説明

配線基板の製造方法および金具の位置決め用治具

【課題】フランジと軸部とを有する金具をロウ付けで接合した配線基板を製造する際に、軸部が基板本体の表面や裏面に対し、垂直姿勢で容易且つ確実に接合できる配線基板の製造方法、および金具の位置決め用治具を提供する。
【解決手段】基板本体2の表面3に形成されたメタライズ層6の上面に、シート状のロウ材を載置する第1ステップと、該メタライズ層6およびロウ材を収納する貫通孔16を有する第1の治具15を配置する第2ステップと、第2の治具20の該透孔24に金具10の軸部13,14を挿入して、該金具10に第2の治具20を取り付ける第3ステップと、その貫通孔16内に、第2の治具20が取り付けられた金具10を挿入し、且つ該金具10のフランジ11をロウ材の上に載置する第4ステップと、その後に、シート状のロウ材7を溶解する第5ステップとその後に、第1,第2の治具15,20を取り外す工程と、を備える製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材からなる基板本体の表面および裏面の少なくとも一方に、フランジと軸部とを有する金具をロウ付けして接合する工程を含む配線基板の製造方法、および該製造方法に用いる金具の位置決め用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂からなる基板の主面に予め設けられた複数のパッドごとの上に、ネイルヘッド型のピンをハンダ付けで接合するに際し、ピン固定板における複数の貫通孔ごとにネイルを上記パッド側に向けてピンを挿入・保持し、各パッドの上に配置した相似形のハンダと上記ピン固定板との間に、層状のハンダを挟持した後、該ハンダを溶融することで、複数のピンが基板の主面に接合されたPGA型電子部品用基板の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、セラミックや樹脂の絶縁材からなる基板本体の表面および裏面の少なくとも一方に、例えば、スタッドボルトのようなフランジと雄ネジを含む軸部とを有する金具をロウ付けして接合した配線基板を製造するには、以下のような金具の位置決め用治具が用いられている。
即ち、基板本体の表面あるいは裏面に、予め形成されたメタライズ層の上にシート状のロウ材を載置し、該メタライズ層とロウ材とを囲み且つ上記金具のうち、軸部よりも大径のフランジが収容可能な貫通孔を有する板状の治具を、上記基板本体の表面あるいは裏面に載せて拘束し、上記貫通孔内にフランジを底側としたスタッドボルトを挿入した後、上記ロウ材を溶融することで金具を接合している。上記板状の治具の底面には、メタライズ層と溶融後のフィレットを含むロウ材とを収容可能とする深さの凹部が上記貫通孔と同軸心により形成されている。
【0004】
更に、前記ロウ材の溶融時において、前記ボルト(金具)の形状によっては、該ボルトの重心がロウ材から比較的離れた位置にあると、該ボルトが傾斜した状態でロウ材が凝固し、その軸部が前記基板本体の表面(裏面)に対して、ほぼ垂直でなくなる。かかる傾斜を防ぐため、上記ボルトの軸部の上端で且つ前記板状の治具における貫通孔の外側に錘を載せた状態で、前記ロウ付けを行っている。
しかし、前記板状の治具に設けた貫通孔と、ボルトの軸部との間には、両者の嵌合のための隙間が存在するので、ロウ付け工程での振動などによる外乱に起因して、前記ロウ材が溶けた際に、錘とバルトとが異なる方向に傾斜した状態となり、且つその傾斜した姿勢のままで該ロウ材が凝固してしまい、ボルトの軸部が前記基板本体の表面や裏面に対しほぼ垂直にならない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−129778号公報(第1〜7頁、図1〜13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、フランジと軸部とを有する金具をロウ付けして接合した配線基板を製造する際に、軸部が基板本体の表面や裏面に対し、垂直姿勢で容易且つ確実に接合できる配線基板の製造方法、およびこれに用いる金具の位置決め用治具を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、第1の治具を基板本体の表・裏面に配置すると共に、該第1の治具の貫通孔内に金具と併せて第2の治具を挿入する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による配線基板の製造方法(請求項1)は、絶縁材からなる基板本体の表面および裏面の少なくとも一方に、軸部およびフランジからなる金具をロウ材により固定した配線基板の製造方法であって、上記基板本体の表面および裏面の少なくとも一方に形成されたメタライズ層の上面に、シート状のロウ材を載置する第1ステップと、上記基板本体の表面および裏面のうち、上記ロウ材が載置されたメタライズ層の側に、該メタライズ層およびロウ材を収納する貫通孔を有する第1の治具を配置する第2ステップと、平面視の形状が上記貫通孔と相似形である透孔を有する第2の治具の該透孔に金具の軸部を挿入して、該金具に第2の治具を取り付ける第3ステップと、上記第1の治具の上側からその貫通孔内に、第2の治具が取り付けられた上記金具を挿入し、且つ該金具のフランジをロウ材の上に載置する第4ステップと、該第4ステップ後に、上記シート状のロウ材を溶解する第5ステップと、を含むロウ付け工程と、該ロウ付け工程後に、上記第2の治具を金具から取り外し、且つ第1の治具を基板本体から取り外す工程と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、第2ステップにおいて、前記ロウ材を載置したメタライズ層が位置する基板本体の表面あるいは裏面に、上記メタライズ層およびロウ材を収納する第1の治具が配置され、第3ステップにおいて、予め前記金具の軸部を第2の治具の透孔に挿入して、該第2の治具を金具に取り付けると共に、第4ステップにおいて、第1の治具の貫通孔に第2の治具を取り付けた上記金具を挿入し且つ該金具のフランジを上記ロウ材の上に載置している。その結果、上記金具は、そのフランジをロウ材上に載置され、且つその軸部を第2および第1の治具によって、基板本体の表・裏面に対し軸方向が垂直となった姿勢で拘束される。かかる状態で、第5ステップのロウ材を溶解させるロウ付けが施すため、上記金具は、そのフランジを基板本体の表・裏面と平行とし、且つその軸部をほぼ垂直とした姿勢で、溶解・凝固したロウ材を介して、上記メタライズ層の上に接合される。
従って、フランジと軸部とを有する金具を、所要の姿勢でロウ付けにより接合した配線基板を容易で且つ確実に製造することが可能となる。
【0009】
尚、前記配線基板の基板本体を構成する絶縁材は、各種のセラミック(アルミナなどの高温焼成セラミックや、低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミック)、あるいはエポキシ系などの樹脂である。
また、前記基板本体は、複数の配線基板を縦横に隣接して配置し、これらの製品領域の周囲に捨て代の耳部を有する多数個取りの形態であっても良い。
更に、前記金具は、例えば、平面視が円形のフランジと、該フランジの中心部から垂直に突出した平面視の断面が円形の軸部とからなり、例えば、比較的大径のフランジと、その中心部から垂設した比較的小径で且つ周面に雄ネジ部が刻設された軸部とからなる所謂スタッドボルトが挙げられる。
また、前記第1,第2の治具は、比較的熱容量が大きく且つ熱膨張率が低いカーボン(黒鉛)、セラミック、または金属や合金(例えば、Fe−36%Ni(インバー)のような低熱膨張合金)などからなる。
更に、前記第1の治具は、例えば、全体が板状であり、その表・裏面間に平面視が円形の前記貫通孔が貫通している形態や、あるいは、後述するように、該貫通孔の一端側に平面視が円形の窪んだ凹部が連通している形態が含まれる。
また、前記第2の治具は、例えば、全体がほぼ円筒形状、あるいは、ほぼ円錐形状を呈し、その軸方向の中心部に平面視が円形の透孔を有する。
更に、前記第2の治具は、その重心を前記金具のフランジ側に位置させるため、軸方向に沿った断面が、金具の軸部を囲む透孔の部分が上側に位置し、且つ金具のフランジ上に接する底面側が該フランジ側で且つ放射方向に延びた形状である。
加えて、前記第5ステップでは、ロウ材を溶解する前に、前記第1の治具よりも上側に突出する前記金具の軸部の上端に錘を載せても良い。
【0010】
また、本発明には、前記第1の治具の貫通孔は、一端側に同軸心で開口する凹部を含み、該凹部に前記メタライズ層およびロウ材を収納するものである、配線基板の製造方法(請求項2)も含まれる。
これによれば、第2ステップおいて、前記第1の治具を基板本体の表面あるいは裏面に配置した際に、貫通孔の一端側に同軸心で開口する凹部に、前記メタライズ層およびロウ材が収納される。その結果、該メタライズ層と共にロウ材が溶解後のフィレットを含むやや扁平なロウ材になっても、第1の治具が基板本体の表・裏面に対し、不用意に傾斜した姿勢となる事態を確実に予防できる。同時に、第2の治具を介して、金具を所要の姿勢に維持してロウ付けすることもできる。
【0011】
更に、本発明には、前記第2の治具が取り付けられた際の金具の重心は、該金具のフランジ側に位置している、配線基板の製造方法(請求項3)も含まれる。
これによれば、第2の治具を取り付けた金具の重心が、該金具単体の重心よりもそのフランジ側に移動した状態で、第1の治具における貫通孔およびこれに連なる凹部に挿入される。従って、上記金具が傾くことなく、その軸部を基板本体の表・裏面に対し垂直姿勢にして、前記ロウ付けを確実に施すことができる。
【0012】
一方、本発明による金具の位置決め用治具(請求項4)は、前記配線基板の製造方法の前記ロウ付け工程で用いる金具の位置決め治具であって、表面および裏面を有し、該裏面に開口する深さ0.3mm以上の凹部と、該凹部の底面の中心部および表面の間に貫通孔と、を有する第1の治具と、前記金具に対して着脱可能であって、該金具の軸部を挿通する透孔と、上記貫通孔の内周面と軸方向に沿って0.3mm以上の長さで平行となり且つ接近可能な外側面と、を有する第2の治具と、を備える、ことを特徴とする。
【0013】
これによれば、第2ステップおいて、第1の治具を基板本体の表面あるいは裏面に配置した際に、貫通孔の一端側に同軸心で開口し且つ深さが0.3mm以上の凹部に、前記メタライズ層およびロウ材を確実に収納できる。しかも、該メタライズ層と共に溶解後のフィレットを含むロウ材についても、第1の治具が基板本体の表・裏面に対し、不用意に傾斜した姿勢となる事態を確実に予防できる。
更に、前記第4ステップにおいて、金具に取り付けられた第2の治具の外側面と第1の治具の貫通孔における内周面とが、軸方向に沿って0.3mm以上の長さで平行となり且つ接近可能となるので、金具を所要の姿勢に確実に維持した状態で、前記ロウ付けを施すことが可能となる。
尚、第1の治具における凹部の深さが0.3mm未満になると、メタライズ層およびロウ材を収納し難くなるおそれがあり、第2の治具における外側面と第1の治具の貫通孔における内周面との間における軸方向の長さが0.3mm未満になると、第2の治具を取り付けた金具が、第1の治具の貫通孔に対し、軸方向において傾きを生じるおそれがある。これらを防ぐために、前記範囲とした。
【0014】
また、本発明には、前記金具の軸部の周面には、雄ネジが刻設されていると共に、前記第2の治具における透孔の内周面には、上記雄ネジにネジ結合する雌ネジが刻設されている、金具の位置決め用治具(請求項5)も含まれる。
これによれば、金具に対して第2の治具を、両者の中心軸を共通にして取り付けられる。しかも、該第2の治具とネジ結合した位置を調整して取り付けた金具を、第1の治具における貫通孔に挿入した際に、該貫通孔の内周面に対し、第2の治具の外側面を確実に0.3mm以上平行で且つ接近可能な納まり状態となる。従って、金具を所要の姿勢に維持しつつ、基板本体にロウ付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の製造方法の対象となる配線基板の断面を示す概略図。
【図2】本発明の製造方法における第1ステップを示す概略図。
【図3】上記製造方法における第2ステップを示す概略図。
【図4】図3中の一点鎖線部分Xを示す拡大断面図。
【図5】上記製造方法における第3ステップを示す概略図。
【図6】上記製造方法の第4ステップを示す図4と同様な拡大断面図。
【図7】上記製造方法の第5ステップを示す上記と同様な拡大断面図。
【図8】本発明の製造方法により得られた配線基板の断面を示す概略図。
【図9】異なる形態の第2の治具を示す断面図。
【図10】応用形態の第2の治具を示す断面図。
【図11】上記第2の治具を用いた第4ステップを示す上記同様の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
予め、図1に示すように、アルミナ(セラミック:絶縁材)を主成分としてなり、表面3および裏面4を有する基板本体2、および該基板本体2の表面3に複数のメタライズ層6を互いに離して形成した配線基板1を用意した。該メタライズ層6は、WまたはMoの塗布層、W、Mo、およびTi−Cu合金のスパッタ層などの薄膜形成によるもの、あるいはCu、Ni、およびAuのメッキ層からなり、平面視がほぼ円形で且つ約15μmの厚さである。
尚、上記基板本体2は、複数のセラミック層を積層してなり、これらの層間に所定パターンの配線層が形成され、かかる配線層の相互間や、裏面4側の配線層と例えば裏面4に設けた接続端子との間をビア導体(何れも図示せず)によって導通可能としている。また、該基板本体2は、複数の配線基板(1)を併有している多数個取りのタイプであると共に、個々の配線基板(1)領域の表面3ごとに前記メタライズ層6を形成したものであっても良い。
【0017】
先ず、図2に示すように、メタライズ層6ごとの上に、予め平面視が円形で且つシート状にプリフォームされたロウ材7を載置した(第1ステップ)。該ロウ材7は、厚さ約50μmの例えば、Au−Sn系合金からなる。
次いで、図3に示すように、ロウ材7が載置されたメタライズ層6の位置する基板本体2の表面3側に、メタライズ層6およびロウ材7ごとの位置に、貫通孔16および凹部18を有する第1の治具15を配置した(第2ステップ)。
第1の治具15は、熱容量の大きく熱伝導率が低いカーボン製で、且つ表面17および裏面19を有する板状材からなり、該表面17と裏面19との間における所定の位置に、平面視が円形の貫通孔16を有しており、その裏面(一端)19側は、同軸心で開口して窪み且つ平面視が円形の凹部18に連通している。図4の拡大断面図で示すように、裏面19に開口する凹部18の深さdは、0.3mm以上であるため、該凹部18内に、上記メタライズ層6とロウ材7とを確実に収納することができた。
【0018】
次に、図5に示すように、全体がほぼ円盤形状を呈する本体22の頂面の中央に平面視が円形の透孔24の上端が開口する第2の治具20を、その透孔24内にスタッドボルト(金具:以下単にボルトと称する)10の軸部13,14を挿入(嵌合)して、該ボルト10に第2の治具20を取り付けた(第3ステップ)。
上記ボルト10は、例えば、コバール(Fe−29%Ni−17%Co)からなり、円盤形のフランジ11(例えば、外径:11.7mm×厚み:1.2mm)と、その中心部から直角に突出したネック部13および雄ネジ14からなる軸部(13,14)とを備えている。尚、図5中の符号w1は、ボルト10単独の重心の位置を示す。
一方、第2の治具20も、熱容量が大きく且つ熱膨張率が低いカーボンからなり、ほぼ円錐形の傾斜面25、軸方向と平行な円筒形の外側面27、平面視が円形の底面29、および該底面29に同心で相似形で開口する凹部26を備えている。該凹部26の天井面28の中央部には、透孔24の下端が開口している。透孔24の軸方向に沿った長さは1mm以上であり、該透孔24の内径は、ボルト10の雄ネジ部14の外径よりも若干大きい。また、外側面27の軸(垂直)方向に沿った長さhは、0.3mm以上(例えば、1.0mm)である。尚、第2の治具20の重心w2は、図5に示すように、比較的底面29側に位置している。
尚、前記第1の治具15と第2の治具20とにより、本発明のボルト(金具)10の位置決め用治具が構成される。
【0019】
第2の治具20を取り付けた際に、図6の中央部で示すように、第2の治具20の底面29は、ボルト10のフランジ11の上面に接触し、この場合のボルト10の重心Wは、該ボルト10単独時の重心w1よりもボルト10のフランジ11側に予め移動していた。
更に、図6中の白抜きの矢印で示すように、第2の治具20が取り付けられたボルト10を、第1の治具15の上側からその貫通孔16内に挿入して、該ボルト10のフランジ11の底面12がロウ材7に面接触するように、該ロウ材7の上にボルト10を載置した(第4ステップ)。
この際、図6に示すように、第2の治具20の外側面27は、その軸方向の長さh0.3mm以上において、第1の治具15における貫通孔16の内周面と平行で且つ接近していた。その結果、ボルト10のフランジ11は、基板本体2の表面3と平行になり、且つ軸部(13,14)は、基板本体2の表面3に対して、垂直の姿勢となった。
かかる状態で、ロウ材7を融点以上に加熱して溶融した(第5ステップ)。
【0020】
その結果、図7に示すように、前記ロウ材7は、溶融・凝固した後、若干薄肉のロウ材8となり、該ロウ材8の上面側にボルト10のフランジ11の底面12が沈み込むと共に、当該ロウ材8の外側には、メタライズ層6の上面とフランジ11の側面とに跨ってカーブしたフィレット9が全周に沿って形成された。この際、ボルト10は、そのフランジ11が基板本体2の表面3と平行であり、且つ軸部13,14は、基板本体2の表面3と垂直の姿勢で、上記ロウ材8およびメタライズ層6を介して、基板本体2の表面3に接合されていた。
そして、以上のような第1〜第5ステップからなるロウ付け工程の後で、基板本体2の表面3から、第1の治具15を取り外し、更に、ロウ付けされたボルト10ごとから、第2の治具20を取り外す工程を行った。
その結果、図8に示すように、基板本体2の表面3に形成された複数のメタライズ層6ごとの上に、ロウ材8を介して、ボルト10をその軸部(13,14)を表面3に対し垂直にして接合した配線基板1を製造することができた。
【0021】
以上のような配線基板1の製造方法によれば、第2ステップにおいて、前記ロウ材7を載置したメタライズ層6が位置する基板本体2の表面3に、該メタライズ層6およびロウ材7を凹部18に収納する第1の治具15が配置され、第3ステップにおいて、予め前記ボルト10の軸部(13,14)を第2の治具20の透孔24に挿入して、該第2の治具20をボルト10に取り付けると共に、第4ステップにおいて、第1の治具15の貫通孔16内に第2の治具20を取り付けた上記ボルト10を挿入し且つ該ボルト10のフランジ11をロウ材7の上に載置させた。その結果、上記ボルト10は、そのフランジ11をロウ材7に接触させ、且つその軸部(13,14)を第2・第1の治具20,15によって、基板本体2の表面3に対して、軸方向が垂直となった姿勢で拘束された。かかる状態で、第5ステップのロウ材7を溶解させてロウ付けを施しため、上記ボルト10は、そのフランジ11を基板本体の表面3と平行とし、且つその軸部13,14を垂直とした姿勢で、溶解・凝固したロウ材8を介して、上記メタライズ層6の上に接合できた。
【0022】
しかも、第2の治具20を取り付けたボルト10の重心Wが、該ボルト10単体の重心w1よりもそのフランジ11側に移動した状態で、第1の治具15における貫通孔16およびこれに連なる凹部18に挿入できたので、当該ボルト10を傾けることなく、その軸部13,14を基板本体10の表面3に対し垂直姿勢にして、前記ロウ付けを確実に施すことができた。
従って、フランジ11と軸部(13,14)とを有するボルト10を、所要の姿勢でロウ付けして接合した配線基板1を容易且つ確実に製造することができた。
尚、前記メタライズ層6およびロウ材7(8)は、基板本体2の裏面4に形成し、かかる裏面4側に、前記ボルト10を第1・第2治具15,20を併用してロウ付けするようにしても良い。また、前記メタライズ層6は、前記材料のほか、AgやCuの塗布層、スパッタリングにより薄膜形成したもの、あるいはメッキ層からなるものとしても良く、ロウ材7は、Ag系ロウからなるものとしても良い。
【0023】
図9は、異なる形態である第2の治具20aを示す垂直断面図である。
第2の治具20aも、前記同様のカーボンからなり、図9に示すように、全体が上下二段の円筒形状を呈する本体21と、その頂面と外側面27との間に位置する段部21aとを有し、更に前記同様の透孔24や凹部26を有している。該第2の治具20aでは、その重心(w2)の位置が前記第2の治具20の場合よりもフランジ11側にあるため、これをボルト10に取り付けた際の当該ボルト10の重心Wは、図9に示すように、該ボルト10単独時の重心w1よりも更にフランジ11側に移動する。その結果、該第2の治具20aを取り付けたボルト10を、前記第1の治具15の貫通孔16に挿入する際に、軸部13,14が傾く事態を一層確実に防止できる。尚、第2の治具20aにおける外側面27の軸方向の長さhも0.3mm以上(例えば、1.0mm)である。
【0024】
図10は、前記第2の治具20の応用形態である第2の治具20bを示す断面図、およびこれをボルト10に取り付ける第3ステップを示す概略図である。
第2の治具20bは、基本的に前記第2の治具20と同様の形態を有するが、その透孔24の内周面に、ボルト10の雄ネジ14とネジ結合可能な雌ネジ24bが更に刻設されている。図10中の白抜きの矢印で示すように、ボルト10の雄ネジ14を第2の治具20bの雌ネジ24bにネジ結合するように、透孔24内に挿入して、該第2の治具20bをボルト10に取り付ける(第3ステップ)。
この際、ボルト10と第2の治具20bとを同軸心でネジ結合できると共に、ボルト10の雄ネジ14と第2の治具20bの雌ネジ24bとがネジ結合する軸方向の位置を任意に選択できるため、前記第2の治具20のように、その底面29をボルト10のフランジ11の上面に接触させず、離して浮かすこともできる。
【0025】
次いで、図11中の白抜きの矢印で示すように、第2の治具20bを取り付けたボルト10を、予め、基板本体2の表面3側に配置されていた第1の治具15の貫通孔16内に挿入する(第4ステップ)。この際、図示のように、第2の治具20bの底面29をボルト10のフランジ11の上面から離して浮くように、予めボルト10の雄ネジ14と第2の治具20bの雌ネジ24bとがネジ結合する位置を調整することで、第2の治具20bにおける外側面27の軸(垂直)方向に沿った長さh(0.3mm以上)全体を、第1の治具15の貫通孔16内に位置させられる。その結果、該第2の治具20bを取り付けたボルト10を、第1の治具15の貫通孔16に挿入した際に、該ボルト10の軸部13,14が傾く事態を確実に防止できる。
尚、前記第2の治具20aの透孔24の内周面にも、雌ネジ24bを刻設しても良い。また、前記第1の治具15と、第2の治具20a,20bの何れか一方とよっても、本発明のボルト(金具)10の位置決め用治具が構成される。
【0026】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記基板本体2の絶縁材は、アルミナ以外の高温焼成セラミック(例えば、ムライトや窒化アルミニウム)や、低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックとしたり、更には、エポキシ系などの樹脂としても良い。上記絶縁材が低温焼成セラミックや樹脂の場合、前記メタライズ層6は、AgやCuからなるものとしても良い。
また、本発明の対象となる金具は、前記ボルト10に限らず、前記同様のフランジと軸部とを併有するものであれば、例えば、六角形のボルト頭を有する通常のボルトや、フランジ付きシャフトのようなものであっても良い。
【0027】
更に、本発明の対象となる配線基板は、基板本体の表面および裏面の双方に金具をロウ付けして接合した形態であっても良い。
また、第1・第2の治具の素材は、前記カーボンに限らず、熱容量が比較的大きく且つ熱膨張率の低いセラミック、あるいは同様な金属もしくは合金としても良い。
加えて、第2の治具は、これを金具に取り付けた際に、その重心Wが金具のフランジ側に移動するものであれば、前記形態の治具20,20a,20bに限らず、例えば、全体が縦長のほぼ円錐形状を呈する形態としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、基板本体の表面および裏面の少なくとも一方に、スタッドボルトのようなフランジと軸部とを有する金具をロウ付けにより所要の姿勢で接合した配線基板を容易且つ確実に提供することに貢献可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…………………………配線基板
2…………………………基板本体
3…………………………表面
4…………………………裏面
6…………………………メタライズ層
7,8……………………ロウ材
10………………………スタッドボルト(金具)
11………………………フランジ
13………………………ネック部(軸部)
14………………………雄ネジ部/雄ネジ(軸部)
15………………………第1の治具
16………………………貫通孔
17………………………表面
18………………………凹部
d…………………………凹部の深さ
19………………………裏面
20,20a,20b…第2の治具
24………………………透孔
24b……………………雌ネジ
27………………………外側面
h…………………………外側面の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材からなる基板本体の表面および裏面の少なくとも一方に、軸部およびフランジからなる金具をロウ材により固定した配線基板の製造方法であって、
上記基板本体の表面および裏面の少なくとも一方に形成されたメタライズ層の上面に、シート状のロウ材を載置する第1ステップと、
上記基板本体の表面および裏面のうち、上記ロウ材が載置されたメタライズ層の側に、該メタライズ層およびロウ材を収納する貫通孔を有する第1の治具を配置する第2ステップと、
平面視の形状が上記貫通孔と相似形である透孔を有する第2の治具の該透孔に金具の軸部を挿入して、該金具に第2の治具を取り付ける第3ステップと、
上記第1の治具の上側からその貫通孔内に、第2の治具が取り付けられた上記金具を挿入し、且つ該金具のフランジをロウ材の上に載置する第4ステップと、
上記第4ステップ後に、上記シート状のロウ材を溶解する第5ステップと、を含むロウ付け工程と、
上記ロウ付け工程後に、上記第2の治具を金具から取り外し、且つ第1の治具を基板本体から取り外す工程と、を備える、
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1の治具の貫通孔は、一端側に同軸心で開口する凹部を含み、該凹部に前記メタライズ層およびロウ材を収納するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2の治具が取り付けられた際の金具の重心は、該金具のフランジ側に位置している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の配線基板の製造方法の前記ロウ付け工程で用いる金具の位置決め用治具であって、
表面および裏面を有し、該裏面に開口する深さ0.3mm以上の凹部と、該凹部の底面の中心部および表面の間に貫通孔と、を有する第1の治具と、
前記金具に対して着脱可能であって、該金具の軸部を挿通する透孔と、上記貫通孔の内周面と軸方向に沿って0.3mm以上の長さで平行となり且つ接近可能な外側面と、を有する第2の治具と、を備える、
ことを特徴とする金具の位置決め用治具。
【請求項5】
前記金具の軸部の周面には、雄ネジが刻設されていると共に、前記第2の治具における透孔の内周面には、上記雄ネジにネジ結合する雌ネジが刻設されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の金具の位置決め用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−146609(P2011−146609A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7653(P2010−7653)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】