説明

配向木質熱圧成形材の分割加工方法

【課題】厚肉の配向木質熱圧成形材を分割、薄肉化しても反りの程度を軽減しえ、生産性向上を図れる加工方法を提供する。
【解決手段】上記配向木質熱圧成形材の分割加工方法を、配向木質熱圧成形材を、その表面から削り取ったのち、厚さ方向に分割するものとする。配向木質熱圧成形材は、長手方向に配向させた結合剤付きの細長い木質材片の積層物を熱圧成形してなるもの、さらには比重0.6〜1.0や厚さ50mm以上や長さ1800mm以上のものが好ましい。木質材片は、間伐材、端材、廃パレット材または解体廃材由来のもの、さらには重量比で70%以上が厚み1〜11mm、長さ20mm〜150mmの範囲にあるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向木質熱圧成形材の分割加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材として、無垢のものとは別に種々加工された木質材料、例えば合板、集成材、LVL、パーティクルボード等の各種ボードなどが多用されている。
【0003】
また、森林資源には限りがあり、またその保守維持も大変であることから、廃棄木材の有効活用が有望視され、その一環として、長手方向に配向させた結合剤付きの細長い木質材片の積層物(例えばマット等)を加圧・加熱するなどして得られる成形材(以下、配向木質熱圧成形材と称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
配向木質熱圧成形材の用途としては、壁芯材などの造作材があるが、製品厚さは20〜40mm程度の薄肉である。
一方、薄肉品より厚肉品を生産する方が製造効率は向上する。
しかし、上記の薄肉の造作材は、厚肉の配向木質熱圧成形材を原材とし、分割加工等により製造すると、それをスライス加工等で厚さ方向に分割して薄肉化する必要があり、かかる分割時に反りが生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3520077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、このような事情の下、厚肉の配向木質熱圧成形材を分割、薄肉化しても反りの程度を軽減しえ、生産性向上を図れる加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、配向木質熱圧成形材を、その加圧面から所定深さ削り取ったのち、厚さ方向に分割するのが課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、配向木質熱圧成形材を、その加圧された表面から少なくとも4mm削り取ったのち、厚さ方向に分割することを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、配向木質熱圧成形材は、長手方向に配向させた結合剤付きの細長い木質材片の積層物を熱圧成形してなる成形材であることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、木質材片は、間伐材、端材、廃パレット材または解体廃材由来のものであることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第2又は3の発明において、木質材片は、重量比で70%以上が厚み1〜11mm、長さ20〜150mmの範囲にあることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、配向木質熱圧成形材は、比重が0.6〜1.0であることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、配向木質熱圧成形材は、厚さが50mm以上であることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、配向木質熱圧成形材は、長さが1800mm以上であることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、熱圧成形は、水蒸気加熱とプレス機での加圧により行われることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、分割するのを、等厚に行うことを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第10の発明によれば、第2〜9のいずれかの発明において、結合剤は、接着剤であることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、接着剤は、イソシアネート系接着剤及び/又はタンニン系接着剤であることを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の加工方法によれば、厚肉の配向木質熱圧成形材を分割、薄肉化しても反りの程度を軽減しえ、生産性向上を図れるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の加工方法は、配向木質熱圧成形材(以下、単に成形材ということもある。)を、その加圧された表面から少なくとも4mm削り取ったのち、厚さ方向に分割加工するというものである。
上記成形材については特に限定されないが、好ましくは、長手方向に配向させた結合剤付きの細長い木質材片の積層物を熱圧成形してなる成形材が挙げられる。
【0021】
上記木質材片は、細長い木質材片に結合剤を噴霧、塗布、浸漬等の処理により付着させるか、あるいは細長い木質材片と結合剤とを混和させるなどして結合剤付きの細長い木質材片とし、これを長手方向に配向装置等により配向させてなるものである。
【0022】
この細長い木質材片について、その原料材の樹種としては、主に、スギ、ヒノキ、スプルース、ファー、ラジアータパイン等の針葉樹、シラカバ、アピトン、カメレレ、センゴンラウト、アスペン等の広葉樹が挙げられるが、これら森林から生産される植物材料だけでなく、竹、コウリャンといった森林以外で生産される植物材料をも含めることができる。原料材に利用できる形態としては、特に限定されないが、例えば、上記樹種の丸太、間伐材等の生材料、工場や住宅建築現場で発生する端材、部材輸送後に廃棄される廃パレット材、建築解体時に発生する解体廃材等が挙げられる。
【0023】
上記原料材を木質材片にする加工方法としては、ロータリーカッターによってベニア加工したものを割り箸状に切断してスティックにする方法、フレーカーの回転刃によって丸太を切削してストランドにする方法、一軸破砕機の表面に刃物のついたロールを回転させて木材を破砕する方法等を用いることができる。破砕機とは、一般的に粉砕機と呼ばれる機械も含まれる。また、一般にパーティクルボードに使用されているような切削を要素とした小片製造機の使用も可能であるが、小片が薄く削られた物になり強度が比較的でにくく、破砕を要素とする破砕機により作製された破砕チップは紡錘状になり強度がでやすく、こちらの方がより好ましい。
【0024】
上記のようにして破砕された木質材片は、その厚さが不揃いの場合は、一定範囲の厚さの木質材片に分級される。分級方法は、一定範囲の厚さで分級できるものであれば特に限定されないが、例えば、ウェーブローラー方式等の分級機を用いて分級する方法が挙げられる。なお、ウェーブローラー方式の分級機は、チップの厚さを基準に連続的に分級する装置である。
【0025】
木質材片は、その比重が0.3〜0.6、その長さが20〜150mmであり、その厚さ(短辺)が1〜11mmであることが好ましい。木質材片の比重が0.6を越えると、木質材片が固く、所望の成形が難しい。
【0026】
木質材片の厚さが1mm未満のものを用いると、構成材料片が小さくなりすぎ、多くの結合材が必要となり、強度を発現しない。一方、木質材片の厚さが11mmを越えると、構造材料の厚さ方向への木質材片の積層数が少なくなってしまい、応力伝達が十分に行えず、木質材片の継ぎ目に応力集中を起こしやすく、所望の強度を得ることができない。木質材片の長さが20mm未満のものを用いると、構造材として使用する場合、軸方向の強度が不十分となり、150mmを越えるものを用いると、木質材片を積層したとき、1本の木質材片の積層交点が増してしまい、十分な圧密化ができない。木質材片の長さは、分離が完全にはできないため、重量比で、70%以上、好ましくは80%以上、所望長さの木質材片が含有されていれば十分効果が発揮される。
【0027】
また、木質材片の長さと厚さとの比は、特に限定されないが、長さが厚さの10倍以上となることが好ましい。長さが厚さの10倍未満であると、成形材の軸方向の強度が不十分となる恐れがある。
【0028】
嵩密度が0.6未満では木質材片の十分な結合が得られず、十分な強度を得ることができない恐れがある。さらに、空隙率は、特に限定されないが、10%以下となることが好ましい。すなわち、空隙率が10%を越えると、成形材中の各木質材片同士の結合が不十分となり、十分な強度を発現しなくなる恐れがある。
【0029】
また、木質材片は、含水率を一定にすることが好ましい。含水率を一定にすることで生産時の成形材の品質バラツキがなくなる。好ましい含水率としては、0〜10%である。含水率を一定にする方法としては、例えば、温調したオーブン中に一定時間木質材片を放置する方法が挙げられる。
【0030】
上記結合剤としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、イソシアネート系等、合板やパーティクルボード等に用いられる木材工業用の接着剤が挙げられ、これらの結合剤は、単独で用いるか或いは2種以上併用してもよい。また、結合剤は、液状でも粉末状でも構わないが、液状の場合は一般に木質材片に噴霧したり、木質材片と撹拌混合して予め木質材片に担持させた状態で、粉末状の場合は、一般に木質材片と均一に混合した状態で付着される。
【0031】
結合材の付着された木質材片は、長手方向に配向させて積層しマットに形成させる。その具体的方法としては、ベルトコンベア−の上方に複数の板状体が搬送方向に沿って並列に立設され、並列された板状体の上から木質材片を投下して、配向させながら、ベルトコンベア−の上に積層しマットに形成させながら搬送する方法や、該方法において、その配向手法を、幅方向に樋状体を並設させて、凹凸溝形状として、木質材片が溝の内を流れることで並べる方法や、ディスクオリエンター等の公知の配向手段をフォーミング型の上方に配置し、この配向手段により配向させながら投入する方法等に変えてなる方法等が挙げられる。
【0032】
上記のようにして得られた結合剤付き木質材片をフォーミング型に投入する方法としては、オリエンテッド・ストランド・ボード(OSB)等の既存の木質系成形材料の製造装置で用いられるディスクオリエンター等の公知の配向手段をフォーミング型の上方に配置し、この配向手段により配向させながら投入する方法が使用できるが、上部の投入口から結合剤付き木質材片が投入されスリット状の排出口に向かって幅が縮小する内面形状(嘴形状)の配向部を有するホッパをその排出口が各分割枠部の上部開口を臨むようにフォーミング型の上方に配置し、ホッパを介して投入する方法を用いることが好ましい。その他、幅方向に樋状体を並設させて、凹凸溝形状として、溝を流れることで並べる方法を用いることが可能である。
【0033】
すなわち、上記のようなホッパを用いることによって、フォーミング型の各分割枠部に効率よく、すなわち、ロスなく結合剤付き木質材片を供給することが可能になる。ホッパの内面形状はフォーミング型の形状により決まってくるが、結合剤付き木質材片が詰まらない形状であればよい。具体的には、排出口のスリット幅を15mm以上で分割枠部の内幅より小さい形状であることが好ましい。
【0034】
フォーミング型の形状は、得ようとする成形材によって適宜決定されるが、例えば、1000×500×30mmの板形状の成形材を得る場合は、フォーミング型により1000×500×100mm程度の積層マットがつくられなければならない。すなわち、積層マットの縦、横の寸法は、得ようとする成形材の縦、横と同じ寸法或いは、少し大きめで作製しておき、積層マットの厚さは少なくとも得ようとする成形材の3倍以上の厚さとすることが好ましい。
【0035】
上記成形材は、上記のように配向、積層されたもの、例えばマット等を、熱圧成形することにより得られる。
熱圧成形は、例えばプレス機等を用い加熱、加圧することにより行われる。
加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、熱盤のように木質材片の表面から伝熱により内部に熱を伝える方法や、蒸気噴射や高周波加熱等のように内部を直接加熱する方法が挙げられる。加熱と加圧とは、同時に行ってもよいし、加圧をした後に加熱をしてもよいし、加熱した後に加圧してもよい。
【0036】
プレス機としては、特に限定されないが、例えば、既存の木質系材料成形用の縦型プレス機や連続プレス機を垂直方向動作にしたものを用いることができる。プレス機の温度条件は、通常100〜250℃の範囲が好ましい。圧力条件は、1〜10MPaの範囲が好ましく、1MPa未満であると、充分に圧縮できず、10MPa以上であると、プレスのための設備が高価になる。プレス時間は、結合剤が硬化する時間であればよい。
このようにして得られた成形材は、比重が0.6以上、好ましくは比重が0.6〜1.0の範囲のものである。比重が0.6未満では強度が十分には得られない。
【0037】
本発明の加工方法においては、上記成形材、好ましくは肉厚50mm以上のもの、さらには長さ1800mm以上のものが、その加圧された表面から少なくとも4mm削り取られたのち、厚さ方向に分割加工される。削り取られる削除深さは、少なくとも5mmであるのが好ましい。この深さが浅すぎると反り軽減効果が十分には得られにくくなるし、また、深すぎても更なる反り軽減効果は得られにくくなる上に、材料ロスが多くなる。
分割は、多くとも4分割とするのが、コストや作業性の面から好ましい。
分割加工は、等厚に行うのが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
実施例1
原材に建築解体材リサイクルチップを用い、該チップに対し、タンニン系接着剤を7重量%の割合で付着させてなる接着剤付きチップを調製し、該チップを、その長手方向に配向させ、かつ得ようとする成形体の長手方向に配向するように、積層させてマットを形成させ、このマットを蒸気吹き込み型プレス機により180℃、2.5MPaで310秒熱圧成形して厚さ80mm、長さ3000mm、幅300mm、比重0.65の成形材を得た。
この成形材の長手方向両端を切除して2400mmとし、表層を4.0mm切削したのち、厚さ方向に2分割して反りを測定した結果、反りは2.72mmで、長さに対する反り変形率は0.11%と低かった。
【0040】
実施例2
表層の切削深さを5.0mmとした以外は実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りは1.92mmで、長さに対する反り変形率は0.08%と低かった。
【0041】
比較例1
表層の切削深さを1.5mmとした以外は実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りは5.86mmで、長さに対する反り変形率は0.24%と高かった。
【0042】
実施例3
原材に建築解体材リサイクルチップを用い、該チップに対し、MDI系接着剤を4重量%の割合で付着させてなる接着剤付きチップを調製し、該チップを、その長手方向に配向させ、かつ得ようとする成形体の長手方向に配向するように、積層させてマットを形成させ、このマットを蒸気吹き込み型プレス機により180℃、2.5MPaで340秒熱圧成形して厚さ150mm、長さ3000mm、幅300mm、比重0.65の成形材を得た。
この成形材の長手方向両端を切除して2400mmとし、表層を4.0mm切削したのち、厚さ方向に3分割して反りを測定した結果、反りは2.07mmで、長さに対する反り変形率は0.09%と低かった。
【0043】
実施例4
表層の切削深さを5.0mmとした以外は実施例1と同様にして反りを測定した結果、反りは1.89mmで、長さに対する反り変形率は0.08%と低かった。
【0044】
比較例2
表層の切削深さを1.5mmとした以外は実施例2と同様にして反りを測定した結果、反りは5.22mmで、長さに対する反り変形率は0.22%と高かった。
以上より、実施例の加工方法はいずれも比較例の加工方法に比し、反りが小さく、長さに対する反り変形率が低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、厚肉の配向木質熱圧成形材を分割、薄肉化しても反りの程度を軽減しえ、生産性向上を図れる配向木質熱圧成形材の加工方法を提供しうるので、産業上大いに有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向木質熱圧成形材を、その加圧された表面から少なくとも4mm削り取ったのち、厚さ方向に分割することを特徴とする配向木質熱圧成形材の分割加工方法。
【請求項2】
配向木質熱圧成形材は、長手方向に配向させた結合剤付きの細長い木質材片の積層物を熱圧成形してなる成形材であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
木質材片は、間伐材、端材、廃パレット材または解体廃材由来のものであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
木質材片は、重量比で70%以上が厚み1〜11mm、長さ20〜150mmの範囲にあることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
配向木質熱圧成形材は、比重が0.6〜1.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
配向木質熱圧成形材は、厚さが50mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
配向木質熱圧成形材は、長さが1800mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
熱圧成形は、水蒸気加熱とプレス機での加圧により行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
分割するのを、等厚に行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
結合剤は、接着剤であることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
接着剤は、イソシアネート系接着剤及び/又はタンニン系接着剤であることを特徴とする請求項10記載の方法。


【公開番号】特開2011−167902(P2011−167902A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33153(P2010−33153)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】