,825,543号、第6,057,961号、第6,590,705号、及び第6,057,961号に記載されている拡散反射型偏光光学フィルムのある実施形態は、第1熱可塑性ポリマーから成る複屈折性マトリックス又は連続相6と、第2熱可塑性ポリマーから成る不連続又は分散相8とを備えた材料を包含し、参照により本明細書に組み込まれる。図1〜2に示されていない代替の実施形態において、第2熱可塑性ポリマーが連続相を作製し、複屈折材料が分散相を形成してもよい。
【0011】
第1及び第2ポリマーは、光学フィルムの表面に平行な平面内の第1軸に沿って連続相と分散相との間の屈折率差が大きく、また光学フィルムの表面に平行な少なくとも1つの他の軸に沿って屈折率の差が小さくなるように選択される。より好ましくは、第1及び第2ポリマーは、光学フィルムの表面に平行な平面内の第1軸に沿っては連続相と分散相の屈折率の差が大きく、また他の2つの直交する軸に沿っては屈折率差が小さくなるよう選択される。
【0012】
好ましくは、第1及び第2ポリマーの屈折率は、複屈折材料の平面内の第1軸に沿って実質的に不一致であり(差が約0.05より大きい)、材料の平面内の少なくとも1つの他の軸に沿って実質的に一致する(差が約0.05より小さい)。より好ましくは、屈折率は、材料の平面内の第1軸に沿って実質的に不一致であり(差が約0.05より大きい)、他の2つの直交する軸に沿って実質的に一致する(差が約0.05より小さい)。特定軸に沿った屈折率の不一致は、該軸に沿って偏光された入射光を実質的に散乱させ、著しい量の反射を生じさせることになる。対照的に、屈折率が一致する軸に沿って偏光された場合、入射光は、非常に低い散乱率で分光的に透過又は反射される。
【0013】
フィルム内の連続相及び/又は分散相の少なくとも一方のために選択されるポリマーは、好ましくは、フィルムが配向されると屈折率に変化が生じる。フィルムは1つ以上の方向に配向されるので、屈折率の一致又は不一致は、1つ以上の軸に沿って生じる。配向パラメータ及び他の処理条件を注意深く操作することによって、マトリックス又は分散相の正あるいは負の複屈折性を用いると、所与の軸に沿って1つ又は両方の偏光を拡散反射若しくは透過を誘起することが可能である。好ましくは、電磁放射線の少なくとも1つの偏光状態について少なくとも1つの軸に沿ってまとめられた第1相及び第2相の拡散反射率は、少なくとも約30%である。
【0014】
本明細書に使用される、用語「正反射」及び「正反射率」は、反射角を中心に16度の頂角を有する表面に出現した円錐(emergent cone)の中に光線が反射することを指す。用語「拡散反射」又は「拡散反射率」は、上で定義した正反射の円錐外で光線が反射することを指す。用語「全反射率」又は「全反射」は、表面からの全光線の統合反射を指す。したがって、全反射は、正反射と拡散反射の合計になる。
【0015】
同様に、用語「正透過」及び「正透過率」は、正反射方向を中心に16度の頂角を有する表面に出現した円錐(emergent cone)の中に光線が透過されることを指して本明細書において使用される。用語「拡散透過」及び「拡散透過率」は、上記で定義した正反射の円錐外で全光線が透過されることを指して本明細書において使用される。用語「全透過」又は「全透過率」は、光学体を経て全光線が透過される統合透過を指す。したがって全透過は、正透過と拡散透過の合計になる。
【0016】
多種多様なプロセスによってフィルムが配向されてもよい。例えば、図3は、連続して送り込まれるフィルム12をフィルムの移動方向14を横切って延伸する、従来のテンター延伸プロセス10を示す図である。フィルム12は、両縁部16で把持装置、典型的にはテンタークリップの装置(図示せず)によって把持される。テンタークリップは、線形に末広がりのテンタートラック又はレールに上に載置されたテンターチェーンに連結されてもよい。この装置は、フィルム12をフィルム移動14の機械方向(MD)に前進させ、横断方向又はテンター方向(TD)にフィルム12を延伸する。したがって、一実施例においては、フィルムにおける初期の非配向部分18が最終配向部分20に延伸されてもよい。図4を参照すると、図1に示されたフィルム12の未延伸部分18は、寸法T、W、及びLを有してもよい。フィルム12が係数ラムダだけ延伸されると、フィルムの該部分の寸法は、部分20に示された寸法に変化している。
【0017】
図5を参照すると、従来のテンターの場合、延伸前のフィルムの厚さTは、延伸後の厚さT’より大きいので、フィルムは、延伸後により薄くなる。厚さの比であるT’対Tは、(フィルム平面に対する)垂直(z)方向延伸比(NDDR)として定義されてもよい。図6に示されるように、機械方向14における、延伸後フィルムの一部分の長さY’を延伸前フィルムの一部分の長さYで除算した値が機械方向延伸比(MDDR)と呼ばれる。横断方向延伸比(TDDR)は、延伸後のフィルムの一部の幅X’を該部分の初期幅Xで除算した値として定義されてもよい。例示としてのみ、図7のXo/Xを参照のこと。
【0018】
従来のテンターにおいては、NDDRは、TDDRのほぼ逆数であり、MDDRは、実質的に変わらない。換言すると、フィルムは延伸されるのに従って機械方向(MD)に対して横断する方向に延び、垂直又はZ方向においてより薄くなる。MDDR及びNDDRにおけるこの非対称性は、フィルムの多様な分子的、機械的、及び光学的特性に差が生じる原因となる。このような特性の例として、多様な波長における、結晶配向及び形態、熱及び吸湿性膨張、小歪異方性機械適合性、耐剪断性、耐クリープ性、収縮、並びに屈折率及び吸収率が挙げられる。
【0019】
フィルム構造中の複屈折性成分の場合、一実施形態においては正の複屈折性を有する材料が好ましく、複屈折性ポリエステル類が特に好ましい。複屈折率性材料の特に好適な例は、ナフタレンジカルボキシレート官能性、特に2,6ポリエチレンナフタレート(PEN)を含有する複屈折性ポリエステルである。例えば、フィルム構造用第1複屈折性ポリマーとしてPENが選択される場合、注型の非配向フィルムは、その互いに直交する軸の各々において同じ屈折率を有する(nx=ny=nz=1.64)。従来のテンターで配向された後、ポリマーは、横断方向に沿って延伸されてTDDR(x’/x)が大きくなる。このTDDRの増加は、x方向に沿って屈折率(nx)の約1.64〜約1.86までの増加を伴う。フィルムは、テンタークリップによって圧押されて、機械方向(MD)に沿って弛緩する可能性はないので、MDDRは、非配向の注型フィルムとほぼ同じ状態のままであり、Y方向に沿った屈折率(ny)は、元の1.64から約1・61に僅かに小さくなる。したがって配向されたフィルムは、面内屈折率差nx−ny=約0.22を有する。フィルムの質量は保存されなければならないので、NDDR(T’/T)は小さくなり、フィルムの平面に垂直なz方向に沿った屈折率は、約1.51まで小さくなる(nz=1.51)。
【0020】
連続相及び分散相の屈折率が互いに直交する3軸のうちの2軸に沿って実質的に一致する(すなわち、差が約0.05より小さい)ように、また他の互いに直交する軸に沿って実質的に不一致である(差が約0.05より大きい)ように、第1及び第2ポリマーが選択されてもよい。そのため、一実施形態において、フィルム構造の第2(すなわち、非複屈折性)ポリマーは、垂線入射時に最小ブロック状態透過率及び最大パス状態透過率を提供するよう選択された屈折率を有する。第2ポリマーを選択するのに考慮すべき他の事項として、熱溶解安定性、溶解粘度、UV安定性、費用等が挙げられる。
【0021】
配向後、ny及びnz方向においてPEN等の複屈折材料の屈折率に十分一致する屈折率を有する市販のポリマー類はわずかしかない。PENが連続相として光学材料に使用される場合、他の相は、一実施形態において、適切なプロセス条件が図3〜4のテンタープロセスに与えられると、好ましくは、ポリスチレン(sPS)のようなシンジオタクチックビニル芳香族ポリマー類より選択される。
【0022】
フィルムが偏光子として使用されると、好ましくは、架橋断延伸面内方向に延伸され、多少の次元緩和を可能にすることによって該フィルムが配向される、その結果、連続相を作製する第1ポリマーと分散相を作製する第2ポリマー間の屈折率の差が材料の表面に平行な平面内の第1軸に沿って大きく、他の2つの直交する軸に沿って小さくなる。その結果、異なる配向の電磁放射線について光学異方性が大きくなる。
【0023】
図8は、偏光子のように光学装置の構成要素として使用するのに適切な多層フィルムを延伸するための既知のバッチ技法22を示した図である。初期フィルム24は、矢印26が示す方向に一軸延伸される。中心部分28が狭まり、延伸プロセス後にはフィルム24’の2つの縁部30は平行ではなくなる。延伸されたフィルム24’のほとんどが光学構成要素としては使用不可能である。フィルム24の比較的小さな中心部28のみが、偏光子のような光学構成要素に使用するのに適している。
【0024】
同一人によって所有されている米国特許第6,936,209号、第6,949,212号、第6,939,499号、及び第6,916,440号は、本発明の代表的な実施形態を作製するのに適切なプロセス及び装置を記載しており、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、本発明の代表的な実施形態を作製するのに使用されてもよいプロセスとして、多層光学フィルムのような光学フィルムを延伸するための、真一軸延伸と呼ばれる連続プロセスが挙げられ、フィルムは、フィルムの第1面内軸(x方向)に沿って延伸されると同時にフィルムの第2面内軸(y又は機械方向(MD))及び厚さ(z又は垂直方向(ND))においてフィルムの収縮を可能する。該延伸処理は、フィルムの縁部分を把持して、フィルムの第2面内軸(y)及び厚さ方向(z)に実質的に同じ又は少なくとも類似した比例した寸法変化を生じるように広がる所定の経路に沿って該フィルムの縁部分を移動させることによって達成される。ある代表的な実施形態において、フィルムの縁部分は、ほぼ放物線状である末広がりの所定の経路に沿って移動させられる。
【0025】
実質的に真の一軸配向プロセスにおける配向後のnxは、従来のテンターにおけるものと実質的に同じで、nyはより小さくなるので、その結果得られるフィルムもまた従来のテンターによって延伸されたフィルムに比べると高い光学パワーを有することになる。例えば、nx=ny=nz=1.64であるPENのような複屈折性の第1ポリマーから成る注型フィルムから始まる、米国特許第6,936,209号、第6,949,212号、第6,939,499号、及び第6,916,440号に記載されているプロセスを用いた延伸によって得られた延伸フィルムはnx=1.88及びny=nz=1.57を有する。そのため、実質的に一軸延伸されたフィルムの面内光強度(nx−ny)は、従来のテンターで延伸された同一フィルムの0.22に比べ、0.31である。
【0026】
一軸配向プロセスではY方向に沿った複屈折性第1ポリマーの屈折率nyが従来のテンターのnyより小さくなるので、第1ポリマーに一致する屈折率をもたらして有効な偏光子を形成するよう、異なった高分子材料が実質的に一軸延伸されたフィルムの第2ポリマー用に選択されてもよい。さらに、実質的な一軸配向プロセスは、高い光学パワーをもたらすので、費用、環境安定性(例えば、UV安定性及び耐歪性等)、光学特性等のような他の重要なフィルム特性を最適化するのに正の複屈折材料にはより多種多様な材料選択が可能である。第2ポリマーの選択肢が広範囲であると、第1複屈折材料のTgより高いTgを有する材料の選択が可能になるので、改善された環境寸法安定性、耐クリープ性、及び耐歪性を提供する、第1材料のTgを上回る温度でフィルムを配向してもよい。
【0027】
再び図1〜2を参照すると、一実施形態において、代表的な実施形態は、複屈折性マトリックス又は連続相6及び不連続相又は分散相8を含む拡散反射型偏光フィルム4又は他の光学体である。一実施形態において、複屈折性連続相6と分散相8間の屈折率の差は、フィルム4の表面9に平行な平面内の第1軸に沿って大きく(すなわち、不一致である)、他の2つの直交軸に沿って小さい(すなわち、一致する)。他の代表的な実施形態において、分散相8は、複屈折性であってもよい。好ましくは、連続相6及び分散相8の屈折率は、フィルム4の表面9に平行な平面内の第1軸に沿って、少なくとも約0.07、又はより好ましくは少なくとも約0.1、及び最も好ましくは少なくとも約0.2だけ異なる。好ましくは、連続相6及び分散相8の屈折率は、一致する方向の各々において少なくとも約0.03、より好ましくは約0.02未満、及び最も好ましくは約0.01未満だけ異なる。
【0028】
連続相6又は分散相8の複屈折性は、典型的に少なくとも約0.05、好ましくは少なくとも約0.1、さらに好ましくは約0.15、及び最も好ましくは少なくとも約0.2である。
【0029】
特定軸に沿った屈折率の不一致には、該軸に沿って偏光された入射光が実質的に散乱する効果があり、その結果著しい反射量を生じる。対照的に、屈折率が一致する軸に沿って偏光された入射光は、より小さい散乱率を有して分光的に透過又は反射される。この効果は、種々の光学装置、特に低損失及び高消光比を有する高利得反射型偏光子を作製するのに使用することが可能である。広範囲の材料は、分散相及び連続相に利用可能であり、一貫した予測可能な高性能の光学体の提供において高度な調整を考慮している。
【0030】
連続/分散相用材料
本発明の光学体4内の連続相6又は分散相8として、光学体4が対象となる特定用途に応じて、多くの異なる材料を使用してもよい。そのような材料として、シリカ系ポリマー類のような無機材料、液晶のような有機材料、及びモノマー類、コポリマー類、グラフトポリマー類及びそれらの混合物又はブレンドを包含する高分子材料が挙げられる。所与の用途の材料の正確な選択は、特定軸に沿った連続相6及び分散相8の屈折率において得られる所望の一致及び不一致、並びに結果としての製品における所望の物理特性によって決定される。しかしながら、一実施形態において、連続相6の材料は、一般に、所望のスペクトル領域内で実質的に透過性であることを特徴とする。
【0031】
材料選択上のさらに考慮すべき事項は、ある代表的な実施形態において、結果としての製品が少なくとも2つの個別の相を含有するということである。このことは、互いに不混和である2つ以上の材料から光学材料を注型にすることによって達成されてもよい。あるいは、互いに不混和ではない第1及び第2材料を備えた光学材料を作製するのが所望の場合、また第1材料が第2材料より高い融点を有する場合、第1材料の融点より低い温度で、第2材料の溶融したマトリックス内に第1材料から成る適切な寸法の粒子を埋め込むことが、場合によっては可能であってもよい。次に、その結果得られる混合物は、その後の配向の有無に拘らず、フィルム内に注型された光学装置を製造することが可能である。
【0032】
複屈折相として使用するのに適切な高分子材料として、正の複屈折性を有する材料、詳細には複屈折性ポリエステル、及びさらに詳細にはナフタレンカルボキシレート官能性を有する複屈折性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。連続相6に適切な材料(ある構造おいて分散相8内に使用されてもよい)は、イソフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ジ安息香酸、テレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び(4,4’ ビベンゾイック酸を包含する)ビベンゾイック酸のようなカルボン酸系モノマー類から成る非晶質、半晶質、又は結晶質の高分子材料、若しくは上述の酸(すなわち、ジメチルテレフタレート)に相当するするエステル類から成る材料であってもよい。
【0033】
これらのうち、2,6−ポリエチレンナフタレート(PEN)、PENのコポリマー類及びポリエチレンテレフタレート(PEN)、PET、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート、及び他の結晶質のナフタレンジカルボキシルポリエステル類が特に適している。PEN及びPETは、それらの歪誘起による複屈折のため、また延伸後、永久的に複屈折性を維持するそれらの能力のため、特に適している。PENは、約1.64から高くても約1.9までの延伸の軸に対して偏光平面が平行である場合、該延伸軸に垂直に偏光された光線の屈折率は低下するが、延伸後増加する550nmの波長の偏光入射光の屈折率を有する。PENは、可視スペクトルにおいて複屈折性が0.25〜0.40を示す(この場合、延伸方向に沿った屈折率と延伸方向に垂直な屈折率の差である)。該複屈折性は、分子配向を向上することによって高めることが可能である。PENは、フィルム製造中に用いられる処理条件に応じて、約155℃〜約230℃まで実質的に熱安定であってもよい。
【0034】
先に言及したように、連続相及び分散相が3つの互いに直交する軸のうちの2つに沿って実質的に一致し(すなわち、差が約0.05より小さく)、他の互いに直交する軸に沿って実質的に不一致になる(つまり差が約0.05より大きい)よう、第1及び第2ポリマーが選択される。したがって、一実施形態において、フィルム構造内の第2(つまり、非複屈折性)ポリマーは、垂線入射時に最小ブロック状態透過率及び最大パス状態透過率を提供するよう選択される屈折率を有する。第2ポリマーを選択するために考慮すべき他の事項として、熱溶解安定性、溶解粘度、UV安定性、費用等が挙げられる。一実施例において、PENが本発明の一軸延伸された光学材料内において一相として使用される場合、他方の相は、約1.53〜約1.59、好ましくは約1.56〜約1.58、及びより好ましくは約1.57の屈折率を有する実質的に非複屈折性の熱可塑性高分子材料より選択される。
【0035】
フィルム構造内の第2ポリマーに適切な材料として、第1高分子材料に適切な水準の複屈折を発生させるのに用いられる条件下で配向されると実質的に正ではない複屈折性となる材料が挙げられる。適切な例として、ポリカーボネート類(PC)及びコポリマーボネート類、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレートコポリマー類(PS−PMMA)、例えば、商品名「MS600」(アクリレート含有率50%)として京都市の三洋化成工業より入手可能な材料、「NAS21」(アクリレート含有率20%)及び「NAS30」(アクリレート含有率30%)としてペンシルバニア州ムーンタウンシップのノバケミカル(Nova Chemical)より入手可能な材料のようなPS−PMMA−アクリレートコポリマー類、例えば、商品名「DYLARK」としてノバケミカルより入手可能な材料のようなポリスチレン無水マレイン酸コポリマー類、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びABS−PMMA、ポリウレタン類、ポリアミド類、詳細には、ナイロン6、ナイロン6,6及びナイロン6,10のような脂肪族ポリアミド類、ミシガン州ミッドランドのダウケミカルより入手可能な「TYRIL」のようなスチレン−アクリロニトリルポリマー類(SAN)、及び例えば商品名「Makroblend」としてバイエルプラスチックス(Bayer Plastics)より入手可能なポリエステル/ポリカーボネート混合物、商品名「Xylex」としてGEプラスチックス(GE Plastics)より入手可能なポリエステル/ポリカーボネート混合物、商品名「SA100」及び「SA115」としてイーストマンケミカル(Eastman Chemical)より入手可能な材料のようなポリカーボネート/ポリエステル混合樹脂、並びに、例えばcoPET及びcoPENを包含する脂肪族コポリエステル類、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリクロロピレンの材料のようなポリエステル類が挙げられる。
【0036】
さらに、これらのポリマー類の分子量に関しては特に制限はないが、重量平均分子量は、8,000より大きく1,000,000未満、より好ましくは10,000より大きく800,000未満である。
【0037】
分散相の体積分率
分散相の体積分率もまた本発明の光学体における光線の散乱に影響を与える。ある制限内で、分散相の体積分率を上げると、偏光の一致方向及び不一致方向の両方で光学体に入射後、光線が受ける拡散量が増すことになる。この要因は、所与の用途の反射及び透過特性を制御するのに重要である。
【0038】
分散相の所望の体積分率は、連続相及び分散相用材料の特定の選択を包含する多くの要因に依存する。但し、典型的には、分散相の体積分率は、体積を単位にして連続相に対し少なくとも約1%、より好ましくは約5〜約50%の範囲内、及び最も好ましくは約25〜約45%の範囲内である。尚、他の代表的な実施形態において、分散相の体積分率は、光学フィルムの特定材料及び所望の特性に応じて異なってもよい。
【0039】
共連続相(co-continous phase)
ほぼ粘度が等価なハイポリマーの二元ブレンドの体積分率が約40%より大きく50%に近い場合、分散相と連続相との間の区別は、各相が空間的に連続的になるので、困難になる。また、選択材料に応じて、第1相が第2相内で分散されるように及び逆もまた同様に出現する領域があってもよい。種々の共連続的な形態に関する説明、及びそれらの評価、分析、特徴付ける方法については、スパーリング(Sperling)及びその中に引用されている参考文献(「ポリマー科学技術百科事典」第2版、第9巻、760〜788頁、L.H.スパーリング(Sperling)著"ミクロ相構造(Microphase Structure)"、及びD.クレンプナー(Klempner)、L.H.スパーリング及びL.A.ユトラッキ(Utracki)編「化学の進歩シリーズ(Advances in Chemistry Series)」#239、3〜38頁(1994年)、L.H.スパーリング著「相互浸入高分子網状組織(Interpenetrating Polymer Networks)」の第1章"相互浸入高分子網状組織:概要(Interpenetrating Polymer Networks: An Overview)")を参照されたい。
【0040】
共連続相を有する材料は、本発明に従って多くの異なる方法により作製されてもよい。したがって、例えば、共連続系(co-continous system)を実現するのに、ポリマー第1相材料がポリマー第2相材料と機械的にブレンドされてもよい。ブレンドすることによって実現される共連続的な形態の例は、例えば、プラスチック工学会の1995年次技術会議ANTEC、第53巻、No.2、2001〜2009頁に掲載、D.ブリー(Bourry)及びB.D.ファブス(Favis)の「HDPE/PSブレンドの共連続性と位相反転:界面変性の役割(Co-Continuity and Phase Inversion in HDPE/PS Blends: The Role of Interfacial Modification)」(ポリスチレン/ポリエチレンブレンド)、及びポリマー、第37巻、No.21、4723〜4728頁(1996)に掲載、A.ルクレア(Leclair)及びB.D.ファブス(Favis)の「不混和性二成分ポリマーブレンドの役割とその機械的特性に与える影響(The role of interfacial contact in immiscible binary polymer blends and its influence on mechanical properties)」(ポリカーボネート/ポリエチレンブレンド)に記載されている。
【0041】
例えば、PEN及びPCが70:30〜55:45の範囲の比で押出混合される場合、共連続相が形成されて、示差走査熱量計(DSC)によって測定(下記例2参照)すると単一のガラス転移温度を示すのに十分にエステル転移化される。通常、ブレンドの非複屈折性成分のTgは、複屈折性成分のTgより低く、非複屈折性成分のTgは、フィルムを処理及びフィルムの最終用途に対する制限要因となる。しかしながら、PC/PENブレンドにおいて、ブレンド中の非複屈折性成分PCは、複屈折性成分PENのTgよりさらに高いTgを有する。このことは、クリープ及び歪みに対してより耐性のあるより高い弾性率をフィルムに与え、この高い寸法安定性によって、広範囲の最終使用用途に適したフィルムに作製する。PENをPETと合わせたコポリマーもまた、このブレンドに使用してよい。
【0042】
また、共連続相は、本発明に従い、まず米国特許第4,281,084号にポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)のブレンドのために開示された発明のように、超臨界流体抽出からそれら(材料)を溶解させ、次に、プラスチック工学会の年次技術会議ANTEC1995、第53巻、No.2、1572〜1579頁に掲載、「ポリスチレンポリエチレンブレンドの形態安定性」において、N.メキレフ(Mekhilef)、B.D.ファブス(Favis)及びP.J.カロー(Carreua)が記載しているように、それらを熱暴露及び/又は機械剪断を行った後で相分離を可能にすることによって、形成されてもよい。
【0043】
さらなる本発明による共連続相を製造方法は、相互浸入高分子網状組織(IPN)の生成によるものである。いくつかのより重要なIPNとして、同時IPN、逐次IPN、勾配IPN、ラテックスIPN、熱可塑性IPNs、及びセミIPNが挙げられる。これら及び他の種類のIPN、それらの物理特性(例、相平衡状態図)、及びそれらの調製及び特性評価の方法は、例えば、「先端技術のためのポリマー」第7巻、No.4、197〜208頁(1996年4月)、L.H.スパーリング(Sperling)及びV.ミシュラ(Mishra)の「相互浸入高分子網状組織の現状(Current Status of Interpenetrating Polymer Networks)」、及びD.クレンプナー(Klempner)、L.H.スパーリング及びL.A.ユトラッキ(Utracki)編「化学の進歩(Advances in Chemistry Series)」#239、3〜38頁(1994年)、L.H.スパーリング著「相互浸入高分子網状組織(Interpenetrating Polymer Networks)」の"相互浸入高分子網状組織:概要(Interpenetrating Polymer Networks: An Overview)")に記載されている。これらの系を調製するための主要な方法のいくつかを以下にまとめる。
【0044】
同時IPNは、2つ以上のポリマーネットワークのそれぞれのモノマー類又はプレポリマー類に架橋剤類及び活性剤類を一緒に混合することによって作製されてもよい。次に、それぞれのモノマー類又はプレポリマーは、同時ではあるが非干渉的方法で反応させる。したがって、例えば、一方の反応が連鎖重合反応速度を手段として進行させられ、他方の反応が逐次重合反応速度によって進行させられてもよい。
【0045】
逐次IPNは、まず、初期ポリマーネットワークを形成することによって作製される。次に、1つ以上の追加ネットワークのモノマー類、架橋剤類、及び活性化剤類を初期ポリマーネットワーク内で膨張させて、それらがその状態で反応して追加ポリマーネットワークを生成する。
【0046】
勾配IPNは、IPNの組成物全体又は架橋密度が巨視的に材料内である位置から別の位置へ変化するような方法で、合成される。このような系は、例えば、フィルム内部全体にわたって組成物に勾配を持たせて、フィルムの一方の表面上に主として第1ポリマーネットワークを、フィルムの他方の表面上に主として第2ポリマーネットワークを形成することによって作製されてもよい。
【0047】
ラテックスIPNは、ラテックスの形で(例えば、コア及びシェル構造を有する)作製される。いくつかの変形においては、2つ以上のラテックスが混合されてフィルムに形成され、ポリマーを架橋してもよい。
【0048】
熱可塑性IPNは、化学的架橋の代わりに物理的架橋を含むポリマーブレンドとIPN間のハイブリッドである。結果として、これらの材料は、高温では熱可塑性エラストマーの方法と同様な方法で、で流動状態になり、通常使用温度では架橋状態になり、IPNとして作用する。
【0049】
セミ−IPNは、ポリマーのうちの1つ以上が架橋され、またポリマーのうちの1つ以上が直鎖状又は分枝鎖状である2つ以上のポリマーから成る組成物である。
【0050】
先に示したように、共連続性は、二成分系内と同様に多成分系内で実現することが可能である。例えば、所望の光学特性(例えば、透過率及び反射率)及び/又は改善された物理特性を与えるのに3つ以上の材料を組み合わせて使用してもよい。全ての構成成分が不混和性であってもよく、あるいは2つ以上の成分が混和性を示してもよい。共連続性を示す多くの三成分系は、例えば、L.H.スパーリング及びL.A.ユトラッキ(Utracki)編「化学の進歩(Advances in Chemistry Series)」#239、3〜38頁(1994年)、L.H.スパーリング著「相互浸入高分子網状組織(Interpenetrating Polymer Networks)」の第1章「相互浸入高分子網状組織:概要(Interpenetrating Polymer Networks: An Overview)」に記載されている。
【0051】
相構造の特性サイズ、共連続性が観察されてもよい体積分率の範囲、及び形態の安定性は何れも、相溶剤、グラフト又はブロックコポリマーのような添加剤、若しくは無水マレイン酸又はグリシジルメタクリレートなどの反応成分によって影響されてもよい。このような効果は、ポリスチレン及びポリ(エチレンテレフタレート)のブレンドについて、例えば、プラスチック工学会の1995年次技術会議ANTEC、第53巻、No.2、1858〜1865頁に掲載、H.Y.ツァイ(Tsai)及びK.ミン(Min)の「官能化されたポリスチレンおよびポリエチレンテレフタレートの反応ブレンド(Reactive Blends of Functionalized Polystyrene and Polyethylene Terephthalate)」に記載されている。さらに、特定の系については、相平衡状態図が通常の実験によって作成され、本発明による共連続系を製造するのに用いられてもよい。
【0052】
本発明により作製される共連続系の微視的な構造は、調製方法、相の混和性、添加剤の存在、及び当該技術分野において既知である他の要因に応じて、著しく変化可能である。したがって、例えば、共連続系における相のうちの1つ以上が、繊維が不規則な配向又は共通の軸に沿った配向状態の一方である微細繊維(例えば、図9参照)であってもよい。他の共連続系は、第1相から成る開放セル型マトリックスを含んでもよく、このとき第2相は、該マトリックスのセル内に共連続的な方法で配置された状態である。これらの系内の相は、単一軸に、2軸に、又は3軸に沿った共連続であってもよい。
【0053】
当然個別ポリマーの特性及びそれらが結合される方法によっては、本発明により作製され、共連続相(特にIPN)を有する光学体は、幾つかの例において、単一の連続相のみで作製される類似の光学体の比べ有利な特性を有する。したがって、例えば、本発明の共連続系は、構造的に異種ポリマーの化学的及び物理的結合を可能にし、それによって光学体の特性が特定のニーズを満たすよう改造されてもよい便利な手段を提供する。さらに、共連続系は、頻繁により処理し易くして、かつ、耐候性、低可燃性、より優れた耐衝撃性及び引っ張り強度、向上した可撓性、及び優れた耐化学性などの特性を付与してもよい。IPNは、典型的に溶媒内で膨張し(しかし、溶解はしない)、相似の非IPN系に比べて低減されたクリープ及び流量を示すのである用途において特に有利である(例えば、ポリマー科学技術百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)第2版、第8巻、278〜341頁、D.クレンプナー(Klempner)及びL.バーコウスキ(Berkowski)の「相互浸入高分子網状組織(Interpenetrating Polymer Networks)」を参照)。
【0054】
当業者であれば、本明細書に示されている教示の観点から、既知である共連続系の原理が特有の光学特性を有する共連続形態を製造するのに適用されてもよいことを理解するであろう。したがって、例えば、既知の共連続形態の屈折率は、本発明により新たな光学フィルムを製造するのに、本明細書に教示されているように操作されてもよい。同様に、本明細書で教示されている原理は、共連続形態を製造するのに、既知の光学システムに適用されてもよい。
【0055】
分散相のサイズ
分散相のサイズもまた、拡散に対して著しい効果を有する。分散相粒子が小さすぎる(つまり、重要な媒質において光の波長の約1/30未満である)場合、また波長の3乗あたり多くの粒子がある場合、光学体は、任意の所与の軸に沿って2つの相間に幾分有効な屈折率を備えた媒質として作用する。このような場合、ほとんど光が拡散されない。粒子が大きすぎる場合、光は、他の方向にはほとんど拡散されない状態で、粒子表面から正反射される。粒子が少なくとも2つの直交する方向において大きすぎるときは、望ましくない虹彩効果が生じる可能性もある。また、光学体の厚さがより厚くなり、所望の機械特性が満足される状態で、粒子が大きくなるとき、実際的な限界に到達している可能性がある。
【0056】
整列後の分散相の粒子の寸法は、光学材料の所望の使用に応じて変化可能である。したがって、例えば、粒子の寸法は、可視光線、紫外線、赤外線、及びマイクロ波放射線を反射又は透過させるのに必要な寸法が異なる特定の用途において、対象となる電磁放射線の波長に応じて変化可能である。一実施形態において、粒子の長さは、媒質において対象とする電磁放射線の波長を30で除算した値をほぼ超えるようにするのがよい。
【0057】
好ましくは、光学体が低損失反射型偏光子として使用される用途では、粒子は、対象となる波長範囲に渡って電磁放射線波長の約2倍を超え、好ましくは該波長の4倍を超える長さを有する。粒子の平均直径は、好ましくは、対象となる波長範囲に渡って電磁放射線の波長より小さく、また好ましくは所望の波長の0.5(倍)未満である。分散相の寸法は、ほとんどの用途において二次的な考慮事項であるが、比較的ほとんど拡散反射がない薄膜用途においてより重要になる。
【0058】
分散相の形状
屈折率の不適合が、本発明のフィルムのいくつかの実施形態において散乱を促進する根拠となる支配要因であるが(つまり、本発明により作製された拡散偏光子では、1つの軸に沿った連続相と分散相の屈折率は実質的な不一致である)、分散相の粒子の形状は、散乱に対して二次的な効果を有することが可能である。したがって、屈折率の一致及び不一致の方向における電界に対する粒子の偏光解消度は、所与の方向における散乱量を減少又は増大させることが可能である。例えば、分散相が、配向軸に垂直な平面に沿った断面において楕円形であるとき、分散相の楕円形の断面形状が後方散乱光及び前方散乱光の非対称拡散の一因となる。この効果は、屈折率の不一致による散乱量に加える又は散乱量から減ずることが可能であるが、一般に、本発明の特性の好適な範囲では散乱に対しわずかな影響しかない。
【0059】
また、分散相の粒子形状は、粒子から散乱された光線の拡散度を左右することが可能である。こうした形状効果は、一般に小さいが、光線の入射方向に垂直な平面にある粒子の幾何学的な断面のアスペクト比(縦横比)が大きくなり、かつ粒子が相対的に大きくなるに従って、大きくなる。一般に、本発明の実施において、分散相の粒子は、正反射より拡散反射が好ましい場合、1つ又は2つの互いに直交する面における光線の幾つかの波長より小さくするのがよい。
【0060】
低損失反射型偏光子の一実施形態は、配向の結果として、散乱強度を高めることによって配向方向に平行に偏光するための反射を向上させ、かつ配向方向に垂直な偏光に相対的な偏光のために分散を向上させることが可能な高いアスペクト比を有する、一連の棒状構造として連続相内に配置された分散相から成る。しかしながら、図10(a〜e)に示されるように、分散相8は、配向方向31に対して多くの異なる形状及び配置提供してもよい。したがって、分散相8は、例えば、図10(a〜c)のようにディスクまたは細長いディスク形状、図10(d〜e)のように棒形状、又は球形状に近似していてもよい。分散相8がほぼ楕円形(円形を含む)、多角形、変則的な形状、又はこれら形状のうちの1つ以上の組み合わせである断面を有する、他の実施形態が考えられる。また、分散相8の粒子の断面形状及びサイズが、ある粒子から別の粒子へ、フィルム4のある領域からと別の領域へ(つまり、表面からコアへ)変化してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、分散相8は、芯部及び外殻部は、同一又は異なる材料から作製される、若しくは、芯部は中空である、芯部及び外殻構造を有してもよい。したがって、例えば、分散相8は、等しい又はランダムな長さの、及び均一又は不均一な断面の中空繊維から成るのもよい。繊維の内部空間は、空洞であっても、若しくは固体、液体、又はガス、あるいは、有機物又は無機物である適切な媒質によって占有されてもよい。媒質の屈折率は、分散相8及び連続相6の屈折率を考慮して、所望の光学効果(つまり、所与の軸に沿った反射又は偏光)を達成するように選択されてもよい。
【0062】
分散相の寸法合わせ
寸法合わせもまた、分散相の散乱の挙動に影響することが分かっている。特に、本発明により作製された光学体において、整列させられた散乱体は、ランダムに配列された散乱体のようには、正透過又は正反射方向を中心に光線を対称的に散乱しないことが確認された。特に、棒の形状に類似させるために配向によって細長くされた含有物は、主に配向方向を中心とする円錐の表面に沿って(又は表面付近に)、かつ正透過方向に沿って光線を散乱する。この結果、正反射方向及び正透過方向を中心に散乱光の異方性分布を生じてもよい。例えば、配向方向に垂直な方向に細長くされたこのような棒状の入射光の場合、散乱光は、正方向から離れる方向に角度を増すにつれて強度が減少する、ある光帯として配向方向に垂直な平面内に現れる。含有物の幾何学的形状を調整することによって、散乱光の分布に対するある水準の制御が透過半球体及び反射半球体の両方で実現することが可能である。
【0063】
分散相の寸法
光学体が低損失反射型偏光子として使用される用途において、分散相8の構造は、好ましくは、高いアスペクト比を有する、つまり、該構造は、一寸法において任意のほかの寸法より実質的に大きい。アスペクト比は、好ましくは、少なくとも2、及びより好ましくは少なくとも5である。最大寸法(つまり長さ)は、好ましくは、対象となる波長範囲に渡って電磁放射線の波長の少なくとも2倍、及びさらに好ましくは望ましい波長の少なくとも4倍である。他方、好ましくは、分散相構造のより小さな(つまり断面)寸法は、対象となる波長以下、及びより好ましくは対象となる波長の0.5倍未満である。
【0064】
光学体の厚さ
光学体の厚さ4もまた、本発明の反射及び透過特性に影響を与えるよう操作可能な重要なパラメータである。光学体4の厚さが増すに従って、拡散反射もまた増大し、透過は正及び拡散のどちらも減少する。したがって光学体4の厚さは、典型的に完成製品の所望の機械強度を達成するように選択される一方、反射及び透過特性を直接制御するのにも使用することが可能である。
【0065】
スペクトルの領域
本発明は、本明細書において頻繁にスペクトルの可視領域を基準にして記載されているが、本発明の多様な実施形態は、光学体4の構成成分の適切なスケーリングによって他の電磁放射腺の波長と共に使用するのに適している。したがって、波長が増大するに従って、光学体4の構成成分の直鎖のサイズは、これら構成成分の寸法が波長単位で測定してほぼ一定のままであるように、増大されてもよい。
【0066】
波長を変化させる主要な効果の1つは、対象となるほとんどの材料について屈折率及び吸収係数が変化する点にある。しかしながら、屈折率の一致及び不一致の原理はなおも対象となる各波長において適用され、またスペクトラムの特定領域に渡って動作する光学装置用の材料を選択する際に利用されてもよい。したがって、例えば、寸法を適切にスケーリングすることは、スペクトラムの赤外線、紫外線近傍、及び紫外線領域での動作を可能にする。これらの場合、屈折率は、これらの動作波長における値を指し、光学体の厚さおよび分散相の拡散成分のサイズもまた、波長に合わせて適切にスケーリングされるのがよい。高周波数、超高域周波数、マイクロ波周波数、ミリ波周波数を含む、さらに多くの電磁スペクトラムが使用可能である。偏光及び拡散効果は、波長の適切なスケーリングと共に存在し、屈折率は、(実部と虚部とを含む)誘電体関数の平方根から得ることが可能である。これらのより長い波長帯域において有用な製品として、拡散反射型偏光子及び部分偏光子が挙げられる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態において、光学体の光学特性は、対象となる波長帯域全体で変化する。これらの実施形態において、材料は、屈折率が1つ以上の軸に沿ってある波長領域から別の波長領域に変化する連続相及び/又は分散相用に利用されてもよい。連続相及び分散相の材料選択、及び特定の材料選択に起因する光学特性(つまり、拡散及び分散反射又は正透過)は、対象となる波長帯域に依存する。
【0068】
微小空洞加工
いくつかの実施形態において、連続相及び分散相の材料は、フィルムが配向されると2つの相間の境界面が結果として空洞になるほど十分に弱くなるように選択されてもよい。この空洞の平均寸法は、処理パラメータ及び延伸比を注意深く操作することによって、又は相溶剤の選択的使用によって制御されてもよい。空洞は、完成した製品において、液体、ガス、又は固体を用いて埋め戻されてもよい。空洞化することは、アスペクト比及び分散相及び連続相の屈折率と共に、生成された結果としてのフィルムにおいて所望の光学特性をもたらすために使用されてもよい。
【0069】
3相以上の相
本発明により作製された光学体4はまた、2つの相6、8より多い相から成るのであってもよい。したがって、例えば、本発明により作製された光学材料は、連続相6内において2つの異なる分散相8から成ることが可能である。第2分散相8は、連続相6全体に渡ってランダム又は非ランダムに分散されてもよく、ランダムに整列することも、共通の軸にそって整列することも可能である。
【0070】
また、本発明により作製された光学体4は、2つ以上の連続相6から成るのもよい。したがって、いくつかの実施形態において、光学体4は、第1連続相6及び分散相8に加えて、第1連続相6と少なくともある寸法において共連続性である第2相6を含んでもよい。一特定の実施形態において、第2連続相6は、第1連続相6と同一広がりをもつ多孔質のスポンジ状の材料である(つまり、水が濡れたスポンジ内網状組織の流路を経由して広がるように、第1連続相6は、網状組織の流路を経由して広がり、あるいは、空間部分は第2連続相6を経由して広がる)。ある関連した実施形態において、第2連続相6は、第1連続相6と少なくとも1つの寸法において同一の広がりをもつ樹枝状構造の形態である。
【0071】
添加剤
本発明の光学材料もまた、当該技術分野において既知である他の材料又は添加剤を含んでもよい。このような材料として、顔料、染料、結合剤、コーティング、充填剤、相溶剤、酸化防止剤(立体障害フェノールを含む)、界面活性剤、抗菌剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、滑沢剤、強化剤、光安定剤(UV安定剤又は遮断剤を含む)、熱安定剤、衝撃変性剤、可塑剤、粘性変性剤、及びほかの類似材料が挙げられる。さらに、本発明により作製されたフィルム及び光学装置は、装置を表皮剥離、衝撃、又は他の損傷から保護するのに役に立つ、若しくは装置の処理可能性又は耐久性を高める1つ以上の外側層を含んでもよい。
【0072】
本発明に使用するのに適切な滑沢剤として、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸銅、ステアリン酸コバルト、ネオドカン酸モリブデン、及びアセチルアセトン酸ルテニウム(III)が挙げられる。
【0073】
本発明に有用な酸化防止剤として、例えば、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビスー(4−メチルー6−t−t−ブチルーブチルフェノール)、オクタデシルオクタデシル−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジ亜リン酸塩、ビス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジフォスファイト、Irganox1093(1979)(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)−ジオクタデシルエステルホスホン酸、Irganox1098(N,N'−1,6−ヘキサンエジルビス(hexanediylbis)(3,5−ビス(1,1−ジメチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパンアミド、Naugaard445(アリルアミン)、IrganoxL57(アルキル化ジフェニルアミン)、IrganoxL115(ビスフェノールを含む硫黄)、IrganoxLO6(アルキル化フェニル−デルタ−ナフチルアミン)、Ethanox398(フルオロホスホナイト(fluorophosphonite))、及び2,2'エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスホナイト(fluorophosnite)が挙げられる。
【0074】
特に好適な類酸化防止剤群は、立体障害フェノール類であって、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ビタミンE(ジ−アルファトコフェロール)、Irganox1425WL(カルシウムビス−(O−エチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル))ホスホネート)、Irganox1010(テトラキス(メチレン(3,5,ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン)、Irganox1076(オクタデシル3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、Ethanox702(ヒンダードビスフェノールの)、Ethanox330(高分子量ヒンダードフェノールの)、及びEthanox730(ヒンダードフェノールのアミン)が挙げられる。
【0075】
二色性染料は、材料内で分子整列されると特定の偏光を吸収する能力があるため、特に、本発明の光学材料が対象となるいくつかの用途において有用な添加剤である。主として一偏光のみを散乱するフィルム又は他の材料に使用すると、二色性染料は、該材料に他の光を上回る一偏光を吸収させる。本発明に使用するのに好適な二色性染料として、例えば、コンゴレッド(ナトリウムジフェニル−ビス−α−ナフチルアミンスルホン酸)、メチレンブルー、スチルベン染料(カラーインデックス(CI)=620)、及び1,1’−ジエチル−2,’−シアニンクロライド(CI=374(橙色)又はCI=518(青色))が挙げられる。これらの染料の特性及びそれらの作製方法は、E.H.ランド(Land)の「コロイド化学(Colloid Chemistry)」(1946)に記載されている。これらの染料は、ポリビニルアルコール中で顕著な二色性を、セルロース中でより少ない二色性を示す。PEN中では、コンゴレッドと合わせてわずかな二色性が観察される。
【0076】
これらの染料の特性、及びそれらの作製方法は、工業化学百科事典、第8巻、652〜661頁(1993年第4版)のカークオスマー(Kirk Othmer)、及びその中に引用されている参考文献に記載されている。
【0077】
二色性染料が本発明の光学体に使用されるとき、連続相又は分散相のいずれか、若しくは場合によっては連続相及び分散相の両方に組み込まれてもよい。ある代表的な実施形態において、二色性染料は、分散相8に混合される。他の代表的な実施形態においては、二色性染料材料又は別の吸収偏光材料が本発明による偏光フィルムの1つ以上の表面上に1つ以上の追加層として配向前に配置されてもよく、若しくは1つ以上の吸収偏光層が配向後に本発明の偏光フィルムに対して装着、例えば積層されてもよい。
【0078】
二色性染料は、あるポリマー系と組み合わせると、多様な水準に偏光させる能力を示す。ポリビニルアルコール及びある二色性染料は、偏光能力を備えたフィルムを作製するのに使用してもよい。テレフタル酸ポリエチレンのような他のポリマー又はナイロン−6のようなポリアミドは、二色性染料と組み合わせると、光線を偏光させるほど強い能力を示さない。ポリビニルアルコールと二色性染料の組み合わせは、例えば、他のフィルム形成ポリマー系中の同一染料より高い二色性比を有すると言われている。二色性比が高ければ、その分より高い偏光能力があることを示す。
【0079】
本発明により作製された光学体内部の二色性染料の分子整列は、一実施形態において、染料又は別の吸収偏光子材料が光学体に組み込まれた後、光学体を延伸することによって実現される。尚、他の方法もまた分子整列を実現するのに用いられてもよい。したがって、一方法において、光学体が延伸される前又は延伸された後、二色性染料が昇華によって又は溶液から結晶化されることによって、フィルム又は光学体の表面において切り取られ、エッチングされ、又は他の方法で形成された一連の細長い切欠き部になる。次に、処理された表面は、1つ以上の表面層を用いて塗布されても、ポリマーマトリックス内に組み込まれる又は多層構造に使用されてもよく、若しくは別の光学体の構成要素として利用されてもよい。切欠き部は、望ましい光学特性を実現するために、所定のパターンあるいは図に従って、また切欠き部同士間の所定の間隔量に従って作製されてもよい。
【0080】
ある関連した実施形態において、二色性染料は、光学体内において、1つ以上の中空繊維又は他の管路内に、中空繊維又は管路が光学体内に配置される前か配置された後に配置されてもよい。中空繊維又は管路は、光学体の周辺材料と同じ又は異なる材料から作製されてもよい。
【0081】
さらに別の実施形態において、二色性染料は、多層構造内へと組み入れられる前に、層の表面上へと昇華させることによって多層組織の界面層に沿って配置される。さらに他の実施形態において、二色性染料を使用して、本発明により作製された微小空洞フィルム内の空洞を少なくとも部分的に埋め戻す。
【0082】
染料又は顔料のような染色材料もまた、いくつかの偏光フィルムの色の視覚的知覚を調節するのに望みどおりに添加されてもよい。いくつかの代表的な実施形態において、追加の染色材料が色補償フィルムの外観を調節するのに使用されてもよい。さらに、分散相に使用可能なポリマーが広範囲に及ぶため、より似た分散曲線を有する材料の選択が可能になる。このことは、より広い範囲の波長に渡って屈折率を一致させるのを可能にするため、色がより中性である偏光子を提供してもよい。
【0083】
屈折率の一致/不一致の効果
ある代表的な実施形態において、連続相及び分散相のうち少なくとも一方は、配向すると屈折率に変化が生じる種類である。したがって、フィルムが1つ以上の方向に延伸されるに従って、屈折率の一致又は不一致は1つ以上の軸に沿って生じる。配向パラメータ及び他の処理条件を注意深く操作することによって、所与の軸に沿って1つ又は両方の偏光の拡散反射又は透過を誘起するのにマトリックスの正又は負の複屈折が使用可能である。透過と拡散反射の相対比は、分散相の含有物の濃度、フィルムの厚さ、連続相と分散相間の屈折率差の二乗、分散相の含有物のサイズ及び形状、並びに入射光の波長又は帯域に依存する。
【0084】
特定の軸に沿った屈折率の一致又は不一致の程度は、該軸に沿って偏光される光線の散乱量に直接影響を与える。一般に、散乱出力は、屈折率の不一致の二乗として変化する。したがって、特定の軸に沿った屈折率の不一致の程度が大きければ大きいほど、該軸に沿って偏光される光線の散乱は強くなる。逆に、特定の軸に沿った不一致が小さい場合、該軸に沿って偏光される光線はより小さな程度で散乱されて、それにより光学体の嵩を通って正透過される。
【0085】
図9A〜図9Bは1つまたは複数の集光器880を有する照明システム800の一実施形態を概略的に図示する。図11(a〜b)は、本発明により作製された配向フィルムにおけるこの効果を示す。ここで、典型的な双方向散乱分布関数(BSDF)を垂直入射光について632.8nmで測定した結果が示されている。BSDFについては、J.ストーバー(Stover)の「光学散乱測定及び分析」(1990)に記載されている。BSDFは、配向軸に垂直及び平行な光線を偏光するための散乱角の関数として表わされる。散乱角ゼロは、非散乱(分光透過)光線に該当する。図11(a)のように屈折率一致方向(つまり、配向方向に垂直)に光線を偏光した場合、拡散透過光(散乱角8〜80度)のかなり大きな成分、及び拡散反射光(散乱100度超過)のわずかな成分を備えた、有意な正透過ピークがある。図11(b)のように屈折率不一致方向(つまり、配向方向に平行)に光線を偏光した場合、ごくわずかな正透過光及び拡散透過光の大いに減少した成分、並びにかなり大きな拡散反射成分がある。これらのグラフによって示される拡散の平面が、これらの細長い含有物に対して拡散光のほとんどが存在する配向方向に垂直な平面であることに留意すべきである。この平面の外部での散乱光の影響は大いに減少される。
【0086】
含有物(つまり分散相)の屈折率がある軸に沿って連続ホスト媒質の屈折率に一致する場合、該軸に平行する電界によって偏光された入射光は、含有物のサイズ、形状、及び密度に関係なく、非散乱によって通過する。屈折率がある軸に沿って一致しない場合、含有物は該軸に沿って偏光された光線を散乱する。約λ/30より大きな寸法を有する所与の断面積の散乱体の場合(ここでλは、媒質における光線の波長を示す)、散乱強度は、屈折率の不一致によって殆ど決定される。不一致である含有物の正確なサイズ、形状及び整列は、該含有物から多様な方向へとどれだけ光が散乱されるかを決定するのに役割を果たす。散乱層の密度及び厚さが十分であれば、多層散乱理論により、入射光は、反射又は吸収されるが、散乱体のサイズ及び形状の細目に係わらず、透過されない。
【0087】
本発明の配向フィルムを作製する
本発明による偏光子に使用するために選択される材料、及びこれらの材料の配向程度は、完成した偏光子の相が、一実施形態においては、関連している屈折率が十分近くなる、また代表的な実施形態においては、実質的に等しくなる、少なくとも1つの軸を有するよう決められる。必ずというわけではないが、典型的に配向方向を横切る軸である、該軸に関連して屈折率が一致すると、偏光平面にほとんど又は実質的に全く光反射がない、若しくはそうした偏光を有する光の散乱が生じる結果となる。
【0088】
また、第1相は、延伸後の配向方向と関連している屈折率の減少を示す。第1又は第2相の複屈折が正の場合、負の歪みによって誘起される第2又は第1相の複屈折は、配向軸と関連のある隣接相同士の屈折率の差を増大させるという利点を有する一方、配向方向に垂直なその偏光平面による光の反射はなおも無視できるほど小さい。代表的な実施形態において、配向方向に直交する方向において隣接する相同士の屈折率の差は、配向後約0.05未満、及び好ましくは約0.02未満である。
【0089】
いくつかの代表的な実施形態において、分散相は、正の歪みによって誘起される複屈折を示す。尚、このことは、連続相の配向方向31に垂直な軸の屈折率に一致させる熱処理によって変更可能である。代表的な実施形態において、熱処理の温度は、それが複屈折性の連続相において複屈折性を緩和するほど高くはない。
【0090】
分散相の幾何学形状は、光学材料の配向などの処理によって;特定の幾何学形状を有する粒子を使用することによって;又はそれら2つを組み合わせることによって、実現されてもよい。したがって、例えば、実質的に棒状の構造を有する分散相は、ほぼ球状の分散相粒子から成るフィルムを単一軸に沿って延伸することによって生成することが可能である。棒状の構造は、第1方向に垂直な第2方向にフィルムを延伸することによってほぼ楕円形の断面が与えられることが可能である。さらなる例として、棒が断面においてほぼ矩形である実質的に棒状の構造を有する分散相が、一連の本質的に矩形フレークから成る分散相を有するフィルムを単一方向に延伸することによって生成することが可能である。
【0091】
延伸は、材料内で屈折率の差を誘発するのに使用可能なので、望ましい形状を得るための便利な方法である。先に示したように、本発明によるフィルムの配向は、2以上の方向であってもよく、また逐次であっても同時であってもよい。
【0092】
偏光フィルム及び光学体のような、本発明の光学体は、フィルムの表面に平行な平面で第1軸に沿って連続相と分散相との間の大きな屈折率差を、また他の2つの直交する軸に沿っては連続相と分散相との間の小さな屈折率差を提供するのに任意の処理によって作製されてもよい。
【0093】
図8に記載されたバッチプロセスが好適な特性を提供する場合もあるが、同一人によって所有されている米国特許第6,936,209号、第6,949,212号、第6,939,499号、及び第6,916,440号に記載されている、一軸又は実質的一軸配向プロセスと呼ばれるプロセスが特に適している。
【0094】
本発明のプロセスは、機械方向(MD)、横断方向(TD)、及び垂直方向(ND)に対応する3つの互いに直交する軸を基準に説明することが可能な、光学体の延伸工程を含んでもよい。これらの軸は、図12に示されている光学体32の幅、長さ、及び厚さに該当する。延伸プロセスでは、初期構成34から最終構成36まで光学体32を延伸する。機械方向(MD)は、フィルム32が延伸装置、例えば、図13に示されている装置を経由して移動する一般的な方向である。横断方向(TD)は、フィルム32の平面内にある第2軸であり、機械方向(MD)に直交する。垂直方向(ND)は、MD及びTDの両方に直交しており、ポリマーフィルム32の厚さの寸法に概ね該当する。
【0095】
図13は、本発明の延伸装置50及び方法の一実施形態を示す図である。光学体32を、任意の望ましい方法によって延伸装置50に対して提供することが可能である。例えば、光学体32は、ロール又は他の形態で生成されて、次いで延伸装置50に提供されることが可能である。別の例として、延伸装置50は、(例えば、光学体32が押出成形によって生成されて、押出成形後に延伸する準備ができている場合)押出成形機から、又は(例えば、光学体32がコーティングによって生成されるか、又は1つ以上のコーティングされた層を受け取った後に延伸する準備ができている場合)塗工機から、又は(例えば、光学体32がコーティングによって生成されるか、又は1つ以上のコーティングされた層を受け取った後に延伸する準備ができている場合)成層機から光学体32を受け取るように構成することが可能である。
【0096】
一般に、光学体32は、光学体32の対向する縁部を把持して所定の経路を規定する対向するトラック54に沿って光学体32を搬送するように構成されて配置される1つ以上の把持部材に対して領域52内で提供される。把持部材(図示せず)は、典型的には、光学体を光学体の縁部で又は縁部近傍で把持する。光学体32の把持部によって把持される部分は、しばしば、延伸後の使用には適さず、そのため、把持部材の部分の位置は、典型的には、プロセスによって生成される廃棄材料の量を制御しながら延伸することを可能にするように、フィルム32上の十分な把持部をもたらすように選択される。
【0097】
クリップ等の把持部材を、例えば、把持部材をチェーンに連結させた状態でチェーンをトラック54に沿って回転させるローラー56によって、トラック54に沿って送ることが可能である。ローラー56は、フィルム32が延伸装置50を通って搬送されるときにフィルム32の速度及び方向を制御するドライバ機構に連結される。ローラー56を使用して、ベルト型把持部材を回転させ且つ該把持部材の速度を制御することも可能である。
【0098】
装置50は、所望により、延伸に備えて光学体32を加熱する炉60又は他の装置若しくは配列によって典型的には囲まれた前調整領域58を含む。前調整領域58は、予熱領域62、加熱領域64、又はそれら両方を含むことが可能である。
【0099】
一実施形態において、光学体32は、主延伸領域66内で延伸される。典型的には、主延伸領域66内で、光学体32が、光学体32のポリマーのガラス転移温度を上回る加熱環境で加熱され又は維持される。主延伸領域66内で、把持部材は、概ね末広がりのトラック54に従って進み、所望の量だけ光学体32を延伸する。主延伸領域66及び該装置の他の領域内のトラック54は、多様な構造及び材料を用いて形成することが可能である。主延伸領域66の外部でトラック54は、典型的には、実質的に線形である。対向する線形トラック54は、平行であるか、若しくは先細り又は末広がりであるように配列することが可能である。主延伸領域66内でトラック54は、一般的に末広がりで、好ましくは曲線状であるか、若しくは曲線状のトラック形状に近付けた線形セグメントから形成される。
【0100】
延伸装置50の全ての領域において、トラック54を、任意に互いに連結される一連の線形又は曲線状のセグメントを用いて形成することが可能である。代替として、若しくは特定領域又は領域群において、トラック54を、単一の連続構造として形成することか可能である。少なくともいくつかの実施形態において、主延伸領域66のトラック54は、先行する領域52、58のトラック54に連結されるが、トラック54から分離可能である。いくつかの実施形態において、後続の後調整又は除去領域70、80のトラックは、典型的には主延伸領域66のトラック54から分離される。いくつかの実施形態において、トラックセグメントのうち1つ以上の位置、好ましくは全ての位置が調整可能である(例えば、軸を中心に回転可能である)ため、トラック54の全体形状は望ましければ調整することが可能である。連続したトラック54もまた領域の各一を通して使用可能である。このような代表的な実施形態において、トラックの全体形状もまた、所望の場合、主延伸領域にある各トラックに連結された1つ以上のトラック形状コントローラを用いて調整することが可能である。
【0101】
一実施例において、装置50は典型的に後調整領域70を含む。例えば、フィルム32は、領域72内でヒートセットされて領域50内で急冷されてもよい。いくつかの他の実施形態において、急冷処理は、延伸装置50外において実施される。
【0102】
いくつかの実施形態において、主延伸領域66中に光学体32の把持部材によって把持されていた部分は、除去される。一実施形態において、横断方向延伸が終了した時点で、一軸延伸履歴の実質的に全てに渡って実質的に一軸延伸を保持するよう、スリット処理部78で、急速末広がり縁部76が延伸された光学体68から分離される。切断部が位置78で作製され得て、バリ又は使用不能部分76が廃棄され得る。
【0103】
連続した把持機構からの耳部76の解放を連続して行うことは可能だが、テンタークリップのような個別の把持機構からの解放は、好ましくは、任意の所与のクリップ下にある材料全てが一度に開放されるように行われるのがよい。個別の解放機構は、応力上の、上流でウェブを延伸することにより感じることができる歪よりも大きな歪を生じさせる恐れがある。分離されている取り出し装置の動作を支援するため、一実施形態においては、例えば、耳部76を加熱された延伸フィルムの中心部から耳部76を「熱」スリット処理するように、装置内で連続耳部分離機構を使用するのが好ましい。
【0104】
一実施形態において、スリット処理位置78は、好ましくは「把持線」、例えば取り出しシステム150の把持部材による第1有効接触の分離されている取り出し地点に十分近くに配置されて、該地点の上流に生じる応力歪みを最小化若しくは低減する。フィルムが取り出しシステム150によって把持される前にスリット加工される場合、結果として、例えばフィルムのTDに沿った「スナップバック」によって不安定な取り出しが生じ得る。したがって、フィルムは、好ましくは把持線のところ又は把持線の下流でスリット加工される。スリット処理は、破断プロセスであり、そういうものとして典型的に空間配置において小さいながらも自然なバラツキを有する。したがって、把持線のわずか下流でスリット処理して、把持線の上流にスリット処理におけるいかなる時間的バラツキをも生じないようにしてもよい。フィルムが把持線より実質的に下流においてスリット処理される場合、取り出しと境界軌道との間のフィルムは、TDに沿って延伸され続けることになる。現時点でフィルムのこの部分が延びているので、境界軌道に対して増幅された延伸比で延び、例えば機械方向の張力が上流に伝播するという望ましくないレベルにまで、上流に伝播する恐れのある応力のさらなる歪みを生成する。
【0105】
スリット処理は、好ましくは、可変の最終横断延伸方向比又は取り出しシステムの位置の調整に対応する必要のある取り出し地点の変化に応じて変化できるように移動及び再配置可能である。この種のスリット処理システムの利点は、取り出しスリット処理位置78を単に移動させることによって延伸プロファイルを維持しながら、延伸比が調整可能であるという点である。多様なスリット処理技術が使用可能であり、例としてヒートレザー、ホットワイヤ、レーザ、強力な赤外線放射線の集束ビーム、又は加熱空気の集中ジェットが挙げられる。
【0106】
角度を成す取り出しシステム150を使用するいくつかの実施形態において、2つの対向するトラック152、154は、図25に示されているように、同じ又は実質的に似たTDDRを有するフィルム32を受け取るよう配置される(図中、点線160は同じTDDRにおけるフィルム32を示す)。他の実施形態において、2つの対向するトラック152、154は、図26に示されているように、TDDRが2つの対向するトラック152、154に対して異なるよう配置される(図26の点線160は、同じTDDRにおけるフィルム32を示す)。後者の構成は、フィルム32にフィルム32のTD寸法に渡って変化する特性を与える。
【0107】
図13に示されている装置は、後調整領域70を任意に含んでもよい。例えば、光学体32は、領域72内に設定されて領域74内で急冷されてもよい。取り出しシステムは、主延伸領域66から光学体32を取り去るのに使用されてもよい。取り出しシステムは、例えば、対向するベルト又はテンタークリップのセットのような把持部材を備えたトラックといった任意のフィルム搬送構造をも使用することが可能である。
【0108】
図14は、本発明による延伸装置のための取り出しシステム150の一実施形態を示した略図である。いくつかの実施形態において、TD収縮制御は、(平行なトラック156、158と比較して)互いに対して角度を成すトラック152、154を用いて達成することが可能である。例えば、取り出しシステム150のトラック152、154は、後調整領域70の少なくとも一部を経由して低速末広がり経路(一実施形態においては約5℃未満の角度を成す)に従って進み、冷却によってフィルム32のTD収縮を可能にするように配置することが可能である。θ他の実施形態において2つの対向するトラック152、154は、より広い角度がいくつかの実施形態で使用される場合もあるが、典型的に約3℃未満の角度で広がっていくことが可能である。このことは、主延伸領域66においてフィルム32のMD張力を高め、例えば、フィルム32に渡って屈折率の主軸が変動するといった特性の不均一性を低減するのに有用であり得る。
【0109】
いくつかの代表的な実施形態において、フィルムが主延伸領域66のトラック54によって搬送されるので、中心線の取り出しシステムは、フィルムの中心線に対して角度を成す。
【0110】
図15は、延伸装置のための角度を成す取り出しシステム150を示す略図である。角度を成す取り出しシステム150、主延伸領域66、又は両方は、フィルム32の主軸又は屈折率軸又は切断軸のような特性軸がフィルム32に対して角度を成すフィルムを提供するのに有用であり得る。いくつかの実施形態において、取り出しシステムが主延伸領域66に対して成す角度は、手動か、若しくはコンピュータ制御のドライバ又は他の制御機構又は両方を用いて機械的に調整可能である。
【0111】
図13の代表的なプロセスはまた、領域80内に除去部を含む。任意に、ローラー82は、フィルム32を前進させるのに使用されるが、該要素は省略されてもよい。一実施形態において、別の切断86が成され、不使用部分88が廃棄されてもよい。取り出しシステム150を離れるフィルム32は、典型的に後の使用のためロールに巻き取られる。別の実施形態において、取り出しの後、最終製品への直接変換が行われてもよい。
【0112】
図12に戻って参照すると、対向するトラックによって規定された経路は、MD、TD、及びND方向のフィルムの延伸に影響を与える。延伸変形は、1組の延伸比:機械方向延伸比(MDDR)、横断方向延伸比(TDDR)、及び垂直方向延伸比(NDDR)として表わすことが可能である。フィルムに対して決定するなら、特定の延伸比は、一般に所望方向(例えば、TD、MD、又はND)におけるフィルムの現サイズ(例えば、長さ、幅、又は厚さ)と、同方向における最初のサイズ(例えば、長さ、幅、又は厚さ)の比として定義される。延伸プロセス内の任意の所与の点において、TDDRは、境界軌道の現在の分離距離Lと、延伸開始時における境界軌道の最初の分離距離L0の比に相当する。換言すれば、TDDR=L/L0=λ。TDDRのいくつかの有用な値は、約1.5から約7以上を含む。TDDRの代表的な有用な値は、約2、4、5及び6を含む。TDDRの他の代表的な有用な値は、約4〜約20、約4〜約12、約4〜8及び約12〜約20の範囲にある。
【0113】
米国特許第6,939,499号、第6,916,440号、第6,949,212号、及び第6,936,209号において説明されるように、実質的一軸延伸条件は、材料密度は一定であると仮定すると、横断方向に寸法が増大するに従って、結果的にTDDR、MDDR、及びNDDRがそれぞれλ、(λ)-1/2、及び(λ)-1/2に近づく。完全に一軸配向されたフィルムは、延伸全体を通してMDDR=(NDDR)−1/=(TDDR)−1/2である。
【0114】
一軸特性の程度を表わす有用な尺度Uは、次のように定義することができる。
【0115】
【数1】

【0116】
完全一軸延伸の場合、Uは、延伸全体を通して1である。Uが1未満である場合、延伸条件は「半一軸(subuniaxial)」とみなされる。Uが1より大きい場合、延伸条件は「超一軸(super-uniaxial)」とみなされる。Uが1より大きい状態であることは、様々な程度で緩和が過剰であることを表わす。これらの緩和過剰状態は、境界縁部からMD圧縮を生じさせる。Uを密度の変化に対して補正して、次の式に従ってUfを与えることが可能である。
【0117】
【数2】

【0118】
尚、ρが延伸の現地点におけるフィルム材料密度であり、ρ0が延伸開始時におけるフィルム材料の最初の密度であるとき、ρf=ρ0/ρとなる。
【0119】
いくつかの代表的な実施形態において、フィルムは、図13に示されるように平面において延伸される(つまり、境界軌道及びトラックが同一平面内にある)が、非同一平面内の延伸軌道もまた、本発明の範囲内にある。面内境界軌道によって、完全一軸配向の一結果は、面内MD中心線から離れて広がっていく一対の鏡対称な面内放物線軌道である。
【0120】
一軸延伸は、中心点の速度が、対向する境界軌道上での対応する、対向する点同士の間で測定される瞬間TDDRの逆数の平方根の係数によってその最初の速度から中心トレースに沿って各点で減少する限り、延伸履歴全体に従って保持されてもよい。
【0121】
例えば、ポリマーフィルムの厚さが不均一である、延伸期間のポリマーフィルムの加熱が不均一である、及び例えば装置のダウンウェブ領域から付加的な張力(例えば、機械方向張力)が印加される等、様々な要因が一軸配向を実現する能力に影響を及ぼすことがある。しかしながら、多くの場合、完全一軸配向を達成することが必ずしも必要なわけではない。本発明のいくつかの代表的な実施例において、U>0の任意の値が有用である場合がある。したがって、最小又は閾値U値、若しくは延伸全体に渡って又は延伸の特定部分の間に維持される平均U値を定義することが可能である。例えば、いくつかの代表的な実施形態において、許容できる最小/閾値又は平均U値は、要望に応じて、又は特定用途の必要に応じて、0.2、0.5、0.7、0.75、0.9、0.85、0.9、又は0.95にすることが可能である。特定のU値が選ばれると、上述の式より、考慮すべき他の関連事項と組み合わせて、Uが1に近づくための放物線軌道を含むより広い部類の境界軌道を特定する、MDDRとTDDR間の特定関係が得られる。少なくとも延伸の最終部分において1を下回るU値を示す軌道は、本明細書において半放物線軌道(sub-parabolic trajectories)と呼ばれる。
【0122】
上述の軌道部類は、例示であって限定するものとして解釈されるべきではない。多くの軌道部類が本発明の範囲内にあるとみなされる。主延伸領域66は、異なる延伸条件を備えた2つ以上の異なる領域を含有することが可能である。例えば、第1部類の軌道から一軌道を、最初の延伸領域のために選択され、同第1部類の軌道から又は異なる部類の軌道から別の軌道を、続く延伸領域の各々のために選択することが可能である。
【0123】
本発明の代表的な実施形態は、最小U値>0を含む境界軌道を包含する。本発明は、約0.2、好ましくは約0.5、さらに好ましくは約0.7、さらに好ましくは約0.75、さらに好ましくは約0.8及びさらに好ましくは約0.85である最小U値を含む実質的一軸境界軌道を包含する。最小Uの制約は、好ましくは約2.5、さらに好ましくは約2.0、及びさらに好ましくは約1.5である臨界TDDRによって規定される延伸の最終部分に渡って適用されてもよい。いくつかの実施形態において、臨界TDDRは、約4.5以上であってもよい。臨界TDDRを上回ると、ある材料、例えば配向可能な複屈折性ポリエステルを含むあるモノリシックなフィルム及び多層フィルムは、例えば、歪みによって誘起される結晶化等の構造を成長させるので、それらの弾性又は回復能力を失いはじめる恐れがある。
【0124】
許容できる実質的一軸用途の例として、TDが主な単一軸延伸方向であるとき、反射型偏光子のオフ角特性がMD屈折率とND屈折率の差によって強く影響される。0.08というMDとNDの屈折率の差は、いくつかの用途において許容できる。他の用途においては、0.04の差が許容できる。さらに厳しい用途においては、0.02未満の差が好ましい。例えば、単一軸横断方向延伸フィルムの場合、633nmにおいて、0.02未満の、ポリエチレンナフタレート(PEN)又はPENのコポリマーを含有するポリエステル系におけるMD方向とND方向の屈折率の差をもたらすのに、0.85の一軸特性の程度は、多くの場合に十分である。ポリエチレンテレフタレート(PET)等のいくつかのポリエステル系の場合、非実質的一軸延伸フィルムの屈折率差がより小さくなるので、より低いU値0.80又はさらに0.75が許容できることがある。
【0125】
半一軸延伸の場合、真に一軸の特性の最終程度を用いて、次の式によって、y(MD)方向とz(ND)方向の屈折率が一致するレベルを推定することが可能である。
【0126】
Δnyz=Δnyz(U=0)x(1−U)
式中、Δnyzは、U値に対するMD方向(すなわちy方向)とND方向(すなわちz方向)の屈折率の差であり、Δnyz(U=0)は、MDDRが延伸全体を通して1であることを除いて全て同様に延伸されるフィルムの屈折率の差である。この関係は、多様な光学フィルムに使用されるポリエステル系(PEN、PET、及びPEN又はPETのコポリマーを含む)の場合に合理的に予測可能であることが分かっている。これらのポリエステル系では、Δnyz(U=0)は、典型的には、2つの面内方向MD(y軸)とTD(x軸)の屈折率の差である、差Δnxy(U=0)の約1/2以上である。Δnxy(U=0)の典型値は、633nmにおいて約0.26までである。Δnyz(U=0)の典型値は、633nmにおいて約0.15までである。例えば、90/10coPEN、すなわち約90%のPEN状繰り返しユニットと、10%のPET状繰り返しユニットとを含むコポリエステルは、633nmにおいて高延伸時典型値約0.14を有する。実際の延伸比によって測定されたU値0.75、0.88、及び0.97であり、対応するΔnyzの値が633nmにおいて0.02、0.01、及び0.003である、該90/10coPENを含むフィルムが、本発明の方法によって作製された。
【0127】
Uが延伸期間の終了時に半一軸であるとき、多様な他の境界軌道が利用可能である。特に、有用な境界軌道として、TDDRが少なくとも5であり、TDDRが2.5に達した後に延伸の最終部分に渡ってUが少なくとも0.7であり、また延伸の終了時にUが1未満である、同一平面内の軌道が挙げられる。他の有用な軌道として、TDDRが少なくとも7で、TDDRが2.5に達した後に延伸の最終部分に渡ってUが少なくとも0.7であり、また延伸の終了時にUが1未満である、同一平面内の及び非同一平面内の軌道が挙げられる。また有用な軌道として、TDDRが少なくとも6.5であり、TDDRが2.5に達した後に延伸の最終部分に渡ってUが少なくとも6.5であり、またUが延伸の終了時にUが1未満である、同一平面内の及び非同一平面内の軌道も挙げられる。有用な軌道として、TDDRが少なくとも6であり、TDDRが2.5に達した後に延伸の最終部分に渡ってUが少なくとも0.9であり、またUが延伸の終了時にUが1未満である、同一平面内の及び非同一平面内の軌道が挙げられる。また有用な軌道として、TDDRが少なくとも7であり、TDDRが2.5に達した後に延伸の最終部分に渡ってUが少なくとも0.85である、同一平面内の及び非同一平面内の軌道も挙げられる。
【0128】
一般に、本発明の光学体を形成して処理するために多様な方法が使用されてもよく、該方法は、押出ブレンド、共押出成形、フィルムの注型処理及び急冷処理、一軸及び二軸(平衡又は不均衡)延伸のような、積層及び配向を含んでもよい。上述のように、光学体は、多様な構成を帯びることが可能で、そのため最終光学体の構成及び望ましい特性によって方法は変わる。
【0129】
図12は、プロセスが「フィルムの第2面内軸及びフィルムの厚さ方向に実質的に比例した寸法変化を生じさせる」といわれるとき、この用途において意味するところを説明するのに役立つ。三次元要素34は、寸法T、W及びLを有するフィルムの未延伸部分(図12〜13参照)を表わしている。三次元要素36は、要素34が長さラムダだけ延伸された後の様子を表わしている。図12に示されているように、厚さ及び幅は、同じ比例した寸法変化によって減少された。図12は、例えば、図4に示されている非一軸延伸に対して、対向する一軸延伸を表わしている。
【0130】
上述のように、本発明は、完全な一軸延伸に限定されるものではない。代わりに、本発明は、「実質的に」一軸延伸された又は一軸延伸にある程度まで近付けたプロセス、装置及びフィルムを含む。本発明の範囲内にあるものを定義するため以下の解説及び考察を提供する。
【0131】
(複数の層を含むフィルムは、それ自体、フィルム合成物の積層された性質があるので、繊維対称性を有さなくてもよいので)「実質的」に一軸延伸されたフィルムは、好ましくは、MD及びNDにおける特性が所与の材料層内において類似の繊維対称性を有する。繊維対称性は、延伸比のうちの2つが等しい場合、弾性材中に存在してもよい。方向のうちの1つ、例えばTD、が延伸されると、残りの2つの方向、例えばMD及びND、は好ましくは等しい延伸比を有する。体積保存を考慮すると、MDDR及びNDDRの両方は、TDDRの逆数の平方根に近づくのがよい。従来のテンター内で延伸されたフィルムは、プロセスの境界制約条件がMDDRとNDDRの差を付与するので、一方向にのみ物理的に延伸(所謂「単一軸」延伸)されたとしても、実質的に単一延伸は行なわれない。
【0132】
本発明はまた、延伸履歴全体に渡って、一軸条件下において、フィルムを延伸するそれらのプロセスに限定されない。ある好ましい実施形態において、本発明は、機械方向延伸比(MDDR)及び横断方向延伸比(TDDR)に対して延伸履歴全体に渡って実質的一軸制約条件をもたらすように従来技術のプロセス(例えば、ディスクオリエンター)の欠点に対処している。従来技術が延伸全体を通して一軸条件を提供できなかったことは、最終フィルムにおける皺及び他の面外(アウトオブプレーン)欠陥の原因となる。
【0133】
ある代表的な実施形態において、本発明は、実質的一軸延伸が境界軌道によって延伸工程全体を通してもたらされる、プロセスを提供する。さらに好ましくは、該プロセスは、フィルム面内を維持しながらこうした延伸履歴依存性を提供する。しかしながら、延伸工程は、(図13に示されているように)必ずしも実質的に平面領域内において実施されるとは限らない。3次元の実質的に、非平面のフィルムの境界軌道を設けることは本発明の範囲内である。
【0134】
好ましくは、本発明は、延伸工程の多様な部分を経由して一軸延伸からの偏りを許容範囲内に維持する。所望により、本発明は、延伸の初期の部分において面外のフィルム部分を変形させると同時にこれらの条件を維持してもよい。
【0135】
多様な光学フィルムが本発明により延伸されてもよい。フィルムは、以下に記載する単一層フィルム又は多層フィルムを含んでもよい。
【0136】
多層組み合わせ
所望の場合、本発明により作製された連続/分散相の1以上のシートを(例えば、反射性を高めるため)多層フィルムと組み合わせて、又は構成要素として多層フィルム内に使用してもよい。適切な多層フィルムとして、WO95/17303(オーダカーク(Ouderkirk)ら)に記載されている種類のフィルムが挙げられる。そのような構成において、個別シートを、積層又は他の方法で連続して接着するか、若しくは間隔を空けて配置してもよい。シート内の相の光学的厚さが実質的に等しい場合(つまり、多層シートの各々が所与の軸に沿って入射光に対して実質的に等しい多数の散乱体を提供する場合)、該合成物は、幾分より良い効率で、個別シートと実質的に同じ帯域幅及び反射の分光範囲(すなわち「帯域」)を反射する。シート内の相の光学的厚さが実質的に等しくない場合、該合成物は、個別相より広い帯域に渡って反射する。ミラーシートと偏光子シートとを組み合わせた合成物は、依然として透過光を偏光すると同時に全反射率を上げるのに有用である。あるいは、単一シートを非対称且つ二軸配向をして、選択的反射性特性及び偏光特性を有するフィルムを製造してもよい。
【0137】
図16は、本発明のこの実施形態の一例を示した図である。ここで、光学体は、層がPEN164系層とcoPEN系層と交互に成る多層フィルム162を含む。各PEN層164は、PENのマトリックス6内に、例えば、ポリカーボネート(PC)等の非複屈折性ポリマーから成る適切な分散相8を含む。この種の構成は、より低いオフ角色を促進する点で望ましい。さらに、散乱体の積層又は含有が光の漏れを平均化するので、層の厚さ制御がより重要でなくなり、フィルム162が処理パラメータにおける変動をより許容できるようになるのを可能にする。
【0138】
これまでに言及されてきた材料のいずれかを、本実施形態における層164、166のいずれかとして、若しくは特定層164、166内の連続相6又は分散相8として使用してもよい。しかしながら、PEN及びcoPENは、これらの材料が良好な積層接着を助長するため、隣接する層164、166の主要構成成分として特に望ましい。
【0139】
また、層164、166の配列においては多くの変更が可能である。したがって、例えば、層164、166を、構造162の一部又は全体を通して、ある繰り返し順序に従うように作製することが可能である。この一例が層パターンを有する構造 . . ABCABC. . であり、ここでA、B、Cは、個別の材料若しくは同じか又は異なる材料から成る個別のブレンド又は混合物であり、またA、B、又はCのうちの1つ以上が少なくとも1つの分散相8と少なくとも1つの連続相6とを含有する。
【0140】
スキン層
いくつかの代表的な実施形態において実質的に分散相のない材料から成る保護層が、単一の層構造、すなわち、分散相及び連続相から成る押出成形ブレンド又は図16に示されるように交互に成る層の多層構造の、1つの又は両方の主要面上に同一広がりを持つように配置されてもよい。保護層の組成物は、時にスキン層とも呼ばれ、例えば、押出成形ブレンド内において分散相の一体性を保護するよう、最終フィルムに対して機械特性又は物理特性を付加するよう、あるいは最終フィルムに光学的機能性を付加するように選択されてもよい。選択される適切な材料は、連続相の材料又は分散相の材料を含んでもよい。押出成形ブレンドに類似した溶解粘度を備えた他の材料もまた有用である場合がある。
【0141】
スキン層(単数又は複数)は、押出成形ブレンドが押出成形プロセス内において、特に金型処理において経験する広範囲な剪断強度を低減する場合がある。高剪断環境は、有害な表面空洞化を生じさせ、テクスチャ表面を生む結果となる恐れがある。フィルムの厚さ全体を通して剪断値の範囲が広いと、分散相がブレンド内において所望の粒径を形成するのを妨げてしまう。
【0142】
またスキン層(単数又は複数)は、結果としての合成物に物理的な強度を付加しても、あるいは処理中の問題を緩和する、例えば、配向プロセス中にフィルムが裂ける傾向を低減してもよい。非晶質なままであるスキン層材料は、より高い強靱性を備えたフィルムを作製するのに役立ち、半晶質であるスキン層材料は、より高い引張係数を備えたフィルムを作製するのに役立つ。帯電防止添加剤、UV吸収材、染料、酸化防止剤、顔料等の他の官能性成分を、それらは、実質的に、結果としての製品の所望光学特性に干渉しないという条件で、スキン層に添加してもよい。
【0143】
ある代表的な実施形態において、押出成形ブレンド及びスキン層(単数又は複数)が押出成形金型から押し出される前である押出成形プロセス中のある時点において、押出成形ブレンドの一側面又は二側面に、スキン層が貼られる。このことは、従来の共押出成形技術を用いて遂行されてもよく、該技術として、三層共押出金型を用いることが挙げられる。押出成形ブレンドの予め形成されたフィルムに対してスキン層(単数又は複数)を積層することも可能である。全スキン層の厚さは、全ブレンド/スキン層厚さの約2%〜約50%の範囲であってよい。
【0144】
広範囲のポリマー類がスキン層に適している。主として非晶質なポリマー類として、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸フタル酸、又はそれらのアルキルエステル相当、及びエチレングリコールのようなアルキレンジオールのうち1つ以上を基剤とするコポリエステル類が挙げられる。半晶質ポリマーの例は、2,6−ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、及びナイロン材である。
【0145】
反射防止層
本発明により作製されるフィルム及び他の光学装置は、1つ以上の反射防止層も含んでよい。そのような層は、偏光され易くてもされ難くてもよく、透過を増加させて反射グレアを抑えるのに役立つ。反射防止層は、コーティング又はスパッタエッチング等の適切な表面処理によって本発明のフィルム及び光学装置に付与されてもよい。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態において、ある偏光について透過を最大化し及び/又は正反射を最小化するのが望ましい。これらの実施形態において、光学体は、少なくとも1つの層が連続相及び分散相を設けている層に密着して反射防止システムを含む、2つ以上の層を含んでもよい。このような反射防止システムは、入射光の正反射を抑えて、光学体の連続層と分散層を含む部分に入る入射光の量を増加するように作用する。このような機能は、当該技術分野において周知である多様な手段によって遂行可能である。例として、4分の1波長反射防止層、2つ以上の層から成る反射防止スタック、階級インデックス層、及び階級密度層がある。このような反射防止機能を、光学体の透過光側において使用して、所望の場合、透過光を増加させることが可能である。
【0147】
本発明の用途
本発明の光学体は、拡散反射型偏光子として特に有用である。反射偏光子は、液晶表示パネルにおいて特に有用である。
【実施例】
【0148】
ここで、以下の非限定的な実施例を基に本発明について説明する。
【0149】
(実施例1)
多様な複屈折材料及び非複屈折材料を、同一人によって所有されている米国特許第6,936,209号、第6,949,212号、第6,939,499号、及び第6,916,440号に記載され、図13に示されているプロセスによって単層フィルムとして注型し、実質的に一軸配向した。試料の屈折率を測定し、下の表1にまとめた。
【0150】
【表1】

【0151】
複屈折材料と非複屈折材料の組み合わせを、これらのブレンドを配向すると拡散反射型偏光子が生成される、非一次配向において屈折率を一致させるという目的に合わせてブレンドするために選択した。配向された材料の屈折率をラムダ19計測器を用いて測定した。
【0152】
図17は、PEN(SANブレンド比55:45、約1x5一軸配向)のパス及びブロックスペクトルを示す。
【0153】
図18a及び18bは、LmPEN(90%PEN:10%PET)とSA115を50:50の割合で混合したブレンドから成る一軸配向フィルムの、パス及びブロック状態のスペクトルを示す。結果としての偏光子の測定した利得(ゲイン)は、1.47であった。
【0154】
フィルムの光学ゲインは、LCDパネルとバックライトの間にフィルムが挿入された状態で、バックライトからLCDパネルを通って透過された光と、該フィルムが同一場所にない状態で透過された光の割合である。
【0155】
図19は、55:45の割合の80%PET/20%PET:Xylex7200から作製され、約1x6で一軸配向されたフィルムのパス及びブロックスペクトルを示す。
【0156】
(実施例2)
25mm二軸押出機を用いて、表2に示すように多様な比率でPEN及びポリカーボネート(PC)を押出成形混合したブレンドから拡散反射型偏光子を作製して、押出成形金型を用いて20mL厚さの注型ウェブへと形成した。該ブレンドを、真に一軸バッチ配向プロセスを用いて表2に示された条件で配向した。試料1、2、4、6、8及び9を、押出成形及び注型する際に同一機械方向14に配向した。
【0157】
【表2】

【0158】
試料の光学的解析は、分散相(PC)が高いアスペクト比の円筒形状を有していたことを示した。下表3の試料4と3、試料6と5、及び試料8と7で光学特性を比較した結果、機械方向配向によって液晶ディスプレイにおけるより良好なゲイン又は光学パワーを得ることが可能であることが確認された。
【0159】
【表3】

【0160】
BYK−ガードナー(Gardner)製の濁度計(曇り度計)「ヘイズガードプラス(Haze-Guard Plus)」を用いてASTM D2003−00に記載されている典型的な手順に従って、曇り度を測定した。本発明の目的のため、用語「ゲイン」又は「光学ゲイン」は、本発明により作製された光学フィルムを備えた光学系の軸方向の出力輝度の、そのような光学フィルムを有さない同光学系の軸方向の出力輝度に対する比を指す。
【0161】
透明度は、物体においてどれだけよく精密な細部が解像されるかを示すもので、同じくBYK−ガードナー(Gardner)製の濁度計(曇り度計)「ヘイズガードプラス(Haze-Guard Plus)」を用いて測定した。ブレンドのグラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定し、結果のグラフを図20に示す。
【0162】
本明細書において参照又は引用された全ての特許、特許出願、分割出願、及び公報は、全ての図及び表を含む全体が、参照により、それらが本明細書の明示的な教示と矛盾しない程度に組み込まれる。
【0163】
本明細書に記載されている実施例及び実施形態は、例示目的のみであるということに加えて、それらに照らして多様な修正又は変更が当業者に連想され、本願の意図及び範囲内に含まれるものであるということを理解すべきである。
【0164】
先に挙げた図面は、本発明の複数の代表的な実施形態を明らかにするが、他の実施形態も考えられる。本開示は、本発明の例示的実施形態を、実例として提示しており、限定するものとしてではない。本発明の原理の範囲及び意図内に入る、多くの他の改変例または実施形態が、当業者によって考案され得る。図面は、一律の縮尺に従って描かれていない。
【0165】
さらに、実施形態及び構成要素は、「第1」、「第2」、「第3」等の表記によって言及されているが、これらの記載は参照の便宜を図るために与えられており、優先順位を示唆するものではない。該表記は、理解し易いように異なる実施形態を区別するためにのみ提示される。
【0166】
他に指示がない限り、本明細書で使用されている特徴寸法、量、及び物理的特を表わす全ての数字は、用語「約」によって全ての例において修飾されるものとして理解される。よって、特に指示がない限り、該数字は、本明細書において開示される教示によって所望特性に応じて変化可能な近似値を示す。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明により作製された光学体であって、分散相が本質的に円形の断面を有する一連の細長い塊として配列される光学体を示す概略図。
【図2】本発明により作製された光学体であって、分散相が本質的に楕円形の断面を有する一連の細長い塊として配列される光学体を示す概略図。
【図3】フィルムを延伸するのに使用される従来技術のテンター装置を上から見た平面図。
【図4】図3に示された従来技術のプロセスにおける延伸前後のフィルム部分を図示した斜視図。
【図5】延伸後のフィルムを図示した側面図で、初期の厚さT、最終の厚さT’、及び垂直方向NDを示す。
【図6】延伸後のフィルムを図示した概略図で、機械方向(MD)、垂直方向(ND)、横断方向(TD)、初期の長さY、及び延伸後の長さY’を示す座標軸系を描いている。
【図7】延伸後のフィルムを図示した概略図で、機械方向(MD)、垂直方向(ND)、横断方向(TD)、初期の幅X、及び延伸後の幅X0を示す座標軸を描いている。
【図8】光学フィルムを延伸するための従来技術のバッチプロセスを示す概略図で、延伸前後のフィルムの様子を示している。
【図9】相互浸入高分子網状組織(IPN)を示す概略図。
【図10a】本発明の代表的な実施形態によって作製された光学体における分散相の多様な形状を示した概略図。
【図10b】本発明の代表的な実施形態によって作製された光学体における分散相の多様な形状を示した概略図。
【図10c】本発明の代表的な実施形態によって作製された光学体における分散相の多様な形状を示した概略図。
【図10d】本発明の代表的な実施形態によって作製された光学体における分散相の多様な形状を示した概略図。
【図10e】本発明の代表的な実施形態によって作製された光学体における分散相の多様な形状を示した概略図。
【図11a】配向方向に垂直に偏光した場合の、本発明による配向フィルムの双方向散乱分布を散乱角の関数として表わしたグラフ。
【図11b】配向方向に平行に偏光した場合の、本発明による配向フィルムの双方向散乱分布を散乱角の関数として表わしたグラフ。
【図12】図13に示されたプロセスにおけるフィルムの一部分の延伸プロセス前後を示した斜視図。
【図13】本発明の代表的な実施形態による延伸プロセスを示した概略図。
【図14】本発明の延伸装置のための取り出しシステムの一実施形態を示す概略図。
【図15】延伸装置のための取り出しシステムの別の実施形態を示す略式図。
【図16】本発明により作製された多層フィルムを示す略図。
【図17】本発明のフィルムのある実施形態のためのパス及びブロック状態のスペクトルを示すグラフ。
【図18a】本発明のフィルムのある実施形態のためのパス及びブロックスペクトルをそれぞれ示す。
【図18b】本発明のフィルムのある実施形態のためのパス及びブロックスペクトルをそれぞれ示す。
【図19】本発明のフィルムのある実施形態のためのパス及びブロック状態のスペクトルを示すグラフ。
【図20】示差走査熱量計(DSCO)を用いて作成したグラフで、本発明のある実施形態によるPEN:PCブレンドのグラス転移温度(Tg)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリマーから成る第1相(6)と、前記第1相(6)内に配置される第2ポリマーから成る第2相(8)とを含む偏光フィルム(4)であって、前記第1相(6)と前記第2相(8)との間の屈折率の差が第1軸に沿って約0.05より大きく、前記第1軸に直交する少なくとも1つの軸に沿って約0.05より小さく、電磁放射線の少なくとも1つの偏光状態について少なくとも1軸に沿ってまとめられた前記第1相(6)及び前記第2相(8)の拡散反射率が少なくとも約30%であり、そして前記相(8)は、約1.53〜約1.59の屈折率を有する、偏光フィルム。
【請求項2】
前記第2相(8)が、約1.56〜約1.58の屈折率を有する、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項3】
前記第1相(6)と前記第2相(8)との間の屈折率の差が第1軸に沿って約0.05より大きく、第2軸及び第3軸に沿って約0.05より小さく、前記第2軸及び前記第3軸は前記第1軸に直交する、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項4】
前記第2ポリマーが、ポリカーボネート類(PC)と、コポリカーボネート類と、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレートコポリマー類(PS−PMMA)と、PS−PMMA−アクリレートコポリマー類と、ポリスチレン無水マレイン酸コポリマー類と、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)と、ABS−PMAA、ポリウレタン類、ポリアミド類、スチレン−アクリロニトリルポリマー類(SAN)と、ポリカーボネート/ポリエステル混合樹脂類、脂肪族コポリエステル類、ポリ塩化ビニル(PVC)と、ポリクロロプレンから成る群より選択される、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項5】
前記第2ポリマーが、ポリカーボネート/ポリエステル混合樹脂である、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項6】
前記第1ポリマーが、複屈折性ポリエステルを含む、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項7】
前記第1ポリマーが、PEN、PENとポリエチレンテレフタレート(PET)とのコポリマー類、PET、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレートから成る群より選択される、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項8】
前記第1ポリマーが、PEN又はcoPENを含み、前記第2ポリマーが、ポリカーボネート又はポリカーボネートのコポリマーを含む、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項9】
光学フィルム(84)を形成する方法であって、
(a)第1ポリマーから成る第1相(6)と、第1相(6)内で分散された第2ポリマーから成る第2相(8)とを含むフィルム(32)を形成する工程で、前記第2ポリマーが、約1.53〜約1.59の屈折率を有する工程と、
(b)前記フィルム(32)の対向する縁部を保持しながら、前記フィルム(32)を機械方向に沿ってストレッチャー(50)内へと搬送する工程と、
(c)前記フィルムの対向する縁部を末広がりの経路(54)に沿って移動させることによって前記ストレッチャー(50)内で前記フィルム(32)を実質的に一軸延伸する工程で、延伸後、第1相(6)と第2相(8)との間の屈折率の差が前記フィルム(32)の表面に平行な平面内の第1軸に沿って約0.05より大きく、第1軸に直交する少なくとも1つの軸に沿って約0.05より小さい、工程とを含む方法。
【請求項10】
前記対向する縁部が、末広がりの、実質的に放物線の経路(54)に沿って移動させられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルム(32)を延伸する工程が、前記対向する縁部を末広がりの、実質的に放物線の経路(54)に沿って移動させることによって前記ストレッチャー(50)内の一定ではない張力下において前記フィルム(32)を延伸して延伸フィルム(84)を形成する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記フィルム(32)が、ストレッチャー(50)内に搬送されたときの初期厚さと初期幅とを有し、前記延伸フィルム(84)が、延伸厚さと延伸幅とを有し、そして前記フィルム(84)をλと定義される延伸幅/初期幅比に延伸した後、延伸厚さ/初期厚さの比が約λ-1/2である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルム(32)を延伸する工程が、末広がりの、実質的に放物線の経路(54)に沿って前記対向する縁部を移動させることによって前記ストレッチャー(50)内で前記フィルム(32)を延伸する工程を含み、前記経路(54)が同一平面内にある、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルム(32)を延伸する工程が、前記対向する縁部を末広がりの、実質的に放物線の経路(54)に沿って移動させることによってストレッチャー(50)内で前記フィルム(32)を延伸する工程を含み、前記経路(54)が、前記フィルム(32)の中心軸に関してほぼ対称である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
延伸後、第1相(6)と第2相(8)との間の屈折率の差が前記フィルム(32)の表面に平行な平面内の第1軸に沿って約0.05より大きく、前記第1軸に直交する第2軸に沿って約0.05より小さく、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に沿って約0.05より小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
第1複屈折性ポリマーから成る連続相(6)と、前記第1ポリマーと異なる第2ポリマーから成る分散相(8)とを含む、偏光フィルム(4)であって、前記連続相(6)と前記分散相(8)との間の屈折率の差が、前記フィルム(4)の表面に平行な平面内の第1軸に沿って約0.05より大きく、第1軸に直交する第2軸に沿って約0.05より小さく、そして前記第2ポリマーが、前記複屈折性第1ポリマーより高いガラス転移温度(Tg)を有する、偏光フィルム。
【請求項17】
前記連続相(6)と前記分散相(8)との間の屈折率の差が第1軸に沿って約0.05より大きく、第2軸及び第3軸に沿って約0.05より小さく、前記第2軸及び前記第3軸は、前記第1軸に直交する、請求項16に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項18】
吸収偏光子材料をさらに含む、請求項1に記載の偏光フィルム(4)。
【請求項19】
前記光学フィルム(84)内に吸収偏光子材料を組み込む工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
吸収偏光子材料をさらに含む、請求項16に記載の偏光フィルム(4)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−537794(P2008−537794A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505459(P2008−505459)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/012509
【国際公開番号】WO2006/107970
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】