説明

配管取付用ブラケット

【課題】軽量のため取扱性がよく耐食性がある配管取付用ブラケットの提供。
【解決手段】配管取付用ブラケット10を構成するブラケット本体11とバンド部12とをそれぞれFRPから形成して、鉄等の金属からブラケットを形成する場合に比べて配管取付用ブラケット10を軽量する。しかも、ブラケット本体11を、第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eからなる断面コ字形にしたので、鉄に比べて強度が大きくはないFRPであっても、配管5を支持するための十分な強度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁と橋脚を有する構造物に水平方向に延びる配管を取り付けるための配管取付用ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や鉄道等の橋梁上面の雨水等を排水するために、橋梁の下面から橋脚の鉛直面にかけて複数の排水管を直列に継ぎ合わせて排水構造が構成されている。この排水構造のうち、橋梁の裏面に略水平に沿って複数の配管が並べられ、これらの配管が橋梁の裏面に設けられたブラケットで支持された従来例がある(例えば、特許文献1)。
一般的に、配管を取り付けるためのブラケットは、重量のある配管を支持するために、例えば、ステンレスや鉄等の金属製とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−205126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属製のブラケットは重いので、取扱性がよくなく、特に、高い位置での取付作業では、作業員に大きな負担を強いることになる。
さらに、ブラケットが鉄製である場合では、錆びや塩害、紫外線等の耐食性に問題があるので、塗装を施さなければならないが、この塗装も数年で剥げる等の不都合が生じる。
【0005】
本発明の目的は、軽量のため取扱性がよく耐食性がある配管取付用ブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配管取付用ブラケットは、橋梁と橋脚を有する構造物に水平方向に延びる配管を取り付ける配管取付用ブラケットであって、前記配管の下部を支持するとともに前記構造物に取り付けられるブラケット本体と、このブラケット本体に取り付けられ前記配管の周囲を覆うバンド部とを備え、前記ブラケット本体と前記バンド部とはそれぞれガラス繊維強化プラスチックから成形され、前記ブラケット本体は断面コ字形に形成されていることを特徴とする。
この構成の本発明では、配管取付用ブラケットを構成するブラケット本体とバンド部とをそれぞれガラス繊維強化プラスチック(FRP)から形成したので、鉄等の金属からブラケットを形成する場合に比べて配管取付用ブラケットが軽量となり、施工時やメンテナンス時での取り扱いが容易となる。そして、FRPから形成されるブラケット本体とバンド部とは塗装をしなくても錆びることがなく、かつ、紫外線や塩害にも強く、耐食性を強いものにできる。そのため、塗装等のメンテナンスが不要とされる。
しかも、配管の荷重を受けるブラケット本体の断面をコ字形にしたので、鉄に比べて強度が大きくはないFRPであっても、配管を支持するための十分な強度を得ることができる。
【0007】
ここで、本発明では、前記ブラケット本体は、前記配管の下部が支持されるとともに前記バンド部の両端部が取り付けられる水平部と、この水平部の端部と一体に形成された一端部と前記構造物の鉛直側面に取り付けられる他端部とを有する鉛直部と、を備えた構成が好ましい。
この構成の本発明では、鉛直部を構造物の鉛直側面に取り付けるから、配管取付用ブラケットを構造物に取り付けるにあたり、上向き作業がないので、施工やメンテナンスが容易となる。
【0008】
前記ブラケット本体の内部には補強用のステンレス板が埋設されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、ステンレス板がブラケット本体の内部に埋設されているので、強度が大きくなり、重量のある配管を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の断面図。
【図2】第一実施形態にかかる配管取付用ブラケットの正面図。
【図3】(A)は図2のA−A断面図、(B)は図2のB−B断面図、(C)は図2のC−C端面図。
【図4】配管取付用ブラケットの平面図。
【図5】(A)(B)はそれぞれ第一実施形態の変形例の要部を示す断面図。
【図6】本発明の第二実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の断面図。
【図7】第二実施形態にかかる配管取付用ブラケットの正面図。
【図8】(A)は図7のA−A方向から見た図、(B)は図7のB−B断面図。
【図9】(A)(B)はそれぞれ第二実施形態の変形例の要部を示す断面図。
【図10】本発明の第三実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の断面図。
【図11】第三実施形態にかかる配管取付用ブラケットの全体を示す正面図。
【図12】(A)は図11のA−A断面図、(B)は図11のB−B断面図、(C)は図11のC−C端面図、(D)は図11のD−D端面図。
【図13】第三実施形態にかかる配管取付用ブラケットの平面図。
【図14】第三実施形態の変形例を示す断面図。
【図15】本発明の第四実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の断面図。
【図16】第四実施形態にかかる配管取付用ブラケットの全体を示す正面図。
【図17】は図16のA−A断面図、(B)は図16のB−B断面図、(C)は図16のC−C方向から見た図。
【図18】配管取付用ブラケットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
図1から図5に基づいて第一実施形態を説明する。
図1は第一実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の正面図である。
図1に示される通り、建造物は橋梁1が橋脚2に支持された高速道路であり、橋梁1の上面は高速道路の路面3となっている。この路面3の両側には路肩に垂直側壁3Wが設けられている。
橋梁1は橋桁4を備え、この橋桁4の鉛直側面に沿って配管5が図面を貫通する方向に複数接続されている。この配管5は排水管であり、一端が連結管6に連結され他端が図示しない縦樋に連結される。これにより、橋梁1の路面3に降った雨及び雪が溶けた水が連結管6、配管5及び図示しない縦樋を介して橋脚2の下部に流出される。
配管5は配管取付用ブラケット10に取り付けられ、この配管取付用ブラケット10は橋桁4の鉛直側面に取り付けられている。
【0011】
配管取付用ブラケット10の構成が図2から図5に示されている。
図2は配管取付用ブラケット10の全体を示す正面図であり、図3(A)は図2のA−A断面図、図3(B)は図2のB−B断面図、図3(C)は図2のC−C端面図であり、図4は配管取付用ブラケットの平面図であり、図5はブラケット本体の変形例の要部を示す断面図である。
図2において、配管取付用ブラケット10は、円筒状の配管5の下部を支持するとともに橋桁4の鉛直側面に取り付けられるブラケット本体11と、このブラケット本体11に取り付けられるとともに配管5の周囲を覆うバンド部12とを備えて構成され、これらのブラケット本体11とバンド部12とはそれぞれガラス繊維強化プラスチック(FRP)から成形されている。
【0012】
ブラケット本体11は、配管5の下部が支持される長尺状の水平部111と、この水平部111の一端部に上端部が接続された長尺状の鉛直部112と、水平部111の他端部と鉛直部112の下端部とを接続する長尺状の斜辺部113とを備え、正面の輪郭が略直角三角形状とされる。
水平部111の中間部であって配管5の荷重を受ける部分に連結部114の上端部が接続され、この連結部114の下端部は鉛直部112の中間部に接続されている。連結部114は斜辺部113と平行とされる。
連結部114と鉛直部112の上端部から中間部の部位と水平部111の一端部から中間部の部位とから正面略直角三角形状の第一窓部11Aが形成され、連結部114と鉛直部112の中間部から下端部の部位と水平部111の中間部から他端部の部位とから第二窓部11Bが形成されている。
【0013】
ブラケット本体11の水平部111、鉛直部112、斜辺部113及び連結部114はそれぞれ水平方向に向けて開口された断面コ字形に形成される。例えば、鉛直部112は図3(A)に示される通り、互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eとが一体形成された構造であり、第一辺部11Cが橋桁4の鉛直側面と当接される。
斜辺部113は図3(B)に示される通り、互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eとが一体形成された構造である。
図3(C)に示される通り、鉛直部112は、その長手方向に沿って取付孔11Fが3カ所形成されている。
【0014】
図2に示される通り、鉛直部112の第一辺部11Cはアンカー部材13で橋桁4に取り付けられている。アンカー部材13は、橋桁4に形成された孔部に嵌合されるアンカー本体131と、このアンカー本体131を変形させるボルト部132とを有し、このボルト部132をねじ込むことでアンカー本体131が橋桁4に嵌合される。このボルト部132は取付孔11Fを挿通する。
【0015】
バンド部12は、帯状に形成されており、水平部111の両端部に取り付けられる接合部121と、これらの接合部121に一体に形成された被覆部122とを備えている。
接合部121と水平部111とはボルト141及びナット142からなる接合具14で互いに接合されている。
被覆部122は接合部121に接続される端部では直角に折り曲げて形成され、かつ、途中から配管5の外周部の形状に合わせて円弧状に形成されている。
図4に示される通り、ブラケット本体11は平面視で長方形とされる。バンド部12は、その幅寸法がブラケット本体11の幅寸法より短く形成されている。
【0016】
図2及び図3で示されるブラケット本体11では、第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eは同じ厚さとされるが、本実施形態では、これに限定されるものではない。
つまり、本実施形態では、図5(A)に示される通り、荷重のかかる鉛直部112の第一辺部11Cを第二辺部11D及び第三辺部11Eより厚く形成してもよく、さらには、図5(B)に示される通り、厚く形成された第一辺部11Cの内部に補強用のステンレス板11Gを埋設するものでもよい。この場合、ステンレス板11Gにもアンカー部材13のボルト部132を挿通する取付孔が形成されている。
【0017】
このような構造の配管取付用ブラケット10を製造するには、ブラケット本体11とバンド部12とをそれぞれハンドレイ成形法によって製造する。つまり、木又は金属から形成されブラケット本体11やバンド部12の形状と同形状の型枠を用意し、この型枠の内部に短繊維のグラスファイバーとポリエステル樹脂とを塗っては乾かす工程を、所定の厚さになるまで複数回繰り返す。内部にステンレス板を埋設する場合には前述の工程を途中まで実施した後、ステンレス板を配置し、その後、続けて前述の工程を実施する。
その後、現場に配管取付用ブラケット10を搬送し、橋桁4の鉛直側面にブラケット本体11をアンカー部材13で接合し、このブラケット本体11の上に配管5を設置し、この配管5の周囲をバンド部12で覆うとともに、バンド部12の接合部121をブラケット本体11の水平部111に接合具14で接合する。
【0018】
従って、第一実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)配管取付用ブラケット10を構成するブラケット本体11とバンド部12とをそれぞれFRPから形成したので、鉄等の金属からブラケットを形成する場合に比べて配管取付用ブラケット10を軽量にできる。そのため、施工時やメンテナンス時での取り扱いが容易となる。そして、FRPから形成されるブラケット本体11とバンド部12とは塗装をしなくても錆びることがなく、かつ、紫外線や塩害にも強く、耐食性を強いものにできる。
(2)配管5の荷重を受けるブラケット本体11を、第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eからなる断面コ字形にしたので、鉄に比べて強度が大きくはないFRPであっても、配管5を支持するための十分な強度を得ることができる。
【0019】
(3)ブラケット本体11は、配管5の下部が支持されるとともにバンド部12の両端部が取り付けられる水平部111と、この水平部111の端部に上端部が一体形成され他端部が橋桁4の鉛直側面に取り付けられる鉛直部112とを備えたから、配管取付用ブラケット10を橋桁4に取り付けるにあたり、上向き作業を少なくしたので、施工やメンテナンスが容易となる。
【0020】
(4)ブラケット本体11の鉛直部112の第一辺部11Cを第二辺部11D及び第三辺部11Eより厚く形成すれば、荷重のかかる鉛直部112を補強することができるので、より重量のある配管5を支持することができる。
(5)第一辺部11Cの内部に補強用のステンレス板11Gを埋設すれば、ブラケット本体11の強度が大きくなり、重量のある配管5を確実に支持することができる。
(6)ブラケット本体11とバンド部12とをそれぞれハンドレイ成形法によって製造するから、これらの部材の一体成形が容易に実現できるので、製造コストが低いものになる。
【0021】
(7)水平部111の中間部に連結部114の上端部を接続し、この連結部114の下端部を鉛直部112の中間部に接続した。そして、連結部114と鉛直部112の上端部から中間部の部位と水平部111の一端部から中間部の部位とから正面略直角三角形状の第一窓部11Aを形成し、連結部114と鉛直部112の中間部から下端部の部位と水平部111の中間部から他端部の部位とから第二窓部11Bを形成した。そのため、連結部114によってブラケット本体11の強度をより大きなものにできるとともに、第一窓部11Aと第二窓部11Bによって軽量化を図ることができる。
【0022】
次に、本発明の第二実施形態を図6から図9に基づいて説明する。ここで、第二実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図6は本発明の第二実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の断面図である。
図6において、第二実施形態では、垂直側壁3Wの裏面に沿って配管7が図面を貫通する方向に複数接続されている。この配管7は光ファイバーや電線等のコード類8を収納するものである。
配管7は配管取付用ブラケット20に取り付けられ、この配管取付用ブラケット20は垂直側壁3Wの鉛直側面と裏面とに取り付けられている。なお、垂直側壁3Wの鉛直側面と裏面とは角度αで交差している。
【0023】
配管取付用ブラケット20の構成が図7から図9に示されている。
図7は配管取付用ブラケット20の全体を示す正面図であり、図8(A)は図7のA−A方向から見た図、図8(B)は図7のB−B断面図、図9(A)(B)はそれぞれ第二実施形態の変形例の要部を示す断面図である。
図7において、配管取付用ブラケット20は、円筒状の配管7の下部を支持するとともに垂直側壁3Wの鉛直側面に取り付けられるブラケット本体21と、このブラケット本体21に取り付けられるとともに配管7の周囲を覆うバンド部12とを備えて構成され、これらのブラケット本体21とバンド部12とはそれぞれFRPから成形されている。
【0024】
ブラケット本体21は、配管7の下部が支持される長尺状の水平部211と、この水平部211の一端部に下端部が接続された長尺状の鉛直部212と、水平部211の他端部に下端部が接続され上端部が垂直側壁3Wの裏面に取り付けられた連結部213とを備えた略U字状の構造である。水平部211と鉛直部212とが交差する角度βが直角であり、水平部211と連結部213とが交差する角度をαとすると、連結部213の長手方向と垂直側壁3Wの裏面とが交差する角度βが直角となる。
水平部211は互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eとを備えた断面コ字形に形成され、このコ字形部が下方に向けて開口される。第三辺部11Eは接合具14によりバンド部12の接合部121に接合される。
【0025】
鉛直部212は図8(A)(B)に示される通り、互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eと、これらの第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eの上端縁同士を接続する接続辺部11Hとが一体形成された構造であり、第三辺部11Eが垂直側壁3Wの鉛直側面と当接される。鉛直部212は断面がコ字形に形成され、この開口が水平方向に向いている。
鉛直部212の第三辺部11Eはアンカー部材13で垂直側壁3Wに取り付けられている。アンカー部材13は、垂直側壁3Wに形成された孔部に嵌合されるアンカー本体131と、このアンカー本体131を変形させるボルト部132とを有する。このボルト部132は第三辺部11Eに形成された取付孔11Fを挿通する。
【0026】
連結部213は互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eと、これらの第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eの上端縁同士を接続する接続辺部11Hとが一体形成された構造であり、接続辺部11Hがアンカー部材13を介して垂直側壁3Wに接合される。なお、この接続辺部11Hにはアンカー部材13のボルト部132を挿通する取付孔が形成されている。
【0027】
図7で示されるブラケット本体21では、第一辺部11C、第二辺部11D、第三辺部11E及び接続辺部11Hは同じ厚さとされるが、本実施形態では、これに限定されるものではない。
つまり、本実施形態では、図9(A)に示される通り、荷重のかかる連結部213の第三辺部11Eの上部と接続辺部11Hとを第一辺部11C及び第二辺部11Dより厚く形成してもよく、さらには、図9(B)に示される通り、厚く形成された部分の内部に補強用の断面L字型のステンレス板11Gを埋設するものでもよい。この場合、ステンレス板11Gにもアンカー部材13のボルト部132を挿通する取付孔が形成されている。
第二実施形態では、第一実施形態と同様の製造方法で配管取付用ブラケット20を製造する。
【0028】
この構成の第二実施形態では、第一実施形態の(1)〜(6)と同様の作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(8)ブラケット本体21を、配管7の下部が支持される長尺状の水平部211と、この水平部211の一端部に下端部が接続された長尺状の鉛直部212と、水平部211の他端部に下端部が接続された連結部213とを備えた略U字状の構造とし、鉛直部212と連結部213とで垂直側壁3Wに取り付けたものにしたから、配管7の荷重を受ける水平部211が両持ちで支持されることになり、配管7の垂直側壁3Wへの取り付けが安定する。
【0029】
(9)垂直側壁3Wの鉛直側面と裏面とが角度αで交差している場合、水平部211と鉛直部212とが交差する角度βを直角とし、水平部211と連結部213とが交差する角度をαとすると、連結部213の長手方向と垂直側壁3Wの裏面とが交差する角度βが直角となる。そのため、連結部213を垂直側壁3Wに対して直角にして押し当てた状態で連結部213を垂直側壁3Wに取り付けることができるから、ブラケット本体21の取付作業が容易となる。
【0030】
次に、本発明の第三実施形態を図10から図14に基づいて説明する。ここで、第三実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図10は本発明の第三実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の断面図である。
配管5は配管取付用ブラケット30に取り付けられ、この配管取付用ブラケット30は橋桁4の鉛直側面に取り付けられている。
【0031】
配管取付用ブラケット30の構成が図11から図13に示されている。
図11は配管取付用ブラケット30の全体を示す正面図であり、図12(A)は図11のA−A断面図、図12(B)は図11のB−B断面図、図12(C)は図11のC−C端面図、図12(D)は図11のD−D端面図であり、図13は配管取付用ブラケット30の平面図である。図14は、第三実施形態の変形例を示す断面図である。
【0032】
図11において、配管取付用ブラケット30は、円筒状の配管5の下部を支持するとともに橋桁4の鉛直側面に取り付けられるブラケット本体31と、このブラケット本体31に取り付けられるとともに配管5の周囲を覆うバンド部12とを備えて構成され、これらのブラケット本体31とバンド部12とはそれぞれガラス繊維強化プラスチック(FRP)から成形されている。
図13に示される通り、ブラケット本体31は平面視で長方形とされる。バンド部12は、その幅寸法がブラケット本体31の幅寸法より短く形成されている。
【0033】
ブラケット本体31は、配管5の下部が支持される長尺状の水平部311と、この水平部311の一端部に下端部が接続された長尺状の鉛直部312と、水平部311の他端部に下端部が接続された短尺状(鉛直部312より短い)の起立部313とを備え、正面の輪郭が略L字形とされる。
【0034】
ブラケット本体31の水平部311、鉛直部312、起立部313はそれぞれ水平方向に向けて開口された断面コ字形に形成される。例えば、水平部311は図12(A)に示される通り、互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eとが一体形成された構造である。
また、水平部311の第一辺部11C及び第二辺部11Dは、鉛直部312と接続する一端部に向かうに従って下側に傾斜する構造である(図11参照)。ここで、第一辺部11Cの傾斜は、当該第二辺部11Dの傾斜よりも小さく設定されているため、鉛直部312と接続する水平部311の一端部は他端部に比べて鉛直方向に拡がっている(第三辺部11Eの一端部が鉛直方向に長い)。
なお、第一辺部11C上に配管5が載置されると、配管5を支持する部分がその配管5の重みで若干沈むため、第一辺部11Cの傾斜は、配管5の重みで沈む分に相当する傾斜を設けておくことが好ましい。
【0035】
次に、鉛直部312は、図12(B)に示される通り、互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eとが一体形成された構造である。さらに、図12(C)に示される通り、鉛直部312には、その長手方向に沿って取付孔11Fが4カ所形成されている。
また、鉛直部312の第一辺部11Cは、水平部311と接続する下端部に向かうに従って外側に傾斜する構造である。そのため、水平部311と接続する鉛直部312の下端部は上端部に比べて水平方向に拡がっている(第三辺部11Eの下端部が水平方向に長い)。
【0036】
そして、起立部313は、互いに対向する第一辺部11C(図示せず)及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eとが一体形成された構造である(図12(D)参照)。さらに、起立部313には、図12(D)に示される通り、その長手方向に沿って取付孔11Kが2カ所形成され、後述する補強バー33(図14参照)を固定するために用いられる。
【0037】
図11に示される通り、鉛直部312の第一辺部11Dはアンカー部材13で橋桁4に取り付けられている。アンカー部材13は、第一実施形態と同様に、アンカー本体131とボルト部132とを有し、このボルト部132をねじ込むことでアンカー本体131が橋桁4に嵌合される。このボルト部132は取付孔11Fを挿通する。
【0038】
また、図14に示すように、鉛直方向長さが短い橋桁4に配管取付用ブラケット30を固定する場合、配管取付用ブラケット30の取付位置が下がり、鉛直部312に形成した複数の取付孔11Fの内、いくつかが橋桁4からはみ出す。このような場合、補強バー33を介して起立部313側を路面3の裏面に固定する。
補強バー33は、長尺状の縦辺部331と、この縦辺部331の上端に一端部が接続された短尺状の横辺部332とを備えて構成され、この補強バー33はガラス繊維強化プラスチック(FRP)から成形されていることが好ましい。縦辺部331の下端には、その長手方向に沿って取付孔33Aが2カ所形成され、横辺部332には、その長手方向に沿って取付孔33Bが1箇所形成されている。
縦辺部331は、ボルト151及びナット152からなる接合具15によって起立部313に固定される。このボルト151は、起立部313の取付孔11K及び縦辺部331の取付孔33Aを挿通し、ナット152と螺合される。
横辺部332は、アンカー部材16によって路面3の裏面に固定される。アンカー部材16は、路面3の裏面に形成された孔部に嵌合されるアンカー本体161と、このアンカー本体161を変形させるボルト部162とを有し、このボルト部162をねじ込むことでアンカー本体161が路面3の裏面に嵌合される。このボルト部162は取付孔33Bを挿通する。
【0039】
バンド部12は、第一実施形態と同様のものを用い、接合部121と水平部311とは第一実施形態と同様に接合具14で互いに接合されている。
【0040】
図11及び図12で示されるブラケット本体31では、第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eは同じ厚さとされるが、第三実施形態では、これに限定されるものではない。
つまり、第三実施形態では、荷重のかかる鉛直部312の第二辺部11Dを第一辺部11C及び第三辺部11Eより厚く形成してもよく、さらには、厚く形成された第一辺部11Dの内部に補強用のステンレス板を埋設するものでもよい。この場合、ステンレス板にもアンカー部材13のボルト部132を挿通する取付孔が形成されている。
【0041】
第三実施形態では、第一実施形態と同様の製造方法で配管取付用ブラケット30を製造する。また、補強バー33も第一実施形態と同様の製造方法で製造する。
【0042】
この構成の第三実施形態では、第一実施形態の(1)〜(6)と同様の作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(10)鉛直部312と接続する水平部311の一端部は他端部に比べて鉛直方向に拡がり、水平部311と接続する鉛直部312の下端部は上端部に比べて水平方向に拡がっているので、配管5を支持するための十分な強度を得ることができる。
【0043】
(11)第一辺部11Cの傾斜は、配管5の重みで沈む分に相当する傾斜を設けておくことで、配管5が載置された後、第一辺部11Cを水平に保ち、配管5を安定して支持できる。
【0044】
(12)起立部313が設けられているので、仮にバンド部12がブラケット本体31から外れてしまった場合でも、配管5の落下を防止することが出来る。
【0045】
(13)起立部313に取付孔11Kが設けられているので、鉛直方向長さが短い橋桁4であっても、補強バー33を介して、起立部313と路面3の裏面とを固定することが出来る。そのため、配管取付用ブラケット30を取り付けるためのスペースを橋桁4に確保できない場合でも、配管5を安定して支持することができる。また、補強バー33を設けておくことで、配管5の落下を防止することもできる。
【0046】
次に、本発明の第四実施形態を図15から図18に基づいて説明する。ここで、第四実施形態の説明において第一実施形態及び第二実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図15は本発明の第四実施形態にかかる配管の接続構造が設けられた建造物の断面図である。
図15において、第四実施形態では第二実施形態と同様に、配管7は光ファイバーや電線等のコード類8を収納するものである。
配管7は配管取付用ブラケット40に取り付けられ、この配管取付用ブラケット40は垂直側壁3Wの鉛直側面と裏面とに取り付けられている。なお、垂直側壁3Wの鉛直側面と裏面とは角度α(90°)で交差している(図16参照)。
【0047】
配管取付用ブラケット40の構成が図16から図18に示されている。
図16は配管取付用ブラケット40の全体を示す正面図であり、図17(A)は図16のA−A断面図、図17(B)は図16のB−B断面図、図17(C)は図16のC−C方向から見た図である。図18は配管取付用ブラケット40の平面図である。
図16において、配管取付用ブラケット40は、円筒状の配管7の下部を支持するとともに垂直側壁3Wの鉛直側面に取り付けられるブラケット本体41と、このブラケット本体41に取り付けられるとともに配管7の周囲を覆うバンド部12とを備えて構成され、これらのブラケット本体41とバンド部12とはそれぞれFRPから成形されている。
図18に示される通り、ブラケット本体41は平面視で長方形とされる。バンド部12は、その幅寸法がブラケット本体41の幅寸法より短く形成されている。
【0048】
ブラケット本体41は、配管7の下部が支持される長尺状の水平部411と、この水平部411の一端部に下端部が接続された長尺状の鉛直部412と、水平部411の他端部に下端部が接続され上端部が垂直側壁3Wの裏面に取り付けられた連結部413とを備えた略U字状の構造である。
上記の通り、垂直側壁3Wの鉛直側面と裏面とは角度α(90°)で交差し、水平部411と鉛直部412とが交差する角度β、及び水平部411と連結部413とが交差する角度αが直角であるため、連結部413の長手方向と垂直側壁3Wの裏面とが交差する角度βが直角となる。
水平部411は互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eとを備えた断面コ字形に形成され、このコ字形部が水平方向に向けて開口される。
バンド部12は、第一実施形態と同様のものを用い、水平部411の第一辺部11Cは、第一実施形態と同様に接合具14によりバンド部12の接合部121に接合される。
【0049】
鉛直部412は図17(A),(B),(C)に示される通り、互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eと、これらの第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eの上端縁同士を接続する接続辺部11Hとが一体形成された構造であり、第一辺部11Cが垂直側壁3Wの鉛直側面と当接される。鉛直部412は断面がコ字形に形成され、この開口が水平方向に向いている。第一辺部11Cの上端側には取付孔11Fが形成され、鉛直部412の第一辺部11Cはアンカー部材13で第二実施形態と同様に垂直側壁3Wに取り付けられている。
【0050】
連結部413は互いに対向する第一辺部11C及び第二辺部11Dと、これらの第一辺部11Cと第二辺部11Dとの端部同士を接続する第三辺部11Eと、これらの第一辺部11C、第二辺部11D及び第三辺部11Eの上端縁同士を接続する接続辺部11Hとが一体形成された構造である。連結部413の上端側は、鉛直部412側へ折り返されている。接続辺部11Hには取付孔11Fが形成され、接続辺部11Hはアンカー部材13によって第二実施形態と同様に垂直側壁3Wに取り付けられている。
なお、連結部413の上端側は、鉛直部412側へ折り返されているが、本実施形態ではこれに限定されるものではない。折り返さずにそのまま上方へ伸びた形状であってもよい。ただし、連結部413が上方へ伸びた形状では接続辺部11Hを取り付けるためのスペースを垂直側壁3Wに十分に確保できない場合は、折り返した形状にすることで、接続辺部11Hを取り付けるためのスペースを確保することができる。
【0051】
図16で示されるブラケット本体41では、鉛直部412の第一辺部11Cの上端側及び連結部413の接続辺部11Hは、第二辺部11D及び第三辺部11Eより厚く形成されている。上記実施形態で説明したのと同様に、厚く形成された部分の内部に補強用のステンレス板を埋設しても良い。しかし、第四実施形態では、例示する第一辺部11C及び接続辺部11Hの厚みやステンレス板の埋設に限定されるものではない。
【0052】
第四実施形態では、第一実施形態と同様の製造方法で配管取付用ブラケット20を製造する。
【0053】
この構成の第四実施形態では、第一実施形態の(1)〜(6)、第二実施形態の(8)〜(9)と同様の作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(14)連結部413の上端側が折り返した形状となっているので、連結部413の接続辺部11Hを取り付けるためのスペースが狭い垂直側壁3Wであっても、接続辺部11Hを取り付けるためのスペースを確保することができる。
【0054】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記各実施形態では、円筒状の配管5,7を取り付けるものとしたが、本発明では、角筒の配管5,7を取り付けるものにも適用することができる。この場合、バンド部12の被覆部122は角筒の形状に合わせて矩形状とされる。
さらに、本発明に適用される構造物は高速道路に限定されるものではなく鉄道、その他の構造物であってもよい。
【0055】
また、第三実施形態では、水平部311の一端部に傾斜を設けて広げたが、これに限定されるものではない。例えば、配管5の重量に応じて、傾斜を設けなくてもよい。
さらに、第三実施形態では、鉛直方向長さが短い橋桁4に対して配管取付用ブラケット30を固定する場合を挙げて説明したが、これに限られず、鉛直方向長さが十分な橋桁4の場合でも、補強バー33を用いて固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、高速道路、鉄道、その他、橋梁を有する建造物一般に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…橋梁(構造物)、2…橋脚、3W…垂直側壁(構造物)、5,7…配管、10,20…配管取付用ブラケット、11,21…ブラケット本体、11C…第一辺部、11D…第二辺部、11E…第三辺部、11G…ステンレス板、12…バンド部、111,211…水平部、112,212…鉛直部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁と橋脚を有する構造物に水平方向に延びる配管を取り付ける配管取付用ブラケットであって、
前記配管の下部を支持するとともに前記構造物に取り付けられるブラケット本体と、このブラケット本体に取り付けられ前記配管の周囲を覆うバンド部とを備え、前記ブラケット本体と前記バンド部とはそれぞれガラス繊維強化プラスチックから成形され、前記ブラケット本体は断面コ字形に形成されていることを特徴とする配管取付用ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載された配管取付用ブラケットにおいて、
前記ブラケット本体は、前記配管の下部が支持されるとともに前記バンド部の両端部が取り付けられる水平部と、この水平部の端部と一体に形成された一端部と前記構造物の鉛直側面に取り付けられる他端部とを有する鉛直部と、を備えたことを特徴とする配管取付用ブラケット。
【請求項3】
請求項2に記載された配管取付用ブラケットにおいて、
前記ブラケット本体の内部には補強用のステンレス板が埋設されていることを特徴とする配管取付用ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−64053(P2011−64053A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246453(P2009−246453)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(395000348)日本ホーバス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】