説明

配線ダクトおよび配線ダクト製造方法

【課題】ケーブルをより確実に保護し、製造がより容易であること。
【解決手段】ケーブル30を囲む本体31、32と、ケーブル30を本体31、32に固定する留め具37とを備えている。留め具37は、本体31、32に一体に接合されている。このような配線ダクト21は、ケーブル30が内部で固定されて、ケーブル30をより確実に保護することができる。このような配線ダクト21は、さらに、板に切り欠き61を形成することにより、本体31、32と留め具37とを形成することができ、より容易に製造されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線ダクトおよび配線ダクト製造方法に関し、特に、既設の建造物に増設されるケーブルを保護する配線ダクトに関し、その配線ダクトを生産する配線ダクト製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の建造物に新規に布設されるケーブルをカバーする配線ダクトが知られている。そのケーブルとしては、電線、電話線が例示される。その配線ダクトは、そのケーブルが変形して断線することを防止する。このような配線ダクトは、破損しやすいケーブルをより確実に保護し、製造・設置がより容易であることが望まれている。
【0003】
特開2006−136537号公報には、什器等における被装着部に、ダクト本体の取付け及び取外しが簡単に行うことができるようにした配線ダクト装置が開示されている。その配線ダクト装置は、上下方向に配線される電線を収容する凹溝状の収容部を有するダクト本体の上端部に、下向き鉤形の下向き係止片を設け、該下向き係止片を、什器等の被装着部の上面に設けた上部係止孔に着脱自在に係止させるとともに、前記ダクト本体の下端部に、ほぼ水平方向の支持片を設け、該支持片の下面に、締結手段をもって、前記被装着部の下面に設けられる下部係止孔に係止される固定金具を着脱自在に締結したことを特徴としている。
【0004】
特開2005−253185号公報には、間仕切り壁を安定して支持でき、また、間仕切り壁等の施工後に配線ダクトの側面部に配線器具の移設や増設が簡単にでき、しかも、配線器具の移設や増設の際に幅木を傷付けたりすることがなく、更に、間仕切り壁内と配線収容空所内との間や、床下と配線収納空所との間で配線ケーブルを通して配線作業が容易にできる配線ダクトが開示されている。その配線ダクトは、両側の側面部と、スタッドが立設されるスタッド立設部を設けた上面部と、両側面部と上面部とで囲まれた配線ケーブルを収容するための配線収容空所とを備え、両側面部のうち一方の側面部又は両側面部の長手方向に、幅木を着脱自在に取付けるための複数の幅木取付け部と、複数の開口部と、配線器具を取付けるための複数の配線器具取付け部とをそれぞれ隔設し、長手方向の複数個の配線器具取付け部のうち任意の配線器具取付け部に配線器具を取付け、側面部の配線器具を取付けていない部分を幅木で隠蔽すると共に幅木に設けた被取付け部を側面部の幅木取付け部に着脱自在に取付けて成ることを特徴としている。
【0005】
特開2002−112430号公報には、電源プラグの形状に拘わらず、コンセントへ接続された電源コードが配線ダクトの表面から離れなることがなく、電源コードに足等を引っ掛けて怪我をしたり、電化製品の電源を遮断するのを防止し、美観を向上することができる配線ダクトが開示されている。その配線ダクトは、電線を案内し収納する長手方向に開口部を設けた収納体と、該収納体の開口部を閉塞するカバーと、該カバーに設けたコンセントから成る配線ダクトにおいて、前記コンセントに接続された電源コードを前記カバーの表面から浮き上がらないようにしたことを特徴としている。
【0006】
特開2005−136533号公報には、新設ビルはもちろんのこと、既設ビルにおいてもネットワークを簡便に構築する建屋内通信手段が開示されている。その建屋内通信手段は、エレベータの昇降路内に第1の通信手段を、昇降路外に第2の通信手段を有する建屋内通信装置において、前記第1の通信手段と第2の通信手段とを接続する接続手段を各階毎に設けたエレベータの呼出しボタンの少なくともいずれかの近傍に設けたことを特徴としている。
【0007】
特開2002−314268号公報には、L曲げ配線部において複数本のケーブルを整列し且つ所要の曲率を以って配線し、同L曲げ配線部におけるケーブル跳ね出しと曲率不全を有効に防止する配線ダクトが開示されている。その配線ダクトは、上面において開放せるケーブル収容路を形成するベース部材と、該ベース部材に嵌合されて上記ケーブル収容路の開放面を覆うカバー部材とから成る配線ダクトにおいて、座板の上面に複数条の隔壁を並設し、該各隔壁間に複数条のケーブル引き通し溝を形成せるケーブルホルダーを形成し、該ケーブルホルダーを上記ベース部材のケーブル収容路に内装し、上記ケーブルを上記ケーブル引き通し溝に引き通しつつ上記ケーブル収容路に収容する構成としたことを特徴としている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−136537号公報
【特許文献2】特開2005−253185号公報
【特許文献3】特開2002−112430号公報
【特許文献4】特開2005−136533号公報
【特許文献5】特開2002−314268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ケーブルをより確実に保護し、製造がより容易である配線ダクトを提供することにある。
本発明の他の課題は、製造がより容易であり、かつ、より容易に設置される配線ダクトを提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、製造がより容易であり、かつ、ケーブルが絡まることを防止する配線ダクトを提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、ケーブルをより確実に保護する配線ダクトをより容易に製造する配線ダクト製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明による配線ダクト(21)(22)(3)は、ケーブル(30)(56−1〜56−5)を囲む本体(31、32)(41、42)(51、52)と、ケーブル(30)(56−1〜56−5)を本体(31、32)(41、42)(51、52)に固定する留め具(37)(45)(55−1〜55−5)とを備えている。留め具(37)(45)(55−1〜55−5)は、本体(31、32)(41、42)(51、52)に一体に接合されている。このような配線ダクト(21)(22)(3)は、ケーブル(30)(56−1〜56−5)が内部で固定されて、ケーブル(30)(56−1〜56−5)をより確実に保護することができる。このような配線ダクト(21)(22)(3)は、さらに、板に切り欠き(61)を形成することにより、本体(31、32)(41、42)(51、52)と留め具(37)(45)(55−1〜55−5)とを形成することができ、より容易に製造されることができる。
【0012】
ケーブル(30)(56−1〜56−5)は、情報を示している光を伝送する光ファイバを備えていることが好ましい。
【0013】
本体(31、32)は、留め具(37)によりケーブル(30)が固定される固定部(31)と、ケーブル(30)が配置される空間を外部から隔離する蓋(32)とを備えている。蓋(32)は、固定部(31)が弾性変形することにより、固定部(31)に取り付けられる。このとき、配線ダクト(21)は、ある壁(23)に設置されるときに、固定部(31)をその壁(23)に設置し、ケーブル(30)を固定部(31)に取り付けた後に、蓋(32)を固定部(31)に取り付けることができる。このため、ユーザは、配線ダクト(21)をより容易に設置することができる。
【0014】
固定部(31)は、第1部分(33)と、第1部分(33)に概ね垂直である第2部分(34)とを有している。配線ダクト(21)は、壁(23)と天井(24)とが垂直であるときに、第1部分(33)が壁(23)に対向して第2部分(34)が天井(24)に対向するように、建造物(1)に取り付けることができる。このとき、配線ダクト(21)は、見栄えがよく、邪魔にならないで好ましい。なお、配線ダクト(21)は、第1部分(33)に垂直であり、かつ、第2部分(34)に垂直である平面で切断したときに、断面の形状が第1部分(33)と第2部分(34)と蓋(32)とにより三角形を形成することがより好ましい。
【0015】
本発明による配線ダクト(3)は、本体(51、52)に一体に接合され、他のケーブル(56−1〜56−5)を本体(51、52)に固定する他の留め具をさらに備えている。すなわち、配線ダクト(3)は、複数の留め具(55−1〜55−5)を備えている。配線ダクト(3)は、その複数の留め具(55−1〜55−5)が複数のケーブル(56−1〜56−5)をそれぞれ保持するときに、その複数のケーブル(56−1〜56−5)が絡まることを防止することができる。
【0016】
本体(31、32)(41、42)(51、52)は、金属から形成される。延焼を防止する点で好ましい。その金属は、アルミニウムであることがさらに好ましい。
【0017】
本発明による配線ダクト製造方法は、ケーブル(30)(56−1〜56−5)を囲む本体(31、32)(41、42)(51、52)と、ケーブル(30)(56−1〜56−5)を本体(31、32)(41、42)(51、52)に固定する留め具(37)(45)(55−1〜55−5)とを備えている配線ダクト(21)(22)(3)を製造する配線ダクト製造方法である。本発明による配線ダクト製造方法は、本体(31、32)(41、42)(51、52)に形成される部分と留め具(37)(45)(55−1〜55−5)に形成される部分とを含んでいる板を製造するステップと、板に切り欠き(61)を形成して本体(31、32)(41、42)(51、52)と留め具(37)(45)(55−1〜55−5)とを形成するステップとを備えている。本発明による配線ダクト製造方法は、本発明による配線ダクト(21)(22)(3)をより容易に製造することができる。
【0018】
切り欠き(61)は、打ち抜きにより形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による配線ダクトは、ケーブルが内部で固定されてケーブルをより確実に保護することができる。本発明による配線ダクトは、さらに、板に切り欠きを形成することにより、本体と留め具とを形成することができ、より容易に製造されることができる。本発明による配線ダクト製造方法によれば、ユーザは、ケーブルをより確実に保護することができる配線ダクトをより容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面を参照して、本発明による配線ダクトの実施の形態を記載する。その配線ダクトは、図1に示されているように、建造物1の屋内で複数の光ファイバが通過する通路を形成し、専有部分用配線ダクト2と共用部分用配線ダクト3とを含んでいる。建造物1は、複数の専有部分5−1〜5−n(n=2,3,4,…)と共用部分6とに構造上区分されている。複数の専有部分5−1〜5−nは、それぞれ、互いに独立して事務所、店舗、住居などの用途に複数の所有者に使用されている。共用部分6は、その複数の所有者に共用される部分である。共用部分6は、エレベータシャフト11と廊下12とを備えている。エレベータシャフト11は、建造物1が備えるエレベータのケージが昇降する通路である。廊下12は、そのエレベータと複数の専有部分5−1〜5−nと結ぶ通路である。専有部分用配線ダクト2は、複数の専有部分5−1〜5−nに設置される。共用部分用配線ダクト3は、共用部分6に設置される。
【0021】
共用部分6は、さらに、ファイバールーム8を備えている。専有部分5−1〜5−nの各々には、光成端箱17が設けられている。光成端箱17は、光ファイバーに接続されている。その光ファイバーは、本発明による配線ダクトにより形成される通路を通過して、ファイバールーム8に接続されている。すなわち、専有部分用配線ダクト2と共用部分用配線ダクト3とは、その光ファイバーがファイバールーム8と光成端箱17とを結ぶときのルートを形成している。光成端箱17は、図示されていないコネクタを備えている。そのコネクタは、機器に接続される光ファイバを光成端箱17に接続されるときに利用される。その機器としては、パーソナルコンピュータ、ケーブルテレビチューナ、監視カメラが例示される。
【0022】
ファイバールーム8には、複数のPT15とMDF16とが設けられている。PT15は、キャリアにより市内に布設された光ケーブル回線18を建造物1の屋内に引き込むときに使用され、光ケーブル回線18に接続され、複数の光ファイバー19を介してMDF16に接続されている。PT15は、専有部分5−1〜5−nのユーザにより利用されるキャリアの数と同数が設けられている。MDF16は、光ファイバ19に接続され、本発明による配線ダクトにより形成される通路を通過する複数の光ファイバーに接続されている。
【0023】
PT15とMDF16と光成端箱17とは、光成端箱17に接続される機器が建造物1の外部に配置される他の機器と通信することができるように、その機器にそれぞれ接続される複数の光ファイバーを光ケーブル回線18に含まれる複数の光ファイバにそれぞれ接続している。
【0024】
図2は、専有部分用配線ダクト2を示している。専有部分用配線ダクト2は、鉛直配線ダクト21と水平配線ダクト22とを含んでいる。鉛直配線ダクト21は、水平方向に平行に配置され、専有部分5−1〜5−nの壁23と天井24との境目に配置される。水平配線ダクト22は、鉛直方向に平行に配置され、鉛直配線ダクト21と光成端箱17との間に配置される。
【0025】
水平配線ダクト22は、アルミニウムから形成され、図3に示されているように、固定部31と蓋32とから形成されている。固定部31は、第1部分33と第2部分34と受け部分35とラッチ部分36とから形成されている。第1部分33は、長方形状の平坦な板状に形成されている。第1部分33は、図示されていないねじを用いて、壁23に接合される。第2部分34は、長方形状の平坦な板状に形成され、第1部分33の面と垂直になるように、その一辺が第1部分33に一体に接合されている。第2部分34は、図示されていないねじを用いて、天井24に接合されている。受け部分35は、長方形状の平坦な板状に形成され、その一辺が第1部分33に一体に接合されている。第1部分33の受け部分35に接合されている辺は、第1部分33の第2部分34に接合されている辺の対辺である。ラッチ部分36は、長方形状の平坦な板状に形成され、第2部分34の面と概ね垂直になるように、その一辺が第2部分34に一体に接合されている。第2部分34のラッチ部分36に接合されている辺は、第2部分34の第1部分33に接合されている辺の対辺である。
【0026】
蓋32は、平坦部分40と凹部分38と折り返し部分39とから形成されている。平坦部分40は、長方形状の平坦な板状に形成されている。凹部分38は、長方形状の平坦な帯状に形成され、平坦部分40と平行であり、かつ、平坦部分40と異なる平面上に配置されるように、その一辺が平坦部分40に一体に接合されている。折り返し部分39は、長方形状の平坦な帯状に形成され、平坦部分40と鋭角の角が形成されるように、その一辺が平坦部分40に一体に接合されている。平坦部分40の凹部分38に接合されている辺は、平坦部分40の折り返し部分39に接合されている辺の対辺である。
【0027】
蓋32の幅は、固定部31の開口部の幅(受け部分35とラッチ部分36との距離)より大きい。すなわち、水平配線ダクト22は、蓋32のその2つの辺が受け部分35とラッチ部分36とに引っ掛けられることにより、固定部31から外れないように取り付けられている。水平配線ダクト22は、蓋32が固定部31に取り付けられたときに、第1部分33に垂直であり、かつ、第2部分34に垂直である平面で切断した断面の形状が直角三角形を形成している。水平配線ダクト22は、蓋32が固定部31に取り付けられたときに、さらに、平坦部分40と受け部分35とが同一平面上に配置される。すなわち、凹部分38は、蓋32が固定部31に取り付けられたときに、平坦部分40と受け部分35とが同一平面上に配置されるように形成される。このような形状によれば、水平配線ダクト22は、壁と天井とが垂直であるときに、第1部分33が壁に対向して第2部分34が天井に対向するように、建造物に取り付けることができ、このとき、見栄えがよく、邪魔にならないで好ましい。
【0028】
第1部分33は、さらに、留め具37を備えている。留め具37は、図4に示されているように、平坦でない概ね長方形状に形成され、その一辺が第1部分33に一体に接合されている。留め具37は、第1部分33との間にケーブル30が配置される隙間を形成している。留め具37は、弾性変形し、その弾性力により留め具37と第1部分33との間にケーブル30を挟んで、ケーブル30が水平配線ダクト22の内部で移動しないように、ケーブル30を固定している。
【0029】
図5は、鉛直配線ダクト21を示している。鉛直配線ダクト21は、アルミニウムから形成され、固定部41と蓋42とから形成されている。固定部41は、底部分43と2つの側部分44とから形成されている。底部分43は、長方形状の平坦な板状に形成されている。第1部分33は、図示されていないねじを用いて、壁23に接合される。側部分44は、それぞれ、長方形状の平坦な板状に形成され、底部分43の面と垂直になるように、底部分43の長方形の向かい合う2辺に一体に接合されている。
【0030】
固定部41は、さらに、留め具45を備えている。留め具45は、留め具37と同様にして、平坦でない概ね長方形状に形成され、その一辺が固定部41に一体に接合されている。留め具45は、固定部41との間にケーブル30が配置される隙間を形成している。留め具45は、弾性変形し、その弾性力により留め具45と固定部41との間にケーブル30を挟んで、ケーブル30が鉛直配線ダクト21の内部で移動しないように、ケーブル30を固定している。
【0031】
蓋42は、平坦部分47と2つの側部分46とから形成されている。平坦部分47は、長方形状の平坦な板状に形成されている。側部分46は、それぞれ、長方形状の概ね平坦な板状に形成され、平坦部分47の面と垂直になるように、平坦部分47の長方形の向かい合う2辺に一体に接合されている。蓋42は、固定具(図示されていない)を用いて側部分46が固定部41の側部分44に締結されることにより、固定部31から外れないように取り付けられている。その固定具としては、ボルトとナットとの対が例示される。
【0032】
専有部分用配線ダクト2(鉛直配線ダクト21または水平配線ダクト22)によれば、ケーブル30は、専有部分用配線ダクト2の内部で移動することが防止され、変形することが防止される。すなわち、専有部分用配線ダクト2は、ケーブル30をより確実に保護することができる。このため、専有部分用配線ダクト2は、電線より破損しやすい光ファイバを含むケーブルを保護することに好適である。
【0033】
図6は、共用部分用配線ダクト3を示している。共用部分用配線ダクト3は、アルミニウムから形成され、固定部51と蓋52とから形成されている。固定部51は、底部分53と2つの側部分54とから形成されている。底部分53は、長方形状の平坦な板状に形成されている。側部分54は、それぞれ、長方形状の平坦な板状に形成され、底部分53の面と垂直になるように、底部分53の長方形の向かい合う2辺に一体に接合されている。
【0034】
固定部51は、さらに、複数の留め具55−1〜55−5を備えている。留め具55−1〜55−5は、それぞれ、留め具37と同様にして、平坦でない概ね長方形状に形成され、その一辺が固定部51に一体に接合されている。留め具55−1〜55−5は、それぞれ、共用部分用配線ダクト3の長手方向に垂直である方向に関して互いに異なる位置に配置されている。留め具55−1〜55−5は、それぞれ、固定部51との間に複数のケーブル56−1〜56−5が配置される隙間を形成している。留め具55−1〜55−5は、それぞれ、弾性変形し、その弾性力により留め具55−1〜55−5と固定部51との間にケーブル56−1〜56−5を挟んで、ケーブル56−1〜56−5が共用部分用配線ダクト3の内部で移動しないように、ケーブル56−1〜56−5を固定している。
【0035】
蓋52は、平坦部分58と2つの側部分57とから形成されている。平坦部分58は、長方形状の平坦な板状に形成されている。側部分57は、それぞれ、長方形状の概ね平坦な板状に形成され、平坦部分58の面と垂直になるように、平坦部分58の長方形の向かい合う2辺に一体に接合されている。蓋52は、固定具(図示されていない)を用いて側部分57が固定部51の側部分54に締結されることにより、固定部31から外れないように取り付けられている。その固定具としては、ボルトとナットとの対が例示される。
【0036】
共用部分用配線ダクト3によれば、ケーブル56−1〜56−5は、共用部分用配線ダクト3の内部で移動することが防止され、変形することが防止される。ケーブル56−1〜56−5は、さらに、絡まることが防止される。すなわち、共用部分用配線ダクト3は、複数のケーブル56−1〜56−5をカバーするときに、ケーブル56−1〜56−5をより確実に保護することができる。このため、共用部分用配線ダクト3は、電線より破損しやすい光ファイバを含むケーブルを保護することに好適である。
【0037】
本発明による配線ダクト製造方法の実施の形態は、本発明による配線ダクトを生産する方法であり、製造者により実行される。その製造者は、アルミニウムから形成されるアルミ板を打ち抜き加工することにより、本発明による配線ダクトの各部分に形成される板を製作する。たとえば、その板は、水平配線ダクト22の固定部31に形成されるときに、第1部分33と第2部分34と受け部分35とラッチ部分36と留め具37とに対応する複数の部分から形成されている。その板は、水平配線ダクト22の蓋32に形成されるときに、平坦部分40と凹部分38と折り返し部分39とに対応する複数の部分から形成されている。その板は、鉛直配線ダクト21の固定部41に形成されるときに、底部分43と側部分44と留め具45とに対応する複数の部分から形成されている。その板は、鉛直配線ダクト21の蓋42に形成されるときに、平坦部分47と側部分46とに対応する複数の部分から形成されている。その板は、共用部分用配線ダクト3の固定部51に形成されるときに、底部分53と側部分54と留め具55−1〜55−5とに対応する複数の部分から形成されている。その板は、共用部分用配線ダクト3の蓋52に形成されるときに、平坦部分58と側部分57とに対応する複数の部分から形成されている。その製造者は、この打ち抜き加工された板を曲げ加工することにより、水平配線ダクト22の固定部31、蓋32と鉛直配線ダクト21の固定部41、蓋42と共用部分用配線ダクト3の固定部51、蓋52とを作製する。
【0038】
図7は、水平配線ダクト22の固定部31に形成される板を示している。その板60は、打ち抜き加工により切り欠き61が形成されている。切り欠き61は、板60のうちの第1部分33に対応する部分の中央に形成され、長方形の3辺に沿って形成されている。その長方形の外側の部分62は、第1部分33に対応し、その長方形の内側の部分63は、留め具37に対応している。鉛直配線ダクト21の固定部41に関しても、水平配線ダクト22の固定部31と同様にして作製される。すなわち、鉛直配線ダクト21の固定部41に形成される板は、留め具45に対応する部分に切り欠きが形成されている。
【0039】
図8は、共用部分用配線ダクト3の固定部51に形成される板を示している。その板70は、留め具55−1〜55−5に対応する部分に切り欠き71−1〜71−5がそれぞれ形成されている。切り欠き71−i(i=1,2,3,…,n)は、板70のうちの留め具55−iに対応する部分に形成され、長方形の3辺に沿って形成されている。その長方形の外側の部分62は、底部分53に対応し、その長方形の内側の部分63は、留め具55−iに対応している。切り欠き71−1〜71−5は、共用部分用配線ダクト3の長手方向に対して斜めの方向に並んで配置されている。すなわち、切り欠き71−1〜71−5の共用部分用配線ダクト3の長手方向に対する位置は、互いに異なり、その長手方向の垂直方向に対する位置は、互いに異なっている。
【0040】
このような配線ダクト製造方法によれば、ユーザは、本発明による配線ダクトをより容易に製造することができ、本発明による配線ダクトを用いて既設の建造物に光ファイバーケーブルをより容易に増設することができる。
【0041】
ファイバールーム8と光成端箱17とを結ぶ光ファイバーは、作業者により建造物1に布設される。たとえば、その作業者は、鉛直配線ダクト21を専有部分5−1〜5−nに設置するときに、まず、鉛直配線ダクト21をそれぞれ適当な長さに切断する。次いで、ねじを用いて鉛直配線ダクト21の固定部41を壁23に固定する。その作業者は、固定部41の留め具45を変形させて隙間を形成する。その作業者は、その隙間にケーブル30を配置して、留め具45の弾性力によりケーブル30が固定されるように、留め具45をさらに変形させる。その作業者は、ケーブル30を固定した後に、固定部41に蓋32を取り付ける。
【0042】
その作業者は、水平配線ダクト22を専有部分5−1〜5−nに設置するときに、まず、水平配線ダクト22をそれぞれ適当な長さに切断する。その作業者は、次いで、ねじを用いて水平配線ダクト22の固定部31を壁23に固定する。その作業者は、固定部31の留め具37を変形させて隙間を形成する。その作業者は、その隙間にケーブル30を配置して、留め具37の弾性力によりケーブル30が固定されるように、留め具37をさらに変形させる。
【0043】
その作業者は、ケーブル30を固定した後に、図9に示されているように、固定部31の受け部分35に蓋32の凹部分38を引っ掛ける。その作業者は、凹部分38を引っ掛けた後に、蓋32の平坦部分40を押さえつける。このとき、固定部31と蓋32とが弾性変形することにより、蓋32は、固定部31の受け部分35とラッチ部分36との間から固定部31の内側に入り込み、蓋32は、固定部31に固定して取り付けられる。すなわち、水平配線ダクト22は、このような形状により、このように容易に設置されることができる。
【0044】
その作業者は、共用部分用配線ダクト3を共用部分6に設置するときに、まず、共用部分用配線ダクト3をそれぞれ適当な長さに切断する。その作業者は、次いで、ねじを用いて共用部分用配線ダクト3の固定部51を共有部分6の壁面などに固定する。その作業者は、固定部51の留め具55−1〜55−5を変形させて隙間を形成する。その作業者は、その隙間にケーブル56−1〜56−5をそれぞれ配置して、留め具55−1〜55−5の弾性力によりケーブル56−1〜56−5が固定されるように、留め具55−1〜55−5をさらに変形させる。その作業者は、ケーブル56−1〜56−5を固定した後に、固定部51に蓋52を取り付ける。
【0045】
なお、本発明による配線ダクトは、アルミニウムと異なる他の材料を用いて形成されることもできる。その材料は、塑性変形し、弾性体である材料である。その材料としては、金属が例示され、ステンレス鋼が例示される。本発明による配線ダクトは、加工しやすく、延焼しにくいことから、アルミニウムにより形成されることがより好適である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明による配線ダクトの実施の形態を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明による配線ダクトのうちの専有部分用配線ダクトを示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明による配線ダクトのうちの水平配線ダクトを示す断面図である。
【図4】図4は、留め具を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明による配線ダクトのうちの鉛直配線ダクトを示す断面図である。
【図6】図6は、本発明による配線ダクトのうちの共用部分用配線ダクトを示す断面図である。
【図7】図7は、切り欠きを示す斜視図である。
【図8】図8は、共用部分用配線ダクトの固定部に形成される板を示す平面図である。
【図9】図9は、組み立て方を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 :建造物
2 :専有部分用配線ダクト
3 :共用部分用配線ダクト
5−1〜5−n:専有部分
6 :共用部分
8 :ファイバールーム
11:エレベータシャフト
12:廊下
17:光成端箱
18:光ケーブル回線
19:光ファイバ
21:鉛直配線ダクト
22:水平配線ダクト
23:壁
24:天井
30:ケーブル
31:固定部
32:蓋
33:第1部分
34:第2部分
35:受け部分
36:ラッチ部分
37:留め具
38:凹部分
39:折り返し部分
40:平坦部分
41:固定部
42:蓋
43:底部分
44:側部分
45:留め具
46:側部分
47:平坦部分
51:固定部
52:蓋
53:底部分
54:側部分
55−1〜55−5:留め具
56−1〜56−5:ケーブル
57:側部分
58:平坦部分
60:板
61:切り欠き
62:部分
63:部分
70:板
71−1〜71−5:切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを囲む本体と、
前記ケーブルを前記本体に固定する留め具とを具備し、
前記留め具は、前記本体に一体に接合されている
配線ダクト。
【請求項2】
請求項1において、
前記ケーブルは、光を伝送する光ファイバを備える
配線ダクト。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかにおいて、
前記本体は、
前記留め具により前記ケーブルが固定される固定部と、
前記ケーブルが配置される空間を外部から隔離する蓋とを備え、
前記蓋は、前記固定部が弾性変形することにより、前記固定部に取り付けられる
配線ダクト。
【請求項4】
請求項3において、
前記固定部は、
第1部分と、
前記第1部分に概ね垂直である第2部分とを有する
配線ダクト。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記本体に一体に接合され、他のケーブルを前記本体に固定する他の留め具
を更に具備する配線ダクト。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、
前記本体は、金属から形成される
配線ダクト。
【請求項7】
ケーブルを囲む本体と、
前記ケーブルを前記本体に固定する留め具とを備える配線ダクト
を製造する配線ダクト製造方法であり、
前記本体に形成される部分と前記留め具に形成される部分とを含む板を製造するステップと、
前記板に切り欠きを形成して前記本体と前記留め具とを形成するステップ
とを具備する配線ダクト製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記切り欠きは、打ち抜きにより形成される
配線ダクト製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−92666(P2008−92666A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270651(P2006−270651)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(506312216)株式会社ブロードバンドサービスセンター (2)
【出願人】(506332328)株式会社久保田製作所 (1)
【Fターム(参考)】