説明

配管設備における配管異常チェック装置

【課題】配管設備における第1、第2管の両対向端部同士の相対移動についての目視によるチェックが、容易に達成できるようにする。
【解決手段】配管設備が、第1、第2管7,8の互いの対向端部9,10同士を連結する伸縮管継手11を備える。配管設備1における配管異常チェック装置33は、一方の対向端部9側に固着されて一方向Aに沿って延びるレール35と、レール35に支持され、一方向Aに向かって往、復移動D,E可能とされるレーザーポインタ38と、他方の対向端部10側に固着されると共にレーザーポインタ38側に当接する当接体45と、一方向Aに沿って延び、レーザーポインタ38が射光するレーザー光37を受光する視認計測体48とを備える。一方の対向端部9に対する他方の対向端部10の離反、もしくは接近移動B,C時に、この移動と共に移動する当接体45がレーザーポインタ38をその移動方向にのみ同行移動させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列状に配管された第1、第2管の互いの対向端部を連結する伸縮管継手を備えた配管設備における配管異常チェック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記配管設備には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報の特に図4(a)のものによれば、配管設備は、一方向に沿って列状に配管された第1、第2管と、上記一方向における上記第1、第2管の互いの対向端部のうち、いずれか一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反、接近移動を許容するようこれら両対向端部同士を連結する伸縮管継手とを備えている。
【0003】
そして、上記第1、第2管が温度変化により伸縮するなどして、上記両対向端部同士が離反移動したり、接近移動したりするときには、この相対移動は、上記伸縮管継手により吸収される。これにより、上記両対向端部同士の相対移動時におけるこれら両対向端部同士の離脱が防止されて、これら両対向端部同士の良好な連結状態が維持されるようになっている。
【0004】
上記の場合、上記第1、第2管を固定側に支持する支持ブラケットに破損が生じるなど何らかの理由により、上記第1、第2管の両対向端部同士の離反移動が進行し、この離反移動寸法が過大となって上記伸縮管継手の容量では対応できなくなった場合には、上記両対向端部が互いに離脱して、これら両対向端部同士の連結状態が不意に解除されるおそれを生じる。
【0005】
そこで、上記公報の特に図4(b)(c)のもののように、上記両対向端部同士の離反移動寸法の値が過大になる場合に、これら両対向端部同士の連結状態をロックして、この連結状態を強制的に維持する離脱防止装置を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−74166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来技術の離脱防止装置は、上記第1、第2管の両対向端部同士の連結状態をロックして強制的に維持するものであるため、十分の強度を保持することが求められる。よって、その構成が複雑になり、かつ、外形寸法が大きくて、質量が大きくなりがちである。
【0008】
そこで、上記のような離脱防止装置を設けることに代え、上記第1、第2管の両対向端部同士の相対移動寸法の値が異常であるか否かを目視によりチェックして、両対向端部同士の離脱を予め防止するなど、配管設備における不都合の発生を予防することが考えられる。しかし、配管設備は、一般に、周辺機器や作業者との干渉を避けるため、建屋の天井部など高所や、床面下の地下など狭い空間に設置されることが多い。このため、上記した両対向端部同士の相対移動寸法の値が異常であるか否かを、目視によりチェックすることは極めて煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、配管設備における第1、第2管の両対向端部同士の相対移動寸法の値が異常であるか否かを目視によりチェックして、配管設備における不都合の発生を予防できるようにし、また、上記した目視によるチェックが、容易に、かつ、簡単な構成で達成できるようにすることである。
【0010】
請求項1の発明は、一方向Aに沿って列状に配管された第1、第2管7,8と、上記一方向Aにおける上記第1、第2管7,8の互いの対向端部9,10のうち、いずれか一方の対向端部9に対する他方の対向端部10の離反、接近移動B,Cを許容するようこれら両対向端部9,10同士を連結する伸縮管継手11とを備えた配管設備において、
上記一方の対向端部9側に固着されて上記一方向Aに沿って延びるレール35と、このレール35に支持され、上記一方向Aに向かって往、復移動D,E可能とされるレーザーポインタ38と、他方の対向端部10側に固着されると共に上記レーザーポインタ38側に当接する当接体45と、上記一方向Aに沿って延び、上記レーザーポインタ38が射光するレーザー光37を受光する視認計測体48とを備え、上記一方の対向端部9に対する他方の対向端部10の離反、もしくは接近移動B,C時に、この移動と共に移動する上記当接体45が上記レーザーポインタ38をその移動方向にのみ同行移動させるようにしたことを特徴とする配管設備における配管異常チェック装置である。
【0011】
請求項2の発明は、上記他方の対向端部10側に取り付けられる他のレーザーポインタ47を設け、この他のレーザーポインタ47から射光される他のレーザー光46が上記視認計測体48により受光されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の配管設備における配管異常チェック装置である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、一方向に沿って列状に配管された第1、第2管と、上記一方向における上記第1、第2管の互いの対向端部のうち、いずれか一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反、接近移動を許容するようこれら両対向端部同士を連結する伸縮管継手とを備えた配管設備において、
上記一方の対向端部側に固着されて上記一方向に沿って延びるレールと、このレールに支持され、上記一方向に向かって往、復移動可能とされるレーザーポインタと、他方の対向端部側に固着されると共に上記レーザーポインタ側に当接する当接体と、上記一方向に沿って延び、上記レーザーポインタが射光するレーザー光を受光する視認計測体とを備え、上記一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反、もしくは接近移動時に、この移動と共に移動する上記当接体が上記レーザーポインタをその移動方向にのみ同行移動させるようにした配管設備における配管異常チェック装置であり、次の作用効果が生じる。
【0015】
即ち、配管設備における第1、第2管の熱による線膨張など何らかの理由で、これら両対向端部のうち、一方の対向端部に対し他方の対向端部が離反移動(もしくは接近移動)したとし、この際、この離反移動(もしくは接近移動)と共に移動する上記当接体が上記レーザーポインタを上記離反移動(もしくは接近移動)方向に同行移動させたとする。この場合において、その後、仮に、上記一方の対向端部に対し他方の対向端部が接近移動(もしくは離反移動)して、この接近移動(もしくは離反移動)と共に上記当接体が移動したとしても、この当接体は上記レーザーポインタ側から単に離反するだけで、このレーザーポインタは、前記した他方の対向端部の離反移動(もしくは接近移動)に同行させられた位置にとどめられる。
【0016】
よって、上記レーザーポインタからのレーザー光の上記視認計測体における受光位置を、ある所定期間における開始時点と終了時点など、前後した各時点でそれぞれ視認によりチェックして、この受光位置の移動寸法を計測すれば、この計測値は、上記一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反移動(もしくは接近移動)についての上記前後した各時点間における最大移動寸法に相当する。
【0017】
ここで、上記他方の対向端部についての上記最大移動寸法の値が過大であると判断されて、異常なものであると判断された場合には、この配管設備における第1、第2管の配管に異常が生じている、と判断される。よって、この判断に基づき上記配管設備に対し所望の保全作業を行なえば、上記第1、第2管の両対向端部同士が上記異常に因って不意に離脱することなど、配管設備における不都合の発生を予防することができる。
【0018】
また、上記視認計測体を予め視認し易いところに設置しておきさえすれば、上記レーザーポインタからのレーザー光の上記視認計測体における受光位置の目視によるチェックが容易にできる。しかも、上記したレーザーポインタ、当接体、および視認計測体は構成簡素であるため、上記した目視によるチェックは、簡単な構成で達成できる。
【0019】
請求項2の発明は、上記他方の対向端部側に取り付けられる他のレーザーポインタを設け、この他のレーザーポインタから射光される他のレーザー光が上記視認計測体により受光されるようにしている。
【0020】
このため、上記他方の対向端部側に取り付けられる他のレーザーポインタからの他のレーザー光の上記視認計測体における受光位置は、上記他方の対向端部側の上記一方向における存在位置に合致する。よって、上記他のレーザーポインタからの他のレーザー光の上記視認計測体における受光位置を、ある所定期間における開始時点と終了時点など、前後した各時点でそれぞれ視認によりチェックすれば、上記前後した各時点での上記他方の対向端部側の各存在位置をそれぞれ計測できる。そして、これら各計測値の差を求めれば、上記前後した各時点のうちの前の時点から後の時点に至るまでの上記他方の対向端部側の移動寸法を知ることができる。
【0021】
ここで、上記した他方の対向端部側の上記移動寸法が過大もしくは過小であると判断されて、異常なものであると判断された場合には、前記した他方の対向端部の最大移動寸法に基づく判断に加えて、上記配管設備における第1、第2管に異常が生じていることが、より精度よく判断される。よって、これら判断に基づき上記配管設備に対し所望の保全作業を行なえば、上記第1、第2管の両対向端部同士が上記異常に因り不意に離脱することなど、配管設備における不都合の発生を、より確実に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】配管設備の斜視部分破断図である。
【図2】配管設備の側面部分断面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視拡大断面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の配管設備における配管異常チェック装置に関し、配管設備における第1、第2管の両対向端部同士の相対移動寸法の値が異常であるか否かを目視によりチェックして、配管設備における不都合の発生を予防できるようにし、また、上記した目視によるチェックが、容易に、かつ、簡単な構成で達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、配管設備は、一方向に沿って列状に配管された第1、第2管と、上記一方向における上記第1、第2管の互いの対向端部のうち、いずれか一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反、接近移動を許容するようこれら両対向端部同士を連結する伸縮管継手とを備えている。
【0025】
上記配管設備における配管異常チェック装置は、上記一方の対向端部側に固着されて上記一方向に沿って延びるレールと、このレールに支持され、上記一方向に向かって往、復移動可能とされるレーザーポインタと、他方の対向端部側に固着されると共に上記レーザーポインタ側に当接する当接体と、上記一方向に沿って延び、上記レーザーポインタが射光するレーザー光を受光する視認計測体とを備える。上記一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反、もしくは接近移動時に、この移動と共に移動する上記当接体が上記レーザーポインタをその移動方向にのみ同行移動させるようにしている。
【実施例】
【0026】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0027】
図において、符号1は、配管設備であり、この配管設備1は、車両の車体用電着塗装装置の一部を構成する。具体的には、上記配管設備1は、ボイラー2で生じた蒸気3を熱交換器4に送気する。そして、この熱交換器4において、上記蒸気3の熱(例えば、常温〜600℃)が電着前処理液の加熱のために熱交換される。
【0028】
上記配管設備1は、水平な一方向Aに沿って列状に配管された第1、第2管7,8と、上記一方向Aにおける上記第1、第2管7,8の互いの対向端部9,10同士の離反、接近移動B,Cを許容するようこれら両対向端部9,10同士を連結する伸縮管継手11と、上記第1管7の長手方向の中途部の各分断端に固着される第1フランジ12,12と、これら両第1フランジ12,12同士を締結する締結具13と、上記第2管8の長手方向の中途部の各分断端に固着される第2フランジ14,14と、これら両第2フランジ14,14同士を締結する締結具15とを備えている。
【0029】
上記第1、第2管7,8は、例えば直径100mmなど、互いに同径の円形管で、これら第1、第2管7,8、伸縮管継手11、および第1、第2フランジ12,14は、いずれも金属(鉄)製とされている。
【0030】
上記伸縮管継手11は、上記第1管7の対向端部9の自由端部に、上記一方向Aにおける一端部が結合される径大管19と、この径大管19の他端部に結合され、上記第2管8の対向端部10の自由端部を上記一方向Aに沿って移動可能に挿入させる径小管20と、これら第2管8の対向端部10の自由端部の外周面と上記径小管20の内周面との間に介設されるシール材21とを備えている。
【0031】
上記配管設備1は、床面24上方の高所に設置されて上記第1、第2管7,8を支持する梁25を備えている。この梁25は、Iビームで形成され、かつ、床面24上に設置されて上記電着塗装装置を覆う建屋の天井部の一部を構成している。
【0032】
上記第1、第2管7,8の両対向端部9,10のうち、いずれか一方である第1管7の対向端部9が、上記梁25上に第1支持ブラケット27により固着されている。また、上記第2管8における上記一方向Aに向かっての端部側は、上記梁25上に第2支持ブラケット28により固着されている。また、上記第1、第2支持ブラケット27,28の間で、上記第2管8を上記梁25上に支持するローラバンド29が設けられる。このローラバンド29は、上記一方向Aにおける上記第2管8の中途部のある程度の移動を許容する。
【0033】
また、上記第1支持ブラケット27とローラバンド29との間、および上記第2支持ブラケット28とローラバンド29との間における上記第2管8の各部分には、それぞれ保温材30,31が外嵌されている。上記一方向Aで、上記第1支持ブラケット27から第2支持ブラケット28に至る距離は、例えば、50〜200mである。
【0034】
ここで、上記第1、第2管7,8の少なくともいずれかが蒸気3の過高温により過大に伸長したり,何らかの外力により上記第1、第2管7,8が過大に移動したりして、上記第1支持ブラケット27、第2支持ブラケット28、もしくはローラバンド29が破損するなどし、この結果、上記第1、第2管7,8の両対向端部9,10同士の相対移動寸法の値が異常となって、これが進行したとする。すると、上記第1、第2管7,8が上記梁25から脱落したり、上記両対向端部9,10が互いに離脱したりするおそれを生じる。
【0035】
そこで、上記両対向端部9,10の相対移動寸法の値が異常であるか否かを目視によりチェックして、上記両対向端部9,10同士の離脱を防止するなど、配管設備1における不都合の発生を予防するための配管異常チェック装置33が配管設備1に設けられている。
【0036】
上記配管異常チェック装置33は、上記第1、第2管7,8の両対向端部9,10のうち、一方の第1管7の対向端部9側にブラケット34により固着されて上記一方向Aに沿って延びるレール35と、このレール35に支持され、電動機の駆動により上記一方向Aに向かって往、復移動D,Eするよう自走可能な可動体36と、この可動体36に取り付けられ、下方に向かってレーザー光37を射光するレーザーポインタ38と、前記床面24の近くで建屋の一部である柱39に取り付けられ、上記可動体36の往、復移動D,Eを電気的にオン、オフ可能とする操作スイッチ40とを備えている。具体的には、上記一方向Aにおける上記第1管7の対向端部9の近傍で、上記梁25に上記ブラケット34により上記レール35の一端部が固着されている。
【0037】
また、上記配管異常チェック装置33は、上記可動体36に突設される被当接体44と、上記第1、第2管7,8の両対向端部9,10のうち、他方の第2管8の対向端部10側に固着されると共に上記被当接体44を介しレーザーポインタ38側に当接する当接体45と、この当接体45に取り付けられ、下方に向かって他のレーザー光46を射光する他のレーザーポインタ47と、上記一方向Aに沿って延びると共に、上記床面24上に取り付けられ、上記各レーザーポインタ38,47が射光する各レーザー光37,46を受光する寸法目盛付の視認計測体48とを備えている。
【0038】
具体的には、上記当接体45は、第2管8の対向端部10側に相当する第2フランジ14に締結具15により固着されている。そして、上記第1管7の対向端部9に対する第2管8の対向端部10の離反移動B時に、この離反移動Bと共に移動する上記当接体45が上記被当接体44に当接して、この被当接体44を突設した上記可動体36とレーザーポインタ38とを上記離反移動B方向にのみ同行移動させて、往移動Dさせるようになっている。図1〜3中実線で示すように、上記当接体45が被当接体44に当接した状態で、上記各レーザーポインタ38,47は上記一方向Aで互いに同じところに位置することとされる。また、これら各レーザーポインタ38,47が射光する各レーザー光37,46も、上記一方向Aで同じところに位置することとされ、互いに平行に延びている。
【0039】
上記構成の配管異常チェック装置33により、配管設備1における配管異常を保全員が視認しチェックして、上記第1、第2管7,8の両対向端部9,10同士の離脱を予め防止するなど、配管設備1における不都合の発生を予防するための操作手順につき説明する。
【0040】
ここで、前記電着塗装の作業は、まず、上記ボイラー2をオンして、その蒸気3を熱交換器4に送り込むことにより始まり、上記作業は上記ボイラー2をオフして終了する。この作業は1日毎のサイクルで行なわれる。
【0041】
そして、上記配管異常チェック装置33の操作手順としては、まず、上記ボイラー2をオフした後、上記操作スイッチ40への操作により、上記可動体36をレーザーポインタ38と共に往移動Dさせて図2,3中二点鎖線で示す格納位置に位置させる。上記したボイラー2のオフ時に、上記第1、第2管7,8が高温である場合には、上記ボイラー2のオフにより、上記第1、第2管7,8は経時的に温度降下し、これら第1、第2管7,8は収縮する。
【0042】
次に、上記ボイラー2をオンする直前に、上記操作スイッチ40への操作により、上記可動体36をレーザーポインタ38と共に復移動Eさせて、各図中実線で示すように上記可動体36の被当接体44を上記当接体45に当接させる。この場合、上記各レーザーポインタ38,47から射光される各レーザー光37,46は、上記視認計測体48上の上記一方向Aでの同じところで受光される。
【0043】
次に、上記ボイラー2をオンして、電着塗装の作業を開始すると、このボイラー2のオンにより、上記第1、第2管7,8は、これら7,8内を流動する蒸気3の熱で伸長する。その後、上記ボイラー2をオフして、上記電着塗装の作業を終了すると、このボイラー2のオフにより、上記第1、第2管7,8は常温への戻りにより収縮する。この場合、上記第1管7の対向端部9に対し第2管8の対向端部10は接近移動Cと離反移動Bとを繰り返すよう相対移動するが、この相対移動が所定範囲である場合には、この相対移動は、上記伸縮管継手11により吸収されて上記両対向端部9,10同士の良好な連結状態が維持される。
【0044】
上記の場合、ボイラー2のオンにより、上記第1、第2管7,8が伸長して、上記第1管7の対向端部9に対し第2管8の対向端部10が上記当接体45と共に接近移動Cするとき、この当接体45は上記被当接体44から単に離反するだけのため、この被当接体44と関連する可動体36とレーザーポインタ38とは元の位置のままにとどめられる。
【0045】
一方、上記第1、第2管7,8のうち、例えば、第2管8が蒸気3の過高温により、所定寸法以上に伸長したとする。そして、図2中三点鎖線で示すように、上記第2管8の対向端部10が第1管7の対向端部9に過大に接近移動Cして、上記伸縮管継手11の径大管19の内部に大きく入り込み、上記第1管7の対向端部9側に当接したとし、更に、上記第2管8が上記一方向Aに向かって伸長したとする。すると、図2中一点鎖線で示すように、上記第2管8と共に移動した保温材30は上記ローラバンド29を押動してこのローラバンド29を損傷させるおそれがある。
【0046】
また、何らかの外力により、図2中一点鎖線で示すように、上記第2管8と共に移動した保温材30が上記ローラバンド29を押動してこのローラバンド29を損傷させたり、上記第1支持ブラケット27や第2支持ブラケット28を損傷させたりするおそれもある。
【0047】
そして、上記したローラバンド29の損傷や、第1、第2支持ブラケット27,28の損傷などにより、上記第1管7の対向端部9に対し第2管8の対向端部10が離反移動Bするときには、この第2管8の対向端部10と共に上記当接体45および他のレーザーポインタ47が一方向Aに向かって往移動Dし、かつ、上記当接体45に当接する被当接体44と共に上記可動体36およびレーザーポインタ38も上記一方向Aに向かって同行移動させられ、往移動Dする。この場合において、その後、仮に、上記のように往移動Dしたもののうちの上記当接体45が、上記第1管7の対向端部9に対する上記第2管8の対向端部10の接近移動Cに伴って復移動Eしたとする。この場合、上記当接体45は、上記被当接体44、可動体36、およびレーザーポインタ38から離反するだけで、これら被当接体44、可動体36、およびレーザーポインタ38は、前記した第2管8の対向端部10の離反移動Bにより往移動Dさせられた位置にとどめられる。
【0048】
よって、上記レーザーポインタ38からのレーザー光37の上記視認計測体48における受光位置を、上記ボイラー2のオンからオフに至るまでの所定期間における開始時点と終了時点など、前後した各時点でそれぞれ視認によりチェックして、この受光位置の移動寸法を計測すれば、この計測値は、上記第1管7の対向端部9に対する第2管8の対向端部10の離反移動Bについての上記前後した各時点間における最大移動寸法Lに相当する。
【0049】
ここで、上記第2管8の対向端部10についての上記最大移動寸法Lの値が過大であると判断されて、異常なものであると判断された場合には、この配管設備1における第1、第2管7,8の配管に異常が生じている、と判断される。よって、この判断に基づき上記配管設備1に対し所望の保全作業を行なえば、上記第1、第2管7,8の両対向端部9,10同士が上記異常に因って不意に離脱することなど、配管設備1における不都合の発生を予防することができる。
【0050】
また、上記視認計測体48を予め視認し易いところに設置しておきさえすれば、上記レーザーポインタ38からのレーザー光37の上記視認計測体48における受光位置の目視によるチェックが容易にできる。しかも、上記したレーザーポインタ38、当接体45、および視認計測体48は構成簡素であるため、上記した目視によるチェックは、簡単な構成で達成できる。
【0051】
また、上記の場合、他方の対向端部10側に取り付けられる他のレーザーポインタ47を設け、この他のレーザーポインタ47から射光される他のレーザー光46が視認計測体48により受光されるようにしている。
【0052】
このため、上記第2管8の対向端部10側に取り付けられる他のレーザーポインタ47からの他のレーザー光46の上記視認計測体48における受光位置は、上記第2管8の対向端部10側の上記一方向Aにおける存在位置に合致する。よって、上記他のレーザーポインタ47からの他のレーザー光46の上記視認計測体48における受光位置を、上記ボイラー2のオンからオフに至るまでの期間中で、ある所定期間における開始時点と終了時点など、前後した各時点でそれぞれ視認によりチェックすれば、上記前後した各時点での上記第2管8の対向端部10側の各存在位置をそれぞれ計測できる。そして、これら各計測値の差を求めれば、上記前後した各時点のうちの前の時点から後の時点に至るまでの上記第2管8の対向端部10側の移動寸法を知ることができる。
【0053】
ここで、上記した第2管8の対向端部10側の上記移動寸法が過大もしくは過小であると判断されて、異常なものであると判断された場合には、前記した第2管8の対向端部10の最大移動寸法Lに基づく判断に加えて、上記配管設備1における第1、第2管7,8に異常が生じていることが、より精度よく判断される。よって、これら判断に基づき上記配管設備1に対し所望の保全作業を行なえば、上記第1、第2管7,8の両対向端部9,10同士が上記異常に因り不意に離脱することなど、配管設備1における不都合の発生を、より確実に予防することができる。
【0054】
なお、上記ボイラー2のオンからオフに至るまでの長期間中において、短時間の所定期間毎(例えば、2時間毎)に、上記レーザーポインタ38からのレーザー光37の上記視認計測体48における受光位置を視認によりチェックして計測し、これら各計測値の中から上記最大移動寸法Lを知るようにしてもよい。また、上記した短時間の所定期間毎に、上記他のレーザーポインタ47からの他のレーザー光46の上記視認計測体48における受光位置を視認によりチェックして、上記所定期間の開始時点と終了時点とにおける上記第2管8の対向端部10側の各存在位置を計測して、その移動寸法を算出するようにしてもよい。
【0055】
そして、上記したように、所定期間を短くすることにより視認によるチェックの頻度を高くすれば、その分、上記した配管設備1における第1、第2管7,8の異常の発見と、この異常に因る配管設備1での不都合の発生についての予防とを、より迅速に達成できる。
【0056】
そして、上記ボイラー2をオフする際には、前記したように、操作スイッチ40への操作により、上記可動体36をレーザーポインタ38と共に往移動Dさせて格納位置に戻せばよい。
【0057】
なお、以上は図示の例によるが、上記第1管7の対向端部9に対する第2管8の対向端部10の接近移動C時に、この接近移動Cと共に移動する上記当接体45が上記被当接体44に当接して、この被当接体44に突設した上記可動体36とレーザーポインタ38とを上記接近移動C方向にのみ、同行移動させて、復移動Eさせるようにしてもよく、この構成を上記実施例のものに代え、もしくは追加してもよい。このようにすれば、前記したように第1管7の対向端部9に対し第2管8の対向端部10が離反移動Bしたときに代え、もしくはこれに加え、接近移動Cしたときにも、配管設備1における第1、第2管7,8の配管に異常が生じているか否かの判断ができる。
【0058】
また、上記配管設備1は地下に設けられるものであってもよい。また、上記ボイラー2は終日オンとされるものであってもよい。また、上記レール35は、上記第1管7の対向端部9側である伸縮管継手11の径大管19や第1管7の対向端部9に直接固着してもよい。また、上記レール35は、前記梁25の上部板や下部板により形成してもよい。また、上記被当接体44に当接体45が当接した状態で、上記両レーザーポインタ38,47は上記一方向Aで互いに多少偏位していてもよい。また、上記視認計測体48は、建屋や地下の内側面に取り付けてもよく、上記各レーザー光37,46に対し個別に設けてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 配管設備
2 ボイラー
3 蒸気
4 熱交換器
7 第1管
8 第2管
9 対向端部
10 対向端部
11 伸縮管継手
24 床面
25 梁
27 第1支持ブラケット
28 第2支持ブラケット
29 ローラバンド
30 保温材
31 保温材
33 配管異常チェック装置
35 レール
36 可動体
37 レーザー光
38 レーザーポインタ
39 柱
40 操作スイッチ
44 被当接体
45 当接体
46 他のレーザー光
47 他のレーザーポインタ
48 視認計測体
A 一方向
B 離反移動
C 接近移動
D 往移動
E 復移動
L 最大移動寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って列状に配管された第1、第2管と、上記一方向における上記第1、第2管の互いの対向端部のうち、いずれか一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反、接近移動を許容するようこれら両対向端部同士を連結する伸縮管継手とを備えた配管設備において、
上記一方の対向端部側に固着されて上記一方向に沿って延びるレールと、このレールに支持され、上記一方向に向かって往、復移動可能とされるレーザーポインタと、他方の対向端部側に固着されると共に上記レーザーポインタ側に当接する当接体と、上記一方向に沿って延び、上記レーザーポインタが射光するレーザー光を受光する視認計測体とを備え、上記一方の対向端部に対する他方の対向端部の離反、もしくは接近移動時に、この移動と共に移動する上記当接体が上記レーザーポインタをその移動方向にのみ同行移動させるようにしたことを特徴とする配管設備における配管異常チェック装置。
【請求項2】
上記他方の対向端部側に取り付けられる他のレーザーポインタを設け、この他のレーザーポインタから射光される他のレーザー光が上記視認計測体により受光されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の配管設備における配管異常チェック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241801(P2012−241801A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112584(P2011−112584)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】