説明

配線回路基板集合体シート

【課題】簡易な構成により、配線回路基板の製造時に、配線回路基板の変形が生じることを防止することのできる、配線回路基板集合体シートを提供すること。
【解決手段】回路付サスペンション基板集合体シート1が、互いに間隔を隔てて配置される複数の回路付サスペンション基板2と、各回路付サスペンション基板2間に、回路付サスペンション基板2の長手方向と交差する方向に沿って延びる複数の線条部3とを備える。この回路付サスペンション基板集合体シート1によれば、各回路付サスペンション基板2間に、回路付サスペンション基板2の長手方向と交差する方向に延びる線条部3を複数備えているので、回路付サスペンション基板2の製造時に、回路付サスペンション基板2の変形が生じることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板集合体シート、詳しくは、複数の配線回路基板を備える配線回路基板集合体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板は、通常、1枚のシートに、配線回路基板が複数形成される配線回路基板集合体シートとして製造されており、各配線回路基板は、配線回路基板集合体シートから、適宜、切り離されて、各種の電気機器や電子機器に用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−201085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載される配線回路基板集合体シートでは、配線回路基板の製造時において、配線回路基板の変形を生じる場合がある。
とりわけ、配線回路基板が回路付サスペンション基板である場合には、回路付サスペンション基板のジンバルには、磁気ヘッドが搭載されるスライダが実装されており、そのスライダと、回路付サスペンション基板と、回路付サスペンション基板が搭載されるロードビームとの相互の正確な位置決めが必要とされている。
【0004】
そのため、回路付サスペンション基板に基準孔を形成し、基準孔を位置決め基準として用いて、回路付サスペンション基板とロードビームとを位置決めしている。これにより、回路付サスペンション基板のジンバルに実装されるスライダと、回路付サスペンション基板と、ロードビームとを、高精度で位置決めしている。
しかしながら、回路付サスペンション基板の製造時において、回路付サスペンション基板の変形を生じる場合には、ジンバルと、基準部(基準孔)との相対配置の精度が低下し、その結果、ジンバルに実装されるスライダと、回路付サスペンション基板と、ロードビームとの相互の位置決めの精度が低下する場合がある。
【0005】
そのため、配線回路基板の変形を防止することができる配線回路基板集合体シートが要求されている。
本発明の目的は、簡易な構成により、配線回路基板の製造時に、配線回路基板の変形が生じることを防止することのできる、配線回路基板集合体シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の配線回路基板集合体シートは、互いに間隔を隔てて配置される複数の配線回路基板と、各前記配線回路基板間に、前記配線回路基板の長手方向と交差する方向に沿って延びる複数の線条部とを備えていることを特徴としている。
また、本発明の配線回路基板集合体シートでは、前記線条部が、金属および/または樹脂から形成されていることが好適である。
【0007】
また、本発明の配線回路基板集合体シートでは、各前記線条部が、互いに間隔を隔てて、平行に配置されていることが好適である。
また、本発明の配線回路基板集合体シートでは、前記配線回路基板および前記線条部が、それらの長手方向に沿う直線が交差する角の二等分線が前記配線回路基板集合体シートの長手方向と平行になるように、配置されていることが好適である。
【0008】
また、本発明の配線回路基板集合体シートでは、前記線条部が、前記配線回路基板の長手方向、および、前記配線回路基板の長手方向と直交する方向の両方向と交差する方向に沿って配置されていることが好適である。
また、本発明の配線回路基板集合体シートでは、各前記線条部が、各前記配線回路基板間の全体にわたって配置されていることが好適である。
【0009】
また、本発明の配線回路基板集合体シートでは、前記配線回路基板が、回路付サスペンション基板であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配線回路基板集合体シートによれば、各配線回路基板間に、配線回路基板の長手方向と交差する方向に延びる線条部を複数備えているので、配線回路基板の製造時に、配線回路基板の変形が生じることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の配線回路基板集合体シートの一実施形態である回路付サスペンション基板集合体シートを示す平面図、図2は、その要部拡大平面図、図3は、図2に示すA−A線の断面図である。なお、図1において、後述する隙間溝9、ベース絶縁層12、導体パターン13、カバー絶縁層14および支持部26は省略されており、また、図2において、後述する隙間溝9、ベース絶縁層12、カバー絶縁層14および支持部26は省略されている。
【0012】
図1において、この回路付サスペンション基板集合体シート1は、複数の配線回路基板としての回路付サスペンション基板2と、複数の線条部3と、複数の回路付サスペンション基板2および線条部3を支持する支持シート4とを備えている。
なお、回路付サスペンション基板集合体シート1は、ロールトゥロール法により製造されており、図4および図5に示す各工程では、その長手方向(図1における実線矢印L1)沿って搬送される。
【0013】
各回路付サスペンション基板2は、支持シート4内において、互いに間隔を隔てて整列配置されている。
この回路付サスペンション基板2は、ハードディスクドライブに用いられ、磁気ヘッド(図示せず)を実装して、その磁気ヘッドを、磁気ヘッドと磁気ディスク(図示せず)とが相対的に走行するときの空気流に抗して、磁気ディスクとの間に微小な間隔を保持しながら支持するものであり、磁気ヘッドと、リード・ライト基板(図示せず)とを接続するための導体パターン13が一体的に形成されている。
【0014】
回路付サスペンション基板2は、図2に示すように、長手方向に延びる平面視略クランク形状に形成されており、長手方向一方側(以下、後側という。)に配置される外部端子部5と、長手方向他方側(以下、先側という。)に配置されるジンバル6と、外部端子部5とジンバル6との間に配置される本体部10とを一体的に備えている。
なお、後述する線条部3との相対配置について言及する場合には、回路付サスペンション基板2の長手方向は、回路付サスペンション基板2の先端部の幅方向中央部(先端縁の両端部間の中央)と、後端部の幅方向中央部(後端縁の両端部間の中央)とを結ぶ直線(図1における破線L2)に沿う方向として定義される。
【0015】
本体部10は、長手方向に延びる平面視略クランク形状に形成されている。また、本体部10には、図1および図2に示すように、回路付サスペンション基板2をロードビーム(図示せず)に設置するための位置決め基準となる位置決め孔7が、設けられている。
位置決め孔7は、本体部10の長手方向略中央部および幅方向中央部において、回路付サスペンション基板2を厚み方向に貫通する(すなわち、後述する金属支持層11を厚み方向に貫通する)平面視略円形状の貫通孔として、形成されている。
【0016】
外部端子部5は、本体部10の後端から連続して形成され、本体部10に対して幅方向両外側に膨張する平面視略矩形状に形成されている。
ジンバル6は、本体部10の先端から連続して形成され、本体部10に対して幅方向両外側に膨張する平面視略矩形状に形成されている。また、ジンバル6には、平面視において、先側に向かって開く略U字状のスリット部8が形成されている。スリット部8は、回路付サスペンション基板2を厚み方向に貫通して(すなわち、後述する金属支持層11を厚み方向に貫通して)形成されている。また、スリット部8に幅方向に挟まれる領域には、スライダ(図示せず)が搭載される。
【0017】
導体パターン13は、外部側接続端子部16と、磁気ヘッド側接続端子部17と、それら外部側接続端子部16および磁気ヘッド側接続端子部17を接続するための信号配線15とを、一体的に備えている。
各信号配線15は、回路付サスペンション基板1の長手方向に沿って複数(6本)設けられ、幅方向において互いに間隔を隔てて並列配置されている。
【0018】
より具体的には、各信号配線15は、本体部10において、互いに平行して延びるように配置されている。外部端子部5において、各信号配線15は、外部端子部5の後方に向かって延び、外部側接続端子部16の先端部に至るように配置されている。ジンバル6において、各信号配線15は、スリット部8の幅方向両側外方を通過し、ジンバル6の先端部に至った後、ジンバル6の長手方向後側に向かって折り返されて、磁気ヘッド側接続端子部17の先端部に至るように配置されている。
【0019】
外部側接続端子部16は、外部端子部5の後端部に配置され、各信号配線15の後端部がそれぞれ接続されるように、複数(6つ)設けられている。また、外部側接続端子部16は、幅方向に間隔を隔てて配置されている。外部側接続端子部16には、図示しないが、外部回路基板の端子部が接続される。
磁気ヘッド側端子接続部17は、ジンバル6の先端部に配置されている。磁気ヘッド側端子接続部17は、各信号配線15の先端部がそれぞれ接続されるように、複数(6つ)設けられている。また、磁気ヘッド側端子接続部17は、幅方向において互いに間隔を隔てて配置されている。磁気ヘッド側接続端子部17には、図示しないが、スライダに実装される磁気ヘッド(図示せず)の端子部が接続される。
【0020】
そして、回路付サスペンション基板1は、図2および図3に示すように、金属支持層11と、金属支持層11の表面に形成されるベース絶縁層12と、ベース絶縁層12の表面に形成される導体パターン13と、ベース絶縁層12の表面に、導体パターン13を被覆するように形成されるカバー絶縁層14とを備えている。
金属支持層11は、図2および図3に示すように、後述する支持シート4とともに金属支持基板18(図4参照)から形成され、位置決め孔7、スリット部8および回路付サスペンション基板2の外形形状に対応して形成されている。また、金属支持層11を含む金属支持基板18を形成する金属としては、例えば、ステンレス、42アロイなどが用いられ、好ましくは、ステンレスが用いられる。また、その厚みは、例えば、10〜60μm、好ましくは、15〜30μmである。
【0021】
ベース絶縁層12は、図3に示すように、金属支持層11の上に、導体パターン13が形成される部分に対応するパターンとして形成されている。また、ベース絶縁層12を形成する絶縁体としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂が用いられる。これらのうち、パターンでベース絶縁層12を形成するためには、好ましくは、感光性の合成樹脂が用いられ、さらに好ましくは、感光性ポリイミド樹脂が用いられる。また、その厚みは、例えば、10〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。
【0022】
導体パターン13は、図2および図3に示すように、上記した複数の信号配線15、磁気ヘッド側接続端子17および外部側接続端子16を一体的に備えている。
導体パターン13を形成する導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだまたはこれらの合金などの金属箔が用いられ、導電性、廉価性および加工性の観点から、好ましくは、銅箔が用いられる。また、導体パターン13の厚みは、例えば、1〜25μm、好ましくは、5〜15μmである。また、各信号配線15の幅(幅方向(長手方向と直交する方向)長さ)は、例えば、10〜150μm、好ましくは、20〜100μmであり、各信号配線15間の間隔は、例えば、10〜200μm、好ましくは、20〜150μmである。
【0023】
なお、導体パターン13が後述するアディティブ法で形成される場合には、各信号配線15とベース絶縁層12との間に、下地(図示せず)が介在されている。下地は、信号配線15と同一パターンで形成されている。下地を形成する材料としては、例えば、クロム、金、銀、白金、ニッケル、チタン、ケイ素、マンガン、ジルコニウム、および、それらの合金またはそれらの酸化物などの金属材料が用いられる。なお、下地の厚みは、例えば、0.01〜1μm、好ましくは、0.01〜0.1μmである。
【0024】
カバー絶縁層14は、図3に示すように、ベース絶縁層12の上において、信号配線15を被覆し、かつ、磁気ヘッド側接続端子17および外部側接続端子16が露出するように、パターンとして形成されている。カバー絶縁層14を形成する絶縁体としては、上記したベース絶縁層12と同様の絶縁体が用いられ、好ましくは、感光性ポリイミド樹脂が用いられる。また、その厚みは、例えば、2〜10μm、好ましくは、3〜6μmである。
【0025】
そして、この回路付サスペンション基板集合体シート1は、図1および図2に示すように、複数の線条部3を備えている。
各線条部3は、図1および図2に示すように、各回路付サスペンション基板2の間に、回路付サスペンション基板2の長手方向と交差する方向に沿って延びるように筋交状に形成され、後述する支持シート4に配置されている。
【0026】
線条部3を形成する材料としては、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。
金属としては、上記した導体パターン13を形成する導体と同様の金属、例えば、銅、ニッケル、金、はんだまたはこれらの合金などの金属箔が用いられ、導電性、廉価性および加工性の観点から、好ましくは、銅箔が用いられる。
樹脂としては、上記したベース絶縁層12およびカバー絶縁層14を形成する絶縁体と同様、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂が用いられる。これらのうち、好ましくは、感光性の合成樹脂が用いられ、さらに好ましくは、感光性ポリイミド樹脂が用いられる。
【0027】
これら線条部3を形成する材料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、各線条部3の厚みは、導体パターン13の厚みとほぼ同一であって、例えば、1〜25μm、好ましくは、5〜15μmであり、各線条部3の幅は、例えば、5〜1000μm、好ましくは、15〜100μmである。
なお、線条部3が金属から形成される場合において、線条部3が後述するアディティブ法で形成される場合には、各線条部3と、金属支持基板18との間に、上記した下地(図示せず)が介在されている。下地は、線条部3と同一パターンで形成されている。
【0028】
また、各線条部3の長手方向に沿う直線(図1における破線L3)と、回路付サスペンション基板2の長手方向に沿う直線(図1における破線L2)とが交差する角の角度(以下、交差角αとする。なお、各線条部3の長手方向に沿う直線と、回路付サスペンション基板2の長手方向に沿う直線とが交差すると、回路付サスペンション基板集合体シート1の搬送方向に沿って互いに隣り合う対頂角と、回路付サスペンション基板集合体シート1の搬送方向と直交する方向に沿って互いに隣り合う対頂角とが形成されるが、交差角αは、回路付サスペンション基板集合体シート1の搬送方向に沿って互いに隣り合う対頂角の1つとして定義される。)は、特に制限されず、例えば、0°を超過し、180°未満、好ましくは、15°を超過し、165°未満、より好ましくは、80°を超過し、100°未満である。
【0029】
線条部3が形成されることにより、回路付サスペンション基板2の製造時に、回路付サスペンション基板2に変形が生じることを防止することができる。
また、各回路付サスペンション基板2および各線条部3は、好ましくは、各回路付サスペンション基板2の長手方向に沿う直線と各線条部3の長手方向に沿う直線とが交差する角の二等分線が、回路付サスペンション基板集合体シート1の長手方向と平行になるように、配置される(すなわち、各回路付サスペンション基板2の長手方向に沿う直線と回路付サスペンション基板集合体シート1の長手方向に沿う直線とが、α/2の角度で交差するとともに、各線条部3の長手方向に沿う直線と回路付サスペンション基板集合体シート1の長手方向に沿う直線とが、α/2の角度で交差する。)。
【0030】
このように各回路付サスペンション基板2および各線条部3が配置されていれば、回路付サスペンション基板2の変形を、より効果的に防止することができる。
また、各線条部3は、後述する図8が参照されるように、好ましくは、回路付サスペンション基板2の長手方向、および、回路付サスペンション基板2の長手方向と直交する方向の両方向と交差する方向に沿って配置される。
【0031】
各線条部3が、回路付サスペンション基板2の長手方向、および、回路付サスペンション基板2の長手方向と直交する方向と交差する方向に沿って配置されていれば、回路付サスペンション基板2の変形を、より一層防止することができる。
このような場合における各交差角αとしては、例えば、90°を超過し、180°未満、好ましくは、130°を超過し、150°未満である。
【0032】
また、各線条部3における各交差角αは(すなわち、ある線条部3における交差角αと、その他の線条部3における交差角αとは)、互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。好ましくは、各線条部3における各交差角αは、互いに同一である(すなわち、各線条部3が、互いに間隔を隔てて、平行に配置される)。
各線条部3における各交差角αが、互いに同一であれば、回路付サスペンション基板集合体シート1の特定の方向に対する剛性を、より一層向上することができ、特定の方向に対する回路付サスペンション基板2の変形を、より抑制することができる。
【0033】
また、各配線部3が平行に配置される場合における、各線条部3の間隔は、互いに同一または相異なっていてもよく、例えば、5〜1000μm、好ましくは、15〜300μmである。
また、線条部3は、好ましくは、各回路付サスペンション基板2の間の全体にわたって配置される。
【0034】
配線部3を各回路付サスペンション基板2の間の全体にわたって配置することにより、回路付サスペンション基板集合体シート1の剛性を、その全体にわたって均一に向上させることができる。そのため、回路付サスペンション基板2の変形を、より確実に防止することができる。
支持シート4は、図1および図2に示すように、金属支持基板18における、各回路付サスペンション基板2(各金属支持層11)が配置されている領域を除く全領域に対応する。
【0035】
また、金属支持基板18において、支持シート4と各回路付サスペンション基板2との間には、各回路付サスペンション基板2の外周を囲む隙間溝9(図3参照)が形成されている。なお、この隙間溝9の幅は、通常、0.1〜10mmに設定されている。
また、各回路付サスペンション基板2は、支持シート4と、隙間溝9を横切る複数の支持部26(図3参照)により連結されている。各支持部26は、各回路付サスペンション基板2の周りに互いに間隔を隔てて複数配置され、支持シート4の内周縁部から隙間溝9に対して直交方向に通過して回路付サスペンション基板2の外周縁部に至るように形成されている。
【0036】
図4は、回路付サスペンション基板集合体シート1の製造工程を示す、工程図である。
次に、この回路付サスペンション基板集合体シート1の製造方法について、図4を参照して、説明する。
この方法では、まず、図4(a)に示すように、金属支持基板18を用意する。金属支持基板18は、図1が参照されるように、平面視略矩形状の平板から形成されている。
【0037】
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、金属支持基板18の上に、各回路付サスペンション基板2に対応するパターンで、複数のベース絶縁層12を同時に形成する。
各ベース絶縁層12の形成は、例えば、金属支持基板18の表面に、合成樹脂の溶液(ワニス)を上記したパターンで塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。また、感光性の合成樹脂を用いる場合には、感光性の合成樹脂を、金属支持基板18の表面全面に塗布し、その後、感光性の合成樹脂を露光および現像して、上記したパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。さらに、各ベース絶縁層12の形成は、上記の方法に制限されず、例えば、予め合成樹脂を上記したパターンのフィルムに形成して、そのフィルムを、金属支持基板18の表面に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0038】
次に、この方法では、図4(c)に示すように、各回路付サスペンション基板2のベース絶縁層12の表面には導体パターン13を、各回路付サスペンション基板2の間における金属支持基板18の表面には線条部3を、それらに対応するパターンで同時に形成する。
各導体パターン13および各線条部3を形成するには、アディティブ法やサブトラクティブ法などの公知のパターンニング法が用いられる。好ましくは、アディティブ法が用いられる。
【0039】
アディティブ法では、まず、ベース絶縁層12および金属支持基板18(ベース絶縁層12が形成される領域を除く)の上面全面に、図示しない下地を形成する。下地は、スパッタリング、好ましくは、クロムスパッタリングおよび銅スパッタリングにより、クロム薄膜と銅薄膜とを順次積層することにより、形成される。
次いで、この方法では、下地が積層されたベース絶縁層12および金属支持基板18(ベース絶縁層12が形成される領域を除く)の、上面全面および下面全面に、フォトレジストを形成する。フォトレジストは、ドライフィルムレジスト、および、それを保護するPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる保護シートの積層フィルムとして、形成されている。
【0040】
次いで、この方法では、上側のフォトレジストを、フォトマスクを介して露光し、その後、現像することにより、導体パターン13および線条部3の逆パターンで、めっきレジストを形成する。
フォトマスクには、導体パターン13を形成するためのパターンと、線条部3を形成するためのパターンとが、一体的に形成されている。具体的には、フォトマスクは、光を透過しない遮光部分と、光を透過する光透過部分とを、上記パターンで備えており、ネガ現像でパターニングする場合には、導体パターン13および線条部3を形成する部分には、遮光部分が対向し、導体パターン13および線条部3を形成しない部分には、光透過部分が対向するように、フォトマスクを配置して、露光する。
【0041】
その後、上側のフォトレジストから、保護シートを剥離し、遮光部分が対向していた未露光部分、すなわち、導体パターン13および線条部3を形成する部分を、現像により除去する。現像には、例えば、浸漬法またはスプレー法などが用いられる。
これによって、めっきレジストが、下地が積層されたベース絶縁層12および金属支持基板18(ベース絶縁層12が形成される領域を除く)の上面に、導体パターン13および線条部3の逆パターンで形成される。
【0042】
なお、ポジ画像でパターニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち、導体パターン13および線条部3を形成する部分に、フォトマスクの光透過部分を対向させて露光した後、現像する。
次いで、例えば、電解めっき、好ましくは、電解銅めっきにより、めっきレジストから露出する下地の上面に、導体パターン13を所定パターンで形成するとともに、めっきレジストから露出する金属支持基板18の上面に、線条部3を所定パターンで形成する。
【0043】
その後、ベース絶縁層12および下地が積層された金属支持基板18の上面のめっきレジストと、ベース絶縁層12および下地が積層された金属支持基板18の下面のフォトレジストとを、例えば、エッチング、剥離などによって除去し、続いて、めっきレジストが積層されていた部分の下地を、例えば、エッチング、剥離などによって除去する。
これにより、ベース絶縁層12の上に、導体パターン13を、信号配線15、外部側接続端子16および磁気ヘッド側接続端子17を有する上記したパターンで形成するとともに、各ベース絶縁層12の間に、線条部3を、上記したパターン(例えば、線条部3の幅が、50μm、各線条部3の間隔が300μm、各交差角αが90°)で形成する。
【0044】
次いで、この方法では、図4(d)に示すように、各回路付サスペンション基板2の導体パターン13を被覆して、磁気ヘッド側接続端子17および外部側接続端子16を露出するようにベース絶縁層12の上にカバー絶縁層14を形成する。
各カバー絶縁層14の形成は、例えば、上記した合成樹脂の溶液を上記したパターンで塗布した後、乾燥し、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。また、各カバー絶縁層14は、感光性の合成樹脂を金属支持基板18(線条部3を含む)およびベース絶縁層12(導体パターン13を含む)の全面に塗布し、その後、その感光性の合成樹脂を露光および現像して、上記したパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させることもできる。さらに、各カバー絶縁層14の形成は、上記の方法に制限されず、例えば、予め合成樹脂を上記したパターンのフィルムに形成して、そのフィルムを、各回路付サスペンション基板2のベース絶縁層12の上に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0045】
これにより、カバー絶縁層14は、外部側接続端子部16、磁気ヘッド側接続端子部17に対応する部分が開口され、信号配線15が被覆されるパターンとして形成される。
次いで、この方法では、図4(e)に示すように、金属支持基板18を開口し、位置決め孔7および隙間溝9を形成することにより、金属支持層11(すなわち、回路付サスペンション基板2)の外形を形成する。
【0046】
金属支持基板18を開口するには、例えば、ドリルなどの穿孔、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチングなどのエッチングなどが用いられる。好ましくは、ウエットエッチングが用いられる。
図5は、ウエットエッチングにより金属支持基板18を開口する工程を示す工程図である。
【0047】
ウエットエッチングでは、まず、図5(a)に示すように、ベース絶縁層12、導体パターン13およびベース絶縁層14が積層され、線条部3が形成された金属支持基板18の上面全面および下面全面に、フォトレジスト19を形成する。フォトレジスト19は、ドライフィルムレジスト20、および、それを保護するPETなどからなる保護シート21の積層フィルムとして、形成されている。
【0048】
次いで、この方法では、図5(b)に示すように、上側のフォトレジスト19を、フォトマスク22を介して露光し、その後、図5(c)に示すように、現像することにより、位置決め孔7および隙間溝9の逆パターンで、エッチングレジスト23を形成する。
フォトマスク22には、図5(b)に示すように、位置決め孔7および隙間溝9を形成するためのパターンが、一体的に形成されている。具体的には、フォトマスク22は、光を透過しない遮光部分24と、光を透過する光透過部分25とを、上記パターンで備えており、ネガ現像でパターニングする場合には、位置決め孔7および隙間溝9を形成する部分には、遮光部分24が対向し、位置決め孔7および隙間溝9を形成しない部分には、光透過部分25が対向するように、フォトマスク22を配置して、露光する。
【0049】
その後、上側のフォトレジスト19から、保護シート21を剥離し、図5(c)に示すように、遮光部分24が対向していた未露光部分、すなわち、位置決め孔7および隙間溝9を形成する部分を、現像により除去する。現像には、例えば、浸漬法またはスプレー法などが用いられる。
これによって、エッチングレジスト23が、ベース絶縁層12、導体パターン13およびカバー絶縁層14が積層され、線条部3が形成された金属支持基板18の上面に、位置決め孔7および隙間溝9の逆パターンで形成される。
【0050】
なお、ポジ画像でパターニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち、位置決め孔7および隙間溝9を形成する部分に、フォトマスク22の光透過部分25を対向させて露光した後、現像する。
次いで、例えば、塩化第二鉄水溶液などの公知のエッチング液を用いて、金属支持基板18を開口し、位置決め孔7および隙間溝9を形成する。
【0051】
その後、上側のエッチングレジスト23と、下側のフォトレジスト19(すなわち、ドライフィルムレジスト20および保護シート21)とを、例えば、エッチング、剥離などによって除去する。
これにより、図4(e)に示すように、位置決め孔7を形成するとともに、隙間溝9を上記したパターンで形成し、金属支持層11(すなわち、回路付サスペンション基板2)の外形を形成することができる。なお、隙間溝9を形成すると同時に、支持部26も形成される。
【0052】
なお、位置決め孔7および隙間溝9を形成すると同時に、スリット部8に対応する部分の金属支持基板18もエッチングする。
これにより、複数の回路付サスペンション基板2と、複数の線条部3と、支持シート4とを備えた、回路付サスペンション基板集合体シート1を得ることができる。
そして、この回路付サスペンション基板集合体シート1は、回路付サスペンション基板2の長手方向と交差する方向沿って延びる線条部3を複数備えているので、回路付サスペンション基板2の製造時に、回路付サスペンション基板2の変形が生じることを防止することができる。
【0053】
すなわち、例えば、位置決め孔7、スリット部8および隙間溝9をウエットエッチングにより形成する場合には、通常、上記したように、ドライフィルムレジスト20および保護シート21からなるフォトレジスト19を積層し、次いで、フォトレジスト19を露光し、次いで、保護シート21を剥離し、その後、現像してエッチングレジスト23を形成する。
【0054】
フォトレジスト19を積層する工程では、保護シート21の張力により、線条部3が形成されていない場合には、ベース絶縁層12、導体パターン13およびカバー絶縁層14が積層された金属支持基板18に変形が生じる。そして、そのまま露光すると、変形している分だけ、位置ズレを生じたまま露光されるので、エッチングレジスト23を、位置決め孔7、スリット部8および隙間溝9の形成位置に正確に対応したパターンとして形成することができず、そのため、線条部3が形成されていない場合には、位置決め孔7、スリット部8および隙間溝9を、優れた精度で形成することができない場合がある。
【0055】
一方、この回路付サスペンション基板集合体シート1は、線条部3が形成されているため、優れた剛性を有している。
そのため、この回路付サスペンション基板集合体シート1によれば、保護シート21の張力による変形を良好に防止することができ、優れた精度で位置決め孔7、スリット部8および隙間溝9を形成し、回路付サスペンション基板2の外形を形成することができる。
【0056】
その結果、この回路付サスペンション基板集合体シート1によれば、回路付サスペンション基板2のジンバル6(スリット部8)に実装されるスライダと、回路付サスペンション基板2と、位置決め孔7を位置決め基準として回路付サスペンション基板2が実装されるロードビームとを、優れた精度で相対配置することができる。
また、この回路付サスペンション基板集合体シート1では、各線条部3が、互いに間隔を隔てて、平行に配置されている。
【0057】
そのため、回路付サスペンション基板集合体シート1の特定の方向に対する剛性を、より一層向上することができ、特定の方向に対する回路付サスペンション基板2の変形を、より抑制することができる。
また、この回路付サスペンション基板集合体シート1では、各線条部3が、各回路付サスペンション基板2間の全体にわたって配置されている。
【0058】
そのため、回路付サスペンション基板集合体シート1の剛性を、より一層向上させることができ、回路付サスペンション基板2の製造時に、回路付サスペンション基板2の変形が生じることを、より一層防止することができる。
上記の説明においては、線条部3を、導体パターン13とともに、導体パターン13を形成する導体(金属)によって形成したが、例えば、線条部3を、樹脂により形成することもできる。
【0059】
図6は、図3に示す回路付サスペンション基板集合体シート1の他の実施形態(線条部3が樹脂によって形成される形態)の断面図を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、図6において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
この回路付サスペンション基板集合体シート1においては、線条部3が、ベース絶縁層12の製造工程において、ベース絶縁層12とともに、ベース絶縁層12を形成する樹脂と同様の樹脂によって形成されている。
【0060】
このような線条部3は、例えば、上記したベース絶縁層12の製造工程において、感光性の合成樹脂を、金属支持基板18の表面全面に塗布し、その後、感光性の合成樹脂を露光および現像して、各線条部3および各ベース絶縁層12にそれぞれ対応するパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させることにより、各ベース絶縁層12と同時に形成される。
【0061】
この回路付サスペンション基板集合体シート1では、導体パターン13の製造工程では、金属支持基板18の各ベース絶縁層12の間において、線条部3が形成されている。そのため、上記した導体パターン13の製造工程において、フォトレジスト(ドライフィルムレジストおよび保護シート)を積層するときにも、金属支持基板18の変形を防止することができる。
【0062】
そのため、より一層、回路付サスペンション基板2の製造時に、回路付サスペンション基板2の変形が生じることを防止し、優れた精度で位置決め孔7および隙間溝9を形成し、回路付サスペンション基板2の外形を形成することができる。
とりわけ、導体パターン13の製造工程において、線条部3が形成されていると、磁気ヘッド側接続端子部17と、位置決め孔7、スリット部8および隙間溝9との相互の位置精度の向上を図ることができる。その結果、回路付サスペンション基板2のジンバル6(スリット部8)に実装されるスライダ、回路付サスペンション基板2、および、位置決め孔7を位置決め基準として回路付サスペンション基板2が実装されるロードビームの正確な位置合わせを確保することができ、さらには、スライダに実装される磁気ヘッドの端子部と、磁気ヘッド側接続端子部17との正確な位置合わせを確保することができる。
【0063】
また、線条部3が樹脂により形成される場合には、図示しないが、例えば、線条部3を、カバー絶縁層14の製造工程において、カバー絶縁層14とともに、カバー絶縁層14を形成する樹脂と同様の樹脂によって形成することもできる。
このような線条部3は、例えば、上記したカバー絶縁層14の製造工程において、感光性の合成樹脂を、金属支持基板18およびベース絶縁層12(導体パターン13を含む)の表面全面に塗布し、その後、感光性の合成樹脂を露光および現像して、各線条部3および各カバー絶縁層14にそれぞれ対応するパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させることにより、各カバー絶縁層14と同時に形成される。
【0064】
また、上記の説明においては、線条部3を、金属または樹脂により形成したが、例えば、線条部3を、金属および樹脂により形成することもできる。
図7は、図3に示す回路付サスペンション基板集合体シート1の他の実施形態(線条部3が、樹脂と、樹脂の上面に積層される金属とによって形成される形態)の断面図を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、図7において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
この回路付サスペンション基板集合体シート1においては、線条部3が、ベース絶縁層12を形成する樹脂と同様の樹脂と、その樹脂の上面に積層される導体パターン13を形成する金属と同様の金属とによって形成される。
このような線条部3は、例えば、上記したベース絶縁層12の製造工程において、感光性の合成樹脂を、金属支持基板18の表面全面に塗布し、その後、感光性の合成樹脂を露光および現像して、各線条部3および各ベース絶縁層12にそれぞれ対応するパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させることにより、各ベース絶縁層12および各線条部3に対応するパターンで樹脂を形成する。
【0066】
さらにその後、上記した導体パターン13の製造工程において、上記したアディティブ法により、導体パターン13と同時に、線条部3に対応するパターンで形成された樹脂の上面に、金属を積層する。
これにより、樹脂および金属が順次積層された線条部3を形成することができる。
この回路付サスペンション基板集合体シート1では、線条部3が、樹脂および金属から形成されているため、回路付サスペンション基板集合体シート1の剛性を、より一層向上させることができる。
【0067】
そのため、回路付サスペンション基板2の製造時に、回路付サスペンション基板2の変形が生じることを、より一層防止し、優れた精度で位置決め孔7、スリット部8および隙間溝9を形成し、回路付サスペンション基板2の外形を形成することができる。
なお、線条部3が、樹脂および金属により形成される場合には、図示しないが、例えば、線条部3に対応するパターンで、導体パターン13を形成するとともに金属を形成し、その後、その金属の上面に、カバー絶縁層14を形成するとともに樹脂を形成することにより、金属および樹脂が順次積層された線条部3を形成することもできる。さらには、例えば、線条部3に対応するパターンで、ベース絶縁層12を形成するとともに樹脂を形成し、その樹脂の上に、導体パターン13を形成するとともに金属を形成し、その後、その金属の上に、カバー絶縁層14を形成するとともに樹脂を形成し、樹脂、金属および樹脂が順次積層された線条部3を形成することもできる。
【0068】
また、上記の説明においては、各線条部3における各交差角αを90°としたが、各交差角αは、任意の角度に設定することができる。
図8は、図2に示す回路付サスペンション基板集合体シート1の他の実施形態(各線条部3における交差角αが、143°である形態)の断面図を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、図8において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
この回路付サスペンション基板集合体シート1では、各線条部3が、回路付サスペンション基板2の長手方向、および、回路付サスペンション基板2の長手方向と直交する方向の両方向と交差する方向に沿って配置されている(具体的には、各線条部3の各交差角αが143°となるように形成されている。)。
この回路付サスペンション基板集合体シート1においては、各線条部3における各交差角αが、上記の角度に設定されるため、保護シートの張力によって生じる負荷(以下、単に負荷という場合がある。)の方向性によらず、回路付サスペンション基板2に変形が生じることを防止することができる。
【0070】
すなわち、例えば、導体パターン13を形成する工程、および、金属支持基板18を開口する工程において、保護シートを積層する場合には、図8(a)および(b)に示すように、導体パターン13を形成する工程における負荷(以下、負荷F1とする。)と、金属支持基板18を開口する工程における負荷(以下、負荷F2とする。)とは、様々な方向に沿って生じる。
【0071】
そのため、導体パターン13を形成する工程、および、金属支持基板18を開口する工程において、保護シートを積層する場合には、負荷F1および負荷F2が同一の方向から付与される場合(図8(a)参照)と、負荷F1および負荷F2が互いに異なる方向から付与される場合(図8(b)参照)とがある。なお、説明を簡略化するため、図8(a)および(b)においては、負荷F1および負荷F2を、下側の回路付サスペンション基板2側にのみ記載している。
【0072】
例えば、負荷F1と負荷F2とが互いに同一の方向から付与される回路付サスペンション基板2(図8(a)参照)においては、負荷が一方向のみから付与されるため、回路付サスペンション基板2の変形が発生しやすくなる場合がある。
このような場合において、各交差角αが上記の範囲に設定されていれば、負荷F1と負荷F2とが互いに同一の方向から付与される場合における回路付サスペンション基板2の変形を、良好に防止することができる。
【0073】
また、例えば、負荷F1と負荷F2とが互いに異なる方向から付与される回路付サスペンション基板2(図8(b)参照)においては、負荷が多方向から付与されるため、この場合においても、回路付サスペンション基板2の変形が発生しやすくなる場合がある。
このような場合において、各交差角αが上記の範囲に設定されていれば、負荷F1と負荷F2とが互いに異なる方向から付与される場合においても、回路付サスペンション基板2の変形を良好に防止することができる。
【0074】
そのため、各交差角αを上記の範囲に設定することにより、負荷F1と負荷F2とが互いに異なる方向から付与される場合の回路付サスペンション基板2の変形を防止するとともに、負荷F1と負荷F2とが互いに同一の方向から付与される場合の回路付サスペンション基板2の変形を、より一層防止することができる。
また、上記の説明においては、各線条部3における各交差角αを、各回路付サスペンション基板2の間において、それぞれ同一としたが、例えば、各交差角αは、各回路付サスペンション基板2の間において、それぞれ異なっていてもよい。
【0075】
図9は、図2に示す回路付サスペンション基板集合体シート1の他の実施形態(各線条部3における交差角αが、各回路付サスペンション基板2の間において、それぞれ異なっている形態)の断面図を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、図9において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
この回路付サスペンション基板集合体シート1においては、ある回路付サスペンション基板2の間では、各線条部3が一定の交差角α(例えば、143°)で形成される一方、別の回路付サスペンション基板2の間では、各線条部3が上記とは異なる交差角α(例えば、37°)で形成されている。
【0076】
この回路付サスペンション基板集合体シート1においては、各線条部3における各交差角αが、適宜選択されるため、任意の方向に対する回路付サスペンション基板集合体シート1の剛性を向上させることができる。
また、上記の説明においては、各線条部3における各交差角αを、ある回路付サスペンション基板2の間において、それぞれ同一とした(すなわち、ある回路付サスペンション基板2の間において、各線条部3を平行に配置した)が、例えば、各交差角αは、ある回路付サスペンション基板2の間において、それぞれ異なっていてもよい。
【0077】
図10は、図2に示す回路付サスペンション基板集合体シート1の他の実施形態(各線条部3における交差角αが、ある回路付サスペンション基板2の間において、それぞれ異なっている形態)の断面図を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、図9において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
この回路付サスペンション基板集合体シート1においては、ある回路付サスペンション基板2の間において、各線条部3が一定の交差角αで形成されておらず、それぞれ異なった交差角αで形成されている。
【0078】
すなわち、ある回路付サスペンション基板2の間において、例えば、いくつかの線条部3は、交差角αが37°となるように形成される一方、その他の線条部3は、交差角αが127°となるように形成されている。
この回路付サスペンション基板集合体シート1においては、各線条部3における各交差角αが、適宜選択されるため、任意の方向に対する回路付サスペンション基板集合体シート1の剛性を向上させることができる。
<評価>
回路付サスペンション基板集合体シート1に対して特定応力の負荷を付与した場合における、回路付サスペンション基板2の変形度合いを、コンピュータシミュレーションにより測定した。
【0079】
なお、コンピュータシミュレーションにおいては、負荷F1(導体パターン13を形成する工程における負荷)および負荷F2(金属支持基板18を開口する工程における負荷)を想定し、負荷F1および負荷F2が同一の方向から付与される場合(図8(a)参照)と、負荷F1および負荷F2が互いに異なる方向から付与される場合(図8(b)参照)とのそれぞれについて、回路付サスペンション基板2の変形度合いを測定した。
【0080】
また、測定は、各線条部3を形成せずに製造した回路付サスペンション基板集合体シート1(以下、回路付サスペンション基板集合体シートAとする。)、交差角αが143°となり、各回路付サスペンション基板2の長手方向に沿う直線と各線条部3の長手方向に沿う直線とが交差する角の二等分線が、回路付サスペンション基板集合体シート1の長手方向と平行になるように製造した回路付サスペンション基板集合体シート1(以下、回路付サスペンション基板集合体シートBとする。)、および、交差角αが90°となり、各回路付サスペンション基板2の長手方向に沿う直線と各線条部3の長手方向に沿う直線とが交差する角の二等分線が、回路付サスペンション基板集合体シート1の長手方向と平行になるように製造した回路付サスペンション基板集合体シート1(以下、回路付サスペンション基板集合体シートCとする。)のそれぞれについて行なった。
(1)負荷F1および負荷F2が同一の方向から付与される場合
負荷F1および負荷F2を、図8(a)に示すように同一方向から付与したときの、回路付サスペンション基板集合体シートA(線条部なし)における回路付サスペンション基板2の歪みが0.071°となるように設定し、同一の負荷F1および負荷F2を付与した場合の、回路付サスペンション基板集合体シートB(交差角α:143°)および回路付サスペンション基板集合体シートC(交差角α:90°)における回路付サスペンション基板2の歪みを測定した。
【0081】
その結果、回路付サスペンション基板集合体シートB(交差角α:143°)では、回路付サスペンション基板2の歪みが0.057°であり、変形量が19.7%低減されていた。
また、回路付サスペンション基板集合体シートC(交差角α:90°)では、回路付サスペンション基板2の歪みが0.064°であり、変形量が9.9%低減されていた。
(2)負荷F1および負荷F2が互いに異なる方向から付与される場合
負荷F1および負荷F2を、図8(b)に示すように互いに異なる方向から付与したときの、回路付サスペンション基板集合体シートA(線条部なし)における回路付サスペンション基板2の歪みが−0.073°となるように設定し、同一の負荷F1および負荷F2を付与した場合の、回路付サスペンション基板集合体シートB(交差角α:143°)および回路付サスペンション基板集合体シートC(交差角α:90°)における回路付サスペンション基板2の歪みを測定した。
【0082】
その結果、回路付サスペンション基板集合体シートB(交差角α:143°)では、回路付サスペンション基板2の歪みが−0.057°であり、変形量が21.9%低減されていた。
また、回路付サスペンション基板集合体シートC(交差角α:90°)では、回路付サスペンション基板2の歪みが−0.056°であり、変形量が23.3%低減されていた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の配線回路基板集合体シートの一実施形態である回路付サスペンション基板集合体シートを示す平面図を示す。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板集合体シートの要部拡大平面図を示す。
【図3】図2に示すA−A線の断面図を示す。
【図4】回路付サスペンション基板集合体シートの製造工程を示す、工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、金属支持基板の表面に、ベース絶縁層を積層する工程、(c)は、ベース絶縁層の表面に導体パターンを形成するとともに、金属支持基板の表面に線条部を形成する工程、(d)は、ベース絶縁層および導体パターンの表面にカバー絶縁層を形成する工程、(e)は、金属支持基板を開口する工程を示す。
【図5】ウエットエッチングにより金属支持基板を開口する工程を示す工程図であって、(a)は、図4(d)に示す金属支持基板の上面全面および下面全面に、フォトレジストを形成する工程、(b)は、フォトレジストを、フォトマスクを介して露光する工程、(c)は、現像により、エッチングレジストを形成する工程を示す。
【図6】図3に示す回路付サスペンション基板集合体シートの他の実施形態(線条部が樹脂によって形成される形態)の断面図を示す。
【図7】図3に示す回路付サスペンション基板集合体シートの他の実施形態(線条部が、樹脂と、樹脂の上面に積層される金属とによって形成される形態)の断面図を示す。
【図8】図2に示す回路付サスペンション基板集合体シートの他の実施形態(各線条部における交差角αが、143°である形態)の断面図を示す。
【図9】図2に示す回路付サスペンション基板集合体シートの他の実施形態(各線条部における交差角αが、各回路付サスペンション基板の間において、それぞれ異なっている形態)の断面図を示す。
【図10】図2に示す回路付サスペンション基板集合体シートの他の実施形態(各線条部における交差角αが、ある回路付サスペンション基板の間において、それぞれ異なっている形態)の断面図を示す。
【符号の説明】
【0084】
1 回路付サスペンション基板集合体シート
2 回路付サスペンション基板
3 線条部
4 支持シート
5 外部端子部
6 ジンバル
7 位置決め孔
8 スリット部
10 本体部
13 導体パターン
15 信号配線
16 外部側接続端子部
17 磁気ヘッド側接続端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を隔てて配置される複数の配線回路基板と、
各前記配線回路基板間に、前記配線回路基板の長手方向と交差する方向に沿って延びる複数の線条部とを備えていることを特徴とする、配線回路基板集合体シート。
【請求項2】
前記線条部が、金属および/または樹脂から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板集合体シート。
【請求項3】
各前記線条部が、互いに間隔を隔てて、平行に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板集合体シート。
【請求項4】
前記配線回路基板および前記線条部が、それらの長手方向に沿う直線が交差する角の二等分線が前記配線回路基板集合体シートの長手方向と平行になるように、配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線回路基板集合体シート。
【請求項5】
前記線条部が、前記配線回路基板の長手方向、および、前記配線回路基板の長手方向と直交する方向の両方向と交差する方向に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の配線回路基板集合体シート。
【請求項6】
各前記線条部が、各前記配線回路基板間の全体にわたって配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の配線回路基板集合体シート。
【請求項7】
前記配線回路基板が、回路付サスペンション基板であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の配線回路基板集合体シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−147251(P2010−147251A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322894(P2008−322894)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】