説明

配線基板の製造方法および配線基板製造装置

【課題】高精細および高密度な配線基板を、品質を安定させ生産する。
【解決手段】パターン形成材料を含んだ液状体を、描画データMに基づいて、液状体吐出手段14から基板Bに吐出して、前記基板Bに第1配線パターン群と第2配線パターン群とからなる配線パターンCを描画する描画工程S2と、撮像手段24により、描画された前記第1配線パターン群を撮像する撮像工程S3と、撮像された前記第1配線パターン群の画像Gと前記描画データMとを比較して、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあるか否かを判定する吐出状態検査工程S4と、を備え、前記吐出状態検査工程S4において、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあると判定された場合は、当該吐出抜け箇所に前記液状体を再吐出することを特徴とする配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体吐出方式による配線基板の製造方法および配線基板製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波モジュールやIC等の電子部品は小型化、高機能化が求められ、配線基板に形成される配線パターンは、より高精細化、高密度化が求められている。配線パターンの高精細化や高密度化等を目的に液状体吐出方式(インクジェット方式)を適用して、パターン形成材料を含んだ液状体を液滴として基板上に吐出してパターンを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。液状体吐出方式(インクジェット方式)は、液滴吐出ヘッドと呼ばれる液滴吐出機構を用いて、微小量の液滴を、着弾位置を制御しつつ吐出することによって配線パターンの微細化と狭ピッチ化を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−57139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液滴吐出ヘッドから吐出される液状体は、パターン形成材料として、例えば金属ナノ粒子や導電性粒子を分散させた有機分散剤等からなっている。そのため、液滴吐出ヘッドの液滴吐出口であるノズルの内部や周辺で粒子が凝固して吐出不具合となる虞がある。吐出不具合としては、液滴の吐出抜け、いわゆるドット抜け等がある。微細な配線パターンの描画において限度以上のドット抜けが発生すると、配線パターンの断線や導通不良等の致命的な欠陥となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)パターン形成材料を含んだ液状体を描画データに基づいて液状体吐出手段から基板に吐出して、前記基板に第1配線パターン群と第2配線パターン群とからなる配線パターンを描画する描画工程と、撮像手段により、描画された前記第1配線パターン群を撮像する撮像工程と、撮像された前記第1配線パターン群の画像と前記描画データとを比較して、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあるか否かを判定する吐出状態検査工程と、を備え、前記吐出状態検査工程において、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあると判定された場合は、当該吐出抜け箇所に前記液状体を再吐出することを特徴とする配線基板の製造方法。
【0007】
(適用例2)前記第1配線パターン群を構成するパターンのパターン幅と前記第2配線パターン群を構成するパターンのパターン幅とは異なることを特徴とする上記の配線基板の製造方法。
【0008】
(適用例3)前記第1配線パターン群を構成するパターンのパターン幅は、前記第2配線パターン群を構成するパターンのパターン幅より小さいことを特徴とする上記の配線基板の製造方法。
【0009】
液状体吐出方式によって形成されるパターンは、着弾した複数の液滴より構成される。幅の大きいパターンは、幅の小さいパターンに比較して幅方向により多くの液滴が着弾する。すなわち、幅の大きいパターンは、液状体吐出手段から吐出される液滴の吐出抜けが発生したとしても、その影響が小さく配線基板として導通不良等の機能不良になりにくい傾向にある。
【0010】
これらの方法によれば、吐出状態検査工程において、描画された配線パターンのうち、幅の狭い第1配線パターンについてのみ撮像された画像と描画データを比較して吐出抜けの有無を検出する。そして第1配線パターンに吐出抜けがあった場合、液状体吐出手段によって吐出抜け箇所に液状体を再吐出して吐出抜けを補修することができる。そのため、配線パターン全体に対して吐出抜けを検出するのではなく、配線基板として導通不良になる虞のあるパターンについてのみ検査して、不具合があれば補修することができる。そのため、検査時間を短縮することができ、生産効率向上に寄与することができる。また、導通不良等の機能不良がない高品質の配線基板を提供することができる。
【0011】
(適用例4)パターン形成材料を含んだ液状体を描画データに基づいて基板に吐出して、前記基板に第1配線パターン群と第2配線パターン群とからなる配線パターンを描画する液状体吐出手段と、描画された前記第1配線パターン群を撮像する撮像手段と、撮像された前記第1配線パターン群の画像と前記描画データとを比較して、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあるか否かを判定する吐出状態検査手段と、を備え、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあると判定された場合は、当該吐出抜け箇所に前記液状体を再吐出することを特徴とする配線基板製造装置。
【0012】
(適用例5)前記第1配線パターン群を構成するパターンのパターン幅と前記第2配線パターン群を構成するパターンのパターン幅とは異なることを特徴とする上記の配線基板製造装置。
【0013】
これらの構成によれば、描画された配線パターンのうち、幅の小さい第1配線パターンについてのみ撮像された画像と描画データを比較して吐出抜けの有無を検出する。そして、第1配線パターンに吐出抜けがあった場合、液状体吐出手段によって吐出抜け箇所に液状体を再吐出して吐出抜けを補修することができる。そのため、配線パターン全体に対して吐出抜けを検出するのではなく、配線基板として導通不良になる虞のあるパターンについて検査して不具合があれば補修することができる。そのため、検査時間を短縮することができ、生産効率向上に寄与することができる。また、導通不良等の機能不良がない高品質の配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】配線基板製造装置の概略構成を示す図。
【図2】液滴吐出ヘッドの構造を示す概略図。
【図3】液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図4】配線基板製造装置の制御系を示すブロック図。
【図5】配線基板の製造の流れを示すフローチャート。
【図6】描画データおよび配線パターンの例を示す図。
【図7】配線基板の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態を、液状体吐出方式を適用した配線基板製造装置を用いて微細な配線パターンを有する配線基板を製造する場合を例にとり説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0016】
(配線基板製造装置の全体構成について)
まず、本実施形態における配線基板製造装置を、図1を参照して説明する。図1は配線基板製造装置の概略構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。なお、図1(a),(b)に示すX方向はテーブルの移動方向を示し、Y方向は複数の液滴吐出ヘッドの配置方向を示し、Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向を示している。
【0017】
図1(a),(b)に示すように、配線基板製造装置100は、テーブル10と、テーブル移動機構12と、液状体吐出手段としての液状体吐出機構14と、吐出状態検査機構16と、乾燥機構18と、制御装置20と、基台22とを備えている。基台22は、例えば、平板状の石材などの熱膨張係数が小さい材料から形成されており、Y方向に一定の幅を有し、X方向に沿って延びるように4本の脚部26に支持されている。基台22のZ方向の下部には、制御装置20が設けられている。
【0018】
テーブル移動機構12は、テーブル10と、2つのリニアモーター30とを有している。2つのリニアモーター30は、基台22のZ方向上面にX方向に沿って平行に配置されている。テーブル10は、平板状の部材であり、Z方向上面に基板Bを着脱可能に保持する載置面10Aを有している。テーブル10は、基台22に配置された2つのリニアモーター30の上方に配設されている。リニアモーター30は、図示しない固定子と可動子を有しており、固定子は基台22に、可動子はテーブル10に設けられている。テーブル移動機構12は、制御装置20からの指令に基づいて可動子のコイルが通電されることにより、テーブル10をX方向に往復移動させることができる。
【0019】
図1に示すように、液状体吐出機構14は、複数の液滴吐出ヘッド50と、複数の液滴吐出ヘッド50を搭載するキャリッジ15と、2つのリニアモーター32と、4本の支柱34とを備えている。リニアモーター32のそれぞれは、テーブル移動機構12に配置されたテーブル10に対してZ方向に空間を有する状態で、テーブル移動機構12のリニアモーター30と直交するようにY方向に延びて2本の支柱34に支持され、互いに平行に配設されている。
【0020】
キャリッジ15は、2つのリニアモーター32のZ方向上方に配設されている。リニアモーター32は、固定子と可動子を有しており、固定子は4本の支柱34に支持され、可動子はキャリッジ15に設けられている。キャリッジ15は、制御装置20からの指令に基づいて可動子のコイルが通電されることにより、Y方向に往復移動することができる。液滴吐出ヘッド50は、テーブル10(Z方向下方)に対して、液状体を吐出するノズルが対向するようにキャリッジ15に搭載されている。
【0021】
吐出状態検査機構16は、撮像手段としての撮像装置24と、撮像装置保持台28と、2つのリニアモーター36と、4本の支柱38とを備えている。リニアモーター36のそれぞれは、テーブル移動機構12に配置されたテーブル10に対してZ方向に空間を有する状態でY方向に延びるように、2本の支柱38に支持され互いに平行に配設されている。吐出状態検査機構16は、液状体吐出機構14に対して、X方向に一定の間隔を有し、Y方向に沿って平行に配設されている。
【0022】
撮像装置24は、例えばCCDカメラが適用される。この場合複数のCCDカメラを用いることが好ましい。CCDカメラ23は、対物レンズ25を備えている。従って、CCDカメラ23は、対物レンズ25を通してテーブル10上に載置された基板Bに描画された配線パターンを撮像可能に構成されている。
【0023】
撮像装置保持台28は、2つのリニアモーター36の上方に配設されている。リニアモーター36は、固定子と可動子を有しており、固定子は4本の支柱38に支持され、可動子は撮像装置保持台28に設けられている。撮像装置保持台28は、制御装置20からの指令に基づいて可動子のコイルが通電されることにより、Y方向に往復移動することができる。撮像装置24は、テーブル10(Z方向下方)に対して、対物レンズ25が対向するように撮像装置保持台28に保持されている。
【0024】
乾燥機構18は、乾燥装置19と、4本の支柱39とを備えている。乾燥装置19は、テーブル10に対してZ方向に空間を有する状態で、吐出状態検査機構16に対して、X方向に一定の間隔を有し、Y方向に沿って平行に4本の支柱39に支持されている。この乾燥装置19は、例えば所定の温度に熱せられた気体を送風することができる送風型乾燥装置であって、送風口がZ方向下方、すなわちテーブル10の方向に対向するように配置されている。
【0025】
配線基板製造装置100は、上記構成の他にメンテナンス部11(図4参照)を備えている。メンテナンス部11は、図示しない吸引ユニットとワイピングユニットとを有している。メンテナンス部11は、キャリッジ15がY方向に移動することにより、キャリッジ15に搭載された液滴吐出ヘッド50に対して、吸引ユニットおよびワイピングユニットとを対向させることができる。吸引ユニットは、配線基板製造装置100の非稼働時に、液滴吐出ヘッド50のノズル面を封止してノズルの乾燥を防止すると共に、液滴吐出ヘッド50のノズルから増粘した液状体を吸引除去する役割を果たす。ワイピングユニットは、液滴吐出ヘッド50のノズル面に付着する汚れを払拭する役割を果たす。
【0026】
このような配線基板製造装置100は、複数の液滴吐出ヘッド50を列状に配置し、列状に配置された液滴吐出ヘッド50と略直交する方向にテーブル10を移動させながら、複数の液滴吐出ヘッド50から液状体を液滴として吐出して、テーブル10に搭載された基板Bに液状体で所望のパターンを形成することができる。
【0027】
(液滴吐出ヘッドについて)
ここで液滴吐出ヘッドについて図2および図3を参照して説明する。図2は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略図である。(a)は概略分解斜視図、(b)はノズル部の構造を示す断面図である。図3は、キャリッジにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、基板に対向する側から見た図である。なお、図3に示すX方向、Y方向は、図1に示すX方向、Y方向と同一な方向を示す。
【0028】
図2(a)および(b)に示すように、液滴吐出ヘッド50は、液滴Dが吐出される複数のノズル52を有するノズルプレート51と、複数のノズル52がそれぞれ連通するキャビティ55を区画する隔壁54を有するキャビティプレート53と、各キャビティ55に対応する駆動素子としての振動子59を有する振動板58とが、順に積層され接合された構造となっている。
【0029】
キャビティプレート53は、ノズル52に連通するキャビティ55を区画する隔壁54と、キャビティ55に液状体を充填するための流路56,57とを有している。流路57は、ノズルプレート51と振動板58とによって挟まれ、出来上がった空間が、液状体が貯留されるリザーバーの役目を果たす。液状体は、図示しない液状体供給機構から配管を通じて供給され、振動板58に設けられた供給孔58aを通じてリザーバーに貯留された後に、流路56を通じて各キャビティ55に充填される。
【0030】
図2(b)に示すように、振動子59は、ピエゾ素子59cと、ピエゾ素子59cを挟む一対の電極59a,59bとからなる圧電素子である。外部から一対の電極59a,59bに、駆動信号としての駆動波形が印加されることにより接合された振動板58を変形させる。これにより隔壁54で仕切られたキャビティ55の体積が増加して、液状体がリザーバーからキャビティ55に吸引される。そして、駆動波形の印加が終了すると、振動板58は元に戻り充填された液状体を加圧する。これにより、ノズル52から液状体を液滴Dとして吐出できる構造となっている。ピエゾ素子59cへ印加される駆動波形を制御することにより、それぞれのノズル52に対して液状体の吐出制御を行うことができる。
【0031】
図3に示すように、上述の液滴吐出ヘッド50は、キャリッジ15に配置される。本実施形態では、例えば2つの液滴吐出ヘッド50を使用する場合を例にとり説明する。各液滴吐出ヘッド50は、一定のピッチPで配設された複数(180個)のノズル52からなるノズル列52aを有している。そのため、1つの各液滴吐出ヘッド50は長さLなる吐出幅を有している。また、このノズル列52aを構成する複数のノズル52は、図2に示す流路57を共通にしている。2つの液滴吐出ヘッド50は、図中X方向から見て隣り合うノズル列52aがY方向に1ノズルピッチPを置いて連続するようにX方向に並列して配設されている。
【0032】
(配線基板製造装置の制御系について)
次に配線基板製造装置の制御系について図4を参照して説明する。図4は、配線基板製造装置の制御系を示すブロック図である。図4に示すように、上述の配線基板製造装置100の液状体吐出機構14を含む描画部8、吐出状態検査機構16等を制御する制御装置20は、制御系の主要部となる制御部5と、液滴吐出ヘッド50、テーブル移動機構12等を駆動する各種ドライバーを有する駆動部41と、インターフェース部49とを備えている。
【0033】
駆動部41は、モータードライバー42と、ヘッドドライバー43と、メンテナンス部11の各メンテナンス用ユニットを駆動制御する図示しないメンテナンス用ドライバーとを備えている。モータードライバー42は、制御部5からの指令に基づいて、テーブル移動機構12、液状体吐出機構14および吐出状態検査機構16等の各モーターをそれぞれ個別に駆動制御する。ヘッドドライバー43は、制御部5からの指令に基づいて、液状体吐出機構14の液滴吐出ヘッド50を個別に吐出制御する。
【0034】
制御部5は、CPU(Central Processing Unit)44、メモリー部45、および画像処理部46を備えている。CPU44は、描画、吐出状態検査、乾燥等の各種処理を実行する。メモリー部45は、図示しないRAM(Random Access Memory)やROM(Read-Only Memory)などを含んだ構成を有している。RAMは、ホストコンピューター6からインターフェース部49を介して入力される描画データを格納したり、CPU44によって実行される各種処理等のプログラムを一時的に展開したり、各種データを一時的に格納したりする。
【0035】
ここで、描画データは、液状体で基板Bに描画すべき配線パターンを指示するものであり、描画すべきパターンがビットマップ状に表現されている。ROMは、例えば不揮発性半導体メモリーで構成され、各液滴吐出ヘッド50の駆動周波数を制御する吐出制御プログラムの他、CPU44が実行する各種のプログラムが格納されている。画像処理部46は、吐出状態検査部47を含んだ構成になっている。画像処理部46は、吐出状態検査機構16の撮像装置24で撮像された画像を処理する。処理の詳細は後述する。
【0036】
(配線基板の製造方法について)
ここで上述の配線基板製造装置を用いた配線基板の製造方法について図5〜7を参照して説明する。図5は、配線基板の製造の流れを示すフローチャートであり、図6は、描画データおよび配線パターンの例を示す図である。図7は、配線基板の製造方法を説明する図である。以下の処理は、図4に示す制御装置20の指令、制御により行われる。
【0037】
図5に示すように、この配線基板の製造方法は、基板セット工程S1と、描画工程S2と、撮像工程S3と、吐出状態検査工程S4と、再描画工程S5と、乾燥工程S6とを有する。
【0038】
基板セット工程S1では、図1に示す配線基板製造装置100のテーブル10の載置面10Aに被吐出物としての基板Bをセットする。この基板Bは、例えばグリーンシート、セラミック基板、ガラス基板、シリコン基板等の各種基板が適用され、例えば真空吸着により吸着されテーブル10に載置される。そして次の工程に進む。
【0039】
図5に示す描画工程S2では、図1に示す配線基板製造装置100を用い、基板Bの一面Baにパターン形成材料を含む液状体で配線パターンを描画する。具体的には、テーブル10に載置された基板Bを、テーブル移動機構12により図1中X方向に移動させながら、液状体吐出機構14に搭載される液滴吐出ヘッド50から必要なタイミングで液状体を液滴として吐出させ、所定のパターンを描画する。このパターンは、図4に示すホストコンピューター6からインターフェース部49を介して入力される描画データに基づいて形成される。
【0040】
本実施形態では、ビットマップ状の描画データMが用いられる。描画データMは、領域RをX方向、Y方向において格子状に区切り、格子のどの位置に液滴Dを配置するべきか示したものである。図6(a)に示すように、本実施形態の描画データMは、X方向、Y方向とも図3に示す液滴吐出ヘッド50のノズルピッチPの大きさの格子で構成され、図中丸印が付されている着弾位置dに液滴Dを配置する。
【0041】
この描画データMは、配線パターンCを図6(b)に示す電子部品E1,E2,E3が配置される部分を避けて引き回すことを意図しているため、図中X,Y方向に複雑に曲がりくねっている。図6(a)に示す描画データMは、3ドット幅でX方向に延びて構成されているデータMaと、データMaにつながり1ドット幅でY(−)方向に延びて構成されているデータMbと、データMbにつながり2ドット幅でX(−)方向に延びて構成されているデータMcと、データMcにつながり1ドット幅で図中右斜め下45°方向に延びて構成されているデータMdと、データMdにつながり2ドット幅でY(+)方向に延びて構成されているデータMeとから構成されている。
【0042】
描画工程S2では、描画データMに基づいて、基板Bに図6(b)に示す配線パターンCが描画される。この配線パターンCは、電子部品E1,E2,E3が配置される部分を避けて引き回されているため図中X,Y方向に複雑に曲がりくねっている。配線パターンCは、データMaに対応するパターンCaと、データMbに対応するパターンCbと、データMcに対応するパターンCcと、データMdに対応するパターンCdと、データMeに対応するパターンCeとから構成されている。なお、図6(b)中のd1は、着弾位置dに着弾した液滴Dを意味する。この描画作業が終了したら次の工程に進む。
【0043】
図5に示す撮像工程S3では、描画工程S2で描画された配線パターンCにおいて、配線基板として導通不良等の機能不良になり得る吐出抜け、いわゆるドット抜けがあるか否かを検査する。
【0044】
上述のように、配線パターンCは、1ドット幅で形成されているパターンCb,Cdと、複数ドット幅(2ドット以上の幅)で形成されているパターンCa,Cc,Ceとに分けられる。発明者は、実験の結果、液滴吐出ヘッド50から吐出される液滴Dの吐出量を所定の値以上にすることによって、複数ドット幅(2ドット以上の幅)で形成されているパターンCa,Cc,Ceでは、若干のドット抜けが発生しても導通不良等の機能不良になる危険性が極めて低いことを発見した。そして、配線基板として導通不良を検出するには、1ドット幅で形成されているパターンCb,Cdのドット抜けを検査することで足りるとの結論に至った。なお、検査されるべきパターンの幅は、配線パターンCの構成、液滴Dの吐出量、打ち込み密度および液状体の種類等によって異なる。都度、設定すればよい。
【0045】
そこで、撮像工程S3では、図1に示す吐出状態検査機構16のCCDカメラ23を用い、基板Bに描画された配線パターンCのパターンCb,Cdを撮像する。具体的には、描画データMに基づいて、図4に示すモータードライバー42の信号により、吐出状態検査機構16のリニアモーター36を駆動して、CCDカメラ23の対物レンズ25をパターンCb,Cdに対向する位置まで移動させる。そして、パターンCb,Cdを撮像する。その結果、図7に示す画像Gを得る。
【0046】
本実施形態では、画像Gとして配線パターンC全体を撮像した場合を例にとり説明する。図7に示すように、画像Gは、例えば液滴吐出ヘッド50のノズル52の一部に吐出不良が発生して、パターンCbにおいては、1ドットが着弾せず、着弾位置d1bが空白となっている。また、パターンCdにおいては、同一のノズルに吐出不良が発生して、1ドットが着弾せず、着弾位置d1dが空白である。この画像Gは、図4に示す制御部5の画像処理部46にデータとして送られる。なお、パターンCbおよびパターンCdは、その面積によって、同一の画像Gで撮像されてもよいし、それぞれ別の画像で撮像されてもよい。
【0047】
図5に示す吐出状態検査工程S4では、配線パターンC内にドット抜けがあるか否かを判定する。具体的には、図4に示す制御部5の画像処理部46の吐出状態検査部47にて、メモリー部45のRAMに格納されているビットマップ状の描画データMを呼び出し、当該描画データMとデータとして送られてきた画像Gとを比較してドット抜けがあるか否かを判定する。図6(a)に示す描画データMと図7に示す画像Gのデータとを比較すると、本来あるべき描画データMのデータMbの着弾位置dbとデータMdの着弾位置ddに対応するドットが不足していることがわかる。すなわち、配線パターンC内に2箇所のドット抜けが発生している。配線パターンC内にドット抜けがある場合(YES)は再描画工程S5に進み、ドット抜けがない場合(NO)は乾燥工程S6に進む。
【0048】
再描画工程S5では、図1に示す配線基板製造装置100のテーブル移動機構12を用い、基板Bの配線パターンCのパターンCb,Cdを、順次、液状体吐出機構14の液滴吐出ヘッド50の直下に移動させ、パターン形成材料を含む液状体を再吐出する。その結果、図7に示すパターンCb,Cdのドット抜け部分(着弾位置d1b,d1d)が補修され、図6(b)に示す配線パターンCが形成される。そして、次の乾燥工程S6に進む。なお、このとき、再度、撮像工程S3および吐出状態検査工程S4を行ってもよい。配線基板の導通不良等の機能不良をさらに低減させることができる。
【0049】
図5に示す乾燥工程S6では、基板Bにパターン形成材料を含む液状体で描画された配線パターンCを乾燥させて、パターン形成材料からなる配線パターンC’を形成する。詳しくは、図1に示す乾燥機構18の乾燥装置19を用い所定の温度まで熱せられた温風を基板Bに描画された配線パターンCに強制送風する。液状体は、パターン形成材料として金属ナノ粒子や導電性粒子を適用して、それを有機分散剤に分散させている。そのため、有機分散剤が乾燥蒸発して、基板B上には金属ナノ粒子や導電性粒子からなる配線パターンC’が形成される。
【0050】
次いで工程S7では、次に配線パターンCを形成する基板Bがあるか否かを判断する。次に配線パターンCを形成する基板Bがある場合(YES)は、基板セット工程S1に進み、上述の作業を繰り返す。配線パターンCを形成する基板Bがない場合(NO)は、本作業を終了する。
【0051】
以下、本実施例の効果を記載する。
(1)この配線基板の製造方法では、ドット抜けが発生したとき、配線基板として導通不良等の機能不良になり得るパターン、すなわちパターンCb,Cdについて画像Gを撮像し、その画像Gと描画データMとを比較してドット抜けがあるか否かを判定する。そして、検出されたパターンCb,Cdのドット抜け部分(着弾位置d1b,d1d)に液状体を再吐出して当該部分を補修する。すなわち、配線パターンC全体に対してドット抜けを検出するのではなく、配線基板として導通不良になる虞のあるパターンのみを検査して補修することができる。そのため、検査時間を短縮することができ、生産効率向上に寄与することができる。また、導通不良等の機能不良がない高品質の配線基板を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
5…制御部、10…テーブル、12…テーブル移動機構、14…液状体吐出機構、16…吐出状態検査機構、18…乾燥機構、19…乾燥装置、20…制御装置、24…撮像装置、41…駆動部、46…画像処理部、47…吐出状態検査部、50…液滴吐出ヘッド、52…ノズル、100…配線基板製造装置、B…基板、d…着弾位置、G…画像、S2…描画工程、S3…撮像工程、S4…吐出状態検査工程、S5…再描画工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成材料を含んだ液状体を、描画データに基づいて、液状体吐出手段から基板に吐出して、前記基板に第1配線パターン群と第2配線パターン群とからなる配線パターンを描画する描画工程と、
撮像手段により、描画された前記第1配線パターン群を撮像する撮像工程と、
撮像された前記第1配線パターン群の画像と前記描画データとを比較して、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあるか否かを判定する吐出状態検査工程と、を備え、
前記吐出状態検査工程において、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあると判定された場合は、当該吐出抜け箇所に前記液状体を再吐出することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1配線パターン群を構成するパターンのパターン幅と前記第2配線パターン群を構成するパターンのパターン幅とは異なることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1配線パターン群を構成するパターンのパターン幅は、前記第2配線パターン群を構成するパターンのパターン幅より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
パターン形成材料を含んだ液状体を描画データに基づいて基板に吐出して、前記基板に第1配線パターン群と第2配線パターン群とからなる配線パターンを描画する液状体吐出手段と、
描画された前記第1配線パターン群を撮像する撮像手段と、
撮像された前記第1配線パターン群の画像と前記描画データとを比較して、前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあるか否かを判定する吐出状態検査手段と、を備え、
前記第1配線パターン群に前記液状体の吐出抜けがあると判定された場合は、当該吐出抜け箇所に前記液状体を再吐出することを特徴とする配線基板製造装置。
【請求項5】
前記第1配線パターン群を構成するパターンのパターン幅と前記第2配線パターン群を構成するパターンのパターン幅とは異なることを特徴とする請求項4に記載の配線基板製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−192732(P2010−192732A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36256(P2009−36256)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】