説明

配線基板の製造方法

【課題】エッチングにより配線基板を製造する場合、配線基板の面内におけるエッチングのばらつきを抑制すること。
【解決手段】エッチングにおいては、基板1の搬送方向側に中間基準体20を配置して、エッチング装置に搬送する。このとき、スプレー11と、このスプレー11に対して搬送方向側に最初に配置された吸引ノズル12との距離をA、吸引ノズル12と、この吸引ノズル12に対して搬送方向側に最初に配置されたスプレー11との距離をB、搬送方向側における基板1の捨て領域1Dの長さDと中間基準体20の長さEとの和をCとしたとき、A+B≦Cである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングにより配線パターンを有する基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線パターンを有する基板(配線基板)は、例えば、銅張積層板又はガラス原板(インジウム−スズ酸化物等をガラス板にスパッタリング等で被覆したもの)の表面に、感光性レジストを塗布又はラミネートした後、配線パターンを露光してから現像し、エッチング、剥離といった工程を経て配線パターンが形成されている。エッチングにおいては、エッチング対象である銅張積層板又はガラス原板の表面に形成された被エッチング層を均一にエッチングする必要がある。例えば、特許文献1には、被エッチング板材の表面にエッチング液を供給してエッチングを行なうエッチング装置において、上記被エッチング板材の表面に上記エッチング液を供給するとともに、上記被エッチング板材の表面から上記エッチング液を排出するエッチング液供給排出手段を設けたエッチング装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−123282号公報[0006]、図1〜図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、配線基板の面内におけるエッチングのばらつき(配線パターンの幅のばらつき)を抑制することに一定の効果はあるが、さらに前記ばらつきを低減することについて、改善の余地がある。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エッチングにより配線基板を製造する場合、配線基板の面内におけるエッチングのばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願発明者らは、エッチング液を供給、吸引することによりエッチングする方法について鋭意研究を重ねた。その結果、所定の間隔を設けて複数のエッチング対象をエッチング装置内に搬送する場合、エッチング対象の搬送方向においては、エッチング液の供給量と吸引量とのバランスが変動し、エッチング対象の面内におけるエッチングのばらつきが発生することを見出した。すなわち、エッチング対象の間に存在する空間がエッチング液の液面(液面高さ)のばらつきを誘発し、エッチング対象の面内におけるエッチングのばらつきを引き起こしていることを見出した。
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の基板を、隣接する前記基板の間に板状の中間基準体を配置しつつ、前記基板を搬送する搬送装置に搬送させながら、前記基板の搬送方向に向かって配置された複数のエッチング液供給手段に複数の前記基板にエッチング液を供給させつつ、前記エッチング液供給手段の前記搬送方向側に配置された複数のエッチング液吸引手段に複数の前記基板に供給された前記エッチング液を吸引させながらエッチングを行う工程を含み、前記エッチング液供給手段と当該エッチング液供給手段の前記搬送方向側に最初に配置された前記エッチング液吸引手段との距離をA、前記エッチング液吸引手段と当該エッチング液吸引手段の前記搬送方向側に最初に配置された前記エッチング液供給手段との距離をB、前記搬送方向側における前記基板の捨て領域の長さと前記中間基準体の長さとの和をCとしたとき、A+B≦Cであることを特徴とする配線基板の製造方法である。
【0007】
この配線基板の製造方法は、これから配線パターンが形成される基板(配線パターン形成前基板)同士の間に、中間基準体を配置して、エッチング装置に搬入する。そして、搬送方向における前記基板の捨て領域の長さと、前記搬送領域における中間基準体の長さとの和を、隣接するエッチング液供給手段間の距離以上とする。このようにすることで、基板間の空間が中間基準体で埋められるので、搬送方向においては、エッチング液の供給量と吸引量とのバランスが変動を抑制できる。その結果、基板に供給されたエッチング液の液面の変化を抑制することができるので、エッチング対象である前記基板の面内におけるエッチングのばらつきを抑制することができる。
【0008】
本発明の望ましい態様として、前記基板の厚みと前記中間基準体の厚みとは同じ大きさであることが好ましい。このようにすれば、基板の表面と中間基準体の表面とが略同一面になるので、両者の位置が異なることに起因するエッチング液の一方向への移動が抑制される。その結果、基板に供給されたエッチング液の液面の変化をより効果的に抑制し、基板の面内におけるエッチングのばらつきをより確実に抑制することができる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記搬送方向と直交する方向における前記基板の両側に、板状の側方基準体が配置されることが好ましい。このように、側方基準体を設けることにより、搬送方向と直交する方向においても、エッチング液の供給量と吸引量とのバランスが変動を抑制できる。その結果、基板の面内におけるエッチングのばらつきをより確実に抑制することができる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、最後にエッチングする前記基板の前記搬送方向後方には、板状の後方基準体が配置されることが好ましい。このようにすることで、基板の搬送方向後方の表面におけるエッチング液の厚みのばらつきを抑制し、液面の変化を抑制することができるので、基板の面内におけるエッチングのばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、エッチングにより配線基板を製造する場合、配線基板の面内におけるエッチングのばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、エッチング対象となる基板の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、エッチング対象となる基板の一例を示す平面図である。
【図3】図3は、エッチング装置の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、エッチング装置の全体を示す側面図である。
【図5】図5は、エッチング時における基板とエッチング液との状態を示す概念図である。
【図6】図6は、エッチング時における基板とエッチング液との状態を示す概念図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る配線基板の製造方法におけるエッチング時における基板とエッチング液との状態を示す概念図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る配線基板の製造方法におけるエッチング時における基板とエッチング液との状態を示す概念図である。
【図9】図9は、基板の搬送方向における捨て領域及び中間基準体の寸法を説明する図である。
【図10】図10は、基板と中間基準体とを交互に配置した状態を示す平面図である。
【図11】図11は、中間基準体に加え、側方基準体を配置した状態を示す平面図である。
【図12】図12は、最後に搬送される基板の搬送方向とは反対側に、後方基準体を配置した状態を示す平面図である。
【図13】図13は、本実施形態に係る配線基板の製造方法で用いる基準体を示す平面図である。
【図14】図14は、図13のA−A断面図である。
【図15】図15は、本実施形態に係る配線基板の製造方法によって基板をエッチングしたときの評価方法を説明するための平面図である。
【図16】図16は、評価に供した基板の配線パターンの配置例を示す平面図である。
【図17】図17は、評価に用いた配線パターンの拡大図である。
【図18】図18は、評価結果を、配線パターンの幅のばらつきと、搬送方向における中間基準体の長さとの関係で整理した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
図1は、エッチング対象となる基板の一例を示す斜視図である。図2は、エッチング対象となる基板の一例を示す平面図である。基板1は、樹脂又はガラスの板である基材2の表面に、銅等の導電体で形成された導電層3が設けられた構造である。基板1は、このようなものに限定されるものではない。基板1は、エッチングによって導電層3の表面に配線パターンが形成される。基板1は、後述するエッチング装置に搬入され、このエッチング装置内を搬送される過程でエッチング液が導電層3に供給されることにより、導電層3がエッチングされる。
【0015】
図2に示すように、基板1は、導電層3の一部に捨て領域1Dが設けられ、残りの部分が配線パターン領域1Pとなる。配線パターン領域1Pは、実際に配線パターンが形成されて製品となる領域である。捨て領域1Dは、製品とはならない領域である。捨て領域1Dは、エッチング後に切り落とされる。捨て領域1Dは、前記エッチング装置内において基板1が搬送される方向(搬送方向、図2の矢印Mで示す方向であり、以下の例でも同様)側の端部1Tから、搬送方向とは反対方向に向かって所定の領域である。
【0016】
基板1の搬送方向側は、一般にエッチングの進行が安定しにくく、配線パターンの幅がばらついたり、配線パターンのエッジのシャープさが劣ったりする、エッチングのばらつきが発生しやすい。このため、基板1は、搬送方向側の端部1Tから前記搬送方向とは反対方向に向かって所定の領域に、捨て領域1Dが形成されて、エッチングが安定しない領域を捨てるとともに、エッチングが安定した領域を配線パターン領域1Pとして製品とする。
【0017】
図3は、エッチング装置の一例を示す模式図である。図4は、エッチング装置の全体を示す側面図である。エッチング装置10は、エッチング液ELを基板1に供給するエッチング液供給手段としてのスプレー11と、基板1に供給されたエッチング液ELを吸引するエッチング液吸引手段としての吸引ノズル12と、基板1を搬送する搬送装置としての搬送ローラー13、14と、を含む。図3は、表記の便宜上、基板1が連続したものとして記載してあるが、実際は、複数の基板が一枚毎に搬送される。
【0018】
スプレー11は、エッチング液噴射口11sを有している。スプレー11は、エッチング液噴射口11sが基板1と対向するように設置される。そして、スプレー11は、エッチング液噴射口11sからエッチング液ELを基板1に向かって噴射する。吸引ノズル12は、エッチング液吸引口12nを有している。吸引ノズル12は、スプレー11から供給されて基板1の表面に滞留するエッチング液ELをエッチング液吸引口12nから吸引して除去する。エッチング液ELは、エッチングに用いる溶液である。エッチング液ELは、通常、塩化第二鉄、塩化第二銅等の酸性溶液又は塩化ジアミン銅(I)等のアルカリ性溶液が用いられる。
【0019】
一対の搬送ローラー13、14は、対向して配置される。それぞれの搬送ローラー13、14は、回転軸が互いに平行になるように配置される。一対の搬送ローラー13、14は、少なくとも一方が駆動手段(例えば、電動機等)によって回転する。エッチング装置10の内部において、基板1は、一対の搬送ローラー13、14の間に挟持される。そして、搬送ローラー13、14が回転することにより、基板1は、エッチング装置10内を搬送される。エッチング装置10は、複数組の搬送ローラー13、14を有する。それぞれの組の複数組の搬送ローラー13、14は、回転軸が互いに平行になるように、かつ一対の搬送ローラー13、14が接する部分が同一平面上に位置するように配置される。そして、基板1は、複数組の搬送ローラー13、14に挟持されながら、図4に示すエッチング装置10の入口側(IN)から出口側(OUT)に向かって搬送される。図3に示す例では、矢印Mで示す方向に基板1が搬送される。
【0020】
基板1の搬送方向(図3の矢印Mで示す方向)に向かって、スプレー11、吸引ノズル12は、この順に設置される。エッチング装置10は、一つのスプレー11と一つの吸引ノズル12とが一組となって、複数組のスプレー11、吸引ノズル12が基板1の搬送方向に向かって、すなわち、複数組の搬送ローラー13、14の配列方向に向かって設置される。図4に示すエッチング装置10の入口側(IN)に設置されるスプレー11と、出口側(OUT)に設置される吸引ノズル12との距離Lが、エッチング装置10の全エッチング領域長である。エッチング装置10内において、基板1は、複数組の搬送ローラー13、14によって搬送される過程で、複数組のスプレー11、吸引ノズル12によってエッチング液ELの供給、吸引を受けながら導電層3がエッチングされる。
【0021】
基板1の表面のエッチング液ELは、図1に示す導電層3をエッチングするので、時間の経過とともに導電層3を溶解する速度が低下する。吸引ノズル12は、このような導電層3を溶解する速度が低下したエッチング液EL(老排液)を基板1の表面から除去する。そして、スプレー11は、常に新たなエッチング液ELを基板1に供給する。このようにすることで、エッチング装置10は、老排液が基板1の表面に滞留することによるエッチングのばらつきを抑制する。
【0022】
図5、図6は、エッチング時における基板とエッチング液との状態を示す概念図である。図3に示すエッチング装置10内は、複数の基板1を連続して搬送しながらエッチングをする。複数の基板1は、エッチング装置10内を搬送されながら、スプレー11からエッチング液ELが供給されるとともに吸引ノズル12にエッチング液ELが吸引される。このため、図5、図6に示すように、基板1とスプレー11及び吸引ノズル12との位置関係によって、基板1の表面のエッチング液ELは厚みが変化する。例えば、図5のAで示す位置の基板1は搬送方向における中央でスプレー11と対向し、Bで示す位置の基板1は搬送方向両端でスプレー11及び吸引ノズル12と対向し、Cで示す位置の基板1は搬送方向両端で吸引ノズル12と対向する。
【0023】
基板1のスプレー11と対向する部分はエッチング液ELが供給されるので、基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みは相対的に大きくなる。基板1の吸引ノズル12と対向する部分はエッチング液ELが吸引されるので、基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みは相対的に小さくなる。また、隣接する基板1同士の間には空間Hが存在する。空間Hに基板1の表面のエッチング液ELは流れ込むが、空間Hに供給されたエッチング液ELは、基板1の表面には流れ込まない。このため、基板1は、その搬送方向において、エッチング液ELの供給量と吸引量とのバランスが変動する。その結果、基板1の搬送方向におけるエッチング液ELの厚みはより大きく変動する。これらの作用により、図6に示すように、エッチング中におけるエッチング液ELの厚みは、基板1の搬送方向に向かってエッチング液ELの供給位置Sと吸引位置Vとで大きく変動する。
【0024】
このように、基板1とエッチング液ELの供給位置及び吸引位置との相対的な位置関係と、エッチング対象である基板1の間に存在する空間Hとが、基板1の搬送方向におけるエッチング液ELの供給量と吸引量とのアンバランスを引き起こす。その結果、基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みのばらつきが発生して、エッチング対象である基板1の面内におけるエッチングのばらつきが発生している。
【0025】
図7、図8は、本実施形態に係る配線基板の製造方法におけるエッチング時における基板とエッチング液との状態を示す概念図である。本実施形態に係る配線基板の製造方法は、隣接する基板1の間に板状の中間基準体20を配置して、エッチング装置10の搬送装置に複数の基板1及び複数の中間基準体20を搬送させながらエッチングする。中間基準体20の厚みtsは、基板1の厚みtbと略同じ大きさにする。このように、隣接する基板1の間に所定の厚みを有する中間基準体20を配置することにより、隣接する基板1の間に存在した空間H(図5、図6参照)が埋められる。また、中間基準体20の厚みtsと基板1の厚みtbとは略同じ大きさなので、基板1の搬送方向においては、基板1の厚みtbと中間基準体20の厚みtsとの変動はほとんど存在しなくなる。
【0026】
このため、隣接する基板1の間に空間Hが存在していた場合とは異なり、基板1の表面に供給されたエッチング液ELは中間基準体20の表面に流れ込むが、中間基準体20の表面に供給されたエッチング液ELも基板1の表面に流れ込む。また、エッチング液ELが吸引ノズル12に吸引されて、基板1の表面のエッチング液ELが減少しても、スプレー11から中間基準体20の表面に供給されたエッチング液ELが基板1の表面に流れ込む。その結果、基板1とスプレー11及び吸引ノズル12との位置関係に起因して発生する基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みの変動が抑制される。また、空間Hと基板1との間におけるエッチング液ELの流出入のアンバランスに起因して発生する基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みの変動も抑制される。
【0027】
このため、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、図5、図6に示すように、基板1の搬送方向に向かうスプレー11の位置と吸引ノズル12の位置とにおけるエッチング液ELの厚みのばらつき、すなわち、エッチング液ELの供給位置Sと吸引位置Vとにおけるエッチング液ELの厚みのばらつきを抑制することができる。その結果、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みのばらつきを抑制することができるので、エッチング対象である基板1の面内におけるエッチングのばらつきを抑制することができる。基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みのばらつきをより効果的に抑制する観点から、中間基準体20の厚みtsと基板1の厚みtbとは略同じ大きさが好ましく、両者を同一にすることがより好ましい。なお、本明細書でいう同一は、中間基準体20の公差及び製造誤差は含まれるものとする(以下同様)。
【0028】
図9は、基板の搬送方向における捨て領域及び中間基準体の寸法を説明する図である。本実施形態に係る配線基板の製造方法は、スプレー11と、このスプレー11に対して搬送方向(図9の矢印Mで示す方向)側に最初に配置された吸引ノズル12との距離をA、吸引ノズル12と、この吸引ノズル12に対して搬送方向側に最初に配置されたスプレー11との距離をB、搬送方向側における基板1の捨て領域1Dの長さDと中間基準体の長さEとの和をCとしたとき、A+B≦Cであることが好ましい。すなわち、Cは、隣接するスプレー11間の距離以上であることが好ましい。
【0029】
Cがこのような範囲であれば、基板1のエッチングの面内ばらつきを効果的に抑制することができる。なお、捨て領域1Dの長さDは0であってもよい。この場合C=Eとなる。本実施形態に係る配線基板の製造方法は、基板1の捨て領域1Dを小さく、さらには0にすることもできるので、基板1を有効利用して省資源化を実現することもできる。捨て領域1Dは、基板1の搬送方向側における端部1Tから、搬送方向とは反対側の端部に向かって長さがDの領域である。基板1の捨て領域1Dと配線パターン領域1Pとは、境界1Ptで区画される。
【0030】
Cの値は大きい程好ましいが、図4に示すエッチング装置10の全エッチング領域長L以下であることが好ましい。このようにすると、基板1のエッチングに要する処理タクトの過度の増加が抑制されるので、生産性の低下を抑制することができる。なお、全エッチング領域長Lが1.0mよりも大きい場合、Cの値は1.0mを上限値とすることが好ましい。このようにすると、基板1のエッチングに要する処理タクトが過度に増加することを抑制することができる。
【0031】
図10は、基板と中間基準体とを交互に配置した状態を示す平面図である。図11は、中間基準体に加え、側方基準体を配置した状態を示す平面図である。図12は、最後に搬送される基板の搬送方向とは反対側に、後方基準体を配置した状態を示す平面図である。本実施形態に係る配線基板の製造方法は、図10に示すように、搬送方向に向かって基板1と中間基準体20とが交互に配置されて搬送される。このように、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、少なくとも中間基準体20を、隣接する基板1の間に配置すればよい。なお、図10に示す例では、中間基準体20と基板1との間に隙間を有している。この場合、Cは、D+E+隙間の大きさになる。
【0032】
また、図11に示すように、本実施形態に係る配線基板の製造方法においては、中間基準体20に加え、搬送方向と直交する方向における基板1の両側に、板状の側方基準体21を配置してもよい。側方基準体21は、厚みが基板1の厚みと略同等、好ましくは同一である。また、側方基準体21は、平面視が長方形の構造体であり、その長手方向が基板1の搬送方向と平行に配置される。側方基準体21を配置することにより、基板1の表面におけるエッチング液ELの厚みのばらつきを抑制することができるので、基板1の面内におけるエッチングのばらつきをさらに効果的に抑制することができる。なお、側方基準体21は、長手方向(例えば、図11の点線で示す部分)で分割してもよい。このようにすれば、側方基準体21の取り扱いが容易になる。
【0033】
また、図12に示すように、本実施形態に係る配線基板の製造方法においては、最後にエッチングする基板1nの搬送方向後方に、板状の後方基準体22を配置してもよい。隣接する基板1n−1と基板1nとの間には、上述したように、中間基準体20が配置されている。しかし、最後にエッチングされる基板1nの搬送方向後方、すなわち、搬送方向とは反対側には、中間基準体20は配置されていない。このため、基板1nの搬送方向後方は、エッチングのばらつきが発生するおそれがある。
【0034】
そこで、最後にエッチングする基板1nの搬送方向後方に、後方基準体22を配置する。このようにすれば、基板1nの搬送方向後方の表面におけるエッチング液ELの厚みのばらつきを抑制し、液面の変化を抑制することができるので、基板1の面内におけるエッチングのばらつきを抑制することができる。後方基準体22の厚みは、基板1の厚みと略同等、好ましくは同一である。また、搬送方向における後方基準体22の長さCeは、上述したCと同様である。すなわち、基板1nの搬送方向後方に捨て領域Dは存在しないので、CeはA+B以上とすることが好ましい。このようにすれば、基板1の面内におけるエッチングのばらつきを効果的に抑制することができる。
【0035】
図13は、本実施形態に係る配線基板の製造方法で用いる基準体を示す平面図である。図14は、図13のA−A断面図である。基準体5は、中間基準体20aと、側方基準体21aとを有し、これらを一体としたものである。本実施形態において、基準体5は、平板に設けた基板配置部23内に基板1が配置される。本実施形態において、図14に示すように、基板配置部23は、平板の基準体5の板面と直交する方向に貫通する孔である。基板配置部23内に基板1が配置された基準体5は、図3に示すエッチング装置10の搬送装置で搬送され、その過程で基板1がエッチングされる。
【0036】
このようにすれば、基板1の周囲が基準体5で囲まれるので、基板1の表面におけるエッチング液ELの液面の変動はより確実に抑制される。その結果、基板1の面内におけるエッチングのばらつきをより効果的に抑制することができる。なお、基準体5は、搬送方向に向かって分割(例えば、図13の点線で示す位置)されていてもよい。このようにすれば、基準体5の取り扱いが容易になる。また、図14に示すように、基準体5の厚みtsは、基板1の厚みtbと略同等、好ましくは同一である。
【0037】
(評価例)
図15は、本実施形態に係る配線基板の製造方法によって基板をエッチングしたときの評価方法を説明するための平面図である。図16は、評価に供した基板の配線パターンの配置例を示す平面図である。図17は、評価に用いた配線パターンの拡大図である。本実施形態に係る配線基板の製造方法によって基板をエッチングし、エッチングのばらつきを評価した。図15に示すように、3個の長方形板を組み合わせ、評価用基板1Eを支持する支持部を有する基板支持治具25に評価用基板1Eを取り付け、搬送方向側に中間基準体20Eを配置し、さらに、基板支持治具25の搬送方向後方に後方基準体26を配置した。この状態で、図3に示すエッチング装置10を用いて評価用基板1Eをエッチングした。
【0038】
評価用基板1Eが有する導電体の表面には、図16に示すように、12×12=144個の配線パターン5Tを形成した。配線パターン5Tは、図17に示すように、2つの櫛歯状の配線パターンを対向させて組み合わせたものである。このような構成により、配線パターン5Tは、搬送方向(矢印Mで示す方向)と平行な、複数本(この例では16本)の直線パターンを有する。搬送方向と直交する方向における前記直線パターンの寸法(パターン幅)をwaとした。エッチング前に、配線パターン5Tの形状を評価用基板1Eが有する導電体の表面に感光性レジストで印刷し、これを露光して現像した。この状態の評価用基板1Eを図3に示すエッチング装置10でエッチングした。
【0039】
エッチング終了後、評価用基板1Eの表面に残った感光性レジストを除去した。その後、評価用基板1Eから25箇所(図16のハッチングで示す部分)の配線パターン5Tを選択し、それぞれのパターン幅waを計測した。より具体的には、パターン幅waは、図17に示すEの領域(直線パターンの配列方向における中央部の領域)に存在する3本を計測した。このようにして得られた計75個のパターン幅waの3σ(σは標準偏差)を求めた。本実施形態においては、3σを面内ばらつきに相当するものとして、3σにより面内ばらつきを評価した。3σが大きいほどエッチングの面内ばらつきは大きく、3σが小さいほど面内エッチングのばらつきは小さい。
【0040】
図18は、評価結果を、面内ばらつきと、搬送方向における中間基準体の長さとの関係で整理した図である。図18中、P1は、搬送方向における中間基準体の長さC=0の結果である。図18に示すように、搬送方向における中間基準体20Eの長さCが大きくなるほど、面内ばらつき(3σ、配線パターンの幅のばらつき)は小さくなった。そして、CがA+B以上になると、面内ばらつき(3σ)は、C=0の結果よりも小さくなった。すなわち、面内ばらつきが抑制された。このため、搬送方向における中間基準体の長さCはA+B、すなわち、隣接するスプレー11同士の距離以上であることが好ましいことが理解できる。
【0041】
図18の結果から、CがA+Bよりも小さい場合、Cの増加にしたがって面内ばらつき(3σ)は大きくなる傾向がある。CがA+B以上になると、面内ばらつき(3σ)は小さくなる。その後、Cが2×A+Bよりも大きくなると、面内ばらつき(3σ)は、やや大きくなる傾向があり、Cが2×(A+B)以上になると、面内ばらつき(3σ)はC=A+Bである場合よりも小さくなる。このように、n×(A+B)<C<(n+1)×(A+B)である場合、面内ばらつき(3σ)はやや増加する傾向がある(nは整数、以下同様)。このため、CをA+Bよりも大きくする場合、A+Bの整数倍、すなわち、n×(A+B)とすることが好ましい。このようにすれば、基板に発生するエッチングの面内ばらつきをより抑制できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る配線基板の製造方法は、エッチング液を基板に供給し、供給後のエッチング液を吸引するエッチングによって配線基板を製造することに有用である。
【符号の説明】
【0043】
1、1n 基板
1D 領域
1E 評価用基板
1P 配線パターン領域
1Pt 境界
1T 端部
2 基材
3 導電層
5 基準体
5T 配線パターン
10 エッチング装置
11 スプレー
11s エッチング液噴射口
12 吸引ノズル
12n エッチング液吸引口
13、14 搬送ローラー
20、10a、10E 中間基準体
21、21a 側方基準体
22、26 後方基準体
23 基板配置部
25 基板支持治具
26 後方基準体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を、隣接する前記基板の間に板状の中間基準体を配置しつつ、前記基板を搬送する搬送装置に搬送させながら、前記基板の搬送方向に向かって配置された複数のエッチング液供給手段に複数の前記基板にエッチング液を供給させつつ、前記エッチング液供給手段の前記搬送方向側に配置された複数のエッチング液吸引手段に複数の前記基板に供給された前記エッチング液を吸引させながらエッチングを行う工程を含み、
前記エッチング液供給手段と当該エッチング液供給手段に対して前記搬送方向側に最初に配置された前記エッチング液吸引手段との距離をA、前記エッチング液吸引手段と当該エッチング液吸引手段に対して前記搬送方向側に最初に配置された前記エッチング液供給手段との距離をB、前記搬送方向側における前記基板の捨て領域の長さと前記中間基準体の長さとの和をCとしたとき、A+B≦Cであることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記基板の厚みと前記中間基準体の厚みとは同じ大きさである請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記搬送方向と直交する方向における前記基板の両側に、板状の側方基準体が配置される請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
最後にエッチングする前記基板の前記搬送方向後方には、板状の後方基準体が配置される請求項1から3のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−140677(P2012−140677A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293951(P2010−293951)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】