説明

配向膜

【課題】液晶性化合物を、特に円盤状液晶性化合物を、容易に配向させることができるとの特性を備えたポリマー層を有する配向膜を提供する。
【解決手段】油相中に水相が乳化し、油相中に陽イオン性界面活性剤が溶解しているW/O型乳化物中で、無機酸化物前駆体を加水分解および縮合させる反応により、粒径が5nm乃至1μmの無機酸化物微粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明支持体上に設けられた配向膜に関する。
【背景技術】
【0002】
デスクトップ型パーソナルコンピューターおよびワードプロセッサー等のOA機器の表示装置としては、CRT(cathode ray tube)がこれまで主に使用されてきた。最近、液晶表示装置(以下LCDと称す)が、薄型で、軽量、また消費電力が小さいことからCRTの代わりに広く使用されている。LCDは、一般に液晶セルとその両側に設けられた一対の偏光板からなる。
【0003】
液晶セルは透明電極を備えた一対の透明基板とその間に封入された液晶性化合物からなる。透明基板は、一般に表面に配向膜を有する。その配向膜はポリイミド、ポリビニルアルコールまたはゼラチン等のポリマーの層をラビングすることにより、あるいは無機化合物を斜め蒸着することにより形成される。配向膜は、液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有する。配向膜は、生産性の点からラビング処理したポリマー層が好ましい。このため、ラビング処理により液晶性化合物を容易に安定して傾斜配向させることができるポリマーの出現が切望されている。
【0004】
上記構造を有するLCDの多くはねじれネマティック液晶が用いられている。またLCDの表示方式は大きく複屈折モードと旋光モードに分けることができる。複屈折モードを利用する超ねじれ(スーパーツィスティッド)ネマティック液晶表示装置(以下STN−LCDと称す)は、90度を超えるねじれ角及び急峻な電気光学特性を有するスーパーツィスティッドネマチック液晶を用いている。このため、このようなSTN−LCDは、時分割駆動による大容量の表示が可能である。しかしながら、STN−LCDは、応答速度が遅い(数百ミリ秒)、階調表示が困難との問題があることから、能動素子を使用した液晶表示装置(例、TFT−LCD及びMIM−LCD)の表示特性に比べて劣っている。
TFT−LCD及びMIM−LCDにおいては、90度のねじれ角および正の複屈折を有するねじれネマティック液晶が、画像を表示するために使用されている。TN−LCDの表示モードでは、高速応答性(数十ミリ秒)及び高いコントラストが得られる。従って、旋光モードは、複屈折モードや他のモードに比べて多くの点で有利である。しかしながら、TN−LCDは、表示色や表示コントラストが液晶表示装置を見る時の角度によって変化するため(視野角特性)、その表示特性はCRTのレベルには至っていない。
【0005】
上記視野角特性を改善するため(即ち、視野角の拡大)、一対の偏光板と液晶セルとの間に位相差板(光学補償シート)を設けるとの提案がなされている。提案されている位相差板は、液晶セルに対して垂直方向の位相差はほぼ0であるため真正面からは何ら光学的作用を与えないが、傾けた時に位相差が発現し、これにより液晶セルで発生する位相差を補償するものである。この位相差が、表示画像の着色や消失等の好ましくない視野角特性をもたらしている。このような光学補償シートとしては、ネマティック液晶の正の複屈折を補償するように負の複屈折を有し、かつ光軸が傾いているシートが有効である。
特許文献1には、負の複屈折を有し、かつ光軸が傾いてい光学補償シートが開示されている。即ち、上記シートは、ポリカーボネートやポリエステル等のポリマーを延伸することにより製造され、そしてシートの法線から傾いた主屈折率の方向を持つ。延伸処理により上記シートを製造するには、極めて複雑な延伸処理が必要とされるため、大面積の光学補償シートを開示されている方法で製造することは極めて困難である。
【0006】
一方、液晶性ポリマーを用いた光学補償シートも知られている。例えば、特許文献2及び特許文献3には、液晶性を有するポリマーを支持フイルム上の配向膜表面に塗布することにより得られる光学補償シートが開示されている。配向膜用のポリマーとしては、ポリイミドが使用されている。他のポリマー例として、ナイロン等のポリアミド(特許文献2)、及びポリビニルアルコール(特許文献3)も記載されている。これらの公報に記載されている液晶性を有するポリマーは、配向させるために高温で長時間の熟成が必要なため、生産性が極めて低く、大量生産に向いていないとの問題点がある。
また特許文献4には、支持体と液晶性及び正の複屈折を有する重合性棒状化合物からなる光学補償シート(複屈折板)が開示されている。この光学補償シートは、重合性棒状化合物の溶液を支持体に塗布、化合物を電場あるいは磁場により配向させ、次いで硬化することにより得られる。さらに、この公報には、化合物を配向させるために、ラビング処理したポリイミド膜、長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤層、及び酸化珪素の蒸着膜の使用が記載されている。上記で得られる液晶性を有する硬化膜は、光学的に正の一軸性であるため、全方向視野角をほとんど拡大することができない。
【0007】
【特許文献1】特開平6−75115号公報
【特許文献2】特開平3−9326号公報
【特許文献3】特開平3−291601号公報
【特許文献4】特開平5−215921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、配向膜用のポリマーは種々のものが知られている。しかしながら、これらのポリマーの層をラビング処理して得られる配向膜では、液晶性化合物を容易にかつ安定して傾斜配向させることが困難である。従って、支持フイルム、配向膜及び液晶性化合物の層からなる公知の光学補償シートは、全方向視野角を格段に拡大することはできない。
本出願人は、全方向視野角が格段に拡大した光学補償シートについて既に出願している(特願平6−118963号)。この光学補償シートは、透明支持体、その上に設けられたラビング処理ポリビニルアルコールの配向膜及び配向膜上に形成された円盤状(ディスコティック)液晶性化合物の光学異方層からなる。このシートでは、円盤状液晶性化合物を使用することにより、拡大した視野角が得られている。しかしながら、上記配向膜は、円盤状液晶性化合物の傾斜配向を容易にかつ安定して、行なうことができるとは言えない。更に、上記光学補償シートを長期間保存して使用した場合、光学異方層が配向膜から、時々剥離することが判明した。
【0009】
本発明の目的は、その表面を配向処理することにより、液晶性化合物を、特に円盤状液晶性化合物を、容易に配向させることができるとの特性を備えたポリマー層を有する配向膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、透明支持体上に設けられた配向膜であって、配向膜が、ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基で、少なくとも一個のヒドロキシル基が置換されたポリビニルアルコールからなることを特徴とする配向膜にある。
【0011】
本発明の配向膜の好ましい態様は下記のとおりである。
1)ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基が、エーテル結合、ウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合を介してポリビニルアルコールのポリマー鎖に結合している。
2)ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基が、芳香族環を持たない。
3)置換されたポリビニルアルコールが、下記の一般式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、L11は、エーテル結合、ウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合を表わし;
11は、アルキレン基またはアルキレンオキシ基を表わし;
12は、R11とQ11とをつなぐ連結基を表わし;
11は、ビニル、オキシラニルまたはアジリジニルを表わし;
x1+y1+z1=100の条件にて、x1は10〜99.9モル%、y1は0.01〜80モル%、及びz1は0〜70モル%であり;そして
k及びhは、それぞれ0または1である)
で表わされる。
【0014】
4)置換されたポリビニルアルコールが、下記の一般式(II):
【0015】
【化2】

【0016】
(但し、R21は、アルキル基、又はアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基を表わし;
21は、アルキル基、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルコキシ基を表わし;
qは0または1であり;そして
nは0〜4の整数である)
で表わされる基で少なくとも一個のヒドロキシル基が置換されたポリビニルアルコールからなる。
【0017】
5)R21が、アルキル基、又はアルキル、アルコキシ、アリールあるいはハロゲンで置換されたアルキル基を表わし;そして
21は、アルキル基、アルキル、アルコキシ、アリールあるいはハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル、アルコキシ、アリールあるいはハロゲンで置換されたアルコキシ基を表わす。
【0018】
6)R21が、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基を表わし;そして
21は、アルキル基、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルコキシ基を表わす。
【0019】
7)ポリビニルアルコールが、ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基をもつ繰り返す単位を、全繰り返し単位の0.1〜10モル%の範囲で有する。
【0020】
なお、本発明に用いられる化合物は、化合物中の水素原子が重水素原子であっても何ら差支えはない。
【発明の効果】
【0021】
本発明の透明支持体とその上に設けられた特定のポリマー層からなる要素は、ポリマー層に配向処理を施すことにより液晶性化合物(特にディスコティック液晶性化合物)を容易に配向させることができる。従って、上記要素は、光学補償シートのみならず液晶セルの基板として有用である。
【0022】
また、本発明の光学補償シートにおいては、配向膜のポリマーと光学異方層の液晶性化合物が、これらの層の界面で化学的に結合している。このため、上記光学補償シートは、配向膜と光学異方層間において高い接着性を示すことから、このシートは、拡大した視野角とともに優れた耐久性も有しているということができる。
【0023】
更に、上記光学補償シートは、重合性基(例、ビニル基)を有する特定のポリマーからなる配向膜上に重合性基を有するディスコティック化合物からなる光学異方層を塗布形成し、これらの層をUV光や熱の付与により硬化させることにより作成される。従って、本発明の要素は、上記シートの作成に有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の配向膜は、透明支持体と、特定のポリマーからなるポリマー層との要素からなる。
上記要素の代表的な構成を図1に示す。図1において、透明支持体11の上にポリマー層12が設けられ、ポリマー層を有する要素を構成している。
ポリマー層12は、その表面にラビング処理等の配向処理を施すことにより液晶性化合物を容易に配向させることができる。ポリマー層のポリマーは、ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する重合性基、あるいはアリール基を有する特定のポリマーである。好ましいポリマーは、一般式(I)、(II)または(III)の特定のポリビニルアルコールである(但し、(II)は、その特定の基のみ表わされている)。
【0025】
本発明の光学補償シートは、透明支持体、その上に設けられた配向膜及び配向膜上に設けられた光学異方層からなる。
上記要素の代表的な構成を図2に示す。図2において、透明支持体21、配向膜22及び液晶性化合物の層である光学異方層23がこの順で設けられおり、光学補償シートを構成している。配向膜22は、図1のポリマー層を配向処理した層である。
本発明の光学補償シートは、配向膜22のポリマーと、光学異方層23の液晶性化合物とが、これらの層の界面を介して化学的に結合していることを特徴としている。このような二層間の化学結合は、一般にポリマーの重合性基と液晶性化合物の重合性基との反応により形成される。この場合、光学異方層は負の複屈折を有する円盤状液晶性化合物であることが好ましい。あるいは、配向膜(又はポリマー層)は、重合性基がなく、液晶性化合物を容易に配向させることができるアリール基を有するポリビニルアルコールからなるものでも良い。
【0026】
本発明の透明支持体の材料としては、透明である限りどのような材料でも使用することができる。光透過率が80%以上を有する材料が好ましく、特に正面から見た時に光学的等方性を有するものが好ましい。
従って、透明支持体は、小さい固有複屈折を有する材料から製造することが好ましい。このような材料としては、ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)及びフジタック(富士写真フイルム(株)製)などの市販品を使用することができる。さらに、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件を適宜設定することにより、得ることができる。
【0027】
透明支持体(フイルム)面内の主屈折率をnx、ny、厚み方向の主屈折率をnz、フイルムの厚さをdとしたとき、三軸の主屈折率の関係がnz<ny=nx(負の一軸性)を満足し、式{(nx+ny)/2−nz}×dで表されるレターデーションが、20nmから400nm(好ましくは30〜150nm)であることが好ましい。
但し、nxとnyの値は厳密に等しい必要はなく、ほぼ等しければ充分である。具体的には、|nx−ny|/|nx−nz|≦0.2であれば実用上問題はない。|nx−ny|×dで表される正面レターデーションは、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
下塗層を、透明支持体上に、透明支持体と配向膜との接着強度を増大させるために設けることが好ましい。一般にゼラチンが使用される。
【0029】
本発明の配向膜は、透明支持体上に設けられる。配向膜は、その上に塗布等で設けられる円盤状液晶性化合物等の液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有し、そしてその配向は、光学補償シートから傾いた光軸を与える。
本発明において、配向膜は、ラビング処理等の配向処理が施されたポリマー層であり、そのポリマーはビニル、オキシラニル、アジリジニルまたはアリールを有する基を持っている。ポリマーはポリビニルアルコールが好ましい。配向膜をポリビニルアルコールを例にとって以下に説明する。
本発明のポリビニルアルコールにおいて、少なくともその一個のヒドロキシル基が、ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基で置換されている。上記部分は、一般に、ポリビニルアルコールのポリマー鎖(炭素原子)と、エーテル結合(−O−)、ウレタン結合(−OCONH−)、アセタール結合((−O−)CH−)またはエステル結合(−OCO−)[即ち、結合基]を介して結合している。ウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合が好ましい。ビニル、オキシラニル、アジリジニルまたはアリールは、上記結合を介して間接的にポリビニルアルコールに結合していることが好ましく、即ち、下記のように上記部分を有する基が、結合基と共にポリビニルアルコールに結合していることが好ましい。
【0030】
本発明のポリビニルアルコールは、下記の一般式(I)、(II)または (III)によって一般に表わされる(但し(II)はその基のみ表わされている)。
【0031】
【化3】

【0032】
(但し、L11は、エーテル結合、ウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合を表わし;
11は、アルキレン基またはアルキレンオキシ基を表わし;
12は、R11とQ11とをつなぐ連結基を表わし;
11は、ビニル、オキシラニルまたはアジリジニルを表わし;
x1+y1+z1=100の条件にて、x1は10〜99.9モル%、y1は0.01〜80モル%、及びz1は0〜70モル%であり;そして
k及びhは、それぞれ0または1である)
で表わされる。
【0033】
一般式(I)において、R11は、一般に炭素原子数1〜24のアルキレン基、少なくとも一個の隣接しないCH基が−O−、−CO−、−NH−、−NR −(R は炭素原子数1〜4のアルキルまたは炭素原子数6〜15のアリールを表わす)、−S−、−SO−または炭素原子数6〜15のアリーレンで置き換わった炭素原子数3〜24のアルキレン基、またはアルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、アルキルカルボニルチオ、アリールカルボニルチオ、アルキルスルホニルチオ、アリールスルホニルチオ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、カルボキシあるいはスルホで置換された上記アルキレン基いずれかを表わす。
【0034】
11は、−R −、−R−(O−R −OR −、−R −CO−R−、−R −NH−R −、−R −NR −R−、−R −S−R −、−R −SO −R−又は−R −A −R −(但し、R 、R、R 、R 及びR は、それぞれ炭素原子数1〜24のアルキレンを表わし、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル又は炭素原子数6〜15のアリールを表わし、A は炭素原子数6〜24のアリーレンを表わし、そしてtは、0〜4の整数を表わす)を表わすことが好ましい。さらに、R11は、−R−または−R −(O-CHCH)−(但し、R 及びR は、それぞれ炭素原子数1〜12のアルキレンそしてtは0〜2の整数である。)を表わすことが好ましく、特にR11は、炭素原子数1〜12のアルキレンが好ましい。
【0035】
上記アルキレン基は置換基を有していても良い。その例としては、炭素原子数1〜24のアルキル、炭素原子数6〜24のアリール、炭素原子数1〜24のアルコキシ、炭素原子数6〜24のアリールオキシ、炭素原子数1〜24のアルキルチオ、炭素原子数6〜24のアリールチオ、ハロゲン(F、Cl、Br)、炭素原子数2〜24のアルキルカルボニル、炭素原子数7〜24のアリールカルボニル、炭素原子数1〜24のアルキルスルホニル、炭素原子数6〜24のアリールスルホニル、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、炭素原子数2〜24のアルキルカルボニルオキシ、炭素原子数7〜24のアリールカルボニルオキシ、炭素原子数1〜24のアルキルスルホニルオキシ、炭素原子数6〜24のアリールスルホニルオキシ、炭素原子数2〜24のアルキルカルボニルチオ、炭素原子数7〜24のアリールカルボニルチオ、炭素原子数1〜24のアルキルスルホニルチオ、炭素原子数6〜24のアリールスルホニルチオ、炭素原子数2〜24のアルキルカルボニルアミノ、炭素原子数7〜24のアリールカルボニルアミノ、炭素原子数1〜24のアルキルスルホニルアミノ、炭素原子数6〜24のアリールスルホニルアミノ、カルボキシあるいはスルホを挙げることができる。
【0036】
上記アルキレン基の好ましい置換基としては、炭素原子数1〜24のアルキル(特に炭素原子数1〜12)、炭素原子数6〜24のアリール(特に炭素原子数6〜14)、炭素原子数2〜24のアルコキシアルキル(特に炭素原子数2〜12)を挙げることができる。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、i−プロピル、i−ブチル、sec−ブチル、t−アミル及び2−エチルヘキシルを挙げることができる。1〜4個のアルコキシで置換されたアルキルの例としては、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2−n−ブトキシエチル、2−エトキシエチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、3−メトキシプロピル、3−エトキシプロピル、3−n−プロピルオキシプロピル及び2−メチルブチルオキシメチルを挙げることができる。アリールの例としては、フェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、2−アニシル、3−アニシル、4−アニシル、2−ビフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、1−ナフチル及び2−ナフチルを挙げることができる。また、複素環基の例としては、ピリジル、ピリミジル、チアゾリル及びオキサゾリルを挙げることができる。
【0037】
12は、−O−、−S−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−O−CO−、−NRCO−、−CONR−、−NR−、−NRCONR−、−NRCO−O−または−OCONR−(但し、Rは水素原子又は低級アルキル基表わす)を表わすことが好ましい。
−(L12 −Q12は、ビニル、ビニルオキシ、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ビニルフェノキシ、ビニルベンゾイルオキシ、スチリル、1,2−エポキシエチル、1,2−エポキシプロピル、2,3−エポキシプロピル、1,2−イミノエチル、1,2−イミノプロピル又は2,3−イミノプロピルであることが好ましい。更に、ビニル、ビニルオキシ、アクリロイル、メタクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ビニルベンゾイルオキシ、1,2−エポキシエチル、1,2−エポキシプロピル、2,3−エポキシプロピル、1,2−イミノエチル、1,2−イミノプロピル又は2,3−イミノプロピルが好ましい。特に、アクリロイル、メタクリロイル、アクリロイルオキシ及びメタクリロイルオキシが好ましい。
【0038】
x1+y1+z1=100の条件にて、x1は50〜99.9モル%が好ましく、y1は0.01〜50モル%が好ましく(さらに0.01〜20モル%が好ましく、特に0.01〜10モル%、最も好ましくは0.01〜5モル%)及びz1は0.01〜50モル%が好ましい。
【0039】
上記一般式(I)においてL11がアセタール結合である場合、一般式(I)のポリビニルアルコールは、下記の一般式(Ia)によって表わすことができる。
【0040】
【化4】

【0041】
(但し、R11、L12、Q11、x1、y1、z1、k及びhは、一般式(I)と同義である。)
【0042】
本発明のポリビニルアルコールは、下記の一般式 (III)によっても表わすことできる。
【0043】
【化5】

【0044】
(但し、L31は、エーテル結合、ウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合を表わし;
31は、アリーレン基、又はハロゲン、アルキル、アルコキシ又は置換アルコキシで置換されたアリーレン基を表わし(置換されたアルコキシの置換基としてはアルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ビニルフェノキシ、ビニルベンゾイルオキシ、スチリル、1,2−エポキシエチル、1,2−エポキシプロピル、2,3−エポキシプロピル、1,2−イミノエチル、1,2−イミノプロピル又は2,3−イミノプロピルを挙げることができる);
31は、R11と同一の基を表わし;
32は、L12と同一の基を表わし;
31は、Q11と同一の基を表わし;
x2+y2+z2=100の条件にて、x2は10〜99.9モル%、y2は0.01〜80モル%、及びz2は0〜70モル%であり;そして
k1及びh1は、それぞれ0または1である)
特にA31は、炭素原子数6〜24のアリーレン基、またはハロゲン、炭素原子数1〜4のアルキルあるいは炭素原子数1〜4のアルコキシで置換された炭素原子数6〜24のアリーレン基であることが好ましい。
【0045】
31の基において、アリーレン基の炭素原子数は、一般に6〜24個であり、6〜12個が好ましい。アリーレン基の例としては、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−フェニレン及び1,5−ナフチレンを挙げることができ、特に1,4−フェニレンが好ましい。アリーレン基の置換基としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、そして炭素原子数1〜4のアルコキシ、炭素原子数6〜15のアリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル(1,2−エポキシエチル、1,2−エポキシプロピル、2,3−エポキシプロピル)、アジリジニル(1,2−イミノエチル、1,2−イミノプロピル又は2,3−イミノプロピル)、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ビニルフェノキシ、ビニルベンゾイルオキシまたはスチリルで置換された炭素原子数1〜4のアルコキシ基を挙げることができる。好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、特にF、Cl又はメチルが好ましい。
x2+y2+z2=100の条件にて、x2は50〜99.9モル%が好ましく、y2は0.01〜50モル%が好ましく(更に0.01〜20モル%が好ましく、特に0.01〜10モル%、最も好ましくは0.01〜5モル%)及びz2は0.01〜50モル%が好ましい。
【0046】
上記一般式 (III)においてL31がアセタール結合である場合、一般式 (III)のポリビニルアルコールは、下記の一般式(IIIa)によって表わすことができる。
【0047】
【化6】

【0048】
(但し、A31、R31、L32、Q31、x2、y2、z2、k1及びh1は、一般式 (III)と同義である。)
【0049】
更に、本発明のポリビニルアルコールは、その少なくとも一個のヒドロキシル基が下記の一般式(II)の基で置換されたものであることが好ましい。
【0050】
【化7】

【0051】
(但し、R21は、アルキル基、又はアルキル、アルコキシ、アリル、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基を表わし;
21は、アルキル基、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルコキシ基を表わし;
qは0または1であり;そして
nは0〜4の整数である(好ましくは0又は1で、特に0である))
【0052】
21が、アルキル基、又はアルキル、アルコキシ、アリールあるいはハロゲンで置換されたアルキル基を表わし;そして
21は、アルキル基、アルキル、アルコキシ、アリールあるいはハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル、アルコキシ、アリルあるいはハロゲンで置換されたアルコキシ基を表わすことが好ましい。
【0053】
また、R21が、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基を表わし;そして
21は、アルキル基、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルコキシ基を表わすことが好ましい。
【0054】
上記アルキル基またはアルコキシ基の炭素原子数は、1〜24個が好ましく、特に1〜12個が好ましい。
上記アルキル基の例としては、無置換のアルキル基(例、メチル、エチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、i−プロピル、i−ブチル、sec−ブチル、t−アミル及び2−エチルヘキシル);
1〜4のアルコキシで置換されたアルキル基(例えば、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2−n−ブトキシエチル、2−エトキシエチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、3−メトキシプロピル、3−エトキシプロピル、3−n−プロピルオキシプロピル、3−ベンジルオキシプロピルおよび2−メチルブチルオキシメチル);
アラルキル基(例えば、2−フェニルエチルおよび2−(4−n−ブチルオキシフェニル)エチル);
ビニルアルキル基(例えば、ビニルメチル、2−ビニルエチル、5−ビニルペンチル、6−ビニルヘキシル、7−ビニルヘプチル及び8−ビニルオクチル);
ビニルオキシアルキル基(例えば、2−ビニルオキシエチル、5−ビニルオキシペンチル、6−ビニルオキシヘキシル、7−ビニルオキシヘプチルおよび8−ビニルオキシオクチル);
オキシラニルアルキル基(例えば、3,4−エポキシブチル、4,5−エポキシペンチル、5,6−エポキシヘキシル、6,7−エポキシヘプチル、7,8−エポキシオクチルおよび6,7−エポキシオクチル);
アクリロイルオキシアルキル基(例えば、2−アクリロイルオキシエチル、3−アクリロイルオキシプロピル、4−アクリロイルオキシブチル、5−アクリロイルオキシペンチル,6−アクリロイルオキシヘキシル、7−アクリロイルオキシヘプチルおよび8−アクリロイルオキシオクチル);
メタクリロイルオキシアルキル基(例えば、2−メタクリロイルオキシエチル、3−メタクリロイルオキシプロピル、4−メタクリロイルオキシブチル、5−メタクリロイルオキシペンチル,6−メタクリロイルオキシヘキシル、7−メタクリロイルオキシヘプチルおよび8−メタクリロイルオキシオクチル);
クロトノイルオキシアルキル基(例えば、2−クロトノイルオキシエチル、3−クロトノイルオキシプロピル、4−クロトノイルオキシブチル、5−クロトノイルオキシペンチル,6−クロトノイルオキシヘキシル、7−クロトノイルオキシヘプチルおよび8−クロトノイルオキシオクチル)を挙げることができる。
【0055】
OR21のベンゼン環との置換位置は3または4位が好ましい。
上記一般式(II)の基をもつポリビニルアルコールは、上記一般式(II)の基をもつ繰り返す単位を、全繰り返し単位の0.1〜10モル%の範囲(特に0.1〜5モル%の範囲)で有することが好ましい。
【0056】
一般式(II)の基は、下記の一般式(IIa)の基を有するカルボン酸誘導体をポリビニルアルコールと反応させることにより、ポリビニルアルコールに導入することができる。
【0057】
【化8】

【0058】
一般式(IIa)において、R21、W21、n及びqは一般式(II)のものと同義であり、そしてXは、カルボン酸部位活性化体を形成するに必要な(X−CO−を活性化させることができる)基を表わす。
Xで表される基については、例えば泉屋信夫他著“ペプチド合成(第5章、丸善1975年刊)”に記載されている。例えば、活性エステルを形成する場合には、Xの例として、4−ニトロフェノキシ、N−オキシコハク酸イミドを挙げることができる。酸無水物を形成する場合には、対称型酸無水物及び混合酸無水物を挙げることができ、混合酸無水物の場合のXとしては、例えば、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、エチルオキシカルボニルオキシを挙げることができる。酸ハロゲン化物の場合のXとしては、例えば、塩素原子、臭素原子を挙げることができる。これらの、Xで表される原子群を有する化合物は必ずしも単離される必要はなく、反応系中で生成されたものをそのまま使用してもよい。上記カルボン酸誘導体としては、混合酸無水物および酸ハロゲン化物が好ましく、メタンスルホニルオキシ型の混合酸無水物および酸塩化物が特に好ましい。
【0059】
XがOHの場合(即ち酸の形)の一般式(IIa)の化合物例を下記に示す。
【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
【化13】

【0065】
【化14】

【0066】
【化15】

【0067】
本発明において、ポリビニルアルコールのポリマー鎖(炭素原子)に導入される置換基としては、特に下記一般式(IV)で表される置換基が好ましい。
【0068】
【化16】

【0069】
一般式(IV)において、L41はウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合を形成するに必要な原子群を表わし、R41はビニル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル基、スチリル、オキシラニルまたはアジリジニルを表わし(特にアクリロイルまたはメタクリロイル)、j及びeは、それぞれ0または1を表わし、dは2〜24の整数を表わし(特に2〜10の整数)、そしてuは0〜4の整数を表わす。
【0070】
ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールに導入されるべき基を有する化合物(例、前記一般式(IIa ))を、ポリビニルアルコールと反応させることにより、本発明の特定の基を有するポリビニルアルコールを得ることができる。
上記特定の基を有する化合物との反応に使用されるポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールは、一般に鹸化度70〜100%のものである。その例としては、変性されていないポリビニルアルコール、共重合変性されたポリビニルアルコール(変性基として、例えば、−COONa、−Si(OH)、−N(CH ・Cl、−C19COO、−SONaあるいは−C1225等が導入されている)、連鎖移動により変性されたポリビニルアルコール(変性基として、例えば、−COONa、−SHあるいはC1225S−等が導入される)、及びブロック重合により変性されたポリビニルアルコール(変性基として、例えば、−COOH、−CONH、−COOR(R:アルキル)あるいは−C 等が導入されている)を挙げることができる。重合度としては、100〜3000の範囲のものが好ましい。鹸化度は、80〜100%の範囲が好ましく、特に鹸化度85〜95%が好ましい。また重合度としては、100〜3000の範囲が好ましい。
【0071】
本発明のポリビニルアルコールの例を、下記に示す。
【0072】
【化17】

【0073】
上記一般式V−1において、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.1 86.3 1.7 12
ポリマーNo.2 85.0 3.0 12
ポリマーNo.3 87.7 0.3 12
ポリマーNo.4 70.0 18.0 12
ポリマーNo.5 86.9 1.1 12
ポリマーNo.6 98.5 0.5 1
ポリマーNo.7 97.8 0.2 2
ポリマーNo.8 96.5 2.5 1
ポリマーNo.9 94.9 4.1 1
───────────────────────────────────
【0074】
【化18】

【0075】
上記一般式V−2において、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
──────────────────────────────────────
ポリマーNo.10 86.3 1.7 12
ポリマーNo.11 81.7 0.3 18
ポリマーNo.11a 87.7 0.3 12
ポリマーNo.12 83.0 5.0 12
ポリマーNo.13 89.0 10.0 1
ポリマーNo.13a 78.0 10.0 12
───────────────────────────────────
【0076】
【化19】

【0077】
上記一般式V−3において、n、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
n x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.14 2 80.3 1.7 18
ポリマーNo.15 3 87.5 0.5 12
ポリマーNo.16 4 94.0 5.0 1
ポリマーNo.16a 4 83.0 5.0 12
ポリマーNo.17 5 86.9 1.1 12
ポリマーNo.18 6 87.7 0.3 12
───────────────────────────────────
【0078】
【化20】

【0079】
上記一般式V−4において、n、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
n x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.19 2 87.8 0.2 12
ポリマーNo.20 2 87.5 0.5 12
ポリマーNo.21 3 94.4 0.6 5
ポリマーNo.21a 3 87.4 0.6 12
ポリマーNo.22 4 86.4 1.6 12
ポリマーNo.23 5 96.0 2.0 2
ポリマーNo.23a 5 86.0 2.0 12
ポリマーNo.24 6 84.8 3.2 12
───────────────────────────────────
【0080】
【化21】

【0081】
上記一般式V−5において、n、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
n x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.25 2 87.5 0.5 12
ポリマーNo.26 3 97.4 0.6 2
ポリマーNo.26a 3 87.4 0.6 12
ポリマーNo.27 4 86.4 1.6 12
ポリマーNo.28 5 80.0 2.0 18
ポリマーNo.29 6 84.8 3.2 12
───────────────────────────────────
【0082】
【化22】

【0083】
上記一般式V−6において、Y、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
Y x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.30 No. 30−Y 86.3 1.7 12
ポリマーNo.31 No. 31−Y 97.3 1.7 1
ポリマーNo.32 No. 32−Y 87.4 0.6 12
ポリマーNo.33 No. 33−Y 80.8 1.2 18
ポリマーNo.34 No. 34−Y 86.3 1.7 12
───────────────────────────────────
【0084】
【化23】

【0085】
【化24】

【0086】
上記一般式V−7において、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.35 87.8 0.2 12
ポリマーNo.36 88.0 0.003 12
ポリマーNo.37 87.86 0.14 12
ポリマーNo.38 87.94 0.06 12
ポリマーNo.39 87.2 0.8 12
ポリマーNo.40 98.5 0.5 1
ポリマーNo.41 97.8 0.2 2
ポリマーNo.42 96.5 2.5 1
ポリマーNo.43 94.9 4.1 1
ポリマーNo.E 86.9 1.1 12
ポリマーNo.F 98.5 0.5 1
───────────────────────────────────
【0087】
【化25】

【0088】
上記一般式V−8において、n、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
n x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.44 3 87.8 0.2 12
ポリマーNo.45 5 87.85 0.15 12
ポリマーNo.46 6 87.7 0.3 12
ポリマーNo.47 8 87.7 0.3 12
───────────────────────────────────
【0089】
【化26】

【0090】
上記一般式V−9において、Y、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
Y x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.48 No. 48−Y 96.2 1.8 2
ポリマーNo.49 No. 49−Y 84.2 0.8 15
ポリマーNo.50 No. 50−Y 84.9 3.1 12
ポリマーNo.51 No. 51−Y 87.5 2.5 10
───────────────────────────────────
【0091】
【化27】

【0092】
【化28】

【0093】
上記一般式V−10において、n、R、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
n R x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.52 6 H 86.4 1.6 12
ポリマーNo.53 4 H 87.2 0.8 12
ポリマーNo.54 4 H 84.7 3.3 12
ポリマーNo.55 5 CH 78.8 6.2 15
ポリマーNo.56 9 CH 94.2 3.8 2
ポリマーNo.57 3 H 85.0 5.0 10
───────────────────────────────────
【0094】
【化29】

【0095】
上記一般式V−11において、n、R、x、y及びzの例を下記に示す。
───────────────────────────────────
n R x y z
(モル%) (モル%) (モル%)
───────────────────────────────────
ポリマーNo.58 2 H 87.5 2.5 10
ポリマーNo.59 4 H 84.5 0.5 15
ポリマーNo.60 5 CH 97.8 0.2 2
ポリマーNo.61 6 CH 94.5 4.1 1
ポリマーNo.62 9 H 97.3 1.7 1
───────────────────────────────────
【0096】
上記の特定のポリビニルアルコールは、一般式(I)又は(III) の特定の単位(yまたはy1)の基の部分あるいは一般式(II)の基を有する化合物(例、一般式(IIa) の化合物)をポリビニルアルコールに反応させることにより得ることができる。このような基は、ポリビニルアルコールと反応してエステル結合、ウレタン結合、アセタール結合等を形成し得るものである。
ポリビニルアルコールと上記特定の基を有する化合物を溶解するための溶媒(反応溶媒)としては、極性溶媒から非極性溶媒まで種々の溶媒を使用することができる。その例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、ピリジンなどの極性溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、そしてベンゼンやヘキサンなどの非極性溶媒を挙げることができる。これらは、単独でも組合わせて使用しても良い。特に、DMSOおよびエーテル類が好ましい。
【0097】
反応には必要に応じて触媒を用いることができる。混合酸無水物および酸ハロゲン化物によるエステル化の場合に用いられる塩基触媒としては有機および無機のいずれでもよい。例えば、水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム)、アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド)、水素化金属(例、水素化ナトリウム、水素化カルシウム)、アミン(例、ピリジン、トリエチルアミン、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU))、炭酸塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム)、酢酸塩(例、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム)を挙げげることができる。特にアミン類が好ましく、これらは溶媒として用いてもよい。
【0098】
イソシアナートによるウレタン化の場合に用いられる触媒としては、アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド)、金属化合物(例、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ、オクタン酸すず、亜鉛アセチルアセトナート)、アミン(例、ピリジン、トリエチルアミン、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタン(DABCO))を挙げることができる。
【0099】
アルデヒドによるアセタール化の場合に用いられる触媒としては、鉱酸(例、硫酸、塩酸)、カルボン酸(例、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、サリチル酸およびその誘導体)、スルホン酸(例、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、三フッ化ホウ素、五酸化リン、イオン交換樹脂(例、アンバーリスト)を挙げることができる。
【0100】
上記特定の基を有する化合物とポリビニルアルコールとを反応させる際の反応温度は、−80〜150℃の範囲が一般的であり、−20〜120℃の範囲が好ましく、特に−5〜90℃の範囲が好ましい。反応に於て、上記特定の基を有する化合物とポリビニルアルコールの繰り返し単位との比(仕込比)は、モル比で1/100〜1/1(化合物/繰り返し単位)が好ましく、特に1/50〜1/5が好ましい。
反応混合物から目的のポリマーを得るため、通常、反応混合物への貧溶媒の添加による再沈澱法、透析、凍結乾燥の操作により精製される。これらの操作は、適宜繰り返して、及び/又は適当に組み合わせて、行なうことができる。
【0101】
以下に、本発明の特定のポリビニルアルコールの合成例を示す。
[合成例1]
(上記ポリマーNo.1の合成)
攪拌器を装着した300ml三つ口フラスコにポリビニルアルコール(商品名:MPポリマーMP−203;(株)クラレ製;鹸化度88モル%)14.7gおよびモレキュラーシーブ4Aを用いて予め脱水したジメチルスルホキシド100mlを加えて、室温下撹拌しながら溶解した。70℃に昇温しメタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.776gのジメチルスルホキシド15ml溶液を滴下した。そのまま2時間、撹拌を続けた後ペーパータオルを用いて濾過し、ゴミ等の不純物を除去したのち、酢酸エチル1.25リットルに撹拌しながら滴下して、ポリマーを沈澱させた。沈澱物(ポリマー)を濾取し、メタノール600mlに浸して撹拌洗浄したのち、再び濾取し、乾燥して、塊状のポリマー(No.1)14.0g(収率91%)を得た。
【0102】
NMRスペクトル(溶媒DMSO−d
得られたポリマーNo.1には、主鎖プロトン、水酸基プロトン、アセチル基プロトンの他に、原料のMP−203では認められない下記プロトンが弱い強度で認められた。 δ=5.7、6.1ppm :ビニル基プロトンに帰属
【0103】
(ポリマーNo.1の可視吸収スペクトル測定およびメタクリロリル基の導入率yの決定)
50mlメスフラスコにポリマーNo.1を0.015g正確に秤取し、蒸留水を加えて、0.03%水溶液を調製した。この溶液を用いて、その可視吸収スペクトルを、可視吸紫外可視分光光度計(UV−2200、(株)島津製作所製)にて測定した。
極大吸収波長(λmax)=202nm
吸光度(202nm)=0.839
【0104】
一方、同様にして、ポリマーNo.1の原料に用いたポリビニルアルコール(MP−203、(株)クラレ製)の吸収スペクトルを測定した。202nmの吸光度は0.504であった。
更に、上記合成に用いたメタクリロイル基を有するイソシアネート化合物をメタノールと反応させた場合に得られるウレタン化合物1×10−4Mメタノール溶液を調製し、同様に吸収スペクトルを測定した。
極大吸収波長(λmax)=202nm
吸光度 =0.903
分子吸光係数(ε) =8.42×10−1・cm
従って、ポリマーNo.1のλmax =202nmの吸光度の増加は、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが導入されたことよることが明らかである。その導入率(y)を、上記吸光度の測定値より決定した(y=1.7)。
【0105】
[合成例2、3及び4]
(ポリマーNo.2、No.3、No.4の合成)
合成例1と同様にして、ポリマーNo.2、3及び4を合成した。
ポリマーNo.2、3及び4の可視吸収スペクトル測定結果は下のとおりであり、これより導入率yを決定した。
λmax Abs210 y
ポリマーNo.2 202nm 1.423 3.0
3 202nm 0.653 0.3
4 202nm 1.532(0.001%水溶液)18.0
【0106】
[合成例5]
(ポリマーNo.5の合成)
合成例1において、反応温度を70℃から室温に変更した以外は合成例1と同様にして、ポリマーNo.5を得た。
[合成例6〜34]
(ポリマーNo.6〜34の合成)
基本的には合成例1と同様にして、ポリマーNo.6〜34を得た。
【0107】
[合成例35]
(ポリマーNo.35の合成)
撹拌器を装着した500ml三つ口フラスコにポリビニルアルコール(MP−203、(株)クラレ製)26.4gおよびモレキュラーシーブ4Aを用いて予め脱水したジメチルスルホキシド(DMSO)225mlを加えて、室温下撹拌しながら溶解して、ポリビニルアルコール/DMSO溶液を調製した。
一方、撹拌器を装着した別の50ml三つ口フラスコに、メタンスルホニルクロリド1.55ml(20mmol)とテトラヒドロフラン(THF)20mlをくわえ、化合物2−2(前記化合物番号;4−(4−アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸)5.28g(20mmol)とジイソプロピルエチルアミン3.42ml(20mmol)をTHF20mlに溶解した溶液を、氷冷下に撹拌しながら滴下した。滴下後30分間、氷冷下で撹拌を続け、化合物2−2とメタンスルホン酸との混合酸無水物を調製した。
【0108】
先の、ポリビニルアルコール/DMSO溶液に、ジイソプロピルエチルアミン3.42ml(20mmol)、ジメチルアミノピリジン0.24g(2mmol)を加え、上記の混合酸無水物を室温下撹拌しながらゆっくりと添加した。室温下で6時間、撹拌を続けた後、一夜放置した。反応液は僅かに黄色を呈していた。ペーパータオルを用いてろ過し、ゴミ等の不純物を除去した後、酢酸エチル2.25リットルに撹拌しながら滴下して、ポリマーを沈澱させた。沈澱物(ポリマー)は白色綿状を呈していた。沈澱物を濾取し、乾燥して、塊状のポリマー(No.35)22.1g(収率84%)を得た。
【0109】
NMRスペクトル(溶媒DMSO−d
ポリマーNo.35には、主鎖プロトン、水酸基プロトン、アセチル基プロトンの他に、原料のMP−203には認められない下記プロトンが弱い強度で認められた。
δ=7.9、7.0ppm :フェニレン基プロトンに帰属
δ=6.3、6.2、5.9ppm :ビニル基プロトンに帰属
(ポリマーNo.35の紫外吸収スペクトル測定および導入率yの決定)
100mlメスフラスコにポリマーNo.35を0.1g正確に秤取し、蒸留水を加えて、0.1%水溶液を調製した。この溶液を用いて、その吸収スペクルを紫外可視分光光度計(UV−2200、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
極大吸収波長(λmax )=260nm
吸光度(Abs260) =0.788
【0110】
一方、同様にして、ポリマーNo.35の原料に用いたポリビニルアルコール(MP−203、(株)クラレ製)の吸収スペクトルを測定した。220〜400nmの波長範囲で、吸収極大は見られず、短波長側より長波長側に裾を引く、弱い吸収が見られた。260nmの吸光度は0.011であった。
更に、化合物2−2のメチルエステル1×10−4Mメタノール溶液を調製し、同様に吸収スペクトルを測定した。
極大吸収波長(λmax )=260nm
吸光度(Abs260) =1.84
分子吸光係数(ε) =1.84×10−1・cm
であった。
従って、ポリマーNo.35のλmax =260nmの吸収帯は、ポリビニルアルコールの水酸基に、化合物2−2がエステル結合により導入されたことは明らかである。その導入率(y)を、上記吸光度の測定値より決定した(y=0.21)。
【0111】
[合成例36、37及び38]
(ポリマーNo.36、37、38の合成)
合成例35と同様にして、ポリマーNo.36、37及び38を合成した。但し、使用した試薬量は下記の表の通りである。また、収率及び収量も下記表に示す。
【0112】
────────────────────────────────────
ポリマー No.36 No.37 No.38
────────────────────────────────────
[PVAのエステル化]
PVA MP−203(g) 26.4 26.4 26.4
DMSO(ml) 225 225 225
ジイソプロピルエチルアミン(ml) 0.34 1.71 10.3
ジメチルアミノピリジン(g) 0.024 0.12 0.72
────────────────────────────────────
[混合酸無水物の調製]
メタンスルホニルクロリド(g) 0.16 0.78 4.65
テトラヒドロフラン(ml) 2 10 60
化合物2−2(g) 0.53 2.64 15.84
ジイソプロピルエチルアミン(ml) 0.34 1.71 10.3
テトラヒドロフラン(ml) 2 10 60
────────────────────────────────────
収率(g/%) 21.1/80 23.5/89 22.3/84
────────────────────────────────────
【0113】
ポリマーNo.36、37、38の紫外吸収スペクトル測定結果は下記のとおりである。これより導入率yを決定した。
λmax Abs260 y
ポリマーNo.36 260nm 0.023 0.003
37 260nm 0.553 0.14
38 260nm 0.132 0.06
【0114】
[合成例E]
(ポリマーNo.Eの合成)
合成例38において、反応条件を室温6時間から45℃8時間に変更した以外は合成例38と同様にして、ポリマーNo.Eを得た。
【0115】
[合成例39]
(ポリマーNo.39の合成)
撹拌器を装着した500ml三ツ口フラスコに、ポリビニルアルコール(MP−203、(株)クラレ製)26.4gおよびモレキュラーシーブ4Aを用いて予め脱水したDMSO168mlを加え、室温下撹拌しながら溶解し、ポリビニルアルコールのDMSO溶液を調製した。
一方、撹拌器を装着した別の200ml三ツ口フラスコに、メタンスルホニルクロリド3.24ml(42mmol)とTHF21mlを加え、化合物2−211.1g(42mmol)とジイソプロピルエチルアミン7.32ml(42mmol)をTHF42mlに溶解した溶液を、氷冷下撹拌しながら滴下した。滴下後30分間氷冷下で撹拌を続け、化合物2−2とメタンスルホン酸との混合酸無水物を調製した。
【0116】
前記ポリビニルアルコールのDMSO溶液に、ジイソプロピルエチルアミン7.32ml(42mmol)と4−N,N−ジメチルアミノピリジン0.51g(4.2mmol)を加え、45℃に加熱しながら撹拌下に、前記混合酸無水物を1時間で均等に滴下した。滴下終了後、45℃で更に3時間撹拌を続けた後、室温に冷却し、ペーパータオルを用いてろ過した。この反応液に2−プロパノール134mlを加え、1.68lの酢酸エチル中に撹拌しながら滴下してポリマーを沈澱させた。沈澱物(ポリマー)を濾取し、次いで700mlのメタノールに投入して撹拌洗浄した後、再び濾取した。室温下減圧乾燥して、微黄色小塊状のポリマー(No.39)24.0g(収率91%)を得た。
前記のポリマーNo.35と同様にして紫外吸収スペクトルを測定し、260nmの吸光度より導入率yを決定した(y=0.80)。
【0117】
[合成例40、41、42及び43]
(ポリマーNo.44、45、46及び47の合成)
合成例35において、化合物2−2の代わりに、化合物2−1、化合物2−3、化合物2−4、化合物2−6を用いて、合成例35と同様にして合成を行い、ポリマーNo.44、45、46、47を得た。
【0118】
[合成例44及び45]
(ポリマーNo.53、54の合成)
撹拌器を装着した500ml三ツ口フラスコに、ポリビニルアルコール(MP−203、(株)クラレ製)44g、p−トルエンスルホン酸一水塩4.4g(23mmol)およびモレキュラーシーブ4Aを用いて予め脱水したDMSO200mlを加え、室温下撹拌しながら溶解した。この溶液に、4−(4−アクリロイルオキシブチルオキシ)ベンズアルデヒド(ポリマーNo.53のとき2.0g、ポリマーNo.54のとき8.0g)とDMSOの80mlからなる溶液を加え、室温で5時間撹拌を続けた。
反応混合物を3l(リットル)の酢酸エチル中に撹拌しながら滴下して、ポリマーを沈澱させた。沈澱物(ポリマー)を濾取し、次いで1lのメタノールに投入して撹拌洗浄した後、再び濾取した。室温下減圧乾燥して、白色小塊状のポリマーを得た。
ポリマーNo.53 収量41g(収率89%)
ポリマーNo.54 収量43g(収率83%)
【0119】
NMRスペクトル(溶媒DMSO−d
ポリマーNo.53および54には、主鎖プロトン、水酸基プロトン、アセチル基プロトンの他に、原料のMP−203には認められない下記プロトンが弱い強度で認められた。
δ=7.3、6.9ppm :フェニレン基プロトンに帰属
δ=6.3、6.2、5.9ppm :ビニル基プロトンに帰属
δ=5.5ppm :アセタールプロトンに帰属
なお、アルデヒドが存在する場合にみられる、δ=10ppm 付近にはシグナルが観測できなかった。従って、得られたポリマーは目的通りアセタール化されたことは明らかである。
【0120】
更に、4−(4−アクリロイルオキシブチルオキシ)ベンズアルデヒドとトリメチレンジオールとのアセタールを作成し、ついでこのアセタールの1×10−4Mメタノール溶液を調製し、その吸収スペクトルを測定した。
極大吸収波長(λmax )=272nm
吸光度(Abs272) =1.66
分子吸光係数(ε) =1.66×10−1・cm
であった。
ポリマーNo.53および54について、前記のポリマーNo.35と同様にして紫外吸収スペクトルを測定し、272nmの吸光度より導入率yを決定した。それぞれ、0.8および3.3であった。
【0121】
本発明の配向膜は、本発明の特定のポリビニルアルコール単独からなるものでも、あるいは従来から知られている配向膜用ポリマーとの混合物からなるものでも良い。混合物の場合、一般に公知のポリマーを全ポリマーの90重量%以下で使用することができるが、特に70重量%以下で使用されることが好ましい。
【0122】
上記本発明の特定のポリビニルアルコール以外で、本発明の配向膜に使用することができる重合性基を有するポリマーの例として、ビニル、オキシラニル又はアジリジニルを有するポリイミド、及びビニル、オキシラニル又はアジリジニルを有するゼラチンを挙げることができる。
これらのポリマーは、上記特定のポリビニルアルコールの合成と同様にして、ヒドロキシル基あるいはアミノ基が導入されたポリマーを用いて合成することができる。例えば、ポリイミドへの重合性基の導入は、ポリアミック酸のカルボキシル基に多価アルコールを反応させて、ポリアミック酸にヒドロキシル基を導入し、上記特定のポリビニルアルコールの合成で用いた重合性基を有する化合物(例、一般式(IIa)の化合物あるいはそのイソシアネート化合物)を上記ポリアミック酸のヒドロキシル基に反応させ、次いでこの重合性基を有するポリアミック酸を重合させることにより行なうことができる。ゼラチンへの重合性基の導入は、ゼラチンのリシン残基のε−アミノ基と上記特定のポリビニルアルコールの合成で用いた重合性基を有する化合物と反応させることにより行なうことができる。
【0123】
本発明の配向膜に使用することができる公知の他ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネートを挙げることができる。
【0124】
本発明の配向膜は、配向膜形成材料である、上記特定のポリビニルアルコールを含む塗布液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥してポリマー層を形成し、そしてそのポリマー層をラビング処理等の配向処理を施すことにより形成することができる。
塗布方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、エクストルージョンコーティング法及びバーコーティング法を挙げることができる。特にE型塗布法が好ましい。また、膜厚は0.1〜10μmが好ましい。
加熱乾燥は20℃ないし110℃で行なうことができ、60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができる。好ましくは5分間乃至30分間である。
【0125】
配向膜は、上記のようにポリマー層を、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用して、ラビング処理する等の配向処理を施すことにより得ることができる。配向膜は、その上に設けられる液晶性ディスコティック化合物等の液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。前記ラビング処理は、一般にポリマー層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはベルベット、ポリアミドやポリエステル等の繊維などを用いて一定方向に擦ることにより行なわれる。好ましくはベルベット等のラビング布が巻き付けられたラビングロールを用いてポリマー層表面を擦ることにより行なわれる。ラビングはバッチ法でも連続法で行なってもよい。
【0126】
本発明の光学補償シートは、液晶性化合物の層(光学異方層)を配向膜上に形成することにより得ることができる。液晶性化合物は、棒状の液晶性化合物でも、円盤状液晶性化合物でも良い。円盤状液晶性化合物が好ましい。また液晶性化合物は、配向膜のポリマーと化学結合をするために、重合性基を有することが好ましい。
これらの液晶化合物に関しては、例えば日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学(1994年刊)に記載されている。棒状の液晶性化合物としては、ビフェニル誘導体、安息香酸フェニルエステル誘導体、ベンジリデンアニリン誘導体、アゾベンゼン誘導体、アゾキシベンゼン誘導体、スチルベン誘導体および、それらのベンゼン環が飽和になったものあるいは複素環に置き換わったものを挙げることができる。これらの例として、CH2a+1-Ph-Ph-CN、 CH2a+1-Cy-Ph-CN、 CH2a+1-Ph-COO-Ph-CN、 CH2a+1-Ph-COO-Ph(F)-CN、 CH2a+1-Cy-COO-Ph-O(CH2b+1)、 CH2a+1-Cy-Ph-O(CH2b+1)、 CH2a+1-Cy-Ph-Ph-O(CH2b+1)、 またはCH2a+1-Cy-CH-Ph-Ph(F)-CH2b+1(但し、Phはフェニレン、Cyはシクロヘキセン、Ph(F) はF置換フェニレン、a及びbはそれぞれ1〜24の整数を表わす。)で表わされる化合物に重合性基(例、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ビニル、ビニルオキシ、スチリルまたはクロロアクリルオキシ)が導入された化合物、そして、D.J.Broer他著、Makromol.Chem.,189巻、185ページ(1988年刊)および同誌、190巻、2255ページ(1989年刊)に記載の化合物を挙げることができる。
【0127】
上記ディスコティック(円盤状)液晶性化合物は、一般的にディスコティック構造をこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。
側鎖部を除いた母核部分の円盤状の形態的特徴は、例えば、その原形化合物である水素置換体について、以下のように表現され得る。
まず、母核の分子の大きさを以下のようにして求める。
1)分子(母核の分子)について、できる限り平面に近い、好ましくは平面分子構造を設計する。この場合、結合距離、結合角としては、軌道の混成に応じた標準値を用いることが好ましく、例えば日本化学会編、化学便覧改訂4版基礎編、第II分冊15章(1993年刊 丸善)を参照することができる。
2)前記1)で得られた構造を初期値として、分子軌道法や分子力場法にて構造最適化を行なう。方法としては、例えば、Gaussian92、MOPAC93、CHARMm/QUANTA、MM3が挙げられ、好ましくはGaussian92である。
3)構造最適化された各原子にファンデルワールス半径で定義される球を付与し、これによって分子の形状を記述する。
4)前記3)で形状の得られた分子部分が入り得る最少の直方体の3個の稜をa、b、cとする。
任意性をより少なくするためには、上記3)以降を以下のように行うことが好ましい
3’)構造最適化によって得られた構造の重心を原点に移動させ、座標軸を慣性主軸(慣性テンソル楕円体の主軸)にとる。
4’)各原子にファンデルワールス半径で定義される球を付与し、これによって分子の形状を記述する。
5’)ファンデルワールス表面上で各座標軸方向の長さを計測し、それらそれぞれをa、b、cとする。
以上の手順により求められたa、b、cをもちいて円盤状化合物の母核の形態は、a≧b>cかつa≧b≧a/2を満足する構造と定義することができる。好ましくはa≧b>cかつa≧b≧0.7aを満足する構造である。また、b/2>cであることが、さらに好ましい。
【0128】
本発明で使用することができる円盤状液晶性化合物としては、日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学(1994年刊)に記載されている、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、およびフェニルアセチレンマクロサイクルであり、さらに、日本化学会編、“化学総説No.15 新しい芳香族の化学”(1977年 東京大学出版会刊)に記載の環状化合物およびそれらの複素原子置換等電子構造体を挙げることができる。また、上記金属錯体の場合と同様に、水素結合、配位結合等により複数の分子の集合体を形成して円盤状の分子となるものでもよい。
【0129】
ディスコティック(円盤状)液晶性化合物は、ディスコティック構造を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された構造を有する。母核化合物として好ましくは、ディスコティックネマティック(N)相を形成するものであり、特に好ましくはトリフェニレンおよびトルキセンを挙げることができる。側鎖としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基及びハロゲンを挙げることができ、特にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基が好ましい。これらの基は、C.Hansch、A.Leo、R.W.Taft著、ケミカルレビュー誌(Chem.Rev.)1991年、91巻、165−195ページ(アメリカ化学会)に記載されている。更に側鎖中に、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基のような官能基、また側鎖中にアリール基、複素環基を含んでいても良い。
【0130】
本発明の円盤状液晶性化合物は、置換基として、それ自身中に新しい結合を形成することができるか、あるいは他の化合物(同種また異種)と結合することができ、そして配向膜のポリマーと化学結合するすることができる基を有することが好ましい。このような基は、同種の基と反応して、新しい結合を形成するものであるか、あるいは異種の基と反応して新しい結合を形成するものである。このような基の例は、S.R.サンドラーおよびW.カロー(S.R.Sandler ,W.Karo)著、オーガニック ファンクショナル グループ プレパレーションズ(Oganic Functional Group Preparations)第1巻および第2巻(アカデミックプレス社、ニューヨーク、ロンドン 1968年刊)に記載されている。それらのうち、重合性基が好ましく、例えば多重結合(構成原子は、炭素原子、非炭素原子のいずれでもよい)、オキシラン、アジリジンなどの複素小員環が好ましく、さらにR.A.M.Hikmet らの研究報告〔Macromolecules,25巻,4194頁(1992)〕及び〔Polymer ,34巻,8号,1763頁(1993年)〕、D.J.Broer らの研究報告〔Macromolecules,26巻,1244頁(1993)〕に記載されているような、二重結合すなわちアクリル基、ビニルエーテル基およびエポキシ基が好ましい。
【0131】
好ましい円盤状液晶性化合物としては、下記のものを挙げることができる。
【0132】
【化30】

【0133】
上記D−1−1に於て、R61、R62、R64、R65、R66及びJの例を下記に示す。
────────────────────────────────────────
化合物 R6162646566
────────────────────────────────────────
TP−1 H H H H H -(CH)OCO-
TP−2 H H H H H -(CH)OCO-
TP−3 H H H H H -(CH)OCO-
TP−4 H H H H H -(CH)OCO-
TP−5 H H H H H -(CH)OCO-
TP−6 H H H H H -(CH)OCO-
TP−7 H H H H H -(CH)OCO-
TP−8 H H H H CH -(CH)OCO-
TP−9 H H H H CH -(CH)OCO-
TP−10 CH H H H CH -(CH)OCO-
TP−11 CH CH H H H -(CH)OCO-
TP−12 H CH H H H -(CH)OCO-
TP−13 CH H H H H -(CH)OCO-
TP−14 CH H H H H -(CH)OCO-
TP−15 CH H H H H -(CH)OCO-
TP−16 CH CH H H H -(CH)OCO-
TP−17 H CH H H H -(CH)OCO-
TP−18 CH H H H CH -(CH)OCO-
TP−19 CH H H H CH -(CH)OCO-
TP−20 H CH H H CH -(CH)OCO-
TP−21 H H H H n-CH -(CH)OCO-
TP−22 H H H H H -(CH)OCHOCO-
TP−23 H H H H H -(CHO)CHOCO-
TP−24 CH H H H H -(CHO)CO-
TP−25 H H H H H -(CHO)CO-
TP−26 H H H CH CH -(CH)CO-
TP−27 H H CH H H -(CH)OCO-
TP−28 H H CH H H -(CH)OCO-
TP−29 H H CH H H -(CH)OCO-
TP−30 H H CH H H -(CH)OCO-
────────────────────────────────────────
【0134】
【化31】

【0135】
【化32】

【0136】
【化33】

【0137】
【化34】

【0138】
【化35】

【0139】
【化36】

【0140】
【化37】

【0141】
【化38】

【0142】
【化39】

【0143】
【化40】

【0144】
【化41】

【0145】
また、これらの円盤状液晶性化合物は、単独のみならず混合組成物として用いることも可能である。円盤状液晶性化合物に添加できる化合物としては、液晶性を持たない円盤状液晶性化合物、あるいは他の化合物(低分子、高分子、液晶性、非液晶性のいずれでも良く、分子間あるいは分子内に新たに結合を形成し得るもの、形成し得ないもののいずれでも良い;例、可塑剤、重合性モノマー、界面活性剤、ポリマー)。
【0146】
本発明の光学補償シートは、上述したように、一般に透明支持体上に、重合性基等の官能基を有するポリマー(例、本発明の特定のポリビニルアルコール)の層のラビング処理した膜である配向膜を形成し、次いで配向膜上に光学異方層を形成することにより得ることができる。
本発明の光学異方層は、液晶性化合物から形成され、好ましくは円盤状液晶性化合物から形成される。これらの化合物は、上述したように、ビニル、オキシラニル又はアジリジニル等の官能基を有していることが好ましい。
上記光学異方層は、一般に円盤状液晶性化合物等の液晶性化合物(及び他の化合物)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマティック相形成温度(ディスコティック液晶性化合物の場合)まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。あるいは、上記光学異方層は、重合性基を有する円盤状液晶性化合物(及び他の化合物(例えば重合性モノマー、光重合開始剤))を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマティック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、さらに冷却することにより得られる。重合性基を有する円盤状液晶性化合物は、上記のように重合硬化した後は、液晶性を失っている。
本発明に用いる円盤状(ディスコティック)液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。光学異方層の膜厚は0.1μm ないし20μm が好ましく、前述のポリビニルアルコールと同様に塗布することができる。
【0147】
本発明においては、配向膜は、ビニル、オキシラニル又はアジリジニル等の官能基を有するポリマーからなる。このため、上記官能基を有する光学異方層を配向膜上に形成し、これらの二層に、例えばUV光を照射した場合、配向膜と光学異方層の官能基(例、ビニル)が互いに反応することによって、これらの二層は化学的に結合することになる。このようにして得られた光学補償シートを、長期間保存あるいは使用した場合であっても、光学異方層は配向膜から剥離するようなことはほとんどない。
従って、配向膜と光学異方層の官能性基は、互いに反応するものが好ましく、特にビニル、オキシラニル又はアジリジニル等の重合性基(特に同じ重合性基)が好ましい。
【0148】
本発明の光学異方層は、一般に光学補償シートの法線方向から傾いた方向に、0以外のレターデーションの絶対値の最小値を有する(光軸を持たない)。本発明の光学異方層を含む光学補償シートの代表的な構成例を図3に示す。図3において、透明支持体31、配向膜32そしてディスコティック化合物の層(光学異方層)33が、順に積層され、光学補償シートを構成している。Rは配向膜のラビング方向を示す。n 及びn は、光学補償シートの三軸方向の屈折率を表わし、正面から見た場合にn ≦n≦n の関係を満足する。βは、Re(レターデーション)の最小値を示す方向の光学異方層の法線34からの傾きである。
本発明の光学補償シートが通常有する負の一軸性は、一般にn<n =n を満足する。実際には、|n −n |/|n−n |≦0.2を満足すれば良い。
TN−LCD及びTFT−LCDの視野角特性を改善するために、Reの絶対値の最小値を示す方向が、光学異方層の法線34から5〜50度(傾きの平均値)傾いていることが好ましく、更に10〜40度が好ましい(上記β)。
更に、上記シートは、下記の条件:
50≦[(n+n )/2−n ]×D≦400(nm)
(但し、Dはシートの厚さ)を満足することが好ましく、更に下記の条件:
100≦[(n+n )/2−n ]×D≦400(nm)
【0149】
本発明の光学補償シートを備えた液晶表示装置の代表的構成例を図4に示す。図4において、透明電極を備えた一対の基板とその基板間に封入されたねじれ配向したネマティック液晶とからなる液晶セルTNC、液晶セルの両側に設けられた一対の偏光板A、B、液晶セルと偏光板との間に配置された光学補償シートRF、RF 及びバックライトBLが、組み合わされて液晶表示装置を構成している。光学補償シートは一方のみ配置しても良い(即ち、RFまたはRF )。R は光学補償シートRF の、正面から見た場合のラビング方向を示し、Rは光学補償シートRF のラビング方向を示す。液晶セルTNCの実線の矢印は、液晶セルの偏光板B側の基板のラビング方向を表わし、液晶セルTNCの点線の矢印は、液晶セルの偏光板A側の基板のラビング方向を表わす。PA及びPBは、それぞれ偏光板A、Bの偏光軸を表わす。
【実施例】
【0150】
次に本発明を実施例に基づき更に詳しく説明する。
[実施例1〜4及び比較例1]
(配向膜の形成)
ガラス基板上に、後述する表1に示すポリビニルアルコールを含む下記の塗布液をバーコーターにて塗布し、80℃10分間加熱乾燥して0.8μm の膜厚のポリマー層を形成した。(以下「部」は『重量部』を意味する)
[塗布液]
表1に示されたポリビニルアルコール 1.0部
水 18.0部
メタノール 6.0部
得られたポリマー層の表面を、ラビングロール外径:80mm、ガラス基板搬送速度:100m/分、ラビングロール回転数:1000rpm 及び基板搬送張力:1kgf/cm基板巾、の条件にてラビング処理を行ない、配向膜を形成した。
【0151】
(円盤状液晶性化合物の層(光学異方層)の形成)
ラビング処理を施したガラス基板の配向膜上に、TP−3(前記トリフェニレン化合物)のメチルエチルケトン10重量%溶液を、スピンコーターにより3000rpmで塗布し、乾燥させることにより、円盤状液晶性化合物の層(光学異方層)を形成した。
【0152】
(円盤状液晶性化合物の層の配向性の評価)
配向膜及び光学異方層が設けられたガラス板を、ホットステージ(FP82型、メトラー社製)上で加熱しながら偏光顕微鏡(OPTIPHOT-POL、日本光学(株)製) を用いて、その光学異方層の配向状態を観察した。実施例1〜4及び比較例1で得られた光学異方層は、クロスニコル下でも明るく見え、光学的異方性を示した。その得られた光学異方層の上記観察結果を表1に示す。
【0153】
表1
───────────────────────────────────
実施例 ポリマー層 配向性
前記ポリマー番号
───────────────────────────────────
実施例1 No.1 均一配向
実施例2 No.35 均一配向
実施例3 No.39 均一配向
実施例4 No.53 均一配向
───────────────────────────────────
比較例1 MP−203 シュリーレン組織残存
((株)クラレ製)
───────────────────────────────────
【0154】
[実施例5〜34及び比較例2〜3]
(配向膜の調製)
トリアセチルセルロースフィルム(厚さ100μm 、富士写真フイルム(株)製、フジタック)に、後述する表2に示すポリビニルアルコールを含む下記の塗布液をバーコーターにて塗布し、80℃10分間加熱乾燥して0.8μm の膜厚のポリマー層を形成した。
[塗布液]
表2に示されたポリビニルアルコール 1.0部
水 18.0部
メタノール 6.0部
得られたポリマー層の表面を、ラビングロール外径:80mm、フイルム搬送速度:100m/分、ラビングロール回転数:1000rpm 及びフイルム搬送張力:1kgf/cm基板巾、の条件にてラビング処理を行ない、配向膜を形成した。
【0155】
(円盤状液晶性化合物の層(光学異方層)の形成)
ラビング処理を施したフイルム上の配向膜の上に、下記の組成の円盤状液晶性化合物層形成用塗布液を、バーコーターにより塗布し、乾燥させることにより、円盤状液晶性化合物の塗布層を形成した。
[塗布液]
セルロースアセテートブチレート 12部
(CAB531、イーストマンケミカル社製)
ディスコティック液晶性化合物 TP−3(前記化合物) 100部
トリプロピレングリコールジアクリレート 10部
(SR306、ソマール(株)製)
光重合開始剤 2部
(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)
メチルエチルケトン 400部
この塗布層を有するフイルムを、140℃の加熱ゾーンを2分間で通過させ、ついで塗布層にUV光を照射して硬化させることにより、配向した円盤状液晶性化合物の配向状態を固定した薄膜(光学異方層、層厚2μm)を形成し、光学補償シートを得た。
【0156】
(円盤状液晶性化合物の層(光学異方層)の耐湿熱試験前後の配向性の評価)
配向膜及び光学異方層が設けられたフイルムを、ホットステージ(FP82型、メトラー社製)上で加熱しながら偏光顕微鏡(OPTIPHOT-POL、日本光学(株)製) を用いて、その光学異方層の配向状態を観察した。実施例5〜34及び比較例2〜3で得られた光学異方層は、クロスニコル下でも明るく見え、光学的異方性を示した。その得られた光学異方層の上記観察結果を表2に示す。
さらに、得られたフイルムの配向性を、75℃、湿度95%の条件下に100時間放置した後に上記同様にして観察し、耐湿熱性を評価した。得られた結果を表2に示す。
配向性の評価は、下記のように行なった。
AA:均一配向
BB:シュリーレン組織残存
耐湿熱性の評価は、下記のように行なった。
AA:均一配向
BB:耐湿熱試験20時間後レチキュレーションの発生
CC:耐湿熱試験5時間後レチキュレーションの発生
【0157】
表2
───────────────────────────────────
実施例 ポリマー層 配向性
前記ポリマー番号 耐湿熱前 耐湿熱後
───────────────────────────────────
実施例5 No.1 AA AA
実施例6 No.2 AA AA
実施例7 No.3 AA AA
実施例8 No.4 AA AA
実施例9 No.5 AA AA
実施例10 No.5/MP-203=3/1 AA AA
実施例11 No.5/**PVA-117=4/1 AA AA
実施例12 No.10 AA AA
実施例13 No.14 AA AA
実施例14 No.20 AA AA
実施例15 No.25 AA AA
実施例16 No.26 AA AA
実施例17 No.29 AA AA
実施例18 No.35 AA AA
実施例19 No.36 AA AA
実施例20 No.37 AA AA
実施例21 No.38 AA AA
実施例22 No.39 AA AA
実施例23 No.39/MP-203=3/1 AA AA
実施例24 No.39/**PVA-117=4/1 AA AA
実施例25 No.44 AA AA
実施例26 No.45 AA AA
実施例27 No.48 AA BB
実施例28 No.49 AA AA
実施例29 No.51 AA AA
実施例30 No.53 AA AA
実施例31 No.35/MP-203=1/1 AA −−
実施例32 No.E AA −−
実施例33 No.E/MP-203=1/3 AA −−
実施例34 No.E/**PVA-117=4/1 AA −−
───────────────────────────────────
比較例2 MP-203 AA CC
比較例3 **PVA-117 AA CC
───────────────────────────────────
備考: *、** (株)クラレ製
【0158】
[実施例35〜46及び比較例4〜9]
実施例5において、TP−3に代えて表3に示す円盤状液晶性化合物を用い、そしてポリマーNo.1に代えて表3に示すポリマーを使用した以外は、実施例5と同様にして光学補償シートを作成した。
実施例35〜46及び比較例4〜9で得られたシートについて、実施例5と同様にして、耐湿熱試験前後の配向性を評価した。
また得られた光学異方層は、クロスニコル下で高い透過性を示し、光学的異方性が観測された。上記結果を表3に示す。
【0159】
表3
───────────────────────────────────
実施例 ポリマー層 ディスコティック 配向性
前記ポリマー番号 化合物番号 耐湿熱前 耐湿熱後
───────────────────────────────────
実施例35 No.1 TP−4 AA AA
実施例36 No.1 TP−5 AA AA
実施例37 No.1 TP−8 AA AA
実施例38 No.1 TP−17 AA AA
実施例39 No.1 TP−23 AA AA
実施例40 No.1 TP−28 AA AA
実施例41 No.39 TP−4 AA AA
実施例42 No.39 TP−5 AA AA
実施例43 No.39 TP−8 AA AA
実施例44 No.39 TP−17 AA AA
実施例45 No.39 TP−23 AA AA
実施例46 No.39 TP−28 AA AA
───────────────────────────────────
比較例4 ポリイミド TP−4 BB CC
比較例5 ポリイミド TP−5 BB CC
比較例6 ポリイミド TP−8 BB CC
比較例7 MP-203 TP−17 AA CC
比較例8 MP-203 TP−23 AA CC
比較例9 MP-203 TP−28 AA CC
───────────────────────────────────
備考: * (株)クラレ製
【0160】
[実施例47〜52及び比較例10〜11]
ゼラチン薄膜(0.1μm)を塗設したトリアセチルセルロースフィルム(厚さ100μm 、富士写真フイルム(株)製)上に、後述する表4に示すポリビニルアルコールを含む下記の塗布液をバーコーターにて塗布し、90℃温風で加熱乾燥して0.8μm の膜厚のポリマー層を形成した。
[塗布液]
表4に示されたポリビニルアルコール 1.0部
水 18.0部
メタノール 6.0部
得られたポリマー層の表面を、ラビングロール外径:80mm、フイルム搬送速度:100m/分、ラビングロール回転数:1000rpm 及びフイルム搬送張力:1kgf/cm基板巾、の条件にてラビング処理を行ない、配向膜を形成した。
面内の主屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、厚さをdとした時、トリアセチルセルロースフィルムは、|nx−ny|×d=6nm、{(nx+ny)/2−nz}×d=40nmであり、ほぼ負の一軸性であり、光軸がほぼフイルムの法線方向にあった。
【0161】
(円盤状液晶性化合物の層(光学異方層)の形成)
ラビング処理を施したフイルム上の配向膜の上に、下記の組成の円盤状液晶性化合物層形成用塗布液を、ワイヤーバーで塗布(#3バー使用)し、乾燥させることにより、円盤状液晶性化合物の塗布層を形成した。
[塗布液]
セルロースアセテートブチレート 4部
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)
ディスコティック液晶性化合物 TP−3 182部
エチレングリコール変性トチメチロールプロパン 18部
トリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)
光重合開始剤 6部
(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)
増感剤 2部
(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)
メチルエチルケトン 343部
この塗布層を有するフイルムを、金属の枠に貼り付けて120℃の恒温槽中で3分間加熱し、円盤状液晶性化合物を配向させた後、120℃のまま120W/cmの高圧水銀灯を用いて1秒間UV照射し、ついで室温まで放冷することにより、配向した円盤状液晶性化合物の配向状態を固定した薄膜(光学異方層、層厚2μm)を形成し、光学補償シートを得た。
【0162】
実施例47〜52及び比較例10〜11で得られたシートの光学異方層は、クロスニコル下で高い透過性を示し、光学的異方性が観測された。
更に、得られたシートについて、セロファンテープ(粘着テープ)を用い、配向膜と光学異方層との間の接着性を評価した。即ち、セロファンテープを光学異方層表面に貼りつけ、テープを光学異方層と平行に引っ張って剥した。そして接着性を以下のように評価した。
AA:剥したテープの表面には、いかなる層も付着していなかった。
CC:剥したテープの表面には、光学異方層が付着していた。
上記結果を表4に示す。
【0163】
表4
────────────────────────────────────
実施例 ポリマー層 ディスコティック 接着性
前記ポリマー番号 化合物番号
────────────────────────────────────
実施例47 No.1 TP−3 AA
実施例48 No.39 TP−3 AA
実施例49 No.53 TP−3 AA
実施例50 No.1/No.39=1/1 TP−3 AA
実施例51 No.1/No.53=1/1 TP−3 AA
実施例52 No.39/No.53=1/1 TP−3 AA
────────────────────────────────────
比較例10 MP-203 TP−3 CC
比較例11 **PVA-117 TP−3 CC
────────────────────────────────────
備考: *、** (株)クラレ製
【0164】
実施例47〜52の光学補償シートは、重合性基を有するポリマーからなる配向膜上に重合性基を有する円盤状液晶性化合物からなる光学異方層を塗布形成し、これらの層を硬化させることにより作成されている。このためこれらの層は強く結合している。一方、比較例10〜11の光学補償シートは、重合性基をもたないポリマーからなる配向膜上に重合性基を有する円盤状液晶性化合物からなる光学異方層を塗布形成し、光学異方層のみ硬化させることにより作成されている。これらの層は容易に剥離される。従って、実施例47〜52の光学補償シートの二層は、互いに化学的に結合していることが確認された。
【0165】
なお、上述実施例に用いられたディスコティック液晶性化合物を前述の円盤状の形態的特徴に照合してみると、a=1としたときb、cはそれぞれ0.89および0.29となる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の配向膜の代表的構造を示す断面図である。
【図2】本発明の光学補償シートの代表的構造を示す断面図である。
【図3】本発明の光学補償シートの光学異方層の代表的構造を示す模式図である。
【図4】本発明の光学補償シートを有する液晶表示装置の代表的構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0167】
11、21、31 透明支持体
12 ポリマー層
22、32 配向膜
23、33 光学異方層
34 光学異方層の法線
A、B 偏光板
PA 偏光板Aの偏光軸
PB 偏光板Bの偏光軸
RF、RF 光学補償シート
BL バックライト
光学補償シートRF のラビング方向
光学補償シートRF のラビング方向
TNC 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に設けられた配向膜であって、配向膜が、ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基で、少なくとも一個のヒドロキシル基が置換されたポリビニルアルコールからなることを特徴とする配向膜。
【請求項2】
ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基が、エーテル結合、ウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合を介してポリビニルアルコールのポリマー鎖に結合している請求項1に記載の配向膜。
【請求項3】
ビニル部分、オキシラニル部分またはアジリジニル部分を有する基が、芳香族環を持たない請求項1に記載の配向膜。
【請求項4】
置換されたポリビニルアルコールが、下記の一般式(I):
【化1】

(但し、L11は、エーテル結合、ウレタン結合、アセタール結合またはエステル結合を表わし;
11は、アルキレン基またはアルキレンオキシ基を表わし;
12は、R11とQ11とをつなぐ連結基を表わし;
11は、ビニル、オキシラニルまたはアジリジニルを表わし;
x1+y1+z1=100の条件にて、x1は10〜99.9モル%、y1は0.01〜80モル%、及びz1は0〜70モル%であり;そして
k及びhは、それぞれ0または1である)
で表わされる請求項1に記載の配向膜。
【請求項5】
置換されたポリビニルアルコールが、下記の一般式(II):
【化2】

(但し、R21は、アルキル基、又はアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基を表わし;
21は、アルキル基、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ビニル、ビニルオキシ、オキシラニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシあるいはクロトノイルオキシで置換されたアルコキシ基を表わし;
qは0または1であり;そして
nは0〜4の整数である)
で表わされる基で少なくとも一個のヒドロキシル基が置換されたポリビニルアルコールからなる請求項1に記載の配向膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−47806(P2007−47806A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239473(P2006−239473)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【分割の表示】特願平8−48197の分割
【原出願日】平成8年2月8日(1996.2.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】