説明

配線基板およびそれを用いた実装構造体

【課題】 本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板およびそれを用いた実装構造体を提供するものである。
【解決手段】本発明の一形態にかかる配線基板3は、ネック構造11を介して互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子12と、該複数の第1無機絶縁粒子12同士の間隙に配された樹脂部材13とを有する絶縁層9を備えている。また、本発明の一形態にかかる実装構造体1は、上記配線基板3と、該配線基板3に実装された電子部品2とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器およびその周辺機器)等に使用される配線基板およびそれを用いた実装構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
特許文献1には、無機フィラーが含有されているエポキシ樹脂組成物が硬化されて形成された絶縁層を有するプリント回路基板が記載されている。
【0004】
このように絶縁層が樹脂材料からなるプリント回路基板は、一般的に、電子部品との熱膨張率の差が大きいため、電子部品の実装時や作動時等に熱が印加された場合に、プリント回路基板と電子部品との接続部に熱応力が発生し、電子部品の微細な電極に該熱応力が印加されて破壊されることがあり、ひいては実装構造体の電気的信頼性が低下しやすくなる。
【0005】
一方、特許文献2には、半導体材料またはガラスからなる基体を有するインターポーザーと、該インターポーザーに搭載された電子素子とを備えた実装構造体が記載されている。
【0006】
このように基体が半導体材料またはガラスからなるインターポーザーは、一般的に、樹脂材料からなるプリント回路基板と比較して、電子素子との熱膨張率の差が小さく、インターポーザーと電子素子との接続部に生じる熱応力を低減し、ひいては電子素子の電極に印加される熱応力を低減することができる。
【0007】
しかしながら、このような半導体材料またはガラスからなる基体は、一般的に、割れやすいことから、熱応力や外部応力がインターポーザーに印加された場合に、基体にクラックが生じやすくなる。その結果、該クラックが配線に達することによって、該配線に断線が生じやすくなり、ひいてはインターポーザーの電気的信頼性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−137513号公報
【特許文献2】特開2004−311574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板およびそれを用いた実装構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態にかかる配線基板は、ネック構造を介して互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子と、該複数の第1無機絶縁粒子同士の間隙に配された樹脂部材とを有する絶縁層を備えている。
【0011】
本発明の一形態にかかる実装構造体は、上記配線基板と、該配線基板に実装された電子部品とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一形態にかかる配線基板によれば、ネック構造を介して互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子によって絶縁層の熱膨張率を低減するとともに、該複数の第1無機絶縁粒子同士の間隙に配された樹脂部材によって絶縁層のクラックを低減することができ、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる実装構造体を厚み方向に切断した断面図であり、図1(b)は、図1(a)のR1部分を拡大して示した断面図である。
【図2】図2(a)は、図1(b)のR2部分を拡大して示した断面図であり、図2(b)は、2つの第1無機絶縁粒子が接続した様子を模式的に現したものである。
【図3】図3(a)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図3(b)は、図3(a)のR3部分を拡大して示した断面図である。
【図4】図4(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であって、図3(a)のR3部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図5】図5(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であって、図3(a)のR3部分に相当する部分を拡大して示した断面図であり、図5(c)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図6】図6(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図6(c)は、図6(b)のR4部分を拡大して示した断面図である。
【図7】図7(a)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図7(b)は、図7(a)のR5部分を拡大して示した断面図であり、図7(c)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であって、図7(a)のR5部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図8】図8(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板としてインターポーザーを含む実装構造体を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実装構造体)
図1(a)に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器などの電子機器に使用されるものであり、例えばマザーボード等の外部回路基板に電気的に接続される。この実装構造体1は、厚み方向に沿って交互に積層された複数の電子部品2および複数のインターポーザー3を含んでおり、各電子部品2は、半田等の導電材料からなるバンプ4を介してインターポーザー3に実装されるとともに、該インターポーザー3を介して互いに電気的に接続されている。このように電子部品2を3次元実装することによって、実装構造体1を小型化することともに信号伝送特性を高めることができる。
【0016】
(電子部品)
電子部品2は、例えばCPU若しくはMPU等のロジック系またはメモリ系の半導体素子を用いることができ、本実施形態においては、メモリ系の半導体素子を用いることが望ましい。メモリ系の半導体素子は、ロジック系の半導体素子と比較して、パッド数が少なく回路の微細化が緩和されているため、電気的接続信頼性を維持しつつ3次元実装することができる。
【0017】
この電子部品2は、母材が例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料を含んでおり、厚みが例えば0.05mm以上0.8mm以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば3ppm/℃以上5ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば100GPa以上150GPa以下に設定されている。
【0018】
なお、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA装置を用いて、JISK7197‐1991に準じた測定方法により測定され、電子部品2のヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。以下、各部材の熱膨張率およびヤング率は、上述した電子部品2と同様に測定される。
【0019】
また、インターポーザー3同士の間に介された電子部品2は、厚み方向に貫通する貫通電極5を含んでいる。この貫通電極5は、該電子部品2を介して隣接したインターポーザー3同士を電気的に接続するものであり、例えば銅、銀、金、アルミニウムまたはニッケル等の導電材料により形成することができる。
【0020】
(インターポーザー)
一方、インターポーザー3は、隣接する電子部品2同士の接続部材または電子部品2と外部回路基板との接続部材として機能するものであり、厚み方向に沿って貫通孔Pが形成された基体6と、基体6上に配され、平面方向および厚み方向に互いに離間した複数の導電層7と、貫通孔Pに配され、導電層7に電気的に接続した貫通導体8とを含んでおり、導電層7および貫通導体8は、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線を構成している。このインターポーザー3は、導電層7および貫通導体8によって、厚み方向に離間した電子部品2同士または電子部品2と外部回路基板とにおいて、平面視における配置の異なるパッド同士を電気的に接続することができる。
【0021】
基体6は、インターポーザー3の支持部材および絶縁部材として機能するものであり、絶縁層9と、該絶縁層9上に配されるとともに該絶縁層9と導電層7との間に介された樹脂層10とを含んでいる。
【0022】
絶縁層9は、基体6を高剛性かつ低熱膨張とする機能を有しており、図1(b)ないし図2(a)に示すように、ネック構造11を介して互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子12と、該複数の第1無機絶縁粒子12同士の間隙Vに配された樹脂部材13と、間隙Vにて樹脂部材13に被覆された、第1無機絶縁粒子12よりも粒径の小さい第2無機絶縁粒子14とを含んでいる。この絶縁層9は、厚みが例えば30μm以上200μm以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が0ppm/℃以上7ppm/℃以下に設定され、平面方向への熱膨張率が電子部品2の0.1倍以上2倍以下に設定され、ヤング率が例えば10GPa以上45GPa以下に設定され、ヤング率が電子部品2の例えば0.08倍以上0.35倍以下に設定されている。
【0023】
ネック構造11は、隣接した第1無機絶縁粒子12同士の接続箇所における構造であり、互いに接続した第1無機絶縁粒子12それぞれの外周に部分的に形成されている。このネック構造11は、互いに接続した第1無機絶縁粒子12の境界に向かって幅が小さくなる括れた形状を有しており、例えば、ネック構造11における最小幅Wは、該ネック構造
11を介して互いに接続した第1無機絶縁粒子12それぞれの粒径Dよりも小さくなっている。このネック構造11における最小幅Wは、該ネック構造11を介して互いに接続した第1無機絶縁粒子12それぞれの粒径Dの例えば2%以上50%以下に設定されている。
【0024】
なお、第1無機絶縁粒子12の粒径は、絶縁層9を厚み方向に切断した断面にて、第1無機絶縁粒子12を取り囲む複数の間隙Vと該第1無機絶縁粒子12との境界を円周の一部とする仮想円Cの直径を測定することによって、測定される。
【0025】
第1無機絶縁粒子12は、樹脂材料と比較して低熱膨張かつ高剛性の無機絶縁材料によって形成され、絶縁層9を低熱膨張かつ高剛性とする機能を有している。この第1無機絶縁粒子12は、酸化ケイ素を例えば90重量%以上含む無機絶縁材料により形成することができ、なかでも、酸化ケイ素を99重量%以上100重量%未満含む無機絶縁材料を用いることが望ましい。酸化ケイ素を90重量%以上100重量%未満含む無機絶縁材料を用いる場合、該無機絶縁材料は、酸化ケイ素の他に、例えば酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料を含んでも構わない。
【0026】
本実施形態において、第1無機絶縁粒子12を構成する酸化ケイ素は、アモルファス(非晶質)状態である。その結果、第1無機絶縁粒子12の結晶構造に起因した熱膨張率の異方性を低減することができるため、絶縁層9に熱が印加された場合に、加熱後の冷却の際に絶縁層9の収縮を厚み方向および平面方向にてより均一にすることができ、ひいてはインターポーザー3と電子部品2との電気的接続信頼性を高めることができる。
【0027】
このアモルファス状態である酸化ケイ素は、結晶相の領域が例えば10体積%未満に設定されており、なかでも5体積%未満に設定されていることが望ましい。なお、無機絶縁材料における結晶相領域の体積比は、以下のように測定される。まず、100%結晶化した試料粉末と非晶質粉末とを異なる比率で含む複数の比較試料を作製し、該比較試料をX
線回折法で測定することにより、該測定値と結晶相領域の体積比との相対的関係を示す検量線を作成する。次に、測定対象である調査試料をX線回折法で測定し、該測定値と検量
線とを比較して、該測定値から結晶相領域の体積比を算出することにより、調査資料の結晶相領域の体積比が測定される。
【0028】
さらに、本実施形態において、第1無機絶縁粒子12は、球状である。その結果、第1無機絶縁粒子12の充填密度を高め、第1無機絶縁粒子12同士をより強固に接続させることができ、絶縁層9の剛性を高めることができる。
【0029】
また、第1無機絶縁粒子12は、粒径が例えば0.02μm以上3μm以下に設定され、絶縁層9における含有量が例えば45体積%以上97体積%以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上10ppm/℃以下に設定され、ヤング率が10GPa以上45GPa以下に設定されている。また、第1無機絶縁粒子12の粒径は、互いに等しいことが望ましく、例えば、絶縁層9を厚み方向に切断した断面にて、第1無機絶縁粒子12の粒径は、他の第1無機絶縁粒子12の粒径の例えば0.9倍以上1.1倍以下に設定されていることが望ましい。
【0030】
なお、絶縁層9における第1無機絶縁粒子12の含有量(体積%)は、絶縁層9の断面において、絶縁層9に占める第1無機絶縁粒子12の面積比率(面積%)の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより測定される。
【0031】
この第1無機絶縁粒子12同士の間隙Vに配された樹脂部材13は、無機絶縁材料と比
較して低弾性の樹脂材料によって形成され、後述するように、絶縁層9のクラックを低減する機能を有している。この樹脂部材13は、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂により形成することができる。
【0032】
また、樹脂部材13は、絶縁層9における含有量が例えば3体積%以上55体積%以下に設定され、絶縁層9における含有量が第1無機絶縁粒子12の例えば0.03倍以上0.22倍以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上7ppm/℃以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が第1無機絶縁粒子12の例えば1倍以上10倍以下に設定され、ヤング率が例えば0.01GPa以上2GPa以下に設定され、ヤング率が例えば第1無機絶縁粒子12の例えば0.014倍以上0.03倍以下に設定されている。なお、樹脂部材13の絶縁層9における含有量は、第1無機絶縁粒子12と同様の方法で測定される。
【0033】
この樹脂部材13に被覆された第2無機絶縁粒子14は、樹脂材料と比較して低熱膨張かつ高剛性の無機絶縁材料によって形成され、樹脂部材13の熱膨張率を低減して第1無機絶縁粒子12の熱膨張率に近づける機能を有している。この第2無機絶縁粒子14は、第1無機絶縁粒子12と同様の材料により形成することができ、第1無機絶縁粒子12と同様の熱膨張率およびヤング率を有する。また、第2無機絶縁粒子14は、粒径が例えば5nm以上150nm以下に設定され、粒径が第1無機絶縁粒子12の例えば0.25倍以上0.75倍以下に設定されて、樹脂部材13内における含有量が例えば0.1体積%以上10体積%以下に設定されている。
【0034】
なお、第2無機絶縁粒子14の粒径は、樹脂部材13の断面にて各粒子の最大径を測定することにより測定される。また、樹脂部材13における第2無機絶縁粒子14の含有量(体積%)は、樹脂部材13の断面において、樹脂部材13に占める第2無機絶縁粒子14の面積比率(面積%)の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより測定される。
【0035】
一方、絶縁層9と導電層7との間に介された樹脂層10は、無機絶縁材料と比較して低弾性の樹脂材料によって形成され、絶縁層9と導電層7との接続強度を高める機能を有するものである。この樹脂層10は、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネート樹脂またはポリイミド樹脂等の樹脂材料により形成することができる。また、樹脂層10は、難燃性を高めるために、酸化ケイ素等の無機絶縁材料からなる第3無機絶縁粒子を含んでいても構わない。この第3無機絶縁粒子は、粒径が例えば0.01μm以上0.5μm以下に設定されており、樹脂材料内における含有量が例えば0.3体積%以上10体積%以下に設定されている。また、第3無機絶縁粒子の粒径は、第2無機絶縁粒子14の粒径と同じであることが望ましく、この場合、第3無機絶縁粒子の粒径は、第2無機絶縁粒子14の粒径の例えば0.9倍以上1.1倍以下に設定されている。なお、第3無機絶縁粒子の粒径および含有量は、第2無機絶縁粒子14と同様に測定される。
【0036】
また、樹脂層10は、厚みが例えば0.5μm以上3μm以下に設定され、厚みが絶縁層9の例えば0.01倍以上0.1倍以下に設定され、樹脂層10厚み方向および平面方向への熱膨張率が50ppm/℃以上120ppm/℃以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が絶縁層9の例えば4倍以上50倍以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が樹脂部材13の例えば1倍以上4倍以下に設定され、ヤング率が例えば0.05GPa以上5GPa以下に設定され、ヤング率が絶縁層9の例えば0.001倍以上0.1倍以下に設定され、ヤング率が樹脂部材13の例えば0.1倍以上0.8倍以下に設定されている。
【0037】
導電層7は、電子部品2との接続パッドとしての機能や配線としての機能を有している
。この導電層7は、例えば銅、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料により形成することができる。また、導電層7は、厚み方向および平面方向への熱膨張率が12ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が絶縁層9の2.5倍以上20倍以下に設定され、ヤング率が80GPa以上200GPa以下に設定されている。
【0038】
貫通導体8は、厚み方向に離間した導電層7同士を電気的に接続する機能を有している。この貫通導体8は、例えば銅、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロムの導電材料により形成することができる。また、貫通導体8は、幅が一端部から他端部に向かって小さくなる柱状(テーパー状)に形成されており、幅が例えば5μm以上50μm以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が12ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が絶縁層9の0.05倍以上0.5倍以下に設定され、ヤング率が80GPa以上200GPa以下に設定されている。
【0039】
また、本実施形態において、貫通導体8は、貫通孔Pに充填されている。その結果、貫通孔Pの直径をより小さくし微細化した場合においても、貫通導体8における断線を低減することができる。なお、貫通導体8は、貫通孔Pに充填されずに貫通孔Pの内壁を被覆していても構わない。
【0040】
(絶縁層)
以下、本実施形態の絶縁層9について、詳細に説明する。
【0041】
本実施形態において、複数の第1無機絶縁粒子12は、ネック構造11を介して互いに接続している。その結果、単に無機絶縁粒子を樹脂材料内に分散させた場合と比較して、絶縁層9に応力や熱が印加された際に、該接続によって個々の第1無機絶縁粒子12の動きが拘束されることから、絶縁層9を良好に低熱膨張かつ高剛性とすることができる。それ故、インターポーザー3と電子部品2との熱膨張率の差を低減することによって、バンプ4に接続された電子部品2のパッドに印加される熱応力を低減し、ひいては電気的に信頼性に優れた実装構造体1を得ることができる。
【0042】
また、複数の第1無機絶縁粒子12がネック構造11を介して互いに接続していることから、単に無機絶縁粒子を樹脂材料内に分散させた場合と比較して、絶縁層9における第1無機絶縁粒子12の充填密度を容易に高めることができるため、絶縁層9をより低熱膨張かつ高剛性とすることができる。
【0043】
また、複数の第1無機絶縁粒子12同士が接続して無機絶縁構造体をなしているため、ガラスクロスを用いた場合と比較して、絶縁層9の凹凸を低減することができ、該凹凸による導電層7の一部への応力集中を緩和し、ひいては導電層7の断線を低減することができる。このように導電層7の断線を低減することによって、電気的信頼性を担保しつつ、導電層7を微細化することができる。また、基体6の平坦性を高めることによって、バンプ4が微細に形成されていたとしても、バンプ4による電子部品2とインターポーザー3との接続信頼性を高めることができる。
【0044】
さらに、第1無機絶縁粒子12の外周に部分的に形成されるネック構造11を介して、第1無機絶縁粒子12同士が互いに接続しているため、第1無機絶縁粒子12およびネック構造11に取り囲まれた領域に間隙Vが良好に形成される。
【0045】
そして、本実施形態において、この間隙Vには、樹脂部材13が配されている。この樹脂部材13は、第1無機絶縁粒子12と比較して低弾性であることから、絶縁層9に応力が印加された場合に、隣接する第1無機絶縁粒子12の双方に接着しつつ該応力に応じて
変形することによって、該第1無機絶縁粒子12の接続箇所に集中しやすい応力を分散させることができるため、互いに接続した第1無機絶縁粒子12におけるクラックの発生を低減して、絶縁層9におけるクラックの発生を低減することができる。したがって、該クラックに起因した導電層7の断線を低減することができ、ひいては電気的信頼性に優れた実装構造体1を得ることができる。
【0046】
さらに、樹脂部材13は、第1無機絶縁粒子と比較して低弾性であることから、クラックが伸長しにくいため、絶縁層9に応力が印加されてクラックが生じたとしても、該クラックの伸長を樹脂部材13によって阻止したり、迂回させたりすることができる。したがって、該クラックに起因した導電層7の断線を低減することができる。
【0047】
また、間隙Vは、開気孔であるとともに3次元網目状構造をなしている。その結果、間隙Vに配された樹脂部材13も3次元網目状構造をなすため、絶縁層9全体において、クラックを効果的に低減することができる。
【0048】
一方、本実施形態において、絶縁層9は、貫通孔Pの内壁に第1無機絶縁粒子12からなる第1突出部15を有し、該第1突出部15は、貫通導体8に覆われている。その結果、アンカー効果によって、絶縁層9と貫通導体8との接続強度を高めることができる。それ故、電子部品2よりも熱膨張率が大きくなりやすい導電材料からなる貫通導体8と熱膨張率を電子部品2に近づけた絶縁層9との間に生じやすい熱膨張率の違いに起因して、熱応力が絶縁層9と貫通導体8との間に印加された場合に、絶縁層9と貫通導体8との剥離を低減し、該貫通導体8の断線を低減することができる。
【0049】
さらに、第1突出部15を構成する第1無機絶縁粒子12は、他の第1無機絶縁粒子12に接続しているため、該第1突出部と貫通孔Pの内壁との接続強度を高め、上述したアンカー効果を高めることができる。
【0050】
この第1突出部15の突出量は、貫通孔Pの内壁と貫通導体8との密着性の観点から、第2突出部17の突出量よりも大きいことが望ましい。
【0051】
また、本実施形態において、絶縁層9は、該第1突出部15同士の間に第1凹部16を有しており、該第1凹部16には貫通導体8の一部が充填されている。その結果、上述したアンカー効果を高めることができる。
【0052】
さらに、本実施形態において、第1凹部16内には樹脂部材13の一部が配されており、第1凹部16において、樹脂部材13と貫通導体8とが当接している。その結果、無機絶縁材料と比較して導電材料との接続強度の高い樹脂材料からなる樹脂部材13が貫通導体8に接続することによって、絶縁層9と貫通導体8との接続強度を高めることができる。なお、この樹脂部材13の一部は、例えば第1凹部16の底部に配されている。
【0053】
一方、本実施形態において、絶縁層9は、樹脂層10側の主面に第1無機絶縁粒子12からなる第2突出部17を有し、該第2突出部17は、樹脂層10に覆われている。その結果、アンカー効果によって、絶縁層9と樹脂層10との接続強度を高めることができ、絶縁層9と樹脂層10との剥離を低減することができる。さらに、第2突出部17を構成する第1無機絶縁粒子12は、他の第1無機絶縁粒子12に接続しているため、上述したアンカー効果を高めることができる。また、絶縁層9は、該第2突出部17同士の間に第2凹部18を有しており、該第2凹部18には樹脂層10の一部が充填されている。その結果、上述したアンカー効果を高めることができる。
【0054】
一方、本実施形態において、樹脂部材13は、樹脂層10よりも熱膨張率が小さい。そ
の結果、樹脂部材13の熱膨張率を第1無機絶縁粒子12に近づけることによって、第1無機絶縁粒子12同士の間隙Vにおける第1無機絶縁粒子12と樹脂部材13との剥離を低減し、ひいては該剥離に起因した絶縁層9におけるクラックの発生を低減することができる。
【0055】
さらに、本実施形態において、樹脂部材13は、第1無機絶縁粒子12よりも粒径の小さい第2無機絶縁粒子14を含んでいる。その結果、第1無機絶縁粒子12よりも粒径の小さい第2無機絶縁粒子14を間隙Vに容易に配することができ、該第2無機絶縁粒子14によって樹脂部材13の熱膨張率を低減することができる。
【0056】
また、樹脂部材13は、シラノール基を有する樹脂材料を含むことが望ましい。その結果、酸化ケイ素を含有する第1無機絶縁粒子12と樹脂部材13との接続強度を高め、第1無機絶縁粒子12と樹脂部材13との剥離を低減することができる。なお、樹脂層10は、シラノール基を有する樹脂材料を含まないことが望ましく、これにより、樹脂層10をより低弾性とすることができる。
【0057】
一方、本実施形態において、樹脂層10は、絶縁層9と導電層7との間に介在されており、絶縁層9と比較して、ヤング率が小さい。その結果、ヤング率が小さいことから弾性変形しやすい樹脂層10が変形することにより、絶縁層9および導電層7との熱膨張率の違いに起因した応力を緩和し、絶縁層9と導電層7との剥離を低減することができる。また、樹脂材料を含むことから絶縁層9よりも熱膨張率が大きくなりやすい樹脂層10のヤング率を小さくすることにより、基体6の熱膨張率に対する樹脂層10の寄与を小さくし、基体6の熱膨張率を低減することができる。
【0058】
さらに、本実施形態において、樹脂層10は、絶縁層9と比較して、厚みが小さい。その結果、樹脂層10を薄くすることによって、樹脂層10をより変形しやすくし、絶縁層9および導電層7との熱膨張率の違いに起因した応力を良好に緩和することができる。また、樹脂層10の厚みを小さくすることにより、基体6の熱膨張率に対する樹脂層10の寄与を小さくし、基体6の熱膨張率を低減することができる。なお、樹脂層10は、厚みおよびヤング率が導電層7よりも小さく設定されていることが望ましい。
【0059】
また、本実施形態において、樹脂層10は、導電層7と貫通導体8との接続部に当接している。それ故、絶縁層9よりも低弾性の樹脂層10が、応力の集中しやすい貫通導体8と導電層7との接続部に当接しているため、該接続部に印加される応力を樹脂層10によって緩和することができ、ひいては貫通導体8と導電層7との断線を低減することができる。特に、応力の集中しやすい貫通導体8の幅が小さい端部において、樹脂層10が導電層7と貫通導体8との接続部に当接していることが望ましい。
【0060】
一方、本実施形態において、樹脂層10は、樹脂部材13よりもヤング率が小さい。その結果、樹脂層10を低弾性とすることによって、絶縁層9と導電層7との剥離をより低減することができる。さらに、上述した如く樹脂部材13の熱膨張率を樹脂層10よりも小さくした場合において、基体6の熱膨張率に対する樹脂層10の寄与をより小さくすることができる。
【0061】
かくして、上述した実装構造体1は、外部回路基板からインターポーザー3を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0062】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図3および図8に基づいて説明する。
【0063】
(インターポーザーの作製)
(1)図3(a)ないし図4(b)に示すように、第1無機絶縁粒子12同士の間隙Vを形成しつつ、ネック構造11を介して第1無機絶縁粒子12同士を互いに接続させる。具体的には、例えば以下のように行う。
【0064】
まず、図3(a)および(b)に示すように、第1無機絶縁粒子12および第1溶剤19を含む第1スラリー20を準備し、第1無機絶縁粒子12を沈降させる。その結果、第1無機絶縁粒子12同士を互いに近接させるとともに、第1無機絶縁粒子12同士の間に間隙Vを形成することができる。この間隙Vは、充填された第1無機絶縁粒子12同士の間に形成されるため、互いに接続した開気孔となる。なお、図において、第1無機絶縁粒子12の沈降物を含む領域を沈降領域21とし、該沈降によって上澄みとなった領域を上澄み領域22とする。
【0065】
次に、図4(a)に示すように、第1スラリー20を乾燥させて第1溶剤19を気化させた後、図4(b)に示すように、第1無機絶縁粒子12を加熱する。その結果、第1無機絶縁粒子12同士の近接箇所にて、第1無機絶縁粒子12を軟化あるいは部分的に溶融させることによって、第1無機絶縁粒子12同士の間にネック構造11を形成するとともに、該ネック構造11を介して第1無機絶縁粒子12同士を接続させることができる。このように第1無機絶縁粒子12を部分的に溶融させてネック構造11を形成していることから、ネック構造11を介して互いに接続した第1無機絶縁粒子12が3次元網目状構造をなすため、開気孔である間隙Vを良好に維持することができる。このように、本工程にて、開気孔の間隙Vを形成することによって、後述する(2)の工程にて、樹脂部材13を間隙Vに良好に配することができる。
【0066】
一方、本実施形態において、第1スラリー20の第1無機絶縁粒子12は、粒径が0.02μm以上3μm以下に設定されている。その結果、粒径を3μm以下にすることによっ
て、第1無機絶縁粒子12の加熱温度が低温であってもネック構造11を形成することができ、ひいては生産性を高くすることができる。さらに、沈降させた第1無機絶縁粒子12同士の近接箇所を増加させて、加熱をした際に第1無機絶縁粒子12同士の接続箇所を増加させることができ、ひいては絶縁層9をより低熱膨張かつ高剛性にすることができる。また、粒径を0.02μm以上にすることによって、沈降時間を短くし、生産性を向上
することができる。
【0067】
また、第1スラリー20の第1溶剤19は、例えばメタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはジメチルアセトアミド等の有機溶剤を含むものを使用することができる。なかでも、メタノール、イソプロパノールまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むものを使用することが望ましい。その結果、スラリーを均一に塗布することができ、かつ、溶剤を効率良く蒸発させることができる。
【0068】
また、第1スラリー20は、第1無機絶縁粒子12を例えば10体積%以上70体積%以下含み、第1溶剤19を例えば40体積%以上30体積%以下含む。
【0069】
一方、本実施形態において、第1無機絶縁粒子12の沈降は、静置、遠心分離または電気泳動によって行う。その結果、第1無機絶縁粒子12を層状に配列しつつ堆積させることによって、沈降領域21における第1無機絶縁粒子12の充填密度を高め、第1無機絶縁粒子12同士をより近接させることができる。それ故、第1無機絶縁粒子12同士の近接箇所を増加させて、第1無機絶縁粒子12同士の接続箇所を増加させることができ、ひ
いては絶縁層9をより低熱膨張かつ高剛性にすることができる。
【0070】
また、第1無機絶縁粒子12の沈降条件は、時間が例えば1時間以上120時間以下に
設定され、温度が例えば15℃以上30℃以下に設定されている。また、層状に配列された第1無機絶縁粒子12は、例えば400層以上1000層以下堆積される。
【0071】
一方、本実施形態において、第1スラリー20の乾燥は、凍結乾燥(フリーズドライ)によって行う。その結果、凝固して流動性が低下した第1溶剤19を昇華させるため、液状で流動性の高い溶剤を蒸発させた場合と比較して、第1溶剤19の気化時における流動を低減することによって、該流動に起因した第1無機絶縁粒子12の配列破壊を低減することができる。それ故、第1無機絶縁粒子12の充填密度を良好に維持することができるため、第1無機絶縁粒子12同士の近接箇所を増加させることができる。
【0072】
また、第1スラリー20の乾燥条件は、時間が例えば30分以上48時間以下に設定され、温度が例えば45℃以上75℃以下に設定されている。
【0073】
一方、本実施形態において、第1無機絶縁粒子12の加熱は、第1無機絶縁粒子12を酸化ケイ素の結晶化開始温度未満の温度で行う。その結果、第1無機絶縁粒子12に含まれる酸化ケイ素の結晶化を低減することができるため、アモルファス状態の割合を高めるとともに、結晶化に伴う相転移によって生じるクラックを低減できる。ここで、上述した如く、第1無機絶縁粒子12の粒径が0.02μm以上3μm以下に設定されていると、酸化ケイ素の結晶化開始温度未満であっても、ネック構造11を良好に形成することができる。なお、結晶化開始温度は、非晶質の無機絶縁材料が結晶化を開始する温度、すなわち、結晶相領域の体積が増加する温度であり、酸化ケイ素の結晶化開始温度は1300℃程度である。
【0074】
さらに、第1無機絶縁粒子12の加熱温度は、700℃以上1100℃以下に設定されていることが望ましい。その結果、第1無機絶縁粒子12の加熱温度が700℃以上であることによって、第1無機絶縁粒子12同士の近接箇所にて第1無機絶縁粒子12を溶融させることができ、さらに、第1無機絶縁粒子12の加熱温度が1100℃以下であることによって、第1無機絶縁粒子12の溶融を該近接箇所にて制限し、ネック構造11および間隙Vの消失を抑制し、さらには間隙Vの閉気孔化を抑制することができる。その結果、開気孔の間隙Vを維持しつつ、ネック構造11を形成することができる。
【0075】
また、第1無機絶縁粒子12の加熱条件は、時間が例えば8時間以上72時間以下に設定され、例えば大気、窒素、アルゴン、真空などの雰囲気で行われる。
【0076】
なお、第1無機絶縁粒子12の粒径、沈降条件または加熱条件、あるいは第1スラリー20の乾燥条件を適宜調節することによって、ネック構造11の数や体積、間隙Vの体積を所望のものとすることができる。例えば、第1無機絶縁粒子12の加熱温度を高めると、個々のネック構造11の体積が大きくなり、間隙Vの体積が小さくなる。
【0077】
(2)図5(a)ないし(c)に示すように、第1無機絶縁粒子12同士の間隙Vに配された樹脂部材13を形成し、絶縁層9を形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0078】
まず、図5(a)に示すように、Aステージの熱硬化性樹脂を含む液状の樹脂部材前駆体13xを、互いに接続した第1無機絶縁粒子12上に塗布し、開気孔である間隙Vに含浸させる。その結果、樹脂部材前駆体13xを間隙Vに配することができる。なお、樹脂部材前駆体13xは、間隙Vが微細かつ3次元網目状構造であることから、気化させる必
要のある溶剤を含まないことが望ましい。
【0079】
次に、図5(b)に示すように、樹脂部材前駆体13xを該熱硬化性樹脂の硬化開始温度以上分解開始温度未満に加熱することによって、樹脂部材前駆体13xを硬化させて樹脂部材13とする。その結果、間隙Vに配された樹脂部材13xを形成することができ、ひいては図5(c)に示した絶縁層9を形成することができる。
【0080】
ここで、樹脂部材前駆体13xを硬化させる際に、樹脂部材前駆体13xが硬化収縮するため、第2突出部18および第2凹部19が形成される。また、間隙V内においても樹脂部材前駆体13xが硬化収縮するため、微細かつ閉気孔の空隙が形成される。その結果、インターポーザー3に熱が印加された際に樹脂部材13が熱膨張したとしても、熱膨張した分が該空隙内に収納されるため、該熱膨張に起因した第1無機絶縁粒子12のクラックを低減することができる。
【0081】
一方、第2無機絶縁粒子14は、以下のようにして間隙Vに配することができる。
【0082】
まず、樹脂部材前駆体13xを間隙Vに含浸させる前に、金属アルコキシドを含む水溶液を間隙Vに含浸させた後、水溶液をアルカリ性の状態としつつ加水分解させることによって、間隙Vに第2無機絶縁粒子14を析出させる。ここで、加水分解をアルカリ性の水溶液で行うことによって、粒子状の第2無機絶縁粒子14を析出させることができる。次に、上述した如く、樹脂部材前駆体13xを間隙Vに含浸させ、樹脂部材前駆体13xを硬化させる。その結果、粒子の目詰まりが起きやすい微細な間隙Vに第2無機絶縁粒子14を良好に配し、樹脂部材13によって第2無機絶縁粒子14を被覆させることができる。
【0083】
(3)図6(a)ないし(c)に示すように、樹脂層10が当接した金属箔7xを準備し、該樹脂層10を介して金属箔7xを絶縁層9に接続させることによって、金属箔7xが両主面に配された基体6を形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0084】
まず、図6(a)に示すように、金属箔7xの一主面にバーコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いて樹脂ワニスを塗布して乾燥させることにより、金属箔7x上に樹脂層10を形成する。なお、本工程にて形成された樹脂層10は、例えばAステージまたはBステージであり、加熱により所望の硬化状態とされている。
【0085】
次に、図6(b)および(c)に示すように、樹脂層10を介して金属箔7xを絶縁層9の両主面に配して積層体を形成し、該積層体を加熱加圧する。その結果、基体6を形成することができる。なお、加熱加圧の際に、樹脂層10は軟化するため、第1突出部15が樹脂層10に覆われるとともに、樹脂層10の一部が第1凹部16内に充填される。
【0086】
(4)図7(a)ないし図8(b)に示すように、基体6を厚み方向に貫通する貫通導体8を形成し、基体6上に導電層7を形成することによって、インターポーザー3を作製する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0087】
まず、図7(a)および(b)に示すように、基体6の一主面に向かって(照射方向L)、炭酸ガスレーザーまたはYAGレーザー等のレーザー光を照射することによって、基体6を厚み方向に貫通する貫通孔Pを形成する。このように形成された貫通孔Pは、基体6の一主面から他主面に向って幅が狭くなる形状となる。このレーザー光照射の際には、基体6の一主面に配された金属箔7xは貫通させるが、基体6の他主面に配された金属箔7xは貫通させずに残存させ、該金属箔7xの一部を貫通孔P内に露出させる。
【0088】
次に、図7(c)に示すように、プラズマ処理、あるいは過マンガン酸水溶液を用いて、貫通孔Pの内壁に配された樹脂部材13をエッチングすることによって、第1突出部15および第1凹部16を形成する。このように第1突出部15および第1凹部16を形成しているため、エッチング条件を調整することによって、容易に第1突出部15の突出量を調節することができる。なお、樹脂部材13をエッチングする際には、樹脂材料からなる樹脂層10もエッチングされる。また、樹脂部材13は、開気孔である間隙Vに充填されているため、第2凹部18の底部には、樹脂部材13の一部が配されることとなる。
【0089】
次に、図8(a)に示すように、電気めっき法を用いて、該金属箔7xの露出面に導電材料を被着させて、該導電材料を貫通孔P内に充填することにより、貫通導体8を形成する。なお、導電材料を貫通孔P内に充填する際に、第2突出部17が導電材料に覆われるとともに、第2凹部18内に導電材料が充填される。
【0090】
次に、図8(b)に示すようにフォトリソグラフィー技術、エッチング等を用いて、金属箔7xをパターニングして導電層7を形成する。
【0091】
以上のようにして、インターポーザー3を作製することができる。
【0092】
(実装構造体1の作製)
(5)バンプ4を介してインターポーザー3と電子部品2とを電気的に接続させつつ、インターポーザー3および電子部品2を交互に積層させることによって、図1(a)に示した実装構造体1を作製することができる。
【0093】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0094】
上述した本発明の実施形態においては、本発明に係る配線基板の例としてインターポーザーを挙げたが、本発明に係る配線基板の例としては、インターポーザー以外にも、例えば、ビルドアップ多層基板またはコア基板のみからなる単層基板も含まれる。なお、ビルドアップ多層基板においては、本発明の絶縁層がコア基板に適用されることが望ましい。その結果、コア基板が低熱膨張率で高弾性率であることから、変形の少ないビルドアップ多層基板を作製することができる。
【0095】
また、上述した本発明の実施形態においては、インターポーザーと電子部品と交互に積層した構成を例に説明したが、例えば、電子部品と樹脂基板との間にインターポーザーを介在させても構わない。その結果、電子部品と樹脂基板との熱膨張率の差に起因して電子部品のパッドに印加される熱応力をインターポーザーによって低減することができる。特に、ロジック系の半導体素子から電子部品を用いる場合には、電子部品のパッドが微細化されて強度が低下しているため、電子部品と樹脂基板との間にインターポーザーを介在させることが望ましい。
【0096】
また、上述した本発明の実施形態においては、絶縁層上に樹脂層を形成した構成を例に説明したが、例えば、樹脂層を形成せずに、絶縁層上に直接導電層を形成しても構わない。この場合、絶縁層の主面に配された第1無機絶縁粒子からなる突出部(第3突出部)は、導電層に覆われており、第突出部の間の凹部(第3凹部)内には、導電層の一部が配されている。ここで、(4)の工程にて、貫通孔Pの内壁に配された樹脂部材をエッチングする際に、絶縁層の主面に配された樹脂部材もエッチングされるため、第3突出部の突出量は、第1突出部よりも大きくなる。なお、絶縁層上に直接導電層を形成するためには、(2)の工程の後、(3)の工程を行わずに、(4)の工程にて、無電解めっき法、電気めっき法、スパッタ法または蒸着法等を用いた、サブトラクティブ法、セミアディティブ
法またはフルアディティブ法によって導電層を形成すればよい。
【0097】
上述した本発明の実施形態においては、(1)の工程にて、第1スラリーにて第1無機絶縁粒子を沈降させ、溶剤を気化させた後、第1無機絶縁粒子を加熱して互いに接続させた製造方法を例に説明したが、例えば、以下の方法で第1無機絶縁粒子を互いに接続させても構わない。
【0098】
まず、第1無機絶縁粒子と第2溶剤とバインダとを含むスラリー(第2スラリー)を準備し、スプレードライヤーを用いて、第2溶剤を蒸発させつつ複数の第1無機絶縁粒子からなる顆粒を造粒する。次に、顆粒を金型に充填して加圧した後、加熱することによって、第1無機絶縁粒子を互いに接続させることができる。このように第1無機絶縁粒子を互いに接続させることによって、成型時間を短縮することができる。なお、バインダとしては、アクリル樹脂またはポリエチレングリコール樹脂等を用いることができる。
【0099】
また、上述した本発明の実施形態においては、(1)の工程にて、凍結乾燥によってスラリーを乾燥させた製造方法を例に説明したが、加圧乾燥(オートクレーブ)によってスラリーを乾燥させても構わない。この場合、乾燥時間を短縮することができる。
【0100】
また、上述した本発明の実施形態においては、(4)の工程にて、電気めっき法を用いて、貫通孔内に露出した銅箔に導電材料を被着させて、貫通孔内に導電材料を充填する製造方法を例に説明したが、例えば、無電解めっき法、スパッタ法または蒸着法等を用いて、導電材料を貫通孔内壁に被着させて下地層を形成した後、電気めっき法を用いて、該下地層に導電材料を被着させて貫通孔内に導電材料を充填しても構わない。この場合、(3)の工程にて、基体に貫通孔を形成する際に、基体の両主面に配された金属箔を貫通させることが望ましい。
【0101】
また、上述した本発明の実施形態においては、(4)の工程にて、金属箔をパターニングして導電層を形成する製造方法を例に説明したが、例えば、金属箔を除去した後、無電解めっき法、電気めっき法、スパッタ法または蒸着法等を用いた、サブトラクティブ法、セミアディティブ法またはフルアディティブ法によって導電層を形成しても構わない。
【符号の説明】
【0102】
1 実装構造体
2 電子部品
3 インターポーザー
4 バンプ
5 貫通電極
6 基体
7 導電層
7x 金属箔
8 貫通導体
9 絶縁層
10 樹脂層
11 ネック構造
12 第1無機絶縁粒子
13 樹脂部材
13x 樹脂部材前駆体
14 第2無機絶縁粒子
15 第1突出部
16 第1凹部
17 第2突出部
18 第2凹部
19 溶剤
20 スラリー
21 沈降領域
22 上澄み領域
V 間隙
P 貫通孔
C 仮想円
L 照射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック構造を介して互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子と、該複数の第1無機絶縁粒子同士の間隙に配された樹脂部材とを有する絶縁層を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記絶縁層を厚み方向に貫通する貫通孔に配された貫通導体をさらに備え、
前記絶縁層は、前記貫通孔の内壁に前記第1無機絶縁粒子からなる第1突出部を有し、
該第1突出部は、前記貫通導体に覆われていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記絶縁層上に配された樹脂層と、該樹脂層の前記絶縁層とは反対側の主面上に配された導電層とをさらに備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項3に記載の配線基板において、
前記樹脂部材は、前記樹脂層よりも熱膨張率が小さく、
前記樹脂層は、前記樹脂部材よりもヤング率が小さいことを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項3に記載の配線基板において、
前記樹脂部材は、シラノール基を有する樹脂材料を含むことを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項3に記載の配線基板において、
前記絶縁層は、前記樹脂層側の主面に前記第1無機絶縁粒子からなる第2突出部を有し、該第2突出部は、前記樹脂層に覆われていることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項1に記載の配線基板において、
前記絶縁層上に配された導電層をさらに備え、
前記絶縁層は、前記導電層側の主面に前記第1無機絶縁粒子からなる第3突出部を有し、該第3突出部は、前記導電層に覆われていることを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項1に記載の配線基板において、
前記絶縁層は、前記間隙にて前記樹脂部材に被覆された、前記第1無機絶縁粒子よりも粒径の小さい第2無機絶縁粒子をさらに備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第1無機絶縁粒子は、アモルファス状態の酸化ケイ素を含有することを特徴とする配線基板。
【請求項10】
請求項9に記載の配線基板において、
前記第1無機絶縁粒子の粒径は、0.02μm以上3μmであることを特徴とする配線基板。
【請求項11】
請求項1に記載の配線基板と、該配線基板に実装された電子部品とを備えたことを特徴とする実装構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178499(P2012−178499A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41326(P2011−41326)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】