説明

配線回路基板および燃料電池

【課題】ギ酸による導体層の腐食が防止された配線回路基板およびそれを備えた燃料電池を提供する。
【解決手段】ベース絶縁層2の一面に、集電部3a,3bおよび引き出し導体部4a,4bからなる導体層3が形成される。導体層3の所定部分を覆うように、ベース絶縁層2上に被覆層6a,6bが形成される。被覆層6a,6bは、樹脂材料および導電材料を含む。また、被覆層6a,6bには、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンが添加される。1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンは、プロトン(H)を強く捕捉する性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびそれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等のモバイル機器には、小型でかつ高容量の電池が求められる。そこで、リチウム二次電池等の従来の電池に比べて、高エネルギー密度を得ることが可能な燃料電池の開発が進められている。燃料電池としては、例えば直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cells)がある。
【0003】
直接メタノール型燃料電池では、メタノールが触媒によって分解され、水素イオンが生成される。その水素イオンと空気中の酸素とを反応させることにより電力を発生させる。この場合、化学エネルギーを極めて効率良く電気エネルギーに変換することができ、非常に高いエネルギー密度を得ることができる。
【0004】
このような直接メタノール型燃料電池の内部には、集電回路として例えばフレキシブル配線回路基板(以下、FPC基板と略記する)が設けられる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
FPC基板は、ベース絶縁層上に導体層が形成された構成を有する。FPC基板の一部は、燃料電池の外部に引き出される。燃料電池の外部に引き出されたFPC基板の部分に、種々の外部回路が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−200064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直接メタノール型燃料電池に燃料として供給されるメタノールが酸素と反応すると、強い腐食作用を有するギ酸が生成される。このギ酸により、FPC基板の導体層に腐食が生じる。
【0008】
本発明の目的は、ギ酸による導体層の腐食が防止された配線回路基板およびそれを用いた燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、燃料電池に用いられる配線回路基板であって、絶縁層と、絶縁層上に設けられ、所定のパターンを有する導体層と、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンを含み、導体層の少なくとも一部を覆うように形成された被覆層とを備えたものである。
【0010】
その配線回路基板においては、導体層の少なくとも一部を覆うように被覆層が設けられる。そのため、この配線回路基板を用いた燃料電池において、供給される燃料からギ酸が生成されても、被覆層によりギ酸と導体層との接触を抑制することができる。また、プロトンを捕捉する性質を有する1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンが被覆層に含まれるので、ギ酸が被覆層に浸透した場合でも、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンがプロトンを捕捉することにより、導体層の腐食が十分に防止される。
【0011】
(2)被覆層は、導電材料をさらに含んでもよい。この場合、燃料電池内において、導体層と他の要素との間の導電性を確保しつつ、ギ酸と導体層との接触を防止することができる。
【0012】
(3)被覆層は、導電材料として炭素を含んでもよい。この場合、安価な炭素が導電材料として用いられるので、金等の高価な導電材料が用いられる場合に比べて、製造コストが低減される。
【0013】
(4)第2の発明に係る燃料電池は、上記第1の発明に係る配線回路基板と、電池要素と、配線回路基板および電池要素を収容する筐体とを備えたものである。
【0014】
その燃料電池においては、上記第1の発明に係る配線回路基板が用いられるので、被覆層によりギ酸と導体層との接触を抑制することができる。また、ギ酸が被覆層に浸透した場合でも、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンがプロトンを捕捉することにより、導体層の腐食を十分に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被覆層によりギ酸と導体層との接触を抑制することができる。また、ギ酸が被覆層に浸透した場合でも、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンがプロトンを捕捉することにより、導体層の腐食が十分に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係るフレキシブル配線回路基板の構成を示す図である。
【図2】フレキシブル配線回路基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図3】フレキシブル配線回路基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図4】図1のフレキシブル配線回路基板を用いた燃料電池の構成を示す図である。
【図5】実施例および比較例のサンプルの製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態に係る配線回路基板および燃料電池について説明する。なお、本実施の形態では、配線回路基板の例として、屈曲性を有するフレキシブル配線回路基板について説明する。
【0018】
(1)フレキシブル配線回路基板の構成
図1(a)は本実施の形態に係るフレキシブル配線回路基板の平面図であり、図1(b)は、図1(a)のフレキシブル配線回路基板のA−A線断面図である。以下の説明では、フレキシブル配線回路基板をFPC基板と略記する。
【0019】
図1(a)および図1(b)に示すように、FPC基板1は、ベース絶縁層2を備える。ベース絶縁層2は、矩形の第1絶縁部2a、および第1絶縁部2aの一辺から外側に延びる第2絶縁部2bからなる。以下、第1絶縁部2aの上記一辺とそれに平行な他の一辺とを側辺と称し、第1絶縁部2aの側辺に垂直な他の一対の辺を端辺と称する。
【0020】
ベース絶縁層2の第1絶縁部2aには、端辺に平行でかつ第1絶縁部2aをほぼ二等分するように折曲部B1が設けられる。後述のように、第1絶縁部2aは、折曲部B1に沿って折曲される。折曲部B1は、例えば線状の浅い溝であってもよく、または、線状の印等でもよい。あるいは、折曲部B1で第1絶縁部2aを折曲可能であれば、折曲部B1に特に何もなくてもよい。上記第2絶縁部2bは、折曲部B1を境界とする第1絶縁部2aの一方の領域の側辺から外側に延びるように形成される。
【0021】
折曲部B1を境界とする第1絶縁部2aの一方の領域には、複数(本例では6つ)の開口H1が形成される。また、折曲部B1を境界とする第1絶縁部2aの他方の領域には、複数(本例では6つ)の開口H2が形成される。
【0022】
ベース絶縁層2の一面には、導体層3が形成される。導体層3は、一対の矩形の集電部3a,3b、および集電部3a,3bから長尺状に延びる引き出し導体部4a,4bからなる。
【0023】
集電部3a,3bの各々は、第1絶縁部2aの側辺に平行な一対の側辺および第1絶縁部2aの端辺に平行な一対の端辺を有する。集電部3aは、折曲部B1を境界とする第1絶縁部2aの一方の領域に形成され、集電部3bは、折曲部B1を境界とする第1絶縁部2aの他方の領域に形成される。
【0024】
ベース絶縁層2の開口H1上における集電部3aの部分には、開口H1よりも径大の開口H11が形成される。ベース絶縁層2の開口H2上における集電部3bの部分には、開口H2よりも径大の開口H12が形成される。
【0025】
引き出し導体部4aは、集電部3aの側辺から第2絶縁部2b上の領域に直線状に延びるように形成される。引き出し導体部4bは、集電部3bの側辺から第2絶縁部2b上の領域に屈曲して延びるように形成される。
【0026】
導体層3の所定部分を覆うように、ベース絶縁層2上に被覆層6a,6bが形成される。被覆層6a,6bは、樹脂材料および導電材料を含む。導電材料としては、金、銀、カーボンブラック、黒鉛もしくはカーボンナノチューブ等の無機材料、またはポリチオフェンもしくはポリアニリン等の導電性高分子等が用いられる。これらの導電材料のうち1種類の導電材料を単独で用いてもよく、複数種類の導電材料を混合して用いてもよい。樹脂材料としては、フェニール、エポキシ、アクリル、ポリウレタン、ポリイミドまたはポリエステル等が用いられる。これらの樹脂材料のうち1種類の樹脂材料を単独で用いてもよく、複数種類の樹脂材料を混合して用いてもよい。
【0027】
また、被覆層6a,6bには、式(1)で表される1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンが添加される。1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンは、プロトン(H)を強く捕捉する性質を有する。以下、式(1)で表される化合物を捕捉化合物と呼ぶ。
【0028】
【化1】

【0029】
被覆層6a,6bにおける捕捉化合物の添加量は、樹脂材料100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下であることが好ましい。この場合、捕捉化合物の添加量が樹脂材料100重量部に対して0.1重量部以上であることにより、捕捉化合物によりプロトンが十分に捕捉される。また、捕捉化合物の添加量が樹脂材料100重量部に対して30重量部以下であることにより、捕捉化合物による被覆層6a,6bの軟化が抑制される。被覆層6a,6bにおける捕捉化合物の添加量は、樹脂材料100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であることがより好ましく、1重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
なお、プロトンの捕捉のために、上記の捕捉化合物の代わりに他の塩基を用いることも考えられる。しかしながら、例えば1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の強塩基を用いた場合には、樹脂材料がゲル化し、被覆層6a,6bを適正に形成することができない。また、例えばピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、アニリン、2−ピロリドン、またはポリビニルピロリドン等の弱塩基を用いた場合には、プロトンを十分に捕捉することができない。
【0031】
それに対して、上記の捕捉化合物を用いた場合には、樹脂材料のゲル化を抑制しつつプロトンを十分に捕捉することができる。
【0032】
被覆層6aは、集電部3aを覆いかつ引き出し導体部4aの先端部を除く部分を覆うように絶縁層2上に形成され、被覆層6bは集電部3bを覆いかつ引き出し導体部4bの先端部を除く部分を覆うように絶縁層2上に形成される。被覆層6a,6bにより覆われずに露出する引き出し導体部4a,4bの先端部を、以下、引き出し電極5a,5bと称する。集電部3aの開口H11内において、被覆層6aはベース絶縁層2の上面に接する。また、集電部3bの開口H12内において、被覆層6bはベース絶縁層2の上面に接する。
【0033】
(2)FPC配線回路基板の製造方法
次に、図1に示したFPC基板1の製造方法を説明する。図2および図3は、FPC基板1の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、例えばポリイミドからなる絶縁層20と例えば銅からなる導体層21とをラミネートし、2層基材を形成する。絶縁層20の厚みは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。導体膜21の厚みは3μm以上35μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、導電層21上に所定のパターンを有するエッチングレジスト22を形成する。エッチングレジスト22は、例えば、ドライフィルムレジスト等により導電層21上にレジスト層を形成し、そのレジスト層を所定のパターンで露光し、その後、現像することにより形成される。
【0036】
次に、図2(c)に示すように、例えば塩化第II鉄を用いたエッチングにより、エッチングレジスト22の下の領域を除く導電層21の領域を除去する。次に、図2(d)に示すように、エッチングレジスト22を剥離液により除去する。これにより、絶縁層20上に導体層3が形成される。
【0037】
続いて、図3(e)に示すように、上記の導電材料、樹脂材料および捕捉化合物が混合された塗布液を導体層3上および絶縁層20上に塗布することにより、被覆層23を形成する。被覆層23の厚みは、5μm以上25μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0038】
次に、図3(f)に示すように、被覆層23を所定のパターンで露光し、その後、現像することにより、被覆層6a,6bを形成する。そして、図3(g)に示すように、絶縁層20を所定の形状に切断することにより、ベース絶縁層2、導体層3および被覆層6a,6bからなるFPC基板1が完成する。
【0039】
図2および図3では、サブトラクティブ法により導体層3を形成する例を示したが、セミアディティブ法等の他の方法により導体層3を形成してもよい。また、図2および図3では、露光法を用いて被覆層6a,6bを形成する例を示したが、他の方法により被覆層6a,6bを形成してもよい。例えば、印刷技術を用いて所定のパターンの被覆層6a,6bを形成し、その後、被覆層6a,6bに熱硬化処理を行ってもよい。
【0040】
また、ベース絶縁層2の材料として、ポリイミドの代わりに、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマ、またはポリオレフィン等を用いてもよい。また、導体層3の材料として、銅の代わりに、銀もしくは金等の他の金属、またはそれらの金属を複数種類含む合金等を用いてもよい。
【0041】
(3)FPC基板を用いた燃料電池
次に、上記のFPC基板1を用いた燃料電池について説明する。図4(a)は、上記のFPC基板1を用いた燃料電池の外観斜視図であり、図4(b)は、燃料電池内における作用を説明するための図である。
【0042】
図4(a)に示すように、燃料電池30は、半体31a,31bからなる直方体状の筐体31を有する。FPC基板1は、導体層3(図1)および被覆層6a,6bが形成された一面を内側にして図1の折曲部B1に沿って折曲された状態で半体31a,31bにより狭持される。
【0043】
FPC基板1のベース絶縁層2の第2絶縁部2bは、半体31a,31bの間から外側に引き出される。それにより、第2絶縁部2b上の引き出し電極5a,5bが筐体31の外側に露出した状態になる。引き出し電極5a,5bには、種々の外部回路の端子が電気的に接続される。
【0044】
図4(b)に示すように、筐体31内において、折曲されたFPC基板1の集電部3aおよび集電部3bの間には、電極膜35が配置される。電極膜35は燃料極35a、空気極35bおよび電解質膜35cからなる。燃料極35aは電解質膜35cの一面に形成され、空気極35bは電解質膜35cの他面に形成される。電極膜35の燃料極35aはFPC基板1の集電部3bに対向し、空気極35bはFPC基板1の集電部3aに対向する。
【0045】
図4(b)においては、電極膜35およびFPC基板1が互いに離間する状態で示されるが、実際には、電極膜35の燃料極35aがFPC基板1の被覆層6bに接触し、電極膜35の空気極35bがFPC基板1の被覆層6aに接触する。この場合、被覆層6a,6bが炭素を含むことにより、集電部3bと燃料極35aとの間の導電性および集電部3aと空気極35bとの間の導電性が確保される。
【0046】
電極膜35の燃料極35aには、FPC基板1の開口H2,H12を通して燃料が供給される。なお、本実施の形態では、燃料としてメタノールを用いる。電極膜35の空気極35bには、FPC基板1の開口H1,H11を通して空気が供給される。
【0047】
この場合、燃料極35aにおいて、メタノールが水素イオンと二酸化炭素とに分解され、電子が生成される。生成された電子は、FPC基板1の集電部3bから引き出し電極5b(図4(a))に導かれる。メタノールから分解された水素イオンは、電解質膜35cを透過して空気極35bに達する。空気極35bにおいて、引き出し電極5a(図4(a))から集電部3aに導かれた電子を消費しつつ水素イオンと酸素とが反応し、水が生成される。このようにして、引き出し電極5a,5bに接続された外部回路に電力が供給される。
【0048】
(4)本実施の形態の効果
燃料電池30においては、燃料として用いられるメタノールが酸素と反応すると、強い腐食作用を有するギ酸が生成される。このギ酸がFPC基板1の導体層3に接触すると、導体層3が腐食する。本実施の形態に係るFPC基板1においては、導体層3を覆うように被覆層6a,6bが形成されているため、ギ酸と導体層3との接触が防止される。
【0049】
しかしながら、ギ酸が被覆層6a,6bに浸透することにより、ギ酸と導体層3とが接触し、導体層3が腐食する可能性がある。そこで、本実施の形態に係るFPC基板1においては、プロトンを捕捉する性質を有する捕捉化合物が被覆層6a,6bに含まれる。それにより、ギ酸が被覆層6a,6bに浸透しても、被覆層6a,6bに含まれる捕捉化合物がプロトンを捕捉することにより、導体層3の腐食が確実に防止される。
【0050】
また、本実施の形態では、被覆層6a,6bが導電材料を含むことにより、電極膜35と導体層3との間の導電性が確保される。さらに、導電材料として炭素等の安価な材料を用いることにより、低コストで電極膜35と導体層3との間の導電性を確保しかつ導体層3の腐食を防止することができる。
【0051】
(5)実施例および比較例
実施例1〜4および比較例1,2のサンプルを以下のようにして作製した。
【0052】
(5−1)実施例1
図5は、実施例1のサンプルの製造方法を示す工程断面図である。まず、図5(a)に示すように、ポリイミドからなる絶縁膜20と銅からなる導体膜21とがラミネートされた2層基材を用意した。次に、図5(b)に示すように、塩化第二鉄を用いて導体膜21をエッチングし、所定のパターンの導体層3を形成した。
【0053】
また、メチルエチルケトンにエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製:jER−1007)を溶解させた溶液に、硬化剤としての酸無水物(新日本理化株式会社製:MH−700)、触媒としてのイミダゾール(四国化成工業株式会社製:2E4MZ)および捕捉化合物(Sigma-Aldrich Corporation製)を混ぜ合わせることにより、塗布液を調製した。この場合、エポキシ樹脂100重量部に対して、酸無水物を8重量部添加し、イミダゾールを2重量部添加し、捕捉化合物を3重量部添加した。
【0054】
この塗布液を導体層3上および絶縁膜20上に塗布し、その後、乾燥および硬化させることにより、図5(c)に示すように、導体層3を覆うように絶縁層20上に被覆層6を形成した。
【0055】
(5−2)実施例2
被覆層6の塗布液における捕捉化合物の添加量をエポキシ樹脂100重量部に対して10重量部とした点を除いて、実施例1と同様に実施例2のサンプルを作製した。
【0056】
(5−3)実施例3
被覆層6の塗布液における捕捉化合物の添加量をエポキシ樹脂100重量部に対して30重量部とした点を除いて、実施例1と同様に実施例3のサンプルを作製した。
【0057】
(5−4)比較例1
被覆層6の塗布液の調製時に、捕捉化合物の代わりに、2,4,6−トリメチルピリジンを用いた点を除いて、実施例1と同様に比較例1のサンプルを作製した。なお、2,4,6−トリメチルピリジンの添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して10重量部とした。
【0058】
(5−5)比較例2
被覆層6の塗布液の調製時に、捕捉化合物の代わりに、ポリビニルピロリドンを用いた点を除いて、実施例1と同様に比較例1のサンプルを作製した。なお、ポリビニルピロリドンの添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して10重量部とした。
【0059】
(5−6)評価
ギ酸が500ppmの濃度で含まれるように調製されたメタノール溶液に、実施例1〜3および比較例1,2のサンプルを60℃の環境下で7日間浸漬させ、導体層3の腐食の有無を調べた。
【0060】
その結果、被覆層6に捕捉化合物が添加された実施例1〜3においては、導体層3の腐食が生じなかった。一方、被覆層6に捕捉化合物が添加されなかった比較例1,2においては、導体層3に腐食が生じた。これにより、被覆層6に捕捉化合物が添加されることにより、ギ酸による導体層3の腐食が確実に防止されることがわかった。
【0061】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態では、被覆層6a,6bの全体に導電材料が含まれるが、集電部3bと燃料極35aとの間の導電性および集電部3aと空気極35bとの間の導電性を確保することができるのであれば、被覆層6a,6bの一部にのみ導電材料が含まれてもよい。例えば、集電部3a,3b上における被覆層6a,6bの部分には導電材料が含まれ、引き出し導体部4a,4b上における被覆層6a,6bの部分には導電材料が含まれなくてもよい。
【0062】
また、集電部3bと燃料極35aとの間の導電性および集電部3aと空気極35bとの間の導電性を確保することができ、かつギ酸による導体層3の腐食を防止することができるのであれば、被覆層6a,6bに導電材料が含まれなくてもよい。例えば、集電部3a,3bの一部が露出するように被覆層6a,6bが設けられ、露出する集電部3a,3bの部分に金等の耐食性が高い材料が用いられる場合には、被覆層6a,6bに導電材料が含まれなくてもよい。この場合、金等の高価な材料の使用を抑制しつつ、ギ酸による導体層3の腐食を防止することができる。
【0063】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0064】
上記実施の形態では、ベース絶縁層2が絶縁層の例であり、導体層3が導体層の例であり、被覆層6a,6bが被覆層の例であり、筐体31が筐体の例である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、燃料電池に用いる種々の配線回路基板に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 FPC基板
2 ベース絶縁層
2a 第1絶縁部
2b 第2絶縁部
3 導体層
3a,3b 集電部
4a,4b 引き出し導体部
5a,5b 引き出し電極
6a,6b 被覆層
30 燃料電池
31 筐体
31a,31b 半体
35 電極膜
35a 集電極
35b 空気極
35c 電解質膜
B1 折曲部
H1,H2,H11,H12 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に用いられる配線回路基板であって、
絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられ、所定のパターンを有する導体層と、
1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンを含み、前記導体層の少なくとも一部を覆うように形成された被覆層とを備えたことを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記被覆層は、導電材料をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記被覆層は、前記導電材料として炭素を含むことを特徴とする請求項2記載の配線回路基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の配線回路基板と、
電池要素と、
前記配線回路基板および前記電池要素を収容する筐体とを備えたことを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−233693(P2011−233693A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102199(P2010−102199)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】