配線ボックス用耐火処理部材
【課題】施工技術や、スイッチおよびコンセント等の設置に関する工程に影響を受けることがなく、火災発生時に、可とう電線管用コネクタおよび可とう電線管への延焼を確実防止することができる配線ボックス用耐火処理部材を提供する。
【解決手段】配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度を有し、断面が概ねU字形(取り付け対象によっては多角形や円形)の所定の幅を有する保持部材と、前記保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材。前記保持部材が、断面が概ねU字形の本体と、前記本体の一方の端部に形成された屈曲部と、前記屈曲部から延伸して形成された前記爪部とからなっている。
【解決手段】配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度を有し、断面が概ねU字形(取り付け対象によっては多角形や円形)の所定の幅を有する保持部材と、前記保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材。前記保持部材が、断面が概ねU字形の本体と、前記本体の一方の端部に形成された屈曲部と、前記屈曲部から延伸して形成された前記爪部とからなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災時に屋内配線等に用いられる配線ボックスからの延焼を防止するための配線ボックス用耐火処理部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋内に取り付けられるコンセントやスイッチは、プラスチック製の部品を多く使用しており、火災発生時には、その熱により溶融・変形または燃焼する恐れがある。それによって、配線ボックス内に熱や炎が流入する。配線ボックス内にはスイッチもしくはコンセントへ接続するために引き込まれた電線(可燃性長尺物)があり、電線(可燃性長尺物)およびその被覆が燃焼することによって、電線が導火線のような役目を果たし、中空壁内や電線の壁貫通部などから隣室などへ炎や熱を伝え、延焼が拡大する恐れがある。
【0003】
これを防止するために、従来は熱発泡性耐火材を配線ボックスの内面または外面に貼り付けた配線ボックス用耐火材が開示されている(特許第2945272号公報)。配線ボックスの内面に熱発泡性耐火材を取り付けた場合には、配線ボックス内の空間を圧迫し、内部での配線作業が困難になるという短所があった。また、配線ボックスの外面に熱発泡性耐火材を取り付けた場合には、熱発泡性耐火材の膨張方向が外部空間へ向かうため、期待通りの耐火性能が得られない場合があった。
【0004】
また、特開2003−41683号公報には、配線ボックスの耐火方法が開示されている。図15は、特開2003−41683号公報に開示された配線ボックスの耐火方法を説明する図である。図15に示すように、熱膨張性の耐火材でなく、吸熱作用をもつシート状の耐熱シール材128で配線ボックス116を覆っている。この方法により、配線ボックスの穴やスリット、配線ボックス116前面と開口部118の周りの内面との隙間を塞ぎ、配線ボックス116内に火が入っても配線ボックス116内の熱が外へ伝わるのを防ぐ。しかし、この方法によると、熱の伝わりを防ぎ、延焼を遅らせることはできるが、配線ボックス116に取り付けられている樹脂製の可とう電線管用コネクタ124および可とう電線管122へ延焼してしまった場合には、延焼を止められない可能性があった。
【0005】
更に、特開2007−14045号公報には、配線ボックスの耐火方法が開示されている。図16は、特開2007−14045号公報に開示された配線ボックスの耐火方法を説明する図である。配線ボックスからの延焼を確実に防止するために、コネクタ部分での耐火措置を施している。即ち、図16に示すように、配線ボックス110にコネクタ120を固定した状態で、配線ボックス110の内部空間におけるコネクタ120の突出部123およびナット部125の全体を所定の厚さで、発泡性の粘着可塑性材料130で覆っている。
【特許文献1】特許第2945272号公報
【特許文献2】特開2003−41683号公報
【特許文献3】特開2007−14045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に開示された方法においては、実際に配線が行われる配線ボックスでは、内部に相当量の電線(可燃性長尺物)が詰められている場合や、配線ボックスを取り付ける開口部が配線ボックスよりも小さく、内部へ手を入れて耐火材の措置を行うことが難しい場合がある。またこの方法では、コネクタ内部に耐火材を充填しているが、実際に配線ボックスにスイッチおよびコンセントを取り付ける際にコネクタ内部を通る電線(可燃性長尺物)を引っ張ったり押し込んだりする動きがあり、その際に充填した発泡性の粘着可塑性材料がずれる恐れがある。
【0007】
また、このような耐火工法では、十分な性能を発揮するために、正しい施工が行われているか、施工後に確認できる措置が必要である。配線ボックスへの施工の場合、施工部が壁内などになると、施工後の確認が困難であり、正しい施工が行われたかの判断が下せない場合がある。一般的に施工部には施工完了のラベル等を貼る措置がなされているが、施工者の判断によってずれが生じ、確実でない場合がある。従って第三者が施工後に、正しく施工が行われていることを視認できることが望ましい。
【0008】
従って、本発明の目的は、以上のような問題点に鑑み、施工技術や、スイッチおよびコンセント等の設置に関する工程に影響を受けることがなく、火災発生時に可とう電線管用コネクタおよび可とう電線管への延焼を確実防止することができる配線ボックス用耐火処理部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、配線ボックスに取り付けられている可とう電線管および可とう電線管用コネクタ、特にコネクタ部分を、内側に熱膨張性耐火材が配置された所定の断面形状(例えば、U字形、多角形、円形)の保持部材で外側から覆い、保持部材を配線ボックスに取り付けると、火災発生時に、熱膨張性耐火材が保持部材内で膨張してコネクタを押し潰して、配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を確実に防止することができることが判明した。更に、配線ボックスへの保持部材の取り付けを開口部から視認できるようにすると、熱膨張性耐火材を備えた保持部材の施工が確実に行われていることを容易に確認できることが判明した。この発明は、上述した研究結果に基づいて行われたものである。
【0010】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第1の態様は、配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度、幅および断面形状を有する保持部材と、前記保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材である。
【0011】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第2の態様は、前記保持部材が、本体と、前記本体の一方の端部に形成された屈曲部と、前記屈曲部から延伸して形成された前記爪部とからなっている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0012】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第3の態様は、前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の外側に屈曲して形成されている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0013】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第4の態様は、前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の内側に屈曲して形成されている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0014】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第5の態様は、1対の前記爪部が前記本体の幅方向に沿って延伸している、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0015】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第6の態様は、前記本体が、前記配線ボックスに取り付けられた可とう電線管取り付け用コネクタを外側から覆うような前記幅を備え、前記本体の前記所定の強度が、所定温度以上になると前記熱膨張性耐火材が前記本体の内部での膨張を支持することができる強度である、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0016】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第7の態様は、前記熱膨張性耐火材が、前記所定温度以上の温度で熱膨張し、前記可とう電線管取り付け用コネクタを押し潰し、前記配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を防止する、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0017】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第8の態様は、耐火ボードと、前記耐火ボードに対向して配置される前記配線ボックスの間に前記保持部材の前記爪部が差し込まれて、前記保持部材が前記配線ボックスに固定される、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0018】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第9の態様は、前記爪部が前記配線ボックス内部へ折り込まれており、前記配線ボックスの開口部から視認可能である、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0019】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第10の態様は、前記保持部材が個々の前記可とう電線管取り付け用コネクタに対応して設けられている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0020】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第11の態様は、前記保持部材が、複数個の前記可とう電線管取り付け用コネクタを覆うように設けられている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0021】
この発明の耐火防火壁の第1の態様は、上述した配線ボックス用耐火処理部材を使用した耐火防火壁である。
【0022】
この発明の防火処理方法の第1の態様は、上述した配線ボックス用耐火処理部材と、可とう電線管が壁を貫通する部分において、半割れ管の内部に熱膨張性耐火材が配置され、前記半割れ管を対向して組み合わせることにより、前記可とう電線管の延焼を防止する防火処理方法である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によると、配線ボックスの設置された箇所の耐火性能を向上させることが可能である。また施工性がよく、施工者の技術やスイッチおよびコンセント等の設置に関する工程にも影響を受けない。また、配線ボックス外部に取り付けるため、内部での配線作業等を妨げることなく、またその取り付けで本耐火措置が影響をうけることもない。火災発生時には金具内側の熱膨張性耐火材が膨張して配線ボックスの内外からの熱や炎を遮断する。従って、配線ボックスを通じての火災の拡大を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材を、図面を参照しながら説明する。
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の1つの態様は、配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度を有し、所定形状の断面(例えば、概ねU字形、多角形、円形等)の所定の幅を有する保持部材と、保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材である。上述した保持部材が、本体と、本体の一方の端部に形成された屈曲部と、屈曲部から延伸して形成された爪部とからなっている。
【0025】
図1は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の1つの態様を説明する図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は爪部側から見た平面図、図1(c)は側面図、図1(d)は正面図である。図1に示すように、配線ボックス用耐火処理部材1は、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなっている。保持部材2は断面が概ねU字形の本体3と、本体の一方の端部の下端部に一体的に折り曲げによって形成された屈曲部4と、屈曲部4から更に別の方向に折り曲げられて一体的に形成された爪部5とを備えている。また、保持部材2は取り付け対象によって多角形や円形などの形状としても良い。
【0026】
本体3の幅は、配線ボックスに取り付けられる可とう電線管取り付け用コネクタを外側から覆うことができる大きさである。図1(a)に示すように、屈曲部4および爪部5は、それぞれ1対からなり、図1に示す態様では、屈曲部4は、本体3の外側に折り曲げられて形成されている。爪部5は、折り曲げられて、本体3の端部の幅方向に沿って下方に延伸して形成されている。
【0027】
断面が概ねU字形(取り付け対象によっては多角形や円形)の保持部材2の強度は、本体3の内側に配置された例えばシート状の熱膨張性耐火材6が火災時に熱によって膨張して、配線ボックスに取り付けられた可とう電線管取り付け用コネクタを押し潰す際に、膨張した耐火材を本体3内に保持するに十分な大きさである必要がある。これによって、配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を確実に防止することが可能になる。
保持部材2の爪部5は、耐火ボードと、耐火ボードに対向して配置される配線ボックスの間に差し込まれて、保持部材が配線ボックスに固定される。
【0028】
図2は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する図である。図2(a)は斜視図、図2(b)は爪部側から見た平面図、図2(c)は側面図、図2(d)は正面図である。図2に示すように、この態様においても、配線ボックス用耐火処理部材1は、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなっている。保持部材2は断面が概ねU字形の本体3と、本体の一方の端部の下端部に一体的に折り曲げによって形成された屈曲部4と、屈曲部4から更に別の方向に折り曲げられて一体的に形成された爪部5とを備えている。
【0029】
図2に示す態様が、図1に示す態様と異なっている点は、屈曲部4が本体3の内側に折り曲げられて形成されていることである。本体3の内側に折り曲げて形成された屈曲部4から更に折り曲げて爪部が形成されている。この態様においても、爪部5は、本体3の端部の幅方向に沿って下方に延伸して形成されている。また、爪部の形状は、その断面を、多角形や円形とすることも可能である。
【0030】
なお、上述した態様では、保持部材2は屈曲部4を備えているが、屈曲部を備えずに、本体から爪部が一体的に形成されていてもよい。即ち、配線ボックス用耐火処理部材1は、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなっており、保持部材2は、本体部と本体部に直接形成された爪部を備えている。
【0031】
図3は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。図4は、従来の配線ボックスの状況を説明する図である。図3および図4に示すように、軽量鉄骨よりなる支柱の両面に石膏ボード等の耐火ボード7を張り付けて構成された中空壁8がある。中空壁8の内部には配線ボックス9が設置され、配線ボックス9の前面に面して開口部14が設けられている。
【0032】
この開口部14には、中空壁8の外側からスイッチおよびコンセント16を備えたプレート15が、開口部を塞ぐように取り付けられている。また、配線ボックス9には可とう電線管11(可燃性長尺物)がコネクタ10によって接続されている。可とう電線管11の内部には電線12(可燃性長尺物)が通線され、電線12の端部は配線ボックス9内に引き出され、スイッチおよびコンセント16へ接続されている。
【0033】
配線ボックス9は、支持金具13にボルトおよびナット等により固定されている。支持金具13は配線ボックス9が開口部に面して位置するように、後述する軽量鉄骨へ取り付けられている。図4に示す従来のままの状態、即ち耐火措置をしない場合では、開口部14のスイッチおよびコンセント16には樹脂部品が多用されているため、火災発生時には、早い段階で燃焼して、配線ボックス9の内部へ熱と火炎が流入する。その後、配線ボックス9に取り付けられたコネクタ10および可とう電線管11(可燃性長尺物)が燃焼し、コネクタ10および可とう電線管11が溶けて燃焼して、中空壁内部を通って延焼が拡大する。
この発明では、図4に示された従来の配線ボックスに、配線ボックス用耐火処理部材1が、コネクタ10を覆うように取り付けられている。
【0034】
図5は、配線ボックスに配線ボックス用耐火処理部材1を取り付ける状況を説明する部分拡大図である。図5に示すように、耐火ボード7の開口部14に対面して配線ボックス9が取り付けられている。耐火ボード7とこのように取り付けられた配線ボックス9の間に、図1または図2を参照して説明したこの発明の配線ボックス用耐火処理部材1の爪部5が差し込まれ、好ましくは先端部が折り曲げられて、固定される。
【0035】
即ち、保持部材2の本体3が配線ボックス9に取り付けられた可とう電線管用コネクタ10を外側から覆うように配置される。保持部材2は配線ボックス9の外側から、一方の端部が配線ボックス9に接して取り付けられ、上述したように、爪部5が耐火ボード7と配線ボックス9の間に差し込まれて固定される。
【0036】
図3に示す態様では、配線ボックスの上下にそれぞれ可とう電線管11およびコネクタ10が取り付けられて、上下の両方に図5を参照して説明したように、コネクタ10を覆うように配線ボックス9に配線ボックス用耐火処理部材1が取り付けられ、固定される。従って、火災発生時には、配線ボックスの上下において、保持部材内に配置された熱膨張性耐火材が、保持部材内で膨張して、コネクタ10を押し潰して、配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を確実に防止する。
【0037】
図6は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。即ち、図6は、耐火ボード7によって形成される中空壁の中に配置された配線ボックスを可とう電線管の長手方向から見た図である。この発明の理解を容易にするために図8を示す。図8は、従来の配線ボックスを示す図である。図8には、図6に示すこの発明の配線ボックス用耐火処理部材が取り付けられていない。その他は図6と同じである。
【0038】
図6に示すように、軽量鉄骨よりなる支柱17の両面に石膏ボード等の耐火ボード7を張り付けて構成された中空壁8の中の開口部14に面して配線ボックス9が取り付けられている。開口部14は、中空壁8の外側からスイッチおよびコンセント16を備えたプレート15によって塞がれている。配線ボックス9は、ボルトおよびナット等により支持金具13に固定されている。支持金具13は、配線ボックス9が開口部14に面して位置するように、軽量鉄骨17に取り付けられている。
【0039】
図6に示す態様では、配線ボックス9に2本の可とう電線管がコネクタ10を介して接続されている。2本のコネクタのそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が、図5を参照して説明したように、配線ボックス9に取り付けられている。図6に示す反対側にも同様にして、2本のコネクタのそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が配線ボックス9に取り付けられている。
【0040】
従って、火災発生時は、火災の熱によって熱膨張性耐火材が膨張して、内部のコネクタおよび可とう電線管をそれぞれ押し潰しながら、配線ボックスと可とう電線管との間を完全に閉塞することができ、火災が可とう電線管に延焼することを確実に防止する。保持部材はコネクタ1個1個に対して取り付ける形でも、複数のコネクタをまとめて覆うように取り付けてもよい。後述する図13のように6個のノックアウトにコネクタが取り付けられている場合には、6個を一つの金具でまとめて覆う形や、5個・1個で覆う形、4個・2個で覆う形、3個・3個で覆う形、2個・2個・2個で覆う形、3個・2個・1個で覆う形としても良い。コネクタの形状による並べ方に制限は無く、取り付けやすい組み合わせで並べる事が出来る。5個以下のノックアウトを持つボックスにも同様にコネクタの組み合わせで施工する事が可能である。保持部材をコネクタ1個1個に取り付ける場合も、固定用の爪部は、保持部材の内側に折り込めば、コネクタ間の隙間が小さい場合でも問題なく並べて取り付けることが可能である。
【0041】
図7は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。即ち、図7は、図6と同様に、耐火ボード7によって形成される中空壁の中に配置された配線ボックスを可とう電線管の長手方向から見た図である。図7に示す態様は、図6に示す態様と、配線ボックス用耐火処理部材の取り付け方が異なっている。即ち、図6に示す態様では、配線ボックスに取り付けられた2本のコネクタのそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が、図5を参照して説明したように、配線ボックス9に取り付けられている。
【0042】
これに対して、図7に示す態様では、配線ボックスに取り付けられた2本のコネクタ(2本に限らず3本等の複数でも良い)を1つの配線ボックス用耐火処理部材で外側から覆っている。その他は図6に示す態様と同じである。この場合も、火災発生時に、火災の熱により、保持部材の内側に取り付けられた熱膨張性耐火材が膨張して、コネクタおよび可とう電線管(可燃性長尺物)を押し潰し、配線ボックスと可とう電線管との間を閉塞する。これによって、熱および火炎の中空壁内部への流入を防止し、延焼を防止することができる。
【0043】
図9は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。即ち、図9は、図7と同様に、耐火ボード7によって形成される中空壁8の中に配置された配線ボックス9を可とう電線管の長手方向から見た図である。図9に示す態様は、図7に示す態様と、配線ボックス用耐火処理部材1の取り付け方が異なっている。即ち、図7に示す態様では、配線ボックス9に取り付けられた2本のコネクタ10を、1つの熱膨張性耐火材6が内側に配置された、1つの保持部材2で外側から覆っている。
【0044】
これに対して、図9に示す態様では、配線ボックス9に取り付けられた2本のコネクタ10を、それぞれ1つの熱膨張性耐火材6で覆い、全体を1つの保持部材2で覆っている。この態様は、例えば、保持部材2が比較的大きく、コネクタ10が配置される部分の体積が大きい場合に適している。このように熱膨張性耐火材6を個々のコネクタを覆うように配置し、全体を1つの保持部材で支持することによって、火災発生時に、火災の熱により、保持部材の内側に取り付けられた熱膨張性耐火材が膨張して、コネクタおよび可とう電線管を押し潰し、配線ボックスと可とう電線管との間を確実に閉塞する。これによって、熱および火炎の中空壁内部への流入を防止し、延焼を防止することができる。
【0045】
図10は、この発明の1つの態様の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。図3を参照して説明した態様と異なる点は、図10に示す態様では、配線ボックス9の外側に耐熱シール材18を覆うように取り付けていることである。その他は、図3を参照して説明した態様と同じである。このように配線ボックス9の外側を耐熱シール材18で覆うことによって、より高い耐火性能が得られる。更に、比重の高い材料を使用することによって遮音性能と耐火性能を付与することも可能である。
【0046】
図11は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。図11に示す態様は、図6を参照して説明した態様に対応している。即ち、図11において、配線ボックス9の外側を耐熱シール材18で覆った以外は、図6を参照して説明した態様と同じである。即ち、この態様では、2本のコネクタ10のそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が、図5を参照して説明したように、配線ボックス9に取り付けられている。
【0047】
図12は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。図12に示す態様は、図9を参照して説明した態様に対応している。即ち、図12において、配線ボックス9の外側を耐熱シール材18で覆った以外は、図9を参照して説明した態様と同じである。即ち、この態様では、配線ボックス9に取り付けられた2本のコネクタ10を、それぞれ1つの熱膨張性耐火材6で覆い、全体を1つの保持部材2で覆っている。
【0048】
図13は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。図13に示す態様では、配線ボックス9に取り付けられた6本のコネクタ10を、3個、2個、1個をそれぞれ配線ボックス用耐火処理部材で覆っている。その他は他の態様と同じである。
【0049】
図14は、この発明の防火処理方法の1つの態様を説明する断面図である。図14に示す防火処理方法は、上述したように配線ボックスに配線ボックス用耐火処理部材を取り付けると共に、他方で、可とう電線管が壁を貫通する部分に半割れ管の内部に熱膨張性耐火材が配置され、半割れ管を対向して組み合わせて行う防火処理方法である。即ち、上述した各種態様で説明したように、Aの領域では、保持部材2の本体3が配線ボックス9に取り付けられた可とう電線管用コネクタ10を外側から覆うように配置される。Bの領域では、配線ボックスが配置されていないところ、即ち、可とう電線管が壁を貫通する部分には、例えば円筒状の2つに分割された半割れ管の内側に熱膨張性耐火材を配置し、半割れ管を対向して組み合わせた部材を、ケーブルと壁にもうけられた貫通孔の間に配置する。このように2つを組み合わせることによって、両方の壁で防火処理ができるので、より優れた効果が得られる。
なお、半割れ部材としては、例えば古河テクノマテリアル:プチロク(商品名)などを用いることができる。
【0050】
上述した何れの場合も、配線ボックスの耐熱性能をより高めながら、火災発生時に、火災の熱により、保持部材の内側に取り付けられた熱膨張性耐火材が膨張して、コネクタおよび可とう電線管を押し潰し、配線ボックスと可とう電線管との間を確実に閉塞する。これによって、熱および火炎の中空壁内部への流入を防止し、延焼を防止することができる。
【0051】
上述したように、この発明では、耐火ボード等で構成された壁、天井または床に配線ボックスが設置されている箇所において、配線ボックスに取り付けられた可とう電線管用コネクタおよび可とう電線管の側面を、配線ボックスの外側から覆うように、耐火処理部材を配線ボックス本体に取り付ける。
【0052】
配線ボックスの施工部分が火災の火炎に曝された場合に、延焼の経路として、耐火ボード等にスイッチおよびコンセントを取り付けるために設けられた開口部、および、可とう電線管を取り付けるために打ち抜かれたノックアウト部分の開口等が考えられる。火災時に、このどちらか一方を完全に閉塞することができれば配線ボックスを通じた延焼を防止することが可能である。
【0053】
耐火ボード等に設けられた開口部と比較し、打ち抜かれたノックアウト部分の開口は面積が狭いため閉塞が容易かつ確実であると考えられる。このため本発明では耐火処理として、打ち抜かれたノックアウト部分の開口を閉塞する方法を選択した。
また、従来の方法では配線ボックスの内部からの施工を行っていたが、これを配線ボックスの外からの施工に変更した事によって、内部空間を圧迫しないので内部での作業の妨げとならない。
【0054】
更に、保持部材は、配線ボックスの奥行きの大きさに対応した大きさに形成され、奥行きの深い深型配線ボックス用と、奥行きの浅い浅型配線ボックス用の二種類がある。保持部材の屈曲部を外側または内側に形成することによって、それぞれ配線ボックスのノックアウトの数に関わらず、深型ボックス用であれば全ての深型ボックスのノックアウト部に、浅型ボックス用であれば、全ての浅型ボックスのノックアウト部に使用することができる。
【0055】
また、火災時に、火炎の熱で膨張した熱膨張性耐火材は、爪部によって配線ボックスに固定された保持部材によって保持されるので、保持部材によって保持された状態から崩れたり、落下することが阻止される。従って、長時間の耐火性能を確保することができる。保持部材の爪部は、配線ボックスに平カバーが接続されている場合は、配線ボックスと平カバーの間に、接続されていない場合は、耐火ボードと配線ボックスの隙間に爪部を差込み、内側に折り曲げることによって、配線ボックスへ保持部材を固定することができる。
【0056】
上述したように、固定することにより、この発明の配線ボックス用耐火処理部材は、配線ボックスの側面に設けられたノックアウト部分の全てに対応することが可能である。配線ボックスへ強固に固定されることにより、火災時に側面および下面のコネクタおよび可とう電線管(可燃性長尺物)が燃え落ちたとしても、この発明の配線ボックス用耐火処理部材は、その内側に膨張した熱膨張性耐火材を保持し、火災の炎または熱を遮断することが可能である。保持部材の内側に取り付ける熱膨張性耐火材は、シート状であれば保持部材に取り付けた状態でそのまま施工できるが、保持部材を取り付けた後に、保持部材とコネクタおよび可とう電線管(可燃性長尺物)の隙間に熱膨張性のパテを充填してもよい。
【0057】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材は、施工時に配線ボックス内に、保持部材の爪部を折り込むことにより、配線ボックスの外側に施工されていても、配線ボックス内部を確認することによって、施工が行われているか否かの確認が可能である。このため、例え壁内へ施工されていたとしても、壁を外したりすることなく、コンセントおよびスイッチなどのカバーを外して中を確認することによって、この発明の配線ボックス用耐火処理部材が正しく施工されているか否かの確認が可能である。また、視認性を良くするために、爪部の色を赤などの視認しやすい色に塗装してもよい。暗い部位に使用する場合には、ライトなどをよく反射するように表面処理を施すこともできる。
なお、上述した熱膨張耐火材として、グラファイトや、膨張黒鉛などを主成分とする材料が挙げられる。保持部材として、金属がこのましいが、耐熱、強度を備えた材料であれば適用が可能である。この発明において、配線ボックス内にスイッチ、コンセント等を備えている場合を説明したが、これらに限らず、天井等に配置され、電線管を単に接続するための配線ボックスにも適用することができる。
【0058】
この発明によると、施工技術や、スイッチおよびコンセント等の設置に関する工程に影響を受けることがなく、火災発生時に、可とう電線管用コネクタおよび可とう電線管への延焼を確実防止することができる配線ボックス用耐火処理材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の1つの態様を説明する図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は爪部側から見た平面図、図1(c)は側面図、図1(d)は正面図である。
【図2】図2は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する図である。図2(a)は斜視図、図2(b)は爪部側から見た平面図、図2(c)は側面図、図2(d)は正面図である。
【図3】図3は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。
【図4】図4は、従来の配線ボックスの状況を説明する図である。
【図5】図5は、配線ボックスに配線ボックス用耐火処理部材1を取り付ける状況を説明する部分拡大図である。
【図6】図6は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図7】図7は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図8】図8は、従来の配線ボックスを示す図である。
【図9】図9は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図10】図10は、この発明の1つの態様の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。
【図11】図11は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図12】図12は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図13】図13は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図14】図14は、この発明の防火処理方法の1つの態様を説明する断面図である。
【図15】図15は、従来の配線ボックスの耐火方法を説明する図である。
【図16】図16は、従来の配線ボックスの耐火方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
1 この発明の配線ボックス用耐火処理部材
2 保持部材
3 U字形の本体
4 屈曲部
5 爪部
6 熱膨張性耐火材
7 耐火ボード
8 中空壁
9 配線ボックス
10 コネクタ
11 可とう電線管
12 電線
13 支持金具
14 開口部
15 プレート
16 コンセント
17 支柱
18 耐熱シール材
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災時に屋内配線等に用いられる配線ボックスからの延焼を防止するための配線ボックス用耐火処理部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋内に取り付けられるコンセントやスイッチは、プラスチック製の部品を多く使用しており、火災発生時には、その熱により溶融・変形または燃焼する恐れがある。それによって、配線ボックス内に熱や炎が流入する。配線ボックス内にはスイッチもしくはコンセントへ接続するために引き込まれた電線(可燃性長尺物)があり、電線(可燃性長尺物)およびその被覆が燃焼することによって、電線が導火線のような役目を果たし、中空壁内や電線の壁貫通部などから隣室などへ炎や熱を伝え、延焼が拡大する恐れがある。
【0003】
これを防止するために、従来は熱発泡性耐火材を配線ボックスの内面または外面に貼り付けた配線ボックス用耐火材が開示されている(特許第2945272号公報)。配線ボックスの内面に熱発泡性耐火材を取り付けた場合には、配線ボックス内の空間を圧迫し、内部での配線作業が困難になるという短所があった。また、配線ボックスの外面に熱発泡性耐火材を取り付けた場合には、熱発泡性耐火材の膨張方向が外部空間へ向かうため、期待通りの耐火性能が得られない場合があった。
【0004】
また、特開2003−41683号公報には、配線ボックスの耐火方法が開示されている。図15は、特開2003−41683号公報に開示された配線ボックスの耐火方法を説明する図である。図15に示すように、熱膨張性の耐火材でなく、吸熱作用をもつシート状の耐熱シール材128で配線ボックス116を覆っている。この方法により、配線ボックスの穴やスリット、配線ボックス116前面と開口部118の周りの内面との隙間を塞ぎ、配線ボックス116内に火が入っても配線ボックス116内の熱が外へ伝わるのを防ぐ。しかし、この方法によると、熱の伝わりを防ぎ、延焼を遅らせることはできるが、配線ボックス116に取り付けられている樹脂製の可とう電線管用コネクタ124および可とう電線管122へ延焼してしまった場合には、延焼を止められない可能性があった。
【0005】
更に、特開2007−14045号公報には、配線ボックスの耐火方法が開示されている。図16は、特開2007−14045号公報に開示された配線ボックスの耐火方法を説明する図である。配線ボックスからの延焼を確実に防止するために、コネクタ部分での耐火措置を施している。即ち、図16に示すように、配線ボックス110にコネクタ120を固定した状態で、配線ボックス110の内部空間におけるコネクタ120の突出部123およびナット部125の全体を所定の厚さで、発泡性の粘着可塑性材料130で覆っている。
【特許文献1】特許第2945272号公報
【特許文献2】特開2003−41683号公報
【特許文献3】特開2007−14045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に開示された方法においては、実際に配線が行われる配線ボックスでは、内部に相当量の電線(可燃性長尺物)が詰められている場合や、配線ボックスを取り付ける開口部が配線ボックスよりも小さく、内部へ手を入れて耐火材の措置を行うことが難しい場合がある。またこの方法では、コネクタ内部に耐火材を充填しているが、実際に配線ボックスにスイッチおよびコンセントを取り付ける際にコネクタ内部を通る電線(可燃性長尺物)を引っ張ったり押し込んだりする動きがあり、その際に充填した発泡性の粘着可塑性材料がずれる恐れがある。
【0007】
また、このような耐火工法では、十分な性能を発揮するために、正しい施工が行われているか、施工後に確認できる措置が必要である。配線ボックスへの施工の場合、施工部が壁内などになると、施工後の確認が困難であり、正しい施工が行われたかの判断が下せない場合がある。一般的に施工部には施工完了のラベル等を貼る措置がなされているが、施工者の判断によってずれが生じ、確実でない場合がある。従って第三者が施工後に、正しく施工が行われていることを視認できることが望ましい。
【0008】
従って、本発明の目的は、以上のような問題点に鑑み、施工技術や、スイッチおよびコンセント等の設置に関する工程に影響を受けることがなく、火災発生時に可とう電線管用コネクタおよび可とう電線管への延焼を確実防止することができる配線ボックス用耐火処理部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、配線ボックスに取り付けられている可とう電線管および可とう電線管用コネクタ、特にコネクタ部分を、内側に熱膨張性耐火材が配置された所定の断面形状(例えば、U字形、多角形、円形)の保持部材で外側から覆い、保持部材を配線ボックスに取り付けると、火災発生時に、熱膨張性耐火材が保持部材内で膨張してコネクタを押し潰して、配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を確実に防止することができることが判明した。更に、配線ボックスへの保持部材の取り付けを開口部から視認できるようにすると、熱膨張性耐火材を備えた保持部材の施工が確実に行われていることを容易に確認できることが判明した。この発明は、上述した研究結果に基づいて行われたものである。
【0010】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第1の態様は、配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度、幅および断面形状を有する保持部材と、前記保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材である。
【0011】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第2の態様は、前記保持部材が、本体と、前記本体の一方の端部に形成された屈曲部と、前記屈曲部から延伸して形成された前記爪部とからなっている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0012】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第3の態様は、前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の外側に屈曲して形成されている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0013】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第4の態様は、前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の内側に屈曲して形成されている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0014】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第5の態様は、1対の前記爪部が前記本体の幅方向に沿って延伸している、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0015】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第6の態様は、前記本体が、前記配線ボックスに取り付けられた可とう電線管取り付け用コネクタを外側から覆うような前記幅を備え、前記本体の前記所定の強度が、所定温度以上になると前記熱膨張性耐火材が前記本体の内部での膨張を支持することができる強度である、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0016】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第7の態様は、前記熱膨張性耐火材が、前記所定温度以上の温度で熱膨張し、前記可とう電線管取り付け用コネクタを押し潰し、前記配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を防止する、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0017】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第8の態様は、耐火ボードと、前記耐火ボードに対向して配置される前記配線ボックスの間に前記保持部材の前記爪部が差し込まれて、前記保持部材が前記配線ボックスに固定される、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0018】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第9の態様は、前記爪部が前記配線ボックス内部へ折り込まれており、前記配線ボックスの開口部から視認可能である、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0019】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第10の態様は、前記保持部材が個々の前記可とう電線管取り付け用コネクタに対応して設けられている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0020】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の第11の態様は、前記保持部材が、複数個の前記可とう電線管取り付け用コネクタを覆うように設けられている、配線ボックス用耐火処理部材である。
【0021】
この発明の耐火防火壁の第1の態様は、上述した配線ボックス用耐火処理部材を使用した耐火防火壁である。
【0022】
この発明の防火処理方法の第1の態様は、上述した配線ボックス用耐火処理部材と、可とう電線管が壁を貫通する部分において、半割れ管の内部に熱膨張性耐火材が配置され、前記半割れ管を対向して組み合わせることにより、前記可とう電線管の延焼を防止する防火処理方法である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によると、配線ボックスの設置された箇所の耐火性能を向上させることが可能である。また施工性がよく、施工者の技術やスイッチおよびコンセント等の設置に関する工程にも影響を受けない。また、配線ボックス外部に取り付けるため、内部での配線作業等を妨げることなく、またその取り付けで本耐火措置が影響をうけることもない。火災発生時には金具内側の熱膨張性耐火材が膨張して配線ボックスの内外からの熱や炎を遮断する。従って、配線ボックスを通じての火災の拡大を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材を、図面を参照しながら説明する。
この発明の配線ボックス用耐火処理部材の1つの態様は、配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度を有し、所定形状の断面(例えば、概ねU字形、多角形、円形等)の所定の幅を有する保持部材と、保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材である。上述した保持部材が、本体と、本体の一方の端部に形成された屈曲部と、屈曲部から延伸して形成された爪部とからなっている。
【0025】
図1は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の1つの態様を説明する図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は爪部側から見た平面図、図1(c)は側面図、図1(d)は正面図である。図1に示すように、配線ボックス用耐火処理部材1は、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなっている。保持部材2は断面が概ねU字形の本体3と、本体の一方の端部の下端部に一体的に折り曲げによって形成された屈曲部4と、屈曲部4から更に別の方向に折り曲げられて一体的に形成された爪部5とを備えている。また、保持部材2は取り付け対象によって多角形や円形などの形状としても良い。
【0026】
本体3の幅は、配線ボックスに取り付けられる可とう電線管取り付け用コネクタを外側から覆うことができる大きさである。図1(a)に示すように、屈曲部4および爪部5は、それぞれ1対からなり、図1に示す態様では、屈曲部4は、本体3の外側に折り曲げられて形成されている。爪部5は、折り曲げられて、本体3の端部の幅方向に沿って下方に延伸して形成されている。
【0027】
断面が概ねU字形(取り付け対象によっては多角形や円形)の保持部材2の強度は、本体3の内側に配置された例えばシート状の熱膨張性耐火材6が火災時に熱によって膨張して、配線ボックスに取り付けられた可とう電線管取り付け用コネクタを押し潰す際に、膨張した耐火材を本体3内に保持するに十分な大きさである必要がある。これによって、配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を確実に防止することが可能になる。
保持部材2の爪部5は、耐火ボードと、耐火ボードに対向して配置される配線ボックスの間に差し込まれて、保持部材が配線ボックスに固定される。
【0028】
図2は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する図である。図2(a)は斜視図、図2(b)は爪部側から見た平面図、図2(c)は側面図、図2(d)は正面図である。図2に示すように、この態様においても、配線ボックス用耐火処理部材1は、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなっている。保持部材2は断面が概ねU字形の本体3と、本体の一方の端部の下端部に一体的に折り曲げによって形成された屈曲部4と、屈曲部4から更に別の方向に折り曲げられて一体的に形成された爪部5とを備えている。
【0029】
図2に示す態様が、図1に示す態様と異なっている点は、屈曲部4が本体3の内側に折り曲げられて形成されていることである。本体3の内側に折り曲げて形成された屈曲部4から更に折り曲げて爪部が形成されている。この態様においても、爪部5は、本体3の端部の幅方向に沿って下方に延伸して形成されている。また、爪部の形状は、その断面を、多角形や円形とすることも可能である。
【0030】
なお、上述した態様では、保持部材2は屈曲部4を備えているが、屈曲部を備えずに、本体から爪部が一体的に形成されていてもよい。即ち、配線ボックス用耐火処理部材1は、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなっており、保持部材2は、本体部と本体部に直接形成された爪部を備えている。
【0031】
図3は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。図4は、従来の配線ボックスの状況を説明する図である。図3および図4に示すように、軽量鉄骨よりなる支柱の両面に石膏ボード等の耐火ボード7を張り付けて構成された中空壁8がある。中空壁8の内部には配線ボックス9が設置され、配線ボックス9の前面に面して開口部14が設けられている。
【0032】
この開口部14には、中空壁8の外側からスイッチおよびコンセント16を備えたプレート15が、開口部を塞ぐように取り付けられている。また、配線ボックス9には可とう電線管11(可燃性長尺物)がコネクタ10によって接続されている。可とう電線管11の内部には電線12(可燃性長尺物)が通線され、電線12の端部は配線ボックス9内に引き出され、スイッチおよびコンセント16へ接続されている。
【0033】
配線ボックス9は、支持金具13にボルトおよびナット等により固定されている。支持金具13は配線ボックス9が開口部に面して位置するように、後述する軽量鉄骨へ取り付けられている。図4に示す従来のままの状態、即ち耐火措置をしない場合では、開口部14のスイッチおよびコンセント16には樹脂部品が多用されているため、火災発生時には、早い段階で燃焼して、配線ボックス9の内部へ熱と火炎が流入する。その後、配線ボックス9に取り付けられたコネクタ10および可とう電線管11(可燃性長尺物)が燃焼し、コネクタ10および可とう電線管11が溶けて燃焼して、中空壁内部を通って延焼が拡大する。
この発明では、図4に示された従来の配線ボックスに、配線ボックス用耐火処理部材1が、コネクタ10を覆うように取り付けられている。
【0034】
図5は、配線ボックスに配線ボックス用耐火処理部材1を取り付ける状況を説明する部分拡大図である。図5に示すように、耐火ボード7の開口部14に対面して配線ボックス9が取り付けられている。耐火ボード7とこのように取り付けられた配線ボックス9の間に、図1または図2を参照して説明したこの発明の配線ボックス用耐火処理部材1の爪部5が差し込まれ、好ましくは先端部が折り曲げられて、固定される。
【0035】
即ち、保持部材2の本体3が配線ボックス9に取り付けられた可とう電線管用コネクタ10を外側から覆うように配置される。保持部材2は配線ボックス9の外側から、一方の端部が配線ボックス9に接して取り付けられ、上述したように、爪部5が耐火ボード7と配線ボックス9の間に差し込まれて固定される。
【0036】
図3に示す態様では、配線ボックスの上下にそれぞれ可とう電線管11およびコネクタ10が取り付けられて、上下の両方に図5を参照して説明したように、コネクタ10を覆うように配線ボックス9に配線ボックス用耐火処理部材1が取り付けられ、固定される。従って、火災発生時には、配線ボックスの上下において、保持部材内に配置された熱膨張性耐火材が、保持部材内で膨張して、コネクタ10を押し潰して、配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を確実に防止する。
【0037】
図6は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。即ち、図6は、耐火ボード7によって形成される中空壁の中に配置された配線ボックスを可とう電線管の長手方向から見た図である。この発明の理解を容易にするために図8を示す。図8は、従来の配線ボックスを示す図である。図8には、図6に示すこの発明の配線ボックス用耐火処理部材が取り付けられていない。その他は図6と同じである。
【0038】
図6に示すように、軽量鉄骨よりなる支柱17の両面に石膏ボード等の耐火ボード7を張り付けて構成された中空壁8の中の開口部14に面して配線ボックス9が取り付けられている。開口部14は、中空壁8の外側からスイッチおよびコンセント16を備えたプレート15によって塞がれている。配線ボックス9は、ボルトおよびナット等により支持金具13に固定されている。支持金具13は、配線ボックス9が開口部14に面して位置するように、軽量鉄骨17に取り付けられている。
【0039】
図6に示す態様では、配線ボックス9に2本の可とう電線管がコネクタ10を介して接続されている。2本のコネクタのそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が、図5を参照して説明したように、配線ボックス9に取り付けられている。図6に示す反対側にも同様にして、2本のコネクタのそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が配線ボックス9に取り付けられている。
【0040】
従って、火災発生時は、火災の熱によって熱膨張性耐火材が膨張して、内部のコネクタおよび可とう電線管をそれぞれ押し潰しながら、配線ボックスと可とう電線管との間を完全に閉塞することができ、火災が可とう電線管に延焼することを確実に防止する。保持部材はコネクタ1個1個に対して取り付ける形でも、複数のコネクタをまとめて覆うように取り付けてもよい。後述する図13のように6個のノックアウトにコネクタが取り付けられている場合には、6個を一つの金具でまとめて覆う形や、5個・1個で覆う形、4個・2個で覆う形、3個・3個で覆う形、2個・2個・2個で覆う形、3個・2個・1個で覆う形としても良い。コネクタの形状による並べ方に制限は無く、取り付けやすい組み合わせで並べる事が出来る。5個以下のノックアウトを持つボックスにも同様にコネクタの組み合わせで施工する事が可能である。保持部材をコネクタ1個1個に取り付ける場合も、固定用の爪部は、保持部材の内側に折り込めば、コネクタ間の隙間が小さい場合でも問題なく並べて取り付けることが可能である。
【0041】
図7は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。即ち、図7は、図6と同様に、耐火ボード7によって形成される中空壁の中に配置された配線ボックスを可とう電線管の長手方向から見た図である。図7に示す態様は、図6に示す態様と、配線ボックス用耐火処理部材の取り付け方が異なっている。即ち、図6に示す態様では、配線ボックスに取り付けられた2本のコネクタのそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が、図5を参照して説明したように、配線ボックス9に取り付けられている。
【0042】
これに対して、図7に示す態様では、配線ボックスに取り付けられた2本のコネクタ(2本に限らず3本等の複数でも良い)を1つの配線ボックス用耐火処理部材で外側から覆っている。その他は図6に示す態様と同じである。この場合も、火災発生時に、火災の熱により、保持部材の内側に取り付けられた熱膨張性耐火材が膨張して、コネクタおよび可とう電線管(可燃性長尺物)を押し潰し、配線ボックスと可とう電線管との間を閉塞する。これによって、熱および火炎の中空壁内部への流入を防止し、延焼を防止することができる。
【0043】
図9は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。即ち、図9は、図7と同様に、耐火ボード7によって形成される中空壁8の中に配置された配線ボックス9を可とう電線管の長手方向から見た図である。図9に示す態様は、図7に示す態様と、配線ボックス用耐火処理部材1の取り付け方が異なっている。即ち、図7に示す態様では、配線ボックス9に取り付けられた2本のコネクタ10を、1つの熱膨張性耐火材6が内側に配置された、1つの保持部材2で外側から覆っている。
【0044】
これに対して、図9に示す態様では、配線ボックス9に取り付けられた2本のコネクタ10を、それぞれ1つの熱膨張性耐火材6で覆い、全体を1つの保持部材2で覆っている。この態様は、例えば、保持部材2が比較的大きく、コネクタ10が配置される部分の体積が大きい場合に適している。このように熱膨張性耐火材6を個々のコネクタを覆うように配置し、全体を1つの保持部材で支持することによって、火災発生時に、火災の熱により、保持部材の内側に取り付けられた熱膨張性耐火材が膨張して、コネクタおよび可とう電線管を押し潰し、配線ボックスと可とう電線管との間を確実に閉塞する。これによって、熱および火炎の中空壁内部への流入を防止し、延焼を防止することができる。
【0045】
図10は、この発明の1つの態様の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。図3を参照して説明した態様と異なる点は、図10に示す態様では、配線ボックス9の外側に耐熱シール材18を覆うように取り付けていることである。その他は、図3を参照して説明した態様と同じである。このように配線ボックス9の外側を耐熱シール材18で覆うことによって、より高い耐火性能が得られる。更に、比重の高い材料を使用することによって遮音性能と耐火性能を付与することも可能である。
【0046】
図11は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。図11に示す態様は、図6を参照して説明した態様に対応している。即ち、図11において、配線ボックス9の外側を耐熱シール材18で覆った以外は、図6を参照して説明した態様と同じである。即ち、この態様では、2本のコネクタ10のそれぞれに、保持部材2と、保持部材2の内側に配置された熱膨張性耐火材6とからなる配線ボックス用耐火処理部材1が、図5を参照して説明したように、配線ボックス9に取り付けられている。
【0047】
図12は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。図12に示す態様は、図9を参照して説明した態様に対応している。即ち、図12において、配線ボックス9の外側を耐熱シール材18で覆った以外は、図9を参照して説明した態様と同じである。即ち、この態様では、配線ボックス9に取り付けられた2本のコネクタ10を、それぞれ1つの熱膨張性耐火材6で覆い、全体を1つの保持部材2で覆っている。
【0048】
図13は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。図13に示す態様では、配線ボックス9に取り付けられた6本のコネクタ10を、3個、2個、1個をそれぞれ配線ボックス用耐火処理部材で覆っている。その他は他の態様と同じである。
【0049】
図14は、この発明の防火処理方法の1つの態様を説明する断面図である。図14に示す防火処理方法は、上述したように配線ボックスに配線ボックス用耐火処理部材を取り付けると共に、他方で、可とう電線管が壁を貫通する部分に半割れ管の内部に熱膨張性耐火材が配置され、半割れ管を対向して組み合わせて行う防火処理方法である。即ち、上述した各種態様で説明したように、Aの領域では、保持部材2の本体3が配線ボックス9に取り付けられた可とう電線管用コネクタ10を外側から覆うように配置される。Bの領域では、配線ボックスが配置されていないところ、即ち、可とう電線管が壁を貫通する部分には、例えば円筒状の2つに分割された半割れ管の内側に熱膨張性耐火材を配置し、半割れ管を対向して組み合わせた部材を、ケーブルと壁にもうけられた貫通孔の間に配置する。このように2つを組み合わせることによって、両方の壁で防火処理ができるので、より優れた効果が得られる。
なお、半割れ部材としては、例えば古河テクノマテリアル:プチロク(商品名)などを用いることができる。
【0050】
上述した何れの場合も、配線ボックスの耐熱性能をより高めながら、火災発生時に、火災の熱により、保持部材の内側に取り付けられた熱膨張性耐火材が膨張して、コネクタおよび可とう電線管を押し潰し、配線ボックスと可とう電線管との間を確実に閉塞する。これによって、熱および火炎の中空壁内部への流入を防止し、延焼を防止することができる。
【0051】
上述したように、この発明では、耐火ボード等で構成された壁、天井または床に配線ボックスが設置されている箇所において、配線ボックスに取り付けられた可とう電線管用コネクタおよび可とう電線管の側面を、配線ボックスの外側から覆うように、耐火処理部材を配線ボックス本体に取り付ける。
【0052】
配線ボックスの施工部分が火災の火炎に曝された場合に、延焼の経路として、耐火ボード等にスイッチおよびコンセントを取り付けるために設けられた開口部、および、可とう電線管を取り付けるために打ち抜かれたノックアウト部分の開口等が考えられる。火災時に、このどちらか一方を完全に閉塞することができれば配線ボックスを通じた延焼を防止することが可能である。
【0053】
耐火ボード等に設けられた開口部と比較し、打ち抜かれたノックアウト部分の開口は面積が狭いため閉塞が容易かつ確実であると考えられる。このため本発明では耐火処理として、打ち抜かれたノックアウト部分の開口を閉塞する方法を選択した。
また、従来の方法では配線ボックスの内部からの施工を行っていたが、これを配線ボックスの外からの施工に変更した事によって、内部空間を圧迫しないので内部での作業の妨げとならない。
【0054】
更に、保持部材は、配線ボックスの奥行きの大きさに対応した大きさに形成され、奥行きの深い深型配線ボックス用と、奥行きの浅い浅型配線ボックス用の二種類がある。保持部材の屈曲部を外側または内側に形成することによって、それぞれ配線ボックスのノックアウトの数に関わらず、深型ボックス用であれば全ての深型ボックスのノックアウト部に、浅型ボックス用であれば、全ての浅型ボックスのノックアウト部に使用することができる。
【0055】
また、火災時に、火炎の熱で膨張した熱膨張性耐火材は、爪部によって配線ボックスに固定された保持部材によって保持されるので、保持部材によって保持された状態から崩れたり、落下することが阻止される。従って、長時間の耐火性能を確保することができる。保持部材の爪部は、配線ボックスに平カバーが接続されている場合は、配線ボックスと平カバーの間に、接続されていない場合は、耐火ボードと配線ボックスの隙間に爪部を差込み、内側に折り曲げることによって、配線ボックスへ保持部材を固定することができる。
【0056】
上述したように、固定することにより、この発明の配線ボックス用耐火処理部材は、配線ボックスの側面に設けられたノックアウト部分の全てに対応することが可能である。配線ボックスへ強固に固定されることにより、火災時に側面および下面のコネクタおよび可とう電線管(可燃性長尺物)が燃え落ちたとしても、この発明の配線ボックス用耐火処理部材は、その内側に膨張した熱膨張性耐火材を保持し、火災の炎または熱を遮断することが可能である。保持部材の内側に取り付ける熱膨張性耐火材は、シート状であれば保持部材に取り付けた状態でそのまま施工できるが、保持部材を取り付けた後に、保持部材とコネクタおよび可とう電線管(可燃性長尺物)の隙間に熱膨張性のパテを充填してもよい。
【0057】
この発明の配線ボックス用耐火処理部材は、施工時に配線ボックス内に、保持部材の爪部を折り込むことにより、配線ボックスの外側に施工されていても、配線ボックス内部を確認することによって、施工が行われているか否かの確認が可能である。このため、例え壁内へ施工されていたとしても、壁を外したりすることなく、コンセントおよびスイッチなどのカバーを外して中を確認することによって、この発明の配線ボックス用耐火処理部材が正しく施工されているか否かの確認が可能である。また、視認性を良くするために、爪部の色を赤などの視認しやすい色に塗装してもよい。暗い部位に使用する場合には、ライトなどをよく反射するように表面処理を施すこともできる。
なお、上述した熱膨張耐火材として、グラファイトや、膨張黒鉛などを主成分とする材料が挙げられる。保持部材として、金属がこのましいが、耐熱、強度を備えた材料であれば適用が可能である。この発明において、配線ボックス内にスイッチ、コンセント等を備えている場合を説明したが、これらに限らず、天井等に配置され、電線管を単に接続するための配線ボックスにも適用することができる。
【0058】
この発明によると、施工技術や、スイッチおよびコンセント等の設置に関する工程に影響を受けることがなく、火災発生時に、可とう電線管用コネクタおよび可とう電線管への延焼を確実防止することができる配線ボックス用耐火処理材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の1つの態様を説明する図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は爪部側から見た平面図、図1(c)は側面図、図1(d)は正面図である。
【図2】図2は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する図である。図2(a)は斜視図、図2(b)は爪部側から見た平面図、図2(c)は側面図、図2(d)は正面図である。
【図3】図3は、この発明の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。
【図4】図4は、従来の配線ボックスの状況を説明する図である。
【図5】図5は、配線ボックスに配線ボックス用耐火処理部材1を取り付ける状況を説明する部分拡大図である。
【図6】図6は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図7】図7は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図8】図8は、従来の配線ボックスを示す図である。
【図9】図9は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図10】図10は、この発明の1つの態様の配線ボックス用耐火処理部材が配線ボックスに取り付けられた状態を説明する模式断面図である。
【図11】図11は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図12】図12は、耐熱シール材で外側を覆われた配線ボックスに取り付けられた、この発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図13】図13は、配線ボックスに取り付けられたこの発明の配線ボックス用耐火処理部材の他の1つの態様を説明する断面図である。
【図14】図14は、この発明の防火処理方法の1つの態様を説明する断面図である。
【図15】図15は、従来の配線ボックスの耐火方法を説明する図である。
【図16】図16は、従来の配線ボックスの耐火方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
1 この発明の配線ボックス用耐火処理部材
2 保持部材
3 U字形の本体
4 屈曲部
5 爪部
6 熱膨張性耐火材
7 耐火ボード
8 中空壁
9 配線ボックス
10 コネクタ
11 可とう電線管
12 電線
13 支持金具
14 開口部
15 プレート
16 コンセント
17 支柱
18 耐熱シール材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度、幅および断面形状を有する保持部材と、前記保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項2】
前記保持部材が、本体と、前記本体の一方の端部に形成された屈曲部と、前記屈曲部から延伸して形成された前記爪部とからなっている請求項1に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項3】
前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の外側に屈曲して形成されている、請求項2に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項4】
前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の内側に屈曲して形成されている、請求項2に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項5】
1対の前記爪部が前記本体の幅方向に沿って延伸している、請求項3または4に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項6】
前記本体が、前記配線ボックスに取り付けられた可とう電線管取り付け用コネクタを外側から覆うような前記幅を備え、前記本体の前記所定の強度が、所定温度以上になると前記熱膨張性耐火材が前記本体の内部での膨張を支持することができる強度である、請求項2から5の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項7】
前記熱膨張性耐火材が、前記所定温度以上の温度で熱膨張し、前記可とう電線管取り付け用コネクタを押し潰し、前記配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を防止する、請求項6に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項8】
耐火ボードと、前記耐火ボードに対向して配置される前記配線ボックスの間に前記保持部材の前記爪部が差し込まれて、前記保持部材が前記配線ボックスに固定される、請求項1から7の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項9】
前記爪部が前記配線ボックス内部へ折り込まれており、前記配線ボックスの開口部から視認可能である、請求項8に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項10】
前記保持部材が個々の前記可とう電線管取り付け用コネクタに対応して設けられている、請求項6から9の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項11】
前記保持部材が、複数個の前記可とう電線管取り付け用コネクタを覆うように設けられている、請求項6から9の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項12】
請求項1から11に記載の配線ボックス用耐火処理部材を使用した耐火防火壁。
【請求項13】
請求項1から11に記載の配線ボックス用耐火処理部材と、可とう電線管が壁を貫通する部分において、半割れ管の内部に熱膨張性耐火材が配置され、前記半割れ管を対向して組み合わせることにより、前記可とう電線管の延焼を防止する防火処理方法。
【請求項1】
配線ボックスの外側端部に取り付けられる爪部を備え、所定の強度、幅および断面形状を有する保持部材と、前記保持部材の内側に配置される熱膨張性耐火材とを備えた配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項2】
前記保持部材が、本体と、前記本体の一方の端部に形成された屈曲部と、前記屈曲部から延伸して形成された前記爪部とからなっている請求項1に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項3】
前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の外側に屈曲して形成されている、請求項2に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項4】
前記屈曲部が1対の屈曲部からなり、前記本体の内側に屈曲して形成されている、請求項2に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項5】
1対の前記爪部が前記本体の幅方向に沿って延伸している、請求項3または4に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項6】
前記本体が、前記配線ボックスに取り付けられた可とう電線管取り付け用コネクタを外側から覆うような前記幅を備え、前記本体の前記所定の強度が、所定温度以上になると前記熱膨張性耐火材が前記本体の内部での膨張を支持することができる強度である、請求項2から5の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項7】
前記熱膨張性耐火材が、前記所定温度以上の温度で熱膨張し、前記可とう電線管取り付け用コネクタを押し潰し、前記配線ボックスのコネクタ取り付け穴を閉塞して、可とう電線管への延焼を防止する、請求項6に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項8】
耐火ボードと、前記耐火ボードに対向して配置される前記配線ボックスの間に前記保持部材の前記爪部が差し込まれて、前記保持部材が前記配線ボックスに固定される、請求項1から7の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項9】
前記爪部が前記配線ボックス内部へ折り込まれており、前記配線ボックスの開口部から視認可能である、請求項8に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項10】
前記保持部材が個々の前記可とう電線管取り付け用コネクタに対応して設けられている、請求項6から9の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項11】
前記保持部材が、複数個の前記可とう電線管取り付け用コネクタを覆うように設けられている、請求項6から9の何れか1項に記載の配線ボックス用耐火処理部材。
【請求項12】
請求項1から11に記載の配線ボックス用耐火処理部材を使用した耐火防火壁。
【請求項13】
請求項1から11に記載の配線ボックス用耐火処理部材と、可とう電線管が壁を貫通する部分において、半割れ管の内部に熱膨張性耐火材が配置され、前記半割れ管を対向して組み合わせることにより、前記可とう電線管の延焼を防止する防火処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−45910(P2010−45910A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207842(P2008−207842)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000165996)株式会社古河テクノマテリアル (23)
【出願人】(592217738)ネグロス電工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000165996)株式会社古河テクノマテリアル (23)
【出願人】(592217738)ネグロス電工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]