説明

配線体及び配線体の製造方法

【課題】半田リフロー処理によって電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板を、放熱性を阻害することなく金属構造体に積層接着した配線体を提供する。
【解決手段】電子部品5を搭載したフレキシブルプリント配線板1を、放熱性のある金属構造体15に積層して構成される配線体100であって、上記フレキシブルプリント配線板の上記電子部品を搭載した領域の裏面側に設けられるとともに、35μm以上の厚みを有する補強銅箔層12と、上記フレキシブルプリント配線板を上記金属構造体に接着する接着剤層16とを備え、上記補強銅箔層と上記金属構造体との間の接着剤層における気泡率が、他の領域の接着剤層の気泡率より小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、配線体及び配線体の製造方法に関する。詳しくは、発熱量の大きな電子部品を搭載した配線体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイのバックライトとして使用される照明装置は、複数のLED発光素子を備えて構成されている。上記LED発光素子は、発熱量が大きいため、放熱性の高い金属基板等を備えて構成されることが多い。
【0003】
上記LED発光素子を用いて照明装置を構成する場合、平坦面に上記発光素子が配列されるとは限らない。このような場合、曲面あるいは屈曲面を有する金属基板等に上記発光素子が搭載されることになる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−184209号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記発光素子を効率よく金属基板上に搭載するには、半田リフロー処理を採用するのが望ましい。ところが、放熱性を高めるため上記金属基板等の熱容量が大きくなり、半田リフロー処理によって上記発熱素子を金属基板上に搭載するのは困難である。このため、従来は、手作業で各発光素子を金属基板上に接続する手法が採用されることが多く、製造効率が低くなるという問題があった。
【0006】
上記不都合を回避するため、あらかじめ半田リフロー処理によって発光素子を搭載したフレキシブルプリント配線板を、ヒートシンク等の放熱性の高い金属構造体に積層する手法が考えられる。
【0007】
ところが、発光素子を搭載したフレキシブルプリント配線板を、金属構造体等に積層接着する際、上記発光素子に大きな押圧力を作用させることができないため、上記発光素子を搭載した領域の裏面と上記金属構造体表面との間に大きな押圧力を作用させることができない。このため、上記発光素子を設けた領域直下の領域に気泡が入りやすく、放熱性能が低下するという問題が生じやすい。
【0008】
また、照明装置を構成する場合において、発光素子を曲面あるいは屈曲面に沿って配列しなければならない場合がある。このような場合、金属構造体のフレキシブルプリント配線板積層面が曲面形状あるいは屈曲形状に形成されているため、フレキシブルプリント配線板の全域を均一に押圧して積層接着するのは困難である。
【0009】
また、上記曲面あるいは屈曲面に沿ってフレキシブルプリント配線板を積層した場合、フレキシブルプリント配線板に歪が生じやすく、この歪によって接着剤層に気泡が入り易くなる。このため、金属基板の放熱性が阻害されて、発光素子の温度が上昇するという問題が生じやすい。
【0010】
本願発明は、上記従来の問題を解決し、半田リフロー処理によって電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板を、放熱性を阻害することなく金属構造体に積層接着した配線体及び配線体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に記載した発明は、電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板を、放熱性のある金属構造体に積層して構成される配線体であって、上記フレキシブルプリント配線板の上記電子部品を搭載した領域の裏面側に設けられるとともに、35μm以上の厚みを有する補強銅箔層と、上記フレキシブルプリント配線板を上記金属構造体に接着する接着剤層とを備え、上記補強銅箔層と上記金属構造体との間の接着剤層における気泡率が、他の領域の接着剤層の気泡率より小さく設定されているものである。
【0012】
本願発明に係る配線体では、フレキシブルプリント配線板に半田リフロー処理によって電子部品を搭載した後に、上記フレキシブルプリント配線板を、放熱性を有する金属構造体に積層接着する。
【0013】
本願発明では、上記フレキシブルプリント配線板の少なくとも上記電子部品を搭載した領域の裏面側に35μm以上の厚みを有する補強銅箔層が設けられている。上記補強銅箔層を設けることにより、上記電子部品搭載領域の剛性が高まる。また、上記銅箔の厚み分、電子部品搭載領域直下の領域が段付き状に盛り上がった形態を備えることになる。
【0014】
上記構成によって、電子部品を直接押圧した場合においては、押圧力を上記補強銅箔層形成部分に集中させることが可能となり、上記補強銅箔層と上記金属構造体表面との間にある気泡を接着剤層とともに周囲に押し出すように積層接着することが可能となり、上記電子部品搭載領域直下の気泡率を、他の領域より小さくすることが可能となる。
【0015】
また、上記補強銅箔層によって上記電子部品搭載領域の剛性が高くなるため、上記電子部品搭載領域の周囲を押圧した場合においても、上記電子部品搭載領域に大きな押圧力を作用させることが可能となる。これにより、フレキシブルプリント配線板を積層接着する工程において、上記電子部品搭載領域における気泡を接着剤とともに周囲に押し出すことができる。したがって、上記電子部品搭載領域における放熱性を他の領域に比べて高めることができる。
【0016】
一方、電子部品搭載領域以外の領域における気泡率が大きくなるが、上記銅箔は熱伝導率が高く、しかも、上記電子部品搭載領域直下の領域の放熱性を確保できるため、電子部品の温度が上昇することはない。
【0017】
放熱性を確保するため、請求項2に記載した発明のように、上記補強銅箔層と上記金属構造体との間の接着剤層における気泡率が、20%以下となるように設定するのが好ましい。上記気泡率となるように、作用させる押圧力、押圧時間等を設定して、上記フレキシブルプリント配線板と上記金属構造体との積層工程が行われる。上記気泡率とすることにより、放熱性を阻害することなく、プリント配線板を積層することが可能となる。なお、本願発明では、厚み方向への熱伝導が気泡によって阻害されることが問題となるため、接着剤層中の体積あたりの気泡率はあまり重要ではなく、接着剤層中の気泡を接着面に投影した面積割合が重要である。したがって、本願発明では、接着剤層中の気泡を接着面に投影した面積割合で気泡率を求めることとする。
【0018】
上記銅箔は、絶縁性基材の両側に銅箔を設けた両面フレキシブルプリント配線板の片面の銅箔を厚く設定し、上記電子部品搭載領域以外をエッチング等で除去することにより、設けることができる。
【0019】
請求項3に記載した発明のように、積層工程における押圧力を効率良く作用させるために、上記補強銅箔層を、少なくとも上記電子部品の接続電極が接続される領域の裏面側に設けるのが好ましい。また、上記接続電極は、熱の伝導経路でもあるため、電子部品で発生した熱を効率よく金属構造体に伝導して放熱することが可能となる。なお、上記接続電極には、例えば、放熱用に設けられる通電されない電極も含まれる。
【0020】
さらに、気泡が入るのを防止するため、請求項4に記載した発明のように、上記補強銅箔層を、上記電子部品を搭載した領域より外側に設定された押圧領域を備えて構成するのが好ましい。上記押圧領域を設けることにより、上記電子部品搭載領域に作用する押圧力をより高めることが可能となる。
【0021】
なお、上記押圧領域は、上記電子部品搭載領域を挟んだ両側に対称に設けるのが望ましい。これにより、押圧力を上記電子部品搭載領域の全域に偏りなく作用させることが可能となる。
【0022】
気泡が入るのを防止するとともに放熱性を確保するため、請求項5に記載された発明のように、上記銅箔を、上記電子部品を搭載した領域の80%以上に設けるのが好ましい。たとえば、上記補強銅箔層を利用してフレキシブルプリント配線板を両面基板として利用する場合等に適用される。
【0023】
さらに、気泡の排除効果を高めるため、請求項7に記載した発明のように、上記補強銅箔層を70μm以上の厚さに設定するのが好ましい。
【0024】
上記フレキシブルプリント配線板の構成及び種類は特に限定されることはない。電子部品を搭載した回路面を片面に設けた片面フレキシブルプリント配線板のみならず、両面プリント配線板を採用することができる。
【0025】
上記金属構造体の材料も特に限定されることはない。たとえば、アルミニウム製の金属構造体を採用することができる。また、金属構造体の形態も特に限定されることはない。たとえば、平坦板状の金属構造体を採用することができる。また、請求項6に記載した発明のように、上記金属構造体におけるフレキシブルプリント配線板の積層面が、曲面又は屈曲面であるものを採用できる。
【0026】
この場合、上記フレキシブルプリント配線板は、湾曲状態又は屈曲状態で積層接着されることになる。本願発明では、上記銅箔を設けているため、上記電子部品搭載領域の剛性が高まる。これにより、上記電子部品搭載領域において歪が生じにくく、接着剤層に気泡が入るのを抑制することができる。また、電子部品搭載領域ないし押圧領域に押圧力を作用させるため、曲面状の積層面にも容易に積層することが可能となる。
【0027】
また、上記金属構造体として、請求項8に記載した発明のように、放熱フィン等の放熱手段を備えるヒートシンクを採用することができる。
【0028】
本願発明に係る配線体は、種々の電子装置に適用できる。たとえば、請求項9に記載した発明のように、上記電子部品として発光素子を採用し、照明装置を構成することができる。
【0029】
請求項10に記載した発明は、発熱する電子部品を搭載した配線体の製造方法であって、少なくとも上記電子部品を搭載した領域の裏面側に、35μm以上の厚みを有する補強銅箔層を備えるフレキシブルプリント配線板を製造するフレキシブルプリント配線板製造工程と、上記フレキシブルプリント配線板に、半田リフロー処理によって上記電子部品を搭載する電子部品搭載工程と、上記フレキシブルプリント配線板を、接着剤層を介して金属構造体に積層する積層工程とを含み、上記積層工程において、上記銅箔と上記金属構造体表面の間の気泡を接着剤層とともに押し出すように、上記電子部品及び/又は上記フレキシブルプリント配線板が押圧積層されるものである。
【0030】
本願発明では、上記補強銅箔層を設けているため、電子部品を直接押圧した場合において、上記押圧力を、上記補強銅箔層を設けた領域に集中させることができる。このため、上記補強銅箔層と上記金属構造体表面の間の接着剤層を気泡とともに押し出すようにして、上記フレキシブルプリント配線板を積層することができる。
【0031】
また、上記補強銅箔層によって上記電子部品搭載領域の剛性が高まり、この領域の周囲を押圧した場合にも、上記補強銅箔層に大きな押圧力を作用させることが可能となる。この結果、上記積層工程において、上記補強銅箔層と上記金属構造体表面の間の接着剤層内の気泡を、上記接着剤層とともに押し出すように、上記電子部品及び上記フレキシブルプリント配線板を押圧することができる。
【0032】
上記積層工程における押圧部位は特に限定されることはない。請求項11に記載した発明のように、上記押圧工程を、搭載した電子部品に対して押圧力を作用させる電子部品押圧工程を含むように行うことができる。なお、上記電子部品押圧工程は、電子部品を破壊しない、もしくは故障させない程度の力を作用させることにより行うことができる。
【0033】
請求項12に記載した発明は、上記押圧工程を、上記電子部品を搭載した領域より外側に設定された上記銅箔の押圧領域を押圧する銅箔押圧工程を含んで行うものである。
【0034】
上記押圧領域を押圧することにより、電子部品搭載領域の周囲を押圧した場合であっても、電子部品搭載領域に大きな押圧力を作用させて気泡を押し出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
電子部品搭載領域の裏面側の気泡を押し出すことにより熱伝導性を高め、電子部品から発生する熱を効率よく放熱することができる配線体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の要部断面図である。
【図2】図1に示すフレキシブルプリント配線板を金属構造体に積層接着する際の気泡を含む接着剤層の流れを模式的に示す要部拡大断面図である。
【図3】図2に示す積層工程を終えた後の配線体の要部拡大断面図である。
【図4】屈曲した積層面を有する金属構造体に電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板を積層して構成した配線体の断面図である。
【図5】位置決めピンを用いてフレキシブルプリント配線板を板状の金属構造体に積層する状態を示す断面図である。
【図6】第4の実施形態に係る配線体の平面図である。
【図7】図6に示す配線体に搭載される電子部品と銅箔を設ける領域を示す拡大平面図である。
【図8】図6及び図7に係る実施形態において、銅箔の厚み及び銅箔を設ける領域を異ならせた場合の放熱特性試験結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0038】
図1から図3に、本願発明の第1の実施形態を示す。図1は、第1の実施形態に用いられるフレキシブルプリント配線板1の要部断面図である。フレキシブルプリント配線板1は、ポリイミド等の絶縁性樹脂から形成された基材フィルム2と、この基材フィルム2の上面に積層された銅箔から形成される回路パターン3と、この回路パターン3の所定部位において露出させられた電子部品接続電極4と、この電子部品接続電極4に、半田11を介して接続される電子部品5と、上記電子部品接続電極以外の領域を覆うカバー層6及び接着剤層7とを備えて構成されている。上記電子部品5として、LED発光素子が採用されており、上記電子部品5の下面に設けられた電極10と上記電子部品接続電極4とが、半田11を介して接続されている。
【0039】
本実施形態では、上記フレキシブルプリント配線板1として両面フレキシブルプリント配線板が採用されており、裏面側にも図示しない回路パターンを形成する銅箔11が積層されている。また、裏面側にも、上記銅箔11によって形成される回路パターンを保護するカバー層8及び接着剤層9が設けられている。
【0040】
図1に示すように、上記電子部品5を搭載した領域の裏面側に、裏面側回路パターンを形成する銅箔11を残して形成される補強銅箔層12が設けられている。本実施形態では、上記補強銅箔層の厚みは35μmに設定されており、周囲の領域より上記電子部品搭載領域の裏面が上記厚み分だけ凸状に突出した形態に形成されている。上記フレキシブルプリント配線板1は、放熱性のある金属構造体に積層接着される。
【0041】
図2は、上記フレキシブルプリント配線板1を金属構造体15に積層接着する直前の状態を示す断面図である。この図に示すように、上記フレキシブルプリント配線板1は、接着剤層16を介して上記金属構造体15に積層接着される。上記接着剤層16には気泡17が多数含まれており、そのままでは接着剤層16の熱伝導率が低くなって所要の放熱性能を確保できない。
【0042】
図2に示す状態から、プレス型20を用いて上記電子部品5の周囲の領域に所定の圧力を作用させることにより、フレキシブルプリント配線板1を金属構造体15に積層接着する積層工程が行われる。本実施形態では、上記電子部品搭載領域の裏面側に、厚さ35μmの補強銅箔層12が設けられているため、上記補強銅箔層12によって形成された凸状部が、上記金属構造体15の表面に所定厚みで存在する接着剤層16を押し退けるように押圧される。これにより、上記補強銅箔層12と上記金属構造体15の表面に介在する接着剤層16の一部が、上記補強銅箔層12を設けた領域から押し出されるように変形させられるとともに、上記気泡17が上記電子部品搭載領域から押し出される。
【0043】
上記積層工程が終了した配線体100は、図3に示すように、上記補強銅箔層12と上記金属構造体15との間の接着剤層16における気泡率が、周囲の領域の気泡率より小さくなる。これにより、上記電子部品搭載領域直下の領域における熱伝導性能が、接着剤層に含まれる上記気泡17によって低下するのを防止することが可能となり、電子部品5から生じた熱を効率よく上記金属構造体15に伝導させて放熱させることが可能となる。
【0044】
上記電子部品5は、半田リフロー処理によって上記フレキシブルプリント配線板1に接続することができるため、従来の手作業による電子部品接続工程に比べて、作業効率が格段に高まる。
【0045】
また、上記補強銅箔層12を設けることにより、上記電子部品搭載領域の剛性が大きくなる。これにより、上記電子部品搭載領域の周囲を押圧しても、上記電子部品搭載領域の内側に大きな押圧力を作用させることができる。また、電子部品を直接押圧する場合でも、押圧力を、上記補強銅箔層を設けた部分に集中させることができる。このため、上記気泡17を接着剤層16の一部とともに、効率よく周囲の領域に排除することが可能となる。
【0046】
図4に、本願発明の第2の実施形態を示す。この実施形態は、本願発明に係るフレキシブルプリント配線板201を、屈曲部250を有する金属構造体215に積層接着したものである。
【0047】
図4に示すように、本実施形態では、片面に回路パターンが形成された片面フレキシブルプリント配線板201が採用されている。このため、第1の実施形態における裏面側には、回路保護のためのカバー層等を設ける必要がない。
【0048】
本願発明では、上記電子部品搭載領域の裏面にのみ補強銅箔層212を設けているため、フレキシブルプリント配線板201の上記補強銅箔層212を設けた領域以外の領域の屈曲性は高い。このため、上記金属構造体215の屈曲面に沿って上記フレキシブルプリント配線板201を積層接着することができる。
【0049】
しかも、本実施形態では、上記電子部品搭載領域及びその周囲の部分を押圧することにより、上記電子部品搭載領域直下の接着剤層を変形させて気泡を押し出し、放熱性を確保することができる。また、上記フレキシブルプリント配線板201の電子部品搭載領域の剛性が高いため変形しにくい。このため、フレキシブルプリント配線板201における電子部品搭載領域に歪等が生じにくく、気泡の発生を抑制することもできる。なお、屈曲角度は限定されることはなく、断面L字状の金属構造体の屈曲面に沿って積層接着することができる。
【0050】
図5に本願発明に係る第3の実施形態を示す。フレキシブルプリント配線板を金属構造体に対して積層接着する際に、フレキシブルプリント配線板が横方向にずれると、気泡をうまく押し出すことができない。このため、上記積層工程において、フレキシブルプリント配線板を位置決めしつつ押圧できるように構成するのが望ましい。
【0051】
図5に示す第3の実施形態では、フレキシブルプリント配線板301と金属構造体315とを積層方向に相対動可能係着できる位置決めピン330を用いて積層工程が行われる。上記フレキシブルプリント配線板301及び上記金属構造体315には位置決め孔が形成されているとともに、上記位置決めピンが連通挿されている。このため、上記フレキシブルプリント配線板301と上記金属構造体315とを横方向にずれることなく押圧力を作用させて積層接着することができる。
【0052】
図6〜図8に、本願発明の第4の実施形態を示す。この実施形態を用いて、本願発明の作用効果を確認する。本実施形態では、電子部品としてLED発光素子405が搭載されている。
【0053】
第4の実施形態では、矩形板状の金属構造体415の一辺にそって複数個のLED発光素子405を搭載したフレキシブルプリント配線板401が積層接着されている。上記フレキシブルプリント配線板401の構成は、上述した実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0054】
この実施形態を用いて、補強銅箔層を設ける領域及び銅箔の厚みによって、接着剤層の気泡率及び放熱特性がどのように変化するかを検証した。
【0055】
図7に示すように、本実施形態に係る発光素子405は、8mm×5mmの搭載面積を備えている。上記LED発光素子405の搭載面積に対して、フレキシブルプリント配線板401の裏面に設けられる補強銅箔層の面積、補強銅箔の厚みを変更して、発光素子405の温度上昇、接続電極間における半田温度及び上記補強銅箔層を設けた領域における接着剤層の気泡率を測定した。なお、上記気泡率は、超音波探傷装置を用いて金属構造体側から金属構造体表面とフレキシブルプリント配線板間の接着剤層を観察し、気泡の投影面積の割合から算出した。
【0056】
図8において、比較例1は、フレキシブルプリント配線板(FPC)を熱プレスによって上記金属構造体415に積層接着した後にLED発光素子405を接続して構成されたものである。また、比較例2は、裏面に補強銅箔層を有しないフレキシブルプリント配線板(FPC)にLED発光素子405を接続した後に金属構造体415に積層接着して構成されたものである。
【0057】
実施例1から実施例6は、いずれもLED発光素子405を搭載した領域の裏面側に銅箔を設けて構成されたものである。実施例1から実施例3及び実施例6は、上記LED発光素子405を設けた領域の直下にのみ補強銅箔層を設けたものである。また、実施例4及び実施例5は、図7に示すように、上記LED搭載領域より広い部分に補強銅箔層を設けたものである。また、実施例1は、補強銅箔層の厚みが18μmであり、実施例2及び実施例4〜実施例6は、補強銅箔層の厚みが35μmであり、実施例3は、補強銅箔層の厚みが70μmのものを採用している。
【0058】
計測項目として、LED発光素子405の温度及び電極接続部の半田の温度を採用した。上記LED発光素子405の温度は、LED通電時の電圧降下量を測定し、その値と温度特性とから導いたものである。上記半田の温度は、中央部のLED発光素子の半田に貼り付けた熱電対によって測定した値である。
【0059】
上記図8から明らかなように、LED発光素子405を接続したフレキシブルプリント配線板を従来と同様の手法で積層接着した場合(比較例2)の温度上昇は、フレキシブルプリント配線板を積層接着した後にLED発光素子405を接続した場合(比較例1)にくらべて5℃以上高くなる。また、上記気泡率の値も上記温度上昇に対応している。このため、比較例2の手法では、LED発光素子405から発生する熱を充分に放熱できないことが判る。
【0060】
一方、LED発光素子405の直下に補強銅箔層を設けた実施例では、いずれの場合も上記比較例2よりLED発光素子の温度上昇の値が低い。また、上記LED発光素子405の直下の領域より大きな領域に銅箔を設けた場合(実施例4及び実施例5)は、LED発光素子の温度上昇がより小さくなることが判る。さらに、LED発光素子405の直下の領域より小さい範囲に銅箔を設定した場合(実施例6)にも所定の効果を期待することができる。
【0061】
ただし、補強銅箔層の厚みが18μmの構成(実施例1)では、LED発光素子の温度上昇を低下させることができない。
【0062】
補強銅箔層の厚みが35μmの場合は、いずれの場合もLED温度上昇及び半田温度が使用可能な範囲となっている。このため、補強銅箔層の厚みは、35μm以上に設定するのが好ましい。さらに、70μm以上にするのがより好ましいことが判る。
【0063】
上記の各実施例における、上記補強銅箔層と上記金属構造体との間の接着剤層の気泡率は、上述したLED温度上昇にほぼ対応している。したがって、上記接着剤層の気泡率をコントロールすることにより、配線体の温度上昇を低下させることができる。
【0064】
上記試験結果から明らかなように、上記補強銅箔層と上記金属構造体との間の接着剤層における気泡率が、20%以下となるように構成するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板を、放熱性を確保しつつ金属構造体に積層接着して構成される配線体を提供できる。
【符号の説明】
【0066】
1 フレキシブルプリント配線板
5 電子部品
12 補強銅箔層
15 金属構造体
16 接着剤層
17 気泡
100 配線体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板を、放熱性のある金属構造体に積層して構成される配線体であって、
上記フレキシブルプリント配線板の上記電子部品を搭載した領域の裏面側に設けられるとともに、35μm以上の厚みを有する補強銅箔層と、
上記フレキシブルプリント配線板を上記金属構造体に接着する接着剤層とを備え、
上記補強銅箔層と上記金属構造体との間の接着剤層における気泡率が、他の領域の接着剤層の気泡率より小さい、配線体。
【請求項2】
上記補強銅箔層と上記金属構造体との間の接着剤層における気泡率が、20%以下である、請求項1に記載の配線体。
【請求項3】
上記補強銅箔層は、少なくとも上記電子部品の接続電極が接続される領域の裏面側に設けられている、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の配線体。
【請求項4】
上記補強銅箔層は、上記電子部品を搭載した領域より外側に設定された押圧領域を備えて構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線体。
【請求項5】
上記銅箔は、上記電子部品を搭載した領域の裏面の80%以上に設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線体。
【請求項6】
上記金属構造体におけるフレキシブルプリント配線板の積層面が、曲面又は屈曲面であり、上記フレキシブルプリント配線板が、湾曲状態又は屈曲状態で積層されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線体。
【請求項7】
上記補強銅箔層が70μm以上の厚さを有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線体。
【請求項8】
上記金属構造体は、放熱フィンを備えるヒートシンクである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配線体。
【請求項9】
上記電子部品が発光素子である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配線体。
【請求項10】
発熱する電子部品を搭載した配線体の製造方法であって、
少なくとも上記電子部品を搭載した領域の裏面側に、35μm以上の厚みを有する補強銅箔層を備えるフレキシブルプリント配線板を製造するフレキシブルプリント配線板製造工程と、
上記フレキシブルプリント配線板に、半田リフロー処理によって上記電子部品を搭載する電子部品搭載工程と、
上記フレキシブルプリント配線板を、接着剤層を介して金属構造体に積層する積層工程とを含み、
上記積層工程において、上記補強銅箔層と上記金属構造体表面の間の気泡を接着剤層とともに押し出すように、上記電子部品及び上記フレキシブルプリント配線板が押圧積層される、配線体の製造方法。
【請求項11】
上記押圧工程は、搭載した電子部品に対して押圧力を作用させる電子部品押圧工程を含む、請求項10に記載の配線体の製造方法。
【請求項12】
上記押圧工程は、上記電子部品を搭載した領域より外側に設定された上記銅箔の押圧領域に押圧力を作用させる銅箔押圧工程を含む、請求項10又は請求項11のいずれかに記載の配線体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−4775(P2013−4775A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135028(P2011−135028)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】