説明

配管支持装置および配管支持方法

【課題】配管の設計変更に迅速に対応することができ、材料費を抑えることができる配管支持装置および配管支持方法を提供する。
【解決手段】架台11が、配管1を支持面21dの上で支持する支持部21を備えている。取付部材12が、支持面21dの縁部との間に、支持面21dに沿った間隙27をあけて支持部21に固定可能である。U字ボルト13が、支持部21で支持される配管1を跨いで、両端が間隙27に差し込まれ、支持面21の反対面側で間隙27より外径の大きなナット29により締結されて、配管1を支持部21に固定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管支持装置および配管支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場などで配管を敷設する場合、図6(a)に示すように、床などの設置面から立ち上げて設置された架台51に、配管50の数やサイズに合わせて予めUボルト用の取付孔52をあけておき、架台51の上に配管50を載せ、取付孔52を利用してUボルト53で配管50を架台51に固定する方法がある。この場合、取付孔52を長穴にしておくことにより、配管の多少の位置ずれに対応することができる。
【0003】
また、図6(b)に示すように、2本のアングル鋼61の間に所定の間隙62をあけるよう、予め各アングル鋼61の間にスペーサ63を挟んで溶接等で固定し、各アングル鋼61を所定の高さで天井から水平に吊し、各アングル鋼61の上に配管60を載せ、各アングル鋼61の間隙62を利用してUボルト64で配管60を各アングル鋼61に固定するものもある(例えば、特許文献1参照)。この場合、特注の足長タイプのUボルトが必要となるが、屋外等の別エリアでは、標準タイプのUボルトで事足りるため使い回しができない。また、溝を有するチャンネル部材の上に配管を載せ、溝を利用して配管保持部材や固定部材により配管をチャンネル部材に固定するものもある(例えば、特許文献2または3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−280187号公報
【特許文献2】特開2003−21273号公報
【特許文献3】特開平11−193883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設現場の配管工事では、当初計画通りに配管の位置が決まらないことも多く、設計変更や仕様変更などにより、配管のサイズ変更や並び順序が変わることも多い。図6(a)に示す従来の配管方法では、取付孔52を長穴にすることにより多少の設計変更に対応することはできるが、大きな設計変更の場合には対応することができず、現場で孔を加工する必要があった。この場合、孔の加工により工期が遅れ、塵も発生する。また、架台51の鋼材が厚いときにはガス溶断加工となり、火気養生や安全対策を要するため、さらに工期が遅れる。既設改修工事や錯綜した現場など、火気や発煙の発生が許されない現場では、架台51を該当分取り外し、工場に運んで加工する必要があり、ますます工期が遅れる。このように、図6(a)に示す従来の配管方法では、配管50の設計変更に迅速に対応するのが困難であるという課題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載のような図6(b)に示す配管方法では、配管60の設計変更により、使用するUボルト64の太さに対して、各アングル鋼61の間隔が狭くなることがあった。この場合、各アングル鋼61を取り換える必要があり、工期が遅れる。このように、図6(b)に示す配管方法でも、配管60の設計変更に迅速に対応するのが困難であり、材料費も嵩むという課題があった。特許文献2および3に記載の配管支持装置では、配管のサイズに合った専用のチャンネル部材や配管保持部材、固定部材を準備しなければならず、材料費が嵩むという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、配管の設計変更に迅速に対応することができ、材料費を抑えることができる配管支持装置および配管支持方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る配管支持装置は、配管を支持面の上で支持する支持部を備えた架台と、前記支持面の縁部との間に支持面に沿った間隙をあけて前記支持部に固定される取付部材と、前記支持部で支持される配管を跨いで両端が前記間隙に差し込まれ、前記支持面の反対面側で前記間隙より外径の大きなナットにより締結されて前記配管を前記支持部に固定するU字ボルトとを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る配管支持装置は、取付部材が支持面の縁部との間に支持面に沿った間隙をあけて支持部に固定されるため、設計変更により配管の数やサイズ、位置が変わっても、間隙を利用してU字ボルトにより容易に配管を支持部に固定することができる。また、取付部材の固定を、支持部に対して配管を配置した後に行うことにより、配管のサイズに応じて間隙の幅を調節して取付部材を固定することができる。このように、本発明に係る配管支持装置は、配管の設計変更に柔軟かつ迅速に対応することができる。
【0010】
架台、取付部材およびU字ボルトとして既存の鋼材などを使用できるため、材料費を抑えることができる。例えば、架台として、溝形鋼やH型鋼などを用いた既存の配管支持用の架台を使用することができる。
【0011】
本発明に係る配管支持方法は、架台の支持部の支持面の上に配管を載せて前記配管を前記支持部に仮留めし、取付部材を前記配管の下方で前記支持面の縁部との間に支持面に沿った間隙をあけて前記支持部に固定し、U字ボルトの両端を前記配管を跨ぐようにして前記間隙に差し込み、前記支持面の反対面側で前記両端に前記間隙より外径の大きなナットを締結して前記配管を前記支持部に固定することを、特徴とする。
【0012】
本発明に係る配管支持方法は、支持面の縁部との間に支持面に沿った間隙をあけて、支持部に取付部材を固定するため、設計変更により配管の数やサイズ、位置が変わっても、間隙を利用してU字ボルトにより容易に配管を支持部に固定することができる。支持面の縁部との間に間隙をあけるため、配管を支持部に仮留めしたまま取付部材を固定することができる。また、取付部材の固定を、配管を支持部に仮留めした後に行うため、配管のサイズに応じて間隙の幅を調節して取付部材を固定することができる。このように、本発明に係る配管支持方法は、配管の設計変更に柔軟かつ迅速に対応することができる。
【0013】
架台、取付部材およびU字ボルトとして既存の鋼材などを使用できるため、材料費を抑えることができる。例えば、架台として、溝形鋼やH型鋼などを用いた既存の配管支持用の架台を使用することができる。本発明に係る配管支持方法によれば、本発明に係る配管支持装置を使用して容易に配管を支持することができる。
【0014】
本発明に係る配管支持装置および配管支持方法で、前記架台は、横断面がコの字状で2つの平行な長板のそれぞれ一方の側縁部を各長板に垂直な連結板で結合した形状の細長い溝形鋼と、前記溝形鋼の一方の長板の外側面に設けられた脚部とを有し、前記支持面は他方の長板の外側面から成り、前記取付部材は前記他方の長板と同一の厚さの細長い板材から成り、一方の面を前記支持面と同一平面上に配置し前記他方の長板の長さ方向に沿って前記一方の側縁部と反対側の側縁部との間に前記間隙をあけて前記支持部に固定され、前記ナットは前記他方の長板と前記取付部材とに渡って前記U字ボルトに螺合されることが好ましい。この場合、支持面と取付部材の上面とが同一平面で同じ高さになるため、配管を間隙の両側で段差なく真っ直ぐに固定することができる。また、支持面の反対面と取付部材の下面とが同じ高さになるため、ナットを間隙の両側で段差なくしっかりと締め付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管の設計変更に迅速に対応することができ、材料費を抑えることができる配管支持装置および配管支持方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図5は、本発明の実施の形態の配管支持装置および配管支持方法を示している。
図1乃至図4に示すように、配管支持装置は、架台11と取付部材12とU字ボルト13とを有している。
【0017】
図2に示すように、架台11は、支持部21と1対の脚部22とを有している。支持部21は、横断面がコの字状で、2つの平行な長板21a,21bのそれぞれ一方の側縁部を各長板21a,21bに垂直な連結板21cで結合した形状の細長い溝形鋼から成っている。支持部21は、各長板21a,21bを水平にして配置され、配管1を上側の長板21aの外側面から成る支持面21dの上で支持可能になっている。支持部21は、支持面21dの両端および中央の開放部21e側の側縁部に、厚さ方向に貫通した3つの貫通孔21fを有している。各脚部22は、支持部21と同じ種類の溝形鋼から成り、設置面から垂直に立ち上げて設置され、それぞれ支持部21の両端を支持している。各脚部22は、支持部21の下側の長板21bの外側面に取り付けられている。図1および図4に示すように、架台11は、配管1の長さ方向に対して垂直に配置されている。なお、支持部21および各脚部22は、H形鋼から成っていてもよい。
【0018】
図3に示すように、取付部材12は、細長い矩形の鋼板から成る取付部23と、矩形の鋼板から成る3つの固定部24とを有している。取付部23は、支持部21の上側の長板21aと同一の長さおよび厚さを有している。各固定部24は、取付部23の幅より長く、取付部23の両端および中央に固定されている。各固定部24は、取付部23の一方の面に、取付部23の長さ方向に対し垂直に伸びて、取付部23の同じ側の側方に突出するようスポット溶接で固定されている。各固定部24は、取付部23から突出した部分に厚さ方向に貫通した固定孔24aを有している。取付部材12は、各固定部24の固定孔24aが支持部21の各貫通孔21fの間隔と同じ間隔になるよう構成され、各固定孔24aが各貫通孔21fに対応するよう設けられている。
【0019】
図1および図4に示すように、取付部材12は、各固定孔24aを対応する貫通孔21fに連通させ、連通した固定孔24aおよび貫通孔21fにボルト25を挿入してナット26で締め付けることにより、支持部21に固定可能になっている。なお、取付部材12は、固定部24をボルト25およびナット26で支持部21に固定する代わりに、溶接により支持部21に固定してあってもよい。取付部材12は、取付部23の一方の面を上にして、その面を支持面21dと同一平面上に配置し、支持部21の長さ方向に沿って支持面21dの開放部21e側の側縁部との間に間隙27をあけて、支持部21に固定されている。
【0020】
図1および図4に示すように、U字ボルト13は、支持部21で支持される配管1を跨いで両端が間隙27に差し込まれている。U字ボルト13は、支持面21dの反対面側で、ワッシャ28を介して間隙27より外径の大きなナット29により締結されている。ナット29は、支持部21の上側の長板21aと取付部材12とに渡って、U字ボルト13に螺合されるようになっている。こうして、U字ボルト13は、配管1を支持部21に固定可能になっている。
【0021】
本発明の実施の形態の配管支持装置は、以下に説明する配管支持方法により、容易に配管1を固定することができる。その配管支持方法では、まず、図5(a)に示すように、配管1の長さ方向に対して垂直に配置された架台11の支持部21の支持面21dの上に、配管1を載せ、ひもや鋼線など(図示せず)で配管1を支持部21に仮留めする。次に、図5(b)に示すように、取付部材12を、配管1の下方で、取付部23の上側の面を支持面21dと同一平面上に配置し、支持部21の長さ方向に沿って支持面21dの開放部21e側の側縁部との間に間隙27をあけて支持部21に固定する。図1に示すように、U字ボルト13の両端を、配管1を跨ぐようにして間隙27に差し込み、支持面21dの反対面側で両端にナット29を締結して、配管1を支持部21に固定する。固定後、仮留めのひもや鋼線などを外す。こうして、容易に配管1を支持部21に固定することができる。
【0022】
本発明の実施の形態の配管支持装置および配管支持方法は、支持面21dの測縁部との間に支持面21dに沿った間隙27をあけて、支持部21に取付部材12を固定するため、設計変更により配管1の数やサイズ、位置が変わっても、間隙27を利用してU字ボルト13により容易に配管1を支持部21に固定することができる。支持面21dの側縁部との間に間隙27をあけるため、配管1を仮留めしたまま取付部材12を固定することができる。また、取付部材12の固定を、配管1を支持部21に仮留めした後に行うため、配管1のサイズに応じて間隙27の幅を調節して取付部材12を固定することができる。このように、本発明の実施の形態の配管支持装置および配管支持方法は、配管1の設計変更に柔軟かつ迅速に対応することができる。このため、現場での孔等の加工が不要となり、塵の発生を防ぎ、火気の使用も不要となる。
【0023】
取付部23と支持面21dの側縁部との間隙27の幅は、配管1のサイズに応じて、固定部24の突出した部分の長さが異なる取付部材12を使用することにより、調整することができる。また、各貫通孔21fまたは各固定孔24aを間隙27の幅方向に沿った長穴にすることにより、間隙27の幅を調節可能であってもよい。
【0024】
図4に示すように、取付部材12を支持部21に固定したとき、支持面21dと取付部23の上面とが同一平面で同じ高さになるため、配管1を間隙27の両側で段差なく真っ直ぐに固定することができる。また、支持面21dの反対面と取付部23の下面とが同じ高さになるため、ナット29を間隙27の両側で段差なくしっかりと締め付けることができる。
【0025】
この配管支持装置は、架台11として、溝形鋼やH型鋼などを用いた既存の配管支持用の架台を使用することができ、また、配管1の取付けにU字ボルト13、ワッシャ28およびナット29など市販のものを使用することができるので、材料費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の配管支持装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の配管支持装置の架台を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の配管支持装置の取付部材を示す斜視図である。
【図4】図1に示す配管支持装置の使用状態を示す(a)正面図、(b)側面図である。
【図5】本発明の実施の形態の配管支持方法を示す斜視図である。
【図6】従来の配管支持方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 配管
11 架台
12 取付部材
13 U字ボルト
21 支持部
21d 支持面
21f 貫通孔
22 脚部
23 取付部
24 固定部
24a 固定孔
27 間隙
28 ワッシャ
29 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を支持面の上で支持する支持部を備えた架台と、
前記支持面の縁部との間に支持面に沿った間隙をあけて前記支持部に固定される取付部材と、
前記支持部で支持される配管を跨いで両端が前記間隙に差し込まれ、前記支持面の反対面側で前記間隙より外径の大きなナットにより締結されて前記配管を前記支持部に固定するU字ボルトとを、
有することを特徴とする配管支持装置。
【請求項2】
前記架台は、横断面がコの字状で2つの平行な長板のそれぞれ一方の側縁部を各長板に垂直な連結板で結合した形状の細長い溝形鋼と、前記溝形鋼の一方の長板の外側面に設けられた脚部とを有し、前記支持面は他方の長板の外側面から成り、
前記取付部材は前記他方の長板と同一の厚さの細長い板材から成り、一方の面を前記支持面と同一平面上に配置し前記他方の長板の長さ方向に沿って前記一方の側縁部と反対側の側縁部との間に前記間隙をあけて前記支持部に固定され、
前記ナットは前記他方の長板と前記取付部材とに渡って前記U字ボルトに螺合されることを、
特徴とする請求項1記載の配管支持装置。
【請求項3】
架台の支持部の支持面の上に配管を載せて前記配管を前記支持部に仮留めし、
取付部材を前記配管の下方で前記支持面の縁部との間に支持面に沿った間隙をあけて前記支持部に固定し、
U字ボルトの両端を前記配管を跨ぐようにして前記間隙に差し込み、前記支持面の反対面側で前記両端に前記間隙より外径の大きなナットを締結して前記配管を前記支持部に固定することを、
特徴とする配管支持方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−240920(P2008−240920A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83079(P2007−83079)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【Fターム(参考)】