説明

配管状態監視装置

【課題】
本発明の目的は、プラントの通常運転時でも亀裂,減肉といった配管溶接部の状態を監視することが可能な配管状態監視装置を提供する。
【解決手段】
センサーを備えたICタグ4を帯状のテープ又はシート3上に複数配置し、この帯状のテープ又はシート3を配管溶接部又はオリフィス2に沿って環状に取り付けるように構成する。また、テープまたはシート3を配管溶接部又はオリフィス2に沿って環状に取り付けた際に、配管内流体の流れ方向に対して配管溶接部又はオリフィス2の前後に位置するようにICタグを複数列に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子カ,火カ発電プラント等における配管の状態(亀裂,減肉等)を監視する配管状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント監視診断システムに関する従来技術として、例えば特許文献1には、プラントの運転状態,機器の動作状態,環境状態を検出した検出データと、プラントの検査データとを蓄積して、蓄積された検出データと検査データからなるプラント履歴情報に基づいて、プラント状態を診断することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−331507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火力発電プラントや原子力発電プラントといった発電プラントでは、プラントを構成する設備の数は非常に多いため、これに従い配管溶接部の数も数万〜数十万点に渡ることになる。このため、数万〜数十万点に及ぶ配管溶接部を一度に全て点検することは現実的には不可能であり、定検毎に順番に実施されている。
【0005】
また、プラント監視診断システムによる異常監視についても、限られた設備だけが監視対象となっており、プラントの計算機に取り込まれた運転データ,仮設の限られた計器の運転データを基にした評価を行っていた。
【0006】
特に、配管溶接部の亀裂やオリフィス設置都の減肉状況を監視するためには、溶接線上又は対象範囲上にセンサーを個々に手で移動させ波形を確認していく必要があり、常に監視することはできなかった。また、配管などの設備は溶接により接続されており、その数はプラントで数万点/数十万点になる。このため、センサーを常設する方法もケーブル,電源の問題等があり、配管溶接部などの設備状況をプラント全体に渡って監視することは困難であった。
【0007】
なお、溶接部の中に亀裂や溶接欠陥があった場合、運転中の振動や熱応カなどにより時間とともに亀裂が進展する恐れがある。配管の貫通亀裂への進展を防止するためには、異常の早期発見が必要であるが、配管溶接部の欠陥は材料内部のミクロの欠陥であり、外部から簡単に確認することができない。従って、リークが発生する前に配管溶接部の欠陥を発見することができるのは定期点検時に限られることになる。また、配管内の流体流れによる減肉事象に対しても、同様に異常の進展状況を外部から簡単に確認することができないため、定期点検時の確認が必要となる。
【0008】
本発明の目的は、プラントの通常運転時でも亀裂,減肉といった配管溶接部の状態を監視することが可能な配管状態監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配管状態監視装置は、センサーを備えたICタグを帯状のシートまたはテープ上に複数配置し、この帯状のシートまたはテープを配管溶接部に沿って環状に取り付けるように構成している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラントの通常運転時でも亀裂,減肉といった配管溶接部の状態を監視することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本実施例は、火力発電プラントや原子力発電プラントといったプラント設備における数万〜数十万点に渡る配管溶接部等の異常進展状況を、アドレス付き無線ICタグのセンサーによって集中監視するようにしたものである。すなわち、アドレス付き無線ICタグを数万〜数十万点に渡る配管溶接部等に取り付けておくことにより、プラント全体を対象に異常発生箇所を特定することが可能となる。
【0012】
また、配管溶接部に対する無線ICタグの取り付け作業の効率化、及び異常検出精度の向上のために、無線ICタグのセンサーを帯状のテープ又はシート状のものに、予め適切な間隔で配置しておき、これを監視対象部位に取り付けるようにしている。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、配管溶接部又はオリフィス設置部分に取り付ける無線ICタグ付きセンサーを示す図である。図中、1は配管、2は配管溶接部又はオリフィス、3はテープ又はシート、4は無線ICタグ付きセンサーを示している。帯状のテープ又はシート3上には、無線ICタグ付きセンサー4が適切な間隔で一列状に配置されている。この無線ICタグ付きセンサー4の間隔は、テープ又はシート3を配管に環状に巻きつけた際に、配管溶接部又はオリフィス2の一周分を探知して、その亀裂や肉厚を検出できるよう設定されている。なお、測定対象がオリフィスの場合には、配管内の流体の流れ方向から見てオリフィスの下流側に無線ICタグ付きセンサー4を設置する。
【実施例2】
【0015】
図2は、本発明の他の実施例であり、配管溶接部又はオリフィス設置部分に取り付ける無線ICタグ付きセンサーを示す図である。本実施例では、無線ICタグ付きセンサー4を帯状のテープ又はシート3上に複数列に配置している。すなわち、帯状のテープ又はシート3上に複数列に配置することで、テープまたはシート3を配管1の配管溶接部又はオリフィス2に沿って取り付けた際、配管内流体の流れ方向から見て配管溶接部又はオリフィス2の前後を含めたより広範囲を探知可能となる。
【実施例3】
【0016】
図3は、本発明の他の実施例であり、配管溶接部又はオリフィス設置部分に取り付ける無線ICタグ付きセンサーを示す図である。本実施例では、テープ又はシート3を配管1に取り付けた際に、無線ICタグ付きセンサー4がテープ又はシート3と配管1との間、つまりテープ又はシート3の内面側に位置するように無線ICタグ付きセンサー4を配置している。このように構成したことで、外気による無線ICタグ付きセンサー4の腐食や劣化を抑制することができる。また、配管1を運搬する際にテープ又はシート3によって無線ICタグ付きセンサー4を保護することも可能となる。
【0017】
以上の各実施例にて説明したように、本発明では無線ICタグに配管溶接部の亀裂の進展具合、配管肉厚を検出する為のセンサー機能を付け、このICタグを事前に配管溶接部などの点検対象部位に設置している。そして、プラント運転中に多くの溶接箇所の点検を容易に行うことが可能な複数のICタグからのセンサー信号を中継の受信機で受けて、異常の有無及び場所を検知するようにしている。
【0018】
なお、一つのセンサーで監視できる範囲は限られており、監視精度の向上を図るために、点検対象部位が溶接部監視の場合は線状に、減肉監視の場合は面状に複数のセンサーを取り付ける。また、精度良く効率よく監視するためにはセンサーを適切な間隔で正確に取り付けることが必要である。この取り付けを容易にするために、テープ又はシートにICタグ付きセンサーを規則正しく並べ、これを対象部位に取り付ける。
【0019】
以上のように構成することにより、運転中の亀裂・減肉の進展状況等をプラント全体に渡り、無線ICタグを使い監視することが可能になり、亀裂・減肉が進む前に定検時に補修することで、予定外のプラント停止を防止することができる。
【0020】
また、無線ICタグ付きセンサーをテープ又はシートにあらかじめ適切な間隔で設置しておいたものを取り付けることで、取り付け作業の効率化及び検出精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】配管溶接部又はオリフィス設置部分に取り付ける無線ICタグ付きセンサーを示す図。
【図2】配管溶接部又はオリフィス設置部分に取り付ける無線ICタグ付きセンサーを示す図。
【図3】配管溶接部又はオリフィス設置部分に取り付ける無線ICタグ付きセンサーを示す図。
【符号の説明】
【0022】
1…配管、2…配管溶接部又はオリフィス、3…テープ又はシート、4…無線ICタグ付きセンサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管溶接部の状態を監視する配管状態監視装置において、
センサーを備えたICタグを帯状のテープ又はシート上に複数配置し、この帯状のテープ又はシートを配管溶接部に沿って環状に取り付けるように構成したことを特徴とする配管状態監視装置。
【請求項2】
前記ICタグは、前記帯状のテープ又はシート上に複数列に配置され、該帯状のテープ又はシートを配管溶接部に沿って環状に取り付けた際に、配管内流体の流れ方向に対して配管溶接部の前後に位置するように前記ICタグが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配管状態監視装置。
【請求項3】
前記ICタグは、前記帯状のテープ又はシートが前記配管溶接部に取り付けられた際に、その内面側に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管状態監視装置。
【請求項4】
前記ICタグは、各ICタグ毎にアドレスデータを有することを特徴とする請求項1に記載の配管状態監視装置。
【請求項5】
前記ICタグは、無線ICタグであり、センサーで検出された検出データは超音波受信装置によって読み取られるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管状態監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−283776(P2006−283776A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100482(P2005−100482)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】